JP4719836B2 - X線回折法によるNi基超合金の劣化診断法および余寿命評価法 - Google Patents

X線回折法によるNi基超合金の劣化診断法および余寿命評価法 Download PDF

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Description

本発明は、ガスタービン動静翼などに適用されるニッケル(Ni)基超合金のクリープ損傷による劣化の診断と、余寿命の評価法に関する。
最も高温まで高いクリープ破断強度を有してジェットエンジンやガスタービンの動静翼などに使用されるNi基超合金も、高温高応力環境に曝されてクリープ損傷を受け、クリープ損傷の蓄積により破壊に至る。機器設計や保全などの必要から、クリープ損傷程度の診断および損傷の程度から余寿命を推定する要求が強く、各所で各種の損傷診断法や余寿命推定法が開発されている。
ニッケル基超合金は、面心立方格子型結晶構造を持つニッケル固溶体母相(γ相)内に、立方体状のニッケル基金属間化合物(γ’相)が3次元的に整然と配列した組織形態を有している。
ニッケル基超合金が高温下で長時間応力負荷される実機運転環境下で使用される間に、隣接するγ’相同士の融合による粗大化、扁平化が生じる。
そこで、γ’相を電子顕微鏡で観察して蓄積されたクリープダメージを評価し、余寿命を推定する組織観察法が一般化している。
しかし、組織観察法では、クリープ損傷の評価が観察者の感覚に左右され定量性が無い上、電子顕微鏡で観察できる領域が非常に狭いため全体の状態を把握できない。また、γ’相の縦横比などに現れる形状変化は、クリープダメージの小さい、寿命の0.1〜0.3程度の領域で飽和し、それ以上の大きなダメージを受けた領域では変化が小さく観察できない。さらに、電子顕微鏡で観察するにはサンプルを切り出す必要があるので、対象部材をそのまま再利用できない破壊検査となる。
また、特許文献1にあるように、クリープ損傷が進行するに伴い磁気特性が変化することに着目してSQUID(超伝導磁束量子干渉計)を利用した劣化診断・余命推定装置が開発されている。
特許文献1に開示された方法は、測定対象を完全に消磁した後、励磁コイルとSQUID帯磁率計を用いて計測した結果をプロットした磁化曲線より、初期磁化率や残留磁化などの各種磁気特性を算出し、これらの特性からクリープ損傷程度を推定するものである。
開示方法は、原理的には部品を非破壊で評価することが可能である。しかし、実際の部品は全体が均等に劣化するのではなく、極く限られた領域でクリープ損傷が顕著に生じそこから破壊に進展するものである。したがって、測定対象全体を励磁した場合には、局部に重大な劣化があっても、劣化が問題にならない大部分の磁気特性変化の中に埋没して、検出することが困難である。
なお、本文献には、劣化が予測される部分を局所的に励磁し、磁化曲線を作成する方法が提案されているが、SQUID帯磁率計により得られる磁化曲線は、磁気コイルと測定対象部位の位置関係により敏感に変化するので、複雑な形状を有する実際の部品に適用するためには解決すべき技術課題が残っている。
また、特許文献2には、X線回折ピークを利用して疲労損傷や余寿命を評価する非破壊評価方法が開示されている。
繰返し応力のために場所によって転位密度の差が生じるので格子定数も異なるようになることから、初めのうちは近接したX線回折ピークが重なって1つのピークになっていても、繰返し応力を受けているうちにピーク強度のアンバランスが大きくなってピークの非対称性が大きくなる。
文献2に開示された評価方法は、X線回折ピークプロファイルの左右非対称性が繰返し応力の繰り返し数に従って推移することに注目し、事前に実験により取得した両者の関係に照らし合わせて金属製部材の損傷度または余寿命を評価するものである。
しかし、この方法は、応力条件によって非対称度の推移の仕方が異なり、非対称度が同一でも応力レベルが異なると疲労損傷度や余寿命が異なるので、応力レベルが既知である必要がある。また、この方法の利用性は材料の結晶性質、温度、応力条件などにより変化し、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄鋼、銅、銅合金など各種金属製部材に適用できることが分かっているが、本発明の主たる対象であるニッケル基超合金に適用できるかは不明である。
特開2001−141700号公報 特開平11−344454号公報
そこで、本発明が解決しようとする課題は、余寿命が少なくなってクリープ損傷が大きい領域でも状態を把握することが可能で、観察領域が大きく全体の損傷傾向が正確に把握できる、非破壊検査が可能な、クリープ損傷診断あるいは余寿命推定方法および装置を提供することである。
特に、ニッケル基超合金を対象とする劣化診断あるいは余寿命推定方法および装置を提供することである。
上記課題を解決するため、ニッケル固溶体母相(γ相)内にニッケル基金属間化合物析出相(γ’相)が整合的に散在してなるニッケル基超合金に使用する、本発明に係る劣化診断方法は、ニッケル基超合金の試料に単色X線を照射して離散的な回折スポットを生成し、これら回折スポットのうち予め決めた回折スポットを選択し、選択された回折スポットについて回折ピークの形状を測定し、回折ピークの分散にかかる係数がニッケル基超合金の劣化と対応する事実に基づいて、試料であるニッケル基超合金の劣化状態を診断することを特徴とする。
上記の予め決めた回折スポットは、ニッケル基金属間化合物(γ’相)の規則格子回折に起因する回折スポットであることが望ましく、ミラー指数(210)または(310)で表わされる結晶面に起因する回折光が回折光強度の点で有利である。
回折ピークは、所定の回折スポットにX線センサを置いた入射X線発生器とX線センサの組合わせに対して、試料を載せた試料台を相対的に揺動させて測定することにより得ることができる。
回折ピークの分散係数は、回折ピーク半価幅で代表することができる。また、劣化状態はクリープ寿命消費率に基づいて得ることができる。さらに、被検体であるニッケル基超合金の余寿命は、ニッケル基超合金の劣化診断方法により得られた劣化診断結果に基づいて算定することができる。
単色X線は放射光であってもよい。
また、上記課題を解決するため、本発明のニッケル基超合金の劣化診断装置は、試料を把持して回動させる試料台と、単色X線をその試料台に照射する単色X線照射装置と、発生する離散的な回折スポットのX線強度を測定するX線センサと、X線照射装置と試料台とX線センサの配置を調整するセンサ位置調整装置と、X線センサの出力を入力して回折ピークの形状を特定する測定データ処理装置と、回折ピーク形状とクリープ寿命消費率の関数を格納する記憶装置と、特定された回折ピーク形状に基づき記憶装置に格納した関数を用いてクリープ寿命消費率を算出し、あるいはクリープ寿命消費率に基づいてニッケル基超合金の余寿命を推定して提示する演算装置とから構成される装置である。
本発明のニッケル基超合金の劣化診断装置は、センサ位置調整装置によりX線センサが測定対象とする回折スポットに照準を合わせた後は、試料台をX線照射装置とX線センサに対して相対的に回動させることにより対象の回折ピークの形状を測定することを特徴とする。
なお、本発明のニッケル基超合金の劣化診断装置において、測定する回折スポットがニッケル基金属間化合物(γ’相)結晶に起因する回折スポットであり、回折ピークの形状は回折ピーク半価幅により代表され、ニッケル基超合金の劣化状態はクリープ寿命消費率に基づいて得られるものであることが好ましい。
また、単色X線発生装置は放射光発生装置であっても良い。
クリープダメージの蓄積は直接的には結晶の変化、すなわち格子定数の変化や結晶の乱れ具合の変化に反映されるため、結晶の変化からクリープダメージを推定する方法は、γ’相の形態変化を観察する方法より材料学的に根元的な変化を把握することになる。
本発明のニッケル基超合金の劣化診断・余寿命推定方法および装置は、X線回折法により得られる回折ピークが結晶の格子定数や結晶の乱れの情報を含むことに基づくもので、結晶の乱れを特に反映する回折ピークを選択して、その回折ピークの弛み具合からクリープダメージの蓄積を推定する。
回折ピークの弛み具合をピークの半価幅で定量化すると、半価幅がクリープ寿命消費率とよく対応し、特に寿命末期の領域でも半価幅が飽和することなく対応してクリープ損傷度を評価することができる。
このとき、ニッケル合金結晶に起因する回折ピークを選択すると、寿命末期領域における線形性がよく、評価が容易である。特に、ミラー指数(210)または(310)で表わされる結晶面に起因する回折スポットにおける特性が寿命消費率の測定に適している。
θロッキングカーブ法で測定した回折ピーク半価幅は、結晶内のポリゴニゼーションすなわち結晶の乱れを反映していて、原理的には結晶が乱れるにつれて大きくなる。回折ピーク半価幅は同じ超合金でも結晶面毎に異なるが、寿命消費率が大きい領域で回折ピーク半価幅が徐々に増加するような結晶面が存在するので、この結晶面について回折ピークを取得すれば回折ピーク半価幅に基づいて寿命消費率を的確に推定することが可能である。
ここで用いられるθロッキングカーブ法は、入射するX線と回折光を検出するセンサの角度関係を固定し、X線の照射位置を通りかつ入射X線と検出センサがなす面に垂直な軸を中心として測定対象物を揺動させることにより、測定対象物への入射X線の入射角を変化させて、得られた回折X線強度を測定対象物の揺動角度に対してプロットする方法である。
本発明のニッケル基超合金の劣化診断・余寿命推定方法および装置は、非破壊分析により、クリープ損傷後半まで変化を捉えることができ、また、電子顕微鏡観察法を用いる場合より観察領域が広く、試料の状態をより正確に把握することができる。
以下、本発明について実施例に基づき図面を参照して詳細に説明する。
図1はニッケル基超合金の初期組織図、図2はニッケル基超合金の初期状態の写真、図3はニッケル基超合金のクリープ後の写真、図4は本実施例のニッケル基超合金の劣化診断装置の構成を示すブロック図、図5は本実施例のニッケル基超合金の劣化診断方法の手順例を示すフロー図、図6はニッケル金属相における回折ピークを表わすグラフ、図7はニッケル金属相における別の回折ピークを表わすグラフ、図8はニッケル合金相の結晶面に係る回折ピークの変化を示すグラフ、図9はθロッキングカーブ法により得られた回折ピークを表わすグラフ、図10はθロッキングカーブ法により得た寿命消費率と回折ピーク半価幅の関係を示すグラフである。
ニッケル基超合金は、図1に概念図として示すように、面心立方格子型の結晶構造を持つニッケル母相(γ相)内に、立方体状のニッケル基金属間化合物析出相部(γ’相)が3次元的に整然と配列した組織形態を有している。
ニッケル基超合金は、初めは図2に示すような立方体状のニッケル基金属間化合物析出相部(γ’相)が3次元的に整然と配列した構造を有するが、ガスタービンの実機運転環境下で使用される間に、隣接するγ’相同士の融合による粗大化、扁平化が生じる。
このように、クリープダメージの蓄積は直接的には結晶の変化に反映され、X線回折法により得られる回折ピークは、結晶の格子定数、転位や面欠陥など結晶の乱れの情報を含んでいる。
θロッキングカーブ法により得られる回折ピークの広がりは、結晶の湾曲やポリゴニゼーション、すなわち結晶に与えられるダメージを反映していると考えられ、原理的にはクリープダメージが蓄積して結晶が乱れるにつれて大きくなる。
本実施例のニッケル基超合金の劣化診断方法は、Ni基超合金の試料にX線を照射して得られた回折ピークを観察することによって、蓄積されたクリープダメージを評価し、余寿命を推定しようとするものである。
本実施例の方法では、解析を容易にするため、析出強化型Ni基超耐熱合金のX線回折ピークのうち、析出相(γ’相)から回折されて形成する回折ピークに着目する。
図4は本実施例のニッケル基超合金の劣化診断装置の構成を示すブロック図である。
本実施例のニッケル基超合金劣化診断装置は、X線照射装置1、試料台2、X線検出装置3、センサ位置調整装置4、測定データ処理装置5、関数記憶装置6、評価演算装置7、プリンタ8により構成される。
X線照射装置1は、単色X線を発生し試料に向けて放出する。X線照射装置1は、放射光による高強度、狭帯域のX線を供給するものであることが好ましい。特性X線を利用したり、フィルタで単色化したものを利用することもできる。
試料台2は、測定対象物9をX線照射位置に位置調整して固定すると共に、X線入射軸に対して適当な角度内で揺動させる機能を有する。揺動運動はセンサ位置調整装置4により制御される。
X線照射装置1から放出される入射X線は測定対象物9で回折して後方空間中に複数の回折スポットを生じる。回折スポットの発生位置は、測定対象物9に存在する結晶面に対応して決まっている。
X線検出装置3は、入射するX線の強度に対応する電気信号を発生する装置で、X線入射軸が常に測定対象物9の方向を向くようにしながら3次元空間中で位置変更することができる。
センサ位置調整装置4は、X線検出装置3の入射軸をX線照射装置1のX線照射軸に対して角度調整すると共に、試料台2の傾きを調整することができる。なお、単色X線に放射光を利用してX線照射装置1を容易に動かせない場合などには、X線照射装置1を固定して試料台2とX線検出装置3の位置姿勢を調整するようにしてもよい。
測定データ処理装置5は、センサ位置調整装置4から試料台2とX線検出装置3の位置情報を入力し、X線検出装置3の測定出力を入力して、データ処理し、回折スポットにおける回折ピークの状態を解明する。
関数記憶装置6は、回折ピークとクリープ寿命消費率の関係を表わす関数を記録していて、評価演算装置7の要求に応じて適宜必要な関数を供給する。
評価演算装置7は、回折ピークを解析して回折ピークの裾の広がり具合を把握し、関数記憶装置6から供給される関数を利用して測定対象物9のクリープ寿命消費率を求め、さらに測定対象物9の余寿命を求める。
プリンタ8は、評価演算装置7の評価結果を出力する。なお、プリンタ8の代りにあるいはこれに加えて液晶表示装置などの表示装置に評価結果を表示しても良い。
図5は本実施例のニッケル基超合金の劣化診断方法の手順を表わすフロー図である。
測定対象物9であるニッケル基超合金を試料台2にセットし(S01)、単色X線を照射して回折スポットを生成する(S02)。
ニッケル基超合金は結晶粒径が1mm以上と大きく、一方、高精度測定のためX線照射面積を小さく、たとえばX線ビームサイズを0.4mm平方程度にしたいので、1個の結晶に単色X線を照射することになり、通常の粉末法で得られるような入射X線の軸を中心とした同心円(デバイシェラーリング)となる代りに、回折スポットがデバイシェラーリングとなるべき同心円上に離散的に生成する。なお、回折スポットの位置は、サンプルのセット毎に変化し予め決めることができない。
回折スポットは結晶面について固有な回折角2θを持っているので、この回折角を知っているときには、たとえば、X線検出装置3の入射軸とX線照射装置1の照射軸が測定対象物9の上で回折角2θの角度を持って交差するように固定し、X線照射装置1に対して固定したX線検出装置3をX線照射軸の回りに回転させながらセンサ出力をモニタして出力極大値を見つけることにより、ある結晶面に係る回折スポットを検出することができる。
なお、高輝度な放射光を利用するときには、イメージングプレートを使って回折スポットの位置を比較的簡単に確認することができる。
回折スポットにおける回折ピークの裾の広がりは、結晶に導入される欠陥の量を反映する。各回折ピークは、それぞれのクリープダメージの蓄積により広がりを呈するが、特にニッケル基金属間化合物(γ’相)の規則格子回折に起因する回折ピークの変化によく対応する。
また、回折ピークの回折角度が接近している場合には、互いの回折ピークが重なって観察されるため、それぞれの回折ピークに分割することが難しく、分離処理に観察者の恣意が含まれる可能性があるため、それぞれのピーク形状から劣化の度合いを評価する本手法では正確な評価の保証ができない。
たとえば、ニッケル基超合金の一種である耐熱性能の高いMarM247のミラー指数(200)や(220)の結晶面に係る回折ピークは、それぞれ図6と図7に示したように、ニッケル固溶体相のγ相とニッケル基金属間化合物析出相のγ’相が近接して重畳しているので、回折ピークを正確に分割してそれぞれのテーリング状態を客観的に正しく評価することは極めて難しい。
図6は、MarM247のニッケル固溶体(γ相)とニッケル基金属間化合物析出相(γ’相)のピークが近接して出現するミラー指数(200)面回折ピークを例示するグラフ、また、図7は同様にピークが近接するミラー指数(220)面回折ピーク例を示したグラフである。
このため、クリープダメージの蓄積を正しく推量するためには、γ’相に係わる回折ピークであって他の回折ピークと十分に離れたピークを選択することが好ましい。
図8は、MarM247のミラー指数(210)の結晶面に係る回折角45°付近にあるγ’相の回折ピークの変化を示すグラフである。(210)回折ではニッケル基金属間化合物析出相(γ’相)のピークのみが現れることが分かる。図8(a)はクリープテストを行う前の状態、図8(b)はある条件下でクリープテストを行っている最中の状態、図8(c)はある条件下で破損に至ったときの回折ピークの状態を表わす。
クリープダメージが蓄積する前は回折ピークのテーリングは小さいが、破損するほどクリープダメージが蓄積した図8(c)の回折ピークではピークの裾が広く開いていることが分かる。
このように、γ’相結晶の乱れに対応する回折ピークの弛みは、回折角度の変化方向に観測することによって観察することができる。
しかし、X線照射軸に対し試料の姿勢を変化させて出力変化を検出するθロッキングカーブ法により得られた回折ピークについて観測することによっても評価することができる。
θロッキングカーブ法とは、被検体を照射する入射X線の方向に対する、回折X線が入射するX線検出器の向きすなわち回折角度2θを固定した後に、被検体をX線入射位置を軸として揺動させて、回折ピークにおける広がりを測定する方法である。X線発生器のX線軸とX線検出器の入射方向との交差角を回折角度2θに固定したものを、被検体に対するX線入射位置を回動軸として揺動させても同じ結果を得ることができる。
図9は、ミラー指数(310)の結晶面についてθロッキングカーブ法により得られた回折ピークを表わすグラフである。横軸はX線軸に対する試料台2の傾き角、縦軸は回折スポットにおけるX線強度を表わす。
回折角度の変化に基づく回折ピークは、回折格子の面間距離の乱れに関係するものが重畳されているのに対して、姿勢変化に基づく回折ピークは、特定の格子面間隔を持つ結晶にのみ注目したもので、半価幅の増大は結晶面の傾きがばらついていることの反映であるから、ニッケル基超合金の融合化状態を評価するためにはより適切と考えられる。
なお、回折ピークの広がりを簡単に計数化する1つの方法に、半価幅(FWHM)がある。半価幅とは、ピークの高さの半分の位置におけるピークの幅を意味する。回折ピーク半価幅が大きいほどピークの広がりは大きく、結晶の乱れが大きい。
図10は、Ni基超耐熱合金であるMarM247の一方向凝固材について実測した寿命消費率と回折ピーク半価幅の関係を示すグラフである。横軸は評価した試料の寿命消費率t/trを示し、縦軸はθロッキングカーブ法で得た結晶面の回折ピーク半価幅(FWHM)を示す。tは評価試料のクリープ試験時間、trは評価材料のクリープ寿命データから求めた破断寿命を表わす。
図10から分かるように、回折ピーク半価幅は結晶面毎に異なるが、寿命消費率が大きい領域で徐々に増加するものが存在し、これらの特性を用いれば回折ピーク半価幅に基づいて寿命消費率を推定することが可能であることが分かる。
これらの回折ピークから、隣の回折ピークから十分離れているなどの条件も加えると、γ’相に係わるミラー指数(210)および(310)で表わされる面にかかる回折ピークが最も適切と考えられる。(210)および(310)の回折ピークは、クリープ寿命消費率が0.2程度から1.0までの間、その半価幅が単調に増加しているので、クリープダメージの蓄積度合いを評価するために有効である。
そこで、本実施例のニッケル基超合金の劣化診断方法では、(210)など予め決めた回折スポットを選択してX線検出装置3をセットする(S03)。
次に、X線検出装置3の出力を監視しながら、θロッキングカーブ法により試料9を単色X線に対して相対的に回動させて、X線センサの出力を収集し、測定データ処理装置5で回折ピークの形状を測定する(S04)。
評価演算装置7は、得られた回折ピークの形状からピークの分散係数を求める(S05)。分散係数として、半価幅を用いるのが便利である。
また、予め求められ関数記憶装置6に格納されている半価幅とクリープ寿命消費率の関係を表わす関数あるいは表を適用して、先に求めた回折ピークの分散係数(半価幅)から対象材料のクリープ寿命消費率を算出する(S06)。
さらに、算出されたクリープ寿命消費率と経時時間から材料としての余寿命を推定計算して(S07)、これらの結果をプリントアウトする(S08)。
本発明の劣化診断方法および装置により、従来困難だったジェットエンジンなどの高温長時間の応力負荷状態で使用したニッケル基超合金の寿命消費率および余寿命を非破壊的手段により評価することが可能になった。
ニッケル基超合金の初期組織図である。 ニッケル基超合金の初期状態の写真である。 ニッケル基超合金のクリープ後の写真である。 本発明の1実施例に係るニッケル基超合金の劣化診断装置の構成を示すブロック図である。 本実施例のニッケル基超合金の劣化診断方法の手順例を示すフロー図である。 ニッケル基超合金における(200)面回折ピークの例を表わすグラフである。 ニッケル基超合金における(220)面回折ピークの例を表わすグラフである。 本実施例におけるニッケル基超合金の(210)面回折ピーク例を示すグラフである。 本実施例におけるニッケル基超合金のθロッキングカーブ法により得られた回折ピークを表わすグラフである。 θロッキングカーブ法により得た寿命消費率と回折ピーク半価幅の関係を示すグラフである。
符号の説明
1 X線照射装置
2 試料台
3 X線検出装置
4 センサ位置調整装置
5 測定データ処理装置
6 関数記憶装置
7 評価演算装置
8 プリンタ
9 測定対象物、試料

Claims (9)

  1. ニッケル固溶体母相(γ相)内にニッケル基金属間化合物析出相(γ’相)が整合的に散在してなるニッケル基超合金の試料に単色X線を照射して離散的な回折スポットを生成し、該回折スポットのうちミラー指数(210)または(310)で表わされる結晶面に起因する回折スポットを選択し、該選択された回折スポットについて前記試料を前記単色X線の入射位置を中心とし該単色X線に対して相対的に回動させて回折ピークの形状を測定し、該回折ピークの分散にかかる係数を算出し、該係数がニッケル基超合金の劣化と対応する事実に基づいて前記ニッケル基超合金の劣化状態を診断するニッケル基超合金の劣化診断方法。
  2. 前記回折スポットのピーク形状は、入射するX線と回折光を検出するセンサの角度関係を固定し、該X線の照射位置を通りかつ該入射X線と前記検出センサがなす面に垂直な軸を中心として測定対象物を揺動させることにより、該測定対象物への入射X線の入射角を変化させて、得られた回折X線強度を前記測定対象物の揺動角度に対してプロットするθロッキングカーブ法により測定することを特徴とする請求項1記載のニッケル基超合金の劣化診断方法。
  3. 前記回折ピークの分散係数は、回折ピーク半価幅であることを特徴とする請求項1または2に記載のニッケル基超合金の劣化診断方法。
  4. 前記劣化状態は、クリープ寿命消費率に基づいて得られるものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のニッケル基超合金の劣化診断方法。
  5. 前記単色X線は放射光であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のニッケル基超合金の劣化診断方法。
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載のニッケル基超合金の劣化診断方法により得られた劣化診断結果に基づいて該ニッケル基超合金の余寿命を推定するニッケル基超合金の余寿命推定方法。
  7. 試料を把持して回動させる試料台と、単色X線を前記試料台に照射する単色X線照射装置と、発生する離散的な回折スポットのX線強度を測定するX線センサと、前記X線照射装置と前記試料台と前記X線センサの配置を調整するセンサ位置調整装置と、前記X線センサの出力を入力して回折ピークの形状を特定する測定データ処理装置と、回折ピーク形状とクリープ寿命消費率の関数を格納する記憶装置と、前記特定された回折ピーク形状に基づき前記関数を用いてクリープ寿命消費率を算出してあるいは該クリープ寿命消費率に基づいて該ニッケル基超合金の余寿命を推定して提示する演算装置とから構成され、前記X線センサがミラー指数(210)または(310)で表わされる結晶面に起因する測定対象とする回折スポットに照準を合わせた後は前記試料台を前記X線照射装置に対して相対的に回動させることにより対象の回折ピークの形状を測定する、ニッケル基超合金の劣化診断装置。
  8. 記回折ピークの形状は回折ピーク半価幅により代表され、前記劣化状態はクリープ寿命消費率に基づいて得られるものであることを特徴とする請求項7記載のニッケル基超合金の劣化診断装置。
  9. 前記単色X線照射装置は放射光発生装置であることを特徴とする請求項7または8記載のニッケル基超合金の劣化診断装置。
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