JP4718534B2 - Fischer比低下抑制剤 - Google Patents
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Description
精神的ストレスは、循環系、免疫系等に大きな影響を及ぼすとされている。しかし、ストレスの科学的概念及び定義は未だ明確でない点もあり、更に方法論的困難性も相俟って、ストレスの評価に関しては多くの問題が残されているが、近年、医学的見地からの検討がなされている。
例えば、ストレスを受けるとアンジオテンシンII等が増加し、ナトリウム再吸収による体内ナトリウムが過剰となり、血圧の上昇を引き起こすことが報告されている(非特許文献1)。さらに、このような知見を基に、高血圧治療薬として使用されているアンジオテンシン変換酵素阻害剤であるエナラプリル及びアラセプリルのストレスによる高血圧に対する効果が研究されている(非特許文献2)。しかし、ストレスの負荷は血圧の上昇を引き起こすのみではなく、様々な因子に影響を与え、高血圧の他に消化性潰瘍、虚血性心疾患、脳血管障害、高脂血症等の要因ともなると考えられている。従って、ストレスは高血圧の原因因子の一つであるとは考えられているが、逆に単に血圧の上昇を抑制させることによって抗ストレス効果が得られるとは考えられていない。
また本発明によれば、Ile−Pro−Pro及び/又はVal−Pro−Proを有効成分として含むストレス負荷によるFischer比低下抑制剤が提供される。
前記トリペプチドを得る方法としては、微生物による発酵法、酵素加水分解法又は化学的合成法等を用いることができる。
前記微生物による発酵法は、配列Ile−Pro−Pro及び/又はVal−Pro−Proを含むペプチド及び/又は蛋白質を含む培地中で乳酸菌を培養することにより行うことができる。
本発明の剤は、前記トリペプチドの他に、糖類、蛋白質、脂質、ビタミン、ミネラル、香料、色素等の他の添加剤を含むことができる。
本発明の剤の有効投与量は、ヒトにおいて本発明の効果を得るためには、前記トリペプチドとして、例えば経口投与の場合は通常0.1〜40mg/体重kg・日の範囲とすることができるが、これを超える量を投与してもよい。
製造例1
脱脂粉乳9gを水100gに溶解し、115℃、20分間殺菌した後、室温まで冷却してラクトバチルス・ヘルベティカスATCC−8205を1白金耳接種し、37℃で24時間培養を行って、1次スターター(乳酸菌数5×108個/ml、pH3.5)を調製した。次いで、90℃達温殺菌した脱脂乳(固形分9重量%)2kgに、1次スターターを80g接種した後に、37℃、24時間培養を行い、これを2次スターターとした。次に、脱脂粉乳4.5kgを水50kgに溶解し、90℃達温殺菌した後室温まで冷却して、前記2次スターターを2kg接種し、37℃で24時間培養を行い、発酵乳56kgを得た。得られた発酵乳中には、全量中の含有量としてIPPが5.4mg、VPPが9.5mgの割合で含有されていた。
製造例1にて得られた発酵乳6kgを10N水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH7.3に調整した後、イオン交換樹脂(商品名Amberlite XAD-2、オルガノ社製)1リットルを加え、更に蒸留水を加えて全量を20kgとした。撹拌器にて90分間撹拌後、吸引濾過器により樹脂を濾別し、濾過器フィルター上の樹脂を蒸留水20kgにて洗浄した後に樹脂を回収した。この回収樹脂にメタノール0.8kgを加えて撹拌器にて30分間撹拌した。次にナイロンウール(200メッシュ)を用いて濾過し、さらに硬質濾紙で吸引濾過後、濾液をエバポレーターにて55℃、減圧濃縮し精製濃縮液200gを得た。この精製濃縮液にイオン交換樹脂(商品名Amberlite IRA-400(OH型)、オルガノ社製)250mlを加え、10分間撹拌した後に、硬質濾紙にて吸引濾過して得られた濾液を1N塩酸溶液にてpH7に調整後、真空凍結乾燥した。得られた精製乾燥物を5mlの蒸留水にて均一に溶解し、カラム(商品名Sephadex G-25、ファルマシア社製)に供し、蒸留水にて溶出し、トリペプチド溶出画分を回収し、真空凍結乾燥してトリペプチド精製画分粉末50mgを得た。この精製画分粉末50mg中には、IPPが0.6mg、VPPが1.0mg含有されていた。
IPP、VPPを以下に示す有機化学合成法により合成した。合成は島津製作所製のペプチド自動合成装置(PSSM−8型)を用いた固相法によって行った。固相担体としてベンジルオキシベンジルアルコールタイプのポリスチレン樹脂であって、アミノ基をフルオレニルメトキシカルボニル基(以下Fmocと略す)で保護されたプロリンが結合した樹脂20μmolを使用した。前記アミノ酸配列に従って、アミノ基がFmoc基で保護されたFmoc−Ile、Fmoc−Pro及びFmoc−Valを100μmolづつ、常法に従い、ペプチド配列通り順次反応させてペプチド結合樹脂を得た。次にこのペプチド結合樹脂を1mlの反応液(1重量%エタンジチオール、5重量%アニソール、94重量%トリフルオロ酢酸)に懸濁し、室温で2時間反応させてペプチドを樹脂から切離し、同時に側鎖保護基を外した。次に反応混合液をガラスフィルターで濾過した後、無水エーテル10mlを加えて精製したペプチドを沈殿させて、3000回転、5分間遠心して分離した。その沈殿を無水エーテルにて数回洗浄した後、窒素ガスを吹き付けて乾燥した。このようにして得られた未精製の合成ペプチド全量を、0.1N塩酸水溶液2mlに溶解した後に、全量を、以下の条件に従いC18の逆層カラムを用いたHPLCで、以下の条件に従って精製した。
検出機:形式L4000UV検出器(日立製作所)にて215nmの紫外部吸収を検出
カラム:マイクロボンダスフェアー5μC18(ウォーターズ社製)
溶出液:A液;0.1重量%TFA水溶液、B液;0.1重量%TFA入りアセトニトリル(B/A+B)×100(%):0→40%(60分)
流速:1ml/分
最大吸収を示した溶出画分を分取し、これを凍結乾燥することにより目的とする合成ペプチドIPP及びVPPをそれぞれ2.1g、0.9mg得た。精製ペプチドを全自動タンパク質一次構造分析装置(形式PPSQ−10、島津製作所製)により、ペプチドのN末端から分析し、さらにアミノ酸分析装置(形式800シリーズ、日本分光社製)にて分析した結果、設計通りであることが確認できた。
雄ウィスター系ラット(体重300g程度)24匹を、1週間予備飼育した。予備飼育期間中及び実験期間中は、固形飼料(商品名CE−2、日本クレア製)を制限食として与え、水は自由摂取とした。
予備飼育終了後、ラットを(1)ストレス無負荷−生理食塩水投与群、(2)ストレス負荷−生理食塩水投与群、(3)ストレス負荷−VPP、IPP投与群の3群に分け(各群8匹)、(2)群及び(3)群の動物に、低温室(4℃)に1日につき4時間入れる寒冷ストレスを9日間負荷した。
10日目に、試料として、(1)及び(2)群のラットには生理食塩水1mlを、(3)群には製造例3の方法により合成したIPP及びVPPを各3mg/kg体重の濃度になるように溶解した生理食塩水1mlを、経口ゾンデにて胃内に強制投与した。投与後、(2)群及び(3)群のラットに4時間の寒冷ストレスを負荷し、ストレス負荷終了の2時間後に、無加温、非観血値的ラット血圧計(形式:PE−300型、シーエスアイ社製)を用いてtail-cuff法にて、各群のラットの血圧を測定した。
血圧の測定結果を表1に示す。表1に示すように、ストレスを負荷した(2)群では、ストレスを負荷していない(1)群に比べ、収縮期血圧、拡張期血圧共に高くなっていた。VPP及びIPPを投与した(3)群では、生理食塩水を投与した(2)群に比べ、収縮期血圧、拡張期血圧共に低くなっており、血圧の値がストレスを負荷していない(1)群に近くなっていた。
雄ウィスター系ラット(体重300g程度)24匹を1週間予備飼育した。予備飼育期間中及び実験期間中においては、固形試料(CE−2、日本クレア製)を制限食にて与え、水は自由摂取とした。
予備飼育終了後、ラットを(1)生理食塩水投与群、(2)VPP投与群及び(3)IPP投与群の3群に分けた(各群8匹)。(1)群−(3)群のラットを、実施例4と同様に低温室(4℃)に1日につき4時間入れ、9日間寒冷ストレスを負荷した。
10日目に、試料として、(1)群は生理食塩水1mlを、並びに(2)群及び(3)群にはそれぞれ製造例3の方法により合成したVPP 3mg/kg体重又はIPP 3mg/kg体重となるよう溶解した生理食塩水1mlを、経口ゾンデにて胃内に強制投与した。投与後、(1)群−(3)群のラットについて、参考例1と同様に4時間の寒冷ストレスを負荷し、血圧を測定した。
血圧の測定結果を表3に示す。表3に示すように、トリペプチドを投与した(2)及び(3)群では、生理食塩水を投与した(1)群に比べ、収縮期血圧、拡張期血圧共に有意に低くなっており、トリペプチドを投与することによりストレス負荷後における血圧上昇を抑制する効果が得られることが認められた。
試料として、(1)群は生理食塩水2mlを、並びに(2)群及び(3)群にはそれぞれ実施例1で得た発酵乳5ml/kg体重又は実施例2で得たトリペプチド精製画分粉末150mg/kgを生理食塩水に溶解し2mlとしたものを用いた他は実施例5と同様に試験を行い、試料投与、ストレス負荷後に血圧を測定した。
血圧の測定結果を表4に示す。表4に示す通り、発酵乳を投与した(2)群及びトリペプチド精製画分粉末を投与した(3)群と、生理食塩水を投与した(1)群とを比べると、収縮期血圧、拡張期血圧ともに(1)群より(2)群及び(3)群の方が低くなっており、発酵乳及びトリペプチド精製画分を投与することにより、ストレス負荷後における血圧上昇を抑制する効果が得られることが認められた。
雄ウィスター系ラット(体重300g程度)24匹を1週間予備飼育した。予備飼育期間中は、固形飼料(商品名CE−2、日本クレア製)を制限食として与え、水は自由摂取とした。
予備飼育終了後、ラットを(1)ストレス無負荷−生理食塩水投与群、(2)ストレス負荷−生理食塩水投与群、(3)ストレス負荷−VPP、IPP投与群の3群に分け(各群8匹)、(2)群及び(3)群の動物に、金網拘束ケージに入れ呼吸ができるように頭部が水面から出るようにして頭部より下を25℃の水槽に浸すことにより、水浸拘束ストレスを1日について6時間、5日間連続して負荷した。ストレス負荷期間中は、固形飼料(商品名CE−2、日本クレア製)及び水を自由摂取させた。
各ラットには、ストレス負荷開始日より負荷終了日まで5日間連続して試料を投与した。試料としては、(1)及び(2)群には生理食塩水1mlを、(3)群には実施例3の方法により合成したIPP及びVPPを各3mg/kg体重の濃度になるように溶解した生理食塩水1mlを、経口ゾンデにて胃内に強制投与した。
ストレス負荷2日目から3日目にかけて代謝ケージにて尿を採取し、尿中のカテコールアミン、インドールアミンを、HPLCを用いて分析した。カラムは日本分光社製シリカ逆層カラム(商品名「カテコールパック」)を、検出装置はesa社製電気化学検出器(商品名「クーロケム」)を使用した。
ストレス負荷最終日のストレス負荷終了後、断頭によりマウスを屠殺し血液を採取し、胸腺及び脾臓を摘出した。血清については、アミノ酸分析装置(形式800シリーズ、日本分光社製)にてアミノ酸組成を測定し、Fischer比(分枝鎖アミノ酸/芳香族アミノ酸のモル比)を算出した。胸腺及び肝臓は重量を測定し、脾臓については以下の方法により脾臓細胞を調製し、脾臓細胞のインターロイキン2産生能及びマイトジェン反応性を測定した。
摘出した脾臓をホモジェナイザーで細かく破砕し、低張処理することによって赤血球を除去し、2%牛胎児血清(FCS)含有MEMで洗浄後、10%FCS含有RPM1640培地に細胞数が1×107となるように浮遊させ、遊離浮遊細胞液を作成した。
(インターロイキン2産生能の測定)
調製した前記脾臓細胞2.5×106個、コンカナバリンA(ConA)5μg/ml、及び10%FCSを含むRPM1640培地を調製し、24時間培養し、その上清中のインターロイキン2量を測定した。インターロイキン2量はインターロイキン2反応性細胞株の増殖を指標としたバイオアッセイにより測定した。
(マイトジェン反応性)
ConA又はポークウィートマイトジェン(PWM)をマイトジェンとし、これらのいずれか一方の5μg/ml、調製した前記脾臓細胞5×106個、及び10%FCSを含むRPM 1640培地を調製し、24時間培養し、24時間後の細胞数をMTT(3-(4,5-dimethylthiazoil-2 -yl)-2,5-diphenyltetrazoliumbromide)の取り込みを指標とした吸光度により測定し、マイトジェンを含まない時の細胞数に対する比率で表した。
Claims (2)
- Ile−Pro−Pro及び/又はVal−Pro−Proを有効成分として含むFischer比低下抑制剤。
- Ile−Pro−Pro及び/又はVal−Pro−Proを有効成分として含むストレス負荷によるFischer比低下抑制剤。
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