JP4721116B2 - 新聞用紙の色ずれ評価方法および新聞用紙。 - Google Patents

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本発明は、新聞用紙をオフセット輪転印刷機で印刷する際のペスター時(紙継ぎ時)に発生することが多い新聞用紙の色ずれ評価方法及びオフセット輪転印刷機で印刷する時に色ずれが少ない新聞用紙に関する。
発明の背景
近年、新聞印刷技術は、オフセット輪転印刷化、カラー印刷化と共に、高速大量印刷化、自動化など大きな進歩を遂げてきている。通常新聞用巻取紙を用いる輪転印刷機では、大量高速印刷を可能とするため、印刷中、使用終了前の新聞巻取紙(旧巻取)から次の新聞巻取紙(新巻取)へのペスター(紙継ぎ)は、印刷機を停止することなく連続的に、かつ自動で行われる。この時、旧巻取と新巻取の物性に違いがあると、最初の印刷部で印刷された画線(1色目、例えば墨)と2番目以降の印刷部で印刷された画線(2色目、例えば藍)がずれること、即ち、見当ずれが起こることがある。このような見当ずれが発生すると、製品にできない印刷物(黒損)が発生する。これが大量に発生すると生産性が著しく低下するので、ペスター時の色ずれ(見当ずれ)は最小限に抑える必要がある。
このため、既に色ずれを少なくしようとする試みはいろいろなされている。
例えば、特開2001−226899号公報(特許文献1)には、紙の浸水伸度の最も大きい方向と幅方向との角度の差の絶対値を15度以下にする印刷用巻取り紙が開示されている。
また、特開2005−248331号公報(特許文献2)には、抄紙工程でのドロー値を1.0〜8.0%、紙の収縮率を1.0〜4.5%の範囲で管理し、MD方向の弾性率が2.0〜7.0kN/mmで、かつそのバラツキが0〜1.0kN/mmとなるようにしたオフセット印刷用紙製造方法が開示されている。
しかしながら、前者は抄紙幅方向の見当ずれを問題にしたものであって、抄紙方向(MD方向)の見当ずれについて解決策を提案するものではない。
また、後者は、不完全な弾性体である紙について測定した弾性率をベースにしており、実際の輪転機での用紙の引張り挙動を完全に再現・評価しているとは言えず、抄紙方向(MD方向)の見当ずれ防止について十分な解決策とは言いがたい。
特開2001−226899号公報 特開2005−248331号公報
本発明は上記事情に鑑み、新聞輪転印刷機のペスター時に発生する色ずれトラブルの発生を短時間で評価できる方法を提供することにある。更には、新聞輪転印刷機のペスター時に発生する色ずれの少ない新聞用紙を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決したものであって、
新聞用紙を裁断し、幅方向(巻取り方向と直交する方向)の長さが15mmの矩形の試験片を採取し、当該試験片に、該試験片の破断荷重未満の荷重を掛け、伸び量を固定した後、30秒後の応力緩和率を測定し、応力緩和率によって新聞用紙を輪転印刷機で印刷する場合のペスター時の色ずれの発生を予測する新聞用紙の色ずれ評価方法であって、試験片に加える破断荷重未満の荷重を0.6kgfとし、応力緩和率が15%以下であれば色ずれは許容範囲内であると判断する新聞用紙の色ずれ評価方法、並びに新聞用紙を裁断し、幅方向(巻取り方向と直交する方向)の長さが15mmの矩形の試験片を採取し、当該試験片に0.6kgfの荷重を掛け、伸び量を固定した後、30秒後の応力緩和率を測定した時、当該応力緩和率15%以下とすることにより、ペスター時の色ずれを抑えた新聞用紙である。
本発明の評価方法によれば、新聞輪転印刷機のペスター時における色ずれを短時間で評価し、予測できるので色ずれによる印刷損紙の発生を少なくすることが出来る。また、本発明の新聞用紙によれば、オフセット輪転印刷時に色ずれの発生が少なく、印刷損紙の発生の少ない新聞用紙を提供できる。
本発明者らは、新聞オフセット輪転印刷機のペスター時における色ずれについて鋭意検討した。新聞用巻取紙は新聞用紙を抄紙機で抄紙した紙をジャンボリールに巻取った後、ワインダーで所定の紙幅及び、長さの小巻に仕上げるが、ワインダー巻取り時には所定のテンションをかけて巻取っており、巻取紙は内部に所定の応力がかかった状態で印刷工場へ運ばれることとなる。この巻取紙の内部応力による伸びとペスター時の色ずれの発生に相関があるのではないかと考えた。
本来伸びとは、紙が引張り荷重を受けたときに生じる変形(歪み)の大きさを示している。ゴムのように荷重をかけると歪みを起こし、その荷重を取除くと元に復帰するものが弾性体と呼ばれ、紙も完全剛体ではなく広義の弾性体の一種である。しかし、紙は応力を受ける時間が変化すると伸びの大きさが変化するので、不完全な弾性体と言える。即ち、一定の応力を受けたときに伸びに時間変化が起こることになる
応力緩和とは、一定の荷重をかけた後に、その状態を保持しておくと内部応力が緩和する挙動である。この応力緩和率が小さい紙は、新聞用紙の巻取り仕上げ時のテンションと、輪転印刷機で印刷される際のテンションの変化が少なく、印刷される際の巻取り紙のテンションを調整しやすい。これにより、新聞用紙の巻取仕上げ時のテンションと輪転印刷機で印刷する時に新聞用紙にかかるテンションを近似させておくことにより新聞用紙にかかるテンションの変動が小さくなり、より一層ペスター時等のテンション変動による伸びの変動も抑えられ、縦方向の色ずれトラブルを防止することができる。更に、応力緩和率が小さい紙は、新聞巻取紙の下巻部と上巻部での伸びの変化も小さいので、ペスター時以外の紙の伸びの変動も少なく、全体として色ずれの発生が少ない新聞用紙となる。
応力緩和率の測定は以下のように行う。
新聞用紙を温度23℃、湿度50%RHで調湿後、抄紙方向(MD方向)の長さが230mm、抄紙方向と直交する方向(CD方向)の長さが15mmの試験片に裁断する。JIS−8113で記されているようなロードセル式定速伸張形引張試験機を用い、試験片を引張る2つのつかみ具(可動部及び固定部)の間隔を180mmにあわせた後、MD方向に引張るよう試験片の両端をつかみ具に固定する。MD方向に引張り荷重をかけ、例えば0.6kgfの荷重がかかった地点で可動部つかみ具の引張動作を停止することにより、試験片の伸び量を固定し、30秒後の残存荷重を測定する。初期荷重(たとえば0.6kgf)から30秒後の残存荷重を差し引いた応力緩和荷重を初期荷重で除し、百分率(%)を応力緩和率とし、10点測定して平均値を求めた。
ここで、荷重を0.6kgf/15mmとしたのは、実際に新聞輪転印刷機で印刷するときに新聞用紙にかかるテンションと略一致させるためである。
即ち、幅15mmの試験片に対する0.6kgfの荷重は新聞輪転印刷機で使用する新聞用紙に換算すると、そのテンションは50〜60kgf/1,626mm幅に相当することになる。(1,626mm幅は新聞用紙の主要寸法であるA巻の紙幅)
しかし、測定時の荷重は0.6kgf/15mmでなくても良いが、測定荷重が試験片を破断してしまう大きな荷重であったり、試験片に内部応力が全く発生しない程度の小さい荷重であると測定に意味がないので、この範囲で選択する必要がある。
また、緩和時間は30秒より短いと応力緩和率が小さいので測定誤差が大きくなり、30秒より長くしても測定誤差を少なくするという点では意味がない。応力緩和率を15%以下に調整する方法としては、パルプ原料面では、繊維長の短いパルプの配合割合を減らし繊維長の長いクラフトパルプなどの配合割合を増やす、古紙パルプを適度に叩解する、灰分を低くする、などの方法がある。薬品面では、ポリアクリルアミド、カチオン澱粉などの紙力増強剤の添加量を増やす方法がある。また、抄紙条件の面では、原料供給速度(J)とワイヤースピード(W)の比J/W比を調整すること、パルプ繊維をMD方向に配向させることや地合いを良好にするなどの方法がある。
以下、本発明の実施例を示す。なお、以下断りのない限り部及び%は絶乾質量基準でいう。添加量はパルプ100重量に対する量で表す。
(実施例1)
パルプ原料として、脱墨古紙パルプ(カナダ標準ろ水度150mlCSF)70重量%、サーモメカニカルパルプ(カナダ標準ろ水度90mlCSF)20重量%、針葉樹晒クラフトパルプ(カナダ標準ろ水度450ml)10重量%の配合割合で混合したパルプスラリーに、填料として、パルプ原料100重量部に対してホワイトカーボン1.5重量%、クレー5重量%を添加し、ポリアミドエピクロロヒドリン系湿潤紙力増強剤(星光PMC株式会社製 商品名:WS4024)0.2重量%、サイズ剤(星光PMC株式会社製 商品名:AL1206)0.3重量%、硫酸バンド2重量%を添加して紙料を調整した。この紙料を用いて坪量43g/mの新聞用紙を抄造し、さらにオンマシンゲートロールコーターで、表面処理剤として酸化澱粉(日本コーンスターチ株式会社製 商品名:SK−150)を表裏面合計で0.8g/mの塗工量で塗工して新聞用紙を製造した。この新聞用紙の応力緩和率と色ずれの評価結果を表1に示した。
(実施例2)
クレーの添加量を10重量%とした以外は実施例1と同様に新聞用紙を製造した。この新聞用紙の応力緩和率と色ずれの評価結果を表1に示した。
(実施例3)
パルプ原料の配合割合を、脱墨古紙パルプ70重量%、サーモメカニカルパルプ30重量%とした以外は実施例1と同様に新聞用紙を製造した。この新聞用紙の応力緩和率と色ずれの評価結果を表1に示した。
(実施例4)
脱墨古紙パルプのろ水度を180mlCSFに変化させた以外は実施例3と同様に新聞用紙を製造した。この新聞用紙の応力緩和率と色ずれの評価結果を表1に示した。
(比較例1)
パルプ原料の配合割合を、脱墨古紙パルプ80重量%、サーモメカニカルパルプ20重量%とし、クレーの添加量を10重量%とした以外は実施例4と同様に新聞用紙を製造した。この新聞用紙の応力緩和率と色ずれの評価結果を表1に示した。
(比較例2)
パルプ原料の配合割合を、脱墨古紙パルプ70重量%、サーモメカニカルパルプ30重量%とした以外は比較例1と同様に新聞用紙を製造した。この新聞用紙の応力緩和率と色ずれの評価結果を表1に示した。
(試験及び評価方法)
応力緩和率の測定:JISP8113「紙及び板紙−引張特性の試験方法」に準じ、定速伸張形引張試験機を用いて測定した。
色ずれの評価方法:新聞巻取を新聞輪転印刷機にかけ、両出し12万部/時の印刷スピードで、墨藍紅黄の順で4色印刷を行った。巻込み長20m残して旧巻取から新巻取へのペスターを行い、50部を排紙した直後の墨を基準とした場合の黄色のずれ量を測定した。10回のペスターを行い、ずれ量の平均値を算出し、下記の基準で色ずれを評価した。
◎:ずれ量が0.1mm未満、
○:ずれ量が0.1mm以上0.5mm未満、
×:ずれ量が0.5mm以上
Figure 0004721116
※DIP:脱墨古紙パルプ、TMP:サーモメカニカルパルプ、NKP:針葉樹晒クラフ トパルプ
表1に示した結果において、応力緩和率の結果と色ずれ評価の結果を対比してわかるように、応力緩和率の測定は、新聞用紙の色ずれ評価方法として有効であることがわかる。また、応力緩和率が15%以下とした新聞用紙は色ずれが抑制されていることがわかる。

Claims (2)

  1. 新聞用紙を裁断し、幅方向(巻取り方向と直交する方向)の長さが15mmの矩形の試験片を採取し、当該試験片に、該試験片の破断荷重未満の荷重を掛け、伸び量を固定した後、30秒後の応力緩和率を測定し、応力緩和率によって新聞用紙を輪転印刷機で印刷する場合のペスター時の色ずれの発生を予測する新聞用紙の色ずれ評価方法であって、試験片に加える破断荷重未満の荷重を0.6kgfとし、応力緩和率が15%以下であれば色ずれは許容範囲内であると判断する新聞用紙の色ずれ評価方法
  2. 新聞用紙を裁断し、幅方向(巻取り方向と直交する方向)の長さが15mmの矩形の試験片を採取し、当該試験片に0.6kgfの荷重を掛け、伸び量を固定した後、30秒後の応力緩和率を測定した時、当該応力緩和率を15%以下とすることにより、ペスター時の色ずれを抑えた新聞用紙。
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