JP4731363B2 - ヒータユニット - Google Patents

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Description

本発明は、らせん状に進行する帯状体に対して真空中で加熱処理を行うヒータユニットに関するものである。
金属や合金、無機材料、合成樹脂等で構成された帯状体に対して、真空中で各種機能性薄膜の形成が行われている。その具体的な方法として、帯状体を円柱状のドラムにらせん状に巻き付け、ドラムを回転させながら成膜するドラム方式がある。しかしながら、この方法では、帯状体が長尺の場合に大規模な装置が必要になる。
そこで、巻出リールと巻取リールとの間で帯状体を走行させながら成膜するリールtoリール方式を用いると帯状体が長尺の場合でも小規模な装置でよいため実用装置として多く採用されている。このリールtoリール方式は、リール巻取り速度を上げることで容易に生産速度を上げることができるため、最も効率的な手段である。
さらにリールtoリール方式の生産性を向上させるため、一対のリール間において、らせん状に進行する帯状体に対して成膜処理を行う技術が提案されている。特許文献1には、一対のプーリー部の間に線材を複数回巻回して、線材に連続的に蒸着膜を形成する蒸着装置が提案されている。また特許文献2には、連続走行する帯状材料に表面処理を施す表面処理源と、その走行を案内する複数のロール部を軸方向に重ねて成る一対のガイドロールとを備え、これら一対のガイドロール間に帯状材料をらせん状に走行させる技術が提案されている。
特開2004−225074号公報 特開2005−113165号公報
帯状体に対する成膜処理とともに、例えば700℃以上の高温加熱処理が必要になる場合がある。このような加熱処理を行うため、ホットプレート等のブロック状のヒータユニットを用いることが考えられる。しかしながら、ブロック状のヒータユニットは熱容量が大きくなるため、加熱効率が悪く、大面積の成膜エリアを走行する帯状体を均一に高温加熱することは困難である。なお、高温加熱するためヒータユニットを走行中の帯状体に押し付けると、両者間の摩擦によって磨耗粉が発生し、この磨耗粉が帯状体に付着して、帯状体表面もしくは帯状体上に形成された膜に欠陥を生じさせることになる。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、らせん状に進行する帯状体に対して真空中で均一に高温加熱を行うことが可能なヒータユニットの提供を目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係るヒータユニットは、らせん状に進行する帯状体に対して真空中で加熱処理を行うヒータユニットであって、複数の金属線を撚り合わせた線材が前記帯状体と平行な水平面内においてつづら折り状に配置された線材ヒータと、前記線材ヒータと前記帯状体との間に配置された、赤外線透過性材料からなる前記線材ヒータの保護部材と、を備え、前記線材ヒータは、伸縮自在に支持され、前記保護部材は、伸縮自在に支持されていることを特徴とする。
この構成によれば、複数の金属線を撚り合わせた線材が帯状体と平行な水平面内においてつづら折り状に配置された線材ヒータを備えているので、ヒータユニットを帯状体に接触させなくても、帯状体を真空中で均一に高温加熱することができる。また、線材ヒータが伸縮自在に支持されているので、線材ヒータの熱変形によるヒータ線自体の破損を防止することが可能になる。さらに、線材ヒータの周辺部材の熱変形に伴って、線材ヒータが破損するのを防止することも可能になる。
また、この構成によれば、線材ヒータを成膜処理時の膜付着やプラズマ処理時のイオンダメージ等から保護することが可能になる。また、保護部材の周辺部材の熱変形に伴って、保護部材が破損するのを防止することができる。
また、前記線材ヒータと前記帯状体との間を除く前記線材ヒータの周囲には、熱反射部材が設けられていることが望ましい。
この構成によれば、線材ヒータから放射された熱を反射して帯状体に導くことが可能になり、加熱効率を向上させることができる。また、ヒータユニットの周囲に配置された部材が加熱されるのも防止することができる。
本発明のヒータユニットによれば、線材ヒータの破損を防止することが可能になり、らせん状に進行する帯状体を均一に高温加熱することができる。
以下、本発明の実施形態につき、成膜処理を行う表面処理装置を例に取り、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
(表面処理装置)
図1は、表面処理装置1の正面図である。なお図1では、紙面の上下方向をZ方向とし、左右方向をX方向とし、垂直方向をY方向としている。表面処理装置1は、可撓性を有する帯状体2に表面処理を施すものであり、表面処理前の帯状体2を供給する巻出室10と、帯状体2に表面処理を行う表面処理室30と、表面処理後の帯状体2を巻き取る巻取室20とを備えたものである。これらの巻出室10、巻取室20および表面処理室30は、それぞれターボ分子ポンプ等の排気装置を備え、内部雰囲気を0.0001Paから0.1Paまで調整しうるようになっている。
巻出室10には、帯状体2の巻出ローラ12が配置されている。この巻出ローラ12には、保護シート3で表面を被覆された表面処理前の帯状体2が収納されている。その巻出ローラ12に隣接して、共巻ローラ14が配置されている。この共巻ローラ14は、帯状体2の巻出しにより不要となった保護シート3を巻き取るものである。また巻出ローラ12の下流には、速度基準ガイドローラ16が設けられている。この速度基準ガイドローラ16は速度センサを備え、帯状体2の走行速度を検出する機能を有している。ここで検出された走行速度をもとに、巻出ローラ12および巻取ローラ22の回転速度が制御される。
一方、巻取室20の入口付近には、冷却ローラ28が設けられている。この冷却ローラは、帯状体2の巻き取り前に表面処理により高温となった帯状体2を冷却するものであり、内部に冷媒流路を備えている。その冷却ローラ28の下流には、ピックアップローラ26が設けられている。このピックアップローラ26はロードセルを備え、帯状体2の張力を検出する機能を有している。ここで検出された張力をもとに、巻出ローラ12および巻取ローラ22の回転速度が自動制御される。またピックアップローラ26の下流には、巻取ローラ22が配置されている。この巻取ローラ22は、共巻ローラ24から繰出された保護シート3で表面を被覆しつつ、表面処理後の帯状体2を巻き取るものである。なお巻取ローラ22には、モータ等の回転駆動装置が接続されている。
(表面処理室)
上述した巻出室10および巻取室20の間には、帯状体2に表面処理を行う表面処理室30が設けられている。この表面処理室30には、複数のローラ群40が設けられている。具体的には、第1ローラ群40a、第2ローラ群40b、第3ローラ群40cおよび第4ローラ群40dが、略長方形の四隅に相当する位置に設けられている。例えば、第1ローラ群40aと第2ローラ群40bとの距離および第3ローラ群40cと第4ローラ群40dとの距離が約220mm、第2ローラ群40bと第3ローラ群40cとの距離および第4ローラ群40dと第1ローラ群40aとの距離が約1000mmに設定されている。
図2は、表面処理室の底面図であり、図1のA矢視図である。なお図2では、紙面の上下方向がY方向であり、左右方向(帯状体2の進行方向)がX方向であり、垂直方向がZ方向である。ローラ群40は、複数のローラ44と、それらの回転軸となる軸体42とによって構成されている。各ローラ44は、略同一に形成されて、略等間隔に平行に配置されている。例えばローラ44は、幅14mm程度、半径100mm程度に形成されている。また軸体42は、各ローラ44の側面に対して垂直に、各ローラ44の中心を貫くように挿入されている。例えば、10個程度のローラ44が1本の軸体42により連結されて、ローラ群40が形成されている。各ローラ群40の軸体42は、相互に平行に配置されている。
図1に戻り、表面処理室30における帯状体2は、第1ローラ群40a、第2ローラ群40b、第3ローラ群40cおよび第4ローラ群40dに対して順に回し掛けられる。
図2に示すように、帯状体2は、まず各ローラ群40における−Y側端部の第1段ローラ441に回し掛けられる。次に帯状体2は、各ローラ群40における−Y側端部から2番目の第2段ローラ442に回し掛けられる。このようにして、帯状体2は、各ローラ群40における+Y側端部の第n段ローラ44nまで順に回し掛けられる。なお帯状体2の勾配が一定になるように、各ローラ群40における同一段のローラは、軸体42の軸方向にずれた状態で、異なるY方向位置に配置されている。
隣接する一対のローラ群のうち一方のローラ群40と他方のローラ群40との間には、各段ローラに回し掛けられた帯状体2が平行に配置されている。そこで、隣接する一対のローラ群のうち一方のローラ群40と他方のローラ群40との間に表面処理領域35が設定されている。これにより、表面処理領域35の略全体に帯状体2を配置して、効率的な表面処理を行うことができるようになっている。具体的には、第2ローラ群40bと第3ローラ群40cとの間に、表面処理領域35が設定されている。
図1に示すように、表面処理領域35の帯状体2と対向するように、1個または複数個(図1では2個)のEB蒸発源34が設けられている。EB蒸発源34は主に、電子ビーム照射装置と、成膜材料が充填されたハースとを備えている。その電子ビーム照射装置から電子ビームを照射してハースに入射させると、ハースに充填された成膜材料が加熱されて蒸発する。これにより蒸発した成膜材料が、対向する帯状体2に付着して、帯状体2に成膜処理が施されるようになっている。
また、成膜処理の前処理として、帯状体2をプラズマ処理することを可能とするように、EB蒸発源34の隣にはECRイオン源32が設けられている。なお成膜処理とプラズマ処理とを同時進行させるべく、表面処理領域35にプラズマが及ぶように、ECRイオン源32が配置されていてもよい。
さらに、成膜処理中の帯状体2を表面処理室30内で加熱処理するため、第2ローラ群40bと第3ローラ群40cとの間において、帯状体2の裏面に、複数(図1では2個)のヒータユニット60が整列配置されている。また、成膜処理前および成膜処理後の帯状体2を加熱処理するため、第4ローラ群40dと第1ローラ群40aとの間において、帯状体2の表面と対向するように、複数(図1では3個)のヒータユニット61が整列配置されている。このように、複数のヒータユニットを組み合わせて用いることにより、各ヒータユニットの構造を簡素化しつつ、広い範囲を加熱することが可能になる。
(ヒータユニット)
図3は、実施形態に係るヒータユニットの底面図である。本実施形態のヒータユニット60は、線材ヒータ62を備えている。この線材ヒータ62は、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)のいずれかからなる金属線を複数本(例えば3本)撚り合わせた線材により構成されている。複数本の金属線を撚り合わせることにより、各金属線の抵抗値のばらつきを平均化することができる。また、ヒータユニット60は接続箇所なく1本の線材でヒータ62を構成することにより、ヒータユニット60内の発熱分布を均一化することができる。
線材ヒータ62は、帯状体2と平行なXY平面内(水平面内)において、帯状体2の進行方向であるX方向と交差する±Y方向に支持部材64を介して繰り返し折り曲げられて、つづら折り状に成形されている。これにより、線材ヒータ62にフレキシブル性が付与されるので、線材ヒータ62自身の熱変形による歪を吸収することが可能になり、線材ヒータ62の熱変形による破損を防止することができる。なおX方向に隣接する線材ヒータ62の間隔は、例えば約15mm以下に設定されている。また線材ヒータ62の±Y方向両端の折り返し部62aは、上述した表面処理領域35の±Y方向の両端部より約30mm以上外側に配置されている。これにより、表面処理領域35に配置された帯状体2を均一に加熱することができる。
線材ヒータ62の+X方向端部は電極ボルト63aに接続され、−X方向端部は電極ボルト63bに接続されている。一対の電極ボルト63a,63bは、線材ヒータ62と同じ金属材料で構成されていることが望ましい。そして、この一対の電極ボルト63a,63bを介して線材ヒータ62に通電すると、線材ヒータ62の電気抵抗によりジュール熱が発生する。これにより、線材ヒータ62に対向配置された帯状体2を加熱しうるようになっている。
また線材ヒータ62の±Y方向両端の折り返し部62aには、線材ヒータ62の第1支持部材64が設けられている。
図4は、図3のB−B線における断面図である。図4に示すように、第1支持部材64は、線材ヒータ62の折り返し部62aの±Z方向に配置された一対のディスク66,67を備えている。このディスク66,67はアルミナ(Al)等の耐熱性を有する電気絶縁性材料で構成され、その中央部には貫通孔が形成され、その貫通孔の−Z方向からボルト68が挿入されて、ボルト68のヘッド部の+Z面にディスク66が載置されている。また、ボルト68の先端部にはナット69が螺合されている。そのナット69の−Z面が、ヒータユニット60のフレーム90の主面93に載置されている。これにより、一対のディスク66,67は、フレーム90から吊り下げ支持されている。
なおフレーム90に穿設されたボルト通し孔の直径は、ボルト68の直径よりも大きく形成されている。これにより、フレーム90に対してボルト68は水平方向に自在に移動することができる。したがって、このボルト68および一対のディスク66,67を介して、線材ヒータ62が伸縮自在に支持されている。
また線材ヒータ62のY方向の中間部には、複数(図4では2組)の第2支持部材74が設けられている。この第2支持部材74は、線材ヒータ62の±Z方向に一対のプレート76,77を配置して構成されている。一対のプレート76,77は、線材ヒータ62と同じ線材を用いて、フレーム90から吊り下げ支持されている。なお一対のプレート76,77の間隔は、線材ヒータ62の直径より若干大きく形成されている。これにより、線材ヒータ62は伸縮自在に支持されている。
図3に示すように、第2支持部材74はX方向に連続形成されている。本実施形態では、2組の第2支持部材74が、線材ヒータ62のY方向幅を約3等分する位置に設けられている。
上述した第1支持部材64および第2支持部材74により、線材ヒータ62が伸縮自在に支持されている。これにより、線材ヒータ62の熱変形によるヒータ線自体の破損を防止することができる。さらに、線材ヒータ62の周辺に配置されたフレーム90等の熱変形に伴って、線材ヒータ62が破損するのも防止することも可能である。また、線材ヒータ62からフレーム90への接触箇所からの熱伝達を抑制することが可能になり、線材ヒータ62における発熱の大部分を帯状体2の加熱に利用することができるので、加熱効率を向上させることができる。
また図3に示すように、この第2支持部材74と線材ヒータ62の折り返し部62aとの間に、線材ヒータ62の+Z方向への変形を規制する規制部材70が形成されている。本実施形態では、複数の規制部材70がX方向に一定間隔をおいて配置されている。
図4に示すように、規制部材70は、線材ヒータ62の+Z方向に配置されたパッド72を備えている。このパッド72は、アルミナ(Al)等の耐熱性を有する電気絶縁性材料で構成され、ボルト等によりフレーム90に固定されている。この規制部材70により、線材ヒータ62の+Z方向の熱変形によるフレーム90との接触を防止することが可能になり、線材ヒータ62の断線や絶縁性破壊等を防止することができる。
一方、フレーム90はステンレス等の金属材料からなり、線材ヒータ62を囲う箱状に形成されている。このフレーム90の主面93の外側には、フレーム90の熱変形を防止するためリブ91が設けられている。このリブ91は、金属材料により格子状に配置されている。このリブ91により、フレーム90の熱変形(捩れや反りなど)による線材ヒータ62との接触を防止することが可能になり、線材ヒータ62の断線や絶縁性破壊等を防止することができる。なおフレーム90の主面93には、表面処理装置1への取付部材92が設けられている。
フレーム90は、線材ヒータ62の側方を覆う側面94を備えている。
図5は、ヒータユニットにおけるフレームの側面のレイアウト図である。複数のヒータユニット60が整列配置される場合には、他のヒータユニットが隣接配置される方向以外の方向に、フレーム90の側面94が形成されている。これにより、整列配置される複数のヒータユニット60の全周に、フレーム90の側面94を配置することができる。
すなわち、図5(a)に示すように2個のヒータユニット60a,60bが整列配置される場合において、第1ヒータユニット60aのフレーム90には、第2ヒータユニット60bが隣接配置される方向以外の3方向に側面94が形成されている。また、図5(b)に示すように3個のヒータユニット60a,60b,60cが整列配置される場合において、第2ヒータユニット60bのフレーム90には、第1ヒータユニット60aおよび第3ヒータユニット60cが隣接配置される方向以外の2方向に側面94が形成されている。
図4に戻り、フレーム90の主面93および側面94の内側には、第1熱反射板(熱反射部材)96が配置されている。この第1熱反射板96は、インコネル(登録商標)等のニッケル合金やステンレスなど、耐熱性を有する厚さ1mm以下の金属板を、複数枚積層して構成されている。線材ヒータ62から放射された熱のうち、+Z方向およびXY方向に放射された熱は、上述した第1熱反射板96により−Z方向に反射される。その結果、線材ヒータ62の−Z方向に配置された帯状体2を効率よく加熱することができる。また、厚さ1mm以下の金属板によって第1熱反射板96を構成することにより、金属板の熱変形(反り)を抑制することが可能になる。これに伴って、金属板の熱変形による線材ヒータ62との接触を防止することが可能になり、線材ヒータ62の断線や絶縁性破壊等を防止することができる。
ところでヒータユニット60は、帯状体2を挟んでEB蒸発源34の反対側に配置されている。この場合、帯状体2の間を通り抜けた成膜材料が線材ヒータ62に付着して、ヒータユニット60の加熱効率を低下させるおそれがある。そこで、成膜材料の付着から線材ヒータ62を保護するため、線材ヒータ62と帯状体2との間に防着板(保護部材)80が配置されている。この防着板80は、赤外線透過性および耐熱性を有する石英等の材料によって構成されている。この防着板80によれば、線材ヒータ62による帯状体2の加熱を妨げることなく、線材ヒータ62への成膜材料の付着を防止することができる。
また防着板80は、伸縮自在に支持されている。具体的には、フレーム90の端部に固定された防着板支持部材82の水平面上に、防着板80が載置されている。これにより、防着板80自体の熱変形による破損を防止することができるとともに、フレーム90の熱変形に伴って防着板80が破損するのを防止することができる。
なおフレーム90の少なくとも1方向には、防着板支持部材82が設けられていない。図3では、フレーム90の±Y方向および−X方向に防着板支持部材82が設けられているが、+X方向には防着板支持部材82が設けられていない。この場合、成膜材料が付着した防着板80をフレーム90の+X方向から取り外して、成膜材料が付着していない防着板80と取り替えることができる。具体的には、取り外した防着板80の成膜材料を除去して再装着してもよいし、新たな防着板80を装着してもよい。これにより、ヒータユニット60の加熱効率の低下を防止することができる。
また、フレーム90の±Y方向の両端部に設けられた防着板支持部材82には、第2熱反射板の取付部材84が設けられている。
図4に示すように、その取付部材84は、帯状体2を挟んで線材ヒータ62の反対側に延設されている。その取付部材84の先端部の内側には、第2熱反射板(熱反射部材)86が配置されている。この第2熱反射板86は、第1熱反射板96と同様にインコネル(登録商標)等の耐熱性を有する厚さ1mm以下の金属板を複数枚積層して構成されている。第2熱反射板86により、帯状体2の表面処理領域35の±Y方向両端部から漏出した熱を反射することが可能になる。その結果、表面処理装置1を構成する表面処理室扉やのぞき窓ガラス、膜厚モニタ(図示しない)等が加熱されるのを防止することができる。
(表面処理方法)
次に、上記表面処理装置を使用した表面処理方法について説明する。ここでは、最終製品を超電導線材として利用するため、高耐熱耐食合金ハステロイC−276等からなる帯状体2の表面に、酸化セリウム(CeO)からなる被膜を形成する場合について説明する。なお予め帯状体の表面に、酸化マグネシウム(MgO)、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)等からなる下地膜を形成しておく。例えば帯状体として、幅10mm程度、厚さ0.1mm程度、長さ500m程度のものを採用する。
図1に示すように、上述した帯状体2の先端を、巻出室10における巻出ローラ12から繰り出し、表面処理室30における複数のローラ群40にらせん状に回し掛けて、巻取室20における巻取ローラ22で巻き取る。複数のローラ群40に対する帯状体2の周回数は、10ターン程度とする。これにより表面処理領域35が、X方向の長さ500mm程度、Y方向の長さ200mm程度に設定されている。
次に、巻取ローラ22を回転駆動することにより、帯状体2に対して徐々に張力を付与する。帯状体2の張力は、例えば10〜50N/m程度に設定する。なお巻取室20のピックアップローラ26により帯状体2の張力を検出し、検出された張力をもとに巻出ローラ12および巻取ローラ22の回転速度を自動制御する。また帯状体2の走行速度は、例えば2.5〜26.0m/h程度に設定する。なお巻出室10の速度基準ガイドローラ16により帯状体2の走行速度を検出し、検出された走行速度をもとに巻出ローラ12および巻取ローラ22の回転数を調整する。
次に、表面処理室30の内部を、例えば約6.7×10−4Pa以下まで減圧する。そして、ヒータユニット60,61を駆動し、帯状体2を最高800℃まで加熱する。具体的には、図3に示す一対の電極ボルト63a,63bを介して、線材ヒータ62に通電する。線材ヒータ62はTa、Mo、Wのいずれかの金属線を複数本撚り合わせた線材で構成されているので、電気抵抗によりジュール熱が発生する。その線材ヒータ62から放射された熱が、図4に示す防着板80を透過して、帯状体2を加熱する。なお線材ヒータ62からフレーム90に向かって放射された熱は、第1熱反射板96により帯状体2に向かって反射されるので、帯状体2を効率よく加熱することができる。
図1に戻り、帯状体2に対する表面処理領域35の直前において、ECRイオン源32を用いた前処理を行う。具体的には、ECRイオン源32からアルゴンイオンや酸素イオン等を供給して、帯状体2の表面をプラズマ処理する。
次に、表面処理領域35において、EB蒸発源34を用いた成膜処理を行う。具体的には、予めEB蒸発源34のハース内に、成膜材料として酸化セリウム(CeO)またはセリウム(Ce)を充填しておく。また必要に応じて、表面処理領域35に酸素ガスを導入する。次に、電子ビーム照射装置から電子ビームを照射してハースに入射させ、ハースに充填された成膜材料を加熱して蒸発させる。これにより蒸発した成膜材料が、対向する帯状体2に付着して、酸化セリウム(CeO2)からなる被膜が形成される。例えば、75nm・m/min程度の動的成膜速度で、厚さ2μm程度の被膜を形成する。ここで動的成膜速度とは、蒸着源の前面を基材が通過して成膜される場合に使われる単位であり、成膜中の基材の移動速度(一定速度)と、成膜領域通過後に基材に成膜された膜の厚みとを乗算したもので示される。蒸着源の前面を基材が通過して成膜される場合には、基材の通過速度が速くなると着膜量が減少するため、静的成膜速度(nm/min)より有用な単位である。なお表面処理領域35において、ECRイオン源32によるプラズマ処理と、EB蒸発源34による成膜処理とを、同時進行させてもよい。
以上に詳述したように、本実施形態に係るヒータユニットは、複数の金属線を撚り合わせた線材が帯状体と平行な水平面内においてつづら折り状に配置された線材ヒータを備えている構成とした。この線材ヒータによれば、ヒータユニットを帯状体に接触させなくても、帯状体を真空中で700℃程度の高温まで加熱することができる。その結果、ヒータユニットと帯状体との摩擦による磨耗粉が帯状体に付着するのを防止することができる。また、200mm×500mm程度の広い表面処理領域を真空中で均一に加熱することができる。
さらに、本実施形態に係るヒータユニットは、その線材ヒータが伸縮自在に支持されている構成とした。これにより、線材ヒータの熱変形によるヒータ線自体の破損を防止することが可能になる。さらに、線材ヒータの周辺部材の熱変形によって線材ヒータが破損するのを防止することも可能になる。したがって、上述した表面処理装置は、各部の熱変形を防止することが可能なヒータユニットを備えているので、帯状体を真空中で均一に長時間安定して高温加熱することができる。
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な材料や構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
例えば、本実施形態では複数のヒータユニットを組み合わせて帯状体の加熱処理を行う構成としたが、1個のヒータユニットにより帯状体の加熱処理を行ってもよい。
また、本実施形態では4個のローラ群を長方形の角部に相当する位置に設けたが、3個のローラ群を三角形の角部に相当する位置に設けてもよく、2個のローラ群を直線の両端部に相当する位置に設けてもよい。また5個以上のローラ群を多角形の角部に相当する位置に設けてもよい。
また、本実施形態では表面処理領域における帯状体の片面のみにEB蒸発源を設けて、帯状体の片面のみに成膜処理を行ったが、帯状体の両面にEB蒸発源を設けて帯状体の両面に成膜処理を行うことも可能である。
また、本実施形態では帯状体に対して垂直に成膜材料を入射させたが、帯状体に対して斜めに成膜材料を入射させることにより、液晶パネル等の傾斜配向膜を形成することも可能である。
また、本実施形態では表面処理として主に成膜処理を行ったが、これ以外の表面処理として熱処理(成膜後の熱処理も含む)や窒化処理、酸化処理、プラズマを用いた表面処理等を行うことも可能である。また複数種類の処理を同時に行うことも可能である。
表面処理装置の正面図である。 図1のA矢視図である。 ヒータユニットの底面図である。 図3のB−B線におけるヒータユニットの断面図である。 フレームの側面のレイアウト図である。
符号の説明
1…表面処理装置 2…帯状体 60…ヒータユニット 62…線材ヒータ 64…第1支持部材 74…第2支持部材 80…防着板(保護部材) 86…第2熱反射板(熱反射部材) 90…フレーム 96…第1熱反射板(熱反射部材)

Claims (2)

  1. らせん状に進行する帯状体に対して真空中で加熱処理を行うヒータユニットであって、
    複数の金属線を撚り合わせた線材が前記帯状体と平行な水平面内においてつづら折り状に配置された線材ヒータと、
    前記線材ヒータと前記帯状体との間に配置された、赤外線透過性材料からなる前記線材ヒータの保護部材と、を備え、
    前記線材ヒータは、伸縮自在に支持され
    前記保護部材は、伸縮自在に支持されていることを特徴とするヒータユニット。
  2. 前記線材ヒータと前記帯状体との間を除く前記線材ヒータの周囲には、熱反射部材が設
    けられていることを特徴とする請求項1に記載のヒータユニット。
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