図1は、本発明の第1の実施の形態である弾性表面波素子10を示す平面図である。弾性表面波素子10は、圧電基板11、第1フィルタ13、第2フィルタ14および環状電極15を含んで構成される。
圧電基板11は、圧電基板11の厚み方向に垂直な仮想平面に投影した形状が長方形状に形成される。以下の実施の形態において、圧電基板11の長手方向、幅方向および厚み方向を、それぞれ長手方向X、幅方向Yおよび厚み方向Zと定義する。長手方向X、幅方向Yおよび厚み方向Zは、互いに直交する3次元の直交座標系を構成する。図1では、圧電基板11の長手方向、幅方向および厚み方向を、それぞれX、YおよびZと表記する。以下の圧電基板11の説明において、圧電基板11の長手方向Xの2つの端部をそれぞれ第1端部X1および第2端部X2といい、圧電基板11の幅方向Yの2つの側部をそれぞれ第1側部Y1および第2側部Y2といい、圧電基板11の厚み方向Zの2つの表面部をそれぞれ第1表面部Z1および第2表面部Z2という。
第1フィルタ13、第2フィルタ14および環状電極15は、圧電基板11の第1表面部Z1に形成される。第1フィルタ13は、圧電基板11の長手方向X中央部よりも第1端部X1寄りの位置に形成される。第2フィルタ14は、圧電基板11の長手方向X中央部よりも第2端部X2寄りの位置に形成される。
第1フィルタ13は、第1共振子群16、第1入力電極17、第1出力電極18、第1接地電極19および接続電極12を含む。第1共振子群16は、第1直列共振子21、第2直列共振子22、第3直列共振子23、第4直列共振子24、第5直列共振子25、第1並列共振子27、第2並列共振子28および第3並列共振子29を含む。第1フィルタ13は、弾性表面波(Surface Acoustic Wave;略称:SAW)フィルタによって実現される。
さらに述べると、第1〜第5直列共振子21〜25および第1〜第3並列共振子27〜29は、SAWを励振するインターディジタルトランスデューサ(Inter-digital
Transducer;略称:IDT)電極31と、SAWの伝搬方向に沿ってIDT電極31の両端に配設される反射器32とを含んで構成されるSAW共振子によって実現される。IDT電極31は、各々が帯状の共通電極と該共通電極に対して直交する方向に延びる複数の電極指とによって形成される一対の櫛歯状電極を、その共通電極同士が平行に配置され、かつ両共通電極の対向領域内で櫛歯状電極の電極指がSAWの伝搬方向に交互に配置されるように、かみ合わせた状態で対向配置させて構成される。
IDT電極31は、外部から所定の電力が印加されると、圧電基板11の第1表面部Z1に電極指の配列ピッチに対応した所定のSAWを発生する作用を有している。反射器は、IDT電極31の形成領域内で発生するSAWを一対の反射器の間に閉じ込めて定在波を良好に発生させるために設けられる。第1〜第5直列共振子21〜25および第1〜第3並列共振子27〜29は、圧電基板11の長手方向Xに平行に延びるように形成される。
第1〜第5直列共振子21〜25は、第1端部X1と長手方向X中央部との中間であって長手方向X中央部寄りの位置に形成される。さらに述べると、第1直列共振子21は、第1側部Y1と幅方向Y中央部との中間であって第1側部Y1寄りの位置に形成される。第2直列共振子22は、第1側部Y1と幅方向Y中央部との中間であって幅方向Y中央部寄りの位置に形成される。第3直列共振子23は、幅方向Y中央部と第2側部Y2との中間であって幅方向Y中央部寄りの位置に形成される。第4直列共振子24は、幅方向Y中央部と第2側部Y2との中間であって第2側部Y2寄りの位置に形成される。第5直列共振子25は、幅方向Y中央部と第2側部Y2との中間であって第4直列共振子24よりも第2側部Y2寄りの位置に、第4直列共振子24と幅方向Yに予め定める間隔をあけて形成される。
第1〜第3並列共振子27〜29は、第1端部X1と長手方向X中央部との中間であって第1端部X1寄りの位置に形成される。さらに述べると、第1並列共振子27は、第1側部Y1と幅方向Y中央部との中間であって第1側部Y1寄りの位置に、第1直列共振子21および第2直列共振子22と幅方向Yにそれぞれ予め定める間隔をあけて形成される。第2並列共振子28は、幅方向Y中央部に、第2直列共振子22および第3直列共振子23と幅方向Yにそれぞれ予め定める間隔をあけて形成される。第3並列共振子29は、幅方向Y中央部と第2側部Y2との中間であって幅方向Y中央部寄りの位置に、第3直列共振子23および第4直列共振子24と幅方向Yにそれぞれ予め定める間隔をあけて形成される。第1共振子群16は、接続電極12によって導通接続されている。
第1入力電極17は、接続電極12に連なる導体膜と、この導体膜に形成される第1入力パッド電極17aとを含む。第1入力パッド電極17aは、圧電基板11の厚み方向Zに垂直な仮想平面に投影した形状が円形状に形成される。第1入力パッド電極17aは、第1端部X1と長手方向X中央部との中間であって第1端部X1寄りで、かつ幅方向Y中央部と第2側部Y2との中間であって第2側部Y2寄りの位置に形成される。
第1出力電極18は、接続電極12に連なる導体膜と、この導体膜に形成される第1出力パッド電極18aとを含む。第1出力パッド電極18aは、圧電基板11の厚み方向Zに垂直な仮想平面に投影した形状が半円形状に形成される。第1出力パッド電極18aは、長手方向X中央部で、かつ第1側部Y1と幅方向Y中央部との中間であって第1側部Y1寄りの位置に形成される。さらに述べると第1出力パッド電極18aは、後述する第2入力パッド電極36aと長手方向Xに予め定める間隔をあけて、第2入力パッド電極36aよりも第1端部X1寄りの位置に形成される。
第1接地電極19は、接続電極12に連なる導体膜と、この導体膜に形成される第1接地パッド電極19aとを含む。第1接地パッド電極19aは、圧電基板11の厚み方向Zに垂直な仮想平面に投影した形状が円形状に形成される。第1接地パッド電極19aは、第1端部X1と長手方向X中央部との中間であって第1端部X1寄りで、かつ第1側部Y1と幅方向Y中央部との中間であって幅方向Y中央部寄りの位置に形成される。
第2フィルタ14は、第2共振子群35、第2入力電極36、第2出力電極37、第2接地電極38および接続電極12を含む。第2共振子群35は、第6直列共振子41、第7直列共振子42、第8直列共振子43、第9直列共振子44、第4並列共振子46、第5並列共振子47および第6並列共振子48を含む。第2フィルタ14は、SAWフィルタによって実現される。さらに述べると、第6〜第9直列共振子41〜44および第4〜第6並列共振子46〜48は、前記SAW共振子によって実現され、圧電基板11の長手方向Xに平行に延びるように形成される。
第6〜第9直列共振子41〜44は、長手方向X中央部と第2端部X2との中間であって長手方向X中央部寄りの位置に形成される。さらに述べると、第6直列共振子41は、第1側部Y1と幅方向Y中央部との中間であって第1側部Y1寄りの位置に形成される。第7直列共振子42は、第1側部Y1と幅方向Y中央部との中間であって第6直列共振子41よりも幅方向Y中央部寄りの位置に、第6直列共振子41と幅方向Yに予め定める間隔をあけて形成される。第8直列共振子43は、幅方向Y中央部に形成される。第9直列共振子44は、幅方向Y中央部と第2側部Y2との中間であって第2側部Y2寄りの位置に形成される。
第4および第5並列共振子46,47は、長手方向X中央部と第2端部X2との中間であって第2端部X2寄りの位置に形成される。第6並列共振子48は、長手方向X中央部と第2端部X2との中間であって長手方向X中央部寄りの位置に形成される。さらに述べると、第4並列共振子46は、第1側部Y1と幅方向Y中央部との中間であって幅方向Y中央部寄りの位置に、第7および第8直列共振子42,43と幅方向Yにそれぞれ予め定める間隔をあけて形成される。第5並列共振子47は、幅方向Y中央部と第2側部Y2との中間であって幅方向Y中央部寄りの位置に、第8直列共振子43および第9直列共振子44と幅方向Yにそれぞれ予め定める間隔をあけて形成される。第6並列共振子48は、幅方向Y中央部と第2側部Y2との中間であって幅方向Y中央部寄りの位置に、第8および第9直列共振子43,44と幅方向Yにそれぞれ予め定める間隔をあけて形成される。第2共振子群35は、接続電極12によって導通接続されている。
第2入力電極36は、接続電極12に連なる導体膜と、この導体膜に形成される第2入力パッド電極36aとを含む。第2入力パッド電極36aは、圧電基板11の厚み方向Zに垂直な仮想平面に投影した形状が半円形状に形成される。第2入力パッド電極36aは、長手方向X中央部で、かつ第1側部Y1と幅方向Y中央部との中間であって第1側部Y1寄りの位置に形成される。さらに述べると第2入力パッド電極36aは、前記第1出力パッド電極18aと長手方向Xに予め定める間隔をあけて、第1出力パッド電極18aよりも第2端部X2寄りの位置に形成される。
第2出力電極37は、接続電極12に連なる導体膜と、この導体膜に形成される第2出力パッド電極37aとを含む。第2接地電極38は、接続電極12に連なる導体膜と、この導体膜に形成される第2接地パッド電極38aとを含む。第2出力パッド電極37aおよび第2接地パッド電極38aは、圧電基板11の厚み方向Zに垂直な仮想平面に投影した形状が円形状に形成される。第2出力パッド電極37aは、長手方向X中央部と第2端部X2との中間であって第2端部X2寄りで、かつ幅方向Y中央部と第2側部Y2との中間であって第2側部Y2寄りの位置に形成される。第2接地パッド電極38aは、長手方向X中央部で、かつ幅方向Y中央部と第2側部Y2との中間であって幅方向Y中央部寄りの位置に形成される。
弾性表面波素子10を設計するうえで、第1フィルタ13および第2フィルタ14のうちのいずれか一方のフィルタから他方のフィルタに漏洩する信号の特性を表すアイソレーション特性を考慮する必要がある場合、第1入力パッド電極17aと第2入力パッド電極36a、第1出力パッド電極18aと第2出力パッド電極37a、および第1接地パッド電極19aと第2接地パッド電極38aは、それぞれ離れた位置に形成することが好ましい。アイソレーション特性を考慮する必要がない場合には、前述の各パッド電極は、圧電基板11の第1表面部Z1のいずれの位置に形成してもよい。
環状電極15は、圧電基板11の厚み方向Zから見て、第1フィルタ13および第2フィルタ14を囲繞するように形成される。
図2は、図1に示す弾性表面波素子10の等価回路を示す図である。第1入力パッド電極17aと第1出力パッド電極18aとの間には、第1共振子群16が接続される。具体的に述べると、第1入力パッド電極17aと第1出力パッド電極18aとの間には、第1〜第5直列共振子21〜25が直列に接続され、第1〜第3並列共振子27〜29が並列に接続されている。このように本実施の形態の第1共振子群16は、直列共振子と並列共振子とを交互に接続した構造のラダー型フィルタを構成している。第1〜第5直列共振子21〜25および第1〜第3並列共振子27〜29は、それぞれ第1電極端子21a〜25a,27a〜29aおよび第2電極端子21b〜25b,27b〜29bを有する。
第1直列共振子21の第1電極端子21aは、第1出力パッド電極18aに接続され、第5直列共振子25の第2電極端子25bは、第1入力パッド電極17aに接続される。第1直列共振子21の第2電極端子21bと第2直列共振子22の第1電極端子22aとは、第1並列共振子27の第1電極端子27aに接続される。第2直列共振子22の第2電極端子22bと第3直列共振子23の第1電極端子23aとは、第2並列共振子28の第1電極端子28aに接続される。第3直列共振子23の第2電極端子23bと第4直列共振子24の第1電極端子24aとは、第3並列共振子29の第1電極端子29aに接続される。第2並列共振子28の第2電極端子28bは、第1接地パッド電極19aに接続される。第1並列共振子27の第2電極端子27bと第3並列共振子29の第2電極端子29bとは、環状電極15に接続される。第4直列共振子24の第2電極端子24bは、第5直列共振子25の第1電極端子25aに接続される。
第2入力パッド電極36aと第2出力パッド電極37aとの間には、第2共振子群35が接続される。具体的に述べると、第2入力パッド電極36aと第2出力パッド電極37aとの間には、第6〜第9直列共振子41〜44が直列に接続され、第4〜第6並列共振子46〜48が並列に接続されている。このように本実施の形態の第2共振子群35は、直列共振子と並列共振子とを交互に接続した構造のラダー型フィルタを構成している。第6〜第9直列共振子41〜44および第4〜第6並列共振子46〜48は、それぞれ第1電極端子41a〜44a,46a〜48aおよび第2電極端子41b〜44b,46b〜48bを有する。
第6直列共振子41の第1電極端子41aは、第2入力パッド電極36aに接続され、第9直列共振子44の第2電極端子44bは、第2出力パッド電極37aに接続される。第6直列共振子41の第2電極端子41bは、第7直列共振子42の第1電極端子42aに接続される。第7直列共振子42の第2電極端子42bと第8直列共振子43の第1電極端子43aとは、第4並列共振子46の第2電極端子46bに接続され、第8直列共振子43の第2電極端子43bは、第5並列共振子47の第2電極端子47bに接続される。第4並列共振子46の第1電極端子46aと第5並列共振子47の第1電極端子47aとは、環状電極15に接続される。
第6並列共振子48の第1電極端子48aと第9直列共振子44の第1電極端子44aとの接続点は、第8直列共振子43の第2電極端子43bに接続される。第6並列共振子48の第2電極端子48bは、第2接地パッド電極38aに接続される。
本実施の形態において、第1フィルタ13は、予め定める通過周波数帯域、具体的には824MHzから849MHzの通過周波数帯域を有する送信フィルタとして用いられ、第2フィルタ14は、第1フィルタ13の通過周波数帯域よりも高い通過周波数帯域、具体的には869MHzから894MHzの通過周波数帯域を有する受信フィルタとして用いられる。
図3は、弾性表面波素子10が実装される回路基板50を示す平面図である。回路基板50は、第1入力パッド端子51、共通パッド端子52、第1接地パッド端子53、第2出力パッド端子54、第2接地パッド端子55および環状電極端子56を含んで構成される。回路基板50は、回路基板50の厚み方向に垂直な仮想平面に投影した形状が長方形状に形成される。以下の実施の形態において、回路基板50の長手方向、幅方向および厚み方向を、それぞれ長手方向A、幅方向Bおよび厚み方向Cと定義する。長手方向A、幅方向Bおよび厚み方向Cは、互いに直交する3次元の直交座標系を構成する。図3では、回路基板50の長手方向、幅方向および厚み方向を、それぞれA、BおよびCと表記する。以下の回路基板50の説明において、回路基板50の長手方向Aの2つの端部をそれぞれ第1端部A1および第2端部A2といい、回路基板50の幅方向Bの2つの側部をそれぞれ第1側部B1および第2側部B2といい、回路基板50の厚み方向Cの2つの表面部をそれぞれ第1表面部C1および第2表面部C2という。
第1入力パッド端子51、共通パッド端子52、第1接地パッド端子53、第2出力パッド端子54、第2接地パッド端子55および環状電極端子56は、回路基板50の第1表面部C1に形成される。
第1入力パッド端子51、共通パッド端子52、第1接地パッド端子53、第2出力パッド端子54、第2接地パッド端子55は、回路基板50の厚み方向Cに垂直な仮想平面に投影した形状が円形状に形成される。第1入力パッド端子51は、第1端部A1と長手方向A中央部との中間であって第1端部A1寄りで、かつ幅方向B中央部と第2側部B2との中間であって第2側部B2寄りの位置に形成される。第1入力パッド端子51は、弾性表面波素子10が回路基板50に実装されたときに、前記第1入力パッド電極17aと接続される。
回路基板側端子に相当する共通パッド端子52は、長手方向A中央部で、かつ第1側部B1と幅方向B中央部との中間であって第1側部B1寄りの位置に形成される。共通パッド端子52は、弾性表面波素子10が回路基板50に実装されたときに、前記第1出力パッド電極18aおよび前記第2入力パッド電極36aと接続される。第1接地パッド端子53は、第1端部A1と長手方向A中央部との中間であって第1端部A1寄りで、かつ第1側部B1と幅方向B中央部との中間であって幅方向B中央部寄りの位置に形成される。第1接地パッド端子53は、弾性表面波素子10が回路基板50に実装されたときに、前記第1接地パッド電極19aと接続される。
第2出力パッド端子54は、長手方向A中央部と第2端部A2との中間であって第2端部A2寄りで、かつ幅方向B中央部と第2側部B2との中間であって第2側部B2寄りの位置に形成される。第2出力パッド端子54は、弾性表面波素子10が回路基板50に実装されたときに、前記第2出力パッド電極37aと接続される。第2接地パッド端子55は、長手方向A中央部で、かつ幅方向B中央部と第2側部B2との中間であって幅方向B中央部寄りの位置に形成される。第2接地パッド端子55は、弾性表面波素子10が回路基板50に実装されたときに、前記第2接地パッド電極38aと接続される。
第2回路基板側端子に相当する環状電極端子56は、回路基板50の厚み方向から見て、第1入力パッド端子51、共通パッド端子52、第1接地パッド端子53、第2出力パッド端子54、第2接地パッド端子55を囲繞するように形成される。環状電極端子56は、弾性表面波素子10が回路基板50に実装されたときに、前記環状電極15と接続される。環状電極15は、弾性表面波素子10が回路基板50に実装され、環状電極端子56と接続されたとき、接地される。
図4は、弾性表面波装置60を示す断面図であり、弾性表面波素子10を回路基板50に実装したときに、図1および図3の切断面線IV−IVから見た断面図である。弾性表面波装置60は、図1に示す弾性表面波素子10を図2に示す回路基板50に実装することによって製造される。以下の実施の形態において、弾性表面波装置60の長手方向、幅方向および厚み方向を、それぞれ長手方向D、幅方向Eおよび厚み方向Fと定義する。長手方向D、幅方向Eおよび厚み方向Fは、互いに直交する3次元の直交座標系を構成する。図4では、弾性表面波装置60の長手方向、幅方向および厚み方向を、それぞれD、EおよびFと表記する。長手方向Dは、前記圧電基板11の長手方向Xおよび前記回路基板50の長手方向Aに対応し、幅方向Eは、前記圧電基板11の幅方向Yおよび前記回路基板50の幅方向Bに対応し、厚み方向Fは、前記圧電基板11の厚み方向Zおよび前記回路基板50の厚み方向Cに対応する。
以下に、弾性表面波装置60の製造方法について説明する。まず、圧電基板11をアセトン、イソプロピルアルコールなどを用いて超音波洗浄を施し、有機成分の除去を行った。次にクリーンオーブンによって充分に基板乾燥を行った後、スパッタリング法を用いて圧電基板11の第1表面部Z1に積層電極を形成した。積層電極は、チタン(Ti)薄膜と、銅(Cu)を1重量%含むアルミニウム(Al)合金層薄膜とから成り、圧電基板11の第1表面部Z1側から順に、厚み寸法が6nmのチタン(Ti)薄膜、および厚み寸法が130nmであって銅(Cu)を1重量%含むアルミニウム(Al)合金層薄膜を各3層交互に形成したものである。本実施の形態の圧電基板11は、タンタル酸リチウム単結晶の38.7°YカットX伝搬基板を用いた。圧電基板11としては、四硼酸リチウムおよびニオブ酸リチウムを用いてもよい。
次に厚み寸法が約0.5μmになるようにレジストを塗布して、縮小投影露光装置(ステッパー)によって所望の形状にパターン化し、現像装置によって不要部分のレジストをアルカリ現像液で溶解させ、所望のレジストパターンを形成する。次に反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching;略称:RIE)装置を用いて、電極のエッチングを行う。電極のエッチングを行った後は、レジストを剥離し、パターニングを終了する。
以上の工程を経て、第1フィルタ13、第2フィルタ14および環状電極15が形成される。
次に、熱化学気相成長(Chemical Vapor Deposition;略称:CVD)装置を用いて、圧電基板11の第1表面部Z1に、厚み寸法が約20nmのシリカ(SiO2)から成る保護膜を成膜する。保護膜を成膜した後、レジストを再度塗布する。次に、第1および第2入力パッド電極17a,36a、第1および第2出力パッド電極18a,37a、第1および第2接地パッド電極19a,38a、ならびに環状電極15を形成する部分のレジストを感光させて除去する。
次に第1および第2入力パッド電極17a,36a、第1および第2出力パッド電極18a,37a、第1および第2接地パッド電極19a,38a、ならびに環状電極15のパッド電極を形成する部分のSiO2保護膜を、RIEによって除去する。
次にクロム(Cr)、ニッケル(Ni)および金(Au)を、この順にそれぞれの厚み寸法が10nm、1000nm、100nmとなるように、スパッタリング法を用いて成膜し、第1および第2入力パッド電極17a,36a、第1および第2出力パッド電極18a,37a、第1および第2接地パッド電極19a,38a、ならびに環状電極15となる導体膜を形成する。この導体膜は、弾性表面波素子10と、この弾性表面波素子10が実装される回路基板50とを高い信頼性で電気的および構造的に接続するためのものである。弾性表面波素子10と回路基板50との接続に半田を用いる場合、導体膜は、半田との濡れ性を確保し拡散を防止する機能を有する。また弾性表面波素子10と回路基板50との接続に金バンプを用いる場合は、各パッド電極をクロム(Cr)10nm、アルミニウム(Al)1000nmの順に成膜する。弾性表面波素子40と回路基板80との接続に金バンプを用いる場合、導体膜は、パッドの硬度を、金バンプを超音波などを用いて接着できるように調整する機能を有する。
次にレジストとともに、不要箇所の導体膜をリフトオフ法を用いて除去し、第1および第2入力パッド電極17a,36a、第1および第2出力パッド電極18a,37a、第1および第2接地パッド電極19a,38a、ならびに環状電極15を形成する。次にダイシングブレードを用いたダイシング法またはレーザ加工によるレーザカッティング法などによって、圧電基板11を弾性表面波素子10毎に分割して、複数個の弾性表面波素子10を得る。
次に、得られた弾性表面波素子10を、回路基板50にフェイスダウン実装する。本実施の形態の回路基板50は、低温同時焼成セラミックス(Low Temperature Co-fired
Ceramics;略称:LTCC)基板によって実現される。フェイスダウン実装では、まず回路基板50の第1入力パッド端子51、共通パッド端子52、第1接地パッド端子53、第2出力パッド端子54、第2接地パッド端子55および環状電極端子56に導電部材、たとえば半田バンプ61を印刷によって形成する。次に半田バンプ61を形成した部分に、第1入力パッド電極17a、第1出力パッド電極18a、第2入力パッド電極36a、第1接地パッド電極19a、第2出力パッド電極37a、第2接地パッド電極38aおよび環状電極15が接続されるように、弾性表面波素子10をフェイスダウンで搭載して超音波を加えて圧着し、その後窒素雰囲気中240度でリフローを行い、気密封止する。その後、たとえばエポキシ系の樹脂62を、真空印刷機を用いて印刷し、たとえば100度で1時間および150度で3時間の条件で硬化させる。最後に回路基板を個別の装置の形状にダイシングして分割し、弾性表面波装置60を得る。前記導電部材として、金バンプおよび導電ペーストを用いてもよい。
前述の製造方法によって得られる弾性表面波装置60において、第1出力パッド電極18aと第2入力パッド電極36aとは、長手方向Dに予め定める間隔t1、たとえば20μmをあけて、圧電基板11の第1表面部Z1に形成される。また導電部材を介して、第1出力パッド電極18aおよび第2入力パッド電極36aと接続される共通パッド端子52の長手方向Dにおける長さ寸法t2は、たとえば80μmに選ばれる。
圧電基板11は、回路基板50との厚み方向Fにおける間隔が予め定める間隔dとなるように、回路基板50に実装される。予め定める間隔dは、圧電基板11の第1表面部Z1に形成される第1および第2フィルタ13,14における第1および第2共振子群16,35の各共振子の振動を妨げない程度に選ばれる。本実施の形態の予め定める間隔dは、20μmに選ばれる。回路基板50に圧電基板11が実装されたとき、圧電基板11と回路基板50との間に形成される空間は、前記第1および第2共振子群16,35の各共振子の振動空間となる。
前述のように本実施の形態によれば、第1出力パッド電極18aと第2入力パッド電極36aとが、圧電基板11の第1表面部Z1に、予め定める間隔t1をあけて相互に近接して設けられる。さらに弾性表面波素子10を回路基板50に実装したときに、第1出力パッド電極18aと第2入力パッド電極36aとが、回路基板50に形成される共通パッド端子52に導電部材、たとえば半田バンプ61によって共通に接続される。
したがって前記第1出力パッド電極18aと前記第2入力パッド電極36aとは、回路基板50に弾性表面波素子10が実装される前は電気的にそれぞれ分離されているけれども、回路基板50に弾性表面波素子10が実装されたときには電気的にそれぞれ導通接続される。
これによって第1フィルタ3と第2フィルタ4とが共通電極7で接続される前記従来の技術とは異なり、圧電基板11の第1表面部Z1に形成される第1および第2フィルタ13,14の電気的特性をそれぞれ測定するとき、互いに干渉することなく、互いのフィルタの電気的特性に影響を与えない。したがって回路基板50に圧電基板11を実装する前に第1および第2フィルタ13,14の電気的特性を、前記従来の技術よりも高精度にそれぞれ測定することができる。しかも、実装においては、従来と同様の工程を用いることができるので、製造工程数を増大させることなく、弾性表面波装置60を製造することができる。
導電部材として金バンプを用いる場合は、圧電基板11の第1表面部Z1に設けられる各パッド電極に、ワイヤーボンディング法によって金バンプを形成する。第1出力パッド電極18aと第2入力パッド電極36aとは、金バンプを形成した時点で導通することになる。金バンプを形成した後、圧電基板11を回路基板50にフリップチップ実装する。
ここで、フィルタの特性を表すパラメータとして、反射パラメータおよび伝送パラメータ(以下、総称して「測定パラメータ」という場合がある)がある。フィルタの端子数がn(nは自然数)個の場合、反射パラメータは端子数に相当するn通り存在し、伝送パラメータは、n個の端子から任意の2端子を選ぶ順列の数に相当するn×(n―1)通り存在する。端子数が3個のフィルタにおける測定パラメータは、反射パラメータが3通りで、伝送パラメータが6通りであるので、計9通りとなる。また、端子数が2個のフィルタにおける測定パラメータは、反射パラメータが2通りで、伝送パラメータが2通りであるので、計4通りとなる。端子数が2個のフィルタが2つの場合の測定パラメータは、8通りとなる。
前述のように、2個の端子数を有する2つのフィルタの測定パラメータの個数は、3個の端子数を有する1つのフィルタの測定パラメータの個数よりも少ない。したがって、2個の端子数を有する2つのフィルタの測定パラメータを測定する方が、3個の端子数を有する1つのフィルタの測定パラメータを測定する場合に比べて、測定時間の短縮化を図ることができる。したがって測定パラメータの個数を考慮して第1および第2フィルタ13,14を設計することによって、第1および第2フィルタ13,14の電気的特性を効率的に測定することが可能となる。
前述のように本実施の形態によれば、第1および第2フィルタ13,14の電気的特性を、互いに干渉することなく、高精度にそれぞれ測定することができる弾性表面波素子10を実装する回路基板50が、圧電基板11の第1表面部Z1に臨んで設けられる。換言すると、第1および第2フィルタ13,14の電気的特性を高精度に測定された弾性表面波素子10が、弾性表面波装置60に備えられるので、品質が向上された弾性表面波装置60を提供することができる。
また第1出力パッド電極18aと第2入力パッド電極36aとは、回路基板50に圧電基板11を実装したときに、回路基板50に形成される共通パッド端子52に共通に接続されるので、圧電基板11に形成される複数のパッド電極が回路基板50に形成される個別の端子と接続される場合に比べて、圧電基板11におけるパッド電極の専有面積および回路基板50におけるパッド端子の専有面積を縮小することができ、圧電基板11および回路基板50を小形化することができる。これによって弾性表面波装置60を小形化することができる。
図5は、本発明の実施の一形態である通信装置100の構成を示すブロック図である。通信装置100は、たとえば携帯電話機によって実現される。通信装置100は、送受信部101、制御部102、マイクロフォン103、スピーカ104および操作部105を含んで構成される。送受信部101は、アンテナ110、本実施の形態の弾性表面波装置60から成る分波器111および送受信処理部112を含む。送受信処理部112は、デジタル信号処理装置(Digital Signal Processor;略称:DSP)115、変調器116、送信用ミキサ部117、局部発振器118、送信用バンドパスフィルタ(以下、「送信用BPF」という)119、パワーアンプ120、ローノイズアンプ121、受信用バンドパスフィルタ(以下、「受信用BPF」という)122、受信用ミキサ部123、ローパスフィルタ(以下、「LPF」という)124および復調器125を含む。制御部102は、送受信部101に接続されている。マイクロフォン103、スピーカ104および操作部105は、制御部102に接続されている。
操作部105は、操作者が操作する操作キーなどの複数の操作片を有する。操作部105は、各操作片が操作されることによって、数字情報、文字情報および通信装置本体への指示情報などの所定の情報など、操作に応じた情報を表す信号を生成して制御部102に与える。したがって操作者は、操作部105の各操作片を操作して、通信装置本体に情報を与えることができる。制御部102は、たとえば中央演算処理装置(Central
Processing Unit;略称:CPU)を含んで実現され、その内部に記憶される制御プログラムに基づいて、送受信部101、マイクロフォン103、スピーカ104および操作部105を統括的に制御する。
操作者によって操作部105が操作され、マイクロフォン103に入力された音声は、制御部102で、アナログ/デジタル(略称:A/D)変換処理によってアナログ信号からデジタル信号へ変換されてDSP115に与えられる。DSP115では、制御部102から与えられる音声信号の圧縮、および時分割多元接続(Time Division Multiple
Access;略称:TDMA)方式に基づく音声信号の同期化をした後、波形整形してベースバンド信号を生成する。変調器116では、携帯電話機の所定の変調方式に基づいて変調波を生成する。送信用ミキサ部117では、局部発振器118によって生成された予め定める発振周波数の発振信号と、変調器116から与えられる変調波とを乗算して周波数変換をする。送信用BPF119では、送信用ミキサ部117で周波数変換された信号に含まれる不要な信号を減衰させる。その後、不要な信号が減衰した信号は、パワーアンプ120によって所望の信号強度にまで増幅され、送信周波数帯域の信号と受信周波数帯域の信号とを分離する分波器111を通してアンテナ110から他の通信装置に対して送信される。
またアンテナ110によって受信された信号は、アンテナ110が共通パッド端子52に接続される弾性表面波素子10を備える弾性表面波装置60から成る分波器111を通してローノイズアンプ121に与えられて増幅された後、受信用BPF122によって信号に含まれる不要な信号が減衰され、受信用ミキサ部123に与えられる。受信用ミキサ部123では、局部発振器118によって生成された予め定める発信周波数の発振信号と、受信用BPF122から与えられる信号とを乗算して周波数変換をする。LPF124では、周波数変換された信号から不要な周波数の信号を除去し、予め定める遮断周波数以下の周波数帯域の信号を通過させて、復調器125に与える。復調器125では、LPF124から与えられる信号を音声信号に復調してDSP115に与える。DSP115では、復調器125から与えられ、圧縮されているデジタル信号の伸長処理などをした後、D/A変換処理によってアナログ信号に変換され、スピーカ104から音声が出力される。
前述のように本実施の形態によれば、送受信処理部112は、分波器111の第1フィルタ13の第1入力電極17に信号を与えることによって、共通パッド端子52に接続されるアンテナ110を介して他の通信装置に信号を送信することができる。また送受信処理部112は、分波器111の第2フィルタ14の第2出力電極37から与えられる信号を受け取ることによって、他の通信装置から送信された信号を受信することができる。通信装置100には、第1および第2フィルタ13,14の電気的特性を高精度に測定された弾性表面波素子10を有する品質の向上された弾性表面波装置60が備えられるので、たとえば通過周波数帯域外の不要な信号を送信したり、または受信したりすることなく、品質の優れた信号の送受信をすることができる通信装置100を実現することができる。
回路基板50に圧電基板11を実装したときに、第1出力パッド電極18aと第2入力パッド電極36aとが、回路基板50に形成される共通パッド端子52に共通に接続されるように構成し、圧電基板11に形成されるパッド電極が回路基板に形成される個別の端子と接続される場合に比べて、圧電基板11におけるパッド電極の専有面積および回路基板50におけるパッド端子の専有面積を縮小した弾性表面波装置60を通信装置100に備えることによって、通信装置100の軽量化を図ることができる。
さらに圧電基板11におけるパッド電極の専有面積および回路基板50におけるパッド端子の専有面積を縮小してできた空き領域に、他の電子部品を実装した弾性表面波装置を通信装置100に備えることによって、通信装置100の高機能化を図ることが可能となる。
図6は、本発明の第2の実施の形態である弾性表面波素子130を示す平面図である。本実施の形態の弾性表面波素子130は、前述の第1の実施の形態の弾性表面波素子10と類似しているので、異なる部分についてのみ説明し、第1の実施の形態と対応する部分には同一の参照符を付し、重複を避けるため、共通する説明は省略する。図6において、圧電基板11の長手方向、幅方向および厚み方向は、それぞれX、YおよびZである。
弾性表面波素子130の第1フィルタ13は、第1接地電極131を含む。第1接地電極131は、接続電極12に連なる導体膜と、この導体膜に形成される複数の、本実施の形態では3つの第1接地パッド電極131a,131b,131cを含む。第1接地パッド電極131aは、圧電基板11の厚み方向Zに垂直な仮想平面に投影した形状が円形状に形成される。第1接地パッド電極131aは、第1端部X1と長手方向X中央部との中間であって第1端部X1寄りで、かつ第1側部Y1と幅方向Y中央部との中間であって幅方向Y中央部寄りの位置に形成される。
第1接地パッド電極131b,131cは、圧電基板11の厚み方向Zに垂直な仮想平面に投影した形状が半円形状に形成される。第1接地パッド電極131bは、第1端部X1と長手方向X中央部との中間であって第1端部X1寄りで、かつ第1側部Y1と幅方向Y中央部との中間であって第1側部Y1寄りの位置に形成される。さらに述べると、第1接地パッド電極131bは、環状電極15の一部、具体的には第1端部X1寄りで、かつ第1側部Y1と幅方向Y中央部との中間であって第1側部Y1寄りの位置の環状電極15と長手方向Xに予め定める間隔、本実施の形態では20μmをあけて形成される。
第1接地パッド電極131cは、第1端部X1と長手方向X中央部との中間であって第1端部X1寄りで、かつ幅方向Y中央部と第2側部Y2との中間であって幅方向Y中央部寄りの位置に形成される。さらに述べると、第1接地パッド電極131cは、環状電極15の一部、具体的には第1端部X1寄りで、かつ幅方向Y中央部と第2側部Y2との中間であって幅方向Y中央部寄りの位置の環状電極15と長手方向Xに予め定める間隔、本実施の形態では20μmをあけて形成される。第1接地パッド電極131b,131cは、第1接地パッド電極131aの幅方向Yの両端に形成され、第1接地パッド電極131aよりも第1端部X1寄りの位置に形成される。
前記第1接地パッド電極131bと前記環状電極15との長手方向Xの間隔、および前記第1接地パッド電極131cと前記環状電極15との長手方向Xの間隔が大きすぎると、前記第1接地パッド電極131b,131cと前記第1接地パッド端子133b,133cとの接続信頼性が低くなる。特に導電部材が半田である場合には、前記第1接地パッド電極131bの面積と前記第1接地パッド端子133cの面積との差、および前記第1接地パッド電極131cの面積と前記第1接地パッド端子133bの面積との差が大きくなることによって、半田接続の信頼性が損なわれることになる。また、弾性表面波素子130の形状が大きくなってしまう。ここで、第1接地パッド電極131b,131cおよび第1接地パッド端子133b,133cの面積とは、圧電基板11の厚み方向Zに垂直な仮想平面に投影された半円または円の面積である。
前記第1接地パッド電極131bと前記環状電極15との長手方向Xの間隔、および前記第1接地パッド電極131cと前記環状電極15との長手方向Xの間隔が小さすぎると、第1および第2フィルタ13,14が容量的に結合し、互いに影響を及ぼすことになる。このため、前記第1接地パッド電極131b,131cと前記環状電極15との長手方向Xの間隔は、10μm以上50μm未満程度であることが望ましい。
前述のように、第1フィルタ13の第1接地パッド電極131a,131b,131cと、環状電極15とを分離して設けることによって、第1および第2フィルタ13,14の電気的特性をさらに高精度でかつ効率的に測定することができる。
図7は、弾性表面波素子130が実装される回路基板132を示す平面図である。本実施の形態の回路基板132は、前述の第1の実施の形態の回路基板50と類似しているので、異なる部分についてのみ説明し、第1の実施の形態と対応する部分には同一の参照符を付し、重複を避けるため、共通する説明は省略する。図7において、回路基板132の長手方向、幅方向および厚み方向は、それぞれA、BおよびCである。
回路基板132は、複数の、本実施の形態では3つの第1接地パッド端子133a,133b,133cを含む。第1接地パッド端子133a,133b,133cは、回路基板132の第1表面部C1に形成される。第1接地パッド端子133aは、回路基板132の厚み方向Cに垂直な仮想平面に投影した形状が円形状に形成される。第1接地パッド端子133aは、第1端部A1と長手方向A中央部との中間であって第1端部A1寄りで、かつ第1側部B1と幅方向B中央部との中間であって幅方向B中央部寄りの位置に形成される。第1接地パッド端子133aは、弾性表面波素子130が回路基板132に実装されたときに、前記第1接地パッド電極131aと接続される。
第1接地パッド端子133b,133cは、回路基板132の厚み方向Cに垂直な仮想平面に投影した形状が半円形状に形成される。第1接地パッド端子133bは、第1端部A1と長手方向A中央部との中間であって第1端部A1寄りで、かつ第1側部B1と幅方向B中央部との中間であって第1側部B1寄りの位置に形成される。第1接地パッド端子133bは、弾性表面波素子130が回路基板132に実装されたときに、前記第1接地パッド電極131bと接続される。
第1接地パッド端子133cは、第1端部A1と長手方向A中央部との中間であって第1端部A1寄りで、かつ幅方向B中央部と第2側部B2との中間であって幅方向B中央部寄りの位置に形成される。第1接地パッド端子133cは、弾性表面波素子130が回路基板132に実装されたときに、前記第1接地パッド電極131cと接続される。
第1接地パッド端子133b,133cは、環状電極端子56に導通接続されている。これによって弾性表面波素子130が回路基板132に実装されたとき、第1接地パッド電極131bと第1接地パッド電極131cとは、第1接地パッド端子133b,133cおよび環状電極端子56によって導通接続される。
本実施の形態では、第1の実施の形態で説明した弾性表面波装置60の製造方法と同様の方法によって、弾性表面波装置を製造することができる。
前述のように本実施の形態によれば、第1接地パッド電極131b、および環状電極15の一部、第1接地パッド電極131c、および環状電極15の一部、とが、圧電基板11の長手方向Xに予め定める間隔をあけて形成される。さらに弾性表面波素子130を回路基板132に実装したときに、第1接地パッド電極131bと第1接地パッド電極131cとが、回路基板132に形成される第1接地パッド電極端子133b,133cを介して環状電極端子56に導電部材、たとえば半田バンプ61によって共通に接続される。
したがって前記第1接地パッド電極131b,131cと前記環状電極15の一部とは、回路基板132に弾性表面波素子130が実装される前は電気的にそれぞれ分離されているけれども、回路基板132に弾性表面波素子130が実装されたときには電気的にそれぞれ導通接続される。
これによって第1フィルタと第2フィルタとが共通電極で接続される前記従来の技術とは異なり、圧電基板11の第1表面部Z1に形成される第1および第2フィルタ13,14の電気的特性をそれぞれ測定するとき、互いに干渉することなく、互いのフィルタの電気的特性に影響を与えない。したがって第1および第2フィルタ13,14の電気的特性を、前記従来の技術よりも高精度にそれぞれ測定することができる。
換言すれば、第1フィルタ13と第2フィルタ14とが共に環状電極15によって接続されている場合には、環状電極15との寄生容量を介して第1および第2フィルタ13,14が干渉することとなり、各フィルタ13,14の単独の電気的特性を精度良く測定することができない。これに対して、第1フィルタ13が環状電極15と接続されていない場合には、寄生容量が小さくなり、各フィルタ13,14の単独の電気的特性を測定するとき、互いに干渉することなく、互いのフィルタの電気的特性に影響を与えない。したがって、前記従来の技術よりも高精度に各フィルタ13,14の電気的特性を測定することができる。圧電基板11の第1表面部Z1に形成される環状電極15は、回路基板132に圧電基板11が実装され、導電部材によって、回路基板132の第1表面部C1に形成される環状電極端子56と導通接続されたとき、接地されて接地電位が与えられる。したがって第1フィルタ13と第2フィルタ14とは、干渉しなくなる。
前述の第1の実施の形態では、弾性表面波装置60を適用した分波器111を備えて構成される通信装置100について説明したが、分波器111に代えて、第2の実施の形態の弾性表面波装置を適用した分波器を備えて通信装置100を構成してもよい。このように構成される場合であっても、前述の第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
前述の第1および第2の実施の形態では、第1出力パッド電極18aと第2入力パッド電極36aとを、予め定める間隔をあけて、相互に近接して形成しているけれども、このような構成に限らず、以下のような構成であってもよい。たとえば、第1入力パッド電極17aと第2入力パッド電極36aとを、予め定める間隔をあけて、相互に近接して形成し、回路基板50または回路基板132に形成される端子に共通に接続してもよい。また、第1出力パッド電極18aと第2出力パッド電極37aとを、予め定める間隔をあけて、相互に近接して形成し、回路基板50または回路基板132に形成される端子に共通に接続してもよい。さらに、第1入力パッド電極17aと第2出力パッド電極37aとを、予め定める間隔をあけて、相互に近接して形成し、回路基板50または回路基板132に形成される端子に共通に接続してもよい。このように構成される場合であっても、前述の第1および第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
図8は、本発明の第3の実施の形態である弾性表面波素子135を示す平面図である。本実施の形態の弾性表面波素子135は、前述の第1の実施の形態の弾性表面波素子10と類似しているので、異なる部分についてのみ説明し、第1の実施の形態と対応する部分には同一の参照符を付し、重複を避けるため、共通する説明は省略する。図8において、圧電基板11の長手方向、幅方向および厚み方向は、それぞれX、YおよびZとなる。
弾性表面波素子135は、整合回路部136をさらに含んで構成される。整合回路部136は、整合回路電極137とインダクタンスを有する配線とを有する。整合回路電極137は、接続電極12に連なる導体膜と、この導体膜に形成される整合回路パッド電極137aとを含む。インダクタンスを有する配線は、整合回路パッド電極137aに接続されている。整合回路部136は、第1フィルタ13と第2フィルタ14とのインピーダンス特性を整合させる。具体的に述べると、整合回路部136は、受信周波数帯では共通パッド端子52から見た第1フィルタ13と整合回路部136との合成インピーダンスがほぼ無限大となるように、また送信周波数帯では共通パッド端子52から見た第2フィルタ14と整合回路部136との合成インピーダンスがほぼ無限大となるように調整する。
本実施の形態において、第1出力パッド電極18aは、圧電基板11の厚み方向Zに垂直な仮想平面に投影した形状が1/4円形状に形成される。第1出力パッド電極18aは、長手方向X中央部で、かつ第1側部Y1と幅方向Y中央部との中間であって第1側部Y1寄りの位置に形成される。第2入力パッド電極36aは、圧電基板11の厚み方向Zに垂直な仮想平面に投影した形状が半円形状に形成される。第2入力パッド電極36aは、長手方向X中央部で、かつ第1側部Y1と幅方向Y中央部との中間であって第1側部Y1寄りの位置に形成される。さらに述べると、第2入力パッド電極36aは、前記第1出力パッド電極18aと長手方向Xに予め定める間隔、本実施の形態では20μmをあけて、第1出力パッド電極18aよりも第2端部X2寄りの位置に形成される。
整合回路パッド電極137aは、圧電基板11の厚み方向Zに垂直な仮想平面に投影した形状が1/4円形状に形成される。整合回路パッド電極137aは、長手方向X中央部で、かつ第1側部Y1と幅方向Y中央部との中間であって第1側部Y1寄りの位置に形成される。さらに述べると、整合回路パッド電極137aは、前記第1出力パッド電極18aと幅方向Yに予め定める間隔、本実施の形態では20μmをあけて、第1出力パッド電極18aよりも幅方向Y中央部寄りの位置に形成される。また整合回路パッド電極137aは、前記第2入力パッド電極36aと長手方向Xに予め定める間隔、本実施の形態では20μmをあけて、第2入力パッド電極36aよりも第1端部X1寄りの位置に形成される。
前述のように第1出力パッド電極18a、第2入力パッド電極36aおよび整合回路パッド電極137aが、予め定める間隔をあけてそれぞれ近接して設けられる弾性表面波素子135を実装する回路基板(不図示)には、前述の第1の実施の形態と同様に、共通パッド端子が設けられる。この共通パッド端子は、前記弾性表面波素子135が回路基板に実装されたときに、第1出力パッド電極18a、第2入力パッド電極36aおよび整合回路パッド電極137aと接続される。
本実施の形態では、第1の実施の形態で説明した弾性表面波装置60の製造方法と同様の方法によって、弾性表面波装置を製造することができる。
前述のように本実施の形態によれば、第1出力パッド電極18a、第2入力パッド電極36aおよび整合回路パッド電極137aが、圧電基板11の第1表面部Z1に、予め定める間隔をあけてそれぞれ近接して設けられる。さらに弾性表面波素子135を回路基板に実装したときに、第1出力パッド電極18a、第2入力パッド電極36aおよび整合回路パッド電極137aが、回路基板に形成される共通パッド端子に導電部材、たとえば半田バンプによって共通に接続される。
したがって前記第1出力パッド電極18a、前記第2入力パッド電極36aおよび前記整合回路パッド電極137aは、回路基板に弾性表面波素子135が実装される前は電気的にそれぞれ分離されているけれども、回路基板に弾性表面波素子135が実装されたときには電気的にそれぞれ導通接続される。
これによって第1フィルタ3と第2フィルタ4とが共通電極7で接続される前記従来の技術とは異なり、圧電基板11の第1表面部Z1に形成される第1および第2フィルタ13,14の電気的特性をそれぞれ測定するとき、互いに干渉することなく、互いのフィルタの電気的特性に影響を与えない。したがって第1および第2フィルタ13,14の電気的特性を、前記従来の技術よりも高精度にそれぞれ測定することができる。
また整合回路部136を含む弾性表面波素子135であっても、回路基板に弾性表面波素子135が実装される前は、前記第1出力パッド電極18a、前記第2入力パッド電極36aおよび前記整合回路パッド電極137aが電気的に分離されているので、第1および第2フィルタ13,14の電気的特性を、互いに干渉することなく、高精度でかつ効率的にそれぞれ測定することができる。
本実施の形態の弾性表面波素子135に内蔵する整合回路部136は、薄膜工程で製造することによって、チップ部品などの整合回路部136を外付けする場合に比べて、高精度に整合回路部136を形成することができる。整合回路部136の低損失化を図るために、パッド電極形成時において、整合回路部136の電極上にパッド電極を設けてもよい。整合回路部136の電極の厚み寸法が増すことによって、前記電極の抵抗値が下がり、整合回路部136の低損失化を実現できる。
また前述の第1の実施の形態では、弾性表面波装置60を適用した分波器111を備えて構成される通信装置100について説明したが、分波器111に代えて、第3の実施の形態の弾性表面波装置を適用した分波器を備えて通信装置100を構成してもよい。このように構成される場合であっても、前述の第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また前述の第3の実施の形態では、第1出力パッド電極18aと第2入力パッド電極36aと整合回路パッド電極137aとを、予め定める間隔をあけて、それぞれ近接して形成しているけれども、このような構成に限らず、以下のような構成であってもよい。たとえば、第1入力パッド電極17aと第2入力パッド電極36aと整合回路パッド電極137aとを、予め定める間隔をあけて、それぞれ近接して形成し、回路基板132に形成される端子に共通に接続してもよい。また、第1出力パッド電極18aと第2出力パッド電極37aと整合回路パッド電極137aとを、予め定める間隔をあけて、それぞれ近接して形成し、回路基板132に形成される端子に共通に接続してもよい。さらに、第1入力パッド電極17aと第2出力パッド電極37aと整合回路パッド電極137aとを、予め定める間隔をあけて、それぞれ近接して形成し、回路基板132に形成される端子に共通に接続してもよい。このように構成される場合であっても、前述の第3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、前述の第3の実施の形態では、整合回路部136を、インダクタンスを有する配線で実現したが、これに限るものではない。たとえば整合回路部136は、容量成分を有する配線で実現されてもよいし、インダクタンス成分および容量成分を有する配線で実現されてもよい。
また前述の第1入力パッド電極17a、第1接地パッド電極19a,131aおよび第2接地パッド電極38aは、導電部材として半田を用いる場合、半田の表面張力によって半田との濡れ性が良くなることから、円形状に形成することが望ましいが、円形状に限らず他の形状、たとえば矩形状に形成してもよい。また予め定める間隔をあけて相互に近接して設けられる第1出力パッド電極18a、第2入力パッド電極36a、第1接地パッド電極131b,131cは、半円形状または1/4円形状である場合について説明したが、このような形状に限らず、他の形状、たとえば扇形状であってもよい。ただし、環状電極15のパッド電極を除く全てのパッド電極は、圧電基板11の厚み方向Zに垂直な仮想平面に投影されたときの面積が同一となることが望ましい。同一面積にすることによって、半田量が均一化され、圧電基板と回路基板との接続が安定するからである。
また、導電部材は金バンプを用いてもよいが、銀(Ag)などの導電ペーストおよび半田を用いた方が、全てのバンプを一括形成できるため、より望ましい。
図9は、本発明の実施の一形態である送信装置200の構成を示すブロック図である。送信装置200は、前述の通信装置100と構成が類似しているので、異なる部分についてのみ説明し、対応する部分には同一の参照符を付し、重複を避けるため、共通する説明は省略する。送信装置200は、送信部201、制御部102、マイクロフォン103、スピーカ104および操作部105を含んで構成される。送信部201は、アンテナ110、第1の実施の形態の弾性表面波装置60から成る送信用複合フィルタ202および送信処理部203を含む。送信用複合フィルタ202は、前記第1出力電極18と前記第2出力電極37とが共通パッド端子52に共通に接続される弾性表面波装置によって構成される。送信用複合フィルタ202に含まれる第1および第2フィルタ13,14は、送信フィルタによって実現される。
送信処理部203は、DSP115、変調器116、第1送信用ミキサ部117a、第1局部発振器118a、第1送信用バンドパスフィルタ(以下、「第1送信用BPF」という)119a、第1パワーアンプ120a、第2送信用ミキサ部117b、第2局部発振器118b、第2送信用バンドパスフィルタ(以下、「第2送信用BPF」という)119bおよび第2パワーアンプ120bを含む。制御部102は、送信部201に接続されている。
第1送信用ミキサ部117aでは、第1局部発振器118aによって生成された予め定める発振周波数の発振信号と、変調器116から与えられる変調波とを乗算して周波数変換をする。第1送信用BPF119aでは、第1送信用ミキサ部117aで周波数変換された信号に含まれる不要な信号を減衰させる。その後、不要な信号が減衰した信号は、第1パワーアンプ120aによって所望の信号強度にまで増幅され、送信用複合フィルタ202に入力される。
第2送信用ミキサ部117bでは、第2局部発振器118bによって生成された予め定める発振周波数の発振信号と、変調器116から与えられる変調波とを乗算して周波数変換をする。ここで、第2局部発振器118bで生成される発振周波数は、第1局部発振器118aで生成される発振周波数とは異なる。第2送信用BPF119bでは、第2送信用ミキサ部117bで周波数変換された信号に含まれる不要な信号を減衰させる。その後、不要な信号が減衰した信号は、第2パワーアンプ120bによって所望の信号強度にまで増幅され、送信用複合フィルタ202に入力される。前記第1パワーアンプ120aおよび第2パワーアンプ120bからの信号は、送信用複合フィルタ202の第1入力電極17または第2入力電極36に入力され、アンテナ110から他の通信装置に対して送信される。
前述のように本実施の形態によれば、送信処理部203は、送信用複合フィルタ202を構成する第1フィルタ13の第1入力電極17または第2フィルタ14の第2入力電極36に信号を与えることによって、共通パッド端子52に接続されるアンテナ110を介して他の通信装置に信号を好適に送信することができる。
送信装置200には、第1および第2フィルタ13,14の電気的特性を高精度に測定された弾性表面波素子を有する品質の向上された弾性表面波装置60が備えられるので、たとえば通過周波数帯域外の不要な信号を送信することがなく、品質の優れた信号を送信することができる送信装置200を実現することができる。
本実施の形態では、弾性表面波装置60から成る送信用複合フィルタ202を備えて構成される送信装置200について説明したが、このような構成に限定されない。本発明の他の実施の形態では、送信装置が、前述の第2および第3の実施の形態の弾性表面波装置から成る送信用複合フィルタを備えて構成されてもよい。このように構成される場合であっても、前述の弾性表面波装置60から成る送信用複合フィルタ202を備えて構成される送信装置200と同様の効果を得ることができる。
図10は、本発明の実施の一形態である受信装置300の構成を示すブロック図である。受信装置300は、前述の通信装置100と構成が類似しているので、異なる部分についてのみ説明し、対応する部分には同一の参照符を付し、重複を避けるため、共通する説明は省略する。受信装置300は、受信部301、制御部102、マイクロフォン103、スピーカ104および操作部105を含んで構成される。受信部301は、アンテナ110、第1の実施の形態の弾性表面波装置60から成る受信用複合フィルタ302および送信処理部303を含む。受信用複合フィルタ302は、前記第1入力電極17と前記第2入力電極36とが共通パッド端子52に共通に接続される弾性表面波装置60によって構成される。受信用複合フィルタ302に含まれる第1および第2フィルタ13,14は、受信フィルタによって実現される。
受信処理部303は、第1ローノイズアンプ121a、第1受信用バンドパスフィルタ(以下、「第1受信用BPF」という)122a、第1受信用ミキサ部123a、第1局部発振器118a、第2ローノイズアンプ121b、第2受信用バンドパスフィルタ(以下、「第2BPF」という)122b、第2受信用ミキサ部123b、第2局部発振器118b、LPF124、復調器125およびDSP115を含む。制御部102は、受信部301に接続されている。
アンテナ110によって受信され、受信用複合フィルタ302の第1出力電極18から出力された信号は、第1ローノイズアンプ121aに与えられて増幅された後、第1受信用BPF122aによって信号に含まれる不要な信号が減衰され、第1受信用ミキサ部123aに与えられる。第1受信用ミキサ部123aでは、第1局部発振器118aによって生成された予め定める発信周波数の発振信号と、第1受信用BPF122aから与えられる信号とを乗算して周波数変換をする。
アンテナ110によって受信され、受信用複合フィルタ302の第2出力電極37から出力された信号は、第2ローノイズアンプ121bに与えられて増幅された後、第2受信用BPF122bによって信号に含まれる不要な信号が減衰され、第2受信用ミキサ部123bに与えられる。第2受信用ミキサ部123bでは、第2局部発振器118bによって生成された予め定める発振周波数の発振信号と、第2受信用BPF122bから与えられる信号とを乗算して周波数変換をする。第1受信用ミキサ部123aおよび第2受信用ミキサ部123bによって周波数変換された信号は、LPF124、復調器125およびDSP115を通過して前述の信号処理が実行され、スピーカ104から音声が出力される。
前述のように本実施の形態によれば、受信処理部303は、アンテナ110から与えられる信号を、受信用複合フィルタ302を構成する第1フィルタ13の第1出力電極18または第2フィルタ14の第2出力電極37を介して受け取ることによって、他の通信装置から送信された信号を好適に受信することができる。
受信装置300には、第1および第2フィルタ13,14の電気的特性を高精度に測定された弾性表面波素子を有する品質の向上された弾性表面波装置が備えられるので、たとえば通過周波数帯域外の不要な信号を受信することがなく、品質の優れた信号を受信することができる受信装置300を実現することができる。
本実施の形態では、弾性表面波装置60から成る受信用複合フィルタ302を備えて構成される受信装置300について説明したが、このような構成に限定されない。本発明の他の実施の形態では、受信装置が、前述の第2および第3の実施の形態の弾性表面波装置から成る受信用複合フィルタを備えて構成されてもよい。このように構成される場合であっても、前述の弾性表面波装置60から成る受信用複合フィルタ302を備えて構成される受信装置300と同様の効果を得ることができる。
前述の各実施の形態は、本発明の例示に過ぎず、発明の範囲内において構成を変更することができる。前述の各実施の形態では、第1フィルタ13を圧電基板11の長手方向X中央部よりも第1端部X1寄りの位置に配設し、第2フィルタ14を圧電基板11の長手方向X中央部よりも第2端部X2寄りの位置に配設した場合について述べたが、これに限らず、以下のような構成であってもよい。第1フィルタ13を圧電基板11の幅方向Y中央部よりも第1側部Y1寄りの位置に配設し、第2フィルタ14を圧電基板11の幅方向Y中央部よりも第2側部Y2寄りの位置に配設してもよい。また圧電基板11の対角線で分割される2つの領域のうちの第1領域に第1フィルタ13を配設し、前記2つの領域のうちの第2領域に第2フィルタ14を配設してもよい。
前述の各実施の形態における第1および第2フィルタ13,14の電気的特性の測定は、製造される全ての弾性表面波素子に対して行う必要はなく、弾性表面波素子の製造工程おいて予め定められた規格限度内で製品を生産できる能力を表す工程能力が高ければ、抜取り測定をしてもよい。
また前述の各実施の形態では、弾性表面波素子を回路基板に実装する場合について説明したが、弾性表面波素子を直接に携帯電話機などの通信装置の基板に実装してもよい。この場合でも前述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
前述の各実施の形態では、第1および第2フィルタ13,14をラダー型フィルタによって構成した場合について説明したが、2重モード型フィルタ、ラティス型フィルタおよびIIDT(Interdigitated Inter-digital Transducer)型フィルタなどのフィルタによって構成されてもよい。第1および第2フィルタ13,14が、前述の2重モード型フィルタ、ラティス型フィルタおよびIIDT型のフィルタによって構成された場合でも、前述の各実施の形態と同様の効果を達成することができる。