JP4719451B2 - エレベーターの非常止め装置 - Google Patents

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Description

本発明は、エレベーターの非常止め装置に係り、特に非常時に制動子をガイドレールに押圧し昇降体を非常停止するエレベーターの非常止め装置に関するものである。
従来、ガイドレール1によって案内される昇降体2に設けられる非常止め装置3は、図3に示すように、非常時にガイドレール1に押圧される制動子4を備えている。そして、この制動子4は、図4に示すように、通常はガイドレール1から離れて保持され、昇降体2の下降速度が所定値を超えたときに昇降体2に対して上昇し、非常止め装置3の押圧体5の斜面及びローラ6を介してガイドレール1面に押圧される。また、従来の非常止め装置3として、例えば、図5に示すように、制動子4の押圧面、すなわち摺動面4aに、頂角が鈍角の突歯10を形成し、さらに、摺動面4aの昇降方向における端部11を傾斜させ、該傾斜面の昇降方向における長さを突歯10の昇降方向の長さの半分にしたものがある。このように構成される従来の非常止め装置3によれば、制動子4に頂角が鈍角の突歯10を設け、制動子4とガイドレール1との間の摩擦係数を大きくすることにより、装置の小型化を図ることができるとともに、切粉の発生を極力抑制し、摩擦係数の変動が少ない安定した制動力を得ることができる(例えば、下記特許文献1参照)。
実開昭63−18458号公報(5頁4行目〜8頁1行目)
ところで、近時、高速の定格速度を有するエレベーターにあっては、同一制動子を用いて非常止め装置を2回或いはそれ以上連続して試験することが規定されている場合がある。しかしながら、従来の上記制動子4では、上述した規定に基づき制動試験を行った場合、制動時の制動子4の温度が高温となり、この熱による影響で制動子4上下端面がガイドレール1に対して反り返るという解析結果が得られた。すなわち、図6に示すように、1回目の制動試験前の制動子4は、ガイドレール1に対して平行に対向するように摺動面
4aを有している。しかし、図7に示すように、制動試験時に発生する摩擦熱により制動子4の上下端部が熱変形するとともに、図8に示すように、ガイドレール1に摺動する制動子4の中央部のみ磨耗する。この後、制動試験が終了して制動子4が冷えると、図9に示すように、熱変形は回復するが、ガイドレール1に対向する摺動面4aの中央部が磨耗した形状となる。この制動子4に対して応力分布状況の解析を行った結果、制動子4の上端に高い応力が発生し、変位が認められた。このような形状となった制動子で2回目の制動試験を実施すると、図10に示すように、曲げモーメントが生じるとともに、中央部が接触しない状態での試験となり、1回目の制動試験時と異なる制動特性となるという問題が生じる。
尚、上述した従来の制動子の昇降路方向における端部は確かに面取りが施されているが、この面取りは、ガイドレールとの接触をスムーズにするものであり、制動試験に伴う摩擦熱による制動子の影響に対応するものではない。
本発明は、従来技術における上記課題に着目してなされたもので、その目的は、制動試験時に生じる摩擦熱による制動子への影響を軽減することのできるエレベーターの非常止め装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は、昇降路に立設されたガイドレールにより案内される昇降体に設けられ、前記ガイドレールに対向する摺動面および下端から上端に向かって先細り状に傾斜する傾斜面を有する制動子を備え、非常時に前記制動子を前記ガイドレールに押圧し前記昇降体を非常停止するエレベーターの非常止め装置において、前記制動子の摺動面は、中央部が平坦であって、上下端部が前記ガイドレールから離れる方向に傾斜するテーパを有し、前記テーパは、1回目の制動試験終了後、前記制動子が冷却して熱変形が回復した時、1回目の制動試験で磨耗した前記中央部と水平な状態となるように肉厚の薄い上端部は小さく、肉厚の厚い下端部は大きく傾斜するように形成されていることを特徴とする。
このように構成した本発明によれば、前記制動子の摺動面を、中央部は平坦に、上下端部は前記ガイドレールから離れる方向に傾斜するテーパを有するように構成されているため、1回目の制動試験で中央部が磨耗するが、この制動試験終了後、制動子が冷却して熱変形が回復した時、中央部と上下端部は水平な状態(図6の状態)となる。そして、2回目の制動試験では、中央部がガイドレールと接触する状態(図7の状態)となり、1回目と同様の制動試験を行うことができ、安定した制動特性を得ることができる。
本発明によれば、制動試験時に生じる摩擦熱による制動子への影響を軽減することのできるエレベーターの非常止め装置を提供することができる。
以下、本発明に係るエレベーターの非常止め装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明のエレベーターの非常止め装置の実施形態の要部構成を示す側面図、図2は、図1の平面図である。尚、非常止め装置の基本構成に関しては、上述した図3を参照して説明する。
本実施形態のエレベーターの非常止め装置3は、図1に示すように、ガイドレール1に対向する摺動面21および下端から上端に向かって先細り状に傾斜する傾斜面22を有する制動子20が設けられている。更に、前記摺動面21は、その中央部が平坦な摺動面
21aであって、この平坦な摺動面21aの上端および下端部がそれぞれの端部に向かってガイドレール1から離れる方向に傾斜するテーパ21b,21cを有している。そして、肉厚の薄い上端部のテーパ21bは小さく傾斜するように形成され、肉厚の厚い下端部のテーパ21cは大きく傾斜するように形成されている。
また、制動子20の平坦な摺動面21aには、加工し易くかつ制動特性を向上させるため、図2にも示すように、ガイドレール1に対して直交する方向に複数形成される溝部
23が備えられている。ここで、溝部での熱変形の応力集中を避けるために、溝部の底部を略U字形状又は略半円形状とするのが望ましい。
このように、前記制動子の摺動面21を、中央部は平坦に、上下端部はガイドレール1から離れる方向に傾斜するテーパ21b,21cを有するように構成されているため、1回目の制動試験で中央部が磨耗するが、この制動試験終了後、制動子が冷却して熱変形が回復した時、中央部と上下端部は水平な状態(図6の状態)となる。そして、2回目の制動試験では、中央部がガイドレールと接触する状態(図7の状態)となり、1回目と同様の制動試験を行うことができ、安定した制動特性を得ることができる。
また、本実施形態のエレベーターの非常止め装置は、特に、高速の定格速度を有するエレベーターに利用されるため、低速の定格速度を有するエレベーターに利用される場合と異なり、制動子の磨耗が大きいが、上述のように構成することで、安定した制動特性を得ることができる。
本発明のエレベーターの非常止め装置の実施形態の要部構成を示す正面図である。 図1の平面図である。 従来のエレベーターの非常止め装置の構成を示す正面図である。 従来の非常止め装置の要部断面図である。 従来の制動子の平面図である。 従来の非常止め装置の制動試験を説明する図である。 従来の非常止め装置の制動試験を説明する図である。 従来の非常止め装置の制動試験を説明する図である。 従来の非常止め装置の制動試験を説明する図である。 従来の非常止め装置の制動試験を説明する図である。
符号の説明
1…ガイドレール、2…昇降体、3…非常止め装置、20…制動子、21…摺動面、
21a…平坦な摺動面、21b,21c…テーパ、22…傾斜面、23…溝部。

Claims (2)

  1. 昇降路に立設されたガイドレールにより案内される昇降体に設けられ、前記ガイドレールに対向する摺動面および下端から上端に向かって先細り状に傾斜する傾斜面を有する制動子を備え、非常時に前記制動子を前記ガイドレールに押圧し前記昇降体を非常停止するエレベーターの非常止め装置において、前記制動子の摺動面は、中央部が平坦であって、上下端部が前記ガイドレールから離れる方向に傾斜するテーパを有し、前記テーパは、1回目の制動試験終了後、前記制動子が冷却して熱変形が回復した時、1回目の制動試験で磨耗した前記中央部と水平な状態となるように肉厚の薄い上端部は小さく、肉厚の厚い下端部は大きく傾斜するように形成されていることを特徴とするエレベーターの非常止め装置。
  2. 請求項において、前記摺動面の中央平坦部に、前記ガイドレールに対して直交する方向に複数形成される溝部を備えたことを特徴とするエレベーターの非常止め装置。
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