JP2006187228A - 植生基盤材 - Google Patents

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政和 沖
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Abstract

【課題】 長期間に亘って草本類植物のみならず木本類植物の良好な生育に寄与可能な木質廃棄物を再生利用した植生基盤材を提供すること;及び上記植生基盤材を用いる緑化工法を提供すること。
【解決手段】 (1)未発酵の植物破砕片、(2)化成肥料、(3)緩効性有機質窒素肥料としての乾燥菌体肥料、及び(4)粒状の多孔質資材を含む植生基盤材、及びこの植生基盤材を含む施工材料を、法面に施し、種子の生育、緑化を図ることを特徴とする緑化工法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、厚層基材吹付工法などにより、法面等の緑化工法において用いられる緑化基盤材及びこの基盤材を用いる緑化工法に関する。
従来から、造成工事等において形成される法面等を強化、緑化するために、緑化基盤材が厚層基材吹付工法などにより施されている。緑化基盤材の材料には、樹皮等の堆肥化物(バーク堆肥)や有機質を豊富に含んだ土壌にバーク堆肥を混合したものが主として用いられている。
上記の植生基盤材に用いられる堆肥には、造成等の建設工事で発生した伐採材・伐根材の破砕物(以下木質チップと記す)を一定期間養生して堆肥化した、いわゆる木質堆肥も含まれる。しかしながら、これら建設工事等で発生する木質や刈草などを堆肥化するためには、堆肥化のための機械設備や発酵副資材が必要で、さらに堆肥化物から流出する雨水浸透汚水を貯留し浄化する施設の設置および堆肥化を行うための広大なスペースが必要となる。また、木質等植物性の廃材を腐熟、分解、安定化させ、土壌改良に適した堆肥とするには少なくとも半年程度を要し、堆肥化関連機械・施設の維持管理や堆肥製造過程での品質管理に多大な労力が必要となっている。
上記の木質廃棄物等を再生利用して植生基盤材に用いる技術の課題を解決するため、上記木質チップを発酵させず、未発酵のまま直接植生基盤材として用いる工法が提案されている。
例えば、特許文献1(特許第3281950号)には、未発酵植物資材を主材料とする植生基盤材にスラリー状の粘土鉱物を混入させた植生基盤材が提案されている。粘土鉱物を配合することにより、植生基盤材の崩壊を防止するバインダー機能を付与し、さらに粘土鉱物の存在により木質を腐熟させる微生物の活動を抑制し、植物の生育に不可欠な窒素や酸素の欠乏を防止するとしている。
特許文献2(特開2000−204558号公報)には、未発酵木質チップに客土等を混合した主材料に、光合成細菌と窒素質肥料からなる生育促進剤を加えた植生基盤材が開示されている。光合成細菌と窒素質肥料からなる生育促進剤を添加することにより、木質の分解に伴って起きることが予想される「窒素成分の欠乏(窒素飢餓)やタンニンやフェノール類等の生育阻害物質の蓄積および悪臭の発生等」を防止するとしている。
特許文献3(特開2003−289721号公報)には、未発酵の木質チップを主材とし、これに3〜20容量%の下水汚泥コンポストと25容量%以下のゼオライト、活性炭、木炭、ベントナイトあるいはバーミキュライトのうちの1種又は複数を加えた植生基盤材が開示されている。リサイクル材料である未発酵の木質チップおよび下水汚泥コンポストを植生基盤材に活用することに着目し、基盤材材料の低コストを充足することを目的とするものである。植物の発芽率および生育改善のため、上記基盤材料に、フェノール類等の植物生育抑制成分を吸着する目的でゼオライト等を添加しても良いと記載されている。
特許第3281950号 特開2000−204558号公報 特開2003−289721号公報
未発酵の木質チップをのり面等の植生基盤の主材料として用いる工法には、上述のように、いくつかの既存技術がすでに存在しているが、いずれの工法においても、法面基盤施工と種子播種による緑化は可能であるが、長期に亘って草本類植物および木本類植物の生育に適した窒素成分の供給については十分とは言えなかった。
即ち、木質チップの分解に伴い、微生物の急激な増殖が起きる際には多量に窒素が消費され、酸素も多量に消費されるため、植物が利用する窒素分が欠乏し(窒素飢餓)、さらには植物の根圏が酸素欠乏にさらされることで植物の生育が阻害される恐れがあることから、植生基盤が長期間窒素成分を保持可能なこと及び適度な通気性を有することが必要である。
従って、未発酵の木質チップを植生基盤材の主な材料とし、長期に亘って安定した窒素成分の供給が可能で植物根圏の良好な通気性を維持できる植生基盤材の配合技術が望まれている。
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載されているように、従来においては、長期に亘る窒素成分の保持供給を可能とし、かつ植生基盤の良好な通気性を維持するための技術は開示されていない。
特許文献1においては、木質チップを植物の生育のために長期的に栄養を供給する原資とするとしているが、木質の分解に伴って生成する生育阻害特に植物の根圏に対する酸素欠乏に対する対策は示されていない。また特許文献2においては、タンニンやフェノール類等の生育阻害物質の生成や土中の酸素不足状態の発生を考慮して、光合成細菌と窒素質肥料からなる生育促進剤を予め配合すると記載されているが、その効果は、長期的な植生の維持するためには十分とは言えない。
また、特許文献3も長期的な植生の維持を目的とするものではなく、汚泥コンポストに含まれる窒素成分含量は一般的に2〜3.5%と余り高くなく、さらにその多くはアンモニア態窒素や硝酸態窒素であることが知られ、草本類および木本類植物の長期的な生育維持に寄与する肥効成分を含むとはいい難い。
また、上記公報に記載の方法では、基盤材の主材である木質が微生物による分解を受ける際に起きる窒素飢餓を防ぐ目的で主に高度化成肥料が加えられているが、化成肥料の窒素成分は水溶性で雨水により容易に流出するアンモニアや硝酸などであるため長期に亘って植物の生育に必要な窒素分を十分に供給するには不十分であると考えられる。
従って、本発明の目的は、施工された法面等の対象面において、徐々に分解することにより硝酸成分等を植物に供給でき、かつ植生基盤中に硝酸成分等を有効に吸着保持し、植物の根圏環境を維持するため、基盤材が良好な通気性を付与することができる植生基盤材を提供することにある。
また、本発明の目的は、長期間に亘って草本類植物のみならず木本類植物の良好な生育に寄与可能な木質廃棄物を再生利用した植生基盤材を提供することにある。
さらに本発明の目的は、上記植生基盤材を用いる緑化工法を提供することにある。
上記目的は、下記(1)〜(4):
(1)未発酵の植物破砕片、
(2)化成肥料、
(3)緩効性有機質窒素肥料としての乾燥菌体肥料、及び
(4)粒状の多孔質資材
を含む植生基盤材により達成される。
本発明の特徴的部分である(3)乾燥菌体肥料は、「培養によって得られる菌体又はこの菌体から脂質若しくは核酸を抽出したかすを乾燥したもの、又は食品工業、パルプ工業(なめし皮革くずを原料として使用しないものに限る)の排水を活水スラッジ法により浄化する際に得られる菌体を加熱乾燥したものを言う。」と、果樹研究所による「有機質肥料」の公定規格に定義されている。
上記植生基盤材の好適態様は以下(i)〜(xiv)の通りである。
(i)さらにバーク堆肥を含んでいる。バーク堆肥は、製材工場やチップ生産の際に生じる樹皮に家畜ふん尿や食品廃棄物等の養分を加え、堆積し、発熱発酵させた有機肥料を言う。
(ii)(1)未発酵の植物破砕片が、抜根、伐採木及び剪定枝の少なくとも一種をチップ化したものである。
(iii)(2)化成肥料として、高度化成肥料を含んでいる。
(iv)(3)乾燥菌体肥料が、5.1質量%以上(好ましくは5.1〜10.8質量%、特に5.5〜10.8質量%)の窒素含有量を有する。
(v)(4)粒状の多孔質資材が、ゼオライト、バーミュキュライト、赤玉土、木炭、ヤシガラ炭、及び炭化汚泥の群から選ばれた少なくとも1種である。なかでも、保肥性が優れていることから、木炭、ゼオライト、特にゼオライトが好ましい。
(vi)(1)未発酵の植物破砕片を50〜80容量%を含む。
(vii)(4)粒状の多孔質資材を2〜5容量%を含む。
(viii)バーク堆肥を20〜50容量%を含む。
上記「容量%」は、吹き付け後の仕上がりの体積で示す。例えば、バーク堆肥等の有機性土壌材料は吹き付け施工後乾燥により体積が約1/2に収縮する。
(ix)(3)乾燥菌体肥料を全植生基盤材1000m中に20〜70kg含む。
(x)さらに高度化成肥料を全植生基盤材1000m中に4〜6kg含む。
(xi)さらに高分子接合剤を全植生基盤材1000m中に0.5〜1.5kg含む。
(xii)さらに発酵処理した油かす粉末及び/又は魚かす粉末を含む。
(xiii)さらに種子を含む。
(xiv)(3)乾燥菌体肥料と(4)粒状の多孔質資材との比((3)の質量/(4)の容量)が10〜15である。
また本発明は、上記植生基盤材を含む施工材料を、法面に施し、種子の生育を図ることを特徴とする緑化工法にもある。
上記植生基盤材を含む施工材料を、厚層基材吹き付け工法により、法面に施すことが好ましい。吹き付けのために、エア搬送モルタルガン又は客土吹き付け機を使用することが好ましい。
本発明の植生基盤材は、施工された法面において、徐々に分解することにより硝酸成分等を植物に供給でき、かつ植生基盤中に硝酸成分等を有効に吸着保持し、植物の根圏環境を良好に維持するため、基盤材が高い通気性を付与することができるものである。従って、長期間に亘って草本類植物のみならず木本類植物の良好な生育に寄与可能な木質廃棄物を再生利用した植生基盤材であるということができる。
即ち、前記の(1)未発酵の植物破砕片、(2)化成肥料及び(3)乾燥菌体肥料を、(4)粒状の多孔質資材と混合して使用することにより、木質分解に伴い発生する窒素成分の欠乏による植物生育阻害の防止を向上させると共に、法面等に施工された植生基盤材の通気性、保水性等の物理特性を大幅に向上させることができる。中でも、植物生育に必要な可溶性窒素成分、特に硝酸成分を粒状多孔質資材に効率良く吸着、保持することが可能となり、この成分を植生基盤材上の植物に安定的に供給することができる。これにより植生基盤材の保肥性・保水性・通気性を大幅に改善し、植物の生育に必要な可溶性窒素成分、特に硝酸成分を粒状の多孔質資材に効率よく吸着、保持し、植生基盤上の植物に供給可能とすることが可能となり、長期に亘って草本類植物のみならず木本類植物の生育を良好に維持することができる。従って、本発明の植生基盤材は、伐採材、伐根材等を有効活用した木質チップを主成分として、初期の植生生育環境と長期的な植生の維持、さらには雨水等により浸食防止特性に優れたものである。
以下、本発明の植生基盤材及びこれを用いる緑化工法を説明する。本発明の植生基盤材は、(1)未発酵の植物破砕片、(2)化成肥料、(3)緩効性有機質窒素肥料としての乾燥菌体肥料、及び(4)粒状の多孔質資材を基本成分として含んでいる。さらに高度化成肥料、高分子接合剤、さらに発酵処理した油かす粉末及び/又は魚かす粉末、種子等を適宜含むことができる。
(1)未発酵の植物破砕片は、公共工事等で発生する伐採材、伐根材等を破砕処理して木質チップに再生されたもので、本発明では、このような再生材料を有効利用するものであり、また緑化資材のリサイクルを促進するとの効果もある。本発明の植生基盤材は、このような再生材料を主原料として得られるもので、草本類植物及び木本類植物の生育に適したものである。
(1)未発酵の植物破砕片は、一般に、公共工事現場、建設現場などで発生する伐根、伐採木、剪定枝などの木材を破砕、チップ化したものである。また、この種の廃材には、廃木、廃根も含まれる。この植物破砕片は、未発酵のもので、堆肥化しないものである。
木材のチップ化は、一般に40mm以下、好ましくは25mm以下となるように、特に好ましくは15mm以下となるように、例えば粉砕機により粉砕もしくは切断することにより得られる。これにより、基盤材に適度な空隙が形成され、植物の発芽数が増加する。
未発酵の植物破砕片を、植生基盤材の50〜80容量%、特に50〜70容量%で使用することが好ましい。
(2)化成肥料は、初期の植物の生育に特に有効であり、例えば硫安、過リン酸石灰、熔成リン肥、硫酸カリ等の無機質肥料、高度化成肥料を挙げることができる。高度化成肥料は、窒素・リン・カリウムのうち2つ以上含んだ化学肥料であり、3成分の合計量が30%以上のものを言う。化成肥料としては、植物破片材を主成分とする植生基盤材の炭素/窒素比(C/N)を低下させ、植物生育に伴う窒素飢餓を防止するのに有利であることから、高度化成肥料が好ましい。高度化成肥料は、全植生基盤材1000m中に一般に4〜6kgの範囲で使用される。
本発明では、緩効性有機質窒素肥料として(3)乾燥菌体肥料を使用する。乾燥菌体肥料は、前述のように、「培養によって得られる菌体又はこの菌体から脂質若しくは核酸を抽出したかすを乾燥したもの、又は食品工業、パルプ工業(なめし皮革くずを原料として使用しないものに限る)の排水を活水スラッジ法により浄化する際に得られる菌体を加熱乾燥したものを言う。」と定義されている。乾燥菌体肥料は、一般に5.1質量%以上、好ましくは5.1〜10.8質量%、特に5.5〜10.8質量%の窒素含有量を有する。乾燥菌体肥料を用いることにより、木質分解に伴い発生する窒素成分の欠乏による植物生育阻害が顕著に防止される。これは他の緩効性有機質窒素肥料に比較して、窒素含有量の高いことが一因であると推定される。さらに乾燥菌体肥料は、高分子の不溶性の窒素が多いことから、植生基盤材中で徐々に分解して可溶性の窒素に変化するため、この乾燥菌体肥料を使用することにより、長期に窒素の供給が可能となると考えられる。(3)乾燥菌体肥料は、一般に植生基盤材1000m中に20〜70kg、特に20〜50kg含まれる。
他の好ましい緩効性有機質窒素肥料として、発酵処理した油かす粉末、魚かす粉末を挙げることができ、乾燥菌体肥料と共に使用することができる。
本発明の植生基盤材は、さらに(4)粒状の多孔質資材を含んでいる。(4)粒状の多孔質資材としては、ゼオライト、バーミュキュライト、赤玉土等の多孔質鉱物資材、木炭、ヤシガラ炭、及び炭化汚泥等の粒状の炭を挙げることができる。特に木炭、ゼオライト、中でもゼオライトが好ましい。前記の(1)未発酵の植物破砕片、(2)化成肥料及び(3)乾燥菌体肥料を、(4)粒状の多孔質資材(好ましくはさらにバーク堆肥)と混合して使用することにより、木質分解に伴い発生する窒素成分の欠乏による植物生育阻害の防止を向上させると共に、法面等に施工された植生基盤材の通気性、保水性等の物理特性を大幅に向上させることができる。中でも、植物生育に必要な可溶性窒素成分、特に硝酸成分を粒状多孔質資材に効率良く吸着、保持することが可能となり、この成分を植生基盤材上の植物に安定的に供給することができ、これにより長期に亘って草本類植物のみならず木本類植物の生育を良好に維持することができる。従って、本発明の植生基盤材は、伐採材、伐根材等を有効活用した木質チップを主成分として、初期の植生生育環境と長期的な植生の維持、さらには雨水等により浸食防止特性に優れたものである。
本発明で好ましく使用することができるゼオライトは、以下の特性:5mm以下、特に3〜5mmの粒径、5.5〜8質量%の水分含有量、130〜150meq/100gの陽イオン交換容量(CEC)を有するものである。上記の特性範囲において、長期に亘って草本類植物のみならず木本類植物の生育の環境を提供することが可能となった。
(4)粒状の多孔質資材は、植生基盤材の2〜5容量%、特に4〜5容量%で使用することが好ましい。
前記(3)乾燥菌体肥料と(4)粒状の多孔質資材との比((3)の質量/(4)の容量)を10〜15で、混合することが、好ましい。前記生育環境を長期に維持するのに好適である。
本発明では、有機性土壌改良材として、一般に、バーク堆肥を含んでいる。バーク堆肥は、前述のように、製材工場やチップ生産の際に生じる樹皮に家畜ふん尿や食品廃棄物等の養分を加え、堆積し、発熱発酵させた有機肥料を言う。肥料取締法では特殊肥料に属している。保水性がよく乾燥を防止することできる、緩衝力が高く植物の栄養障害を緩和することができる、肥効効果を持続させるなどの特徴がある。バーク堆肥は、他の有機性土壌改良材(例、客土)と比較して、団粒浸透(通気性、根の伸長性、根圏の微生物の増殖)に有効であり、また肥粒成分に富むので好ましい。
上記バーク堆肥に換えて、又はバーク堆肥に加えて、伐採材・伐根材の破砕物(木質チップ)を一定期間養生して堆肥化したもの(木質堆肥)及び/又は客土を用いても良い。
バーク堆肥等は、植生基盤材の20〜50容量%、特に30〜50容量%で使用することが好ましい。
本発明の植生基盤材は、さらに高分子接合剤、種子等を含むことができる。
高分子接合剤としては、EVA系接合剤、酢ビ系接合剤、アクリル系接合剤等の接合剤(エマルジョン又はパウダー状)を挙げることができる。高分子接合剤を植生基盤材1000m中に一般に0.5〜1.5kgの範囲で使用される。
本発明においては、通常、上記植生基盤材、必要により高度化成肥料等に加えて、種子等の緑化資材が混合される。種子とは、緑化基盤に導入する植物のことであり、例えばオーチャードグラス、レッドトップ、トールフェスク、クリーピング、レッドフェスク、ケンタッキーブルーグラス、バミューダグラス、ノシバ等の酸性地耐性植物、あるいはヨモギなど、とりわけ植物の根に根粒を形成し大気中の窒素を土壌中に固定する作用の顕著なクローバ、ヤマハギ(木本類)、メドハギ、イタチハギ、エニシダ、ヤシャブシ、ヤマハンノキ、ニセアカシア、コマツナギ等の植物を挙げることができる。これらの植物を、たとえば基盤材1m中に0.5〜0.8kg含むように加えることが一般的である。
上記本発明の植生基盤材を用いて、例えば以下のように法面等を緑化する。植生基盤材を用いる法面に対する植生基盤材の施工は、一般に厚層基材吹き付け工法により行われる。例えば以下のように行われる。
まず、(1)未発酵の植物破砕片を準備する。次に予め水 (基盤材1mに対して200〜800kg)を入れておいた吹付け機の混合槽にこの破砕材と、その基盤材に対して、(2)化成肥料、(3)乾燥菌体肥料、及び(4)粒状の多孔質資材を所定量加え、導入植物種子を所定量 ならびにその他の材料を添加し、よく混合する。得られたスラリー状の植生基盤材を、吹き付け機のノズルより被施工法面に吹き付けて20〜70mm厚の植生基盤層を形成する。例えば、上記植生基盤材を吹き付け機に導入しここで撹拌しながら空気圧縮してノズルより被施工法面に吹き付ける方法が好ましい。このような工法の特徴は、上述した植生基盤材の全てを予め混合したものを用いることにある。従って、各成分を分別搬送して吹き付ける必要がなくなり、施工が容易である。
上記吹付け機としては、エア搬送モルタルガン又は客土吹き付け機を使用することが好ましい。
従って、本発明の植生基盤材は、そのままで各種の種子と共に、施工材料を対象面に施し、種子の生育による緑化を図ることができる。
本発明の植生基盤材には、木質系チップ堆肥化物、及びピートモス、短繊維、長繊維等をさらに含んでいても良い。
その他、現場発生土、粘性土、砂質土、山砂、マサ土、廃棄土等の土類を配合することができる。
さらに、本発明の緑化工法において、法面の条件が厳しく、例えば多雨地域、長大法面、急傾斜地の存在等がある場合は、一層の侵食防止効果を得るために、粘結剤を含ませても良い。粘結剤の配合量は、例えば、高分子系粘結剤であれば、短繊維、あるいは長繊維を含ませる場合は、これらの繊維自体に侵食防止効果があるため、0.3〜2.0質量%で足りる。短繊維、あるいは長繊維と粘結剤との配合量は、これらが反比例の関係にあることを考慮しつつ、経済性、植物生育性、法面条件等を基礎として、適宜決定する。
以下に実施例を示し、本発明についてさらに詳述する。
[実施例1]
種子の発芽と植物の初期生育に与える植生基盤材配合の影響を明らかにするため、バット容器を用いたコマツナの発芽・生育試験を実施した。
(基盤材の配合)
基盤材の主材料
(1)木質チップ(長径1〜2.5cm、幅約1cm):50又は70%容量部
(2)バーク堆肥:50又は30%容量部(吹き付け後の仕上がりの体積で示す)
添加配合資材
(3)乾燥菌体肥料(窒素含有量6.0質量%):主材料100L当たり2kg
(4)粒状ゼオライト(直径:5mm以下):主材料100L当たり5L
(5)高度化成肥料(窒素:リン:カリ=15:15:15(質量%)):主材料100Lあたり0.4kg
(6)コマツナ種子:1試験区画当たり3g(=約1170粒)
バットを用いたコマツナの発芽・生育試験は、1試験区10Lの植生基盤材を用い、植生基盤材上にコマツナ種子を播種して行った。種子播種ののち、バット上の植栽基盤が乾燥しないよう適宜散水した。
本発明のバット植生試験における本発明試験区と比較区の基盤材主材料および添加資材の配合を表1に、植生試験における発芽率と植物の生育結果を表2に、そして本発明試験区配合基盤材の物理化学特性の測定結果を表3に示す。
Figure 2006187228
Figure 2006187228
Figure 2006187228
実施例1の結果から以下の点が明らかとなった。
1)表2の結果より、本発明試験区では、播種15日後のコマツナ幼植物の成立本数では比較区より劣る傾向にあるが十分高いので発芽率も十分高いと言える。また、播種30日後には、植物個体当たりの重量と植被率が他の比較区と比較して勝っていることが確認された。従って、木質チップを主材料とする基盤材に、粒状多孔質資材(ゼオライト)と緩効性窒素肥料としての乾燥菌体肥料を添加して、植物種子の発芽と初期の生育が比較的良好になされることが証明された。
2)比較区1−(1)及び1−(2)、比較区3−(1)及び3−(2)では、植物の生育と植被率が不良であり、特に保水性に劣る木質チップ70%配合の区画でその傾向が強いことから、木質チップを多く含む基盤材では粒状の多孔質材料であるゼオライトの添加により、植物の生育に必須な基盤の保水性が改善されるものと考えられる。
[実施例2]
岩盤地質で急峻な掘削法面を対象として、木質チップを主材とする植生基盤材の吹付施工を実施し、植生の生育状況を比較評価した。
(基盤材の配合)
基盤材の主材料
(1)木質チップ(長径2〜4cm、幅約1〜1.5cm):50または70%容量部
(2)バーク堆肥:50又は30%容量部(吹き付け後の仕上がりの体積で示す)
木質チップは実際の造成現場で大量の伐採材・伐根材の破砕に用いる自走式破砕機のタブグラインダーを使用して、2インチスクリーンを用いた粗破砕及び9.5mmスクリーンを用いた2次破砕により得られたものを用いた。
添加配合資材
(3)乾燥菌体肥料(窒素含有量6.0質量%):50kg/m
(4)粒状ゼオライト(直径:5mm以下)又は粒状木炭(直径:2mm以下):20L/m又は50L/m
(5)高度化成肥料(窒素:リン:カリ=15:15:15(質量%)):6kg/m
(6)植物種子:下記の構成
植物種子の構成:トールフェスク56g/m、バミューダグラス21g/m、ヨモギ39g/m、メドハギ84g/m、コマツナギ486g/m、ヤマハギ706g/m 以上1392g/m
植生基盤材の吹付施工は、エアー搬送吹き付け工法に従い、エアー吹き付け機(エアコンプレッサー及び圧送機を搭載した移動式の吹き付け機)を用いて1区画の吹き付け面積が60mで吹き付け厚さが5cmとなるように吹き付けを行った。そして各区画とも20mずつ3面に分割して植物の生育状況を観察した。
本発明の法面施工試験における試験区と比較区の基盤材主材料および添加資材の配合を表4に、そして植物の発芽・成育状況の観察結果を表5に示す。
Figure 2006187228
Figure 2006187228

実施例2の結果から以下の点が明らかとなった。
1)本発明試験区(試験区1〜4)においては、比較区1〜3のいずれの比較例と比較しても植物の生育に優れていることが分かった。
2)播種後2年までの植物の生育本数の推移からわかるように、本発明のすべての試験区(試験区1〜4)で、長期間に亘り植物個体数がほとんど減少することなく維持されることが明らかとなった。特に、ゼオライトあるいは粒状木炭を5%加えた試験区では、その傾向が顕著であり、試験区2では周辺からの飛来種子などによる導入植物の生育で植物個体の数が増加する例がみられた。
3)本発明の試験区において、データは示さなかったが、播種した植物のうち西洋芝や草本類のハギだけでなく、木本に類するヤマハギの生育も良好であることが確認された。
4)いずれの試験区においても、基盤材の物理的強度は高く、雨水等による洗掘、表面からの流出はほとんどみられず、浸食防止にも優れていることが確かめられた。

Claims (17)

  1. 下記(1)〜(4):
    (1)未発酵の植物破砕片、
    (2)化成肥料、
    (3)緩効性有機質窒素肥料としての乾燥菌体肥料、及び
    (4)粒状の多孔質資材
    を含む植生基盤材。
  2. さらにバーク堆肥を含む請求項1に記載の植生基盤材。
  3. (1)未発酵の植物破砕片が、抜根、伐採木及び剪定枝の少なくとも一種をチップ化したものである請求項1又は2に記載の植生基盤材。
  4. (2)化成肥料が、高度化成肥料を含む請求項1〜3のいずれかに記載の植生基盤材。
  5. (3)乾燥菌体肥料が、5.1質量%以上の窒素含有量を有する請求項1〜4のいずれかに記載の植生基盤材。
  6. (4)粒状の多孔質資材が、ゼオライト、バーミュキュライト、赤玉土、木炭、ヤシガラ炭、及び炭化汚泥の群から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載の植生基盤材。
  7. (1)未発酵の植物破砕片を50〜80容量%含む請求項1〜6のいずれかに記載の植生基盤材。
  8. (4)粒状の多孔質資材を2〜5容量%含む請求項1〜7のいずれかに記載の植生基盤材。
  9. バーク堆肥を20〜50容量%含む請求項2〜8のいずれかに記載の植生基盤材。
  10. (3)乾燥菌体肥料を植生基盤材1000L中に20〜70kg含む請求項1〜7のいずれかに記載の植生基盤材。
  11. 高度化成肥料を植生基盤材1000L中に4〜6kg含む請求項4〜10のいずれかに記載の植生基盤材。
  12. さらに高分子接合剤を植生基盤材1000L中に0.5〜1.5kg含む請求項1〜11のいずれかに記載の植生基盤材。
  13. さらに発酵処理した油かす粉末及び/又は魚かす粉末を含む請求項1〜12のいずれかに記載の植生基盤材。
  14. さらに種子を含む請求項1〜13のいずれかに記載の植生基盤材。
  15. (3)乾燥菌体肥料と(4)粒状の多孔質資材との比((3)の質量/(4)の容量)が10〜15である請求項1〜14のいずれかに記載の植生基盤材。
  16. 請求項1〜15の植生基盤材を含む施工材料を、法面に施し、種子の生育を図ることを特徴とする緑化工法。
  17. 植生基盤材を含む施工材料を、厚層基材吹き付け工法により、法面に施す請求項16に記載の緑化工法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012244934A (ja) * 2011-05-27 2012-12-13 Kumagai Gumi Co Ltd 屋上緑化のための植物生育材料
CN104402607A (zh) * 2014-11-20 2015-03-11 中国水稻研究所 一种水稻专用生物炭基无土有机育秧基质
CN104926440A (zh) * 2015-05-29 2015-09-23 江苏农林职业技术学院 一种适用于机插秧水稻的育秧基质及其制备方法
JP2021177735A (ja) * 2020-05-14 2021-11-18 昭和電工マテリアルズ・テクノサービス株式会社 育苗培土の製造方法、育苗培土、及び植物の栽培方法

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