JP4718682B2 - めっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板と高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents
めっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板と高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、建築、電気等の部材として有用な高強度鋼板およびその製造方法に関し、特にプレス成形時の張出し成形性およびめっき密着性に優れる高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板と高強度溶融亜鉛めっき鋼板、および、その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車等のクロスメンバーやサイドメンバー等の部材に関しては、近年の燃費節減の動向に対応すべく軽量化が検討されていて、材料面では、薄肉化しても強度が確保されるという観点から、高強度化が進められている。
ところが、一般に、材料のプレス成形性は強度が上昇するに従って劣化するので、上記部材の軽量化を達成するためには、プレス成形性と高強度性の両特性を満足する鋼板の開発が求められている。
成形性の指標値には、引張試験における伸びをはじめとしてn値やr値があるが、一体成形によるプレス工程の簡略化が課題となっている昨今では、均一伸びに相当するn値の大きいことがなかでも重要になってきている。
【0003】
このため、鋼中に含有する残留オーステナイトの変態誘起塑性を活用した熱延鋼板および冷延鋼板が開発されている。これは、高価な合金元素を含まずに、0.07〜0.4%程度のCと0.3〜2.0%程度のSiおよび0.2〜2.5%程度のMnのみを基本的な合金元素とし、二相域で焼鈍後、300〜450℃内外の温度でベイナイト変態を行う熱処理が施こされた残留オーステナイトを金属組織中に含む鋼板であり、例えば、特開平1−230715号公報や特開平2−217425号公報等に開示されている。
【0004】
この種の鋼板は、連続焼鈍で製造された冷延鋼板ばかりでなく、例えば、特開平1−79345号公報に開示されたランアウトテーブルで冷却と巻取温度を制御する技術により、熱延鋼板においても得られることが知られている。
自動車の高級化を反映し耐食性および外観を向上させることを目的として、自動車部材のめっき化が進んでいて、現在では、車内に装着される特定の部材を除いた多くの部材に、亜鉛めっき鋼板が用いられている。
従って、これらの鋼板には、耐食性の観点から溶融Znめっきを施すか、あるいは、溶融Znめっき後合金化処理した合金化溶融Znめっきを施して使用することが有効であるが、これらの高張力鋼板のうち、Si含有量が高い鋼板の場合には、鋼板表面に酸化膜が生成しやすいため、溶融Znめっきの際に微小不めっき部が生じたり、合金化後の加工部のめっき密着性が劣るなどの問題があり、優れた加工部めっき密着性を有し、かつ、耐食性の優れた高Si系の高張力高延性合金化溶融Znめっき鋼板は実用化されていないのが現状である。
【0005】
例えば、特開平1−230715号公報や特開平2−217425号公報等に開示されている鋼板は、0.3〜2.0%のSiを含有し、その特異なベイナイト変態を活用し残留オーステナイトを確保するものであるが、該鋼板においては、二相共存温度域で焼鈍した後の冷却や、300〜450℃内外の温度域での保持をかなり厳格に制御しないと、意図する金属組織が得られず、強度や伸びが目標の範囲をはずれることになる。
この熱履歴は、工業的には、連続焼鈍設備や、熱間圧延後のランアウトテーブルと巻取工程において実現されはするが、450〜600℃でオーステナイトの変態がすみやかに完了するので、450〜600℃に滞留する時間を特に短くするような制御が要求され、また、350〜450℃でも、保持する時間によっては、金属組織が著しく変化するので、熱履歴が所期の条件からはずれると、陳腐な強度と伸びしか得られないことになる。
【0006】
さらに、450〜600℃に滞留する時間が長いことや、めっき性を悪くするSiを合金元素として含むことから、溶融めっき設備を通板させてめっき鋼板を製造することはできず、さらに、該設備で製造しても、めっき鋼板においては、表面耐食性が劣るため、広範な工業的利用が妨げられているという問題点がある。
【0007】
上記問題を解決する技術として、例えば、特開平5−247586号公報や特開平6−145788号公報等には、Si濃度を規制することでめっき性を改善する方法が開示されている。この方法では、Siの替わりにAlを添加することで残留オーステナイトを生成させている。しかしながら、AlもSiと同じようにFeよりも酸化しやすいので、鋼板表面に酸化膜を形成しやすく、十分なめっき密着性を確保することができないという問題点がある。
また、例えば、特開平04−333552号公報や特開平04−346644号公報等においては、高Si系高強度鋼板の合金化溶融めっき方法として、プレNiめっき後に急速低温加熱して、溶融Znめっき後合金化処理する方法が開示されている。しかしながら、この方法では、プレNiめっきが必要になるので新たな設備が必要になるという問題点がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の様な問題点を解決し、プレス成形性およびめっき密着性の良好な高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板と高強度溶融亜鉛めっき鋼板、およびこれら鋼板を効率よく製造する製造方法を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成できる高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板と高強度溶融亜鉛めっき鋼板、および、これら鋼板の製造方法を提供するべく、めっき性と鋼板成分との関係について鋭意検討を行い、表面耐食性を向上するため、溶融めっき設備でも製造可能なプレス成形性の良好な高強度鋼板の組成と金属組織の特徴を見いだし、本発明を完成させた。その要旨とするところは以下のとおりである。
【0011】
(1)鋼成分として、質量%で、
C:0.05〜0.2%、
Si:0.2〜2.0%、
Mn:0.2〜2.5%、
Al:0.01〜1.5%、
Sn:0.003〜1.0%、
Ni:0.11%以下(0を含まない)、
Cu:2.0%以下(0を含まない)
を含有し、かつ、SiとAlの関係が、
0.4(%)≦Si(%)+0.8Al(%)≦2.0(%)
を満足し、残部不可避的不純物を含むFeからなり、残留オーステナイトの体積率が2〜20%である鋼板の上に、Fe:8〜15%、Al:1%以下を含み、残部がZn及び不可避的不純物よりなる合金化溶融亜鉛めっき層を有することを特徴とするめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
【0012】
(2)鋼成分として、更に、質量%で、Co:0.3%未満を含むことを特徴とする前記(1)記載のめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
(3)鋼成分として、更に、質量%で、(a)Mo:0.5%未満、Cr:1.0%未満、V:0.3%未満、Ti:0.06%未満、Nb:0.06%未満、B:0.01%未満のうちの少なくとも1種以上、(b)REM:0.3%未満、Ca:0.3%未満、Zr:0.3%未満、Mg:0.3%未満のうちの少なくとも1種以上、(c)Sb:0.3%未満、Bi:0.3%未満のうちの少なくとも1種以上、の成分群のうちの少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする前記(1)または(2)記載のめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
(4)合金化溶融亜鉛めっき層の成分として、更に、Mg、Si、Sn、Caの1種以上を合計5%以下含むことを特徴とする前記(1)、(2)または(3)記載のめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
【0013】
(5)質量%で、
C:0.05〜0.2%、
Si:0.2〜2.0%、
Mn:0.2〜2.5%、
Al:0.01〜1.5%、
Sn:0.003〜1.0%、
Ni:0.11%以下(0を含まない)、
Cu:2.0%以下(0を含まない)
を含有し、かつ、SiとAlの関係が、
0.4(%)≦Si(%)+0.8Al(%)≦2.0(%)
を満足し、残部不可避的不純物を含むFeからなり、残留オーステナイトの体積率が2〜20%である鋼板の上に、Al:1%以下を含み、残部がZn及び不可避的不純物よりなる溶融亜鉛めっき層を有することを特徴とするめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【0014】
(6)鋼成分として、更に、質量%で、Co:0.3%を含むことを特徴とする前記(5)記載のめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【0015】
(7)鋼成分として、更に、質量%で、(a)Mo:0.5%未満、Cr:1.0%未満、V:0.3%未満、Ti:0.06%未満、Nb:0.06%未満、B:0.01%未満のうちの少なくとも1種以上、(b)REM:0.3%未満、Ca:0.3%未満、Zr:0.3%未満、Mg:0.3%未満のうちの少なくとも1種以上、(c)Sb:0.3%未満、Bi:0.3%未満のうちの少なくとも1種以上、の成分群のうちの少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする前記(5)または(6)記載のめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
(8)溶融亜鉛めっき層の成分として、更に、Mg、Si、Sn、Caの1種以上を合計5%以下含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【0016】
(9)質量%で、
C:0.05〜0.2%、
Si:0.2〜2.0%、
Mn:0.2〜2.5%、
Al:0.01〜1.5%、
Sn:0.003〜1.0%、
Ni:0.11%以下(0を含まない)、
Cu:2.0%以下(0を含まない)
を含有し、かつ、SiとAlの関係が、
0.4(%)≦Si(%)+0.8Al(%)≦2.0(%)
を満足し、残部不可避的不純物を含むFeからなる冷延鋼板を650〜900℃の二相共存温度域で10秒〜6分焼鈍し、その後、2〜200℃/sの冷却速度で350〜500℃まで冷却し、溶融亜鉛めっきを施し、その後、450〜600℃の温度域で5秒〜2分保持し、次いで、5℃/s以上の冷却速度で250℃以下に冷却することにより、上記鋼板中に残留オーステナイトを体積率で2〜20%含ませ、かつ、上記鋼板の上にFe:8〜15%、Al:1%以下を含み、残部がZn及び不可避的不純物よりなる合金化溶融亜鉛めっき層を形成することを特徴とするめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(10)質量%で、
C:0.05〜0.2%、
Si:0.2〜2.0%、
Mn:0.2〜2.5%、
Al:0.01〜1.5%、
Sn:0.003〜1.0%、
Ni:0.11%以下(0を含まない)、
Cu:2.0%以下(0を含まない)
を含有し、かつ、SiとAlの関係が、
0.4(%)≦Si(%)+0.8Al(%)≦2.0(%)
を満足し、残部不可避的不純物を含むFeからなる冷延鋼板を650〜900℃の二相共存温度域で10秒〜6分焼鈍し、その後、2〜200℃/sの冷却速度で350〜500℃まで冷却し、該温度域で10分以下保持した後、溶融亜鉛めっきを施し、その後、450〜600℃の範囲の温度域で5秒〜2分保持し、次いで、5℃/s以上の冷却速度で250℃以下に冷却することにより、上記鋼板中に残留オーステナイトを体積率で2〜20%含ませ、かつ、上記鋼板の上にFe:8〜15%、Al:1%以下を含み、残部がZn及び不可避的不純物よりなる合金化溶融亜鉛めっき層を形成することを特徴とするめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(11)鋼成分として、更に、質量%で、Co:0.3%未満を含むことを特徴とする前記(9)または(10)記載のめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(12)鋼成分として、更に、質量%で、(a)Mo:0.5%未満、Cr:1.0%未満、V:0.3%未満、Ti:0.06%未満、Nb:0.06%未満、B:0.01%未満のうちの少なくとも1種以上、(b)REM:0.3%未満、Ca:0.3%未満、Zr:0.3%未満、Mg:0.3%未満のうちの少なくとも1種以上、(c)Sb:0.3%未満、Bi:0.3%未満のうちの少なくとも1種以上、の成分群のうちの少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする前記(9)、(10)または(11)記載のめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(13)合金化溶融亜鉛めっき層の成分として、更に、Mg、Si、Sn、Caの1種以上を合計5%以下含むことを特徴とする前記(9)〜(12)のいずれかに記載のめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0017】
(14)質量%で、
C:0.05〜0.2%、
Si:0.2〜2.0%、
Mn:0.2〜2.5%、
Al:0.01〜1.5%、
Sn:0.003〜1.0%、
Ni:0.11%以下(0を含まない)、
Cu:2.0%以下(0を含まない)
を含有し、かつ、SiとAlの関係が、
0.4(%)≦Si(%)+0.8Al(%)≦2.0(%)
を満足し、残部不可避的不純物を含むFeからなる冷延鋼板を650〜900℃の二相共存温度域で10秒〜6分焼鈍し、その後、2〜200℃/sの冷却速度で350〜500℃まで冷却し、溶融亜鉛めっきを施し、その後、5℃/s以上の冷却速度で250℃以下に冷却することにより、上記鋼板中に残留オーステナイトを体積率で2〜20%含ませ、かつ、上記鋼板の上にAl:1%以下を含み、残部がZn及び不可避的不純物よりなる溶融亜鉛めっき層を形成することを特徴とするめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(15)質量%で、
C:0.05〜0.2%、
Si:0.2〜2.0%、
Mn:0.2〜2.5%、
Al:0.01〜1.5%、
Sn:0.003〜1.0%、
Ni:0.11%以下(0を含まない)、
Cu:2.0%以下(0を含まない)
を含有し、かつ、SiとAlの関係が、
0.4(%)≦Si(%)+0.8Al(%)≦2.0(%)
を満足し、残部不可避的不純物を含むFeからなる冷延鋼板を650〜900℃の二相共存温度域で10秒〜6分焼鈍し、その後、2〜200℃/sの冷却速度で350〜500℃まで冷却し、該温度域で10分以下保持した後、溶融亜鉛めっきを施し、その後、5℃/s以上の冷却速度で250℃以下に冷却することにより、上記鋼板中に残留オーステナイトを体積率で2〜20%含ませ、かつ、上記鋼板の上にAl:1%以下を含み、残部がZn及び不可避的不純物よりなる溶融亜鉛めっき層を形成することを特徴とするめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(16)鋼成分として、更に、質量%で、Co:0.3%を含むことを特徴とする前記(14)または(15)記載のめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(17)鋼成分として、更に、質量%で、(a)Mo:0.5%未満、Cr:1.0%未満、V:0.3%未満、Ti:0.06%未満、Nb:0.06%未満、B:0.01%未満のうちの少なくとも1種以上、(b)REM:0.3%未満、Ca:0.3%未満、Zr:0.3%未満、Mg:0.3%未満のうちの少なくとも1種以上、(c)Sb:0.3%未満、Bi:0.3%未満のうちの少なくとも1種以上、の成分群のうちの少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする前記(14)、(15)または(16)記載のめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(18)溶融亜鉛めっき層の成分として、更に、Mg、Si、Sn、Caの1種以上を合計5%以下含むことを特徴とする前記(14)〜(17)のいずれかに記載のめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明における成分組成は、プレス成形性およびめっき密着性の良好な高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板および高強度溶融亜鉛めっき鋼板を提供するために限定されるものであり、以下、その理由を詳細に説明する。
【0019】
Cはオーステナイト安定化元素であり、二相共存温度域およびベイナイト変態温度域で、フェライト中から移動してオーステナイト中に濃化する。その結果、化学的に安定化されたオーステナイトが、室温まで冷却された後も2〜20%残留し、変態誘起塑性により成形性を良好なものとする。
Cが0.05%未満だと、2%以上の残留オーステナイトを確保するのが困難であり、本発明の目的を達せられない。一方、Cが0.2%を超すと、溶接性が悪化するので避けなければならない。
【0020】
Siはセメンタイトに固溶せず、その析出を抑制して、350〜600℃におけるオーステナイトからの変態を遅らせる。この間に、オーステナイト中へのC濃化が促進されるので、オーステナイトの化学的安定性が高まり、変態誘起塑性を起こし、成形性を良好なものとするのに貢献する残留オーステナイトの確保が可能となる。
Siが0.2%未満だとその効果が得られない。一方、Si濃度を高くするとめっき性が悪化するので、2.0%以下にする必要がある。
【0021】
Mnはオーステナイト形成元素であり、また、二相共存温度域での焼鈍後350〜600℃に冷却する途上で、オーステナイトがパーライトへ分解するのを防ぐので、室温まで冷却した後の金属組織に残留オーステナイトが含まれるようにするのに有効である。
0.2%未満の添加では、パーライトへの分解を抑えるために、工業的な制御ができない程に冷却速度を大きくする必要があり、適当ではない。一方、2.5%を超えるとバンド組織が顕著に発達し、スポット溶接部がナゲット内で破断しやすくなるので、2.5%以下とする。さらに、Mn濃度が高すぎると、めっき性も劣化する傾向にある。
【0022】
Alは脱酸材としても用いられると同時に、Siと同じようにセメンタイトに固溶せず、350〜600℃での保持に際してセメンタイトの析出を抑制し、変態の進行を遅らせる。しかし、Siよりもフェライト形成能が強いため変態開始は早く、ごく短時間の保持でも、二相共存温度域での焼鈍時よりオーステナイト中にCが濃化され、オーステナイトの化学的安定性が高まり、その結果、室温まで冷却後の金属組織中に、成形性を悪化させるマルテンサイトは僅かしか存在しないことになる。
このため、AlとSiを共存させると、350〜600℃での保持条件による強度や伸びの変化が小さくなり、高強度で良好なプレス成形性を得やすくなる。Alは脱酸のためには0.01%以上の添加が必要であり、0.1%以上添加することが望ましい。
また、「Si+0.8Al」が0.4%以上になるようにしなければならない。一方、Alが1.5%を超すと、AlもSiと同様にめっき密着性を劣化させるので避けなければならない。また、めっき密着性を確保するためには、「Si+0.8Al」が2.0%以下になるようにしなければならない。
【0023】
Snは本発明で最も重要な元素であり、めっき密着性を向上させる。SiやAlを含む鋼板では、連続溶融亜鉛めっきラインでめっき鋼板を製造する場合、鋼板表面にSiやAlの酸化物が形成され、該酸化物がめっき密着性を低下させるが、SnはFeよりも酸化し難い元素であると同時に、表面に偏析しやすい元素であるので、鋼板表層に濃化し、めっき密着性の低下を防止する。
Snが0.003%未満では、本発明鋼において十分なめっき密着性を得ることができない。上記効果をより発揮させるためには、0.005%以上の添加が望ましい。更に、望ましくは、Snを0.008%以上添加する。より望ましくは、実施例の表1中、鋼gの値に基づいて、0.432%以上添加する。
一方、Snを1.0%を超えて添加すると、熱間圧延時に割れが発生してしまい、良好なめっき外観を確保できない。めっき外観をより良好なものとするためには、0.5%以下の添加が望ましい。
【0024】
本発明の鋼板は以上の元素を基本成分とするが、これらの元素およびFe以外に、例えば、オーステナイト生成元素であると同時に強度およびめっき密着性を向上させるNi、Cu、Coのうちの少なくとも1種以上、を添加してもよいし、また、焼入れ性向上元素であるMo、Cr、V、B、Ti、Nb、Bのうちの少なくとも1種以上((a)成分群)、介在物を減少させるREM、Ca、Zr、Mgのうちの少なくとも1種以上((b)成分群)、および/または、表面偏析によりSi酸化物および/またはAl酸化物の生成を抑制するSb、Biのうちの少なくとも1種以上を、上記基本成分に、または、上記Ni、Cu、Coのうちの少なくとも1種以上とともに、上記基本成分に添加してもよい。
【0025】
以下に、上記元素の量を限定する理由を詳細に説明する。
Ni、Cu、Coは、Snと同様にFeよりも酸化し難い元素であるので、焼鈍時に表面に濃化し、めっき密着性を阻害するSi、Al等の酸化物の生成を抑制する。また、Ni、Cu、Coは、Mnと同じようにオーステナイト生成元素であると同時に、Si、Alと同様に、セメンタイトに固溶しないので、350〜600℃での保持に際してセメンタイトの析出を抑制し、変態の進行を遅らせる。そのため、Ni、Cu、Coを1種以上添加することでさらに良好な鋼板を得ることができる。
【0026】
Niを0.11%を超えて添加しても効果が飽和するので、上限を0.11%とした。また、Cuを2.0%を超えて添加すると、Cu析出物が生成して材質が悪化するので、上限を2.0%とした。また、Coは高価な金属であるので、上限を0.3%未満とした。なお、SnとCuを複合添加する場合には、Sn、Cuによる熱間割れを防止する観点から、「Sn(%)+Cu(%)<3×Ni(%)」とすることが望ましい。
【0027】
Mo、Cr、V、Ti、Nb、Bは、強度を上げる元素であり、REM、Ca、Zr、Mgは、鋼中Sと結びつき介在物を減少させることで良好な伸びを確保する元素であり、また、Sb、Biは表面偏析をすることでSi酸化物および/またはAl酸化物の生成を抑制する元素である。
Mo:0.5%未満、Cr:1.0%未満、V:0.3%未満、Ti:0.06%未満、Nb:0.06%未満、B:0.01%未満(以上(a)成分群)、REM:0.3%未満、Ca:0.3%未満、Zr:0.3%未満、Mg:0.3%未満(以上(b)成分群)、Sb:0.3%未満、Bi:0.3%未満(以上(c)成分群)のうちの少なくとも1種以上を必要に応じて添加することは本発明の趣旨を損なうものではない。これら元素の効果は上記上限で飽和し、また、上記上限を超える添加はコストが高くなるので、これら元素を添加する場合は、上記上限以下の範囲とする。
また、鋼成分として、P、S、N、O、その他、一般鋼に対して不可避的に混入する元素を含有しても、何ら本発明の効果が損なわれるものではない。
さらに、本発明のめっき鋼板においては、上記元素や、不可避的不純物の他に、通常、鋼中に付随的に存在する元素を、付随的成分として、めっき鋼板の特性を阻害しない量の範囲で含有していてもよい。
最終製品としての本発明鋼板の延性は、製品中に含まれる残留オーステナイトの体積率に左右される。金属組織に含まれる残留オーステナイトは、変形を受けない時は安定に存在するが、変形が加えられるとマルテンサイトに変態し、変態誘起塑性を呈するので、金属組織中に残留オーステナイトを含む鋼板においては、良好な成形性が高強度で得られる。
残留オーステナイトの体積率が2%未満では、上記効果が明確に認められない。一方、残留オーステナイトが体積率20%を超えて存在すると、極度に厳しい成形を施した場合、プレス成形した状態で多量のマルテンサイトが存在する可能性があり、その結果、二次加工性や衝撃性に問題を生じることがあるので、本発明では残留オーステナイトの体積率を20%以下とした。
【0028】
本発明では、上記鋼板の上にZnめっき層またはZn合金めっき層を有している。これらめっき層について、以下に詳細に説明する。
Znめっき層としては、Al:1以下を含むものである。めっき中のAl含有量を1%以下にしたのは、Al含有量が1%を超えると、めっき中に偏析したAlが局部電池を構成し、耐食性を劣化せしめるからである。
また、Zn合金めっき層としては、Fe:8〜15%、Al:1%以下を含むものである。めっき層中のFe含有量を8%以上としたのは、8%未満では、化成処理性(リン酸塩処理)塗膜密着性が良好となるからである。また、Fe含有量を15%以下としたのは、15%を超えると過合金となり、加工部のめっき密着性が劣化するからである。
また、めっき中のAl含有量を1%以下にしたのは、Al含有量が1%を超えると、めっき中に偏析したAlが局部電池を構成し、耐食性を劣化せしめるからである。
本発明でのZnめっき層およびZn合金めっき層は、以上のように、Al含有量、Fe含有量が規定され、残部は、主として、Znおよび不可避的不純物からなるものであるが、その他、例えば、耐食性改善のために、Mg、Si、Sn、Caを、それぞれ、5%以下添加してもよい。また、上記元素以外の元素、例えば、Mn、Pb、Sb、Ca、Mgなどを、めっき層の特性を阻害しない量の範囲で含有していてもよい。
また、Znめっき層とZn合金めっき層の厚みについては特に制約を設けないが、耐食性の観点から0.1μm以上、加工性の観点から15μm以下であることが望ましい。
【0029】
次に、本発明の溶融亜鉛めっき鋼板および本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法について説明する。
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板は、上記のような成分組成の冷延鋼板を650〜900℃の二相共存温度域で10秒〜6分焼鈍し、その後、2〜200℃/sの冷却速度で350〜500℃まで冷却し、必要に応じ、更に、該温度域で10分以下保持した後、溶融亜鉛めっきを施し、その後、5℃/s以上の冷却速度で250℃以下に冷却することにより得られるものである。
【0030】
また、本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、上記のような成分組成の冷延鋼板を650〜900℃の二相共存温度域で10秒〜6分焼鈍し、その後、2〜200℃/sの冷却速度で350〜500℃まで冷却し、必要に応じ、更に、該温度域で10分以下保持した後、溶融亜鉛めっきを施し、その後、450〜600℃の温度域で5秒〜2分保持し、次いで、5℃/s以上の冷却速度で250℃以下に冷却することにより得られるものである。
冷間圧延後の冷延鋼板の連続焼鈍では、まず、〔フェライト+オーステナイト〕の2相組織とするために、該冷延鋼板をAc1変態点以上Ac3変態点以下の温度域に加熱する。この時に、加熱温度が650℃未満であると、セメンタイトが再固溶するのに時間がかかり過ぎ、オーステナイトの存在量もわずかになるので、加熱温度の下限は650℃とした。
【0031】
一方、加熱温度が高すぎると、オーステナイトの体積率が大きくなり過ぎて、オーステナイト中のC濃度が低下するので、加熱温度の上限は900℃とした。この温度域での保持時間が短すぎると、未溶解炭化物が存在する可能性が高く、オーステナイトの存在量が少なくなる。また、保持時間を長くすると、結晶粒が粗大になり、その結果、最終的に残存するオーステナイト量が少なくなって、強度一延性バランスが悪くなる。よって、本発明では保持時間を10秒〜6分とした。
均熱後は、2〜200℃/sの冷却速度で350〜500℃まで冷却する。これは、二相域に加熱して生成させたオーステナイトをパーライトに変態させることなくベイナイト変態域に持ち越し、引き続く処理により、室温では残留オーステナイトとベイナイトとし、所定の特性を得ることを目的とする。この時の冷却速度が2℃/s未満では、冷却中にオーステナイトの大部分がパーライト変態をしてしまい、残留オーステナイトが確保されないことになる。また、冷却速度が200℃/sを超えると、冷却終点温度が幅方向、長手方向で大きくずれて、均一な鋼板を製造することができなくなる。
二相域からの冷却終点温度は溶融亜鉛めっき性の観点から求まる。溶融亜鉛めっき時の温度が低いと、めっき濡れ性が低下し、めっき密着性が劣化する。また、溶融亜鉛めっき時の温度が高くなると、めっき浴中でFeとZnの合金化反応が進行し、めっき中のFeの濃度が高くなる。よって、本発明では二相域からの冷却終点温度、かつ、溶融亜鉛めっきを行う温度は350℃〜500℃とした。
また、溶融亜鉛めっきを施す前に、必要に応じて、350〜500℃の温度域で10分以下保持する。溶融亜鉛Znめっき前に温度保持をすることでベイナイト変態を進行させ、Cの濃縮した残留オーステナイトを安定化させることができ、より安定して強度、伸びの両立した鋼板を製造することができる。
2相域からの冷却終点温度が500℃を超えると、その後の温度保持でオーステナイトの炭化物への分解が起こり、オーステナイトが残存し難くなる。また、冷却終点温度が350℃未満になると、オーステナイトの大半がマルテンサイトに変態し、高強度にはなるもののプレス成形性が悪化する傾向となり、また、Znめっき時に鋼板温度を上げる必要がでてきて、熱エネルギーの点で非効率となる。
【0032】
従って、温度保持する場合の温度は350〜500℃とする。保持時間が10分を超えると、Znめっき後の加熱で炭化物析出と未変態オーステナイトが消失し、その結果、強度とプレス成形性の両方が劣化する傾向にあるので、温度保持を行う場合には、保持時間を10分以下とする。
溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合には、溶融亜鉛めっき後、5℃/s以上の冷却速度で250℃以下に冷却する。ここで、Znめっき時にベイナイト変態を進行させ、炭化物をほとんど含まないベイナイト、その部分から掃き出されたCが濃化しMs点が室温以下に低下した残留オーステナイトおよび、二相域加熱中に清浄化が進んだフェライトが混在した組織を現出させる。この組織が、高強度と成形性を両立させている。
そのため、温度保持後の冷却速度を5℃未満としたり、冷却終点温度を250℃超とすると、冷却中にCの濃化したオーステナイトも炭化物を析出してベイナイトに分解するので、変態誘起塑性により加工性を改善する残留オーステナイトの量が減少してしまい、本発明の目的を達し得ない。残留オーステナイトをより多く残存させるためには、溶融亜鉛めっき後の保持温度を350℃〜400℃とし、保持時間を5分以内とすることが望ましい。
また、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合には、溶融亜鉛めっき後、450℃〜600℃の温度域で5秒〜2分保持し、その後、5℃/s以上の冷却速度で250℃以下に冷却する。この条件は、FeとZnの合金化反応と、鋼板組織適正化の観点から決定される。
【0033】
本発明鋼では、SiやAlを含んでいて、オーステナイトからベイナイトへの変態が二段階に分離することを活用し、炭化物をほとんど含まないベイナイト、その部分から掃き出されたCが濃化しMs点が室温以下に低下した残留オーステナイト、および、二相域加熱中に清浄化が進んだフェライトが混在した組織を現出させ、高強度と成形性を両立させている。保持温度が600℃を超えるとパーライトが生成して残留オーステナイトが含まれなくなり、また、合金化反応が進みすぎ、めっき中のFe濃度が12%を超えてしまう。
一方、加熱温度が450℃以下になると、めっきの合金化反応速度が遅くなり、めっき中のFe濃度が低くなる。
【0034】
また、保持時間が5秒以下では、ベイナイトが充分に生成せず、未変態のオーステナイト中へのC濃化も不充分となり、冷却中にマルテンサイトが生成し成形性が劣化し、同時に、めっきの合金化反応が不充分になる。
また、保持時間が2分以上になると、めっきの過合金化が生じ、成形時にめっき剥離などが生じやすくなる。さらに、保持後の冷却速度を5℃/s未満としたり、冷却終点温度を250℃超とすると、ベイナイト変態がさらに進み、前段の反応でCの濃化したオーステナイトも炭化物を析出してベイナイトに分解し、変態誘起塑性により加工性を改善する残留オーステナイトの量が減少してしまうので、本発明の目的を達し得ない。
溶融亜鉛めっき温度は、めっき浴の融点以上500℃以下が望ましい。これは、500℃を超えるとめっき浴からの蒸気が多大になり操業性が悪化するからである。また、めっき後の保持温度までの加熱速度については特に制限する必要はないが、めっき組織や金属組織の観点から3℃/s以上が望ましい。
【0035】
なお、以上説明した工程における各温度、冷却温度は規定の範囲内であれば一定である必要はなく、その範囲内で変動しても、最終製品の特性は劣化しないし、かえって向上する場合もある。また、本発明で用いる素材は、通常の製鉄工程の精錬、鋳造、熱延、冷延工程を経て製造したものであるが、その一部あるいは全部を省略して製造したものであっても問題はない。また、上記工程の各条件についても特に制限されるものではない。
また、めっき密着性をさらに向上させるために、焼鈍前に、鋼板にNi、Cu、Co、Feの単独あるいは複合めっきを施してもよい。さらに、めっき密着性を向上させるために、鋼板焼鈍時の雰囲気を適宜、調節してもよい。例えば、雰囲気中で、初め鋼板表面を酸化させ、その後還元することにより、めっき前の鋼板表面の清浄化を行ってもよい。さらに、めっき密着性を改善するために、焼鈍前に鋼板を酸洗し、あるいは、研削して鋼板表面の酸化物を取り除いても、本発明の趣旨を損なうものではない。これら処理をすることで、めっき密着性だけでなく合金化も促進される。
【0036】
【実施例】
表1に成分組成を示した鋼を1250℃に再加熱し、その後、900℃で仕上げ圧延をし、650℃で捲取り、板厚4mmの熱間圧延鋼板を作製した。熱間圧延鋼板の表面スケールを塩酸で除去した後に、板厚1.4mmまで冷間圧延を行った。この冷間圧延鋼板を、表2および表3(表2の続き)に示す条件で焼鈍、めっきを行い、その後、0.5%で調質圧延した。製造した鋼板は、下記に示す「引張り試験」、「残留オーステナイト測定試験」、「溶接試験」、「めっき外観」、「めっき密着性」および「めっき層中濃度測定」の試験を行った。なお、めっき付着量が片面50g/m2になるように両面ともめっきした。
「引張り試験」は、C方向にJIS 5号引張試験片を採取し、ゲージ厚さ50mm、引張速度10mm/minで、常温引張り試験を行った。
「残留オーステナイト測定試験」は、表層より板厚の1/4内層を化学研磨した後、Mo管球を用いたX線回折で、α−Feとγ−Feの強度から求める5ピーク法と呼ばれる方法で行った。
「溶接試験」は、溶接電流:10kA、加圧力:220kg、溶接時間:12サイクル、電極径:6mm、電極形状:ドーム型、先端6φ−40Rの溶接条件でスポット溶接を行い、ナゲット径が4√t(t:板厚)を切った時点までの連続打点数を評価した。評価基準は、○:連続打点1000点超、△:連続打点500〜1000点、×:連続打点500点未満とした。ここでは、○を合格とし、△・×は不合格とした。
「めっき外観」は、めっき鋼板の外観から不めっき発生状況を目視判定し、下記の基準に従い評価した。○:5個/dm2以下、△:6〜15個/dm2、×:16個/dm2以上。ここでは、○を合格とし、△・×は不合格とした。
「めっき密着性」は、めっき鋼板の60度V曲げ試験を実施した後、テープテストを行い、以下の基準に従い評価した。
テープテスト黒化度(%)
評価:◎ … 0〜10
評価:○ … 10〜20未満
評価:△ … 20〜30未満
評価:× … 30以上
(◎と○が合格、△・×は不合格)
「めっき層中濃度測定」は、アミン系インヒビターを入れた5%塩酸でめっき層を溶かした後、ICP発光分析法で測定した。
性能評価試験結果を表4および表5(表4の続き)に示す。発明例である試料1〜13は、いずれも、引張強度が550MPa以上でありながら、全伸びも30%以上であり、高強度とプレス成形性の良好さを両立していると同時に、めっき密着性も満足している。
【0037】
これに対し、比較例である試料14では、C濃度が低いため、同試料15ではC濃度が高いため、同試料16ではSi濃度が低いため、同試料17ではSi濃度が高いため、同試料18および19ではSiとAlの関係が満たされていないため、同試料20ではMnが低いため、同試料21ではMn濃度が高いため、同試料22ではAl濃度が高いため、同試料23ではSn濃度が低いために、本発明の目的を達成し得ない。
また、本発明鋼であっても、処理条件の一つが、本発明で規定する範囲からはずれていると、比較例である試料24〜48のように強度−延性バランスか、または、めっき密着性が悪くなり、本発明の目的を達成し得ない。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
【表5】
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、プレス成形性およびめっき密着性の優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板および高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板を効率よく製造し、提供することができる。
Claims (18)
- 鋼成分として、質量%で、
C:0.05〜0.2%、
Si:0.2〜2.0%、
Mn:0.2〜2.5%、
Al:0.01〜1.5%、
Sn:0.003〜1.0%、
Ni:0.11%以下(0を含まない)、
Cu:2.0%以下(0を含まない)
を含有し、かつ、SiとAlの関係が、
0.4(%)≦Si(%)+0.8Al(%)≦2.0(%)
を満足し、残部不可避的不純物を含むFeからなり、残留オーステナイトの体積率が2〜20%である鋼板の上に、Fe:8〜15%、Al:1%以下を含み、残部がZn及び不可避的不純物よりなる合金化溶融亜鉛めっき層を有することを特徴とするめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。 - 鋼成分として、更に、質量%で、Co:0.3%未満を含むことを特徴とする請求項1記載のめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
- 鋼成分として、更に、質量%で、(a)Mo:0.5%未満、Cr:1.0%未満、V:0.3%未満、Ti:0.06%未満、Nb:0.06%未満、B:0.01%未満のうちの少なくとも1種以上、(b)REM:0.3%未満、Ca:0.3%未満、Zr:0.3%未満、Mg:0.3%未満のうちの少なくとも1種以上、(c)Sb:0.3%未満、Bi:0.3%未満のうちの少なくとも1種以上、の成分群のうちの少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする請求項1または2記載のめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
- 合金化溶融亜鉛めっき層の成分として、更に、Mg、Si、Sn、Caの1種以上を合計5%以下含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
- 質量%で、
C:0.05〜0.2%、
Si:0.2〜2.0%、
Mn:0.2〜2.5%、
Al:0.01〜1.5%、
Sn:0.003〜1.0%、
Ni:0.11%以下(0を含まない)、
Cu:2.0%以下(0を含まない)
を含有し、かつ、SiとAlの関係が、
0.4(%)≦Si(%)+0.8Al(%)≦2.0(%)
を満足し、残部不可避的不純物を含むFeからなり、残留オーステナイトの体積率が2〜20%である鋼板の上に、Al:1%以下を含み、残部がZn及び不可避的不純物よりなる溶融亜鉛めっき層を有することを特徴とするめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。 - 鋼成分として、更に、質量%で、Co:0.3%を含むことを特徴とする請求項5記載のめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- 鋼成分として、更に、質量%で、(a)Mo:0.5%未満、Cr:1.0%未満、V:0.3%未満、Ti:0.06%未満、Nb:0.06%未満、B:0.01%未満のうちの少なくとも1種以上、(b)REM:0.3%未満、Ca:0.3%未満、Zr:0.3%未満、Mg:0.3%未満のうちの少なくとも1種以上、(c)Sb:0.3%未満、Bi:0.3%未満のうちの少なくとも1種以上、の成分群のうちの少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする請求項5または6記載のめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- 溶融亜鉛めっき層の成分として、更に、Mg、Si、Sn、Caの1種以上を合計5%以下含むことを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- 質量%で、
C:0.05〜0.2%、
Si:0.2〜2.0%、
Mn:0.2〜2.5%、
Al:0.01〜1.5%、
Sn:0.003〜1.0%、
Ni:0.11%以下(0を含まない)、
Cu:2.0%以下(0を含まない)
を含有し、かつ、SiとAlの関係が、
0.4(%)≦Si(%)+0.8Al(%)≦2.0(%)
を満足し、残部不可避的不純物を含むFeからなる冷延鋼板を650〜900℃の二相共存温度域で10秒〜6分焼鈍し、その後、2〜200℃/sの冷却速度で350〜500℃まで冷却し、溶融亜鉛めっきを施し、その後、450〜600℃の温度域で5秒〜2分保持し、次いで、5℃/s以上の冷却速度で250℃以下に冷却することにより、上記鋼板中に残留オーステナイトを体積率で2〜20%含ませ、かつ、上記鋼板の上にFe:8〜15%、Al:1%以下を含み、残部がZn及び不可避的不純物よりなる合金化溶融亜鉛めっき層を形成することを特徴とするめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 - 質量%で、
C:0.05〜0.2%、
Si:0.2〜2.0%、
Mn:0.2〜2.5%、
Al:0.01〜1.5%、
Sn:0.003〜1.0%、
Ni:0.11%以下(0を含まない)、
Cu:2.0%以下(0を含まない)
を含有し、かつ、SiとAlの関係が、
0.4(%)≦Si(%)+0.8Al(%)≦2.0(%)
を満足し、残部不可避的不純物を含むFeからなる冷延鋼板を650〜900℃の二相共存温度域で10秒〜6分焼鈍し、その後、2〜200℃/sの冷却速度で350〜500℃まで冷却し、該温度域で10分以下保持した後、溶融亜鉛めっきを施し、その後、450〜600℃の範囲の温度域で5秒〜2分保持し、次いで、5℃/s以上の冷却速度で250℃以下に冷却することにより、上記鋼板中に残留オーステナイトを体積率で2〜20%含ませ、かつ、上記鋼板の上にFe:8〜15%、Al:1%以下を含み、残部がZn及び不可避的不純物よりなる合金化溶融亜鉛めっき層を形成することを特徴とするめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 - 鋼成分として、更に、質量%で、Co:0.3%未満を含むことを特徴とする請求項9または10記載のめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 鋼成分として、更に、質量%で、(a)Mo:0.5%未満、Cr:1.0%未満、V:0.3%未満、Ti:0.06%未満、Nb:0.06%未満、B:0.01%未満のうちの少なくとも1種以上、(b)REM:0.3%未満、Ca:0.3%未満、Zr:0.3%未満、Mg:0.3%未満のうちの少なくとも1種以上、(c)Sb:0.3%未満、Bi:0.3%未満のうちの少なくとも1種以上、の成分群のうちの少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする請求項9、10または11記載のめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 合金化溶融亜鉛めっき層の成分として、更に、Mg、Si、Sn、Caの1種以上を合計5%以下含むことを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載のめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 質量%で、
C:0.05〜0.2%、
Si:0.2〜2.0%、
Mn:0.2〜2.5%、
Al:0.01〜1.5%、
Sn:0.003〜1.0%、
Ni:0.11%以下(0を含まない)、
Cu:2.0%以下(0を含まない)
を含有し、かつ、SiとAlの関係が、
0.4(%)≦Si(%)+0.8Al(%)≦2.0(%)
を満足し、残部不可避的不純物を含むFeからなる冷延鋼板を650〜900℃の二相共存温度域で10秒〜6分焼鈍し、その後、2〜200℃/sの冷却速度で350〜500℃まで冷却し、溶融亜鉛めっきを施し、その後、5℃/s以上の冷却速度で250℃以下に冷却することにより、上記鋼板中に残留オーステナイトを体積率で2〜20%含ませ、かつ、上記鋼板の上にAl:1%以下を含み、残部がZn及び不可避的不純物よりなる溶融亜鉛めっき層を形成することを特徴とするめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 - 質量%で、
C:0.05〜0.2%、
Si:0.2〜2.0%、
Mn:0.2〜2.5%、
Al:0.01〜1.5%、
Sn:0.003〜1.0%、
Ni:0.11%以下(0を含まない)、
Cu:2.0%以下(0を含まない)
を含有し、かつ、SiとAlの関係が、
0.4(%)≦Si(%)+0.8Al(%)≦2.0(%)
を満足し、残部不可避的不純物を含むFeからなる冷延鋼板を650〜900℃の二相共存温度域で10秒〜6分焼鈍し、その後、2〜200℃/sの冷却速度で350〜500℃まで冷却し、該温度域で10分以下保持した後、溶融亜鉛めっきを施し、その後、5℃/s以上の冷却速度で250℃以下に冷却することにより、上記鋼板中に残留オーステナイトを体積率で2〜20%含ませ、かつ、上記鋼板の上にAl:1%以下を含み、残部がZn及び不可避的不純物よりなる溶融亜鉛めっき層を形成することを特徴とするめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 - 鋼成分として、更に、質量%で、Co:0.3%を含むことを特徴とする請求項14または15記載のめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 鋼成分として、更に、質量%で、(a)Mo:0.5%未満、Cr:1.0%未満、V:0.3%未満、Ti:0.06%未満、Nb:0.06%未満、B:0.01%未満のうちの少なくとも1種以上、(b)REM:0.3%未満、Ca:0.3%未満、Zr:0.3%未満、Mg:0.3%未満のうちの少なくとも1種以上、(c)Sb:0.3%未満、Bi:0.3%未満のうちの少なくとも1種以上、の成分群のうちの少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする請求項14、15または16記載のめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 溶融亜鉛めっき層の成分として、更に、Mg、Si、Sn、Caの1種以上を合計5%以下含むことを特徴とする請求項14〜17のいずれか1項に記載のめっき密着性およびプレス成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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