JP4732942B2 - 燃料タンク - Google Patents

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本発明は、燃料の貯留量に応じて変形することで容積が増減する樹脂製の燃料タンクに関するものである。
自動車に搭載される燃料タンクにおいて、タンク内の燃料蒸気の発生を抑制するため、その発生要因となる液面上の空間の容積を常に小さく維持させる技術が公知であり、例として特許文献1や特許文献2に記載のものが挙げられる。両文献には、液面上の空間の容積が常に小さくなるように、伸縮性を有する壁や膜を燃料の貯留量に応じて変形させる旨が記載されている。
特許第3362540号公報 特許第3392746号公報
燃料タンク内の燃料をエンジンに供給するための燃料ポンプの配設場所に関して、燃料タンクの内部に配したものが広く実用化されており、これによれば、燃料タンクの外部に配する場合に比して燃料ポンプに関する省スペース化が図れる等のメリットが奏される。このような燃料ポンプを燃料タンクに内蔵させる構造は、変形を伴わない燃料タンクへの適用は容易であるが、前記した変形タイプの燃料タンクに適用しようとすると、壁や膜が変形することによる燃料ポンプの配設空間周りへの影響を考慮する必要がある。なお、前記両特許文献は共に、変形する燃料タンクの外部に燃料ポンプを位置させた技術に関するものである。
本発明は、内部に燃料ポンプを配し、かつタンク筐体の変形を伴う樹脂製の燃料タンクであって、タンク筐体が変形しても燃料ポンプの固定部等、燃料ポンプの配設空間周りへの影響が生じにくい燃料タンクを提供することを目的としている。
本発明は、前記課題を解決するため、ブロー成形されるタンク筐体を備え、このタンク筐体が燃料の貯留量に応じて変形することで容積が増減可能であり、かつ燃料ポンプが内部において前記タンク筐体に固定される燃料タンクであって、前記タンク筐体は、単体のパリソンによって一体に成形されパリソンの押し出し方向に並設される、前記燃料ポンプの固定部を含む燃料ポンプエリアと、燃料の貯留量に応じて変形する可変容量エリアとを備え、前記可変容量エリアは、前記燃料タンクの壁部のうち上面部と下面部とが燃料の減少にともないへこむように構成され、前記両エリアのタンク筐体の板厚寸法の関係について、燃料ポンプエリアの板厚寸法が可変容量エリアの板厚寸法よりも大きく設定され、前記燃料ポンプエリアの板厚寸法は一定であり、この燃料ポンプエリア側から前記可変容量エリア側に向けて板厚が漸次薄くなる板厚変化エリアを設けたことを特徴とする燃料タンクとした。
この燃料タンクによれば、可変容量エリアの板厚の薄肉化に拘わらず、燃料ポンプの固定部周りの板厚を厚肉として確保できる。したがって、燃料ポンプの固定部周りの変形を、別途に変形規制用の部材を設けることなく抑制することができ、燃料ポンプの取り付け剛性の低下を防止することができる。
また、この燃料タンクによれば、板厚がゆるやかに変化する板厚変化エリアを介在させた分、ブロー成形時に押し出されるパリソンの形状が安定しやすくなり、可変容量エリア側に近い燃料ポンプエリアの板厚寸法の精度のばらつきを抑えることができる。したがって、燃料ポンプの取り付け剛性の低下を防止するにあたっての品質管理性が向上する。
また、本発明においては、前記可変容量エリアにおける前記上面部と下面部とは、パリソンの押し出し方向における前記燃料ポンプエリアと反対側の端部に向かうにしたがい、互いに近づくように共に傾斜していることを特徴とする燃料タンクとした。
また、本発明においては、外部から前記タンク筐体内へ燃料を給油するための燃料給油バルブが、前記燃料ポンプエリアに取り付けられていることを特徴とする燃料タンクとした。
この燃料タンクによれば、燃料給油バルブの取り付け剛性の低下を効果的に防止することができる。
本発明によれば、燃料ポンプの固定部周りの変形を、別途に変形規制用の部材を設けることなく簡易な構造で抑制することができ、燃料ポンプの取り付け剛性の低下を防止することができる。
以下、自動車に搭載される燃料タンクについて説明する。図1は燃料タンクの分解斜視図、図2は燃料タンクの側断面説明図、図3は燃料給油バルブ周りの側断面説明図、図4はタンク筐体の平面説明図、図5(a)、(b)はそれぞれ、シール部材、燃料ポンプおよびキャップを取り付けた状態での図4におけるA−A断面図、B−B断面図である。
図1において、燃料タンク1は、単体のパリソンによりブロー成形されるタンク筐体2を備える。タンク筐体2は、横方向の寸法(奥行き寸法や幅寸法を意味する)に対して縦方向の寸法(高さ寸法)が小さく形成された扁平形状を呈した容器となっている。平面視した場合のタンク筐体2の形状は、一辺の中央部付近が局所的に外方に突設されている点を除けば概ね矩形状を呈している。この局所的に突設された部位と矩形状の部位は、それぞれ燃料ポンプエリア31、可変容量エリア41を構成する。図4からも判るように、燃料ポンプ4の固定部を含むエリアが燃料ポンプエリア31であり、この燃料ポンプエリア31と、燃料の貯留量に応じて変形するエリアとなる可変容量エリア41とは、パリソンの押し出し方向に並設される。
なお、タンク筐体2の壁部(パリソン)は多層断面構造となっており、例えば、図示はしないが、タンク内側から順に熱可塑性樹脂層、接着層、バリア材層、接着層、再生層、熱可塑性樹脂層を形成した4種6層構造として構成される。熱可塑性樹脂層は例えばPE(高密度ポリエチレン)で形成される。接着層は例えば三井化学(社)製アドマー(登録商標)などの接着性樹脂で形成される。バリア材層は例えば炭化水素の不透過性に優れたEVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)で形成される。再生層は、燃料タンク1の成形時のバリなどを回収して得られる再生材で形成される。
図1において、燃料ポンプエリア31におけるタンク筐体2の壁部は、上面部31A、下面部31Bおよび側面部31Cによって構成される。可変容量エリア41におけるタンク筐体2の壁部は、上面部41A、下面部41B、燃料ポンプエリア31側が形成される側面である側面部41C、この側面部41Cに対向する側面部41D、残りの一対の側面部41Eによって構成される。燃料タンク1が図示しない車体に取り付けられた状態において、上面部31A、下面部31Bは水平状に位置するように形成されており、上面部41A、下面部41Bは図2にも示すように、側面部41D側に向かうに従い互いに近づくように傾斜状に形成されている。
図1において、タンク筐体2の四隅部には、図示しない車体側にボルトによりタンク筐体2を締結固定するための平板状のフランジ3が形成されている。各フランジ3の中央部付近にはボルトを貫通させるためのボルト孔3aが穿設されている。フランジ3は、例えばブロー成形金型のピンチオフ部によって形成されるものである。
燃料ポンプエリア31の上面部31Aには円筒部31Dが上方に向けて突設されており、その外周面には雄ねじ31Eが形成されている。ブロー成形後の後工程において、円筒部31Dの上面には開口部31Fが形成される。
燃料ポンプ4は、円筒形状を呈する本体4aと、この本体4aの上部に形成される円板状のフランジ部4bとを有した構成からなり、本体4aが前記開口部31Fを介して燃料ポンプエリア31に挿入される。なお、燃料ポンプ4と円筒部31Dとの間には環状の弾性体からなるシール部材5が介設される。以上のシール部材5、燃料ポンプ4を装着したうえで、前記雄ねじ31Eに、内周面に雌ねじが螺設されたキャップ6を螺合することで、燃料ポンプ4がタンク筐体2に対して堅固に固定される。以上の説明から判るように、雄ねじ31Eを形成した円筒部31Dが、請求項に記載の「燃料ポンプの固定部」に相当する。燃料ポンプ4の上面には、エンジン側に連通するパイプ等が取り付けられているが、図では省略している。
タンク筐体2には、外部からタンク筐体2内へ燃料を給油するための燃料給油バルブ7が取り付けられる。燃料給油バルブ7は、図3に示すように、タンク筐体2の側面部(本実施形態では燃料ポンプエリア31の側面部31C)に形成された貫通孔31Gを貫通するように取り付けられ、タンク筐体2の外部に位置する一端側はフィラーチューブTに接続する接続部7a、タンク筐体2の内部に位置する他端側は図示しない燃料逆流防止用のバルブ機構を内蔵したバルブ部7bをそれぞれ構成する。燃料給油バルブ7は、そのフランジ部7cを介してタンク筐体2の外面に熱溶着によって固定される。
さて、図1等に示した可変容量エリア41は燃料の貯留量に応じて変形するエリアであり、タンク筐体2に貯留された燃料が減少すると、その減少容積分、図2に示すように、可変容量エリア41の上面部41Aや下面部41Bがそれぞれタンク筐体2の内側に向けてへこむようになっている。これにより、燃料液面上の空間が小さく維持され、タンク筐体2内における燃料蒸気の発生が抑制される。
ここで上面部41Aや下面部41Bを効果的に変形させるにおいては、その板厚を薄くすることが重要であるが、一方で、この板厚の薄肉化は燃料ポンプ4の固定部に影響を及ぼしやすくなる。つまり、燃料ポンプ4の固定部周りの板厚が薄くなると、この固定部周りも燃料の貯留量に応じて変形しやすくなり、燃料ポンプ4の取り付け剛性の低下を招くおそれがある。
この問題に対し、本発明では、図5に示すように燃料ポンプエリア31の板厚寸法t1を可変容量エリア41の板厚寸法t2よりも大きく設定している。燃料ポンプエリア31とは、前記したように燃料ポンプ4の固定部(本実施形態では円筒部31D)を含むエリアを指し、したがって、燃料ポンプエリア31の板厚寸法t1とは、パリソンの押し出し方向に垂直な面でのタンク筐体2の断面形状が円筒部31Dを含んでいる場合の上面部31A、下面部31Bおよび側面部31Cの板厚寸法である。また、可変容量エリア41の板厚寸法t2とは、具体的には図1に示した上面部41A、下面部41Bおよび一対の側面部41Cの板厚寸法を意味する。
図5において、燃料ポンプエリア31の板厚寸法t1、可変容量エリア41の板厚寸法t2の設定は、ブロー成形時におけるパリソンの押し出し量や押し出し速度等を途中で変化制御することにより行われる。本実施形態では、燃料ポンプエリア31の板厚寸法t1は一定であり、この燃料ポンプエリア31側から可変容量エリア41側に向けて板厚が漸次薄くなる板厚変化エリア51を設けた構成としている。パリソンの押し出し方向に関する板厚変化エリア51の長さ寸法Lは板厚寸法t1、t2の設定値により適宜に決定される。例としては、板厚寸法t1、t2の各目標値を8mm、3mmとした場合、板厚変化エリア51の長さ寸法Lを80〜100mmの間にとれば、板厚寸法t1、t2を精度良く寸法出しすることができる。なお、本実施形態においては、板厚寸法t2の値も一定である。
以上のように、燃料ポンプエリア31の板厚寸法t1を可変容量エリア41の板厚寸法t2よりも大きく設定すれば、可変容量エリア41の板厚の薄肉化に拘わらず、燃料ポンプ4の固定部周りの板厚を厚肉として確保できる。したがって、燃料ポンプ4の固定部周りの変形を、別途に変形規制用の部材を設けることなく抑制することができ、燃料ポンプ4の取り付け剛性の低下を防止することができる。
また、燃料ポンプエリア31の板厚寸法t1を一定とし、この燃料ポンプエリア31側から可変容量エリア41側に向けて板厚が漸次薄くなる板厚変化エリア51を設ける構成とすれば、板厚がゆるやかに変化する板厚変化エリア51を介在させた分、押し出されるパリソンの形状が安定しやすくなり、可変容量エリア41側に近い燃料ポンプエリア31の板厚寸法t1の精度のばらつきを抑えることができる。したがって、燃料ポンプ4の取り付け剛性の低下を防止するにあたっての品質管理性が向上する。
また、外部からタンク筐体2内へ燃料を給油するための燃料給油バルブ7を、板厚寸法の小さい可変容量エリア41側ではなく、板厚寸法の大きい燃料ポンプエリア31におけるタンク筐体2に取り付ける構成とすれば、燃料給油バルブ7の取り付け剛性の低下を効果的に防止することができる。
以上、本発明に係る燃料タンク1の好適な実施形態について説明したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で適宜に設計変更が可能である。説明した形態は、タンク筐体2の一端側に燃料ポンプエリア31、他端側に可変容量エリア41を形成した場合であるが、例えば、中央部に燃料ポンプエリア31を形成し、この燃料ポンプエリア31をパリソンの押し出し方向に挟むように一対の可変容量エリア41を形成した場合であっても本発明は適用可能である。
本発明に係る燃料タンクの分解斜視図である。 本発明に係る燃料タンクの側断面説明図である。 燃料給油バルブ周りの側断面説明図である。 タンク筐体の平面説明図である。 (a)、(b)はそれぞれ、シール部材、燃料ポンプおよびキャップを取り付けた状態での図4におけるA−A断面図、B−B断面図である。
符号の説明
1 燃料タンク
2 タンク筐体
4 燃料ポンプ
7 燃料給油バルブ
31 燃料ポンプエリア
31D 円筒部(燃料ポンプの固定部)
41 可変容量エリア
51 板厚変化エリア
t1 燃料ポンプエリアの板厚寸法
t2 可変容量エリアの板厚寸法

Claims (3)

  1. ブロー成形されるタンク筐体を備え、このタンク筐体が燃料の貯留量に応じて変形することで容積が増減可能であり、かつ燃料ポンプが内部において前記タンク筐体に固定される燃料タンクであって、
    前記タンク筐体は、単体のパリソンによって一体に成形されパリソンの押し出し方向に並設される、前記燃料ポンプの固定部を含む燃料ポンプエリアと、燃料の貯留量に応じて変形する可変容量エリアとを備え、
    前記可変容量エリアは、前記燃料タンクの壁部のうち上面部と下面部とが燃料の減少にともないへこむように構成され、
    前記両エリアのタンク筐体の板厚寸法の関係について、燃料ポンプエリアの板厚寸法が可変容量エリアの板厚寸法よりも大きく設定され
    前記燃料ポンプエリアの板厚寸法は一定であり、この燃料ポンプエリア側から前記可変容量エリア側に向けて板厚が漸次薄くなる板厚変化エリアを設けたことを特徴とする燃料タンク。
  2. 前記可変容量エリアにおける前記上面部と下面部とは、パリソンの押し出し方向における前記燃料ポンプエリアと反対側の端部に向かうにしたがい、互いに近づくように共に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の燃料タンク。
  3. 外部から前記タンク筐体内へ燃料を給油するための燃料給油バルブが、前記燃料ポンプエリアに取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料タンク。
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