JP2009156584A - 破壊寿命評価装置及び破壊寿命評価方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】評価対象物の破壊寿命を評価するに当たって、現場の作業者の負担を軽減すると共に寿命評価時間の短縮を図る。
【解決手段】評価対象物の表面に設定された検査領域に対してX線を照射するX線照射手段と、前記X線が前記検査領域に照射されることによって生じる回折X線の回折パターンの回折強度分布を2次元検出する2次元X線検出手段と、前記回折パターンの回折強度分布に基づいて前記評価対象物の破壊寿命を判定する破壊寿命判定手段と、前記破壊寿命判定手段による破壊寿命の判定結果を出力する出力手段と、を具備する。
【選択図】図1
【解決手段】評価対象物の表面に設定された検査領域に対してX線を照射するX線照射手段と、前記X線が前記検査領域に照射されることによって生じる回折X線の回折パターンの回折強度分布を2次元検出する2次元X線検出手段と、前記回折パターンの回折強度分布に基づいて前記評価対象物の破壊寿命を判定する破壊寿命判定手段と、前記破壊寿命判定手段による破壊寿命の判定結果を出力する出力手段と、を具備する。
【選択図】図1
Description
本発明は、破壊寿命評価装置及び破壊寿命評価方法に関する。
ボイラー管やガスタービンエンジンの動翼等、高温・高応力に曝される金属部品には、経年劣化による疲労破壊やクリープ破壊等が生じる恐れがある。従って、このような金属部品の破壊寿命を正確且つ定量的に予測することは、当該金属部品の検査や交換等の時期を計画する上で非常に重要である。
従来では、クリープ破壊寿命を定量的に評価する方法として、所定の使用時間の経過毎に、金属部品の表面組織のレプリカを採取し、当該表面組織の時間的変化を検査することで余寿命を予測する方法や、ラーソン・ミラー曲線に基づいてクリープ破壊寿命を予測し、上記金属部品の使用時間が予測されたクリープ破壊寿命に到達すると、金属部品の検査対象領域において発生した空孔(ボイド)の面積率の検査を行い、事前に実験より求めたボイド面積率と寿命消費率との関係を示す特性曲線に基づいて余寿命を予測する方法等が知られている。
しかしながら、例えば、改良9Cr−1Mo鋼等の高Cr系耐熱鋼からなるボイラー管の場合、上記のようなクリープによる表面組織の変化が非常に微細であるため、レプリカを採取して表面組織の時間的変化を検査することができず、また、ボイドが表面には発生しないという問題があった。
このような問題に対して、例えば、下記特許文献1には、評価対象物である金属部品における検査対象領域から試料を採取し、この試料表面の結晶粒界分布をEBSP(Electron Back Scatter Diffraction Pattern)法を用いて測定し、画像処理によって結晶粒界分布から平均結晶粒径を算出し、事前に求めておいた平均結晶粒径と評価対象物の破壊寿命との関係を示す特性曲線と、上記のように算出した平均結晶粒径とに基づいて評価対象物の破壊寿命を判定する技術が開示されている。
特開2007−248390号公報
上述した特許文献1の技術ではEBSP法を用いるため、評価対象物から採取した試料を真空チャンバ内にセットし、真空状態下で電子ビームを試料に照射する必要がある。つまり、評価対象物の寿命評価時期が到来する度に、評価対象物から試料を採取し、真空チャンバが設けられた寿命評価装置に試料を運び、試料をセットして真空引きを行うという一連の作業を行わなければならず、現場の作業者にとって大きな負担になると共に、寿命評価の判定結果を得るまでの時間が長くなるという問題があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、評価対象物の破壊寿命を評価するに当たって、現場の作業者の負担を軽減すると共に寿命評価時間の短縮を図ることを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明では、破壊寿命評価装置に係る第1の解決手段とし
て、評価対象物の表面に設定された検査領域に対してX線を照射するX線照射手段と、前記X線が前記検査領域に照射されることによって生じる回折X線の回折パターンの回折強度分布を2次元検出する2次元X線検出手段と、前記回折パターンの回折強度分布に基づいて前記評価対象物の破壊寿命を判定する破壊寿命判定手段と、前記破壊寿命判定手段による破壊寿命の判定結果を出力する出力手段と、を具備することを特徴とする。
て、評価対象物の表面に設定された検査領域に対してX線を照射するX線照射手段と、前記X線が前記検査領域に照射されることによって生じる回折X線の回折パターンの回折強度分布を2次元検出する2次元X線検出手段と、前記回折パターンの回折強度分布に基づいて前記評価対象物の破壊寿命を判定する破壊寿命判定手段と、前記破壊寿命判定手段による破壊寿命の判定結果を出力する出力手段と、を具備することを特徴とする。
また、破壊寿命評価装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、
前記破壊寿命判定手段は、前記回折パターンに含まれるデバイシェラー環の回折強度分布において所定の閾値を越える回折強度を有するスポット数を計測し、予め設定された、前記スポット数または前記スポット数の関数と前記評価対象物の破壊寿命との関係を示す特性曲線と、前記計測したスポット数または当該スポット数の関数とに基づいて、前記評価対象物の破壊寿命を判定することを特徴とする。
前記破壊寿命判定手段は、前記回折パターンに含まれるデバイシェラー環の回折強度分布において所定の閾値を越える回折強度を有するスポット数を計測し、予め設定された、前記スポット数または前記スポット数の関数と前記評価対象物の破壊寿命との関係を示す特性曲線と、前記計測したスポット数または当該スポット数の関数とに基づいて、前記評価対象物の破壊寿命を判定することを特徴とする。
また、破壊寿命評価装置に係る第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、
前記破壊寿命判定手段は、前記回折パターンの回折強度分布に基づいて前記評価対象物の残留応力を計測し、前記スポット数の計測結果から得られた破壊寿命の判定結果と、前記残留応力の計測結果とに基づいて最終的な破壊寿命の判定を行うことを特徴とする。
前記破壊寿命判定手段は、前記回折パターンの回折強度分布に基づいて前記評価対象物の残留応力を計測し、前記スポット数の計測結果から得られた破壊寿命の判定結果と、前記残留応力の計測結果とに基づいて最終的な破壊寿命の判定を行うことを特徴とする。
また、破壊寿命評価装置に係る第4の解決手段として、上記第1〜第3のいずれかの解
決手段において、前記評価対象物が高Cr系材料の配管であると共に、前記検査領域が前記配管の母材と溶接継手部との溶接部分の溶接熱影響部において微細結晶粒からなる細粒域に設定された場合、前記X線のビーム径を50μm〜1mmの範囲内に設定することを特徴とする。
決手段において、前記評価対象物が高Cr系材料の配管であると共に、前記検査領域が前記配管の母材と溶接継手部との溶接部分の溶接熱影響部において微細結晶粒からなる細粒域に設定された場合、前記X線のビーム径を50μm〜1mmの範囲内に設定することを特徴とする。
さらに、本発明では、破壊寿命評価方法に係る解決手段として、評価対象物の表面に設定された検査領域に対してX線を照射するX線照射工程と、前記X線が前記検査領域に照射されることによって生じる回折X線の回折パターンの回折強度分布を2次元検出する回折X線検出工程と、前記回折パターンの回折強度分布に基づいて前記評価対象物の破壊寿命を判定する破壊寿命判定工程と、を有することを特徴とする。
本発明では、評価対象物の表面に設定された検査領域に対してX線を照射して生じる回折X線の回折パターンの回折強度分布に基づいて前記評価対象物の破壊寿命を判定するので、従来のEBSP法を用いる場合のように評価対象物から採取した試料を真空チャンバ内にセットし、真空状態下で電子ビームを試料に照射する必要がない。従って、本発明によると、評価対象物の破壊寿命を評価するに当たって、現場の作業者の負担を軽減すると共に寿命評価時間の短縮を図ることが可能である。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る破壊寿命評価装置の構成概略図である。なお、本実施形態では、評価対象物が高Cr系耐熱鋼(例えば、改良9Cr−1Mo鋼、2.25Cr−Mo鋼、9Cr鋼、Mod.9Cr鋼、12Cr鋼など)からなるボイラー管100である場合の、破壊寿命評価装置を例示して説明する。
また、以下の説明においては、図1中に示されたXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。このXYZ直交座標系において、X軸はボイラー管100の長軸方向に対して平行となるように設定され、Y軸はX軸に直交するように設定され、Z軸はXY平面に直交するように設定されている。
図1に示すように、本実施形態に係る破壊寿命評価装置は、装置固定用治具10、架台11、ワークステージ12、支持台13、チルト角調整部14、X線発生源15、モノクロメータ16、2次元X線検出器17、位置決め用観察器18、防爆用筐体19、制御装置20から構成されている。
装置固定用治具10は、架台11をX軸(つまりボイラー管100の長軸方向)に対して平行となるようにボイラー管100に固定するための治具である。架台11は、装置固定用治具10によってX軸に対して平行となるように支持された板状部材であり、後述するワークステージ12、支持台13、チルト角調整部14、X線発生源15、モノクロメータ16、2次元X線検出器17、位置決め用観察器18、防爆用筐体19の支持台としての役割を担う。なお、この架台11の中央部には、後述するX線を通過させるための開口部11aが設けられている。
ワークステージ12は、架台11上においてボールネジまたはリニアガイド等のステージ移動機構(図示せず)によってXYZ軸方向に移動可能に設置された板状部材であり、その中央部には、架台11と同様にX線を通過させるための開口部12aが設けられている。なお、このワークステージ12は、制御装置20(詳細にはCPU20b)からXYZ位置制御信号がステージ移動機構に出力されることにより、そのXYZ軸方向の位置が制御される。
支持台13は、チルト角調整部14及びX線発生源15をワークステージ12上に固定するための支持部材である。チルト角調整部14は、例えばサーボモータなどによりX線発生源15をY軸回りに回動させ、X軸に対するX線の傾き(チルト角φ)を調整するためのものである。なお、このチルト角調整部14は、制御装置20(詳細にはCPU20b)からチルト角制御信号が入力されることにより、そのチルト角φが制御される。
X線発生源15は、制御装置20(詳細にはCPU20b)から入力されるX線照射制御信号に応じて所定のパワー及び波長を有するX線を発生する。モノクロメータ16は、X線発生源15によって発生したX線の集光及び単色化を行い、所定のビーム径を有するX線(単色X線)をボイラー管100の検査領域30に向けて照射する。これらX線発生源15及びモノクロメータ16は、本発明におけるX線照射手段を構成するものである。
2次元X線検出器17は、ワークステージ12上に固定されており、ボイラー管100の検査領域30にX線が照射されることによって生じる回折X線の回折パターンの回折強度分布を2次元検出し、当該検出した回折パターンの回折強度分布を表す回折強度分布信号
を制御装置20(詳細にはCPU20b)に出力する。この2次元X線検出器17は、本発明における2次元X線検出手段に相当する。
2次元X線検出器17は、ワークステージ12上に固定されており、ボイラー管100の検査領域30にX線が照射されることによって生じる回折X線の回折パターンの回折強度分布を2次元検出し、当該検出した回折パターンの回折強度分布を表す回折強度分布信号
を制御装置20(詳細にはCPU20b)に出力する。この2次元X線検出器17は、本発明における2次元X線検出手段に相当する。
位置決め用観察器18は、ワークステージ12上のZ軸上方に設置されており、ボイラー管100表面の画像を撮像し、この画像を示す観察画像信号を制御装置20(詳細にはCPU20b)に出力する。防爆用筐体19は、ワークステージ12、支持台13、チルト角調整部14、X線発生源15、モノクロメータ16、2次元X線検出器17、位置決め用観察器18を覆うように設置されており、X線が外部に漏れるのを防止するために鉛含有壁材から構成されている。
制御装置20は、例えばPC(Personal Computer)であり、操作入力部20a、CPU(Central Processing Unit)20b、記憶部20c及び表示部20dから構成されている。操作入力部20aは、例えばキーボードやマウス等であり、作業者による操作入力情報を示す操作入力信号をCPU20bに出力する。
CPU20bは、上記操作入力部20aから入力される操作入力信号と、記憶部20cに記憶されている破壊寿命評価プログラムとに基づいて、上述したXYZ位置制御信号、チルト角制御信号及びX線照射制御信号を生成すると共に、上記の2次元X線検出器17から得られる回折強度分布信号に所定の信号処理を施すことによりボイラー管100の破壊寿命を判定する。また、このCPU20bは、装置情報(ワークステージ12のXYZ座標やチルト角など)や、破壊寿命判定結果や、位置決め用観察器18から得られる観察画像信号に応じた観察画像などを表示部20dに表示させる。このCPU20bは、本発明における破壊寿命判定手段に相当する。
記憶部20cは、CPU20bで実行される破壊寿命評価プログラムやその他の各種データを記憶するメモリである。表示部20dは、例えば液晶モニタであり、CPU20bによる制御の下、所定の画像を表示する。この表示部20dは、本発明における出力手段に相当する。
次に、上記のように構成された本実施形態に係る破壊寿命評価装置を用いた破壊寿命評価手順について、図2のフローチャートを用いて説明する。
まず、評価対象物であるボイラー管100の表面に対し、X線を照射する前準備として紙やすりによる研磨または電解研磨等の平滑化処理を施す(ステップS1)。以下、この平滑化処理を施すボイラー管100の部位について説明する。例えば、図3に示すように、高Cr系耐熱鋼からなるボイラー管100に溶接を施した場合、母材110と溶接継手部111との溶接部分には、溶接熱影響部(HAZ:Heat Affected Zone)112が生じる。一般的に、クリープ破壊は、HAZ112内に形成される細粒域において発生することが知られている。このような細粒域は、焼きならしマルテンサイト結晶粒及び焼き戻しマルテンサイト結晶粒が混在し、微細な結晶構造となる領域であり、クリープボイドが発生しやすい。
図4(a)は、初期状態、つまり未使用のボイラー管100のHAZ112の細粒域における結晶粒界分布である。図4(b)は、寿命消費率60%、つまりクリープ破壊寿命の60%に相当する使用時間経過後のボイラー管100のHAZ112の細粒域における結晶粒界分布である。図4(c)は、寿命消費率100%、つまりクリープ破壊後のボイラー管100のHAZ112の細粒域における結晶粒界分布データである。これらの図に示すように、クリープ環境下では、使用時間の経過と共に、細粒域の結晶粒は大きくなる。つまり、細粒域における微細結晶粒の成長(粗大化)とクリープ破壊寿命との間には、相関関係があることがわかる。図5は、実験によって得られた平均結晶粒径(結晶粒の大きさ)と寿命消費率(クリープ破壊寿命)との相関関係の一例である。
詳細は後述するが、本実施形態では、HAZ112の細粒域に検査領域30を設定してX線を照射することにより、細粒域における微細結晶粒の粗大化傾向を計測してクリープ破壊寿命を判定するため、このHAZ112の周辺に平滑化処理を施せば良い。
ところで、一般的に、HAZ112内には細粒域の他に粗大な結晶構造となる粗粒域が含まれているので、X線を正確に細粒域に照射するためには、HAZ112内の細粒域と粗粒域とを判別する必要がある。そこで、本実施形態では、図6に示すような、母材110、溶接継手部111及びHAZ112のX軸方向に対する位置とビッカース硬さとの関係を示す硬さプロファイルを測定することにより、HAZ112内の細粒域と粗粒域とを判別し、細粒域にX線を照射する検査領域30を設定する(ステップS2)。なお、このような硬さプロファイルの測定は、HAZ112からレプリカを採取して行えば良い。
上記のようにX線を照射する検査領域30を設定した後、図1に示すように、装置固定用治具10によって架台11、ワークステージ12、支持台13、チルト角調整部14、X線発生源15、モノクロメータ16、2次元X線検出器17、位置決め用観察器18、防爆用筐体19からなるX線計測体をボイラー管100に固定する(ステップS3)。この時、架台11の開口部11aとワークステージ12の開口部12aとがボイラー管100の検査領域30上に配置されるようにX線計測体を固定する。
続いて、X線照射位置の位置決めを行う(ステップS4)。制御装置20を起動すると、位置決め用観察器18によって撮像されたボイラー管100の表面の観察画像が表示部20dに表示される。この観察画像にはX線照射位置がレーザマークによって表示されているので、この観察画像を確認しながらX線照射位置が検査領域30に含まれるように、操作入力部20aを操作してワークステージ12のXY座標を調整する。また、観察画像のフォーカスが合っていない場合等、必要に応じてワークステージ12のZ座標も調整する。
そして、X線照射位置の位置決め後、操作入力部20aを操作してX線の照射を開始する(ステップS5)。具体的には、操作入力部20aの操作によってX線照射開始を指示する操作入力信号が発生すると、制御装置20のCPU20bによる制御の下、X線発生源15によって発生したX線はモノクロメータ16を介して所定のビーム径を有する単色X線に変換され、ボイラー管100の検査領域30におけるX線照射位置に照射される。
ここで、ある方向から特定の波長のX線を検査領域30(つまりHAZ112内の細粒域)の表面に照射すると、X線は細粒域における結晶の各格子面によって散乱する。 波長λの入射X線と結晶格子面との角度をθ、その格子面間距離をd、nを正の整数とすると、2d・sinθ= n・ λの関係が成立する場合、隣接する格子面からの散乱X線の位相が等しくなり、角度θの方向に強い回折現象が発生する(ブラッグ反射)。このとき、X線が照射される材料が本実施形態のボイラー管100におけるHAZ112内の細粒域のように、多数の微細結晶粒で構成され、さらにそれぞれの結晶方向の向きがランダムであれば、上式を満足する回折X線は散乱角2θを頂角とする円錐状に反射される。このとき、2次元X線検出器17によって回折X線を2次元検出することにより、図7に示すようなデバイシェラー環と呼ばれる回折パターンの回折強度分布が得られる。以下、このデバイシェラー環をデバイリングと称す。
CPU20bは、上記のように2次元X線検出器17から得られるデバイリングの回折強度分布信号を基にボイラー管100のクリープ破壊寿命の判定を行う(ステップS6)。以下、このデバイリングの回折強度分布を基にしたクリープ破壊寿命の判定原理について説明する。
図8(a)は、図4(a)に示すように、HAZ112内の細粒域において多数の微細結晶粒が存在する場合に得られるデバイリングの一例である。一方、図8(b)は、図4(b)に示すように、HAZ112内の細粒域において粗大化した結晶粒が存在する場合に得られるデバイリングの一例である。これらの図からわかるように、細粒域において粗大結晶粒が存在すると、ある特定の角度2θに対応するデバイリングにスポットと呼ばれる回折強度の高い点が現れる。すなわち、デバイリングに生じるスポット数と、クリープ破壊寿命とは相関関係にあり、デバイリングに生ずるスポット数からクリープ破壊寿命を判定することができる。
なお、デバイリングの回折強度は、X線のビーム径に大きく依存する。従って、X線のビーム径の選定を誤ると、デバイリングに存在するスポットを正確に抽出することができなくなり寿命評価精度が低下してしまう(つまり微細結晶粒の粗大化傾向を計測できなくなる)。例えば、本実施形態のように高Cr系耐熱鋼を材料とするボイラー管100の寿命評価を行う場合には、X線のビーム径を50μm〜1mmの範囲内に設定することが好ましい。これは、X線のビーム径が50μm以下ではX線の照射領域に含まれる結晶粒の個数が少なく、X線のビーム径が1mm以上ではX線の照射領域に含まれる結晶粒の個数が多すぎるためである。
このようにX線のビーム径を設定することにより、ボイラー管100のHAZ112内の細粒域における微細結晶粒の粗大化傾向を計測することができる。勿論、X線のビーム径は、評価対象物の材料に応じて適宜変更しても良い。
このようにX線のビーム径を設定することにより、ボイラー管100のHAZ112内の細粒域における微細結晶粒の粗大化傾向を計測することができる。勿論、X線のビーム径は、評価対象物の材料に応じて適宜変更しても良い。
上述した原理に基づき、CPU20bは、デバイリングの回折強度分布信号を基に、図8に示すχ軸方向に沿って(つまりデバイリングに沿って)デバイリングの回折強度と、予め設定していたスポットとして認識するための閾値(以下、スポット認識閾値と称す)とを比較し、スポット認識閾値を越えた回折強度を有するスポット数を計測する。図9(a)は、図8(a)に示すように、HAZ112内の細粒域において多数の微細結晶粒が存在する場合、つまりクリープ破壊が進行していない場合の、χ軸方向に沿ったデバイリングの回折強度分布とスポット認識閾値との関係を示すものである。この図9(a)に示すように、クリープ破壊が進行していない場合は、デバイリング上にスポット認識閾値より大きな回折強度となるスポットが存在しないため、スポット数の計測結果は「0」となる。一方、図9(b)は、図8(b)に示すように、HAZ112内の細粒域において粗大結晶粒が存在する場合、つまりクリープ破壊が進行している場合の、χ軸方向に沿ったデバイリングの回折強度分布とスポット認識閾値との関係を示すものである。この図9(b)に示すように、クリープ破壊が進行している場合は、デバイリング上にスポット認識閾値より大きな回折強度となるスポットが2点存在するため、スポット数の計測結果は「2」となる。
そして、CPU20bは、上述したスポット数の計測結果ηと、予め実験によって求めておいた、スポット数の計測結果ηと損傷度(寿命消費率)との関係を示す特性曲線(以下、余寿命曲線と称す)とに基づいて、クリープ破壊寿命を判定し、その判定結果を表示部20dに表示させる(ステップS7)。図10は、上記の余寿命曲線の一例である。この図10に示すように、CPU20bは、例えばスポット数の計測結果ηが「2」以上になった場合に損傷度100%、つまりボイラー管100の交換時期であると判定して、その判定結果を表示部20dに表示させる。または、CPU20bは、例えばスポット数の計測結果ηが「1」以上になった場合に損傷度90%、つまり交換には至らないが要注意であると判定して、その判定結果を表示部20dに表示させる。
以上のように、本実施形態に係る破壊寿命評価装置によれば、ボイラー管100の表面に設定された検査領域30に対してX線を照射して生じる回折X線の回折パターン(デバイリング)の回折強度分布に基づいてボイラー管100のクリープ破壊寿命を判定することができるので、従来のEBSP法を用いる場合のようにボイラー管100から採取した試料を真空チャンバ内にセットし、真空状態下で電子ビームを試料に照射する必要がなく、現場の作業者の負担を軽減すると共に寿命評価時間の短縮を図ることが可能である。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、回折X線の回折パターン(デバイリング)の回折強度分布を基にデバイリングに存在するスポット数を計測し、このスポット数の計測結果と余寿命曲線とに基づいてクリープ破壊寿命を判定したが、これに限らず、デバイリングの回折強度分布からボイラー管100の残留応力を計測して、この残留応力の計測結果と、スポット数から求めた寿命判定結果とに基づいて最終的な破壊寿命の判定を行っても良い。結晶粒が異常に粗大化した細粒域ではクリープボイドも確実に生成されるため、残留応力は変化する。つまり、この残留応力の変化を調査することにより、細粒域における微細結晶粒の粗大化傾向を把握することができる。従って、スポット数と残留応力との両者を加味して破壊寿命判定を行うことにより、寿命判定精度の向上を図ることができる。なお、X線による残留応力計測方法は公知技術であるため、詳細な説明は省略する。
(2)上記実施形態では、スポット数の計測結果を基に破壊寿命判定を行ったが、スポット数の関数を基に破壊寿命を判定しても良い。この場合、余寿命曲線を、スポット数の関数と損傷度(寿命消費率)との関係を示す特性曲線とすれば良い。
(3)上記実施形態では、検査領域30内の1箇所にX線を照射した場合を説明したが、例えばワークステージ12を所定のピッチでX軸方向またはY軸方向に移動させて複数箇所にX線を照射し、それぞれで得られるデバイリングの回折強度分布を基にスポット数を計測し、この計測結果の平均値を用いてクリープ破壊寿命を判定するようにしても良い。
または、それぞれのスポット数の内、最も多いスポット数を用いてクリープ破壊寿命を判定するようにしても良い。
または、それぞれのスポット数の内、最も多いスポット数を用いてクリープ破壊寿命を判定するようにしても良い。
(4)上記実施形態では、評価対象物として、高Cr系耐熱鋼を材料とするボイラー管100を例示して説明したが、評価対象物はこれに限定されず、他の高Cr系材料からなる金属部品であれば本発明は適用可能である。また、高Cr系材料以外であっても、微細な組織構造をとり、且つクリープ破壊の進行に応じて結晶粒の粗大化傾向があるような材料であれば、本発明は適用可能である。
(5)上記実施形態では、クリープに起因する破壊寿命を判定する場合について説明したが、使用時間の経過と共に結晶粒が粗大化するような特徴を有する破壊原因であれば、本発明は適用可能である。
10…装置固定用治具、11…架台、12…ワークステージ、13…支持台、14…チルト角調整部、15…X線発生源、16…モノクロメータ、17…2次元X線検出器、18…位置決め用観察器、19…防爆用筐体、20…制御装置、20a…操作入力部、20b…CPU、20c…記憶部、20d…表示部
Claims (5)
- 評価対象物の表面に設定された検査領域に対してX線を照射するX線照射手段と、
前記X線が前記検査領域に照射されることによって生じる回折X線の回折パターンの回折強度分布を2次元検出する2次元X線検出手段と、
前記回折パターンの回折強度分布に基づいて前記評価対象物の破壊寿命を判定する破壊寿命判定手段と、
前記破壊寿命判定手段による破壊寿命の判定結果を出力する出力手段と、
を具備することを特徴とする破壊寿命評価装置。 - 前記破壊寿命判定手段は、前記回折パターンに含まれるデバイシェラー環の回折強度分
布において所定の閾値を越える回折強度を有するスポット数を計測し、予め設定された、
前記スポット数または前記スポット数の関数と前記評価対象物の破壊寿命との関係を示す
特性曲線と、前記計測したスポット数または当該スポット数の関数とに基づいて、前記評
価対象物の破壊寿命を判定することを特徴とする請求項1記載の破壊寿命評価装置。 - 前記破壊寿命判定手段は、前記回折パターンの回折強度分布に基づいて前記評価対象物
の残留応力を計測し、前記スポット数の計測結果から得られた破壊寿命の判定結果と、前
記残留応力の計測結果とに基づいて最終的な破壊寿命の判定を行うことを特徴とする請求
項2記載の破壊寿命評価装置。 - 前記評価対象物が高Cr系材料の配管であると共に、前記検査領域が前記配管の母材と
溶接継手部との溶接部分の溶接熱影響部において微細結晶粒からなる細粒域に設定された
場合、前記X線のビーム径を50μm〜1mmの範囲内に設定することを特徴とする請求
項1〜3のいずれか一項に記載の破壊寿命評価装置。 - 評価対象物の表面に設定された検査領域に対してX線を照射するX線照射工程と、
前記X線が前記検査領域に照射されることによって生じる回折X線の回折パターンの回折強度分布を2次元検出する回折X線検出工程と、
前記回折パターンの回折強度分布に基づいて前記評価対象物の破壊寿命を判定する破壊寿命判定工程と、
を有することを特徴とする破壊寿命評価方法。
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---|---|---|---|
JP2007331608A JP2009156584A (ja) | 2007-12-25 | 2007-12-25 | 破壊寿命評価装置及び破壊寿命評価方法 |
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ID=40960786
Family Applications (1)
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JP (1) | JP2009156584A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013113734A (ja) * | 2011-11-29 | 2013-06-10 | Pulstec Industrial Co Ltd | X線回折測定装置及び残留応力測定方法 |
JP2018087738A (ja) * | 2016-11-29 | 2018-06-07 | 新日鐵住金株式会社 | 金属材料の余寿命評価方法 |
JP2020159850A (ja) * | 2019-03-26 | 2020-10-01 | 株式会社リガク | ニッケル基超合金の劣化診断方法、装置およびシステム |
JP2020159849A (ja) * | 2019-03-26 | 2020-10-01 | 株式会社リガク | 多結晶金属材料の劣化診断方法、装置およびシステム |
-
2007
- 2007-12-25 JP JP2007331608A patent/JP2009156584A/ja active Pending
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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