図1は、本発明に係る画像形成装置の一種であるプリンタの内部構造の一実施形態を説明するための正面断面視の説明図である。この図に示すように、プリンタ(画像形成装置)10は、印刷処理に供する用紙Pを貯留する用紙貯留部12と、この用紙貯留部12に貯留された用紙束P1から繰り出された1枚ずつの用紙(被転写材)Pに対して画像の転写処理を施す転写部13と、この転写部13で転写処理の施された用紙Pに対して定着処理を施す定着部14とが装置本体11に内装されると共に、定着部14で定着処理の施された用紙Pが排紙される排紙部15が装置本体11の頂部に設けられることによって構成されている。
前記用紙貯留部12には、所定数(本実施形態では1つ)の用紙カセット121が装置本体11に対して挿脱自在に設けられている。用紙カセット121の上流端(図1の右方)には、用紙束P1から1枚ずつの用紙Pを繰り出させるピックアップローラ122が設けられている。このピックアップローラ122の駆動によって用紙カセット121から繰り出された用紙Pは、給紙搬送路123およびこの給紙搬送路123の下流端に設けられたレジストローラ対124を介して転写部13に給紙されるようになっている。
前記転写部13は、コンピュータ等から電送された画像情報に基づき用紙Pに転写処理を施すものであり、前後方向(図1の紙面と直交する方向)に延びるドラム心回りに回転可能に設けられた感光体ドラム(像担持体)20の周面に沿うように、当該感光体ドラム20の直上位置から時計方向に向けて帯電ローラ30、露光装置40、現像装置50、転写ローラ60およびクリーニング装置70が配設されることによって形成されている。
前記感光体ドラム20は、周面に静電潜像およびこの静電潜像に沿ったトナー像(可視像)S(図2)を形成させるためのものであり、周面にアモルファスシリコン層が積層され、これによってこれらの像を形成させるのに適したものになっている。
前記帯電ローラ30は、ドラム心回り時計方向に回転している感光体ドラム20の周面に一様な電荷を形成させるものであり、周面が感光体ドラム20の周面と当接しながら従動回転しつつ当該感光体ドラム20へ電荷を付与するようになっている。なお、帯電ローラ30に代えてワイヤからのコロナ放電により感光体ドラム20の周面に電荷を付与するコロナ放電方式のものを採用してもよい。
前記露光装置40は、コンピュータ等の外部の機器から電送されてきた画像データに基づき強弱の付与されたレーザー光を回転している感光体ドラム20の周面に照射し、これによる感光体ドラム20周面のレーザー光が照査された部分の電荷の消去によって当該感光体ドラム20の周面に静電潜像を形成させるものである。
前記現像装置50は、感光体ドラム20の周面にトナー(現像剤)T(図2)を供給することによって周面の静電潜像が形成された部分にトナーTを付着させ、これによって感光体ドラム20の周面にトナー像Sを形成させるものである。
前記転写ローラ60は、感光体ドラム20の直下位置に送り込まれた用紙Pに対して当該感光体ドラム20の周面に形成されているプラスに帯電したトナー像Sを用紙Pに転写させるものであり、トナー像Sの電荷と逆極性であるマイナスの電荷を用紙Pに付与するようになっている。
従って、感光体ドラム20の直下位置に到達した用紙Pは、転写ローラ60と感光体ドラム20とによって押圧挟持されつつ、プラスに帯電した感光体ドラム20周面のトナー像Sがマイナスに帯電した用紙Pの表面に向けて引き剥がされ、これによって用紙Pに対し転写処理が施されることになる。
前記クリーニング装置70は、転写処理後の感光体ドラム20の周面に残留しているトナーTを取り除いて清浄化するためのものである。この転写ローラ60によって清浄化された感光体ドラム20の周面は、次の画像形成処理のために再び帯電ローラ30へ向かうことになる。
前記定着部14は、転写部13によって転写処理の施された用紙Pのトナー像Sに加熱による定着処理を施すものであり、内部に通電発熱体が装着されたヒートローラ141と、このヒートローラ141の下部で周面同士が対向配置された加圧ローラ142とを備えて構成されている。そして、転写処理後の用紙Pは、ローラ心回りに時計方向に向けて駆動回転しているヒートローラ141と、ローラ心回りに反時計方向に向けて従動回転している加圧ローラ142との間のニップ部を通過することによって、ヒートローラ141からの熱を得て定着処理が施されるようになっている。定着処理の施された用紙Pは、排紙搬送路143を通って排紙部15へ排出されることになる。
前記排紙部15は、装置本体11の頂部が凹没されることによって形成され、この凹没した凹部の底部に排紙された用紙Pを受ける排紙トレイ151が形成されている。
このように構成されたプリンタ10は、その運転モードが普段の用紙Pに転写処理を施す通常モードM1(図2の(イ))と、現像装置50内の品質劣化トナーT2を強制的に感光体ドラム20の周面に移行させて現像装置50内の品質劣化トナーT2をリフレッシュするリフレッシュモードM2(図2の(ロ))との間で切り換え可能になっている。リフレッシュモードM2による運転が行われるのは、以下の理由による。
すなわち、プリンタ10を含む各種の画像形成装置においては、A4サイズまたはレターサイズの用紙P等を用いて当該用紙Pに文書の転写処理を施した場合、画像印字率(用紙Pにおける画像形成領域の面積を「1」とした場合の印字されている部分の面積の比)は通常4%〜5%であり、画像形成装置はかかる画像印字率におけるトナーT(図2の(イ))の消費状態を標準現像剤使用状態として設計されている。
従って、画像印字率が4%〜5%で推移している場合は問題ないが、画像印字率が1%に満たないようなほとんど白紙状態で用紙Pに転写処理が施される状態が継続されると、現像装置50内のトナーTはほとんど消費されず、結局消費されなかったトナーT(品質劣化トナーT2)が後述の現像ローラ52の回転に同伴し各所に摺擦して帯電特性が劣化し(すなわち帯電量が低下し)、これによってトナーTが適正に感光体ドラム20の周面に向けて移行しなくなって感光体ドラム20周面の画像濃度が低下したりカブリ現象が生じたりするという不都合が発生する。
このような不都合を解消するために、画像濃度が低下したりカブリ現象が生じるようになった場合、プリンタ10の運転を通常モードM1から用紙Pへの転写は行わないリフレッシュモードM2に切り換えられ、当該リフレッシュモードM2での運転で現像スリーブ522周りの劣化した品質劣化トナーT2が強制的にベタ黒の画像として感光体ドラム20の周面に移されるのである。これによって現像装置50内のトナーTは、品質劣化トナーT2の存在しないリフレッシュされた状態になる。
図2は、各部材の電荷に注目して示した図1の帯電ローラ30周りの拡大説明図であり、(イ)は、通常モードM1の場合、(ロ)は、リフレッシュモードM2の場合をそれぞれ示している。なお、図2では、感光体ドラム20の構成要素および用紙Pの厚み寸法を誇張して示している。図2に示すように、感光体ドラム20は、ドラム軸21と、このドラム軸21回りに同心で回転可能に装着されたアルミニウム合金製のアルミ素管22と、このアルミ素管22の周面に蒸着処理等により均一に積層されて形成されたアモルファスシリコン層23とを備えている。かかる感光体ドラム20は、図略のドラムモータの駆動で時計方向に向けて回転するようになっている。
前記アモルファスシリコン層23は、シリコン(Si)や、シリコンの化合物(SiC、SiO、SiON等)が固溶体状で固化したものであり、通常、スパッタリング処理等の物理的な蒸着処理によって形成される。かかるアモルファスシリコン層23(特にSiC製のもの)は、高抵抗であることによる優れた帯電能力を備えていると共に、耐摩耗性や耐環境性にも優れ、静電潜像やトナー像を形成させる材料として好適である。
また、アモルファスシリコン層23が炭化シリコン(SiC)製である場合、シリコン(Si)と炭素(C)との比率が特定のものである場合が好ましい。このような炭化シリカとしては、「Si1−XCX」におけるXの値が0.3〜1未満のものが好ましく、Xの値が0.5〜0.95のものがさらに好ましい。
その理由は、Xがこのような値の「Si1−XCX」は、1012〜1013Ω(オーム)という極めて高い抵抗値を有しており、かかる高抵抗であると、アモルファスシリコン層23の表面における回転方向の静電潜像の像流れが少なく、静電潜像の維持能力に優れているばかりか、耐湿性にも優れているからである。
前記帯電ローラ30は、周面が感光体ドラム20の周面(すなわちアモルファスシリコン層23)に当接された状態で、帯電ローラ用電源33からの電圧をアモルファスシリコン層23へ印加するものであり、金属製の帯電ローラ軸31と、この帯電ローラ軸31に同心で一体的に外嵌されたエラストマー等の誘電材料製の帯電ローラ本体32とからなっている。
かかる帯電ローラ30は、通常モードM1において、図2の(イ)に示すように、帯電ローラ用電源33からのプラスの電圧が帯電ローラ軸31に印加されることにより帯電ローラ本体32の周面にプラスの電荷が形成された状態で、感光体ドラム20のドラム軸21回りの時計方向へ向かう回転に従動しながら軸心回りに反時計方向に回転し、これによってアモルファスシリコン層23に一様なプラスの電荷を形成させるようになされている。
前記露光装置40は、帯電ローラ30によってアモルファスシリコン層23に形成された一様な電荷面に対して電送されてきた画像情報に基づく強弱を備えたレーザー光線を照射し、これによってドラム軸21回りに回転している感光体ドラム20の周面(アモルファスシリコン層23)にプラスの電荷が消失するか或いは極めて少なくなった静電潜像を形成させるようになっている。本実施形態においては、感光体ドラム20周面の数100Vの電荷が、レーザー光線の照射で略10Vにまで低下され、この略10Vの部分で静電潜像が形成されている。因みに、図2の(イ)では、露光装置40によって照射された感光体ドラム20の周面には、プラスの電荷を示す「+」記号を消去している。
前記現像装置50は、露光装置40によって形成された感光体ドラム20のアモルファスシリコン層23に対しトナーTを供給して静電潜像に沿ったトナー像Sを形成させるものであり、内部にトナーが装填された箱形の現像装置本体51内に周面の一部を露出させた状態で現像ローラ52が装着されてなり、現像装置本体51内に装填されたトナーT(図2において円内に「+」記号を付してトナーTを表現している)を感光体ドラム20のドラム軸21と平行な軸心回りに回転している現像ローラ52の周面からドラム軸21回りに回転している画像形成装置10のアモルファスシリコン層23に供給することによりアモルファスシリコン層23の表面にトナー像Sを形成させるものである。
現像装置本体51の感光体ドラム20周面と対向した壁面には、現像装置本体51内のトナーTを感光体ドラム20の周面に受け渡すためのトナー供給開口511が設けられ、現像装置本体51内のトナーTは、このトナー供給開口511を介し現像ローラ52の回転に応じて感光体ドラム20の周面に供給される。
前記現像ローラ52は、前記ドラム軸21と平行に配された非回転の現像ローラ軸521と、この現像ローラ軸521に同心で一体的に外嵌された固定マグネット523と、この固定マグネット523に外嵌されて現像ローラ軸521回りに駆動回転する現像スリーブ522とを備えて構成されている。前記現像スリーブ522はSUSやアルミなどの金属、導電性樹脂等によって形成されている。
かかる現像ローラ52は、現像ローラ用電源53からの電圧印加で現像スリーブ522の周面がプラスになった状態で、図略の現像ローラ用モータの駆動により現像ローラ軸521回りに反時計方向に向けて回転し、これによって現像装置本体51内のトナーTをプラスに帯電させつつ感光体ドラム20のアモルファスシリコン層23に供給するようになっている。
本実施形態においては、現像ローラ用電源53は、例えば、Vdc=160V、Vpp=1.8kV、f=2.4kHzの交番現像バイアス電圧を現像ローラ52に印加するようになされている。
そして、現像装置本体51のトナー供給開口511の上縁部には、回転に応じて現像スリーブ522の周面から用紙搬送装置20へ供給されるトナーTの厚み寸法を均一な所定のレベルに揃えるためのトナー層規制ブレード54が設けられ、トナーTは、このトナー層規制ブレード54を潜ることによって感光体ドラム20に対する過供給が防止されるようになっている。因みに本実施形態においては、このトナー層規制ブレード54と現像スリーブ522との隙間寸法(ギャップ)は、100μmに設定されている。
前記転写ローラ60は、感光体ドラム20の周面に形成されているトナー像Sの電荷の極性と反対の極性(本実施形態ではマイナスの極性)を付与することによってアモルファスシリコン層23からトナー像Sを剥がし取り、この剥がされたトナー像Sを転写ローラ60の周面とアモルファスシリコン層23との間を搬送されつつある用紙P上に転写させるものである。
かかる転写ローラ60は、感光体ドラム20のドラム軸21と平行な転写ローラ軸61と、この転写ローラ軸61に同心で一体回転可能に外嵌された転写ローラ本体62とを備えて構成され、プリンタ10が通常モードM1にモード設定された状態で、転写ローラ用電源63からのマイナスの電圧が印加されるようになっている。従って、用紙Pが転写ローラ本体62の周面と密着状態で当該転写ローラ本体62と感光体ドラム20のアモルファスシリコン層23との間を搬送されることにより、プラスに帯電したトナーTからなるトナー像Sが、マイナスに帯電した用紙Pの表面側に静電気的に吸着され、これによって感光体ドラム20の周面に形成されたトナー像Sの用紙Pへの転写が行われる。
前記クリーニング装置70は、感光体ドラム20のアモルファスシリコン層23表面のトナー像Sが用紙Pに転写された後にアモルファスシリコン層23に残留している残留トナーT1を除去するためのものである。かかるクリーニング装置70は、箱形のクリーニング装置本体71内の下部に装着された周面が感光体ドラム20の周面(アモルファスシリコン層23)と当接するクリーニングローラ72と、先端が感光体ドラム20の周面に当接するようにクリーニング装置本体71内の上部に装着されたクリーニングブレード73と備えて構成されている。
前記クリーニングローラ72は、ドラム軸21と平行なローラ軸721周りに同心で一体的に形成されている。かかるクリーニングローラ72は、弾性変形し得るとともに、優れた強靱性を有する合成樹脂材料によって形成されている。
このようなクリーニングローラ72がローラ軸回りに感光体ドラム20の周速度より速い周速度で感光体ドラム20と反対方向(図2に示す例では反時計方向)に向けて回転することにより、アモルファスシリコン層23表面を摺擦しコロナ生成物などの付着物を除去して清浄化する。
前記クリーニングブレード73は、感光体ドラム20の周面に対する仕上げの清浄化部材であり、ゴムなどの弾性材料によって板状に形成されている。かかるクリーニングブレード73は、感光体ドラム20の周面のアモルファスシリコン層23に向けて先下がりに傾斜してクリーニング装置本体71内の上部位置に装着され、若干弾性変形した状態で先端のブレード刃731がアモルファスシリコン層23に当接されている。従って、クリーニングローラ72を介してブレード刃731に到達したアモルファスシリコン層23から、クリーニングローラ72で除去し得なかった残留トナーT1が感光体ドラム20の時計方向へ向かう回転に応じて掻き落とされることになる。
そして、クリーニングローラ72およびクリーニングブレード73によって除去されたアモルファスシリコン層23の残留トナーT1は、クリーニング装置本体71内に導入されて一時貯留された後に所定の搬送手段の駆動により装置本体11(図1)内に設けられた図略の回収ボトルへ回収される。
感光体ドラム20周りがこのように構成されたプリンタ10が、図2の(イ)に示すように、用紙Pに転写処理を施す通常モードM1にモード設定された状態において、コンピュータ等から電送されてくる原稿画像の画像印字率が1.0%前後の低印字率であった場合、感光体ドラム20の周面にはごく僅かな静電潜像しか形成されていないため、当該静電潜像が現像ローラ軸521回りに回転している現像ローラ52の周面と対向した状態で、僅かな量のトナーTしか感光体ドラム20の周面に移行せず、残りのトナーTは、現像ローラ52の回転により当該現像ローラ52の周面との間で摺擦されることになる。
そして、このような低印字率の画像形成処理が継続されると、現像ローラ52周面のトナーTは、当該現像ローラ52との摺接やトナー層規制ブレード54との衝突が繰り返され、現像ローラ表面のトナーの帯電量が高くなるとともに、周辺のトナーの帯電が低下する。また、かかる物理的な外力の付加でトナー表面の外添剤が埋没又は剥離してトナーの物理的な付着力が増大するなどトナーTの品質の低下で感光体ドラム20の周面の静電潜像に向けて適正に移行しなくなり、画像濃度が低下したり、カブリ現象が生じる等の不具合が発生する。
しかも、一旦現像ローラ52の周面に品質が劣化したトナーTが堆積すると、これらが互いに団塊して解砕され難くなるため、現像ローラ52の周面には品質の劣化したトナーT(品質劣化トナーT2)のみが存在することになる。従って、その後画像印字率が通常の静電潜像が感光体ドラム20の周面に形成されていても、品質劣化のトナーTが邪魔をして正常なトナーTの感光体ドラム20周面への移行を妨害するため、原稿画像の印字率が通常であるにも拘らず正常な転写画像を得ることができなくなるという不都合が生じる。
そこで、かかる不都合を解消するために、用紙Pにおける転写画像に画像濃度の低下やカブリ現象等の異常が発生した場合(この異常は、ユーザーがプリンタ10から出力された用紙Pを視認することによって認識される)、プリンタ10の運転が、図2の(ロ)に示すようなリフレッシュモードM2に切り換えられるのである。
そして、リフレッシュモードM2においては、帯電ローラ用電源33から帯電ローラ30にプラスの電圧が印加されることにより、感光体ドラム20の周面にプラスの電荷が形成される一方、露光装置40によってリフレッシュ用に所定のドット数だけ露光され静電潜像が形成される。また、転写ローラ60には転写ローラ用電源63から電圧が印加されない状態とされる。これによって感光体ドラム20のアモルファスシリコン層23にはプラスの電荷が形成された状態になる。この状態で感光体ドラム20がドラム軸21回りに時計方向に向けて回転されると共に、現像スリーブ522が現像ローラ軸521回りに反時計方向に向けて回転される。このとき、現像スリーブ522に現像ローラ用電源53からのプラスの電圧が印加される。因みに、図2の(ロ)では、現像ローラ用電源53から現像スリーブ522に電圧が印加された状態を例示している。
そうすると、現像スリーブ522の周面に付着している品質の劣化したプラスに帯電している品質劣化トナーT2は、感光体ドラム20周面の露光部分へ静電気的引力で吸引されるため、現像スリーブ522の回転に応じて当該現像スリーブ522の周面から順次引き剥がされていき、これによって現像装置本体51内のトナーは、品質劣化トナーT2が一掃されてリフレッシュされることになる。
感光体ドラム20の周面に移った品質劣化トナーT2は、当該周面の全面に付着した印字率が100%の、いわゆる「ベタ黒」状態を現出し、これによって通常の4%〜5%の印字率の場合に比べて略20〜25倍の量の品質劣化トナーT2が現像スリーブ522の周面から感光体ドラム20の周面に移動するため、現像スリーブ522の周面に付着していた品質劣化トナーT2は、効率的に取り除かれることになる。
そして、現像ローラ52から感光体ドラム20へ移った品質劣化トナーT2は、感光体ドラム20の時計方向に向かう回転によってクリーニング装置70にまで運ばれ、ここでまず一部がクリーニングローラ72によって感光体ドラム20の周面から取り除かれ、引き続き残部がクリーニングブレード73のブレード刃731によって掻き落され、クリーニング装置本体71内に回収される。
ところで、プリンタ10に対してリフレッシュモードM2の運転を実行すると、クリーニング装置70において、感光体ドラム20の周面にベタ黒状態で付着した品質劣化トナーT2は、クリーニングブレード73のブレード刃731に阻止されることにより集積されて団塊になると、当該団塊と感光体ドラム20の周面との間の電位差が大きくなって絶縁破壊が生じ、感光体ドラム20のアモルファスシリコン層23の表面に微細な孔が黒点となって穿設されることになる。
このような黒点が一旦生じてしまうと、通常モードM1にモードを戻して用紙Pに対し通常の転写処理を施したときに、当該用紙Pに黒点が印刷されてしまい、画像不良が生じるという不都合が起る。
本発明は、このような不都合の発生を確実に抑えるようにするものであり、プリンタ10がリフレッシュモードM2にモード設定された状態で、制御手段80によって現像装置50から感光体ドラム20の周面へ供給されたトナー層により形成される電荷密度が小さくなるように制御される。換言すると、リフレッシュモードM2において品質劣化トナーT2が一度に多量に感光体ドラム20の周面に供給されてしまわないように品質劣化トナーT2の供給量が制御されるのである。
このような制御が実行されるのは、以下の理由による。すなわち、図2の(ロ)に示すように、感光体ドラム20の周面のアモルファスシリコン層23にプラスに帯電した品質劣化トナーT2の画像が形成された状態では、当該アモルファスシリコン層23が絶縁破壊に耐える電界圧(第1耐絶縁破壊電界Ep)は既知である(例えば、Ep=1.7×108V/m)。従って、クリーニングブレード73の上流側に集積してブレード刃731によって取り除かれるときの感光体ドラム20の周面に形成される品質劣化トナーT2の団塊の電界(以下、品質劣化トナー団塊電界Etという)を前記耐絶縁破壊電界Epの値未満とすれば、品質劣化トナーT2がクリーニングブレード73によって掻き取られるに際しアモルファスシリコン層23に絶縁破壊が生じることを回避することができる。
一方、リフレッシュモードM2において、図2には示さなかったが、マイナスに帯電された品質劣化トナーが感光体ドラム20の周面に付与される場合がある。この場合、品質劣化トナーが、図2の(ロ)に示す品質劣化トナーT2と逆の極性になっているが、現像装置50内のトナーTのリフレッシュに関するメカニズムは品質劣化トナーT2がプラスに帯電されている場合と同じである。そして、品質劣化トナーがマイナスに帯電された場合についてもアモルファスシリコン層23が絶縁破壊に耐える電界(第2耐絶縁破壊電界En)は既知である(例えば、En=−0.9×108V/m)。
なお、EpおよびEnの値については、アモルファスシリコン層23の仕様(どのような化合物からなるアモルファスシリコン層が採用されているのかや寸法的な特性等)によって異なるが、確認試験を実施することによって容易に得ることができる。
そして、品質劣化トナーがプラスに帯電されている場合と、マイナスに帯電されている場合とを含めクリーニングブレード73による当該品質劣化トナーの掻き取り時に感光体ドラム20のアモルファスシリコン層23で絶縁破壊が起らないようにするためには、前記品質劣化トナー団塊電界Etを、(i)式に示すように、第1耐絶縁破壊電界Epと第2耐絶縁破壊電界Enとの範囲内に収めるようにすればよい。
En<Et<Ep・・・(i)
但し、
En:第2耐絶縁破壊電界(V/m)
Et:品質劣化トナー団塊電界(V/m)
Ep:第1耐絶縁破壊電界(V/m)
ところで、品質劣化トナー団塊電界Etは、以下の(ii)式によって計算されることが知られている。
Et=qmk/(ε0εr)・・・(ii)
但し、
q:品質劣化トナーT2の単位重量当りの帯電量(C/kg)
なお、qは、品質劣化トナーT2の全帯電量Qを品質劣化トナーT2の重量Mで除することにより得ることができる(q=Q/M)。
m:アモルファスシリコン層23における品質劣化トナーT2の単位面積当りの現像量(kg/m2)
k:品質劣化トナー集積量比(−)
因みに、この品質劣化トナー集積量比kは、クリーニングブレード73の上流側近傍の感光体ドラム20周面に集積した品質劣化トナーT2の単位面積当りの重量を、感光体ドラム20の周面に現像された品質劣化トナーT2の単位面積当りの重量で除することにより得ることができる値であり、クリーニング装置70の構造および運転条件によってそれぞれ固有の値になるが、通常、10〜数100に設定されている。
ε0:真空の誘電率(F/m)
εr:感光体ドラム20のアモルファスシリコン層23の比誘電率(−)
(ii)式を(i)式に代入することにより以下の(iii)式が得られる。
En<qmk/(ε0εr)<Ep・・・(iii)。
そして、本実施形態においては、制御手段80によって感光体ドラム20の周面のアモルファスシリコン層23における品質劣化トナーT2の単位面積当りの現像量mを制御することにより、当該アモルファスシリコン層23の絶縁破壊を防止するようにしている。すなわち、品質劣化トナー現像量mを適宜制御することにより、現像装置50から感光体ドラム20の周面に供給される品質劣化トナーT2により形成される単位時間当りの電荷密度が制御される。
なお、品質劣化トナー現像量mを制御要因としたのは、前記(ii)式において、品質劣化トナーT2の単位重量当りの帯電量q、品質劣化トナー集積量比k、真空の誘電率ε0および感光体ドラム20のアモルファスシリコン層23の比誘電率εrは、プリンタ10の機種や運転方法に応じて予め設定された値を有するものであり、その値を容易に変動させることができないものであるのに対し、感光体ドラム20の周面に対する品質劣化トナーT2ーの現像量mは、露光装置40から照射される光線による露光量や露光パターンを種々変化させることにより容易に変動させることができるためである。
以下、リフレッシュモードM2において感光体ドラム20のアモルファスシリコン層23に絶縁破壊を起こさせないようにするための制御手段80による制御について図3を基に説明する。図3は、制御手段80による制御の一実施形態を示すブロック図である。図3に示すように、制御手段80は、中央演算処理装置としてのCPU(central processing unit)81と、このCPU81に付設された読み取り専用の記憶装置であるROM(read only memory)82と、CPU81に付設され一時的に発生する各種のデータを対象として読み書き自在に構成されたRAM(random access memory)83とを備えた基本構成を有している。
前記CPU81は、プリンタ10がリフレッシュモードM2にモード設定された状態で現像スリーブ522の周面に形成されている品質劣化トナーT2の単位重量当りの帯電量qを判別する品質劣化トナー帯電量判別部811と、この品質劣化トナー帯電量判別部811の判別結果に基づいて品質劣化トナー現像量mを計算する品質劣化トナー現像量計算部812と、この品質劣化トナー現像量計算部812の計算結果に基づいて計算どおりの品質劣化トナー現像量mが得られるように感光体ドラム20の周面に露光させるべく露光装置40に向けて制御信号を出力する制御信号出力部813とを備えている。
前記品質劣化トナー帯電量判別部811が品質劣化トナーT2の帯電量qを判別するために、プリンタ10の装置本体11内の適所には温湿度センサ84が設けられ、この温湿度センサ84が検出した温湿度が品質劣化トナー帯電量判別部811へ入力される一方、ROM82には種々の温湿度に対応した帯電量qが設定された帯電量テーブルが記憶されている。そして、品質劣化トナー帯電量判別部811は、温湿度センサ84の検出結果に基づいて前記帯電量テーブルを参照し、現時点における品質劣化トナーT2の単位重量当りの帯電量qを判別するようになっている。因みに、かかる帯電量テーブルが採用されるのは、品質劣化トナーT2に対する帯電処理の条件を所定の条件に設定した場合、当該品質劣化トナーT2の帯電量は、温湿度によって変動すること、およびその値が既知であるためであり、温湿度さえ検出されれば相当の精度で品質劣化トナーT2の単位重量当りの帯電量qを知ることができるのである。
前記品質劣化トナー現像量計算部812は、品質劣化トナー帯電量判別部811の判別結果に基づく品質劣化トナーT2の帯電量qと、第1および第2耐絶縁破壊電界Ep,En、品質劣化トナー集積量比k、真空の誘電率ε0並びに感光体ドラム20のアモルファスシリコン層23の比誘電率εrの各値とに基づいて、品質劣化トナー団塊電界Etが第1および第2耐絶縁破壊電界Ep,Enの範囲内に入るような品質劣化トナー現像量mを、前記(iii)式に基づいて計算するようになっている。
この計算を行うために、ROM82には、第1および第2耐絶縁破壊電界Ep,En、品質劣化トナー集積量比k、真空の誘電率ε0および感光体ドラム20のアモルファスシリコン層23の比誘電率εrの各値が記憶されており、品質劣化トナー現像量計算部812は、これらの値を読み取ると共に、先に品質劣化トナー帯電量判別部811が判別した品質劣化トナーT2の単位重量当りの帯電量qの値とから(iii)式の条件を満足するように品質劣化トナー現像量mを決定する。決定された品質劣化トナー現像量mの値は、制御信号出力部813へ向けて出力される。
前記制御信号出力部813は、品質劣化トナー現像量計算部812から入力された品質劣化トナー現像量mを確保するべく露光装置40へ向けて制御信号を出力するようになっている。本実施形態においては、品質劣化トナー現像量mが露光装置40の画像印字パターンのドット数(画像を形成する点の数)と相関関係にあることに注目し、制御信号出力部813は、これらの間に存在する所定の関係式に基づいて前記ドット数を算出した上で、露光装置40がそのドット数の光線を感光体ドラム20の周面へ照射するように露光装置40に向けて制御信号を出力するようになっている。
従って、リフレッシュモードM2において露光装置40から光線を照射された感光体ドラム20の周面には、トナーが供給されることにより従来のようにベタ黒の画像が形成されるようなことはなく、濃度が低下した前記(iii)式の条件を満足する画像が形成されるため、かかるトナー画像がクリーニング装置70で感光体ドラム20の周面から取り除かれるに際し感光体ドラム20のアモルファスシリコン層23に絶縁破壊が生じるような不都合の発生が確実に防止される。
そして、本実施形態においては、現像装置50の直下流側に感光体ドラム20の周面の品質劣化トナーT2による画像の帯電量を検出するための帯電量センサ85が設けられ、制御信号出力部813は、この帯電量センサ85が検出した検出値と品質劣化トナー団塊電界Etとの間の予め設定された関係式に基づいて品質劣化トナー団塊電界Etを算出し、この品質劣化トナー団塊電界Etが前記(i)式の条件を満足しているか否かを判別し、この条件が満足されていない場合には、満足するようにドット数を落とさせる制御信号を露光装置40に向けて出力するようになっている。
以下、図4を基にこのようなリフレッシュモードM2における制御手段80による制御のフローについて説明する。図4は、リフレッシュモードM2における制御手段80による絶縁破壊防止制御のフローの一実施形態を示すフローチャートである。まず、ステップS1において、温湿度センサ84の検出結果に基づき品質劣化トナーT2の単位重量当りの帯電量qが設定され、引き続き前記(i)式および(ii)式に基づいて感光体ドラム20の周面における品質劣化トナーT2による現像量mが計算される(ステップS2)。
ついで、この計算結果に基づき、露光装置40が照射するドット数が計算され、制御信号出力部813は、露光装置40に向けてこのドット数で感光体ドラム20へ向けて光線を照射させる制御信号が出力されるため、感光体ドラム20の周面は、計算されたドット数の静電潜像が形成された後、現像装置50からの品質劣化トナーT2の供給を受けてそのドット数の品質劣化トナーT2によるトナー像Sが形成される(ステップS3)。
この状態の感光体ドラム20の周面に形成された品質劣化トナーT2によるトナー像Sは、感光体ドラム20の回転によってクリーニング装置70のクリーニングブレード73により掻き取られることになるが、品質劣化トナー団塊電界Etが第2耐絶縁破壊電界Enと第1耐絶縁破壊電界Epとの範囲内に入っていると考えられるため、そのままリフレッシュモードM2の運転を継続してもよいが、本実施形態においては、念のためにステップS4において帯電量センサ85により検出された品質劣化トナーT2の実績帯電量qに基づく実績の品質劣化トナー団塊電界Etが前記(ii)式により計算され、この電界Et′が第2耐絶縁破壊電界Enと第1耐絶縁破壊電界Epとの範囲内に収まっていない場合(ステップS4でNO)には、露光装置40から照射される光線のドット数が修正された(ステップS5)後、ステップS4に戻される。
そして、ステップS4で実績の品質劣化トナー団塊電界Etが第1および第2耐絶縁破壊電界Ep,Enの範囲内に収まると(ステップS4でYES)、ステップS6でリフレッシュモードM2の運転が終了したか否かが判別され、終了するまで(ステップS6でYESになるまで)リフレッシュモードM2による運転が継続される。因みに本実施形態においては、リフレッシュモードM2によるプリンタ10の運転時間が予め設定されており、この時間が経過すると、自動的にリフレッシュモードM2から通常モードM1に切り換えられるようになっている。
以上詳述したように、本発明に係る画像形成装置(実施形態ではプリンタ10)は、静電潜像が形成される感光体ドラム20に現像装置50からトナーTを供給することにより当該感光体ドラム20の周面に静電潜像に沿った可視像を形成させるように構成されたものであり、現像装置50内の現像剤の劣化に応じて現像剤をリフレッシュするリフレッシュモードM2による運転が通常モードM1の運転とは別に設定可能に構成されていると共に、このリフレッシュモードM2の運転を制御する制御手段80が備えられ、制御手段80は、前記リフレッシュモードでは、現像装置50から感光体ドラム20の周面へ供給される品質劣化トナーT2の供給量を制御可能とされている。
かかる構成によれば、プリンタ10がリフレッシュモードM2にモード設定された状態で、制御手段80の制御によって現像装置50から感光体ドラム20へ移行させる品質劣化トナーT2の量を感光体ドラム20のアモルファスシリコン層23が絶縁破壊を起こさないように制御することにより、感光体ドラム20が品質劣化トナーT2からの異常な放電により絶縁破壊を起こすような不都合の発生を有効に抑制することができる。従って、絶縁破壊に起因した感光体ドラム20の傷に起因してプリンタ10が通常モードM1に設定された状態における形成された画像に黒点が発生するというような画像品質の低下を防止することができ、常に良好な画像品質を維持することができる。
また、制御手段80は、周囲の環境の温湿度情報を検出する温湿度センサ84の検出結果および画像のドット数に基づき品質劣化トナーT2の電荷密度を制御するようになされている。そして、現像剤の単位重量当りの帯電量は、温湿度によって変動しやすい。そして、当該単位重量当りの帯電量は、像担持体の周面に供給される現像剤の供給量の制御に用いられる。これにより、温湿度を、当該現像剤の供給量を制御する制御要素として好適に使用することができる。また、画像のドット数を制御することによってリフレッシュモードにおける像担持体への現像剤の供給量を容易に制御することができる。
また、前記(i)および(ii)式に基づいて、感光体ドラム20に対する品質劣化トナーT2の現像量mが計算され、しかも、リフレッシュモードM2において感光体ドラム20における品質劣化トナーT2の単位面積当りの品質劣化トナーT2の現像量mは、例えば画像のドット数を増減させることによって容易に調節することが可能であり、かかる現像量mを調節することによって感光体ドラム20が絶縁破壊しない(i)式の条件を満足させることができるため、一旦感光体ドラム20に付与された品質劣化トナーT2を感光体ドラム20から取り除くときに感光体ドラム20の周面で絶縁破壊が起らないようにすることができる。
加えて、感光体ドラム20としてドラムの基体の周面に硬い誘電材料であるアモルファスシリコン層23が積層されてなるアモルファスシリコンドラムが採用されているため、感光体ドラム20を、かかるアモルファスシリコンドラムの採用で周面に静電潜像や品質劣化トナーT2像を形成させるのに適したものにすることができる。
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下の内容をも包含するものである。
(1)上記の実施形態においては、リフレッシュモードM2の運転において感光体ドラム20の周面に形成されたベタ黒の画像は用紙Pに転写されることなく当該画像を形成しているトナーがクリーニング装置70によって感光体ドラム20の周面から回収されるようにしているが、こうする代わりに、リフレッシュモードM2においても用紙Pに対して転写処理を施すようにしてもよい。こうすることによって、リフレッシュモードM2で大量に感光体ドラム20の周面に形成されたベタ黒の画像が用紙Pに移行するため、クリーニング装置70で感光体ドラム20の周面から取り除かれるトナー量が大幅に削減されるため、クリーニング装置70で感光体ドラム20の周面のトナーを引き剥がすときに生じる感光体ドラム20周面の絶縁破壊を起り難くすることができる。
(2)上記の実施形態においては、出力された用紙Pの画像の状態を視認して画像濃度の低下やカブリが発生している場合にプリンタ10の運転を通常モードM1からリフレッシュモードM2に切り換えるようにしているが、こうする代わりに例えば5%以下の印字率での転写処理が所定回数あるいは所定時間継続された場合に、制御手段80の制御によって現在行いつつある転写処理を一時中断させた上で通常モードM1からリフレッシュモードM2に自動的に切り換えるようにしてもよい。
(3)上記の実施形態においては、画像のドット数で品質劣化トナー現像量mを決めているが、絶対数であるドット数に代えて、全ドット数に対する画像形成ドット数の割合であるドット密度を採用してもよい。