JP4728506B2 - ガラス繊維成形品の成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス繊維成形品及びその成形方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ガラス繊維からマット、ボード、ペーパー等の成形品を成形する方法としては、下記のものがある。
▲1▼ フェルト成形:ガラス短繊維をバインダにより接着して結合し、フェルトマット状にまとめる方法である。
▲2▼ ニードリング:ガラス長繊維をニードルパンチ加工により絡み合わせて結合し、やや圧縮されたマット状に成形する方法である。その表面をバインダで被覆する場合もある。
▲3▼ 抄造:ガラス繊維をバインダ添加水に入れてスラリを形成し、このスラリを紙を抄くように掬い上げてから乾燥させて、ガラス繊維間をバインダにより接着して結合する方法である。
上記▲1▼〜▲3▼に使用される各バインダとしては、澱粉系、シリコン系、ゴム系等の有機バインダが一般的であり、有機バインダにシリカ系等の無機バインダを混合する場合もある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のフェルト成形、ニードリング及び抄造には、後出の表1にまとめた通りの利点と欠点とがあり、それぞれの利点を生かした用途に適用されている。しかし、成形品が高温使用に適し、かつ、種々の形状への成形の容易性があり、成形品の強度も高くなる、といった成形方法はなかった。すなわち、フェルト成形及び抄造は有機バインダを必須とするため、成形品の高温使用時に有機バインダの分解により煙が発生するとか、有機バインダによる結合力が失われて耐熱性がなくなるとかという問題があり、高温使用には適さなかった。一方、ニードリングはバインダを必須としないため、バインダ被覆をしない限りこのような問題はないが、単純板状のマットしか成形することかできないとか、飛び飛びのニードリング点による結合なので成形品の強度を高めにくいとかという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、上記課題を解決し、成形品が高温使用に適し、かつ、種々の形状への成形の容易性があり、成形品の強度も高いガラス繊維成形品及びその成形方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の方法で成形するガラス繊維成形品は、ガラス繊維が所望の圧縮形状に圧縮されるとともにガラス繊維同士の接触点が軟化点より低い温度で融着されてなる。
【0006】
また、本発明のガラス繊維成形品の成形方法は、ガラス繊維を所望の圧縮形状に圧縮するとともに軟化点より10〜100℃だけ低い温度に保持することによりガラス繊維同士の接触点を融着させた後、前記ガラス繊維を冷却することにより前記融着を固化させて前記圧縮形状を保持させる。
【0007】
ガラス繊維を構成するガラスの種類は、特に限定されないが、Aガラス、Cガラス、Eガラス、Sガラス等を例示できる。また、ガラス繊維に、ガラス繊維以外の耐熱性無機繊維(セラミックファイバー、シリカファイバー、ロックウール等)又は耐熱性金属繊維(ステンレス鋼、クロム−ニッケル系合金、高ニッケル合金、高コバルト合金等の繊維)を混合することもできる。ガラス繊維の繊維径は、特に限定されないが、1〜30μmが好ましい。
【0008】
前記温度を「軟化点より10〜100℃だけ低い温度」としたのは、この範囲の上限より高い温度ではガラス繊維が溶融しすぎて固まり状に収縮してしまうおそれがあり、この範囲の下限より低い温度ではガラス繊維の粘度が高すぎて融着しにくくなるからである。より好ましくは「軟化点より20〜80℃だけ低い温度」であり、さらに好ましくは「軟化点より30〜60℃だけ低い温度」である。
【0009】
「軟化点より10〜100℃だけ低い温度」は、ガラス繊維を構成するガラスの粘度の観点からして「粘度が5×107 P〜109 Pとなる温度」と置き換えることもできる。粘度が5×107 Pより低くなるとガラス繊維が溶融しすぎて固まり状に収縮してしまうおそれがあり、粘度が109 Pより高くなると融着しにくくなるからである。より好ましくは「粘度が6×107 P〜8×108 Pとなる温度」であり、さらに好ましくは「粘度が7×107 P〜5×108 Pとなる温度」である。
【0010】
ここで、ガラス繊維同士の接触点が融着するメカニズムを説明する。ガラス繊維は非晶質であるため、結晶質の物質が持っている融点は持たず、温度を上げていったとき、連続的に粘度が低下していき、液体へ移行してゆく。一般に、ガラスの軟化点とは粘度4.5×107 P(logη=7.65)のときの温度をいい、ガラスを成形できる下限温度とされている。本発明の成形方法は、このように連続的に変化するガラスの粘度を利用し、ガラスの粘度が4.5×107 Pよりやや低いときに、ガラス繊維同士が互いの接触点で融着を起こす現象を利用している。現象的には、セラミックスの焼結よりも、むしろ樹脂の成形の方が本メカニズムに近いと思われる。
【0011】
前記「軟化点より10〜100℃だけ低い温度」あるいは前記別範囲の各温度に保持する時間は、その範囲内における温度の高低によって異なり、温度が高い場合には短くし(例えば1〜20分)、温度が低い場合には長くする(例えば15〜50分)。また、同時間は、圧縮形状・寸法によっても異なり、例えば厚さが大きくて熱が内部にまで伝わりにくい場合には長くする。
【0012】
圧縮形状としては、特に限定されないが、板状(平板状のみならず、湾曲板状、波板状等も含む)、棒状、ブロック状等を例示できる。
【0013】
圧縮の方法は、特に限定されないが、例えば板状に圧縮する場合には、マット状のガラス繊維を挟み板により挟んで所望の板状に圧縮する方法を例示できる。このマット状のガラス繊維としては、特に限定されないが、ガラス繊維をニードリングしてなるニードルマットが、すでにある程度圧縮されている点で好ましい。
【0014】
圧縮の荷重は、特に限定されず、ごく軽くてもよいが、圧縮率が大きく高比重(高密度)のものを成形するときには荷重を大きくする必要がある。
【0015】
また、「ガラス繊維を所望の圧縮形状に圧縮する」ことと、「軟化点より10〜100℃だけ低い温度」あるいは前記別範囲の各温度に保持することとは、いずれを先に行ってもよいし、あるいは同時に行ってもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明を具体化したガラス繊維ボード及びその成形方法の実施形態について説明する。
[第一実施形態]
図1(a)に示すように、Eガラスよりなるガラス繊維をニードリングしてなるニードルマット1(厚さ10mm、繊維径5μm、密度100kg/m3 、バインダ不使用)を3枚重ねて合計厚さ30mmとし、これを200mm角×数mm厚のステンレス鋼(SUS304)よりなる上下一対の挟み板2で挟んだ。
【0017】
次に、図1(b)に示すように、上側の挟み板2の上に重り3を乗せて荷重をかけ、490Pa(5g/cm2 )の圧力を生じさせた。3枚のニードルマット1は圧縮されて厚さが減少したが、両挟み板2の周縁間に高さ10mmのストッパ4をセットしたので、該ストッパ4で厚さの減少が規制されて、結局、3枚のニードルマット1は厚さ10mmの圧縮板状となった。この挟み板2間に圧縮されたニードルマット1を、電気炉5に入れてヒーター6により加熱し、Eガラス繊維の軟化点840℃より60℃低い780℃に30分保持することにより、ガラス繊維同士の接触点を融着させた。なお、ニードルマット1に熱を下方からもよく回すために、下側の挟み板2を電気炉5の内底面から浮かせるためのゲタ7を使用した。
【0018】
上記30分の保持後、挟み板2間に圧縮されたニードルマット1を電気炉5から取り出して室温で自然冷却することにより、前記融着を固化させて前記圧縮板状を保持させたところ、図1(c)に示すようなボード厚さ10mm、密度300kg/m3 のガラス繊維ボード8が成形された。
【0019】
なお、挟み板2の材質は、ステンレス鋼に限定されず、例えばセラミックス(アルミナ、SiC等)でもよい。挟み板2の面積が小さい場合には、材質の自由度が高いが、挟み板2の面積の大きい場合には、ステンレス鋼では熱膨張による反りが発生して成形しにくくなるため、その問題が少ないセラミックスが好ましい。
【0020】
なお、本実施形態における温度条件としては、Eガラスの軟化点840℃よりも30〜60℃低い温度に10〜30分保持することが好ましい。例えば810℃で長時間保持すると、ボード厚さがストッパ4の高さ以下になってしまうおそれがあるため、各要求するサイズに対応した温度と保持時間とが必要である。その他、例えばCガラスよりなるガラス繊維の場合には、軟化点760℃よりも30〜60℃低い温度(例えば700℃)に10〜30分保持することが好ましい。
【0021】
[第二実施形態(図示略)]
Eガラスよりなるガラス繊維をニードリングしてなるニードルマット(厚さ20mm、繊維径9μm、密度150kg/m3 、バインダ不使用)を3枚重ねて合計厚さ60mmとし、これを600mm×1000mmの高耐熱性ガラスよりなる上下一対の挟み板で挟んだ。
【0022】
次に、上側の挟み板の上に重りを乗せて荷重をかけ、137Pa(1.4g/cm2 )の圧力を生じさせた。3枚のニードルマットは圧縮されて厚さが減少したが、両挟み板の周縁間に高さ30mmのストッパをセットしたので、該ストッパで厚さの減少が規制されて、結局、3枚のニードルマットは厚さ30mmの圧縮板状となった。この挟み板間に圧縮されたニードルマットを、灯油燃料のバーナー炉(バーナーハース)により加熱し、780〜810℃(最高で810℃)に15分保持することにより、ガラス繊維同士の接触点を融着させた。
【0023】
上記30分の保持後、挟み板間に圧縮されたニードルマットをバーナー炉から取り出して室温で自然冷却することにより、前記融着を固化させて前記圧縮板状を保持させたところ、ボード厚さ30mm、密度300kg/m3 のガラス繊維ボードが成形された。
【0024】
以上のような本成形方法を「融着成形」と呼ぶこととし、その利点及び欠点を前記従来の各成形方法と対比させて次の表1にまとめた。
【0025】
【表1】
【0026】
ここで、「単純形状」とは板状、棒状、ブロック状等の単純形状への成形の容易性をいい、「複雑形状」とは箱状、管状等の複雑形状への成形の容易性をいう。また、「耐熱性」とはガラス繊維自体の耐熱性ではなく、ガラス繊維及び他素材を総合した成形品としての耐熱性をいう。ガラス繊維に樹脂等の有機分を加える必要のあるものは有機分の耐熱性が成形品の耐熱性を決めてしまう。
【0027】
融着成形の利点は次の通りである。
▲1▼ 成形に乾燥等の工程が無く、きわめて単純な成形方法である。
▲2▼ 治具さえよければ、比較的簡単に大型(大面積)のボードができる。
▲3▼ 有機分を全く含まないので、高温使用時に煙が出ない。
▲4▼ 表面の軟らかさや比重(密度)の変更が条件設定で容易にできる。
【0028】
融着成形の欠点は次の通りである。
▲1▼ 箱状、管状等の複雑形状への成形や、表面に大きな凹凸を賦形することが難しい。
【0029】
この融着成形によるガラス繊維ボードの用途は、特に限定されないが、各種断熱容器、各種熱機器等に使用される断熱材(特に断熱コア材)に好適である。現時点では、400℃前後で使用する真空断熱容器の断熱コア材、−20〜80℃で使用する真空断熱コア材(例えば魔法瓶の真空断熱コア材)が予定されており、主に上記の利点▲3▼を生かした用途である。その他、ケイカル板やセラミックボードが使用されている用途であって、かつ最高500℃位までの用途に適している。
【0030】
なお、本発明は前記実施形態の構成に限定されず、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)ニードルマット1の枚数を1枚にし又は重ね枚数を2枚若しくは4枚以上にすること。
(2)種類の異なるニードルマット1を重ねること。
【0031】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明に係るガラス繊維成形品の成形方法によれば、成形品が高温使用に適し、かつ、種々の形状への成形の容易性があり、成形品の強度も高くなるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るガラス繊維ボード及びその成形方法を示す説明図である。
【符号の説明】
1 ニードルマット
2 挟み板
3 重り
4 ストッパ
5 電気炉
6 ヒーター
7 ゲタ
8 ガラス繊維ボード
Claims (4)
- ガラス繊維を所望の圧縮形状に圧縮するとともに軟化点より10〜100℃だけ低い温度に保持することによりガラス繊維同士の接触点を融着させた後、前記ガラス繊維を冷却することにより前記融着を固化させて前記圧縮形状を保持させるガラス繊維成形品の成形方法。
- ガラス繊維を所望の圧縮形状に圧縮するとともに粘度が5×107 P〜109 Pとなる温度に保持することによりガラス繊維同士の接触点を融着させた後、前記ガラス繊維を冷却することにより前記融着を固化させて前記圧縮形状を保持させるガラス繊維成形品の成形方法。
- マット状のガラス繊維を挟み板により挟んで所望の板状に圧縮する請求項1又は2記載のガラス繊維成形品の成形方法。
- マット状のガラス繊維は、ガラス繊維をニードリングしてなるニードルマットである請求項3記載のガラス繊維成形品の成形方法。
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