JP4726812B2 - 有害微量元素溶出抑制方法 - Google Patents

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Description

本発明は、石炭火力発電システムにおいて燃料となる石炭の燃焼残渣からの有害微量元素の溶出を抑制する有害微量元素溶出抑制方法に関する。
石炭火力発電システムにおいて石炭を燃焼させる方法としては種々の方式があるが、なかでも、石炭を微粉砕した粒子を炉内に吹き込んで燃焼させる、いわゆる微粉炭燃焼が主に採用されている。そして、燃焼後の残渣となる石炭灰は、資源の有効利用の観点から、コンクリートや土壌改良材等の土木建築材料として一部が使用されているが、余剰分については埋め立て処分されている。
ところで、燃料となる石炭は炭素以外にも、ホウ素、フッ素、セレン、ヒ素、六価クロム等の有害な元素を微量ながら含んでいる。このため、環境への配慮から、石炭灰からの有害微量元素の溶出について、その許容濃度が法律で規定されている。しかしながら、日本が輸入する石炭種は、年間100炭種以上あり、それらのすべてが、上記の規制値を満足するわけではない。このため、石炭灰に含まれている有害微量元素の溶出濃度を規制値以下に低減するための技術が検討されている。
例えば、石炭灰にキレート剤等の微量元素溶出防止剤を添加する方法や、石炭灰をセメント等により固化処理する方法が行われている(特許文献1から3参照)。
更に、特許文献4には、石炭を燃焼炉(A)で燃焼し、その排ガスを電気集塵器で処理し、得られた集塵灰を燃焼炉(B)で、石炭を主燃料とし、カルシウム源を加えて再度燃焼した焼却灰の、平成15年環境庁告示第18号に基づく溶出試験方法によるホウ素量を1.0mg/l以下にする燃焼灰の処理方法が開示されている。この処理方法によれば、石炭灰を、カルシウム源を添加できる燃焼炉で再度燃焼することによって、焼却灰に含まれるホウ素の溶出を抑制することができるので、土壌改良剤としての環境への影響もなく利用できるとされている。
特開2003−164886号公報 特開2003−200132号公報 特開2002−194328号公報 特開2005−134098号公報
しかしながら、特許文献1から特許文献3に記載の従来技術は、燃焼残渣である石炭灰に添加剤を加えることで有害微量元素の溶出濃度を低減するものである。この場合、石炭灰に添加剤を加えて混合するための設備として、サイロ、水タンク、混合装置等が大規模に必要となり、処理コストが高騰し、設備スペースも新たに必要となるという問題がある。
また、特許文献1から特許文献3に記載の従来技術では重金属の溶出防止は検討されているものの、ホウ素やフッ素等の軽元素の溶出防止についての検討が不充分であった。
特許文献4に記載の処理方法については、燃焼炉で得られた集塵灰を石灰石等と共に再度、燃焼させるものであって、集塵灰の処理コストが高くなる可能性が高い。更に、石灰石を添加する手段については、明らかにされておらず、追加の設備等を要する可能性がある。また、特許文献4に記載の処理方法においては、石炭灰処理時の燃焼温度は700℃から900℃と低く、高温の炉においては好適に実施することができない。加えて、この処理方法は、微粉炭燃焼炉等においても、好適に実施することができない。また、溶出防止の対象となる元素がホウ素に限られており、微量金属一般の溶出防止方法として用いることができるものではない。
また、燃焼炉へのカルシウム成分の投入は、石炭灰の融点の低下を招き、燃焼炉の壁面に石炭灰が付着する障害を起こすことが知られており、石灰石の燃焼炉への投入に際しては、このような問題を解決する必要があった。
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、多額の初期投資が不要で、大規模な追加設備を必要としない、石炭火力発電システムにおける石炭の燃焼残渣からの有害微量元素の溶出を抑制する有害微量元素溶出抑制方法であって、燃焼炉の機能を害さずに、有害微量元素の溶出を十分に抑制する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、石炭火力発電システムにおいて、前記石炭又はこれを燃焼させる燃焼炉内に生石灰、石灰石、消石灰からなる群より選ばれる少なくとも一種の石炭添加用溶出防止剤を、場所を振り分けて添加したとき、燃焼炉への障害を最小限に抑えつつ、石炭の燃焼残渣からの有害微量元素の溶出を抑制できることを見出し、本願発明を完成するに至った。
(1) 石炭火力発電システムにおいて燃料となる微粉状の石炭を燃焼させたときに生じる燃焼残渣から、有害微量元素の溶出を抑制する有害微量元素溶出抑制方法であって、前記石炭又はこれを燃焼させる燃焼炉内に、生石灰、石灰石、消石灰からなる群より選ばれる少なくとも一種の石炭添加用溶出防止剤を、燃焼部と、当該燃焼部の下流部と、に分配して添加し、前記石炭は、空気を吹き付けて前記燃焼部に供給され、前記石炭添加用溶出防止剤は、前記燃焼部へ燃焼用空気とともに投入されることを特徴とする有害微量元素溶出抑制方法。
生石灰、石灰石、消石灰からなる群より選ばれる少なくとも一種の石炭添加用溶出防止剤を石炭、又は燃焼炉に添加する際、燃焼部に所定量以上の石炭添加用溶出防止剤を添加した場合には、石炭灰の融点が低下して溶融した石炭灰が燃焼炉の壁面に付着するという障害を起こす。(1)に記載の発明によれば、石炭添加用溶出防止剤を燃焼部と、燃焼部の下流部と、に分配して添加するので、燃焼部への添加量を抑えつつ、溶出防止に必要とされる量の石炭添加用溶出防止剤を添加することができる。
ここで、「燃焼部」とは、燃焼炉内において、実際に微粉炭が燃焼する部位を指し、具体的には、バーナーゾーン近傍を指す。また、「燃焼部の下流部」とは、ボイラ内の熱交換ユニット近傍を指すものとし、具体的には、過熱器、再熱器、及び節炭器の近傍を指すものとする。本願において、燃焼部と燃焼部の下流部は非連続的なものであるものとする。
(2) 前記燃焼部に添加する前記石炭添加用溶出防止剤1質量部に対し、前記燃焼部の下流部に添加する前記石炭添加用溶出防止剤を0.1質量部以上30質量部以下で添加することを特徴とする(1)に記載の有害微量元素溶出抑制方法。
(2)に記載の発明によれば、燃焼部の下流部に添加する石炭添加用溶出防止剤の添加量が、燃焼部に添加する石炭添加用溶出防止剤の0.1倍以上30倍以下であるため、燃焼部に石炭添加用溶出防止剤を添加しすぎることがなく、燃焼炉に傷害を起こすことを防止することができる。
(3) 前記燃焼部において、前記石炭100質量部に対して、前記石炭添加用溶出防止剤を0.3質量部以上10質量部以下の範囲で添加することを特徴とする(1)又は(2)に記載の有害微量元素溶出抑制方法。
(3)に記載の発明によれば、石炭100質量部に対し、燃焼部において添加する石炭添加用溶出防止剤の添加量が0.3質量部以上であるため、石炭添加用溶出防止剤を添加する効果を有効に得ることができる。また、石炭添加用溶出防止剤の添加量が10質量部以下であるため、石炭添加用溶出防止剤を添加しすぎることによる燃焼炉への影響を最小限に抑えることができる。
(4) 前記燃焼部の下流部において、前記石炭100質量部に対して、前記石炭添加用溶出防止剤を0.3質量部以上10質量部以下の範囲で添加することを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の有害微量元素溶出抑制方法。
(4)に記載の発明によれば、石炭100質量部に対して、燃焼部の下流部に添加する石炭添加用溶出防止剤の添加量が0.3質量部以上であるため、石炭添加用溶出防止剤を添加する効果を有効に得ることができる。また、石炭添加用溶出防止剤の添加量が10質量部以下であるため、石炭添加用溶出防止剤を溶出防止効果に必要とされる量を超えて添加することがなく、経済的である。
(5) 前記燃焼部の温度が1300℃以上1500℃以下であり、前記燃焼部の下流部が850℃以上1000℃以下であることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の有害微量元素溶出抑制方法。
石炭中の鉱物組成にも依るが、一般に、燃焼部の温度が1000℃を超えるとき、石炭添加用溶出防止剤を添加した石炭灰の溶融が起こることが知られている。(5)記載の発明によれば、燃焼部の温度が1300℃以上1500℃以下となるので、燃焼部への石炭添加用溶出防止剤の添加量を抑えることにより、燃焼炉への影響を最小限に抑えることができる。一方、燃焼部の下流部の温度が850℃以上1000℃以下であるので、この部分に石炭添加用溶出防止剤を添加しても石炭灰の溶融が起こらず、燃焼炉に障害を起こさない。
(6) 前記石炭火力発電システムが微粉炭燃焼方式の発電システムであり、前記燃焼部が、石炭を燃焼させるバーナーゾーン、及び当該バーナーゾーンの下流に設けられ、前記バーナーゾーンで発生した燃焼ガスの保有する熱を利用してボイラ給水を予熱する熱交換ユニットを有する燃焼ボイラであることを特徴とする(1)から(5)のいずれかに記載の有害微量元素溶出抑制方法。
(6)に記載の発明によれば、石炭添加用溶出防止剤を燃焼ボイラ、石炭供給部、微粉炭生成部に添加することができる。このような添加を行う場合には、新たな設備の追加を最小限に抑えることができるので、既存の設備を有効に利用しながら、有害微量元素の溶出を防止することができる。
(7) 前記石炭火力発電システムが微粉炭燃焼方式の発電システムであり、前記燃焼部の下流部が、燃焼ボイラの下流に配置される前記熱交換ユニット付近であることを特徴とする(1)から(6)のいずれかに記載の有害微量元素溶出抑制方法。
(7)に記載の発明によれば、石炭添加用溶出防止剤を燃焼ボイラの下流に設置される熱交換ユニット付近に添加することができる。このような添加を行う場合には、新たな設備の追加を最小限に抑えることができるので、既存の設備を有効に利用しながら、有害微量元素の溶出を最小限に抑えることができる。
本発明によれば、石炭添加用溶出防止剤を燃焼部と、燃焼部の下流部と、に分配して添加するので、燃焼炉への影響を最小限に抑えつつ、有害微量元素の溶出を抑制することができる。更に、本発明の方法は、既存の設備を有効に利用するものであるので、多額の設備投資を行うことなく、有害微量元素の溶出を抑制することができる。
<A:石炭火力発電システムにおける微粉炭燃焼施設の構成>
以下、本発明の一例を示す実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、石炭火力発電システムにおける微粉炭燃焼施設1を示すブロック図である。ここで、図1に示すように、微粉炭燃焼施設1は、石炭を供給する石炭供給部12と、供給された石炭を微粉炭にする微粉炭生成部14と、微粉炭を燃焼させてボイラ給水を過熱する火炉161と、微粉炭の燃焼により生成された石炭灰を処理する石炭灰処理部18と、を備える。火炉161は、微粉炭を燃焼する微粉炭燃焼部16と、微粉炭を燃焼させることにより生じた熱でボイラ給水を過熱するための第一の熱交換部16bと、第一の熱交換部16bを通過した排ガスに含まれる熱でボイラ給水を予熱するための第二の熱交換部16dと、からなる。また、図2は、微粉炭燃焼部16における火炉161付近の拡大図である。
<A−1:石炭供給部>
石炭供給部12は、石炭を貯蔵する石炭バンカ121と、この石炭バンカ121に貯蔵された石炭を供給する給炭機122と、を備える。石炭バンカ121は、給炭機122へ供給する石炭を貯蔵する。給炭機122は、石炭バンカ121から供給された石炭を連続して石炭微粉炭機141へ供給するものである。また、この給炭機122は、石炭の供給量を調整する装置を備えており、これにより、石炭微粉炭機141に供給される石炭量が調整される。また、これら石炭バンカ121と給炭機122との境界には石炭ゲートが設けられており、これにより、給炭機からの空気が石炭バンカへ流入するのを防いでいる。
<A−2:微粉炭生成部>
微粉炭生成部14は、石炭を微粉炭燃焼が可能な微粉炭にする石炭微粉炭機141(ミル)と、この石炭微粉炭機141に空気を供給する空気供給機142と、を備える。
石炭微粉炭機141は、給炭機122から給炭管を介して供給された石炭を、微細な粒度に粉砕して微粉炭を形成すると共に、この微粉炭と、空気供給機142から供給された空気とを混合する。このように、微粉炭と空気とを混合することにより、微粉炭を予熱及び乾燥させ、燃焼を容易にする。形成された微粉炭には、エアーが吹きつけられて、これにより、微粉炭燃焼部16に微粉炭を供給する。
石炭微粉炭機141の種類としては、ローラミル、チューブミル、ボールミル、ビータミル、インペラーミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく微粉炭燃焼で用いられるミルであればよい。
<A−3:微粉炭燃焼部>
火炉161に備えられる微粉炭燃焼部16は、微粉炭生成部14で生成された微粉炭を燃焼するバーナーゾーン161a’と、このバーナーゾーン161a’を加熱する加熱機162(熱交換ユニット)と、バーナーゾーン161a’に空気を供給する空気供給機163と、を備える。
バーナーゾーン161a’は、加熱機162(熱交換ユニット)により加熱されて、石炭微粉炭機141から微粉炭管を介して供給された微粉炭を、空気供給機163から供給された空気と共に燃焼する。微粉炭燃焼部16において生じた石炭灰と排ガスは第一の熱交換部16b、第二の熱交換部16dへと順次送られ、最終的には石炭灰処理部18に排出される。
<A−4:第一の熱交換部>
火炉161に備えられる第一の熱交換部16bは、第一の過熱器161bと第二の過熱器161cとからなり、バーナーゾーン161a’の下流に配置されており、ボイラ給水を流通することができる構造となっている。微粉炭燃焼部16において、微粉炭を燃焼することによって発生した排ガスと石炭灰は、空気供給機163により供給される空気と共に火炉161内を上昇する。排ガスが第一の過熱器161bと第二の過熱器161cとの付近を通過する際に、排ガスに含まれる熱がボイラ給水を加熱する。これにより排ガスからボイラ給水への熱交換がなされる。
<A−5:第二の熱交換部>
火炉161に備えられる第二の熱交換部16dは、一次節炭器161dと二次節炭器161eとからなり、第一の熱交換部16bの下流に配置されており、ボイラ給水を流通することができる構造となっている。微粉炭燃焼部16において、微粉炭を燃焼することによって発生した排ガスと石炭灰は、上述のように第一の熱交換部16b付近を通過し、次いで第二の熱交換部16d付近に達する。第二の熱交換部16d付近においては、排ガス中に残留した熱が、一次節炭器161d及び二次節炭器161eによって排ガスからボイラ給水へと熱交換される。これによりボイラ給水が予熱される。
図2を参照して、火炉161について更に詳しく説明すると、図2において、火炉161は全体として略逆U字状をなしており、図中矢印に沿って燃焼ガスが逆U字状に移動した後、二次節炭器161eを通過後に、再度小さくU字状に反転し、火炉161の出口(図2における矢印の最後)は、図1における脱硝装置181、集塵機182に接続されている。本実施形態に係る微粉炭燃焼施設1においては、火炉161の高さは30mから70mであり、排ガスの流路の全長は300mから1000mに及ぶ。
バーナーゾーン161a’は火炉161の下方に設けられており、この付近に微粉炭を燃焼するためのバーナ161aが配置されている。また、第一の過熱器161b(熱交換ユニット)は火炉161内のU字頂部付近に配置されており、第二の過熱器161c(熱交換ユニット)は第一の過熱器161bに続いて配置されている。更に、一次節炭器161d(熱交換ユニット)、二次節炭器161e(熱交換ユニット)は、第二の過熱器161cの終端付近以降に2段階で設けられている。ここで、節炭器(ECOとも呼ばれる)は、燃焼ガスの保有する熱を利用してボイラ給水を予熱するために設けられた伝熱面群である。
<A−6:石炭灰処理部>
石炭灰処理部18は、微粉炭燃焼部16から排出された排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置181と、排ガス中の煤塵を除去する集塵機182と、この集塵機182で収集された石炭灰を一時貯蔵する石炭灰回収サイロ183と、を備える。
脱硝装置181は、排ガス中の窒素酸化物を除去するものである。すなわち、比較的高温(300〜400℃)の排ガス中に還元剤としてアンモニアガスを注入し、脱硝触媒との作用により排ガス中の窒素酸化物を無害な窒素と水蒸気に分解する、いわゆる乾式アンモニア接触還元法が好適に用いられる。
集塵機182は、排ガス中の石炭灰を電極で収集する装置である。この集塵機182により収集された石炭灰は、石炭灰回収サイロ183に搬送される。また、石炭灰が除去された排ガスは、図示しない脱硫装置を介した後に煙突から排出される。
石炭灰回収サイロ183は、集塵機182により収集された石炭灰を一時貯蔵する設備である。
<B:本発明の有害微量元素溶出抑制方法>
本発明の有害微量元素溶出抑制方法は、石炭火力発電システムにおいて燃料となる石炭を燃焼させたときに生じる燃焼残渣から、有害微量元素の溶出を抑制する有害微量元素溶出抑制方法であって、石炭又は燃焼炉内に生石灰、石灰石、消石灰からなる群より選ばれる少なくとも一種の石炭添加用溶出防止剤を、微粉炭燃焼部16又はその上流部と、微粉炭燃焼部16の下流部と、に分配して添加することを特徴とする有害微量元素溶出抑制方法であるが、これを、上記の微粉炭燃焼施設1を用いて説明する。
有害微量元素溶出抑制方法は、石炭を供給する石炭供給工程S10と、供給された石炭を粉砕して微粉炭を生成する微粉炭生成工程S20と、この微粉炭を燃焼して排ガスと石炭灰を生成する微粉炭燃焼工程S30と、排ガスからボイラ給水に熱交換を行う第一の熱交換工程S40及び第二の熱交換工程S50と、石炭灰を集塵しこれを収容する石炭灰処理工程S60とを含み、これら各工程は、それぞれ、上述の微粉炭燃焼施設1の石炭供給部12、微粉炭生成部14、微粉炭燃焼部16、第一の熱交換部16b、第二の熱交換部16d、及び石炭灰処理部18、において行われる。そして、本発明の特徴である石炭添加用溶出防止剤添加工程S70は、上記の石炭供給部12若しくは微粉炭生成部14又は微粉炭燃焼部16と、第一の熱交換部16b又は第二の熱交換部16dとの両方に行われる。
<石炭供給工程S10>
まず、石炭供給工程S10では、石炭バンカ121に貯蔵された石炭が、給炭機122により、石炭微粉炭機141に供給される。なお、この石炭微粉炭機141に供給される石炭は、具体的には瀝青炭、亜瀝青炭、又は褐炭等であるが、これらの石炭に限定されるものではなく微粉炭燃焼が行える石炭であればよい。
<微粉炭生成工程S20>
次に、微粉炭生成工程S20では、給炭機122から供給された石炭が石炭微粉炭機141により粉砕されて、これにより、微粉炭が生成される。生成された微粉炭は、火炉161に供給される。このとき、この微粉炭生成工程で粉状に形成された微粉炭の平均の粒度は、微粉炭燃焼で一般的に用いられる粒径範囲であればよく、一般的には、74μmアンダー80wt%以上の粉砕度である。なお、この範囲は石炭添加用溶出防止剤が添加された場合にも適用できる。
<微粉炭燃焼工程S30>
次に、微粉炭燃焼工程S30では、石炭微粉炭機141で生成された微粉炭が、火炉161により燃焼される。図2に示すように、バーナーゾーン161a’においては微粉炭が燃焼されるが、このときの温度は1300℃から1500℃に及び、燃焼によって生成される石炭灰は、排ガスと共に矢印の方向に沿って上昇する。
<第一の熱交換工程S40>
第一の熱交換工程S40は、微粉炭燃焼工程S30において生じた排ガスが、第一の過熱器161b、第二の過熱器161c(熱交換ユニット)を通過することにより行われる。この第一の過熱器161b、第二の過熱器161c付近では、排ガスの温度は850℃から900℃前後に維持されており、排ガスの保有する熱を利用してボイラ給水が過熱・気化される。第一の過熱器161b、第二の過熱器161cを通過した排ガスは、節炭器に送られる。
<第二の熱交換工程S50>
第二の熱交換工程S50は、第一の過熱器161b、第二の過熱器161cを通過した排ガスが、一次節炭器161d、二次節炭器161e(熱交換ユニット)を順次通過することにより行われる。この節炭器付近は、排ガスの温度は450℃から500℃前後に維持されており、この排ガスの保有する熱を利用してボイラ給水が予熱される。排ガスがバーナーゾーンから節炭器付近まで到達するまでに要する時間は、おおむね5秒から10秒である。そして、その後、後段の脱硝装置181、集塵機182に送られる。この微粉炭燃焼工程で生成される石炭灰は、通常、その平均の粒度が1μmから100μmの範囲内の粉末状である。
<石炭灰処理工程S60>
石炭灰処理工程S60においては、微粉炭を燃焼することにより生成された石炭灰が、排ガスと共に脱硝装置181に排出され、集塵機182を経て石炭灰回収サイロ183に送られる。この集塵機182は複数段設けられていることが好ましい。
<石炭添加用溶出防止剤添加工程S70>
本発明の特徴である石炭添加用溶出防止剤を添加する工程である石炭添加用溶出防止剤添加工程S70は、図1に示すように、石炭供給部12若しくは微粉炭生成部14又は微粉炭燃焼部16のいずれか(微粉炭燃焼部16又はその上流)と、第一の熱交換部16b又は第二の熱交換部16dのいずれか(微粉炭燃焼部16の下流)とに対して行われる(それぞれ、図1におけるS71a若しくはS71b又はS72及びS73又はS74)。微粉炭燃焼部16の下流に添加する石炭添加用溶出防止剤の添加量は、微粉炭燃焼部16又はその上流に添加する石炭添加用溶出防止剤の添加量1質量部に対し、0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。この場合、微粉炭燃焼部16又はその上流部に石炭添加用溶出防止剤を添加しすぎることがなく、火炉161に障害を引き起こすことを防止することができる。
[微粉炭燃焼部の上流又は微粉炭燃焼部への添加]
石炭供給部12若しくは微粉炭生成部14又は微粉炭燃焼部16において、石炭添加用溶出防止剤を添加する場合、石炭添加用溶出防止剤の添加場所は、微粉炭燃焼部16又はその上流であれば特に限定されず、例えば、石炭供給部12と微粉炭生成部14との間の移送路や、微粉炭生成部14と微粉炭燃焼部16との間の移送路等で行われてもよい。
図3を用いて具体的に説明すると、例えば、給炭機122から石炭微粉炭機141に輸送する際の移送中のベルトコンベア上に石炭添加用溶出防止剤を供給して混合する方法(図示せず)、Aのように石炭添加用溶出防止剤を石炭微粉炭機141の石炭ホッパーに直接投入する方法、石炭微粉炭機141と火炉161の間の配管に剤投入口を設けて供給する方法(図示せず)、Bのように火炉161へ燃焼用空気と共に直接投入する方法等を挙げることができる。この場合、添加を行うための設備は、既存の設備の軽微な改良で設置することが可能であるため、既存設備を有効利用することができ、コスト的にも有利である。
本発明の石炭添加用溶出防止剤は、石灰石(CaCO)、消灰石(Ca(OH))、生石灰(CaO)からなる群より選択される1種以上を含むものである。また、石炭添加用溶出防止剤は粒状又は粉末状であることが好ましく、具体的には、平均粒径が10μmから100μmであることが好ましく、10μmから70μmであることがより好ましい。
石炭供給部12若しくは微粉炭生成部14又は微粉炭燃焼部16においてこれらの石炭添加用溶出防止剤を添加する場合には、石炭添加用溶出防止剤の石炭への添加量は、石炭100質量部に対して、石炭添加用溶出防止剤を0.3質量部以上10質量部以下の範囲で添加することが好ましい。石炭100質量部に対して、石炭添加用溶出防止剤が0.3質量部以上であるので、石炭添加用溶出防止剤を添加する効果を十分に得ることができ、石炭添加用溶出防止剤が10質量部以下であるので、石炭灰の融点が低下しすぎることによる、石炭灰の火炉161の壁面への付着を防止することができる。
また、燃料として用いる石炭のカルシウム成分の含有量が高い場合には、必要に応じて石炭供給部12若しくは微粉炭生成部14又は微粉炭燃焼部16において添加する石炭添加用溶出防止剤を、添加量を低減させて添加させるか、全く添加しないことが好ましい。
[微粉炭燃焼部の下流への添加]
石炭添加用溶出防止剤を第一の熱交換部16b、又は第二の熱交換部16dに添加する場合、添加する場所は第一の過熱器161b、第二の過熱器161c、一次節炭器161d、又は二次節炭器161e付近であることが好ましい(図3、C)。この場合、添加を行うための設備は、既存の設備の軽微な改良で設置することが可能であるため、既存設備を有効利用することができ、コスト的にも有利である。
本発明の石炭添加用溶出防止剤は、石灰石(CaCO)、消灰石(Ca(OH))、生石灰(CaO)からなる群より選択される1種以上を含むものである。また、石炭添加用溶出防止剤は粒状又は粉末状であることが好ましく、具体的には、平均粒径が10μmから100μmであることが好ましく、10μmから70μmであることがより好ましい。
第一の熱交換部16b、又は第二の熱交換部16dにおいてこれらの石炭添加用溶出防止剤を添加する場合には、石炭添加用溶出防止剤の石炭への添加量は、石炭100質量部に対して、石炭添加用溶出防止剤を0.3質量部以上10質量部以下の範囲で添加することが好ましい。石炭100質量部に対して、石炭添加用溶出防止剤が0.3質量部以上であるので、石炭添加用溶出防止剤を添加する効果を十分に得ることができ、石炭添加用溶出防止剤が10質量部以下であるので、石炭添加用溶出防止剤を溶出防止効果に必要とされる量を超えて添加することがなく、経済的である。
石炭供給部12若しくは微粉炭生成部14又は微粉炭燃焼部16において石炭添加用溶出防止剤を添加することにより、本発明においては、石炭灰中に含まれる有害な微量元素の溶出を、微量元素の種類にかかわりなく抑制できる。具体的に溶出を防止することができる微量元素としては、特に限定されないが、ホウ素、フッ素、セレン、ヒ素、六価クロム等を挙げることができる。この中でも特に、ホウ素、セレン及びヒ素の溶出を、好ましく抑制することができる。この機構は、まず、カルシウムを含む化合物である石炭添加用溶出防止剤の添加によって、石炭灰の溶融温度を低下させる。すなわち、火炉161内の1300℃から1500℃という高温の条件においては、シリカ、アルミナを主成分とする石炭灰の表面が軟化(溶融)し、粘性をもった石炭灰粒子が、微量元素と接触して石炭灰の内部に取り込まれて溶出濃度が低下するものと推定される。このように、本発明においては、燃焼までの段階までに石炭添加用溶出防止剤を添加することで、微粉炭燃焼部における火炉の高温を有効利用して、石炭灰からの微量元素の溶出を抑制するものである。
また、石炭添加用溶出防止剤として石灰石、消石灰、生石灰を使用した場合には、排ガスの冷却過程において、或いは捕集された石炭灰中において、これらの石炭添加用溶出防止剤に由来する酸化カルシウムが石炭灰中に存在する酸化セレン、三酸化二ヒ素、及び酸化ホウ素等と反応して、それぞれ亜セレン酸カルシウム、ヒ酸カルシウム、ホウ酸カルシウム等の難溶性又は不溶性の化合物を生成するため、石炭灰中の微量元素の溶出を抑制することができる。このような反応は、石炭添加用溶出防止剤を第一の熱交換部16b又は第二の熱交換部16dにおいて添加した場合にも起こるため、第一の熱交換部16b又は第二の熱交換部16dにおいて石炭添加用溶出防止剤を添加したときにも、有害微量元素の溶出を有効に抑制することができる。
本発明の一実施形態を示す石炭火力発電システムにおける微粉炭燃焼施設の概略構成図である。 図1における火炉付近の拡大図である。 本発明の有害微量元素溶出抑制方法の概念図である。
符号の説明
1 微粉炭燃焼施設
12 石炭供給部
121 石炭バンカ
122 給炭機
14 微粉炭生成部
141 石炭微粉炭機
142 空気供給機
16 微粉炭燃焼部
16b 第一の熱交換部
16d 第二の熱交換部
161 火炉
161a バーナ
161a’ バーナーゾーン
161b 第一の過熱器
161c 第二の過熱器
161d 一次節炭器
161e 二次節炭器
162 加熱機
163 空気供給機
18 石炭灰処理部
181 脱硝装置
182 集塵機
183 石炭灰回収サイロ
S10 石炭供給工程
S20 微粉炭生成工程
S30 微粉炭燃焼工程
S40 第一の熱交換工程
S50 第二の熱交換工程
S60 石炭灰処理工程
S70 石炭添加用溶出防止剤添加工程

Claims (7)

  1. 石炭火力発電システムにおいて燃料となる微粉状の石炭を燃焼させたときに生じる燃焼残渣から、有害微量元素の溶出を抑制する有害微量元素溶出抑制方法であって、
    前記石炭又はこれを燃焼させる燃焼炉内に、生石灰、石灰石、消石灰からなる群より選ばれる少なくとも一種の石炭添加用溶出防止剤を、燃焼部と、当該燃焼部の下流部と、に分配して添加し、
    前記石炭は、空気を吹き付けて前記燃焼部に供給され、
    前記石炭添加用溶出防止剤は、前記燃焼部へ燃焼用空気とともに投入されることを特徴とする有害微量元素溶出抑制方法。
  2. 前記燃焼部に添加する前記石炭添加用溶出防止剤1質量部に対し、前記燃焼部の下流部に添加する前記石炭添加用溶出防止剤を0.1質量部以上30質量部以下で添加することを特徴とする請求項1に記載の有害微量元素溶出抑制方法。
  3. 前記燃焼部において、前記石炭100質量部に対して、前記石炭添加用溶出防止剤を0.3質量部以上10質量部以下の範囲で添加することを特徴とする請求項1又は2に記載の有害微量元素溶出抑制方法。
  4. 前記燃焼部の下流部において、前記石炭100質量部に対して、前記石炭添加用溶出防止剤を0.3質量部以上10質量部以下の範囲で添加することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の有害微量元素溶出抑制方法。
  5. 前記燃焼部の温度が1300℃以上1500℃以下であり、前記燃焼部の下流部が850℃以上1000℃以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の有害微量元素溶出抑制方法。
  6. 前記石炭火力発電システムが微粉炭燃焼方式の発電システムであり、前記燃焼部が、石炭を燃焼させるバーナーゾーン、及び当該バーナーゾーンの下流に設けられ、前記バーナーゾーンで発生した燃焼ガスの保有する熱を利用してボイラ給水を予熱する熱交換ユニットを有する燃焼ボイラであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の有害微量元素溶出抑制方法。
  7. 前記石炭火力発電システムが微粉炭燃焼方式の発電システムであり、前記燃焼部の下流部が、前記熱交換ユニット付近であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の有害微量元素溶出抑制方法。
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