JP4716994B2 - DesAフィブリンを含有する悪性腫瘍抑制剤 - Google Patents

DesAフィブリンを含有する悪性腫瘍抑制剤 Download PDF

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Description

本発明はDes A フィブリンを含有することを特徴とする、悪性腫瘍抑制剤に関する。
近年、悪性腫瘍治療は、外科的手術、放射線治療あるいは化学療法による原発癌の除去の成功率の向上によって、着実に進歩している。しかしながら、原発癌の除去が完全になされても癌の転移により死亡する場合が少なくない。
特に、黒色腫、肺癌、肝癌及び膵臓癌などの悪性度が高い悪性腫瘍は早期発見が難しく、悪性腫瘍と診断された時点では、既に原発癌と転移癌とが同時に存在し、手術治療を受けられないケースが非常に多い。これらの悪性腫瘍に対して、放射線治療は良好な結果を示していない。また、現在、臨床で使用されているアドリアマイシン(adriamycin)等の化学療法剤は、そのほとんどが悪性腫瘍細胞を直接攻撃して薬効を発揮するものであるが、同時に正常細胞をもターゲットとするので、副作用が強く、臨床上の問題点になっているのが現実である。したがって、ここ数十年間、画期的な新薬が生まれていない状況にある。このような状況を打開するために、新しいタイプの悪性腫瘍用医薬品が待望されている。
かかる状況の下、最近、数多くの基礎研究及び臨床研究により悪性腫瘍と凝固線溶系との密接な関係が示唆されている。例えば、悪性腫瘍患者では、血漿フィブリノーゲンの増加、血液粘度の増加及び血液レオロジーの異常等の凝固線溶系の異常により微小循環障害を引き起こすことが知られている。また、血漿フィブリノーゲンの増加又は悪性腫瘍細胞が自らフィブリノーゲンを分泌することにより、悪性腫瘍組織の細胞外マトリクスにフィブリノーゲン又はフィブリンの沈着が発生し、これが細胞外マトリクスの一員として悪性腫瘍細胞の増殖、浸潤及び転移に促進的な作用を果たしていることが報告されている(例えば、Cancer Research 60:2033−2039(2000)、Ann N Y Acad Sci 936:406−425(2001)及びBlood 96:3302−3309(2000)を参照)。
前述の悪性腫瘍と凝固線溶系との関係に着目し、インビトロ(in vitro)において悪性腫瘍細胞をフィブリンで処理すると、悪性腫瘍細胞の肺臓への実験的転移性が増強されることが確認されている(例えば、Clin Exp Metastasis 17:723−730(1999)を参照)。フィブリン(Des AB フィブリン又はフィブリンIIともいう)は、トロンビンがフィブリノーゲンに作用して、フィブリノーゲンからフィブリノペプチドA(fibrinopeptide A、以下FPAという)及びフィブリノペプチドB(fibrinopeptide B、以下FPBという)を遊離させて得られる物質である(例えば、Nature 275:501−505(1978)及びBiochemistry 35:4417−4426(1996)を参照)。
また、血中フィブリノーゲン濃度と悪性腫瘍の増殖及び転移との関係に着目し、脱フィブリノーゲン作用を有するトロンビン様酵素であるバトロキソビン(Batroxobin)やアンクロッド(Ancrod)を投与してフィブリノーゲンを減少させ、悪性腫瘍の増殖及び転移を抑制することが報告されている(例えば、Eur J Cancer 16:919−923(1980)及び日本血液学会雑誌44:739−743(1981)を参照)。バトロキソビンは、Bothrops atrox moojeniの毒液に由来するトロンビン様セリンプロテアーゼであり、フィブリノーゲンからFPAのみを遊離し、Des A フィブリン(フィブリンIともいう)を産生する糖蛋白酵素である(例えば、Thromb Haemost 36:9−13(1976)及びThromb Diath Haemorrh 45(Suppl):63−68(1971)を参照)。
これらの文献に開示される技術は、悪性腫瘍細胞を攻撃する免疫系から当該細胞を保護するバリヤーとしてフィブリノーゲンが機能しているとの推定に基づいて、トロンビン様酵素によりフィブリノーゲンを減少させて、免疫系による悪性腫瘍細胞に対する攻撃を容易にし、結果として悪性腫瘍の増殖及び転移を抑制しようとするものである。
一方、悪性腫瘍細胞は伸展及び遊走することが知られている。ここで、悪性腫瘍細胞の伸展(spreading)とは、腫瘍細胞が何らかの信号を受け、円形の腫瘍細胞が偽足を形成することであり、これは腫瘍の増殖、浸潤及び転移の基礎となる腫瘍細胞の生物学的行為である。
また、悪性腫瘍細胞の遊走(migration)とは、腫瘍細胞が何らかの信号を受け、細胞膜にある細胞接着分子とリガントとの間で結合及び解離を繰り返すことにより、腫瘍細胞が元の場所から移動することであり、これは腫瘍の浸潤と転移の基礎となる生物学的行為である。
したがって、悪性腫瘍細胞の伸展及び遊走を抑制することにより、腫瘍の浸潤及び転移を抑制し、ひいては悪性腫瘍を抑制することができる。
しかしながら、かかる機序により悪性腫瘍を効果的に抑制することができる薬剤は報告されていない。
また、フィブリノーゲンの分解産物であるDes A フィブリンと悪性腫瘍細胞の伸展及び遊走との関連性についての報告例も存在していない。
したがって、本発明は、悪性腫瘍抑制剤として新規な有効成分を含有する、悪性腫瘍抑制剤を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者等は、Des A フィブリンが悪性腫瘍細胞に対してフィブリンとは異なる作用を与えるのではないかと考え、悪性腫瘍細胞の伸展及び遊走に及ぼすDes A フィブリンの影響について鋭意研究を行ったところ、Des A フィブリンが悪性腫瘍細胞の伸展及び遊走を抑制する作用を有することを見出した。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は、Des A フィブリンを含有することを特徴とする悪性腫瘍抑制剤に関するものである。
図1は、フィブリノーゲン、Des A フィブリン及びフィブリンの電気泳動像を示す写真である。
図2は、図1の電気泳動像を、画像分析システムを用い定量化して図示したグラフである。
図3は、PBS(A)、フィブリノーゲン(B)、バトロキソビン(C)、トロンビン(D)、Des A フィブリン(E)及びフィブリン(F)で処理したウエル中で培養した黒色腫細胞の顕微鏡写真である。
図4は、PBS(A)、フィブリノーゲン(B)、バトロキソビン(C)、トロンビン(D)、Des A フィブリン(E)及びフィブリン(F)で処理したウエル中で培養した黒色腫細胞の伸展率のグラフである。
図5は、PBS(A)、フィブリノーゲン(B)、バトロキソビン(C)、トロンビン(D)、Des A フィブリン(E)及びフィブリン(F)で処理したウエル中で培養した乳癌細胞の顕微鏡写真である。
図6は、PBS(A)、フィブリノーゲン(B)、バトロキソビン(C)、トロンビン(D)、Des A フィブリン(E)及びフィブリン(F)で処理したウエル中で培養した乳癌細胞の伸展率のグラフである。
図7は、PBS(A)、フィブリノーゲン(B)、バトロキソビン(C)、トロンビン(D)、Des A フィブリン(E)及びフィブリン(F)で処理したウエル中で培養した線維肉腫細胞の顕微鏡写真である。
図8は、PBS(A)、フィブリノーゲン(B)、バトロキソビン(C)、トロンビン(D)、Des A フィブリン(E)及びフィブリン(F)で処理したウエル中で培養した線維肉腫細胞の伸展率のグラフである。
図9は、黒色腫細胞の伸展に対するDes A フィブリン量の影響を示すグラフである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の悪性腫瘍抑制剤は、Des A フィブリンを有効成分として含有することを特徴とする。
Des A フィブリンは、フィブリノーゲンからFPAを遊離させて得られる物質である。
フィブリノーゲンは、3種のAα鎖、Bβ鎖及びγ鎖がS−S結合で結合してなるサブユニット(AαBβγ)の2つが、更にS−S結合により結合してなる2量体糖蛋白(AαBβγ)である。Aα鎖は610個のアミノ酸(68kDa)、Bβ鎖は461個のアミノ酸(54kDa)、γ鎖は411個のアミノ酸(48kDa)からなるので、フィブリノーゲンの分子量は340kDaである(Thromb Res 83:1−75(1996)及びBlood Coagulation,Fibrinolysis and Kinin,Aoki A and Iwanaga S(Eds)Chugai Igaku Co.,Tokyo,1979,p59−71を参照)。また、Bβ鎖とγ鎖には糖が結合しているが、Aα鎖にはないことが知られている(Int J Biochem & Cell Biol 31:741−746(1999)を参照)。
FPAは、フィブリノーゲンのAα鎖のNH末端から16個のアミノ酸(NH−Ala−Asp−Ser−Gly−Glu−Gly−Asp−Phe−Leu−Ala−Glu−Gly−Gly−Gly−Val−Arg)(配列番号1)に該当するペプチドである。
したがって、Des A フィブリンは、フィブリノーゲンからFPAを遊離して得られる残部[(αBβγ)]である(Thromb Haemost 36:9−13(1976)及びThromb Diath Haemorrh 45(Suppl):63−68(1971)を参照)。FPAの分子量は1,536Daであるので、Des A フィブリンの分子量は約337kDaと計算できる。
フィブリノーゲンからのFPAの遊離は、トロンビン様酵素を用いて行うことができる。トロンビン様酵素は、セリンプロテアーゼの一種である。一般的には、蛇毒由来のものが多い。具体例としては、Bothrops atrox moojeniの毒液から抽出・精製したバトロキソビン(東菱薬品工業株式会社及びその子会社であるBeijing Tobishi Pharmaceutical Co.,Ltd.,Beijing,China製)、アンクロッド及びその他の蛇毒由来のトロンビン様酵素(例えばCrotalase)等が挙げられる。これらのトロンビン様酵素は、天然物であってもよく、遺伝子組み換え製品であってもよい。
フィブリノーゲン及びトロンビン様酵素を用いたDes A フィブリンの製造は、例えば下記(1)〜(6)の方法により行うことができる。
(1)プラスチック培養器具、ガラス培養器具、スライドガラス、ステンレス又は合成固形物質であるEPTFE人工血管等の表面にフィブリノーゲンを付着させ、そこへトロンビン様酵素を添加してDes A フィブリンを製造する方法;
(2)前記の固形物質へフィブリノーゲン及びトロンビン様酵素を同時に添加してDes A フィブリンを製造する方法;
(3)液体反応系において0.1〜15Nの尿素及び/又は抗凝集ペプチド(Gly−Pro−Arg−Pro−amide,GPRP−NH(配列番号2))の存在下で、フィブリノーゲンとトロンビン様酵素とを反応させ、Des A フィブリン同士の凝集を防止しつつ作成する方法(Clin Exp Metastasis 17:723−730(1999)を参照);
(4)カラムにフィブリノーゲンを結合し、トロンビン様酵素を含む溶液を流してDes A フィブリンを製造する方法;
(5)トロンビン様酵素をカラムに結合し、フィブリノーゲンを含む溶液を流してDes A フィブリンを製造する方法;
(6)トロンビン様酵素を静脈、腹腔内、皮下及び筋肉注射等により投与し、体内のフィブリノーゲンに作用させてインビボ(in vivo)でDes A フィブリンを製造する方法(Acta Haematol Jpn 44:706−711(1981)を参照)。
本発明のDes A フィブリンの製造に用いるフィブリノーゲン及びトロンビン様酵素はそれ自体公知物質であり、市場において容易に入手可能であるか、又は、調製可能である。Des A フィブリンもそれ自体公知物質であり、上記の方法により調製可能である。
本発明の悪性腫瘍抑制剤の対象となるのは悪性腫瘍である。悪性腫瘍は発生母組織により上皮性の悪性腫瘍と非上皮性の悪性腫瘍とに大別することができる。上皮性の腫瘍は腫瘍全体の約9割を占めていると言われている。非上皮性の悪性腫瘍は更に、間葉系組織由来の悪性腫瘍、神経組織由来の悪性腫瘍及び未分化細胞の悪性腫瘍とに分類することができる。以下に、各悪性腫瘍の具体例を例示する。
上皮性の悪性腫瘍
腺癌(腺上皮由来の癌腫であり、胃、腸、膵、気管、肺、乳腺、卵巣、子宮体、前立腺など、体の各所に発生するもので、ヒトの癌の70〜80%を占めると推測される)、扁平上皮癌(重層扁平上皮由来、例えば表皮、口唇、舌、咽頭、食道、肛門、外陰、子宮頚部などの上皮組織に発生する癌、非小細胞肺癌に分類される肺扁平上皮癌)、基底細胞癌(皮膚及び付属器の基底細胞由来)、移行上皮癌(移行上皮由来、例えば膀胱癌)、肝細胞癌(肝実質細胞由来)、腎細胞癌(腎上皮由来)、胆管癌(胆管由来)、絨毛癌(胎盤上皮由来)
非上皮性の悪性腫瘍
間葉系組織由来の悪性腫瘍
線維肉腫(結合組織及び線維組織由来)、脂肪肉腫(結合組織及び脂肪組織由来)、軟骨肉腫(結合組織及び軟骨組織由来)、骨肉腫(結合組織及び骨組織由来)、血管肉腫(血管由来)、リンパ管肉腫(リンパ管由来)、骨髄性白血病(造血細胞由来)、単球性白血病(造血細胞由来)、悪性リンパ腫(リンパ組織由来)、リンパ性白血病(リンパ組織由来)、形質細胞種(多発性骨髄腫)(リンパ組織由来)、ホジキン細胞(リンパ組織由来)、平滑筋肉腫(平滑筋由来)、横紋筋肉腫(横紋筋由来)
神経組織由来の悪性腫瘍
神経芽腫(神経芽由来)、髄芽細胞腫(髄芽細胞由来)、悪性星状膠細胞腫(星状膠細胞由来)、網膜芽腫(網膜芽細胞由来)、膠芽細胞腫(膠芽細胞由来)、悪性神経鞘腫(シュワン細胞由来)、黒色腫(神経外胚葉由来)
未分化細胞の悪性腫瘍
悪性奇形腫(全能細胞由来)、腎芽腫(腎芽細胞由来)、肝芽腫(肝芽細胞由来)、混合腫瘍(複数種の細胞由来)
本発明の悪性腫瘍抑制剤は、これらの悪性腫瘍の中で、上皮性の悪性腫瘍、並びに、非上皮性の悪性腫瘍である神経組織由来の悪性腫瘍及び間葉系組織由来の悪性腫瘍、特に黒色腫、乳癌又は線維肉腫に対して優れた効果を発揮することができる。
本発明の悪性腫瘍抑制剤は、悪性腫瘍細胞の伸展及び遊走を抑制することにより、腫瘍の浸潤及び転移を抑制し、ひいては悪性腫瘍を抑制することができる。
ここで、悪性腫瘍細胞の伸展(spreading)とは、腫瘍細胞が何らかの信号を受け、円形の腫瘍細胞が偽足を形成することであり、これは腫瘍細胞の増殖、浸潤及び転移の基礎となる腫瘍細胞の生物学的行為である。
また、悪性腫瘍細胞の遊走(migration)とは、腫瘍細胞が何らかの信号を受け、細胞膜にある細胞接着分子とリガントとの間で結合及び解離を繰り返すことにより、腫瘍細胞が元の場所から移動することであり、これは腫瘍の浸潤と転移の基礎となる生物学的行為である。
本発明の悪性腫瘍抑制剤は、Des A フィブリン単体からなるものであってもよく、その他の活性物質と組み合わせたものであってもよい。
その他の活性物質としては、フルオロウラシル(Fluorouracil)のような代謝拮抗剤、アドリアマイシンのような抗腫瘍抗生物質製剤、ダカルバジン(dacarbazine)のようなアルキル化剤、パクリタキセル(Paclitaxel)のような植物由来の制癌剤等が挙げられる。
本発明の悪性腫瘍抑制剤の剤型としては、日局製剤総則にある剤型を適用でき、例えば直接体内に適用する注射剤(懸濁剤、乳剤を含む);軟膏剤(油脂性軟膏、乳剤性軟膏(クリーム)、水溶性軟膏等を含む)、吸入剤、液剤(点眼剤、点鼻剤等を含む)、坐剤、貼付剤、パップ剤、ローション剤等の外用剤;又は、錠剤(糖衣、フィルム、膠衣を含む)、液剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤(細粒を含む)、丸剤、シロップ剤、トローチ剤等の内用剤等が挙げられる。これらの製剤は、日局製剤総則等に記載された方法で製剤化することができる。
また、本発明の悪性腫瘍抑制剤は、剤型に応じて医薬的に許容しうる固体状若しくは液体状の担体又は介入治療基材を含んでいてもよい。医薬的に許容しうる固体状若しくは液体状の担体としては、溶剤、安定化剤、保存剤、溶解補助剤、乳化剤、懸濁化剤、緩衝剤、等張化剤、着色剤、基剤、増粘剤、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、コーティング剤、矯味剤等が挙げられる。
具体例としては、水及び、乳糖、白糖、果糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトールなどの糖・糖アルコール類、結晶セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロースなどのセルロース及びその関連誘導体、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、シクロデキストリン、プルランなどのデンプン及びその関連誘導体、カンテン、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、ゼラチン、コラーゲン、セラック、トラガント、キサンタンガムなどの天然高分子(海草類、植物粘質物、タンパク質など)、ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、メタアクリル酸コポリマー、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ジメチルポリシロキサンなどの合成高分子、オリーブ油、カカオ脂、カルナウバロウ、牛脂、硬化油、ダイズ油、ゴマ油、ツバキ油、パラフィン、流動パラフィン、ミツロウ、白色ワセリン、ヤシ油、マイクロクリスタリンワックスなどの油脂類、ステアリン酸、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、クエン酸トリエチル、トリアセチン、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ハードファット、ミリスチン酸イソプロピルなどの脂肪酸及びその誘導体、グリセリン、ステアリルアルコール、セタノール、プロピレングリコール、マクロゴールなどのアルコール及び多価アルコール、酸化亜鉛リン酸水素カルシウム、沈降炭酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、無水ケイ酸、カオリン、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ヒドロタルサイト、酸化チタン、タルク、ベントナイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、硫酸アルミニウムカリウム、次没食子酸ビスマス、次サリチル酸ビスマス、乳酸カルシウム、重炭酸ナトリウムなどの無機性物質及び金属塩化合物、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ポリソルベート、モノステアリン酸グリセリン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロマクロゴールなどの界面活性物質、色素、香料等が挙げられる。
介入治療基材としてはステント、人工血管等が挙げられる。
本発明の悪性腫瘍抑制剤中のDes A フィブリンの含有量は、採用する剤型に依存して変化するが、例えば、内用剤の場合は1gあたり0.01〜900mgであり、注射剤の場合は1mlあたり0.01〜500mgであり、外用剤の場合は1gあたり0.01〜500mgである。
本発明の悪性腫瘍抑制剤の投与量は、通常、患者の体重、疾患の性質及び状態に依存して変化するが、成人に使用する場合、1日あたりのDes A フィブリン量で0.1〜5000mg、より好ましくは100〜2500mgである。
以下に実施例を示して具体的に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
Des A フィブリンの調製及び確認
トロンビン様酵素を用いてフィブリノーゲンからFPAを遊離してDes A フィブリンを調製した。更に、Des A フィブリンの生成を確認するためにフィブリノーゲン及びフィブリンとの対比を行った。
(1)Des A フィブリンの調製
フィブリノーゲンの最終濃度が3.0mg/ml、バトロキソビンの最終濃度が0.5BU/mlになるように、ヒトフィブリノーゲン(F−4883,Sigma,MO,USA)のリン酸緩衝液(PBS)溶液にトロンビン様酵素であるバトロキソビン(Tobarpin(登録商標),Beijing Tobishi Pharmaceutical Co.,Ltd.,Beijing,China製)を加えた後、37℃で1時間インキュベートして、Des A フィブリンを調製した。
(2)フィブリンの調製
フィブリノーゲンの最終濃度が3.0mg/ml、トロンビンの最終濃度が0.5U/mlになるように、ヒトフィブリノーゲン(F−4883,Sigma,MO,USA)のPBS溶液にトロンビン(Sigma,MO,USA)のPBS溶液を加えた後、37℃で1時間インキュベートして、フィブリンを作製した。
(3)フィブリノーゲンの調製
無処理対照として、ヒトフィブリノーゲン(F−4883,Sigma,MO,USA)を用いて最終濃度が3.0mg/mlのフィブリノーゲンのPBS溶液を調製した。
(4)Des A フィブリン生成の確認
上記(1)の工程によりDes A フィブリンが生成したことを電気泳動により確認した。具体的には、下記の処理によりフィブリノーゲンが3種のAα鎖、Bβ鎖及びγ鎖に還元されることを基準として、Des A フィブリンを3種のα鎖、Bβ鎖及びγ鎖に、フィブリンを3種のα鎖、β鎖及びγ鎖に還元した後に電気泳動に付して評価した。
工程(1)で得られたDes A フィブリン及び工程(2)で得られたフィブリンを無菌生理食塩水で3回洗浄した後、2% SDS−2% βメルカプトエタノール−5M尿素液0.5mlにて、5〜6分煮沸して、S−S結合を解除し、溶解した。
工程(3)で得られたフィブリノーゲンでは、上記の洗浄工程を省略し、その後は前記と同じ操作にてS−S結合を解除し、加熱溶解した。
得られたサンプルの各溶液150μlに、50μlの電気泳動緩衝液(4 X 2% SDS−0.1% ブロムクレゾールブルー)を加え、7.5% SDS−PAGE(PAGEL(登録商標),Atto Corp.,Tokyo,Japan)電気泳動を行った。
結果を電気泳動図として図1に示す。図1において、Lane1及び4はフィブリノーゲン、Lane2はDes A フィブリン、Lane3はフィブリンを示す。
各Laneにおいて、一番下のバンドはγ鎖、下から2番目のバンドはBβ鎖、下から3番目のバンドはAα鎖を示す。
ここで、Lane1及びLane4(フィブリノーゲン)を基準として、Lane2(Des A フィブリン)を評価すると、Lane2の下から3番目のバンド(Aα鎖)の位置が下方(低分子量側)にシフトした。これは、トロンビン様酵素であるバトロキソビンの作用によりフィブリノーゲンのAα鎖からFPAが遊離したことを示している。一方、その他のバンドの位置はフィブリノーゲンと一致していた。以上より、工程(1)によりフィブリノーゲンからFPAが遊離してDes A フィブリンが生成したことが理解される。
また、Lane1及びLane4(フィブリノーゲン)を基準として、Lane3(フィブリン)を評価すると、Lane3の下から2番目のバンド(Bβ鎖)及び3番目のバンド(Aα鎖)の位置が共に下方(低分子量側)にシフトした。これは、トロンビンの作用によりフィブリノーゲンのAα鎖及びBβ鎖からそれぞれFPA及びFPBが遊離したことを示している。以上より、工程(2)では、フィブリンが生成したことが理解される。
尚、これらの結果は、既知のデータと一致していた(Acta Haematol Jpn 44:706−711(1981)を参照)。
更に、前記の電気泳動像を、画像分析システム(Furi Science & Technology Co.,Ltd.,Shanghai,China)を用いて定量化し、グラフとして表した(図2)。
図2中の3つのピークにおいて、左側のピークはAα鎖のバンド密度を、中央のピークはBβ鎖のバンド密度を、右側のピークはγ鎖のバンド密度を示す。
左側のピーク(Aα鎖)を評価すると、Des A フィブリンとフィブリンのピークは一致し、かつ、フィブリノーゲンのピークよりも低分子量側にシフトした。これは、Des A フィブリン及びフィブリンでは、フィブリノーゲンのAα鎖からFPAが遊離していることを示している。
中間のピーク(Bβ鎖)を評価すると、フィブリノーゲンとDes A フィブリンのピークは一致しているが、フィブリンのピークのみが低分子量側にシフトした。これは、フィブリンにおいてのみフィブリノーゲンのBβ鎖からFPBが遊離したことを示している。
以上より、バトロキソビンがフィブリノーゲン((AαBβγ))に作用して生成した物質は、Des A フィブリン((αBβγ))であり、トロンビンがフィブリノーゲンに作用して生成した物質はフィブリン((αβγ))であることが確認された。
Des A フィブリンの悪性腫瘍細胞の伸展に対する影響
マトリゲル(Matrigel(登録商標),BD Biosciences,NJ,USA)を用いて擬似的な体内の細胞外マトリクス環境を作製し、かかる環境下での悪性腫瘍細胞の伸展に対するDes A フィブリンの影響を、3種類の悪性腫瘍(黒色腫、乳癌及び線維肉腫)細胞を用いて評価した。
(1)使用した悪性腫瘍細胞
黒色腫細胞としてのB16−BL6マウス悪性黒色腫細胞(Academy of Chinese Medical Sciences,Beijing,China)は、10%牛胎児血清(FBS,HyClone,Utah,USA)を含有するRPMI−1640培地(Gibco,MD,USA)中で継代培養して、本実験に供した。
乳癌細胞としてのMMT060562マウス乳癌細胞(ATCC,VA,USA)は、10% FBS及び1%非必須アミノ酸溶液(Non−Essential Amino Acids Solution,Gibco,MD,USA))を含有するMEM培地(Gibco,MD,USA)中で継代培養して、本実験に供した。
線維肉腫細胞としてのHT−1080ヒト線維肉腫細胞(Academy of Chinese Medical Sciences,Beijing,China)は、10% FBSを含有するMEM培地(Gibco,MD,USA)中で継代培養して、本実験に供した。
(2)細胞伸展の測定法
8穴スライド・チャンバー(Nunc,IL,USA)の各ウエルに0.25mlのマトリゲル(Matrigel(登録商標)7.5μg/ml,BD Biosciences,NJ,USA)を添加し、室温下で1時間インキュベートしてマトリゲルをスライドにコーティングした。次いで、マトリゲルをコーティングしたウエルへ下記のA〜Fの溶液(各0.25ml)を添加して処理を施した。
A:リン酸緩衝液(PBS)の添加(溶媒対照)
B:フィブリノーゲン(3mg/ml)の添加
C:バトロキソビン(0.5BU/ml)の添加
D:トロンビン(0.5U/ml)の添加
E:Des A フィブリン(3mg/mlフィブリノーゲン及び0.5BU/mlバトロキソビン)の添加
F:フィブリン(3mg/mlフィブリノーゲン及び0.5U/mlトロンビン)の添加
以上の処理に用いた溶媒はすべてPBSであった。
(ここで、BU(バトロキソビン単位)とはバトロキソビンの酵素活性量を示す単位をいい、37℃で、標準ヒトクエン酸加血漿0.3mlに、バトロキソビン溶液0.1mlを加えるとき、19.0±0.2秒で凝固する活性量を2BUとするものである。)
A〜Dの処理では、示した各成分を示された最終濃度でウエルへ添加し、室温下で1時間インキュベートし、その後液体を捨て、PBSで洗浄した。
E〜Fの処理では、示した各成分を示された最終濃度でウエルへ添加し、60秒間反応させ、生成物(処理E:Des A フィブリン、処理F:フィブリン)の凝固が起こらないうちに液体を捨てた。その後、室温下で1時間インキュベートし、PBSで洗浄した。Eの処理ではバトロキソビンをフィブリノーゲンへ作用させることによりDes A フィブリンが生成し、Fの処理ではトロンビンをフィブリノーゲンへ作用させることによりフィブリンが生成した。
各処理ウエルへ、無血清RPMI−1640培地中に懸濁した5600個のB16−BL6黒色腫細胞を撒き、スライド・チャンバーをCOインキュベーター中で2時間培養した。その後、処理済のウエルへ付着した約150個の細胞につき、伸展細胞(偽足を出している細胞)数を位相差顕微鏡を用いて計数し、その伸展細胞数の割合を下記の計算式にしたがい伸展率として算出した。
伸展率(%)=(伸展細胞数/付着細胞数)×100
同様の手順を、無血清RPMI−1640培地中に懸濁した5600個のB16−BL6黒色腫細胞に替えて、無血清MEM+1%非必須アミノ酸溶液培地中に懸濁した5600個のMMT060562乳癌細胞、又は、無血清MEM培地中に懸濁した5600個のHT−1080線維肉腫細胞について行った。
(3)黒色腫細胞の伸展抑制
図3に、各処理ウエル中で2時間培養した黒色腫細胞の顕微鏡写真(X45倍)を示す。図4に、各処理ウエル中で培養した黒色腫細胞の伸展率のグラフを示す。
PBS(A)、フィブリノーゲン(B)、バトロキソビン(C)、トロンビン(D)及びフィブリン(F)の存在下では、黒色腫細胞の大部分が偽足を出して伸展し(図3)、いずれも伸展率が80%を超えた(図4)。
一方、Des A フィブリン(E)の存在下では、黒色腫細胞はその大部分が丸い状態で、偽足を出しても短く(図3)、伸展率は12.53±6.69%であった(図4)。
したがって、Des A フィブリンは、他の成分と比較して、マトリゲル存在下の黒色腫細胞の伸展を有意に抑制したことが認められた(図4、P<0.01)。
以上より、Des A フィブリンが、黒色腫細胞の伸展を効果的に抑制することが理解される。
(4)乳癌細胞の伸展抑制
図5に、各処理ウエル中で2時間培養した乳癌細胞の顕微鏡写真(X45倍)を示す。図6に、各処理ウエル中で培養した乳癌細胞の伸展率のグラフを示す。
PBS(A)、フィブリノーゲン(B)、バトロキソビン(C)、トロンビン(D)及びフィブリン(F)の存在下では、乳癌細胞の大部分が偽足を出して伸展し(図5)、いずれも伸展率が60%を超えた(図6)。
一方、Des A フィブリン(E)の存在下では、乳癌細胞はその大部分が丸い状態で、偽足を出しても短く(図5)、伸展率は8.87±3.06%であった(図6)。
したがって、Des A フィブリンは、他の成分と比較して、マトリゲル存在下の乳癌細胞の伸展を有意に抑制したことが認められた(図6、P<0.01)。
以上より、Des A フィブリンが、乳癌細胞の伸展を効果的に抑制することが理解される。
(5)線維肉腫細胞の伸展抑制
図7に、各処理ウエル中で2時間培養した線維肉腫細胞の顕微鏡写真(X45倍)を示す。図8に、各処理ウエル中で培養した線維肉腫細胞の伸展率のグラフを示す。
PBS(A)、フィブリノーゲン(B)、バトロキソビン(C)、トロンビン(D)及びフィブリン(F)の存在下では、線維肉腫細胞の大部分が偽足を出して伸展し(図7)、いずれも伸展率が70%を超えた(図8)。
一方、Des A フィブリン(E)の存在下では、線維肉腫細胞はその大部分が丸い状態で、偽足を出しても短く(図7)、伸展率は34.19±6.55%であった(図8)。
したがって、Des A フィブリンは、他の成分と比較して、マトリゲル存在下の線維肉腫細胞の伸展を有意に抑制したことが認められた(図7、P<0.01)。
以上より、Des A フィブリンが、線維肉腫細胞の伸展を効果的に抑制することが理解される。
悪性腫瘍細胞の伸展に対するDes A フィブリン量の影響
バトロキソビンをフィブリノーゲンに作用させて得られるDes A フィブリンの生成量は、フィブリノーゲン量の増加及びフィブリノーゲンとバトロキソビンとの反応時間の延長に応じて増加すると考えられる。そこで、同一濃度のバトロキソビン(0.5BU/ml)と異なる濃度のフィブリノーゲン(0.1mg/ml、0.5mg/ml、1mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、6mg/ml、9mg/ml、12mg/ml及び15mg/ml)とを、それぞれ30秒間、60秒間及び90秒間反応させて種々の量のDes A フィブリンを調製し、これらの悪性腫瘍細胞の伸展に対する影響を評価した。実験方法は、使用したフィブリノーゲンの量及び反応時間を除いて、実施例2の(2)細胞伸展の測定法のE処理と同様であった。結果を図9に示す。
反応時間が30秒(□)の場合、フィブリノーゲン濃度を上昇させても伸展率減少への影響は見られず、伸展率は76.23%までしか減少しなかった。これは、伸展へ影響を及ぼすことができる十分な量のDes A フィブリンが30秒の反応時間では生成しなかったためであると考えられる。
反応時間が60秒(○)及び90秒(△)の場合、フィブリノーゲン濃度が3mg/mlとなったときに伸展率の大幅な減少が見られた(60秒:12.53%、90秒:9.13%)。フィブリノーゲン濃度を更に上昇させると、伸展細胞がほとんど見られなくなった。これは、Des A フィブリン生成量の増加に応じて悪性腫瘍細胞の伸展がより強く抑制されたことを示している。
一方、フィブリノーゲン濃度が9mg/mlを超えると伸展率が上昇し、濃度15mg/mlでは伸展率の減少効果が見られなかった。これは、高濃度のフィブリノーゲンの存在下では、生成したDes A フィブリンがウエルへコーティングされる前にウエル上を多量のフィブリノーゲンが覆ってしまう(ウエルへコーティングされないDes A フィブリンは洗浄工程において洗い出されてしまう)ため、フィブリノーゲンそのものの作用が現れているためであると考えられる。
以上より、Des A フィブリンは黒色腫細胞の伸展を用量依存的に抑制することが理解される。
Des A フィブリンの悪性腫瘍細胞の遊走に対する影響
悪性腫瘍細胞の遊走は腫瘍転移の基礎となる生物学的行為である。悪性度の高い悪性腫瘍は遊走能力も高い。そこで、本実施例では、「かき傷アッセイ法(scratch wound assay)」(Gynecol Oncol 89:60−72(2003)を参照)を用いて、2種類の悪性腫瘍(黒色腫及び乳癌)細胞の遊走に対するDes A フィブリンの影響を評価した。
(1)使用した悪性腫瘍細胞
黒色腫細胞としてのB16−BL6マウス悪性黒色腫細胞(Academy of Chinese Medical Sciences,Beijing,China)は、10%牛胎児血清(FBS,HyClone,Utah,USA)を含有するRPMI−1640培地(Gibco,MD,USA)中で継代培養して、本実験に供した。
乳癌細胞としてのMMT060562マウス乳癌細胞(ATCC,VA,USA)は、10% FBS及び1%非必須アミノ酸溶液(Non−Essential Amino Acids Solution,Gibco,MD,USA))を含有するMEM培地(Gibco,MD,USA)中で継代培養して、本実験に供した。
(2)細胞遊走の測定法
6穴プレートのウエル(Corning,NY,USA)にカバーガラスを敷き、そこへ、2mlの10% FBS含有RPMI−1640培地で懸濁した2.5X10個のB16−BL6黒色腫細胞、又は、2mlの10% FBS含有MEM培地で懸濁した2.5X10個のMMT060562乳癌細胞を撒き、COインキュベーター中で24時間培養した。
培養後、プラスチック製のセルスクレーパー(cell scraper)を用いて、細胞が増殖しているカバーグラスへ幅が0.5mmの傷ラインを付け、元々その傷ラインに増殖していた細胞を取り除いて、さらに残りの細胞断片をPBSで洗浄した。
黒色腫細胞培養ウェルに対して、10% FBS含有RPMI−1640培地で希釈した0.05mg/mlフィブリノーゲン、又は、Des A フィブリン(0.05mg/mlフィブリノーゲン及び2BU/mlバトロキソビンの添加により生成させた)をそれぞれ2ml添加し、COインキュベーター中で48時間培養した。
乳癌細胞培養ウェルに対して、10% FBS MEM培地で希釈した0.05mg/mlフィブリノーゲン、又は、Des A フィブリン(0.05mg/mlフィブリノーゲン及び2BU/mlバトロキソビンの添加により生成させた)をそれぞれ2ml添加し、COインキュベーター中で48時間培養した。
培養後、ライト染色(Wright staining)を行い、光学差顕微鏡(Olympus,Tokyo,Japan)を用いて傷ライン上へ遊走した細胞数を計数し、カバーガラス平方ミリメートルあたりの遊走細胞数(細胞数/mm)として表した。
尚、フィブリノーゲン処理をDes A フィブリン処理の対照としたのは、悪性腫瘍が生体内に存在している場合、悪性腫瘍細胞の周囲にはフィブリノーゲンが存在しているからである。
(3)黒色腫細胞の遊走抑制
結果を表1に示す。
Figure 0004716994
Des A フィブリン処理時の遊走細胞数(14±4個/mm)は、フィブリノーゲン処理時の遊走細胞数(87±14個/mm)よりも有意に少なかった(P<0.01)。
以上より、Des A フィブリンが、黒色腫細胞の遊走を効果的に抑制することが理解される。
(4)乳癌細胞の遊走抑制
結果を表2に示す。
Figure 0004716994
Des A フィブリン処理時の遊走細胞数(12±3個/mm)は、フィブリノーゲン処理時の遊走細胞数(29±10個/mm)よりも有意に少なかった(P<0.01)。
以上より、Des A フィブリンが、乳癌細胞の遊走を効果的に抑制することが理解される。
本発明の悪性腫瘍抑制剤は、上述の実施例で示されるように、悪性腫瘍細胞の伸展及び遊走を効果的に抑制することができる。したがって、本発明は悪性腫瘍の抑制に有利に使用することができる。

Claims (8)

  1. Des A フィブリンを含有することを特徴とする、悪性腫瘍抑制剤。
  2. Des A フィブリンが、フィブリノーゲンにトロンビン様酵素を作用させて得られるものである、請求項1に記載の悪性腫瘍抑制剤。
  3. トロンビン様酵素が天然物又は遺伝子組み換え製品である、請求項2に記載の悪性腫瘍抑制剤。
  4. トロンビン様酵素がバトロキソビンである、請求項2又は3に記載の悪性腫瘍抑制剤。
  5. 悪性腫瘍が上皮性悪性腫瘍である、請求項1〜のいずれかに記載の悪性腫瘍抑制剤。
  6. 悪性腫瘍が非上皮性悪性腫瘍である、請求項1〜のいずれかに記載の悪性腫瘍抑制剤。
  7. 悪性腫瘍が神経組織由来悪性腫瘍又は間葉系組織由来悪性腫瘍である、請求項1〜のいずれかに記載の悪性腫瘍抑制剤。
  8. 悪性腫瘍が、黒色腫、癌又は線維肉腫である、請求項1〜のいずれかに記載の悪性腫瘍抑制剤。
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