JP4725693B2 - 自動追尾装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動追尾装置に係り、特にカメラの撮影方向を自動で移動させて移動物体を自動追尾する自動追尾装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動追尾装置は、テレビカメラを搭載した雲台をモータ駆動によりパン/チルトさせてカメラの撮影方向を自動で移動させ、移動する被写体(移動物体)を自動追尾する装置である。自動追尾の方法として特開昭59−208983号公報に記載のものが一般的に知られている。この方法によれば、カメラから出力される映像信号から所定時間間隔の2フレーム分(2画面分)の画像が取り込まれ、それらの画像の比較によって移動物体の画像が抽出される。そして、その抽出された移動物体の画像の重心位置から移動物体の移動量及び移動方向が検出され、これに基づいて移動物体の重心が常に画面中央となるようにカメラの撮影方向が雲台のパン/チルトにより自動で制御される。尚、本明細書において、カメラの撮影方向をパン方向又はチルト方向に移動させる雲台の動作を、雲台のパン方向若しくはチルト方向への移動、又は、単に雲台の移動という。
【0003】
ところで、上述の特開昭59−208983号公報に記載の自動追尾の方法では、カメラから取り込んだ2フレーム分の画像を比較して移動物体の画像を抽出するため、それらの比較する画像を取り込む間は、雲台を停止させておく必要があった。即ち、雲台が移動することによって比較する画像の撮影範囲が異なると、画面上では静止物体の画像も移動し、移動物体の画像を識別することができなくなるため、比較する画像を取り込む間は雲台を移動させることができない。このため、上述の自動追尾の方法では動きの速い移動物体を追尾できず、また、雲台が移動と停止を繰り返し、画面が見づらくなるなどの欠点があった。
【0004】
そこで、本願出願人は、このような欠点を解消するため特願平10−345664号において移動物体の画像を異なる撮影範囲の画像からでも抽出できるようにし、雲台を移動させながらでも移動物体の画像を認識できるようにした自動追尾の方法を提案している。これによれば、雲台の停止中又は移動中にかかわらず、カメラから画像を取り込むと共に、そのときの雲台のパン/チルト位置を取得しておく。所定時間をおいて2フレーム分の画像を取り込むと、各画像を取り込む際のパン/チルト位置に基づいて、各画像が撮影された際のカメラの撮影範囲を求め、各画像の撮影範囲のうち重複する範囲を比較範囲として決定する。この比較範囲内では、静止物体の画像は移動しないため、比較範囲内の画像を比較することによって移動物体の画像のみを抽出することが可能となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本願出願人が提案した上記特願平10−345664号の自動追尾の方法においても改善の必要性が生じていた。例えば、この自動追尾の方法では、画面上における移動物体の位置を検出し、その位置が略画面中央となるように雲台のパン/チルトを制御するようにしているため、移動物体の移動に遅れて雲台が移動することになる。従って、移動物体の移動速度が速くなると、このような雲台の制御では、移動物体がカメラの撮影範囲から外れ、自動追尾できなくなるおそれがあった。また、移動物体の移動速度が判断できないため、滑らかな自動追尾ができない。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、移動物体を確実にかつ滑らかに自動追尾することができる自動追尾装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、カメラを載置した雲台の移動によって前記カメラの撮影方向を移動させながら前記カメラで撮影された画像を逐次取り込み、該取り込んだ画像を比較して移動物体の画像を抽出すると共に、前記移動物体の画像の画面上の位置に基づいて前記移動物体が前記カメラの撮影範囲外とならないように前記雲台の移動速度を制御する自動追尾装置において、前記カメラから2画面分の画像を取り込むと共に、前記雲台の移動速度に基づいて、前記2画面分の各画像を撮影した際の前記カメラの撮影範囲が重複する範囲を比較範囲として決定する比較範囲決定手段と、前記2画面分の各画像から前記比較範囲決定手段によって決定された比較範囲内の画像を抽出し、該抽出した各画像を比較することによって前記移動物体の画像を抽出する画像処理手段とを備え、前記カメラから取り込んだ画像に基づいて前記移動物体の画像を抽出する移動物体画像抽出手段と、前記移動物体画像抽出手段によって抽出された前記移動物体の画像の画面上での位置変化から前記移動物体の移動速度を検出する移動速度検出手段と、前記移動速度検出手段によって検出された前記移動物体の移動速度に基づいて前記移動物体が前記カメラの撮影範囲外とならないように前記雲台の移動速度を制御する制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記制御手段は、前記移動物体画像抽出手段によって抽出された前記移動物体の画像に基づいて、前記移動物体が前記カメラの撮影範囲外になると判断した場合には、前記カメラの撮影範囲を拡大することを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、移動物体の移動速度を検出し、その移動速度に基づいて雲台の移動速度を制御するようにしたため、移動物体の移動に対する雲台の追従性が向上し、移動物体を確実に自動追尾することができるようなる。また、カメラから取り込んだ画像から移動物体の画像を抽出するための比較範囲を雲台の移動速度に基づいて決定することによって、特願平10−345664号公報に記載のように雲台の位置に基づいて比較範囲を決定する場合に比べて安価な部品の使用で決定することができるようになる。即ち、2画面分の各画像を取り込む時間間隔は正確に決めることができ、かつ、その時間間隔が短いため例えば撮影範囲が1画素分だけシフトしたことを検出するための速度検出の分解能及び精度は位置検出の場合に比べて低くてもよく、安価なセンサー及びA/Dコンバータ等の使用が可能になる。また、雲台の移動速度が一定の間に2画面分の画像を取り込むようにすれば、画像の取込み時と移動速度の検出時とを正確に一致させる必要もなく高い時間精度も不要となる。更に、パン/チルト駆動用にステッピングモータを使用した場合に位置検出センサーを設けなくても、移動速度から比較範囲を求めることが可能となる。
【0011】
また、移動物体の移動速度が極めて速く、カメラの撮影範囲から外れると判断されるような場合には、カメラの撮影範囲を拡大、即ち、ズームをワイド側に移動させることによって、移動物体が極めて速い移動物体に対しても確実に自動追尾を行うことができるようになる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下添付図面に従って本発明に係る自動追尾装置の好ましい実施の形態を詳述する。
【0013】
図1は、本発明が適用される自動追尾機能搭載のリモコン雲台システムの全体構成図である。同図に示すリモコン雲台システムは、リモコン雲台10(以下、単に雲台10という)、雲台コントローラ12、及び、画像処理装置14とから構成される。雲台10は、テレビカメラ(以下、単にカメラという)を収容するハウジング15と、ハウジング15全体を回動させてハウジング15内のカメラをパンニング及びチルティングさせる雲台本体16とから構成される。ハウジング15の前面には透明の保護ガラス17が設けられ、ハウジング15内に収納されたカメラはこの保護ガラス17を介してハウジング15外部の映像を撮影する。
【0014】
上記ハウジング15は、雲台本体16から延設されたチルト軸(図示せず)に支持され、このチルト軸は雲台本体16に内蔵されたチルトモータによって回転駆動される。従って、チルトモータが駆動されると、チルト軸を介してハウジング15が回動し、ハウジング15内のカメラがチルティングする。また、雲台本体16は図示しない据付台上に固定されたパン軸18によって支持され、このパン軸18を軸として雲台本体16が内蔵のパンモータによって回転駆動される。従って、パンモータが駆動されると、雲台本体16と共にハウジング15が回動し、ハウジング15内のカメラがパンニングする。
【0015】
上記雲台コントローラ12は、雲台10にケーブルを介して接続され(尚、専用回線、公衆回線等の通信回線を介して接続することも可能である。)、雲台コントローラ12に設けられている各種操作部材の操作に基づいて制御信号を雲台10に送信し、雲台10及び雲台10に搭載されたカメラの各種動作を制御する。また、雲台コントローラ12は、自動追尾モードとなっている場合には、画像処理装置14から与えられる信号に基づいて制御信号を雲台10に送信し、雲台10を移動(パン/チルト動作)させて移動する被写体(移動物体)をカメラで追尾させる。
【0016】
図2は、上記リモコン雲台システムの構成を示したブロック図である。同図に示すように雲台10のハウジング15に収納されるカメラ40は、カメラ本体42とカメラ本体42に装着されるレンズ装置44とから構成される。カメラ本体42には、撮像素子や所要の処理回路が搭載されており、レンズ装置44の光学系を介して撮像素子に結像された画像(動画)は映像信号(本実施の形態ではNTSC方式の映像信号)として外部に出力される。カメラ本体42における撮影開始や終了等の撮影動作の制御は雲台コントローラ12から雲台10を介して与えられる制御信号に基づいて行われる。また、レンズ装置44には、モータ駆動可能なフォーカスレンズやズームレンズ等の光学部材が搭載されており、これらのフォーカスレンズやズームレンズが移動することによってカメラ40のフォーカスやズームが調整される。フォーカスやズーム等のレンズ装置44の動作に関する制御は、カメラ本体42と同様に雲台コントローラ12から与えられる制御信号に基づいて行われる。
【0017】
雲台10には、上述のようにパンモータやチルトモータが搭載されており、雲台コントローラ12から与えられる制御信号によってこれらのパンモータやチルトモータが駆動されると、カメラ40がパンニング又はチルティングし、カメラ40の撮影範囲が移動する。尚、カメラ40をパンニング又はチルティングさせるときの雲台10の動作を、本明細書では雲台10が移動するという。
【0018】
同図に示すように画像処理装置14は、Y/C分離回路46、画像メモリ50、画像処理プロセッサ52、CPU54等の各種信号処理回路から構成され、これらの信号処理回路は、雲台コントローラ12が自動追尾モードとなっているときに有効に動作する。この画像処理装置14には、カメラ本体42から出力された映像信号が入力され、自動追尾モード時においてその映像信号はカメラ本体Y/C分離回路46によって輝度信号(Y信号)と色差信号に分離される。ここで分離された輝度信号はA/Dコンバータ48によってデジタル信号(以下、画像データという)に変換され、画像メモリ50に入力される。一方、Y/C分離回路46から画像処理プロセッサ52には、映像信号の同期信号が与えられており、この同期信号に基づいて所要のタイミングで画像処理プロセッサ52から画像メモリ50にデータ書込みのコマンドが与えられる。これによって、画像メモリ50には、後述のように所定時間間隔の複数フレーム分の画像データが記憶される。尚、NTSC方式の映像信号ではインタレース方式を採用しているため、1フレーム分の画像は、2フィールド分の画像によって構成されるが、本明細書において1フレームの画像データという場合には、連続して撮影される一連の画像のうち1画面を構成する画像データを意味しており、本実施の形態では、1フレームの画像データは1フィールド分の画像データをいうものとする。
【0019】
以上のようにして画像メモリ50に記憶された複数フレーム分の画像データは、以下で詳説するように画像処理プロセッサ52に読み出されて画像処理され、また、その画像処理の結果に基づいてCPU54によって演算処理され、移動物体をカメラ40で自動追尾するための雲台10のパン方向及びチルト方向への移動スピード(パンスピード及びチルトスピード)が算出される。尚、CPU54には、移動スピードの算出のため(後述の比較枠の算出のため)、各時点でのレンズ装置44の焦点距離(画角)及び雲台10の移動スピード(パンスピード及びチルトスピード)が雲台コントローラ12から与えられる。
【0020】
雲台コントローラ12が自動追尾モードに設定されている場合、上記雲台コントローラ12には、画像処理装置14のCPU54によって算出された移動スピードが指令信号として与えられ、その移動スピードとなるように雲台コントローラ12から雲台10に制御信号が送信される。一方、自動追尾モードに設定されていない場合には、上述のように雲台コントローラ12に設けられている各種操作部材の操作に基づいて雲台コントローラ12から雲台10に制御信号が送信され、雲台10及び雲台10に搭載されたカメラ40の各種動作が制御される。
【0021】
以上の如く構成されたリモコン雲台システムにおいて自動追尾モードに設定されている場合の画像処理装置14の上記画像処理プロセッサ52及びCPU54の処理内容について図3のフローチャートに基づいて説明する。尚、図3のフローチャート及び以下の説明では、主に、雲台10のパン方向への移動に関する処理について示すが、チルト方向への移動に関してもパン方向と同様の処理が行われるものとする。
【0022】
まず、画像処理プロセッサ52は、カメラ40のカメラ本体42からY/C分離回路46、A/Dコンバータ48を介して得られる1フレーム分の画像データ(この画像を画像▲1▼とする)を画像メモリ50に取り込む(ステップS10)。
【0023】
続いて、画像処理プロセッサ52は、Y/C分離回路46から与えられる同期信号により4フィールド分の時間(1フィールド当たり1/59.94秒)が経過したか否かを判定し(ステップS12)、4フィールド分の時間が経過すると、画像▲1▼と同様に1フレーム分の画像データ(この画像を画像▲2▼とする)を画像メモリ50に取り込む(ステップS14)。
【0024】
更に、画像処理プロセッサ52は、Y/C分離回路46から与えられる同期信号により4フィールド分の時間(1フィールド当たり1/59.94秒)が経過したか否かを判定し(ステップS16)、4フィールド分の時間が経過すると、画像▲1▼、画像▲2▼と同様に1フレーム分の画像データ(この画像を画像▲3▼とする)を画像メモリ50に取り込む(ステップS18)。
【0025】
以上のように3フレーム分の画像データが画像メモリ50に記憶されると、CPU54は、現在のカメラ40(レンズ装置44)の焦点距離(画角)と雲台10の移動スピードを雲台コントローラ12から取得し、これに基づいて画像▲1▼と画像▲3▼の比較範囲(比較枠)を設定し、画像処理プロセッサ52にその比較枠を指定する(ステップS20)。尚、比較枠の設定に使用する移動スピードのデータは雲台コントローラ12から取得したものではなく、後述のようにCPU54から雲台コントローラ12に指令した移動スピードのデータであってもよい。
【0026】
ここで、比較枠について説明する。後述のように、画像処理プロセッサ52は、画像▲1▼と画像▲3▼とを比較し、これらの画像データの各画素の値(以下、画素値)の差を求めることによって差画像を生成する。差画像を生成するのは、追尾すべき被写体となる移動物体の画像を2つの画像▲1▼、▲3▼から抽出するためであるが、この差画像によって移動物体の画像を抽出するためには、画像▲1▼の撮影範囲と画像▲3▼の撮影範囲のうち同じ撮影範囲(撮影範囲が重なる範囲)内の画像から差画像を求める必要がある。
【0027】
例えば、自動追尾処理の開始直後のように雲台10が停止している場合には、画像▲1▼と画像▲3▼の撮影範囲は等しい。図4(A)は、この場合の被写体と撮影範囲の関係を示しており、画像▲1▼の撮影範囲Lと画像▲3▼の撮影範囲L′は完全に一致する。尚、図中○で示した物体は移動物体であり、△で示した物体は静止物体である。また、移動物体は画像▲1▼の撮影時には図中Aで示す位置にあり、画像▲3▼の撮影時には図中Bで示す位置に移動したものとする。
【0028】
このとき、画像メモリ50に記憶される画像▲1▼と画像▲3▼はそれぞれ図4(B)、図4(C)に示すような画面を構成し、これらの画像▲1▼と画像▲3▼のそれぞれの画面上において、静止物体の画像(△)は同じ座標上に存在し、移動物体の画像(○)のみが異なる座標上に存在することになる。
【0029】
従って、画像▲1▼と画像▲3▼の全画面範囲(全撮影範囲内)において、対応する位置(同一座標)の画素間で画素値の差を求めれば、その差画像において静止物体の画素値は0となり、図5に示すように移動物体のみが抽出された差画像が得られる。尚、各画像の画面上における各点の座標は、1画面を構成するマトリクス状の画素の配列に従い、図6に示すように水平方向については各点の画素の列番号(画面左端の画素から順に割り当てた1〜X(Xは水平解像度を示す画素数に対応))で表し、垂直方向については各点の画素の行番号(画面上端の画素から順に割り当てた1〜Y(Yは垂直解像度を示す画素数に対応)で表す。
【0030】
一方、雲台10が移動しているような場合には、画像▲1▼と画像▲3▼のそれぞれの撮影時では撮影範囲が異なる。図7(A)は、この場合の被写体と撮影範囲の関係を示しており、画像▲1▼の撮影範囲Lと画像▲3▼の撮影範囲L′とは異なる。尚、図中の被写体(移動物体と静止物体)に関しては図4(A)と同じ条件とする。このとき画像メモリ50に記憶される画像▲1▼と画像▲3▼は、それぞれ図7(B)、(C)に示すような画面を構成し、これらの画像▲1▼と画像▲3▼のそれぞれの画面上において、静止物体の画像(△)は同じ座標上には存在しなくなる。従って、もし、上述と同じようにこれらの全画面範囲で差画像を求めると、静止物体があたかも移動物体であるかのような差画像が得られることになり、適切に移動物体のみを抽出することができない。
【0031】
そこで、画像▲1▼の全画面範囲と画像▲3▼の全画面範囲のうち、撮影範囲が重なる範囲、即ち、図7(A)において、画像▲1▼の撮影範囲Lと画像▲3▼の撮影範囲L′とが重なる範囲の画像を画像▲1▼と画像▲3▼からそれぞれ抽出し、その抽出した範囲内の画像間において対応する位置の画素値の差を求めることによって差画像を求めるようにする。これによって、その差画像において静止物体の画素値は0となり、図8に示すように移動物体のみが抽出された差画像が得られるようになる。
【0032】
このように画像▲1▼と画像▲3▼とから移動物体を抽出した差画像を得るためには、画像▲1▼と画像▲3▼のそれぞれの画面上においてその差画像を得るための比較範囲を設定する必要があり、その比較範囲を枠で表したものが比較枠である。そして、比較枠は、画像▲1▼の撮影範囲Lと画像▲3▼の撮影範囲L′とが重なる撮影範囲の枠として設定される。図4のように雲台10が停止している場合には、画像▲1▼の撮影範囲Lと画像▲3▼の撮影範囲L′とが完全に一致するため、図4(B)、(C)に示すように画像▲1▼と画像▲3▼のそれぞれの画面上において全画面範囲の枠として比較枠Pが設定される。一方、図7のように雲台10が移動している場合には、画像▲1▼の撮影範囲Lと画像▲3▼の撮影範囲L′とが異なるため、図7(B)、(C)に示すように画像▲1▼と画像▲3▼のそれぞれの画面上において、画像▲1▼の撮影範囲Lと画像▲3▼の撮影範囲L′が重なる範囲の枠として比較枠Pが設定される。
【0033】
比較枠の設定の具体的処理内容について説明すると、上述のように画像メモリ50に画像▲1▼と画像▲3▼が取り込まれると、CPU54はレンズ装置44の現在の焦点距離と雲台10の現在の移動スピード(パンスピード)を雲台コントローラ12から取得する。そして、CPU54はレンズ装置44の焦点距離から撮影画角(水平方向の角度範囲を示す水平画角)を求め、その撮影画角と移動スピードとにより、画像▲1▼の撮影範囲に対して画像▲3▼の撮影範囲が、水平方向に画素数にして何画素分シフトしたかを算出する。そのシフト量shift (単位:画素)は、雲台10の移動スピード(パンスピード)をV(単位:角度/秒)、画像の解像度(水平解像度)をR(単位:画素)、撮影画角(水平画角)をA(単位:角度)、画像▲1▼に対する画像▲3▼の撮影時間差(画像▲1▼と画像▲3▼の画像取込み時間間隔)をT(単位:秒)とすると、
shift =(R/A)×V×T …(1)
で表される。尚、垂直方向のシフト量shift の算出においては、移動スピードVはチルトスピード、解像度Rは垂直解像度、撮影画角Aは垂直方向の角度範囲を示す垂直画角である。また、画像▲3▼が、画像▲1▼の取り込み後に8フィールド分の時間が経過した後に取り込まれたとすると、撮影時間差Tは、1フィールド分の時間(1/59.94秒)を8倍した値である。
【0034】
上式(1)によりシフト量shift を算出すると、CPU54は、このシフト量shift に基づいて、比較枠を画像▲1▼と画像▲3▼の画面上に設定する。即ち、図9に示すように画像▲1▼の撮影範囲Lに対して画像▲3▼の撮影範囲L′が右方向に移動(雲台10が右方向に移動)した場合には、画像▲1▼の比較枠に関しては、画像▲1▼の全画面範囲のうち画面の左端側からシフト量shift の画素数分だけ除外した範囲(図中斜線で示す範囲)の輪郭を比較枠Pとして設定し、一方、画像▲3▼の比較枠に関しては、画像▲3▼の全画面範囲のうち画面の右端側からシフト量shift の画素数分だけ除外した範囲(図中斜線で示す範囲)の輪郭を比較枠Pとして設定する。図10に示すように画像▲1▼の撮影範囲Lに対して画像▲3▼の撮影範囲L′が左方向に移動(雲台10が左方向に移動)した場合には、画像▲1▼の比較枠に関しては、画像▲1▼の全画面範囲のうち画面の右端側からシフト量shift の画素数分だけ除外した範囲(図中斜線で示す範囲)の輪郭を比較枠Pとして設定し、一方、画像▲3▼の比較枠に関しては、画像▲3▼の全画面範囲のうち画面の左端側からシフト量shift の画素数分だけ除外した範囲(図中斜線で示す範囲)の輪郭を比較枠Pとして設定する。尚、雲台10が上下方向に移動した場合も同様である。
【0035】
図3のフローチャートに戻って説明すると、以上のようにCPU54によって比較枠が設定され、その比較枠が画像処理プロセッサ52に指示されると、次に画像処理プロセッサ52は、画像▲1▼と画像▲3▼からそれぞれ比較枠内の画像を抽出し、その抽出した画像により画像▲1▼と画像▲3▼の差画像を求める(ステップS22)。即ち、画像▲1▼と画像▲3▼の比較枠内の画像データから、対応する位置の画素(比較枠内において同一位置にある画素)の画素値の差を求め、その絶対値を求める(|▲1▼−▲3▼|)。これによって、上述した図5、図8のように移動物体の画像のみが抽出され、その移動物体が追尾すべき被写体として認識される。
【0036】
続いて、画像処理プロセッサ52は、ステップS22で求めた差画像の各画素の画像データを2値化する(ステップS24)。この処理により理想的には移動物体の画像の画素値が1、それ以外で0となる。そして、2値化した差画像を収縮する処理を行い、細かいノイズを除去する(ステップS26)。尚、以下において2値化し、収縮処理した差画像を単に差画像という。
【0037】
次に、画像処理プロセッサ52は、差画像に基づいて画素値が1である画素の総数を求め、移動物体の画像全体の面積(以下、単に移動物体の面積という)を求める(ステップS28)。図5、図8の例では、移動物体の移動前後の画像を示した2つの○の面積を求める。そして、求めた面積をCPU54に与える。
【0038】
CPU54は、移動物体の面積を画像処理プロセッサ52から取得すると、その面積が所定のしきい値よりも大きいか否かを判定する(ステップS30)。ここで、NOと判定する場合としては、追尾の対象となる程の移動物体が存在しない場合であり、それまで追尾していた移動物体が停止した場合、移動物体の動きが少ない場合、又は、追尾の対象とならない小さな物体のみが動いている場合等がある。このときにはステップS10に戻り、画像の取り込みから再度処理を繰り返す。
【0039】
一方、上記ステップS30においてYESと判定した場合、即ち、差画像から移動物体を検出した場合、次に、画像処理プロセッサ52は、差画像から移動物体の画像全体の1次モーメントを求め(ステップS32)、1次モーメントを移動物体の面積で割り、移動物体の重心を求める(ステップS34)。ここで、移動物体の重心は、例えば、画像▲1▼の画面上の座標で表され、その重心座標はCPU54に与えられる。尚、画像▲1▼と画像▲3▼とから求めた移動物体の重心を以下、重心1−3で表す。
【0040】
次に、CPU54は、上記ステップS20において、画像▲1▼と画像▲3▼の比較範囲(比較枠)を設定したのと同様に、カメラ40(レンズ装置44)の焦点距離(画角)と雲台10の移動スピードとに基づいて、画像▲1▼と画像▲2▼の比較範囲(比較枠)を設定し、画像処理プロセッサ52にその比較枠を指定する(ステップS36)。そして、画像処理プロセッサ52及びCPU54は、上記ステップS22〜ステップS34(ステップS30を除く)において、画像▲1▼と画像▲3▼とから移動物体の重心を求めたのと同様に、画像▲1▼と画像▲2▼とから移動物体の重心を求める(ステップS38〜ステップS48)。尚、画像▲1▼と画像▲2▼とから求めた移動物体の重心を以下、重心1−2で表す。
【0041】
ここで、図11は、例えば雲台10が右方向に移動している場合(撮影範囲が右方向にシフトしている場合)の被写体と、画像▲1▼、画像▲2▼、画像▲3▼のそれぞれの撮影範囲との関係を示しており、画像▲1▼の撮影範囲に対する画像▲2▼及び画像▲3▼のそれぞれの撮影範囲のシフト量shift1、shift2はそれぞれ上記(1)により算出される。尚、画像▲1▼〜画像▲3▼を取り込む間の雲台10のパンスピードは略一定であると解されるため、シフト量shift1は、シフト量shift2の2分の1の量となる。そして、上述のように画像▲1▼と画像▲3▼、及び、画像▲1▼と画像▲2▼の比較(差画像の取得)により、図12に示すように画像▲1▼の画面上において移動物体の画像M1、M2、M3が抽出される。尚、画像▲1▼と画像▲3▼の比較によって画像M1と画像M3が抽出され、画像▲1▼と画像▲2▼の比較によって画像M1と画像M2が抽出される。このようにして抽出された移動物体の画像により上述の移動物体の重心1−3及び重心1−2は画像▲1▼の画面上において、図中‘+’で示されている位置として算出される。
【0042】
以上のようにして重心1−3及び重心1−2が求められるとCPU54は、これらの重心1−3及び重心1−2の差、即ち、(重心1−3)−(重心1−2)を求め(ステップS50)、これに基づいて移動物体の移動スピードを算出する(ステップS52)。
【0043】
ここで画面上において、移動物体は、画像▲1▼の取り込み時(撮影時)から画像▲3▼の取り込み時(撮影時)までの経過時間T(8フィールド分の経過時間=(1/59.94)×8)の間に、図12のように移動物体の画像M1から画像M3までの距離、即ち、(重心1−3)−(重心1−2)の4倍の距離を移動しているため、(重心1−3)−(重心1−2)をΔLとすると、画面上における移動物体のパン方向への移動スピードv(単位:画素/秒)は、次式(2)
v=ΔL×4/T …(2)
により得られる。そして、実空間における移動物体のパン方向への移動スピードV(単位:角度/秒)は、画像の解像度(水平解像度)をR(単位:画素)、撮影画角(水平画角)をA(単位:角度)とすると、次式(3)、
V=v×A/R …(3)
により得られる。
【0044】
尚、移動物体のチルト方向への移動スピードを算出する際には、上式(3)において解像度Rは垂直解像度、撮影画角Aは垂直方向の角度範囲を示す垂直画角である。
【0045】
CPU54は、以上により、移動物体の移動スピードVを算出すると、その移動スピードVによる雲台10のパン方向への移動を指令する指令信号を雲台コントローラ12に送信する(ステップS54)。これによって、雲台コントローラ12により雲台10のパンスピードが制御される。そして、CPU54は、雲台コントローラ12から得られる雲台10の現在の移動スピード(パンスピード)が、上記CPU54から指令したパンスピードになったか否かを判定し(ステップS56)、YESと判定した場合には、上記ステップS10に戻り、上記処理を繰り返す。
【0046】
以上、上述の処理においては、移動物体の移動スピードを検出する際に、3フレーム分の画像▲1▼〜画像▲3▼を取り込み、画像▲1▼と画像▲3▼、及び画像▲1▼と画像▲3▼の比較により、2つの重心1−3及び重心1−2を求めるようにしたが、これに限らず、画像▲1▼と画像▲2▼、及び、画像▲2▼と画像▲3▼の比較により、2つの重心を求めて移動物体の移動スピードを検出するようにしてもよいし、また、4フレーム分の画像▲1▼〜▲4▼を取り込み、重複しない2組の2フレーム分の画像の比較、例えば、画像▲1▼と画像▲2▼、及び、画像▲3▼と画像▲4▼の比較により2つの重心を求め、移動物体の移動スピードを検出するようにしてもよい。
【0047】
次に、上記ステップS20、及び、ステップS36の比較枠の設定におけるシフト量shift(画像▲1▼の撮影範囲に対する画像▲2▼又は画像▲3▼の撮影範囲のシフト量)の決定方法について具体的に説明する。尚、以下の説明においても雲台10のパン方向への移動のみを考慮して水平方向のシフト量を求める場合について説明する。
【0048】
上式(1)に示したようにシフト量shift は、雲台10のパンスピードと画角(焦点距離)に基づいて求めることができ、それらのパンスピードと画角の値は雲台コントローラ12からCPU54が所定のデータを取得することによって決定することができる。例えば、雲台コントローラ12が雲台10に制御信号として送信するパンスピードのデータを雲台コントローラ12から取得することによってシフト量shift の算出に使用するパンスピードの値を決定することができる。尚、シフト量shift の算出に使用するパンスピードの値は、CPU54から雲台コントローラ12に指令するパンスピードの値であってもよいし、また、雲台10における速度検出センサによって得られるパンスピードの実測値であってもよい。一方、雲台コントローラ12がレンズ装置44に制御信号として送信するズームのコントロール電圧(以下、ズームのコントロール電圧を単にコントロール電圧という)の値を雲台コントローラ12から取得することによって、焦点距離を知ることができ、シフト量shift の算出に使用する画角(水平画角)の値を決定することができる。但し、コントロール電圧と焦点距離との関係はレンズ装置44の種類によって異なるため、多種のレンズ装置に対して正確なシフト量の算出を可能にするためには、レンズ装置の種類に対応する特性データ(コントロール電圧と焦点距離との関係を示すデータテーブル)を予めメモリに登録しておき、レンズ装置の種類に対応する特性データを使用してコントロール電圧から焦点距離を求めるようにすることが必要である。
【0049】
また、シフト量shift は上式(1)を用いて理論的に求めるのではなく、自動追尾を開始する前等において、パンスピード及びコントロール電圧の各値に対する正確なシフト量shift を実測によって予め求めておくこともできる。この場合には、例えば、図13に示すように雲台コントローラ12から取得されるパンスピードとコントロール電圧の各値に対するシフト量shift との関係をシフト量データとしてメモリに記憶しておけば、自動追尾の処理の際に、雲台コントローラ12から取得されるパンスピード及びコントロール電圧に対するシフト量shift をメモリから読み出して、これに基づいて比較枠を設定することができる。尚、一般に自動追尾の際には、レンズ装置44のズーム(焦点距離)は変更されないため、自動追尾を開始する前に自動追尾の際の焦点距離に対するシフト量shift の値をパンスピードの各値に対して実測によって求めておき、シフト量データとしてメモリに記憶させておけば十分である。
【0050】
図14は、所定の焦点距離及びパンスピードに対するシフト量shift を実測により求める場合の処理手順を示したフローチャートである。尚、この処理の実行中にはカメラ40の撮影範囲に移動物体が存在しないようにする必要がある。但し、移動物体が存在しても画面に対してその移動物体が小さければ問題はない。まず、CPU54は、パラメータminarea を最大値(例えば0xffffff)、パラメータiを1、シフト量データとして求めるシフト量shift を0に初期設定する(ステップS100)。続いて、CPU54は、雲台コントローラ12に指令する雲台10のパンスピードを所定のスピード(シフト量shift を求めようとしているパンスピード)に設定し、そのパンスピードを指令する指令信号を雲台コントローラ12に送信する(ステップS102)。そして、雲台コントローラ12から得られる雲台10の現在のパンスピードが、CPU54から指令したパンスピードになったか否かを判定し(ステップS104)、YESと判定した場合には、次に処理に移行する。
【0051】
次に、画像処理プロセッサ52は、上記図3のステップS10〜ステップS14と同様に1フレーム分の画像データ(この画像を画像▲1▼とする)を画像メモリ50に取り込み(ステップS106)、続いて4フィールド分の時間が経過した後(ステップS108)、更に、1フレーム分の画像データ(この画像を画像▲2▼とする)を画像メモリ50に取り込む(ステップS110)。
【0052】
以上のように2フレーム分の画像データが画像メモリ50に記憶されると、CPU54は、画像▲1▼の撮影範囲に対する画像▲2▼の撮影範囲の仮のシフト量shift ′をiと仮定し、そのシフト量shift ′に基づいて画像▲1▼と画像▲2▼の比較枠を設定する(ステップS112)。そして、画像処理プロセッサ52にその比較枠を指定する。
【0053】
以上のようにCPU54によって比較枠が設定され、その比較枠が画像処理プロセッサ52に指示されると、次に画像処理プロセッサ52及びCPU54は、図3のステップS22〜ステップS28までの処理と同様の処理を以下のステップS114〜ステップS120で行う。まず、画像処理プロセッサ52は、画像▲1▼と画像▲2▼からそれぞれ比較枠内の画像を抽出し、その抽出した画像により画像▲1▼と画像▲2▼の差画像を求める(|▲1▼−▲2▼|)(ステップS114)。続いて、画像処理プロセッサ52は、差画像の各画素の画像データを2値化する(ステップS116)。そして、2値化した差画像を収縮する処理を行い、細かいノイズを除去する(ステップS118)。
【0054】
次に、画像処理プロセッサ52は、差画像に基づいて画素値が1である画素の総数を求め、その面積を求める(ステップS120)。そして、求めた面積をCPU54に与える。尚、上記ステップS112で設定された仮のシフト量shift ′がパンスピードに適切に対応したものであれば、理想的には、ここで求めた面積は0となる。
【0055】
CPU54は、上記面積を画像処理プロセッサ52から取得すると、その面積をパラメータareaに代入し(ステップS122)、上記パラメータminarea よりもareaの値が小さいか否か、即ち、(minarea >area)か否かを判定する(ステップS124)。もし、YESと判定した場合には、minarea にareaの値を代入すると共に(ステップS126)、最終的に求めたいシフト量shift の値をiとする(但し、決定ではない)。一方、ステップS124においてNOと判定した場合には、ステップS126及びステップS128の処理は行わない。続いてCPU54は、iの値を1増加させ(ステップS130)、iが画面の水平方向の画素数(水平解像度)より大きいか否かを判定する(ステップS132)。NOと判定した場合には、ステップS112の処理に戻る。これにより、ステップS112からステップS132までの処理が繰り返し実行され、ステップS120で算出された面積が最小となったときの比較枠の設定に使用したシフト量shift ′=iが、ステップS128の処理により、シフト量データとして求めるシフト量shift に決定される。ステップS132おいてYESと判定した場合には以上の処理を終了する。以上の処理をステップS102において設定するパンスピードを変更して行えば、パンスピードの各値に対するシフト量shift を求めることができ、更に、焦点距離を変更すれば、パンスピード及び焦点距離の各値に対するシスト量shift を求めることができる。
【0056】
このようにシフト量shift を上式(1)を用いた理論値でなく、実測によって求めることによって、雲台コントローラ12から取得される雲台10のパンスピードに対して実際の雲台10のパンスピードにばらつきがある場合や、また、コントロール電圧に対してレンズ装置44の焦点距離にばらつきがある場合でも、正確なシフト量shift を求めることができる。実際に、環境の違いや製品個々の特性によってパンスピードや焦点距離にばらつきがあると考えられるため、このようなシフト量shift の求め方はより正確な自動追尾において有効である。尚、このような実測によるシフト量shift の決定方法は、自動追尾を開始する前では自動追尾中に行えるようにすることも可能である。即ち、図3のフローチャートのステップS20及びステップS36の比較枠の設定において、上記ステップS112〜ステップS132の処理を行い、実測によって最適なシフト量shift を求める。そして、そのシフト量shift に基づいて比較枠を設定することもできる。また、この場合には、画面に対して移動物体が大きい場合には適切にシフト量shift を求めることができない場合があるため、画面に対して移動物体が大きい場合でも適切にシフト量shift を求めることができるように、図3のように上式(1)により理論的に求めたシフト量shift を補正する意味で、実測によってシフト量shift を最終的に決定するようにしてもよい。即ち、まず、上式(1)によりシフト量shift を算出し、そして、そのシフト量shift を基準にしてシフト量shift を1ずつ増減させながら比較枠を設定すると共に、その比較枠に基づいて差画像を求めて移動物体の面積を算出する。もし、上式(1)により算出したシフト量shift のときよりもその面積が小さく、且つ、最初に極小となるシフト量shift が検出されれば、そのシフト量shift を最適なシフト量shift とし、そのシフト量shift に基づいて比較枠を設定する。
【0057】
次に、画面上における移動物体の移動スピードが速い場合に移動物体が画面から外れるのを防止する処理について説明する。尚、移動物体はパン方向にのみ移動するものとし、移動物体がチルト方向に移動する場合も以下の処理と同様に行われるものとする。図3のフローチャートで説明したように画像メモリ50に取り込まれた画像▲1▼と画像▲3▼、及び、画像▲1▼と画像▲2▼の比較(差画像の取得)により、図15に示すように撮影範囲Lの画像▲1▼の画面上において移動物体の画像M1、M2、M3が抽出され、重心1−3及び重心1−2が求められたとする。もし、画面上における移動物体の移動スピードが速いとすると、即ち、(重心1−3)−(重心1−2)により表される移動物体の移動量が大きいとすると、重心計算等の処理を行っている間に移動物体が同図画像M4に示すように画面(撮影範囲L)から外れ、その後の移動物体の検出が不能となるおそれがある。
【0058】
このような事態を防止するためには、カメラ40のレンズ装置44のズームを制御し、図15の撮影範囲L′のように移動物体の画像M4を含むように画像▲1▼の撮影範囲Lに対して撮影範囲(画角)を自動的に拡大させると好適である。そこで、このような制御を行う場合において、まず、CPU54は、重心1−3及び重心1−2の座標に基づいて移動物体の移動を予測し、移動物体が画面から外れるおそれがあるか否かを判断する。簡単な方法としては、画面上における移動物体の移動量((重心1−3)−(重心1−2))を算出し、その移動量が所定値よりも大きいと判定した場合には、移動物体が画面から外れるおそれがあると判断する。但し、移動物体の移動量のみで判断するのではなく、重心1−3又は重心1−2の画面上の位置を考慮してもよい。また、他の方法で判断してもよい。そして、移動物体が画面から外れるおそれがあると判断した場合には、レンズ装置44のズームをワイド側に所定量移動させるための所定の焦点距離への変更を指令する指令信号を雲台コントローラ12に送信する。これによって、雲台コントローラ12からレンズ装置44にズームの制御信号が与えられ、レンズ装置44の焦点距離がCPU54から指令された焦点距離に変更されると共に、カメラ40の撮影範囲が拡大される。
【0059】
一方、撮影範囲(画角)を拡大するだけのズームの制御では、画面上において移動物体の画像が不要に小さくなった状態で自動追尾が行われることになるおそれがあるため、レンズ装置44のズームを適宜制御して撮影範囲(画角)を自動的に縮小させる(ズームをテレ側に移動させる)と好適である。そこで、このような制御を行う場合において、画像処理プロセッサ52及びCPU54は、以下の図16の説明図及び図17のフローチャートで説明するような処理を行う。但し、上述のように移動物体が画面から外れるおそれがあると判断される場合には撮影範囲を縮小する以下の処理は行わないようにする。まず、上記図3のフローチャートの処理において、画像▲1▼と画像▲3▼又は画像▲1▼と画像▲2▼のいずれか一方の2フレーム分の画像に基づいて差画像が求められ、移動物体の画像が抽出された際に、画面内におけるその移動物体の画像の範囲を検出する。例えば、画像▲1▼と画像▲3▼の差画像において、図16(A)のような移動物体の画像が抽出されたとする。画像処理プロセッサ52は、その差画像において、各水平ラインごとに画素データが1の(画素データが0でない)画素の数を求める。尚、各水平ラインは垂直方向の座標値(図6参照)で表し、画面上端を1として1からY(Yは例えば240)まであるものとする。これによって、図16(B)のように移動物体の垂直方向投影分布を求める。CPU54は、図17のフローチャートに示すように、移動物体の垂直方向投影分布から移動物体の上端の座標値aと下端の座標値bを求める(ステップS150)。次いで、座標値aと座標値bとから移動物体の垂直方向の長さcを、c=b−aにより算出する(ステップS152)。そして、その長さcが、画面の垂直方向の長さ(ここでは240とする)の半分よりも小さいか否か、即ち、c<240/2か否かを判定する(ステップS154)。NOであれば、移動物体の画像は画面上において十分な大きさであるものとして撮影範囲を縮小する処理は行わない。一方、YESであれば、移動物体の画像は画面上において小さいと判断し、まず、d=240/2/c=120/cを求める。尚、dは、長さcの移動物体の画像を何倍すれば画面の半分の長さにすることができるかを示す値である。次いで、CPU54は、レンズ装置44が現在設定されている焦点距離にdの値をかけ(ステップS158)、その値を新たな焦点距離とする。ここで、d>1であるため、新たな焦点距離の値は元の焦点距離の値よりも大きく、この新たな焦点距離による撮影範囲は縮小される。そして、CPU54は、その新たな焦点距離への変更を指令する指令信号を雲台コントローラ12に送信する。これによって、雲台コントローラ12からレンズ装置44にズームの制御信号が与えられ、レンズ装置44の焦点距離がCPU54から指令された焦点距離に変更されると共に、カメラ40の撮影範囲が縮小される(ステップS160)。従って、移動物体の画像が画面上において拡大される。
【0060】
尚、上記ステップS150における座標値a、bを求める方法は、上述のように垂直方向投影分布に基づく方法以外の方法であってもよい。
【0061】
以上説明した実施の形態の内容は、雲台10がパン方向、チルト方向に移動する場合について適用できるだけでなく、それ以外の決められた方向に移動する場合(例えば、カメラの位置を上下左右に移動させるような場合)についても同様に適用できる。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る自動追尾装置によれば、移動物体の移動速度を検出し、その移動速度に基づいて雲台の移動速度を制御するようにしたため、移動物体の移動に対する雲台の追従性が向上し、移動物体を確実に自動追尾することができるようなる。また、カメラから取り込んだ画像から移動物体の画像を抽出するための比較範囲を雲台の移動速度に基づいて決定することによって、特願平10−345664号公報に記載のように雲台の位置に基づいて比較範囲を決定する場合に比べて安価な部品の使用で決定することができるようになる。即ち、2画面分の各画像を取り込む時間間隔は正確に決めることができ、かつ、その時間間隔が短いため例えば撮影範囲が1画素分だけシフトしたことを検出するための速度検出の分解能及び精度は位置検出の場合に比べて低くてもよく、安価なセンサー及びA/Dコンバータ等の使用が可能になる。また、雲台の移動速度が一定の間に2画面分の画像を取り込むようにすれば、画像の取込み時と移動速度の検出時とを正確に一致させる必要もなく高い時間精度も不要となる。更に、パン/チルト駆動用にステッピングモータを使用した場合に位置検出センサーを設けなくても、移動速度から比較範囲を求めることが可能となる。
【0063】
また、移動物体の移動速度が極めて速く、カメラの撮影範囲から外れると判断されるような場合には、カメラの撮影範囲を拡大、即ち、ズームをワイド側に移動させることによって、移動物体が極めて速い移動物体に対しても確実に自動追尾を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明が適用される自動追尾機能搭載のリモコン雲台システムの全体構成図である。
【図2】図2は、リモコン雲台システムの構成を示したブロック図である。
【図3】図3は、自動追尾の処理手順を示したフローチャートである。
【図4】図4(A)乃至(C)は、雲台が停止している場合の被写体と撮影範囲の関係を示した説明図である。
【図5】図5は、図4の場合における差画像を例示した説明図である。
【図6】図6は、画面上の座標の説明に使用した説明図である。
【図7】図7(A)乃至(C)は、雲台が移動している場合の被写体と撮影範囲の関係を示した説明図である。
【図8】図8は、図7の場合における差画像を例示した説明図である。
【図9】図9は、撮影範囲が右方向にシフトした場合の比較枠(比較範囲)の様子を示した説明図である。
【図10】図10は、撮影範囲が左方向にシフトした場合の比較枠(比較範囲)の様子を示した説明図である。
【図11】図11は、雲台10が右方向に移動している場合の被写体と、画像▲1▼、画像▲2▼、画像▲3▼のそれぞれの撮影範囲との関係を示した図である。
【図12】図12は、図11において移動物体の画像を抽出した様子を示した図である。
【図13】図13は、雲台のパンスピードとズームのコントロール電圧(焦点距離)に対する撮影範囲のシフト量を予めメモリに記憶させておく場合の説明に使用した説明図である。
【図14】図14は、雲台のパンスピードとズームのコントロール電圧(焦点距離)に対する撮影範囲のシフト量を予めメモリに記憶させておく場合の処理手順を示したフローチャートである。
【図15】図15は、移動物体の移動スピードが速い場合に撮影範囲を拡大するようにした場合の説明に使用した説明図である。
【図16】図16は、撮影範囲を縮小する場合の説明に使用した説明図である。
【図17】図17は、撮影範囲を縮小する場合の処理を示したフローチャートである。
【符号の説明】
10…雲台、12…雲台コントローラ、14…画像処理装置、40…カメラ、42…カメラ本体、44…レンズ装置、46…Y/C分離回路、48…A/Dコンバータ、50…画像メモリ、52…画像処理プロセッサ、54…CPU
Claims (2)
- カメラを載置した雲台の移動によって前記カメラの撮影方向を移動させながら前記カメラで撮影された画像を逐次取り込み、該取り込んだ画像を比較して移動物体の画像を抽出すると共に、前記移動物体の画像の画面上の位置に基づいて前記移動物体が前記カメラの撮影範囲外とならないように前記雲台の移動速度を制御する自動追尾装置において、
前記カメラから2画面分の画像を取り込むと共に、前記雲台の移動速度に基づいて、前記2画面分の各画像を撮影した際の前記カメラの撮影範囲が重複する範囲を比較範囲として決定する比較範囲決定手段と、前記2画面分の各画像から前記比較範囲決定手段によって決定された比較範囲内の画像を抽出し、該抽出した各画像を比較することによって前記移動物体の画像を抽出する画像処理手段とを備え、前記カメラから取り込んだ画像に基づいて前記移動物体の画像を抽出する移動物体画像抽出手段と、
前記移動物体画像抽出手段によって抽出された前記移動物体の画像の画面上での位置変化から前記移動物体の移動速度を検出する移動速度検出手段と、
前記移動速度検出手段によって検出された前記移動物体の移動速度に基づいて前記移動物体が前記カメラの撮影範囲外とならないように前記雲台の移動速度を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする自動追尾装置。 - 前記制御手段は、前記移動物体画像抽出手段によって抽出された前記移動物体の画像に基づいて、前記移動物体が前記カメラの撮影範囲外になると判断した場合には、前記カメラの撮影範囲を拡大することを特徴とする請求項1の自動追尾装置。
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