図1は、本発明の第1の実施の形態に係る塗布システム1の構成を示す図である。塗布システム1は、有機EL(Electro Luminescence)表示装置用のガラス基板(以下、単に「基板」という。)に流動性材料を塗布するシステムであって、本実施の形態では、アクティブマトリックス駆動方式の有機EL表示装置用の基板に、正孔輸送材料および有機EL材料をそれぞれ含む流動性材料が塗布される(以下の実施の形態においても同様)。塗布システム1では、TFT回路、ITO電極および隔壁が形成された基板上に正孔輸送材料の層(以下、「正孔輸送層」という。)および有機EL材料の層(以下、「有機EL層」という。)が形成される。
ここで、「正孔輸送層」とは、正孔を有機EL層へと輸送する狭義の正孔輸送層のみを意味するのではなく、狭義の正孔輸送層の他に正孔の注入を行う正孔注入層も含む。また、「正孔輸送材料」とは、狭義の正孔輸送材料の他に正孔注入材料も含む。
図1に示すように、塗布システム1は、複数の処理ユニットを含む処理ユニット群2、処理ユニット群2による処理が行われる前の未処理基板および処理が行われた後の処理済基板が載置される基板搬入搬出部としてのインデクサ3、並びに、処理ユニット群2およびインデクサ3に対して基板の受け渡しを行い、インデクサ3から処理ユニット群2の少なくとも一部を経由してインデクサ3へと至る所定の搬送経路に沿って基板を搬送する基板搬送機構であるマルチ搬送ロボット4を備える。塗布システム1では、処理ユニット群2の複数の処理ユニットによる基板の処理が常圧下において行われる。
処理ユニット群2は、正孔輸送材料を含む流動性材料である正孔輸送液を基板に向けて連続的に吐出して基板に正孔輸送液を塗布する正孔輸送塗布ユニット21、正孔輸送液が塗布された基板を加熱することにより正孔輸送液を基板上に定着させて(すなわち、正孔輸送液を乾燥させて正孔輸送液に含まれる正孔輸送材料を基板上に固着させて)正孔輸送材料の層(すなわち、正孔輸送層)を基板上に形成する正孔輸送ベークユニット22、有機EL材料を含む流動性材料である有機EL液を正孔輸送層が形成された基板に向けて連続的に吐出して基板に有機EL液を塗布する有機EL塗布ユニット24、および、有機EL液が塗布された基板を加熱することにより有機EL液を基板上に定着させて(すなわち、有機EL液を乾燥させて有機EL液に含まれる有機EL材料を基板上に固着させて)有機EL材料の層(すなわち、有機EL層)を基板上の正孔輸送層上に形成する有機ELベークユニット25を含む。
図2は、基板9を示す平面図である。図2では、基板9上において正孔輸送液および有機EL液が塗布されて正孔輸送層および有機EL層が形成される領域(以下、「塗布領域」という。)91に平行斜線を付す。本実施の形態では、基板9上に4つの塗布領域91が設けられ、1枚の基板9から4つの有機EL表示装置が製造される。4つの塗布領域91の周囲の格子状の領域92は、ドライバ回路の組み込みや後工程における絶縁膜による封止等に利用されるため、正孔輸送層や有機EL層が形成されるべきではない領域であり、以下、「非塗布領域92」という。
図1に示すように、処理ユニット群2は、正孔輸送液が塗布される前の基板9上の非塗布領域92(図2参照)に第1マスキングテープを貼付するとともに正孔輸送液が塗布された後の基板9から正孔輸送液が塗布された第1マスキングテープを剥離するテープ貼付・剥離ユニットである正孔輸送テープユニット23、および、有機EL液が塗布される前の基板9上の非塗布領域92に第2マスキングテープを貼付するとともに有機EL液が塗布された後の基板9から第2マスキングテープを剥離するテープ貼付・剥離ユニットである有機ELテープユニット26をさらに含む。なお、以下の説明では、必要に応じて第1マスキングテープおよび第2マスキングテープを「マスキングテープ」と総称する。
処理ユニット群2では、マルチ搬送ロボット4が移動する直線状の移動路41の一方側に、正孔輸送塗布ユニット21、正孔輸送ベークユニット22および正孔輸送テープユニット23が配列されており、移動路41の他方側に有機EL塗布ユニット24、有機ELベークユニット25および有機ELテープユニット26が配列されている。塗布システム1では、処理ユニット群2のうち、正孔輸送テープユニット23および有機ELテープユニット26が、他のいずれの処理ユニット(すなわち、正孔輸送塗布ユニット21、正孔輸送ベークユニット22、有機EL塗布ユニット24および有機ELベークユニット25)よりもインデクサ3に近い位置に配置される。
インデクサ3は、複数枚の基板9をそれぞれ収容する複数のカセット90が載置されるカセット載置部31、処理ユニット群2側に設けられてカセット90に対する基板9の搬出および搬入を行うインデクサロボット32を備える。インデクサ3は、クリーンルーム通路(図示省略)に面しており、クリーンルーム通路を走行する運搬装置(図示省略)により、処理前の未処理基板が収容されたカセット90がインデクサ3に搬入されてカセット載置部31に載置され、また、処理後の処理済基板が収容されたカセット90がインデクサ3から搬出される。
インデクサロボット32は、マルチ搬送ロボット4の移動路41と略垂直な直線状の移動路33を移動して各カセット90に対応する位置に位置する。また、インデクサロボット32がマルチ搬送ロボット4との間で基板9の受け渡しを行うことにより、インデクサ3と処理ユニット群2との間における基板9の移送が行われる。
図3は、インデクサロボット32およびマルチ搬送ロボット4を示す図である。図3に示すように、インデクサロボット32は、基板9を保持する2つのハンド321,322、ハンド321,322を基台部323に対して個別に進退させる進退機構324,325、および、基台部323を移動する基台部移動機構(図示省略)を備える。進退機構324,325は多関節アーム型であり、ハンド321,322を姿勢を保持した状態で水平方向に進退させる。インデクサロボット32の基台部323は、基台部移動機構により、移動路33(図1参照)上を水平方向に移動するとともに垂直方向に昇降し、さらに、垂直方向を向く回転軸を中心として回転する。
マルチ搬送ロボット4も、インデクサロボット32と同様に、基板9を保持する保持部である2つのハンド421,422、ハンド421,422を基台部423に対して個別に進退させる進退機構424,425、および、基台部423を移動する基台部移動機構(図示省略)を備える。進退機構424,425は多関節アーム型であり、ハンド421,422を姿勢を保持した状態で水平方向に進退させる。また、基台部移動機構により、基台部423が移動路41に沿って水平方向に移動するとともに垂直方向に昇降し、さらに、垂直方向を向く回転軸を中心として回転する。
図1に示す塗布システム1では、インデクサロボット32から基板9を受け取ったマルチ搬送ロボット4が、移動路41上を移動して処理ユニット群2の各処理ユニットにアクセスし、基板9を保持するハンド421,422が進退機構424,425により進退することにより、各処理ユニットに対する基板9の搬入および搬出が行われ、さらに、マルチ搬送ロボット4からインデクサロボット32へと処理後の基板9が渡されることにより基板9が処理ユニット群2から搬出される。このように、塗布システム1では、マルチ搬送ロボット4により基板9が所定の搬送経路に沿って搬送される。
ここで、「搬送経路」とは、基板搬送機構により搬送される基板9が移動する経路を意味する。例えば、本実施の形態のように、移動するマルチ搬送ロボット4により基板9が搬送される場合には、搬送経路は、ハンド421,422により保持された状態でマルチ搬送ロボット4が移動することにより基板9が移動する経路、および、ハンド421,422が進退機構424,425により進退することにより基板9が移動する経路となり、また、固定された複数の搬送アーム等により基板9が各ユニット間を順次搬送される場合には、搬送経路は当該複数の搬送アームにより基板9が移動する経路となる。
図4ないし図6はそれぞれ、正孔輸送テープユニット23の構成を示す平面図、正面図および右側面図である。図4ないし図6に示すように、正孔輸送テープユニット23は、基板9を保持する基板保持部231、基板9を移動する基板移動機構232、正孔輸送液が塗布される前の基板9上の非塗布領域92に第1マスキングテープを貼付するテープ貼付ヘッド233、正孔輸送液が塗布された後の基板9から第1マスキングテープを剥離するテープ剥離ヘッド234、並びに、テープ貼付ヘッド233およびテープ剥離ヘッド234を移動するヘッド移動機構235を備える。
正孔輸送テープユニット23では、基板移動機構232により、基板9が基板保持部231と共にレール2321に沿って水平方向に移動するとともに垂直方向を向く回転軸を中心として回転する。また、ヘッド移動機構235により、テープ貼付ヘッド233およびテープ剥離ヘッド234が、基板9の移動範囲の上方においてレール2351に沿って水平方向に移動される。基板9の移動方向とテープ貼付ヘッド233およびテープ剥離ヘッド234の移動方向とは互いに垂直とされる。
図7は、テープ貼付ヘッド233の内部構成を拡大して示す正面図である。図7では、テープ貼付ヘッド233のハウジング2331に収容される構成を説明するため、ハウジング2331の内部を描いている。テープ貼付ヘッド233では、ベーステープ82の一方の主面に第1マスキングテープ81が保持された2層構造のテープ8を利用して第1マスキングテープ81の貼付が行われる。
図7に示すように、テープ貼付ヘッド233は、未使用のテープ8が巻き付けられる供給リール2332、テープ8から第1マスキングテープ81を分離して基板9に貼付する貼付機構2333、第1マスキングテープ81が分離された後のテープ8(すなわち、ベーステープ82)を巻き取って回収する回収リール2334、および、これらの構成を収容するハウジング2331を備える。
正孔輸送テープユニット23により基板9に第1マスキングテープ81が貼付される際には、まず、基板移動機構232およびヘッド移動機構235(図4ないし図6参照)により基板9およびテープ貼付ヘッド233が移動されて貼付開始位置に位置する。続いて、テープ貼付ヘッド233の貼付機構2333の切断部2335により、テープ8の切断部2335と対向する側において第1マスキングテープ81のみが切断される。
切断された第1マスキングテープ81は、供給リール2332および回収リール2334が図7中における反時計回りに回転することにより、ベーステープ82と共に貼付機構2333のテープ分離部材2336の先端へと送られ、当該先端において、ベーステープ82が送られてきた方向とはおよそ反対側に導かれることにより、第1マスキングテープ81がベーステープ82から剥離し、その先端部がハウジング2331の下部開口2337から基板9に向かって移動する。
これと並行して、エアシリンダ2338により貼付ローラ2339が下部開口2337を介して下方に移動し、第1マスキングテープ81の先端部を上側(すなわち、第1マスキングテープ81の粘着面とは反対側)から基板9に押圧して貼付する。これと同時に、基板移動機構232により基板9が図7の左方向に移動を開始する。そして、供給リール2332からテープ8が継続的に送り出されるとともに基板9が移動を継続することにより、基板9上に第1マスキングテープ81が貼付される。
テープ貼付ヘッド233では、切断部2335によりテープ8上の第1マスキングテープ81のみが再び切断され、第1マスキングテープ81が後端部まで基板9に貼付されることにより第1マスキングテープ81の貼付が終了する。なお、テープ貼付ヘッド233では、第1マスキングテープ81の先端部および後端部の貼付時以外は、貼付ローラ2339はハウジング2331内へと待避していてもよい。また、第1マスキングテープ81の貼付開始は、テープ8を供給しつつテープ8の供給速度に等しい速度で移動している基板9に対して行われてもよい。
正孔輸送テープユニット23では、図2に示すように、基板9の格子状の非塗布領域92のうち、基板移動機構232による基板9の移動方向に平行に伸びる領域(すなわち、図2中の上下方向に伸びる領域)にのみ第1マスキングテープ81が貼付され、基板9の移動方向に垂直に伸びる領域(すなわち、図2中の左右方向に伸びる領域)には第1マスキングテープ81の貼付は行われない。後述するように、塗布システム1では、第1マスキングテープ81の貼付が省略された領域に対しては正孔輸送液の塗布は行われない。
図8は、テープ剥離ヘッド234の内部構成を拡大して示す正面図である。図8でも、図7と同様に、テープ剥離ヘッド234のハウジング2341の内部を描いている。テープ剥離ヘッド234では、第1マスキングテープ81よりも幅が大きい剥離テープ83を第1マスキングテープ81に接着して第1マスキングテープ81を持ち上げることにより、基板9からの第1マスキングテープ81の剥離が行われる。
図8に示すように、テープ剥離ヘッド234は、未使用の剥離テープ83が巻き付けられる供給リール2342、剥離テープ83を基板9上の第1マスキングテープ81に接着する接着機構2343、剥離テープ83および剥離テープ83に接着された第1マスキングテープ81を巻き取って回収する回収リール2344、並びに、これらの構成を収容するハウジング2341を備える。
正孔輸送テープユニット23により基板9から第1マスキングテープ81が剥離される際には、まず、基板移動機構232およびヘッド移動機構235(図4ないし図6参照)により基板9およびテープ剥離ヘッド234が移動されて剥離開始位置に位置する。すなわち、剥離対象である第1マスキングテープ81の先端が、テープ剥離ヘッド234のハウジング2341の下部開口2345の下方に位置する。
続いて、エアシリンダ2346により押圧ローラ2347が下部開口2345を介して下方に移動し、剥離テープ83を上側(すなわち、剥離テープ83の粘着面とは反対側)から第1マスキングテープ81の先端部に押圧して接着する。次に、基板移動機構232により基板9が図8中の左方向に移動を開始する。これと同時に、供給リール2342および回収リール2344の図8中における時計回りの回転が開始されて剥離テープ83が供給リール2342から送り出されるとともに押圧ローラ2347が上方に移動して元の位置に戻ることにより、剥離テープ83に接着された第1マスキングテープ81の先端部が基板9から剥離する。そして、供給リール2342から剥離テープ83が継続的に送り出されるとともに基板9が移動を継続することにより、基板9上の第1マスキングテープ81が剥離テープ83に接着されつつ基板9から剥離して回収リール2344に回収される。
正孔輸送テープユニット23では、正孔輸送液が付着した第1マスキングテープ81の上面を剥離テープ83により覆って第1マスキングテープ81を基板9から剥離するため、第1マスキングテープ81上に付着した正孔輸送液を基板9に落下させることなく第1マスキングテープ81を回収することができる。なお、剥離テープ83の第1マスキングテープ81への接着開始は、剥離テープ83を供給しつつ剥離テープ83の供給速度に等しい速度で移動している基板9に対して行われてもよい。
有機ELテープユニット26は、図4ないし図6に示す正孔輸送テープユニット23と同様の構造を有するため、図示を省略する。有機ELテープユニット26は、正孔輸送テープユニット23と同様に、基板9を保持する基板保持部、基板9を移動する基板移動機構、有機EL液が塗布される前の基板9上の非塗布領域92に第2マスキングテープを貼付するテープ貼付ヘッド、有機EL液が塗布された後の基板9から第2マスキングテープを剥離するテープ剥離ヘッド、並びに、テープ貼付ヘッドおよびテープ剥離ヘッドを移動するヘッド移動機構を備える。テープ貼付ヘッドおよびテープ剥離ヘッドの内部構成も、図7および図8に示す正孔輸送テープユニット23のテープ貼付ヘッド233およびテープ剥離ヘッド234と同様である。
有機ELテープユニット26では、正孔輸送テープユニット23と同様に、基板9の格子状の非塗布領域92のうち、基板9の移動方向に平行に伸びる領域にのみ第2マスキングテープが貼付され、基板9の移動方向に垂直に伸びる領域には第2マスキングテープの貼付は行われない。後述するように、塗布システム1では、第2マスキングテープの貼付が省略された領域に対しては有機EL液の塗布は行われない。また、正孔輸送テープユニット23と同様に、テープ剥離ヘッドにより有機EL液が付着した第2マスキングテープの上面を剥離テープにて覆って第2マスキングテープを剥離することにより、第2マスキングテープ上に付着した有機EL液を基板9に落下させることなく第2マスキングテープを回収することができる。
図9および図10は、有機EL塗布ユニット24の構成を示す平面図および正面図である。図10に示すように、有機EL塗布ユニット24は、図示しないヒータによる加熱機構を内蔵するとともに基板9を保持する基板保持部241、および、基板保持部241を所定の移動方向(すなわち、図9中における上下方向)に水平移動するとともに垂直方向に向く軸を中心として回転する基板移動機構242を備え、また、図9および図10に示すように、基板9上に形成されたアライメントマーク(図示省略)を撮像して検出するアライメントマーク検出部243、基板保持部241上の基板9に向けて有機EL液を吐出して塗布する塗布ヘッド244、塗布ヘッド244を基板保持部241の移動方向とは垂直な水平方向(すなわち、図9中における左右方向)に移動するヘッド移動機構245、および、これらの構成を制御する制御部を備える。
塗布ヘッド244は、有機EL液をそれぞれ吐出する3本のノズル247a,247b,247c、および、3本のノズル247a〜247cに有機EL液をそれぞれ供給する塗布液供給部248a,248b,248cを備える。ノズル247a〜247cは、図9中における左右方向(すなわち、塗布ヘッド244の移動方向)に略直線状に配列されるとともに図9中における上下方向(すなわち、基板9の移動方向)に僅かにずれて配置される。図9中における上下方向に関し、ノズル247aとノズル247bとの間の距離、および、ノズル247bとノズル247cとの間の距離は、基板9上に予め形成されている図9中の左右方向に伸びる隔壁間のピッチ(以下、「隔壁ピッチ」という。)と等しくされる。
塗布液供給部248aは、有機EL液を貯溜する貯溜タンク、貯溜タンクから有機EL液を吸引するポンプ、有機EL液の流量を検出する流量計、および、有機EL液中の異物を除去するフィルタを備え、流量計からの出力に基づいてポンプが制御部により制御されることにより、有機EL液が予め設定された設定流量にてノズル247aに供給されて基板9に向けて吐出される(塗布液供給部248b,248c、および、ノズル247b,247cにおいても同様)。塗布ヘッド244では、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)と互いに色が異なる3種類の有機EL材料をそれぞれ含む3種類の有機EL液がそれぞれ、3つの塗布液供給部から3本のノズル247a〜247cに供給されて吐出される。
有機EL塗布ユニット24により有機EL液の塗布が行われる際には、まず、有機ELテープユニット26により非塗布領域92(図2参照)に第2マスキングテープが貼付された基板9が基板保持部241に載置されて保持され、アライメントマーク検出部243からの出力に基づいて基板移動機構242が駆動されて基板9が図9中に実線にて示す塗布開始位置に位置する。塗布ヘッド244は予め図9および図10中に実線にて示す位置に位置している。
続いて、塗布液供給部248a〜248cが制御されてノズル247a〜247cから有機EL液の吐出が開始されるとともに、ヘッド移動機構245が駆動されて塗布ヘッド244(すなわち、ノズル247a〜247c)の移動が開始される。有機EL塗布ユニット24では、塗布ヘッド244の3本のノズル247a〜247cから3種類の有機EL液を基板9に向けて連続的に吐出しつつ、ノズル247a〜247cを基板9に対して図9中の左側から右側へと相対的に移動することにより、基板9上に有機EL液がストライプ状に塗布される。基板9上の塗布領域91には上述のように複数の隔壁が予め形成されており、3種類の有機EL液は隔壁間の隣接する3つの溝部に塗布される。
塗布ヘッド244が図9および図10中に二点鎖線にて示す位置まで移動すると、基板移動機構242が駆動され、基板9が基板保持部241と共に図9中の上側に隔壁ピッチの3倍の距離だけ移動する。そして、塗布ヘッド244が有機EL液を吐出しつつ図9中において右側から左側へと移動することにより、基板9上に3種類の有機EL液がストライプ状に塗布される。
図11は、基板9を示す平面図であり、図12は、図11中のA−Aの位置における基板9の断面図である。有機EL塗布ユニット24では、塗布ヘッド244の左右方向への移動、および、基板9のピッチ移動が繰り返されることにより、図11および図12に示すように、基板9上の第2マスキングテープ84を含む領域(すなわち、非塗布領域92に貼付された第2マスキングテープ84上の領域、および、塗布領域91の隔壁間の溝部)に有機EL液93がストライプ状に塗布される。なお、図11では、図示の都合上、基板9上に塗布された有機EL液93の幅およびピッチを実際よりも大きく描いている。
有機EL塗布ユニット24では、有機EL液93の塗布が行われている間、塗布ヘッド244のノズル247a〜247c(図9および図10参照)から有機EL液93が連続的に吐出されている。有機EL塗布ユニット24では、非塗布領域92のうち基板9の移動方向に垂直に伸びる領域(すなわち、図11中において左右方向に伸びる領域であり、第2マスキングテープ84の貼付が省略されている領域)に対して、塗布ヘッド244を基板9上から待避させた状態で、基板9を当該領域の幅(すなわち、図11中の上下方向の幅)と等しい距離だけ移動することにより、当該領域への有機EL液93の塗布が回避される。
基板9が図9中に二点鎖線にて示す塗布終了位置まで移動すると、ノズル247a〜247cからの有機EL液93の吐出が停止されて基板9に対する有機EL液93の塗布が終了する。そして、上述の有機ELテープユニット26において、有機EL液93が塗布された基板9から第2マスキングテープ84が剥離されることにより、図13に示すように、基板9の塗布領域91上にのみ有機EL液93が残置される。
正孔輸送塗布ユニット21は、図9および図10に示す有機EL塗布ユニット24と同様の構成を有するため、図示を省略する。正孔輸送塗布ユニット21は、有機EL塗布ユニット24と同様に、基板9を保持する基板保持部、基板保持部を移動するとともに回転する基板移動機構、アライメントマークを撮像して検出するアライメントマーク検出部、基板9に向けて正孔輸送液を塗布する塗布ヘッド、塗布ヘッドを移動するヘッド移動機構、および、これらの構成を制御する制御部を備える。
正孔輸送塗布ユニット21の塗布ヘッドは、正孔輸送塗布ユニット21の塗布ヘッド244と同様に、正孔輸送液をそれぞれ吐出する3本のノズル、および、3本のノズルに正孔輸送液をそれぞれ供給する塗布液供給部を備え、基板9の移動方向に関するノズルの間隔は隔壁ピッチに等しくされる。正孔輸送塗布ユニット21では、3本のノズルに単一種類の正孔輸送液が供給されて吐出され、基板9上の隔壁間の隣接する3つの溝部に塗布される。正孔輸送塗布ユニット21でも、有機EL塗布ユニット24と同様に、非塗布領域92のうち第1マスキングテープ81の貼付が省略された領域に対して、塗布ヘッドを基板9上から待避させた状態で基板9を移動することにより、正孔輸送液の塗布が回避される。
図14は、正孔輸送ベークユニット22を示す斜視図である。図14に示すように正孔輸送ベークユニット22は、正孔輸送液が塗布された基板9を加熱して正孔輸送液を基板9上に定着させる加熱部221、および、加熱部221により加熱された基板9を常温まで冷却する冷却部222を備える。図14では、図示の都合上、加熱部221と冷却部222とを分離させて描いているが、実際は冷却部222上に加熱部221が重ねて配置されている。
加熱部221は、ヒータ(図示省略)が内蔵されたホットプレート2211、および、ホットプレート2211を内部に収容するハウジング2212を備え、ハウジング2212には、基板9の搬出入に利用される開口2213が形成されている。加熱部221では、ヒータにより加熱されて高温となっているホットプレート2211上に基板9が載置されることにより(あるいは、ホットプレート2211上においてホットプレート2211と微小距離だけ離れた位置に保持されることにより)基板9が加熱され、基板9に塗布された正孔輸送液から溶媒成分が蒸発して正孔輸送液が基板9上に定着し、基板9上に正孔輸送層が形成される。
冷却部222は、内部に冷媒が流れるクールプレート2221、および、クールプレート2221を内部に収容するハウジング2222を備え、ハウジング2222には、基板9の搬出入に利用される開口2223が形成されている。冷却部222では、加熱部221により加熱された基板9がクールプレート2221上に載置されて冷却されることにより、高温の基板9を常温まで迅速に冷却することができる。
有機ELベークユニット25は、図14に示す正孔輸送ベークユニット22と同様の構成を有するため、図示を省略する。有機ELベークユニット25は、正孔輸送ベークユニット22と同様に、有機EL液が塗布された基板9を加熱して有機EL液を基板9上に定着させる加熱部、および、加熱部により加熱された基板9を常温まで冷却する冷却部を備える。加熱部は、ヒータが内蔵されたホットプレート、および、ホットプレートを内部に収容するハウジングを備え、冷却部は、内部に冷媒が流れるクールプレート、および、クールプレートを内部に収容するハウジングを備える。
有機ELベークユニット25でも、正孔輸送ベークユニット22と同様に、加熱部のホットプレート上に基板9が載置されることにより、基板9に塗布された有機EL液から溶媒成分が蒸発して有機EL液が基板9上に定着し、基板9上に有機EL層が形成される。そして、加熱後の基板9が冷却部のクールプレート上に載置されることにより、高温の基板9が迅速に常温まで冷却される。
次に、塗布システム1の動作について説明する。図15.Aないし図15.Dは、塗布システム1の動作の流れを示す図である。図1に示す塗布システム1では、TFT回路、ITO電極および隔壁が形成された複数の基板9が収容されているカセット90が、インデクサ3のカセット載置部31上に予め載置されており、まず、インデクサ3のインデクサロボット32(図3参照)により、カセット載置部31上のカセット90から基板9が取り出され、マルチ搬送ロボット4により、インデクサロボット32のハンド321に保持された基板9が受け取られてハンド421(図3参照)に保持される(ステップS11)。
続いて、マルチ搬送ロボット4が、移動路41上を正孔輸送テープユニット23の前まで移動し、ハンド421に保持された基板9が正孔輸送テープユニット23に搬入されて基板保持部231(図4参照)に載置される(ステップS12)。正孔輸送テープユニット23では、テープ貼付ヘッド233(図7参照)により基板9の非塗布領域92(図2参照)に第1マスキングテープ81(図7参照)が貼付される(ステップS13)。
第1マスキングテープ81の貼付が終了すると、マルチ搬送ロボット4により基板9が正孔輸送テープユニット23から搬出され(ステップS14)、マルチ搬送ロボット4が正孔輸送塗布ユニット21の前まで移動する。そして、基板9が正孔輸送塗布ユニット21に搬入されて基板保持部に載置される(ステップS15)。正孔輸送塗布ユニット21では、非塗布領域92に第1マスキングテープ81が貼付された基板9に向けて正孔輸送液が吐出され、非塗布領域92上の第1マスキングテープ81を含む基板9上の領域(すなわち、第1マスキングテープ81上の領域、および、塗布領域91の隔壁間の溝部)に正孔輸送液がストライプ状に塗布される(ステップS16)。
正孔輸送液の塗布が終了すると、マルチ搬送ロボット4により基板9が正孔輸送塗布ユニット21から搬出され(ステップS17)、再び正孔輸送テープユニット23へと搬送されて正孔輸送テープユニット23に搬入される(ステップS21)。このとき、基板9は、マルチ搬送ロボット4のハンド421により保持されて搬送される。また、基板9上では、正孔輸送塗布ユニット21により塗布された正孔輸送液の溶媒成分の一部が基板保持部の加熱機構により蒸発し、正孔輸送液がある程度乾燥した状態(いわゆる、生乾きの状態)にて第1マスキングテープ81および塗布領域91上に付着している。正孔輸送テープユニット23では、テープ剥離ヘッド234(図8参照)により、基板保持部231に保持された基板9から正孔輸送液が塗布された第1マスキングテープ81が剥離される(ステップS22)。
第1マスキングテープ81が剥離されると、マルチ搬送ロボット4により基板9が正孔輸送テープユニット23から搬出され(ステップS23)、正孔輸送ベークユニット22へと搬送されて正孔輸送ベークユニット22に搬入される(ステップS24)。基板9が正孔輸送テープユニット23から正孔輸送ベークユニット22へと搬送される際には、基板9は、マルチ搬送ロボット4のハンド422(すなわち、正孔輸送塗布ユニット21から正孔輸送テープユニット23へと搬送する際に保持する保持部とは異なるもう1つの保持部)により保持される。
正孔輸送ベークユニット22では、第1マスキングテープ81が剥離された基板9が加熱部221のホットプレート2211(図14参照)に載置されて加熱され、基板9の塗布領域91において隔壁間の溝部に塗布された正孔輸送液が、基板9(のITO電極)上に定着して正孔輸送層が形成される(ステップS25)。続いて、マルチ搬送ロボット4により基板9が加熱部221から搬出されて冷却部222へと搬入され、クールプレート2221(図14参照)上に載置されて常温まで冷却される(ステップS26)。
基板9の冷却が終了すると、マルチ搬送ロボット4により基板9が正孔輸送ベークユニット22から搬出され(ステップS27)、有機ELテープユニット26に搬入される(ステップS31)。有機ELテープユニット26では、テープ貼付ヘッドにより基板9の非塗布領域92に第2マスキングテープ84が貼付される(ステップS32)。
第2マスキングテープ84の貼付が終了すると、マルチ搬送ロボット4により有機ELテープユニット26から基板9が搬出され(ステップS33)、有機EL塗布ユニット24に搬入される(ステップS34)。有機EL塗布ユニット24では、基板保持部241に保持された基板9に向けて3種類の有機EL液が吐出され、非塗布領域92上の第2マスキングテープ84を含む基板9上の領域(すなわち、第2マスキングテープ84上、および、塗布領域91の隔壁間の溝部に形成された正孔輸送層上の領域)に3種類の有機EL液がストライプ状に塗布される(ステップS35)。
有機EL液の塗布が終了すると、マルチ搬送ロボット4により基板9が有機EL塗布ユニット24から搬出され(ステップS36)、再び有機ELテープユニット26へと搬入される(ステップS41)。基板9上では、有機EL塗布ユニット24により塗布された有機EL液の溶媒成分の一部が基板保持部241の加熱機構により蒸発し、有機EL液がある程度乾燥した状態(いわゆる、生乾きの状態)にて第2マスキングテープ84および塗布領域91(の正孔輸送層)上に付着している。有機ELテープユニット26では、テープ剥離ヘッドにより、基板9から有機EL液が塗布された第2マスキングテープ84が剥離される(ステップS42)。
第2マスキングテープ84が剥離されると、マルチ搬送ロボット4により基板9が有機ELテープユニット26から搬出され(ステップS43)、有機ELベークユニット25に搬入される(ステップS44)。基板9が有機ELテープユニット26から有機ELベークユニット25へと搬送される際には、基板9は、マルチ搬送ロボット4のハンド421,422のうち、有機EL塗布ユニット24から有機ELテープユニット26へと基板9を搬送する際に利用されたハンドとは異なるハンドにより保持される。
有機ELベークユニット25では、第2マスキングテープ84が剥離された基板9が加熱部のホットプレートにより加熱され、基板9の正孔輸送層上に塗布された有機EL液が基板9(の正孔輸送層)上に定着して有機EL層が形成される(ステップS45)。続いて、マルチ搬送ロボット4により基板9が加熱部から搬出されて冷却部へと搬入され、クールプレートにより常温まで冷却される(ステップS46)。
基板9の塗布領域91において正孔輸送層上に積層される有機EL層の形成が終了すると、基板9が、マルチ搬送ロボット4により有機ELベークユニット25から搬出され(ステップS47)、インデクサ3へと搬送されてインデクサロボット32により受け取られ、カセット載置部31上のカセット90に収容される(ステップS48)。塗布システム1では、カセット90に所定枚数の処理済基板が収容されると、当該カセット90が塗布システム1外に搬出され、他の装置により陰極の形成、および、絶縁膜による封止が行われて有機EL表示装置が製造される。
以上に説明した塗布システム1において、正孔輸送層の形成に係る構成に注目すると、処理ユニット群2が、非塗布領域92に第1マスキングテープ81が貼付された基板9に正孔輸送液を塗布する正孔輸送塗布ユニット21、および、正孔輸送液が塗布された基板9から第1マスキングテープ81を剥離する正孔輸送テープユニット23を含む。これにより、基板9に正孔輸送液を塗布する際に、基板9上の非塗布領域92に正孔輸送液が付着することを確実に防止し、塗布領域91のみに正孔輸送液が塗布された基板9を容易に得ることができる。また、正孔輸送液の塗布および第1マスキングテープ81の剥離を1つのシステム内にて行うことができるため、基板9の処理時間を短縮することができるとともに塗布システム1の製造コストを低減することができる(本段落にて説明した事項は、以下の第2ないし第9の実施の形態において同様である。)。
処理ユニット群2では、正孔輸送テープユニット23により基板9上の非塗布領域92に第1マスキングテープ81を貼付することにより、第1マスキングテープ81の貼付をも1つのシステム内にて行うことができ、基板9の処理時間をより短縮することができるとともに塗布システム1の製造コストをより低減することができる。また、正孔輸送テープユニット23が、基板9に対する第1マスキングテープ81の貼付も行うテープ貼付・剥離ユニットであるため、塗布システム1の構造を簡素化することができる(第2、第3、第7ないし第9の実施の形態において同様)。
塗布システム1では、処理ユニット群2が、第1マスキングテープ81が剥離された基板9を加熱して正孔輸送液を基板9上に定着させる正孔輸送ベークユニット22をさらに含むことにより、塗布領域91のみに正孔輸送液を定着させた基板9を容易に得ることができる。また、正孔輸送液の定着(すなわち、正孔輸送層の形成)も1つのシステム内にて行うことができるため、基板9の処理時間をより短縮することができるとともに塗布システム1の製造コストをより低減することができる(第2ないし第9の実施の形態において同様)。
次に、有機EL層の形成に係る構成に注目すると、正孔輸送層の形成に係る構成と同様に、有機EL塗布ユニット24により非塗布領域92に第2マスキングテープ84が貼付された基板9に有機EL液が塗布され、有機ELテープユニット26により基板9から第2マスキングテープ84が剥離されることにより、塗布領域91のみに有機EL液が塗布された基板9を容易に得ることができる。また、有機EL液の塗布および第2マスキングテープ84の剥離を1つのシステム内に行うことができるため、基板9の処理時間の短縮および塗布システム1の製造コストの低減を実現することができる(第4および第7の実施の形態において同様)。
処理ユニット群2では、有機ELテープユニット26により基板9上の非塗布領域92に第2マスキングテープ84を貼付することにより、第2マスキングテープ84の貼付をも1つのシステム内にて行うことができ、基板9の処理時間をより短縮することができるとともに装置の製造コストをより低減することができる。また、有機ELテープユニット26が、基板9に対する第2マスキングテープ84の貼付も行うテープ貼付・剥離ユニットであるため、塗布システム1の構造を簡素化することができる(第2、第3および第7の実施の形態において同様)。
塗布システム1では、処理ユニット群2が、第2マスキングテープ84が剥離された基板9を加熱して有機EL液を基板9上に定着させる有機ELベークユニット25をさらに含むことにより、塗布領域91のみに有機EL液を定着させた基板9を容易に得ることができる。また、有機EL液の定着(すなわち、有機EL層の形成)も1つのシステム内にて行うことができるため、基板9の処理時間をより短縮することができるとともに装置の製造コストをより低減することができる(第2ないし第9の実施の形態において同様)。
有機EL塗布ユニット24では、特に、3色の有機EL材料をそれぞれ含む3種類の有機EL液を並行して基板9に塗布することができる。これにより、複数の有機EL液の塗布のために複数の有機EL塗布ユニットを設ける必要がなく、塗布システム1の小型化を実現することができる。また、複数の有機EL塗布ユニット間における基板9の移動を省略することができるため、基板9の処理時間を短縮することもできる。さらには、3種類の有機EL液の塗布の前後において、第2マスキングテープ84の貼付および剥離を1回のみとすることにより、基板9の処理時間をより短縮することができる(第4および第7の実施の形態において同様)。
次に、塗布システム1全体に注目すると、処理ユニット群2が、基板9に正孔輸送液を塗布する正孔輸送塗布ユニット21、および、基板9に有機EL液を塗布する有機EL塗布ユニット24を含むことにより、正孔輸送液と有機EL液とを1つのシステム内において塗布することができるため、基板9の処理時間をさらに短縮することができる。塗布システム1は、有機EL表示装置用の基板9に正孔輸送液および有機EL液を塗布するシステムに特に適している(第2ないし第9の実施の形態において同様)。
処理ユニット群2では、正孔輸送テープユニット23により正孔輸送液が塗布された第1マスキングテープ81が基板9から剥離され、有機ELテープユニット26により有機EL液が塗布された第2マスキングテープ84が基板9から剥離される。仮に、共通のテープユニットにより正孔輸送液が塗布された第1マスキングテープ81、および、有機EL液が塗布された第2マスキングテープ84が剥離されるとすると、テープユニットに正孔輸送液が付着した場合、その後に搬入される基板9上の定着前の有機EL液に正孔輸送液が混入してしまう可能性がある。テープユニットに有機EL液が付着した場合、その後に搬入される基板9上の定着前の正孔輸送液に有機EL液が混入してしまう可能性がある。塗布システム1では、処理ユニット群2に正孔輸送テープユニット23および有機ELテープユニット26を設けることにより、基板9上における正孔輸送液と有機EL液との混合を確実に防止することができる。さらには、処理ユニット群2に複数のテープ貼付・剥離ユニットを設けることにより、基板9の処理時間を短縮することもできる(第2ないし第9の実施の形態において同様)。
ところで、正孔輸送液と有機EL液とでは異なる溶媒が用いられているため、これらの塗布時に使用されるマスキングテープの最適な表面張力の値は各々異なる。塗布システム1では、処理ユニット群2に正孔輸送テープユニット23および有機ELテープユニット26を設けることにより、正孔輸送液の塗布時に使用される第1マスキングテープ81、および、有機EL液の塗布時に使用される第2マスキングテープ84の表面張力の値をそれぞれ、正孔輸送液および有機EL液の性質に対して適切な値とすることができる。これにより、基板9に対する正孔輸送液および有機EL液の塗布、並びに、基板9からのマスキングテープの剥離による正孔輸送液および有機EL液の除去の質をより向上することができる(第2ないし第9の実施の形態において同様)。
塗布システム1では、処理ユニット群2のうち、正孔輸送テープユニット23および有機ELテープユニット26が、他のいずれの処理ユニットよりもインデクサ3に近い位置に配置される。これにより、処理ユニット群2において、他の正孔輸送塗布ユニット、正孔輸送ベークユニット、有機EL塗布ユニットおよび有機ELベークユニットを、複数の処理ユニットの配列の外側(すなわち、インデクサ3から遠い側)に容易に増設することができる(第2、第3、第7ないし第9の実施の形態において同様)。
また、塗布システム1では、基板9が、マルチ搬送ロボット4により正孔輸送塗布ユニット21から正孔輸送テープユニット23へと搬送される際にハンド421により保持され、正孔輸送テープユニット23から正孔輸送ベークユニット22に搬送される際にハンド422により保持されるため、正孔輸送液がマルチ搬送ロボット4(のハンド421,422)を介して正孔輸送ベークユニット22に付着することを確実に防止することができる。その結果、正孔輸送ベークユニット22に順次搬入される第1マスキングテープ81が剥離された後の基板9に、不要な正孔輸送液が付着することを確実に防止することができる(第2、第3、第7ないし第9の実施の形態において同様)。
同様に、基板9がマルチ搬送ロボット4により有機EL塗布ユニット24から有機ELテープユニット26へと搬送される際にハンド421により保持され、有機ELテープユニット26から有機ELベークユニット25に搬送される際にハンド422により保持されるため、有機EL液がマルチ搬送ロボット4(のハンド421,422)を介して有機ELベークユニット25に付着することを確実に防止することができる。その結果、有機ELベークユニット25に順次搬入される第2マスキングテープ84が剥離された後の基板9に、不要な有機EL液が付着することを確実に防止することができる(第2、第3、第7ないし第9の実施の形態において同様)。
塗布システム1では、処理ユニット群2における基板9に対する処理が全て常圧下で行われるため、塗布システム1の構成を簡素化して製造コストをより低減することができる(第2ないし第9の実施の形態において同様)。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る塗布システム1aについて説明する。図16は、塗布システム1aの構成を示す図である。図16に示すように、塗布システム1aでは、処理ユニット群2が、図1に示す塗布システム1の有機EL塗布ユニット24に代えて、赤色(R)の有機EL材料を含む有機EL液(以下、「有機EL液(R)」という。)を基板9に塗布する第1有機EL塗布ユニット24a、緑色(G)の有機EL材料を含む有機EL液(以下、「有機EL液(G)」という。)を基板9に塗布する第2有機EL塗布ユニット24b、および、青色(B)の有機EL材料を含む有機EL液(以下、「有機EL液(B)」という。)を基板9に塗布する第3有機EL塗布ユニット24cを含む。以下、必要に応じて、第1有機EL塗布ユニット24a〜第3有機EL塗布ユニット24cを「有機EL塗布ユニット24a〜24c」と総称する。また、その他の構成は図1と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
有機EL塗布ユニット24a〜24cの構造は、図9および図10に示す有機EL塗布ユニット24とほぼ同様であるが、基板9の移動方向に関して塗布ヘッドの3本のノズルのそれぞれの間隔が基板9上の隔壁ピッチの3倍とされ、3本のノズルから同色の有機EL液(すなわち、有機EL液(R)、有機EL液(G)および有機EL液(B)のうちのいずれかであり、以下、これら3種類を区別する必要がない場合には、第1の実施の形態同様に、「有機EL液」と総称する。)が吐出される点で異なる。
第1有機EL塗布ユニット24aでは、有機EL液(R)を吐出するノズルおよび基板9の移動が繰り返されることにより、第2マスキングテープ84上および塗布領域91上の隔壁間の複数の溝部に有機EL液(R)がストライプ状に塗布される。第1有機EL塗布ユニット24aにより塗布されるストライプ状の有機EL液(R)は、基板9の移動方向に関して隔壁ピッチの3倍の間隔をあけて配列される。換言すれば、有機EL液(R)が塗布された2本の溝部の間には、有機EL液(R)が塗布されない2本の溝部が挟まれている。
第2有機EL塗布ユニット24bでも同様に、有機EL液(G)を吐出するノズルおよび基板9の移動が繰り返されることにより、有機EL液(R)が塗布された第2マスキングテープ84を含む基板9上の領域(すなわち、有機EL液(R)が塗布された第2マスキングテープ84上の領域、および、有機EL液(R)が塗布された複数の溝部の一方側に隣接する複数の溝部)に、有機EL液(G)が隔壁ピッチの3倍の間隔をあけてストライプ状に塗布され、第3有機EL塗布ユニット24cでも、有機EL液(R)が塗布された溝部と有機EL液(G)が塗布された溝部との間の溝部に、有機EL液(B)が隔壁ピッチの3倍の間隔をあけてストライプ状に塗布される。
図17は、塗布システム1aの動作の流れの一部を示す図である。図17に示す動作(ステップS51〜S59)の前後における動作の流れはそれぞれ、図15.Aないし図15.Dに示すステップS11〜S33、および、ステップS41〜S48と同様である。
塗布システム1aでは、第1の実施の形態同様に、インデクサ3のカセット90からインデクサロボット32により取り出された基板9が、マルチ搬送ロボット4により受け取られて正孔輸送テープユニット23に搬入され、非塗布領域92に第1マスキングテープ81が貼付された後に正孔輸送テープユニット23から搬出される(図15.A:ステップS11〜S14)。続いて、マルチ搬送ロボット4により基板9が正孔輸送塗布ユニット21に搬入され、正孔輸送塗布ユニット21において非塗布領域92上の第1マスキングテープ81を含む基板9上の領域(すなわち、第1マスキングテープ81上の領域、および、塗布領域91の隔壁間の溝部)に正孔輸送液が塗布された後、正孔輸送塗布ユニット21から搬出される(ステップS15〜S17)。
正孔輸送塗布ユニット21から搬出された基板9は、正孔輸送テープユニット23に再び搬入されて正孔輸送液が塗布された第1マスキングテープ81が剥離され、正孔輸送テープユニット23から搬出されて正孔輸送ベークユニット22に搬入される(ステップS21〜S24)。そして、基板9が加熱部221により加熱されることにより正孔輸送液が基板9の塗布領域91上に定着して正孔輸送層が形成され、冷却部222により常温まで冷却された基板9が正孔輸送ベークユニット22から搬出される(ステップS25〜S27)。
正孔輸送ベークユニット22から搬出された基板9は、有機ELテープユニット26に搬入されて非塗布領域92に第2マスキングテープ84が貼付された後、有機ELテープユニット26から搬出される(ステップS31〜S33)。
第2マスキングテープ84が貼付された基板9は、マルチ搬送ロボット4により搬送されて第1有機EL塗布ユニット24aに搬入され(図17:ステップS51)、第2マスキングテープ84を含む基板9上の領域(すなわち、第2マスキングテープ84上の領域、および、塗布領域91の隔壁間の溝部に形成された正孔輸送層上の領域)に有機EL液(R)がストライプ状に塗布される(ステップS52)。続いて、基板9が第1有機EL塗布ユニット24aから搬出されて第2有機EL塗布ユニット24bに搬入され(ステップS53,S54)、有機EL液(G)がストライプ状に塗布される(ステップS55)。次に、基板9が第2有機EL塗布ユニット24bから搬出されて第3有機EL塗布ユニット24cに搬入され(ステップS56,S57)、有機EL液(B)がストライプ状に塗布されて基板9に対する3種類の有機EL液(すなわち、有機EL液(R)、有機EL液(G)および有機EL液(B))の塗布が終了する(ステップS58)。
基板9に対する3種類の有機EL液の塗布が終了すると、マルチ搬送ロボット4により基板9が第3有機EL塗布ユニット24cから搬出され(ステップS59)、再び有機ELテープユニット26へと搬入される(図15.D:ステップS41)。有機ELテープユニット26では、基板9から有機EL液が塗布された第2マスキングテープ84が剥離され、その後、基板9が有機ELテープユニット26から搬出されて有機ELベークユニット25に搬入される(ステップS42〜S44)。
有機ELベークユニット25では、基板9が加熱部により加熱されることにより有機EL液が基板9の塗布領域91上に定着して有機EL層が形成された後、冷却部により基板9が常温まで冷却される(ステップS45,S46)。その後、基板9が有機ELベークユニット25から搬出され、インデクサ3へと搬送されてインデクサロボット32により受け取られる(ステップS47,S48)。
塗布システム1aでは、処理ユニット群2が、第2マスキングテープ84が貼付された基板9に3種類の有機EL液をそれぞれ順次塗布する有機EL塗布ユニット24a〜24c、並びに、3種類の有機EL液が塗布された基板9から第2マスキングテープ84を剥離する有機ELテープユニット26を含むため、塗布領域91のみに有機EL液が塗布された基板9を容易に得ることができ、また、基板9の処理時間を短縮するとともに塗布システム1aの製造コストを低減することができる(第3、第5、第6、第8および第9の実施の形態において同様)。
上述のように、処理ユニット群2では、3種類の有機EL液がそれぞれ個別の処理ユニットである有機EL塗布ユニット24a〜24cにより基板9に塗布される。このため、3種類の有機EL液を、それぞれに適した塗布条件下で基板9に塗布することができ、その結果、3種類の有機EL液の塗布の質を向上することができる(第3、第5、第6、第8および第9の実施の形態において同様)。
また、有機EL液(R)が塗布された第2マスキングテープ84が貼付された状態の基板9に対して、有機EL液(G)および有機EL液(B)を順次塗布することにより、有機EL塗布ユニット24a〜24cによる3種類の有機EL液の塗布の前後において、第2マスキングテープ84の貼付および剥離を1回のみとすることができ、基板9の処理時間をより短縮することができる(第5、第8および第9の実施の形態において同様)。なお、塗布システム1aでは、有機EL液(R)、有機EL液(G)および有機EL液(B)の塗布順序は自由に変更されてよい。
次に、本発明の第3の実施の形態に係る塗布システム1bついて説明する。図18は、塗布システム1bの構成を示す図である。図18に示すように、塗布システム1bでは、処理ユニット群2が、図16に示す有機ELベークユニット25に代えて、有機EL液(R)が塗布された基板9を加熱する第1有機ELベークユニット25a、有機EL液(G)が塗布された基板9を加熱する第2有機ELベークユニット25b、および、有機EL液(B)が塗布された基板9を加熱する第3有機ELベークユニット25cを含む。以下、必要に応じて、第1有機ELベークユニット25a〜第3有機ELベークユニット25cを「有機ELベークユニット25a〜25c」と総称する。有機ELベークユニット25a〜25cの構造は、図14に示す正孔輸送ベークユニット22と同様である。その他の構成は図16と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
図19は、塗布システム1bの動作の流れの一部を示す図である。図19に示す動作(ステップS61〜S72)の前後における動作の流れは、図15.Aおよび図15.Bに示すステップS11〜S27、および、図15.Dに示すステップS48と同様であるため、以下では説明を簡略化する。
塗布システム1bでは、マルチ搬送ロボット4によりインデクサロボット32から基板9が受け取られた後、基板9が正孔輸送テープユニット23、正孔輸送塗布ユニット21、正孔輸送テープユニット23、正孔輸送ベークユニット22、の順に搬送されることにより、基板9に対する第1マスキングテープ81の貼付、正孔輸送液の塗布、第1マスキングテープ81の剥離、および、正孔輸送液の定着が行われて基板9上に正孔輸送層が形成される(ステップS11〜S27)。
正孔輸送層が形成されると、マルチ搬送ロボット4により、有機ELテープユニット26、第1有機EL塗布ユニット24a、有機ELテープユニット26および第1有機ELベークユニット25aの順に基板9が搬送され、基板9に対する第2マスキングテープ84の貼付、有機EL液(R)の塗布、第2マスキングテープ84の剥離、および、基板9の加熱による有機EL液(R)の定着が行われて基板9の正孔輸送層上に赤色(R)の有機EL材料の層が形成される(ステップS61〜S64)。
続いて、マルチ搬送ロボット4により、有機ELテープユニット26、第2有機EL塗布ユニット24b、有機ELテープユニット26および第2有機ELベークユニット25bの順に基板9が搬送され、基板9に対する第2マスキングテープ84の貼付、有機EL液(G)の塗布、第2マスキングテープ84の剥離、および、基板9の加熱による有機EL液(G)の定着が行われて基板9の正孔輸送層上に緑色(G)の有機EL材料の層が形成される(ステップS65〜S68)。
さらに、マルチ搬送ロボット4により、有機ELテープユニット26、第3有機EL塗布ユニット24c、有機ELテープユニット26および第3有機ELベークユニット25cの順に基板9が搬送され、基板9に対する第2マスキングテープ84の貼付、有機EL液(B)の塗布、第2マスキングテープ84の剥離、および、基板9の加熱による有機EL液(B)の定着が行われて基板9の正孔輸送層上に青色(B)の有機EL材料の層が形成される(ステップS69〜S72)。その後、第3有機ELベークユニット25cから搬出された基板9はインデクサ3へと搬送されてインデクサロボット32により受け取られる(ステップS48)。
塗布システム1bでは、3種類の有機EL液がそれぞれ、個別の処理ユニットである有機EL塗布ユニット24a〜24cにより基板9に塗布され、さらに、それぞれの塗布後に、個別の処理ユニットである有機ELベークユニット25a〜25cにより加熱されて基板9に定着する。このため、3種類の有機EL液を、それぞれに適した塗布条件下で基板9に塗布することができ、さらに、それぞれに適した温度条件にて加熱することができる。その結果、3種類の有機EL液の塗布および加熱処理の質を向上することができる(第6の実施の形態において同様)。
次に本発明の第4の実施の形態に係る塗布システム1cについて説明する。図20は、塗布システム1cの構成を示す図である。図20に示すように、塗布システム1cは、図1に示す移動路41を移動するマルチ搬送ロボット4に代えて、インデクサ3と処理ユニット群2との間、および、処理ユニット群2の各処理ユニットの間に配置される固定型の複数の搬送アーム4aを搬送機構として備える。
また、塗布システム1cの処理ユニット群2は、正孔輸送テープユニット23および有機ELテープユニット26に代えて、正孔輸送液が塗布される前の基板9に第1マスキングテープ81を貼付する正孔輸送テープ貼付ユニット23a、および、正孔輸送液が塗布された基板9から第1マスキングテープ81を剥離する正孔輸送テープ剥離ユニット23b、並びに、有機EL液が塗布される前の基板9に第2マスキングテープ84を貼付する有機ELテープ貼付ユニット26a、および、有機EL液が塗布された基板9から第2マスキングテープ84を剥離する有機ELテープ剥離ユニット26bを含む。その他の構成は図1と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
正孔輸送テープ貼付ユニット23aは、図4ないし図6に示す正孔輸送テープユニット23からテープ剥離ヘッド234が省略された構造とされ、正孔輸送テープ剥離ユニット23bは、正孔輸送テープユニット23からテープ貼付ヘッド233が省略された構造とされる。有機ELテープ貼付ユニット26aおよび有機ELテープ剥離ユニット26bも、正孔輸送テープ貼付ユニット23aおよび正孔輸送テープ剥離ユニット23bと同様の構造とされる。
塗布システム1cでは、複数の搬送アーム4aにより、基板9が、インデクサ3から正孔輸送テープ貼付ユニット23a、正孔輸送塗布ユニット21、正孔輸送テープ剥離ユニット23b、正孔輸送ベークユニット22、有機ELテープ貼付ユニット26a、有機EL塗布ユニット24、有機ELテープ剥離ユニット26bおよび有機ELベークユニット25を順に経由してインデクサ3へと至る所定の搬送経路に沿って搬送される。そして、各ユニットにおいてそれぞれ処理されることにより、第1の実施の形態同様に、基板9の塗布領域91に正孔輸送層および有機EL層が形成される。
塗布システム1cでは、処理ユニット群2が、正孔輸送テープ剥離ユニット23bおよび有機ELテープ剥離ユニット26bに加えて正孔輸送テープ貼付ユニット23aおよび有機ELテープ貼付ユニット26aを含むことにより、基板9に対するマスキングテープの貼付に加えてマスキングテープの剥離をも1つのシステム内にて行うことができ、基板9の処理時間を短縮することができるとともに塗布システム1cの製造コストを低減することができる(第5および第6の実施の形態において同様)。
塗布システム1cでは、基板9を正孔輸送テープ剥離ユニット23bから正孔輸送ベークユニット22へと搬送する搬送アーム4aが、正孔輸送塗布ユニット21から正孔輸送テープ剥離ユニット23bへと搬送する搬送アーム4aとは別のものとされるため、正孔輸送液が搬送アーム4aを介して正孔輸送ベークユニット22に付着することを確実に防止することができる。その結果、正孔輸送ベークユニット22に順次搬入される第1マスキングテープ81が剥離された後の基板9に、不要な正孔輸送液が付着することを確実に防止することができる(第5および第6の実施の形態において同様)。
同様に、基板9を有機ELテープ剥離ユニット26bから有機ELベークユニット25へと搬送する搬送アーム4aが、有機EL塗布ユニット24から有機ELテープ剥離ユニット26bへと搬送する搬送アーム4aとは別のものとされるため、有機EL液が搬送アーム4aを介して有機ELベークユニット25に付着することを確実に防止することができる。その結果、有機ELベークユニット25に順次搬入される第2マスキングテープ84が剥離された後の基板9に、不要な有機EL液が付着することを確実に防止することができる(第5および第6の実施の形態において同様)。
図21および図22は、本発明の第5および第6の実施の形態に係る塗布システム1dおよび塗布システム1eの構成を示す図である。図21および図22に示すように、塗布システム1dおよび塗布システム1eはそれぞれ、第2の実施の形態に係る塗布システム1a(図16参照)および第3の実施の形態に係る塗布システム1b(図18参照)とほぼ同様の構成を備えるが、マルチ搬送ロボット4に代えて複数の搬送アーム4aが設けられ、正孔輸送テープユニット23および有機ELテープユニット26に代えて、正孔輸送テープ貼付ユニット23aおよび正孔輸送テープ剥離ユニット23b、並びに、有機ELテープ貼付ユニット26aおよび有機ELテープ剥離ユニット26bが設けられる点で異なる。その他の構成は図16および図18と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
図21に示す塗布システム1dでは、第2の実施の形態と同様に、正孔輸送層の形成終了後に第2マスキングテープ84が貼付された基板9に対して、有機EL液(R)、有機EL液(G)および有機EL液(B)が順次塗布され、第2マスキングテープ84が剥離された後に加熱処理が行われて有機EL層が形成される。
図22に示す塗布システム1eでは、基板9の塗布領域91に正孔輸送層が形成された後、複数の搬送アーム4aにより、有機ELテープ貼付ユニット26a、第1有機EL塗布ユニット24a、有機ELテープ剥離ユニット26b、第1有機ELベークユニット25a、有機ELテープ貼付ユニット26a、第2有機EL塗布ユニット24b、有機ELテープ剥離ユニット26b、第2有機ELベークユニット25b、有機ELテープ貼付ユニット26a、第3有機EL塗布ユニット24c、有機ELテープ剥離ユニット26bおよび第3有機ELベークユニット25cの順に基板9が搬送されることにより、有機EL液(R)、有機EL液(G)および有機EL液(B)のそれぞれについて、基板9への塗布および加熱処理が行われる。
図23は、本発明の第7の実施の形態に係る塗布システム1fの構成を示す図である。図23に示すように、塗布システム1fでは、処理ユニット群2が、図1に示す塗布システム1の複数の処理ユニットに加えて、処理ユニット群2における処理途上の基板9を一時的に保持するバッファユニット27をさらに含む。その他の構成は図1と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
処理ユニット群2では、各処理ユニットにおける処理時間が異なる。例えば、正孔輸送ベークユニット22および有機ELベークユニット25における基板9の加熱および冷却に要する時間は、正孔輸送塗布ユニット21および有機EL塗布ユニット24における正孔輸送液および有機EL液の塗布に要する時間よりも長く、また、正孔輸送テープユニット23および有機ELテープユニット26におけるマスキングテープの貼付および剥離に要する時間よりも長い。
塗布システム1fでは、処理途上の基板9を一時的にバッファユニット27のカセット(図示省略)に収納して保持することにより、複数の基板9の処理を行う際に、各処理ユニット間の処理時間(すなわち、タクトタイム)の差を調整し、基板9の処理順序に柔軟性を持たせることができるため、基板9の処理時間を短縮することができる。例えば、搬送途上の基板9を一時的にバッファユニット27に収納して、処理時間が長い正孔輸送ベークユニット22および有機ELベークユニット25に対する基板9の搬出入を優先させることができる。この観点からは、バッファユニット27は正孔輸送ベークユニット22および有機ELベークユニット25に最も近い位置に配置されることが好ましい。
また、正孔輸送ベークユニット22において1枚の基板9に対する加熱処理を行っている間、第1マスキングテープ81の貼付、正孔輸送液の塗布および第1マスキングテープ81の剥離が終了した後続の基板9をバッファユニット27に収納しておくことにより、正孔輸送塗布ユニット21において複数の基板9に対して連続的に正孔輸送液の塗布を行うことができる。正孔輸送塗布ユニット21では、正孔輸送液の吐出を停止すると、吐出を再開した際の流量等の安定に多少の時間を要するため、複数の基板9に対して塗布を行う際には、基板9の搬入を待っている間も吐出を停止しないことが好ましい。このため、仮に基板9の搬入を待つ時間が長いと、正孔輸送液の使用量が増大してしまう。塗布システム1fでは、バッファユニット27を設けることにより、複数の基板9に対する連続的な塗布を実現し、正孔輸送液の使用量を低減することができる(有機EL液の塗布についても同様)。
図24は、本発明の第8の実施の形態に係る塗布システム1gの構成を示す図である。図24に示すように、塗布システム1gでは、処理ユニット群2が、図16に示す塗布システム1aの複数の処理ユニットに加えて、処理途上の基板9を一時的に保持するバッファユニット27をさらに含む。その他の構成は図16と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
塗布システム1gの正孔輸送塗布ユニット21では、基板9の塗布領域91の全ての溝部に対して正孔輸送液の塗布が行われるが、第1有機EL塗布ユニット24a、第2有機EL塗布ユニット24bおよび第3有機EL塗布ユニット24cではそれぞれ、1/3の本数の溝部に対して有機EL液(R)、有機EL液(G)および有機EL液(B)の塗布が行われる。したがって、正孔輸送塗布ユニット21における処理時間は、有機EL塗布ユニット24a〜24cのそれぞれにおける処理時間の約3倍となる。塗布システム1gでは、バッファユニット27により、このような各ユニットにおける処理時間の差を調整することもできる。
図25は、本発明の第9の実施の形態に係る塗布システム1hの構成を示す図である。図25に示すように、塗布システム1hの処理ユニット群2は、正孔輸送層の形成に係る処理ユニットとして正孔輸送テープユニット23、3つの正孔輸送塗布ユニット21および正孔輸送ベークユニット22を含み、有機EL層の形成に係る処理ユニットとして有機ELテープユニット26、第1有機EL塗布ユニット24a、第2有機EL塗布ユニット24b、第3有機EL塗布ユニット24cおよび有機ELベークユニット25を含む。処理ユニット群2は、また、処理途上の基板9を一時的に保持するバッファユニット27aを備える。バッファユニット27aは、処理ユニットの配列に沿って伸びる横長の形状とされる。
処理ユニット群2では、正孔輸送層の形成に係る処理ユニットがバッファユニット27aの一方側に配列され、有機EL層の形成に係る処理ユニットが他方側に配列される。塗布システム1hは、基板9の搬送機構として2台のマルチ搬送ロボット4を備え、正孔輸送層の形成に係る複数の処理ユニットとバッファユニット27aとの間、および、有機EL層の形成に係る複数の処理ユニットとバッファユニット27aとの間にはそれぞれ、マルチ搬送ロボット4が移動する移動路41が設けられる。
塗布システム1hでは、正孔輸送ベークユニット22の内部に3つの加熱部(図示省略)が設けられており、3つの正孔輸送塗布ユニット21により正孔輸送液が塗布された3枚の基板9が、第1マスキングテープ81の剥離後、3つの加熱部により並行して加熱されて正孔輸送層が形成される。正孔輸送層の形成に係る処理が終了した3枚の基板9は、一方のマルチ搬送ロボット4によりバッファユニット27aに収納され、他方のマルチ搬送ロボット4により順次バッファユニット27aから取り出されて有機EL層の形成に係る処理ユニットに順に搬送されることにより有機EL層が形成される。
塗布システム1hでは、バッファユニット27aを挟んで、正孔輸送層の形成に係る処理ユニットと有機EL層の形成に係る処理ユニットとを分離して配置することにより、正孔輸送層および有機EL層の形成に係る処理時間の差を調整することができるとともに、正孔輸送層の形成に係る処理ユニットと有機EL層の形成に係る処理ユニットとの間における雰囲気の移動を抑制することができる。その結果、基板9に対する処理の質を向上することができる。
次に、塗布システムの他の例を示す。以下の例では、処理ユニット群2から正孔輸送層の形成に係る処理ユニットが省略されており、他のシステムや装置等、外部において正孔輸送層の形成が行われた基板9が塗布システムに搬入される。
図26に示す塗布システム1jは、インデクサ3、マルチ搬送ロボット4および処理ユニット群2を備え、処理ユニット群2は、有機ELテープユニット26、有機EL塗布ユニット24および有機ELベークユニット25をそれぞれ2つずつ含む。図27に示す塗布システム1kの処理ユニット群2は、2つの有機ELテープユニット26、第1有機EL塗布ユニット24a、第2有機EL塗布ユニット24b、第3有機EL塗布ユニット24cおよび有機ELベークユニット25を含む。図28に示す塗布システム1mの処理ユニット群2は、図27に示す有機ELベークユニット25に代えて、第1有機ELベークユニット25a、第2有機ELベークユニット25bおよび第3有機ELベークユニット25cを含む。
図29に示す塗布システム1nは、インデクサ3、複数の搬送アーム4aおよび処理ユニット群2を備える。塗布システム1nでは、基板9が有機ELテープ貼付ユニット26a、有機EL塗布ユニット24、有機ELテープ剥離ユニット26bおよび有機ELベークユニット25の順に搬送されて処理されることにより、基板9上に有機EL層が形成される。図30に示す塗布システム1pでは、基板9が、有機ELテープ貼付ユニット26a、第1有機EL塗布ユニット24a、第2有機EL塗布ユニット24b、第3有機EL塗布ユニット24c、有機ELテープ剥離ユニット26bおよび有機ELベークユニット25の順に搬送される。
図31の塗布システム1qでは、基板9が、有機ELテープ貼付ユニット26a、第1有機EL塗布ユニット24a、有機ELテープ剥離ユニット26b、第1有機ELベークユニット25a、有機ELテープ貼付ユニット26a、第2有機EL塗布ユニット24b、有機ELテープ剥離ユニット26b、第2有機ELベークユニット25b、有機ELテープ貼付ユニット26a、第3有機EL塗布ユニット24c、有機ELテープ剥離ユニット26bおよび第3有機ELベークユニット25cの順に搬送される。
なお、塗布システムでは、必ずしも3種類の有機EL液が塗布される必要はなく、1種類または2種類、あるいは、4種類以上の有機EL液が塗布されてもよい。また、塗布システムでは、処理ユニット群2から有機EL層の形成に係る処理ユニットが省略され、正孔輸送層の形成のみが行われてもよい。
以上に説明した塗布システムでは、基板9上の塗布領域91のみに有機EL液が塗布された基板9を容易に得るという観点からは、処理ユニット群2から第2マスキングテープ84を貼付する有機ELテープ貼付ユニット26a(または、有機ELテープユニット26のテープ貼付ヘッド)が省略されてもよい(正孔輸送液の塗布においても同様)。この場合、塗布システムには、システムの外部にて第2マスキングテープ84が貼付された基板9が搬入される。
逆に、処理ユニット群2から有機ELテープ剥離ユニット26b(または、有機ELテープユニット26のテープ剥離ヘッド)が省略され、第2マスキングテープ84の剥離が塗布システムの外部において行われてもよい。この場合であっても、処理ユニット群2が、基板9に第2マスキングテープ84を貼付する有機ELテープ貼付ユニット26a(または、有機ELテープユニット26のテープ貼付ヘッド)、および、有機EL液を塗布する有機EL塗布ユニットを含むことにより、基板9に有機EL液を塗布する際に、基板9上の非塗布領域92に有機EL液が付着することを確実に防止することができる(正孔輸送液の塗布においても同様)。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、第7および第8の実施の形態に係る塗布システム1fおよび塗布システム1gでは、処理ユニット群2に複数のバッファユニット27が含まれてもよい。また、バッファユニット27は、他の構成を有する処理ユニット群2に設けられてもよく、例えば、第3の実施の形態に係る塗布システム1bや図26ないし図28に示す塗布システム1j,1k,1mの処理ユニット群2に設けられてもよい。
塗布システムの小型化の要請がある場合には、1つのテープ貼付・剥離ユニットにより、正孔輸送液の塗布前後における第1マスキングテープ81の貼付および剥離、並びに、有機EL液の塗布前後における第2マスキングテープ84の貼付および剥離が行われてもよい。
上記実施の形態に係る塗布システムでは、基板9の非塗布領域92全体に対してマスキングテープの貼付が行われてもよい。例えば、正孔輸送テープユニット23では、一の方向に伸びる領域に第1マスキングテープ81が貼付され、基板移動機構232により基板9が90°だけ回転した後、既に第1マスキングテープ81が貼付された領域に垂直に伸びる領域に第1マスキングテープ81が貼付される。このように、非塗布領域92のうち正孔輸送塗布ユニット21において正孔輸送液の塗布が行われない領域にも第1マスキングテープ81を貼付することにより、何らかの異常等により当該領域に異物が付着することを防止することができる(有機ELテープユニット26等においても同様)。
有機EL液(R)、有機EL液(G)および有機EL液(B)を基板9にそれぞれ塗布する有機EL塗布ユニット24a〜24cでは、有機EL液を吐出するノズルが、1本または2本、あるいは、4本以上設けられてもよい(正孔輸送塗布ユニット21においても同様)。また、有機EL液(R)、有機EL液(G)および有機EL液(B)を並行して塗布する有機EL塗布ユニット24では、ノズルの本数は3の倍数であればよい。
上記実施の形態に係る塗布システムでは、塗布対象となる基板は、必ずしも有機EL表示装置用のガラス基板には限定されず、また、塗布される流動性材料も、正孔輸送液や有機EL液以外のものであってよい。塗布システムは、例えば、液晶表示装置やプラズマ表示装置に利用される基板に対する流動性材料の塗布に用いられてもよく、半導体基板に対する流動性材料の塗布に用いられてもよい。