JP4726443B2 - 人工土壌 - Google Patents

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Description

本発明は屋上の緑化等に使用される人工土壌に係り、特に全体の重量が軽量であり、かつ保水性及び通気性に富み、しかも一般個人住宅の屋上、ベランダ、屋根の緑化にも有効に使用することが可能な人工土壌に関するものである。
本件特許出願人等はビル屋上の緑化に有効に使用出来る、軽量で、保水性、通気性に富み、植物を健康に生育させることが出来る人工土壌を既に開発して、例えば、特開平6−141671号公報(特許文献1)、特開平10−56876号公報(特許文献2)及び特開2002−191230号公報(特許文献3)に示すように特許出願をしている。
また、ビル屋上の緑化に有効に使用出来る、軽量で、保水性、通気性等に富む人工土壌に関する文献としては、前記の特許文献1、2、3の他に、例えば特開平10−84767号公報(特許文献4)が知られている。
前記特許文献1の技術は、軽量気泡コンクリートの優れた性質を保持しつつ、軽量気泡コンクリートの強アルカリ性を短時間で低減させることによって、軽量でかつ無機質多孔性を有する農業や園芸等に使用することが出来るように構成した土壌の技術である。特に、この発明は軽量気泡コンクリートを使用することによって土壌を軽量化すると同時に、軽量気泡コンクリート(ALC)の強アルカリ性を炭酸化処理することによって短時間で低減して園芸用土壌等に使用するように構成した技術である。
前記特許文献2の技術は、ココヤシダストとココヤシ果皮小片とを所定の割合で組み合わせると共に、これ等の中にココヤシ繊維を所定の割合で混合し、これ等の材料を圧縮成形することによって、平板状の植物生育用基材を構成した技術である。この技術によって製造した植物生育用基材はココヤシ繊維が相互に組み合うために、曲げ強度もよく、上方からの圧力に対しても変形することがなく、全体が軽量であるので、屋上の緑化用材として効果的に使用出来る特徴を有している。
前記特許文献3の技術は、ALC破砕物或はコンクリート破砕物を利用し、粒径が小さい砂状コンクリートと粒径が大きい塊状コンクリートを所定の割合で混合し、かつこれ等の混合物の中に必要に応じてヤシダストや肥料を混入して構成したコンクリート破砕物からなる緑化資材の技術である。この緑化資材はALCの破砕物を多量に使用するので、全体を軽量化すると共に通気性を良くすることが出来、かつヤシダストを混入することによって保水性を良くすることが出来る等の特徴を有し、屋上、ベランダ、屋根の緑化の土壌として極めて有効に使用することが出来る効果を有している。
前記特許文献4の技術は、大谷石またはALCの破砕物を焼成し、これ等の中に廃畳や廃木材の破砕炭化物と、廃セッコウの破砕分類物およびフルイ赤土を混合して混練することによって構成した園芸用の軽量土壌に関する技術である。このように構成された軽量土壌は、大谷石やALCの破砕物が主体となるので、全体が軽量であると共に通気性に富み、しかも廃材を利用することが出来るので安価で環境保護に貢献する等の特徴を有している。
特開平6−141671号公報 特開平10−56876号公報 特開2002−191230号公報 特開平10−84767号公報
前述の従来の特許文献1、3、4に示す技術に於ては、いずれも軽量気泡コンクリートや大谷石を破砕した塊状材或は砂状材を多量に使用して土壌を構成するので、軽量で通気性に富む土壌を構成することが出来る特徴を有している。
しかし、前述のようにALCや大谷石を破砕した塊状材或は砂状材を混合した土壌は、保水性が少ないため、これ等の土壌に保水性或は保肥力を維持させるために、ヤシダスト、フルイ赤土、堆肥等を混練して構成しなければならなかった。
前述のようにALCや大谷石を夫々破砕した径の比較的大きい塊状の破砕材を混合して作る土壌に、径の極めて小さい砂状のコンクリート破砕材、ヤシダスト、フルイ赤土等を混合した場合には、塊状のALCや大谷石の破砕材間の隙間に砂状のコンクリート破砕材、ヤシダスト、フルイ赤土が入り込んで充填されるので、混合物が相互に密接した目詰り状態になり、このように構成した土壌は一般的に絶乾時の重量が600kg/m以上でかつ湿潤時の重量が1000kg/m以上となり、比較的重量が大きくなる問題があった。
従って、前述のように構成した土壌は、鉄骨或は鉄筋等で構成された堅固なビルの屋上の緑化土壌としては有効に使用出来るが、一般の個人住宅の屋上の緑化土壌として使用した場合には、一般の個人住宅は屋上に敷設された土壌の重量に充分耐える構造となっていないので、使用出来なくなる問題があった。
また、前記特許文献2の技術は、ココヤシダストとココヤシ果皮小片とを所定の割合で組み合わせ、かつこれ等にココヤシ繊維を所定の割合で混入した後で圧縮成形して平板材の植物生育用基材を構成するので、この植物生育用基材に芝等の比較的高さの小さい植物の育成には使用出来ても、比較的高さの大きいサツキ、ケヤキ等の植木等の育成には使用することが困難である等の問題があった。
本発明に係る人工土壌は、前述の従来の土壌の多くの問題点に鑑み開発された全く新規な発明であって、特に、一般住宅の屋上に所定の厚さで敷設することが出来るように軽量化し、かつ充分な保水性と植物の育成に必要とする栄養分を保持出来る人工土壌の技術を提供するものである。
本発明者等は、長年に亘って土壌を軽くするために、人工土壌の中に塊状の発泡プラスチック、或は種々の天然繊維、人工繊維の細かい裁断片等を混入する等の方法を開発して実験を重ねて来たが、このように構成した土壌は保水性或は栄養分の保持力または植物の育成、さらには価額等の点で問題があり、実用化が困難であった。
また、本発明者等は、基本的に前記特許文献3の技術を用いて人工土壌の軽量化が出来るか否かについても、長年に亘って種々の研究をして来た。特許文献3の技術は、既にその問題点について記述して来たように、粒径の小さい砂状コンクリート破砕物と、粒径の大きい塊状コンクリート破砕物を1対1以下の割合で混合するので、複数の塊状コンクリート破砕物の隙間の中に砂状コンクリート破砕物が入り込んで相互に密接されて目詰り状態の土壌が形成されるので、仮にコンクリート破砕物をALC等の軽量気泡コンクリートを使用しても、全体の重量を小さくすることが困難であった。
また、この特許文献3の実施例に於ては、ヤシダストをALC破砕物の中に混入して構成する土壌について説明しているが、このヤシダストはココヤシの皮の中からタワシ等に使用されるヤシ繊維を取った後の細かいくずであるので、このヤシダストを塊状のALC破砕物と混ぜると、ヤシダストがALC破砕物間に入り込んで相互に密接されて目詰り状態になるので、全体として極めて軽い土壌を構成することが困難であった。
本発明者等は、これらの多くの問題点を充分に考慮し、最終的にココヤシの皮をヤシ繊維とヤシダストに分離する前にココヤシの皮を所定の寸法に断裁して粒状ヤシチップを作り、この粒状ヤシチップを粒状コンクリート破砕物の中に混入して土壌を構成した場合には、極めて軽量であり、低価格でかつ保水性、保肥力に優れた土壌を構成することが出来ることを発明した。また、必要に応じて少量のヤシダスト、所定の養分材料を前述の土壌に混入した場合には、植物の育成に極めて有効な土壌を構成することも発明した。
本発明に係る人工土壌は、前述の多くの問題点を根本的に改善した発明であって、その第1発明の要旨は、粒状コンクリート破砕物と、ココヤシの皮をヤシ繊維とヤシダストに分離せずに、ココヤシの皮をそのまま断裁して形成される粒状ヤシチップと、を主成分として混合し、前記粒状コンクリート破砕物の粒径及び粒状ヤシチップの粒径を夫々10〜20mmとしたことを特徴とした人工土壌である。
また、本発明に係る人工土壌の第発明の要旨は、前記粒状コンクリート破砕物が軽量気泡コンクリートの破砕物であることを特徴とした第1発明人工土壌である。
前記第1発明に於ては、前述のように粒状コンクリート破砕物と粒状ヤシチップとを混合して土壌を構成したので、両者が夫々細かに入り込んで目詰り状態になることがなく、これ等の材料は所定の隙間を維持することが出来、これによって通気性を良くすると共に、土壌全体の重量を極めて軽くすることが出来る。また、前記第1発明に於ては、前述のように粒状コンクリート破砕物と粒状ヤシチップの夫々の粒径を夫々10〜20mmにしたので、粒状コンクリート破砕物と粒状ヤシチップを混合した場合には、両者が相互に所定の隙間を介して隣接するので、目詰り状態になることがない。従って、構成した土壌全体を軽くすることが出来る。また、保水性や通気性を確保した軽量な人工土壌を構成することができる。
前記第発明に於ては、粒状コンクリート破砕物を軽量気泡コンクリートの破砕物で構成したので、土壌の通気性を良くし、かつ土壌をより軽くすることが出来る。
先ず、本発明者等は、既に前記特許文献3に於て詳述したように、ALC等のコンクリート破砕物を土壌に使用する場合に、粒径を大きくした場合にはアルカリ度が低く、粒径を小さくした場合にはアルカリ度が大きくなることを発見した。即ち、例えばALC破砕物の粒径が2〜15mmの場合には、アルカリ度が1.90であるのに対し、ALC破砕物の粒径が0〜1.9mmである場合には、アルカリ度が5.80であることが判明した。
また、ALC破砕物の粒径が比較的大きいものを使用した場合には、ALC破砕物を酸等を用いて特別の加工をすることなく、ALC破砕物をそのまま使用することが出来ることも発見した。
さらに、本発明に於ては、前述のようにココヤシの皮をヤシ繊維とヤシダストに分離せずに、ココヤシの皮をそのまま10〜20mmに断裁し、前記ALC破砕物とほぼ同じ寸法を持った粒状ヤシチップを作り、この粒状ヤシチップをALC破砕物の中に混入して人工土壌を作った場合には、ALC破砕物の隙間に粒状ヤシチップが入り込んで相互に所定の間隙を保つので、目詰り状になることがなく、通気性、保水性に優れ、しかも極めて軽量な土壌を構成することが可能であることを発見した。
また、粒状ALC破砕物と粒状ヤシチップの配合比が前者を30〜65%とし、後者を30〜70%とした場合に、即ち、粒状ヤシチップを粒状ALC破砕物より多くした場合に、土壌が軽く、かつ通気性、保水性に優れた優良な土壌を作ることが出来ることを発明した。
さらに、前述のような配合比で粒状ALC破砕物と粒状ヤシチップとを混合して作った人工土壌の中に少量のヤシダスト、所定の養分材料等を混入した場合には、より保水性や保肥力に優れ、かつ植物の育成に好適な人工土壌を作ることが出来ることを発明した。また、前記ヤシダストと所定の養分材料の割合は約3対1の割合が良好であった。
本発明に於ては、ALC破砕物の他にコンクリート破砕物も使用することが出来るが、人工土壌を軽量化するためには、ALC破砕物の方が優れていることを発見した。かつALC破砕物の原料としては、工場廃材、新築現場廃材、解体現場廃材を有効に利用することが出来る。
本発明に係る人工土壌の原料及びその体積構成比、絶乾時重量及び湿潤時重量について、その参考例1を具体的に説明すると、次の表1の通りである。表1は、人工土壌の成分別割合と各成分の25L当りの重量を表すものである。
〔参考例1〕
Figure 0004726443
前記参考例1によって製造した土壌について物理的特性と化学的特性について調査した処、次の第2表及び第3表のように示す通りであった。
Figure 0004726443
Figure 0004726443
前述の第1表乃至第3表で明らかな如く、本発明を実施した人工土壌は極めて軽量であるので、ビルの屋上のみならず、一般個人住宅の屋上、ベランダ、屋根にも所定の深さに敷設して使用することが判明した。また、前記人工土壌は軽量であるのみならず、通気性、保水性或は保肥力にも優れていることが明らかとなった。
前記人工土壌を個人住宅の屋上に敷設して使用して、ノイバウェルポットにコマツナを50粒播種し、数回に分けて間引きをして最終的に数個体とし、観察を2ヵ月間続けた結果、コマツナの育成は極めて良好であった。また、多数の1/2000ログネルポットを使用し、これ等にコウライシバを張り芝で植え付け、さらにサツキとケヤキはポット苗を植え付け、1年間の経過を観察した処、これ等の植物の生育状態は極めて良好であった。
〔実施例1〕
前記参考例1に於ては、ALC破砕物及びヤシチップの粒径が10〜50mmの寸法のものを適当に混合して使用したが、この実施例1に於ては、ALC破砕物及びヤシチップの粒径が比較的小さい10〜20mmのものを前記参考例1の場合と同様な比率で夫々混合して人工土壌を作って実験した。
実施例1では、ALC破砕物及びヤシチップの粒径が比較的小さいものを使用したので、粒子間の相互の隙間は小さくなるが、通気性及び透水性が良好で目詰まりが発生する問題はなかった。さらに、実施例1の人工土壌は、ヤシダスト等を混入しなくとも保水性及び保肥力が良好であった。
〔参考例2〕
参考例2に於ては、ALC破砕物及びヤシチップの粒径が比較的大きい40〜50mmのものを参考例1の場合と同様な比率で夫々混合して人工土壌を作って実験をした。
この参考例2に於ては、ALC破砕物及びヤシチップの粒径が比較的大きいものを使用したので、粒子間の相互の隙間が30%程度に大きくなり、人工土壌の重量が極めて小さくなり、絶乾時重量が230kg/m、湿潤時重量が630kg/mで、屋上、ベランダ、屋根等の緑化土壌としては極めて理想的であることが判明した。
この参考例2の人工土壌は、通気性及び透水性は極めて良好であるが、やや保水性及び保肥力に乏しいことが明らかになった。従って、この人工土壌にヤシダストを5〜20%の割合で混合すれば、保水性及び保肥力が改善され、軽量でかつ保水性、保肥力も有する理想的土壌を構成することが判明した。
〔第1比較例〕
第1比較例に於ては、ALC破砕物及びヤシチップの粒径が1〜9mmの寸法のものを使用し、前記実施例1の場合と同様な比率で夫々混合して人工土壌を作って実験した。
この第1比較例で作った人工土壌は、粒子間の相互の隙間が極めて小さくなり、ほぼ密接された状態になるので、人工土壌の重量が大きくなり、屋上、ベランダ、屋根の緑化土壌には適さない問題があった。即ち、第1比較例で作った人工土壌は、絶乾時重量が290kg/m、湿潤時重量が750kg/mとなり、屋上等で使用する土壌としては重すぎる問題があった。
〔第2比較例〕
第2比較例に於ては、ALC破砕物及びヤシチップの粒径が51〜60mmの塊状のものを使用し、前記実施例1の場合と同様な比率で夫々混合して人工土壌を作って実験した。
この第2比較例で作った人工土壌は、粒子間の相互の隙間が40%程度に大きくなり、極めて軽量な土壌となるが、ヤシダストを20%〜30%の割合で混入しても保水性及び保肥力に乏しく、植物の育成には適さないことが判明した。
また、ヤシダストの混入比率を極めて大きくすれば、保水性及び保肥力は改善されるが、他方で塊状のALC破砕物とヤシチップとの隙間にヤシダストが隙間なく混入されるので、目詰まりの問題が発生した。さらに、ヤシダストを多量に混入した場合には、湿潤時の人工土壌の重量が700kg/m以上になり、屋上、ベランダ、屋根の緑化土壌としては使用することが困難になる問題も発生した。
本発明に係る人工土壌は、ビルの屋上或は一般個人住宅の屋上等の緑化用土壌として使用する他に、一般の園芸用土壌として、或は土壌の改良材として使用することが出来る。

Claims (2)

  1. 粒状コンクリート破砕物と、
    ココヤシの皮をヤシ繊維とヤシダストに分離せずに、ココヤシの皮をそのまま断裁して形成される粒状ヤシチップと、
    を主成分として混合し、
    前記粒状コンクリート破砕物の粒径及び粒状ヤシチップの粒径を夫々10〜20mmとしたことを特徴とした人工土壌。
  2. 前記粒状コンクリート破砕物が軽量気泡コンクリートの破砕物であることを特徴とした請求項1に記載の人工土壌。
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