JP4719922B2 - 温度により相溶状態・分離状態が可逆変化する溶媒の組み合わせを用いた化学プロセス方法 - Google Patents
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Description
本発明は、「相溶性−多相有機溶媒システム」に使用される好適な溶媒の組み合わせであって、特にペプチドの合成プロセス、および電気化学プロセスなどの電気エネルギーを付与する化学プロセスに適する溶媒の組み合わせを提供し、かかる化学プロセス効率を飛躍的に向上させる技術である。以下「溶媒の組み合わせ」を「溶媒セット」と記載する。
溶媒セットは、相対的に低極性の第一溶媒、および相対的に高極性の第二溶媒の組み合わせであるが、これら第一溶媒と第二溶媒それぞれは複数の溶媒の混合溶媒でもよい。もちろん単独の溶媒であってもよい。
背景技術
本発明者は、温度により相溶状態と分離状態の状態変化を容易に制御でき、この状態変化の制御により反応の制御および生成物などの分離・精製を容易に実現できる化学プロセスを構築できる新規な溶媒セットを提案した(特許文献1)。
この溶媒セットの用途の一例は、従来の固相ペプチド合成に優るとも劣らない液相でのペプチド合成反応が挙げられる(非特許文献1、特許文献2参照)。
また、他の応用例として、この溶媒による選択的酸化反応プロセスも挙げられる(特許文献1、段落番号0024〜0025参照)。
<DMI>
一方、公知の化合物である「ジメチルイミダゾリジノン:1,3−Dimethyl−2−imidazolidinone(以下「DMI」と記載する)」は工業的に有用な溶媒である。DMIは、三井化学(株)(旧三井東圧化学(株))と川研ファインケミカル(株)が共同で開発した窒素を含む五員環化合物で高沸点溶媒であって、次の1から5のような優れた性質があり、広範囲の用途に使用されている。
1.DMIは環状尿素化合物の一種で無色透明の極性の高い非プロトン性極性溶媒である。
2.DMIは一般的な非プロトン性極性溶媒に比べ酸・アルカリの存在下でも安定であり、特に高温下でも耐アルカリ性、耐酸性に優れている。
3.DMIは沸点・引火点が高く、凝固点の低い取り扱いやすい性質を持っている(沸点:225.5℃,引火点120℃,凝固点8.2℃)。
4.DMIは各種の無機及び有機化合物に対して強い溶解力をもち、またその「高い誘電率」と「溶媒和効果」により反応を促進し,副反応を押さえる効果がある。
代表的な使用用途としては、1)医薬.農薬.染料.顔料等の付加価値の高い製品の合成溶媒、2)電子部品・モールド等の洗浄剤、3)高分子化合物の重合溶媒などがある(特許文献3、4、5参照)。
<第一の溶媒>
さて特許文献1によれば、第一の溶媒は、基本的には低極性有機溶媒であり、該溶媒を構成する化合物群としては、アルカン、シクロアルカン、アルケン、アルキン、芳香族化合物などで、中でも好ましいものが、シクロアルカン系の化合物であり、特に好適なものとして「シクロヘキサン」を挙げることができる、と記載されている。シクロヘキサンのイス型−舟形配座異性体の変換が他の溶媒との関連で温度的に比較的穏やかな条件で起こることに関連していると推測できる。シクロヘキサンは融点が6.5℃と比較的高く、反応後の生成物などを固化して分離できるという利点もあり、最終工程である回収工程でもメリットがありこの面からも好ましい、と記載されている。
<第二の溶媒>
同じく特許文献1によれば、第一の溶媒と組み合わせる他方の溶媒または混合溶媒(第二の溶媒)を構成する有機溶媒は、基本的には高極性有機溶媒である。好ましいものとしては、ニトロアルカン、ニトリル、アルコール、ハロゲン化アルキル、アミド化合物およびスルフォキサイドからなる群から選択される少なくとも一種から構成されたもの、と記載されている。
さらにまた第二の溶媒は、具体的には、ニトロアルカンのアルキル基は炭素数が1、2または3であり、ニトリルのアルキル基の炭素数が1、2または3であり、アミド化合物はN−ジアルキルまたはN−モノアルキルアミドのアルキル基およびアシル基またはホルミル基の炭素数の合計は6以下であり、アルコールは炭素数が8以下であり、スルフォキサイドのアルキル基は炭素数が1、2または3であり、またハロゲン化アルキルのアルキル基は炭素数が6以下である、と記載されている。
<相溶化温度(分離温度)>
特許文献1によれば、第一の溶媒あるいは第二の溶媒の構成を変えることによって、相溶状態と相分離状態が切り替わる温度も自在に変えることができる、と記載されている。特許文献1の図にて、第一の溶媒であるシクロヘキサン(CH)と第二の溶媒であるニトロアルカン(NA)混合溶媒の構成と相溶化温度の変化に関する実験データの図が開示されている。
すなわち、パラメータとしてCHとNAの容積比を1:5、2:5、1:1、5:1とし、それぞれのNAを構成しているニトロメタン(NM)とニトロエタン(NE)の容積混合比を横軸、溶媒温度を縦軸として、両溶媒を混合した際の相溶化温度データをプロットした図が開示されている。
また、第一の溶媒であるシクロヘキサン(CH)と第二の溶媒を1:1の等容積(それぞれ50容積%)と固定して、第二の溶媒を、ニトロメタン(NM)とニトロエタン(NE)の混合溶媒、または、アセトニトリル(AN)とプロピオニトリル(PN)の混合溶媒、またはジメチルホルムアミド(DMF)とジメチルアセトアミド(DMA)の混合溶媒として、第二の溶媒の容積混合比を横軸、溶媒温度を縦軸として、両溶媒を混合した際の相溶化温度データをプロットした図が開示されている。
上記の特許文献1の図より、20℃から60℃の温度で相溶化温度(分離温度)が、第一・第二の溶媒構成で変化することがわかる。換言すれば、第一の溶媒と第二の溶媒のセットにおいて、第一・第二の溶媒構成を変える手段をもつことによって、両溶媒の相溶化温度(分離温度)を20℃から60℃の範囲で適宜変えうることがわかる。
<溶媒セットをもちいた化学プロセス>
特許文献1に記載されているように溶媒セットを利用した化学プロセスは特定のプロセスに限定されるわけではなく、特許文献2のアミノ酸を逐次的に付加する液相ペプチド合成プロセスでもよいし、一般の電気化学反応プロセスでもよい。
さらに電気化学反応プロセスに限らず、化学反応を促進するため、電気エネルギーを付与するプロセスでもよい。この一例としてディールスアルダー(Diels−Alder)反応プロセスに利用した実施例が記載されている(特許文献1、段落番号0026〜0027参照)。
<極性または誘電率>
ところで、一般に極性または誘電率については、非特許文献2および非特許文献3に技術基準が記載されている。すなわち、極性(ET(30))の実験的評価は、非特許文献3記載の方法に従って行えばよいし、誘電率の実験的評価は、非特許文献2記載の方法に従って行えばよい。
高極性溶媒の条件をこれらに準拠して表記するなら、その極性(ET(30))が25以上、または、その誘電率が20以上であればよい。逆に、低極性溶媒の条件をこれらに準拠して表記するなら、誘電率が0から15、または、極性(ET(30))が20未満である。
(特許文献1)
特願2001−254109「相溶性−多相有機溶媒システム」
(特許文献2)
特願2001−385493「相溶性−多相有機溶媒システムによりアミノ酸を逐次的に付加する液相ペプチド合成法」
(特許文献3)
特開昭54−144348公開公報
(特許文献4)
特開昭63−108027公開公報
(特許文献5)
特開平05−170713公開公報
(非特許文献1)
“Aliquid−phasepeptidesynthesisincyclohexane−basedbiphasicthermomorphicsystems”,KazuhiroChiba,YusukeKono,ShokakuKim,KohsukeNishimoto,YoshikazuKitanoandMasahiroTada,.Chem.Commun.,2002,(AdvanceArticle),TheRoyalSocietyofChemistry,1766−1767,2002,.(Firstpublishedontheweb15thJuly2002)
(非特許文献2)
J.A.RiddickandW.B.Bunger(eds.),OrganicSolvents,Vol.IIofTechniquesofOrganicChemistry,ThirdEdition,Wiley−Interscience,NewYork,1970.
(非特許文献3)
C.ReichardtandK.Dimroth,Fortshr.Chem.Forsch.11,1(1968),C.Reichardt,JustusLiebigsAnn.Chem.725,64(1971).
発明の開示
本案発明の課題は、「相溶性−多相有機溶媒システム」として使用される、より好適な溶媒セットの提供である。特に、従来は複数の溶媒の混合溶媒を用いることで、溶媒システムの相溶化温度を下げていたが、これを単独の溶媒で実現することを課題とする。
また、電気化学プロセスなどの電気エネルギーを付与する化学プロセスに適する溶媒セットを提供することを、課題とする。
本案の発明は、温度により相溶状態と分離状態とが可逆的に変化する第一の溶媒と第二の溶媒セットを用いた化学プロセス方法であって、これを実現する第一の溶媒(または第一の溶媒の主成分)であるアルカン系の化合物またはシクロアルカン系の化合物に組み合わせるべき好適な第二の溶媒を探索し、これを見出したことである。
すなわち、上記第一の溶媒に組み合わせるべき第二の溶媒が、カーボネート(炭酸エステル)化合物またはカーバメート(ウレタン)化合物またはウレア(尿素)化合物または環状アミドまたは環状ケトアミン、または第二の溶媒の主成分が、カーボネート(炭酸エステル)化合物またはカーバメート(ウレタン)化合物またはウレア(尿素)化合物または環状アミドまたは環状ケトアミンであることを見出した。
特に好適なのは、前記のカーボネート(炭酸エステル)化合物またはカーバメート(ウレタン)化合物またはウレア(尿素)化合物が、環状カーボネート(炭酸エステル)化合物または環状カーバメート(ウレタン)化合物または環状ウレア(尿素)化合物である。
さらに好適なのは、環状ウレア(尿素)化合物が、2つのアルキル基の合計炭素原子数が2以上であるジアルキルイミダゾリジノンである(全炭素原子数で5以上)。なお、環状ウレア(尿素)化合物の全炭素原子数の上限は特にないが、通常は、30以下のものが用いられる。もっとも好適な第二の溶媒は、DMI(ジメチルイミダゾリジノン)である。
図1に、本発明に用いるジメチルイミダゾリジノン(DMI)(図1(C))、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)(図1(d))を示す。
DMIは、従来技術に記載したように多くの工業用途が見出されているが、これを溶媒セットの第二の溶媒として用いることは新規であり、特有の効果がある。
さらに同様の効果が、DMIに限らず一般のカーボネート(炭酸エステル)化合物またはカーバメート(ウレタン)化合物またはウレア(尿素)化合物または環状アミドまたは環状ケトアミンにも見出されている。
その効果とは、従来は複数の溶媒の混合溶媒を用いることで、溶媒システムの相溶化温度(分離温度)を下げていたが、これを単独の溶媒、たとえば単独のDMIで実現できることである。
図面の簡単な説明
図1は、本発明に用いるジメチルイミダゾリジノン(DMI)(図1(C))、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)(図1(d))を示す。
発明を実施するための最良の形態
以下のDMIを用いた実験で、効果を説明する。その他のカーボネート(炭酸エステル)化合物またはカーバメート(ウレタン)化合物またはウレア(尿素)化合物または環状アミドまたは環状ケトアミン等でも、同様であるので説明は略す。
<実験1:シクロヘキサンとDMIの温度による相溶−二相分離>
第一の溶媒としてシクロヘキサン10ミリリットル、第二の溶媒としてジメチルイミダゾリジノン(DMI)10ミリリットルを摂氏20℃において混合すると、二相に分離した溶液となる。本溶液を漸次加熱すると、摂氏30℃付近で両相は互いに融合し、該温度以上で完全に均一な相溶状態を形成する。該均一溶液を再び25℃に冷却すると、直ちに相分離が開始され、二相分離溶液となる。この現象は、加温−冷却によって繰り返すことが可能であり、この溶媒セットでは、相溶化温度(分離温度)は25℃である。
<実験2:第一の溶媒をシクロアルカン混合物として相溶−二相分離温度を可変制御(第二の溶媒はDMI)>
実験1において、第一の溶媒としてシクロヘキサンおよびシクロオクタンの混合物を用い、その混合比率を変えることにより、該相溶温度は30℃から38℃の間の、任意の温度に制御が可能となる。
実験1において、第一の溶媒としてシクロヘキサンおよびシクロペンタンの混合物を用い、その混合比率を変えることにより、該相溶温度は11℃から30℃の間の、任意の温度に制御が可能となる。
<実験3:第一の溶媒をシクロアルカンとアルカンの混合物として相溶−二相分離温度を可変制御(第二の溶媒はDMI)>
実験1において、第一の溶媒としてシクロヘキサンおよびn−オクタンの混合物を用い、その混合比を変えることにより、該相溶温度は30℃から65℃の間の、任意の温度に制御が可能となる。
実験1において、第一の溶媒としてメチルシクロヘキサンおよびn−オクタンの混合物を用い、その混合比を変えることにより、該相溶温度は30℃から65℃の間の、任意の温度に制御が可能となる。
実験1において、第一の溶媒としてシクロヘキサンおよびn−テトラデカンの混合物を用い、その混合比率を変えることにより、該相溶温度は30℃から95℃の間の、任意の温度に制御が可能となる。
実験1において、第一の溶媒としてデカリンおよびn−テトラデカンの混合物を用い、その混合比率を変えることにより、該相溶温度は0℃から95℃の間の、任意の温度に制御が可能となる。
<実験4:第二の溶媒に極性溶媒を混合することにより相溶−二相分離温度を可変制御(第一の溶媒はシクロヘキサン)>
実験1において、第二の溶媒としてDMFおよびDMIの混合物を用い、その混合比率を変えることにより、該相溶温度は30℃から45℃の間の、任意の温度に制御が可能となる。
以上の実験1から実験3のように、単独のDMIを第二の溶媒として採用することによって、溶媒システムの相溶化温度(分離温度)を十分に下げることができた。これはペプチド合成などで有利である。もちろん、実験4のようにDMIを主成分とした混合溶媒で相溶化温度(分離温度)を調節しても良い。すなわち、上記のDMIに代表されるカーボネート(炭酸エステル)化合物またはカーバメート(ウレタン)化合物またはウレア(尿素)化合物または環状アミドまたは環状ケトアミンは、溶媒セットの第二の溶媒として広範に適用可能である。
さて、請求の範囲を補足説明する。請求項1に記載の化学プロセスとは、分子内および分子間反応、電子移動、物質の移動速度の差に基づく分離、分配係数の差に基づく抽出分離、溶媒分画をいう。
また、化学プロセスには、ペプチド合成プロセスも含まれる。
特に、本案の溶媒セットは、電気化学プロセスなどの電気エネルギーを付与する化学プロセスにも適用可能である。つまり、本案の溶媒システムにおいて、電解質(すなわち塩)を高極性の第二の溶媒に溶解すると、電解が可能になるので、電気化学的反応に応用できるのはひとつの特徴である。
さらに、前述のように電気化学的反応に限らず、広範な化学反応に利用できるのは明らかである。その具体例をあげるとすれば、ディールスアルダー反応がある(特許文献1、段落番号0026〜0027参照)。
こういった広範な化学反応に利用できる構成は、「電解溶液として適する溶媒」を第二の溶媒として一方にもつ溶媒システムとすればよい。
これを極性あるいは誘電率で表現すると、第二の溶媒の誘電率が20以上、または第二の溶媒の極性(ET(30))が25以上であればよい。このことは、逆に第一の溶媒の誘電率が0から15、または第一の溶媒の極性(ET(30))が20未満であればよい。
化学プロセスの実施例を下記に示す。この実施例の溶媒セットの一方の誘電率が20以上、または極性(ET(30))が25以上であって、溶媒セットの他方の誘電率が0から15、または第一の溶媒の極性(ET(30))が20未満である。
実施例1
<電解質および被酸化性有機化合物を含む溶媒システムを用いた選択的酸化反応>
20℃、一気圧で、シクロヘキサンとDMIの混合溶液を調製した。このとき、有機溶媒系は2相に分離した。この混合溶液に支持電解質として過塩素酸リチウム200ミリグラムおよび電解基質としてヘキサデカンチオール10ミリグラムを添加した。
この溶液の下層(DMIを主成分とし、主として過塩素酸リチウムが溶解している相)にグラッシ―カーボン電極(作用極)、白金陰極、銀・塩化銀標準電極を挿入し、−0.2〜2.0ボルトまで往復(サイクリックボルタンメトリー)、100ミリボルト毎秒で電位を変化させ、それに対応する電流量を測定した。
この温度では溶媒システムは分離溶媒系の状態であるので、その結果、ヘキサデカンチオールの酸化は殆どおこらず、チオール基の酸化を示す顕著なピークは観測されなかった。
つぎに、この溶液を30℃に加熱したところ、全体が均一な溶液になった(均一相溶混合溶液系)。
この状態で同様に電位―電流曲線を測定したところ、極めて顕著にチオール基の酸化を示す信号が観測された。さらに再び20℃に冷却して電位―電流曲線を測定した場合には、この酸化波は観測されなくなった。
これらのことから、20℃で溶液系が相分離(分離溶媒系)した状態では、支持電解質の大部分が下層(DMI相)に溶解し、電解基質の大部分が上層(シクロヘキサン相)に溶解しているため、電極表面における電子移動は起こらない。しかし、均一相溶混合溶液系とした後は、支持電解質と電解基質が均一溶液中に溶解するので、容易に電極への放電が起こることによる。このように、わずかな温度変化を制御することによって、電解質や溶質の溶媒系における分布状態を変化させ、化学反応の進行や選択性を制御することができる。
実施例2
<オクタデシル2,5−ジヒドロキシベンゾエートと2,3−ジメチルブタジエンの電解ディールスアルダー反応>
オクタデシル2,5−ジヒドロキシベンゾエート12ミリグラム、2,3−ジメチルブタジエン30ミリグラムをシクロヘキサン5ミリリットルに溶解し、さらにDMIを5ミリリットル、酢酸50ミリグラムを添加する。20℃一気圧ではこの溶液は二相に分離した。これを30℃(一気圧)まで加熱すると均一な溶液となった。この状態で、陽極にグラッシーカーボン板陰極に白金板を用い、端子電圧2.0ボルト、電流0.3ミリアンペアでベンゾエート一分子あたり2.2電子に相当する電気量を与えた。その後、反応液を25℃まで冷却、相分離させた後、生成物をシクロヘキサン相から回収した。収率48%。
実施例3
<環状ウレア化合物を第二の溶媒としたペプチド結合形成反応>
シクロヘキサン100ミリリットルに2−アミノ−3−メチル−ブチリックアシッド3,4,5−トリス−オクタデシロキシ−ベンジルエステル1ミリモルを溶解した。ここにFmoc−Gly−OBt3ミリモル、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCD)5ミリモルを含むDMI溶液50ミリリットルを添加し90分間攪拌した。次に本反応システムを攪拌しながら0℃まで冷却した。冷却後、DMI溶液を除去し、シクロヘキサン相をDMI200ミリリットルで3回洗浄した。シクロヘキサン溶液から、2−[2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−アセチルアミノ]−3−メチル−ブチリックアシッド3,4,5−トリス−オクタデシルオキシ−ベンジルエステルを収率97%で得た。1H−NMR(400MHz)d:7.77(2H,d,J=7.3Hz),7.59(2H,d,J=7.3Hz),7.40(2H,t,J=7.3Hz),7.31(2H,dt,J=0.7,7.3Hz),6.52(2H,s),6.38(1H,d,J=8.4Hz),5.44−5.37(1H,br),5.10(1H,d,J=12.1Hz),5.02(1H,d,J=12.1Hz),4.62(2H,dd,J=8.4,4.8Hz),4.42(2H,d,J=7.0Hz),4.24(1H,t,J=7.0Hz),3.96−3.92(8H,m),2.21−2.16(1H,m),1.81−1.76(4H,m),1.75−1.70(2H,m),1.48−1.43(6H,m),1.37−1.21(84H,br),0.91(3H,d,J=7.0Hz),0.88(9H,t,J=7.0Hz),0.86(3H,d,J=7.0Hz);13C−NMR(150MHz)d:171.5,168.7,156.5,153.1,143.6,141.2,138.3,130.0,127.7,127.0,125.0,120.0,107.0,73.4,69.2,67.5,67.4,57.1,47.1,32.0,31.4,30.4,29.8,29.7,29.5,29.4,26.1,22.8,19.0,17.7,14.2;MALDITOF−MS(pos)calcdforC83H138N2O8[M+Na]+1314,found1314.
実施例4
<環状アミド化合物を第二の溶媒としたペプチド結合形成反応>
メチルシクロヘキサン100ミリリットルに2−アミノ−3−メチル−ブチリックアシッド3,4,5−トリス−オクタデシロキシ−ベンジルエステル1ミリモルを溶解した。ここにFmoc−Gly−OBt3ミリモル、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCD)5ミリモルを含むN−メチル−2−ピロリドン(NMP、1−メチル−ピロリジン−2−オン)溶液50ミリリットルを添加し20℃で90分間攪拌した。次に本反応システムを攪拌しながら−10℃まで冷却した。このとき一部の溶質成分が析出した。次に、溶液を漸次10℃まで加温し、析出成分を溶解した。このとき溶液は二相に分離していた。下層のNMP溶液を除去し、メチルシクロヘキサン相をNMP200ミリリットルで3回洗浄した。メチルシクロヘキサン溶液から、2−[2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−アセチルアミノ]−3−メチル−ブチリックアシッド3,4,5−トリス−オクタデシルオキシ−ベンジルエステルを収率94%で得た。
産業上の利用性
本案の溶媒セットは、分子内および分子間反応、分子内および分子間相互作用、電子移動、物質の移動速度の差に基づく分離、分配係数の差に基づく抽出分離、溶媒分画を含む広範な化学プロセスへの利用を可能ならしめた。
特に、従来は複数の溶媒の混合溶媒を用いることで、溶媒システムの相溶化温度を下げていたが、これを単独の溶媒で実現することが可能となった。このことによりプロセスで複数の溶媒の混合組成をコントロールするハードとソフトが不要になるので、工業的にきわめて有効である。
また特に、電気化学プロセスなどの電気エネルギーを付与する化学プロセスに適する溶媒の組み合わせを提供し、かかる化学プロセス効率を飛躍的に向上させる効果がある。
Claims (2)
- 温度により相溶状態と分離状態とが可逆的に変化する、第一の溶媒と第二の溶媒の組み合わせを用いた化学プロセス方法であって、
第一の溶媒が、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサン、n−オクタン、n−テトラデカンおよびデカリンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含み、
第二の溶媒が、ジメチルイミダゾリジノン(DMI)および/またはN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を含み、
前記化学プロセス方法が、分子内および分子間反応、電子移動、物質の移動速度の差に基づく分離、分配係数の差に基づく抽出分離および溶媒分画からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、化学プロセス方法。 - 前記化学プロセス方法が、ペプチド合成プロセス方法である、請求項1に記載の化学プロセス方法。
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