JP4724278B2 - 照明装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、対物レンズを用いた全反射照明法に適用される照明装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、蛍光顕微鏡、フォントSTM(NSOM)、微小ガラス針によるナノメートル計測法などのミクロの次元や領域を対称とするものの照明方法として、全反射照明が知られている。
【0003】
この全反射照明は、全反射したガラス表面から試料溶液側にしみ出す光であるエバネッセント光(深さ100nm程度)を使ってガラス表面近傍のみを局部的に照明するもので、エバネッセント光が“波長より小さい寸法の領域に局在し、自由空間を伝搬しない”という特性を利用することにより、バックグランド・ノイズ(散乱光など)が極めて低く、例えば、蛍光色素1分子のような観察にも有効であるとされている。
【0004】
ところで、このような全反射照明には、プリズムを使用する方法と、対物レンズを使用する方法があるが、このうちの対物レンズを使用する方法では、開口数(NA)が下記の式を満たす対物レンズを使用することにより全反射照明が可能であり、油浸対物レンズで高い開口数を有するもが使われている。
【0005】
NA>n ただし、NA:対物レンズの開口数、n:試料溶液の屈折率
しかし、このような対物レンズを使用する方法では、対物レンズ内で光が散乱しないように照明光を入射することが重要であり、このため、例えば特開平9−159922号公報に開示されるように、照明光を対物レンズの後ろ側焦点(瞳位置)で集光するように入射させるようにしたものがあり、この場合、照明光の入射位置の微妙な調整をするのに、カバーガラス表面で全反射した後に同一光路を通ってくる戻り光の形状や強弱を観察して調整の良否を確認するようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような全反射照明に対物レンズを使用した方法では、適切な調整が行われた照明光は、カバーガラス裏面で全反射した後、同一光路を通って照明装置まで戻るようになり、この時、蛍光染色された試料は、試料面にしみ出したエバネッセント光が届く範囲でのみ蛍光が発光し、バックグラウンドの少ない蛍光像が対物レンズを通して観察されるようになる。
【0007】
この場合、通常の蛍光観察においては、励起光が観察側に来ないようにするため、色フィルタや波長選択性のミラーなどが用いられているが、レーザ光を用いた全反射照明についても、試料からの蛍光のみ観察光学系に届かせるため、レーザ光の波長に合わせたダイクロイックミラーとして、蛍光のみを透過するような光学特性のものが使用されている。
【0008】
ところが、通常の蛍光観察の場合、観察光学系に戻る励起光は、試料面あるいはその他の光学素子によって散乱された励起光のみであるのに対し、全反射照明においては、照明光に用いたレーザ光が試料面で全反射され、ほとんど損失なしに戻り光として観察光学系に戻ってくるため、全反射照明による蛍光観察に用いられるダイクロイックミラーやバリアフィルタの光学素子には、戻り光に対する反射率の高いものが要求され、このため、これら光学素子として、特別な遮断特性を有するものが必要となり、価格的に高価になるという問題があった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、戻り光を確実に遮蔽できる、価格的にも安価な照明装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、対物レンズを用いた全反射照明法に適用される照明装置において、前記対物レンズを介して入射される入射光の全反射後に、前記対物レンズを介して戻される戻り光の光路に、該戻り光を遮蔽する遮蔽手段を挿脱可能に設けたことを特徴としている。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記遮蔽手段は、前記対物レンズの後ろ開口部に配置されることを特徴としている。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記遮蔽手段は、前記戻り光の光路に対し挿脱可能な遮蔽部分を有することを特徴としている。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記遮蔽手段は、電気的な動作により前記戻り光に対する透過率を変化させることを特徴としている。
【0014】
この結果、本発明によれば、戻り光の光路上に位置される観察光学系の各光学素子として、通常の観察系で用いるものと同程度の遮蔽特性を有するものを使用することができる。
【0015】
また、電気的な動作により戻り光に対する透過率を変化させる遮蔽手段を用いることで、振動を嫌う標本の観察を行う場合に有利になる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に従い説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明が適用される対物レンズを用いた全反射照明法を採用した倒立型の落射蛍光顕微鏡の概略構成を示している。
【0018】
図において、1は顕微鏡本体で、この顕微鏡本体1は、一般的な倒立型の落射蛍光顕微鏡と同様に、照明部2、ダイクロイックミラー3、対物レンズ4、光学フィルタ5および撮像素子(CCDカメラなど)6を有しており、それぞれの光軸を一致させて配置されている。
【0019】
照明部2は、所定波長のレーザ光を発する照射光源201と集光レンズ202を有するもので、照射光源201からのレーザ光を集光レンズ202を介してダイクロイックミラー3に入射させるようにしている。
【0020】
ダイクロイックミラー3は、照射光源201からの所定波長のレーザ光を反射するとともに、後述する蛍光の波長を透過するように調整されており、照射光源201のレーザ光を反射し、入射光(励起光)71として対物レンズ4を透過して標本9に照射させるようにしている。
【0021】
対物レンズ4は、上述したNA>nの条件を満たした高い開口数を有する油浸対物レンズからなるものである。また、標本9は、対物レンズ4の上方に位置される顕微鏡本体1の図示しないステージに載置されたガラス基板8上にオイル10を介在して配置されている。この場合、標本9は、オイル10およびガラス基板8を介して対物レンズ4の焦点位置に位置されている。
【0022】
そして、入射光(励起光)71の励起により、標本9から発せられる微弱な蛍光72は、ダイクロイックミラー3を透過され、光学フィルタ5に入射される。
この場合、光学フィルタ5は、ダイクロイックミラー3などとともに観察光学系を構成するもので、光の波長を選択的に通すことができるようにしている。ここでは、入射光(励起光)71の波長の光を遮断し、蛍光の波長の光のみを通過させるものが用いられ、標本9からの蛍光72は、光学フィルタ5を通過され、蛍光像として撮像素子6により撮像されるようになっている。
【0023】
一方、入射光71として対物レンズ4に入射されるレーザ光は、ガラス基板8で全反射され、標本9側にエバネッセント場を生成した後、対物レンズ4の中心軸に対して入射光(励起光)71と軸対称な対物レンズ4の瞳位置で焦点を結び、戻り光73として観察光学系に向けて戻っていく。
【0024】
この場合、この戻り光73の光路には、遮蔽手段として遮蔽板11が配置されている。この遮蔽板11は、戻り光73が観察光学系に戻るのを阻止するためのものであるが、遮蔽板11が常に光路上に挿入された状態では、入射光71がガラス基板8で全反射する条件を満たすための各光学素子の調整が難しくなるので、戻り光73の光路に対して挿脱可能になっている。また、遮蔽板11は、観察の際に、蛍光光量を損失させないために、図2(a)に示すように入射光(励起光)71の断面形状111を覆える大きさの遮蔽部分112を有するのが理想で、この遮蔽部分112の位置としては、全体光路の光軸中心に対して断面形状111で示す入射光(励起光)71と対称な位置になっている。
【0025】
また、このような遮蔽板11の配置場所は、戻り光73は拡散光で対物レンズ4からダイクロイックミラー3に向かって広がっていくので対物レンズ4の瞳位置にするのが理想であるが、通常対物レンズ4の瞳位置は、レンズ内部になるので、対物レンズ4の後ろ側開口部に設定されている。具体的には、微分干渉法でダハプリズムを入れるために設けられた位置に挿入するのが実用的である。
【0026】
なお、遮蔽板11としては、蛍光像の明るさに問題がなければ、図2(b)に示すように遮蔽部分113を光路断面の半分を覆うような形状としてもよい。
【0027】
このようにすれば、入射光(励起光)71の位置が多少動いても図示左半分の部分に入射していれば、戻り光73を遮蔽することができる。
【0028】
また、図2(c)に示すように遮蔽板11の一部を遮蔽部分114に形成するとともに、遮蔽板11全体を回転機構により回転させるようにしてもよい。こうすれば、光路への挿脱による遮蔽でなく、遮蔽板11の回転による戻り光73の遮蔽を実現できる。この場合、遮蔽板11の回転駆動にモータなどの電気的な駆動手段が用いられることにより、観察に対して顕微鏡に手を振れることなく、調整と観察を切替えることができる。
【0029】
従って、このようにすれば、対物レンズ4とダイクロイックミラー3との間に遮蔽板11を挿脱可能に設け、ガラス基板8で全反射されて戻されて来る戻り光73を遮蔽できるようにしたので、戻り光73の光路上に位置される観察光学系のダイクロイックミラー3および光学フィルタ5などの各光学素子として、通常の観察系で用いるものと同程度の遮蔽特性を有するものを使用することができるようになり、従来の特別な遮断特性を有するものを必要とするものと比べ、価格的に安価にできる。
【0030】
(第2の実施の形態)
図3は、本発明の第2の実施の形態の概略構成を示すもので、図1と同一部分には、同符号を付している。
【0031】
この場合、第1の実施の形態では、遮蔽手段として遮蔽板11の不透明な遮蔽部分を入射光路に対して出し入れするようにしたが、この第2の実施の形態では、遮蔽板11に代えて電気的な刺激により戻り光73に対する透過率を変化させることができる液晶シャッタ12を設けるようにしている。この場合、液晶シャッタ12は、図示しない外部駆動回路によりオンオフ可能になっていて、このオンオフ動作により戻り光の透過と遮蔽を選択可能にしている。
【0032】
従って、このようにすれば、液晶シャッタ12は、動作の際に振動を一切発生しないので、振動を嫌う標本の観察を行う場合に有利である。
【0033】
なお、上述した実施の形態では、一貫して蛍光顕微鏡に適用した例について述べたが、対物レンズを使用した全反射照明を必要とするものならば、例えば、フォトトンネル顕微鏡などの他への適用も可能である。
【0034】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、観察光学系への戻り光を確実に遮蔽でき、価格的に安価にできる照明装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の概略構成を示す図。
【図2】第1の実施の形態に用いられる遮蔽部材の形状を光軸方向から投影した図。
【図3】本発明の第2の実施の形態の概略構成を示す図。
【符号の説明】
1…顕微鏡本体
2…照明部
201…照射光源
202…集光レンズ
3…ダイクロイックミラー
4…対物レンズ
5…光学フィルタ
6…撮像素子
71…入射光
72…蛍光
73…戻り光
8…ガラス基板
9…標本
10…オイル
11…遮蔽板
111…断面形状
112、113、114…遮蔽部分
12…液晶シャッタ
Claims (4)
- 対物レンズを用いた全反射照明法に適用される照明装置において、
前記対物レンズを介して入射される入射光の全反射後に、前記対物レンズを介して戻される戻り光の光路に、該戻り光を遮蔽する遮蔽手段を挿脱可能に設けたことを特徴とする照明装置。 - 前記遮蔽手段は、前記対物レンズの後ろ開口部に配置されることを特徴とする請求項1記載の照明装置。
- 前記遮蔽手段は、前記戻り光の光路に対して挿脱可能な遮蔽部分を有することを特徴とする請求項1または2記載の照明装置。
- 前記遮蔽手段は、電気的な動作により前記戻り光に対する透過率を変化させることを特徴とする請求項1または2記載の照明装置。
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