しかしながら、上述のように、抽出針と外気導入針との間の電気抵抗の変化からインク残量を検知するインクジェット記録装置では、抽出針と外気導入針との間の電気的な導通がインク容器内で遮断され、且つその後バッファタンク内のインク液面が下がって電極間の電気導通が遮断されたときをインクエンプティと判定するが、インクエンプティの前後において印刷が連続で且つ大量に行われると、外気導入針から外気が導入されることに伴い大量の気泡が発生し、その気泡は外気導入針および抽出針の近傍に残り、その気泡を介して抽出針と外気導入針との間が電気的に導通してしまう。
この様子を図6に模式的に示す。抽出針51からのインクの抽出が進み、インク液面が外気導入針52を囲む障壁部材64の上端よりも下がり、その後バッファタンク3のインク液面が外気導入針52の下端より下がると、バッファタンク3内の抽出針51と外気導入針52との間のインクを介しての電気的導通が遮断されるが、外気導入針52から外気を導入する際に発生した気泡Wが障壁部材64からあふれ抽出針51と外気導入針52との間が電気的に導通する。そのため、インク残量がインクエンプティの状態であっても、「インク有り」の状態が検出され、正確なインク残量を検知することが困難であるという問題点があった。
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、インクエンプティを正確に判定することができるインクジェット記録装置及びインクカートリッジを提供することを目的としている。
この目的を達成するために請求項1記載のインクジェット記録装置は、インクを貯留するインク容器と、インクを吐出する印字ヘッドにインクを供給すると共に外部と連通するバッファタンクと、そのバッファタンク内の底部近傍から前記インク容器内の底部まで延びて配設され、そのインク容器からインクを抽出すると共に第1電極となる中空状の抽出部材と、前記バッファタンク内の上部空間から前記インク容器内の底部まで延びて配設され、そのインク容器に外気を導入すると共に第2電極となる中空状の外気導入部材と、前記インク容器内で前記抽出部材と外気導入部材との間を結ぶ第1経路および前記バッファタンク内で前記抽出部材と外気導入部材との間を結ぶ第2経路の電気的特性を検出する検出手段と、その検出手段によって検出される電気的特性に基づいてインクエンプティを判定する判定手段とを備え、前記抽出部材と外気導入部材との間に前記インク容器の底部から立ち上がって形成され、その底部近傍での前記抽出部材と外気導入部材との間のインクの流通は許容するが、前記外気導入部材を介して導入される外気がインクを通して供給されるのに伴い発生する気泡の流通は障蔽してその気泡により、前記第1経路が電気的に導通することを防止する障蔽部材を備えている。
請求項2記載のインクジェット記録装置は、請求項1記載のインクジェット記録装置において、前記障蔽部材は、前記インク容器内を前記抽出部材が配設されたインク抽出領域と外気導入部材が配設された外気導入領域とを、前記インク容器内の底部近傍と上部を超えてインクの連通を確保しつつ仕切る障壁で構成されている。
請求項3記載のインクジェット記録装置は、請求項2記載のインクジェット記録装置において、前記障壁は、前記抽出部材および外気導入部材の高さより高くなる位置まで延びる板状部材で構成されており、前記抽出部材と障壁との間の距離に比べて前記外気導入部材と障壁との間の距離が長くなると共に、前記インク抽出領域のインク容器側面と障壁との間の距離に比べて前記外気導入領域のインク容器側面と障壁との間の距離が長くなる位置に配置されている。
請求項4記載のインクジェット記録装置は、請求項2又は3に記載のインクジェット記録装置において、前記障壁の前記インク容器の底部近傍となる位置に穿設され、前記外気導入領域とインク抽出領域との間のインクの流通を許容する少なくとも1つの連通孔を備えている。
請求項5記載のインクジェット記録装置は、請求項1記載のインクジェット記録装置において、前記障壁は、上端が開放した筒状の第1筒部材で構成されており、その第1筒部材は、前記抽出部材および外気導入部材の高さより高くなる位置まで延びると共に、前記抽出部材を囲んで配置されている。
請求項6記載のインクジェット記録装置は、請求項5記載のインクジェット記録装置において、前記第1筒部材の前記インク容器の底部近傍となる位置に穿設され、その第1筒部材の外側と内側との間のインクの流通を許容する少なくとも1つの第1連通孔を備えている。
請求項7記載のインクジェット記録装置は、請求項5又は6に記載のインクジェット記録装置において、前記障壁はさらに、前記外気導入部材を囲んで配置される上端が開放した筒状の第2筒部材を含み、その第2筒部材の前記インク容器の底部近傍となる位置に穿設され、その第2筒部材の外側と内側との間のインクの流通を許容する少なくとも1つの第2連通孔とを備えている。
請求項8記載のインクジェット記録装置は、請求項7記載のインクジェット記録装置において、前記第1連通孔と第2連通孔とは、その第1連通孔と第2連通孔とを通って前記抽出部材と外気導入部材とを結ぶ距離が、前記バッファタンク内での前記抽出部材と外気導入部材とを結ぶ距離よりも長くなる位置に穿設されている。
請求項9記載のインクジェット記録装置は、請求項4,6から8のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、前記抽出部材には、その抽出部材の中空状の内部とインク容器の内部とを連通する開口が形成され、前記インク容器の底部には、前記障壁の連通孔が形成された位置よりも下方で前記抽出部材の開口を開口させるように、その開口が配置される凹部が形成されている。
請求項10記載のインクカートリッジは、インクを貯留するものであり、インクカートリッジ内のインクを抽出すると共に第1電極となる中空状の抽出部材およびインクカートリッジ内に外気を導入すると共に第2電極となる中空状の外気導入部材がインクカートリッジ内のインクに接触するように挿入される挿入部と、前記抽出部材と外気導入部材との間に前記インクカートリッジの底部から立ち上がって形成され、その底部近傍での前記抽出部材と外気導入部材との間のインクの流通は許容するが、前記外気導入部材を介して導入される外気がインクを通して供給されるのに伴い発生する気泡の流通は障蔽してその気泡により、前記抽出部材と外気導入部材との間が電気的に導通することを防止する障蔽部材とを備えている。
請求項11記載のインクカートリッジは、インクを貯留するものであり、前記インクカートリッジ方向からインクを抽出すると共に第1電極となる中空状の抽出部材と、前記インクカートリッジ内に外気を導入すると共に第2電極となる中空状の外気導入部材と、前記抽出部材と外気導入部材との間に前記インクカートリッジの底部から立ち上がって形成され、その底部近傍での前記抽出部材と外気導入部材との間のインクの流通は許容するが、前記外気導入部材を介して導入される外気がインクを通して供給されるのに伴い発生する気泡の流通は障蔽してその気泡により、前記抽出部材と外気導入部材との間が電気的に導通することを防止する障蔽部材とを備えている。
請求項12記載のインクカートリッジは、請求項10又は11に記載のインクカートリッジにおいて、前記障蔽部材は、前記インクカートリッジ内を前記抽出部材が配設されたインク抽出領域と外気導入部材が配設された外気導入領域とを、前記インクカートリッジ内の底部近傍と上部を超えてインクの連通を確保しつつ仕切る障壁で構成されている。
請求項13記載のインクカートリッジは、請求項12記載のインクカートリッジにおいて、前記障壁は、前記抽出部材および外気導入部材の高さより高くなる位置まで延びる板状部材で構成されており、前記抽出部材と障壁との間の距離に比べて前記外気導入部材と障壁との間の距離が長くなると共に、前記インク抽出領域のインクカートリッジ側面と障壁との間の距離に比べて前記外気導入領域のインクカートリッジ側面と障壁との間の距離が長くなる位置に配置されている。
請求項14記載のインクカートリッジは、請求項12又は13に記載のインクカートリッジにおいて、前記障壁の前記インクカートリッジの底部近傍となる位置に穿設され、前記外気導入領域とインク抽出領域との間のインクの流通を許容する少なくとも1つの連通孔を備えている。
請求項15記載のインクカートリッジは、請求項12記載のインクカートリッジにおいて、前記障壁は、上端が開放した筒状の第1筒部材で構成されており、その第1筒部材は、前記抽出部材および外気導入部材の高さより高くなる位置まで延びると共に、前記抽出部材を囲んで配置されている。
請求項16記載のインクカートリッジは、請求項15記載のインクカートリッジにおいて、前記第1筒部材の前記インクカートリッジの底部近傍となる位置に穿設され、その第1筒部材の外側と内側との間のインクの流通を許容する少なくとも1つの第1連通孔を備えている。
請求項17記載のインクカートリッジは、請求項15又は16に記載のインクカートリッジにおいて、前記障壁はさらに、前記外気導入部材を囲んで配置される上端が開放した筒状の第2筒部材を含み、その第2筒部材の前記インクカートリッジの底部近傍となる位置に穿設され、その第2筒部材の外側と内側との間のインクの流通を許容する少なくとも1つの第2連通孔とを備えている。
請求項18記載のインクカートリッジは、請求項14,16,17のいずれかに記載のインクカートリッジにおいて、前記抽出部材には、その抽出部材の中空状の内部とインクカートリッジの内部とを連通する開口が形成され、インクカートリッジの底部には、前記障壁の連通孔が形成された位置よりも下方で前記抽出部材の開口を開口させるように、その開口が配置される凹部が形成されている。
請求項1記載のインクジェット記録装置によれば、インク容器内のインクが抽出部材をとおしてバッファタンクへ供給されインク液面が障蔽部材の上端よりも下がってもインク容器の底部近傍までインクを使用することができる。その際、外気導入部材から導入される外気がインク中を通って気泡となっても、その気泡は障蔽部材によって、抽出部材側に流通するのを障蔽される。したがって、インク容器内のインクを消費した後は、気泡が外気導入部材と抽出部材とを接触させて両者間の電気的特性に影響を与えることがなく、バッファタンク内のインク液面の低下によってのみ外気導入部材と抽出部材との間の電気的特性の変化が検出されるから、正確にインクエンプティを判定することができる。
請求項2記載のインクジェット記録装置によれば、請求項1記載のインクジェット記録装置の奏する効果に加え、障壁によって、抽出部材が配設されたインク抽出領域と外気導入部材が配設された外気導入領域とを、インク容器内の底部近傍と上部とを超えてインクの連通を確保しつつ仕切る。よって、インク容器内のインク残量が多量にある場合には障壁の上部を超えてインクが流通して気泡を広い領域内で自然に消滅させることができ、インク残量が減少してインク液面が障壁の上部より低くなった場合には気泡の流通を抑えると共にインク容器の底部近傍で抽出部材と外気導入部材との間の電気的な導通を確保することができるので、抽出部材を通してインクを安定して供給することができると共にインク残量が少ない状態においても、抽出部材と外気導入部材との間の電気的特性を維持することができるという効果がある。
請求項3記載のインクジェット記録装置によれば、請求項2記載のインクジェット記録装置の奏する効果に加え、障壁が、抽出部材および外気導入部材より高い位置まで延び板状で構成され、且つ抽出部材と障壁との間の距離に比べて外気導入部材と障壁との間の距離が長くなると共に、インク抽出領域のインク容器側面と障壁との間の距離に比べて外気導入領域のインク容器側面と障壁との間の距離が長くなる位置に配置されている。よって、外気導入領域で発生した気泡は、抽出部材および外気導入部材より高い位置まで延びた障壁により、インク抽出領域に流入するこをより確実に抑制できると共に、外気導入領域内で 自然に消滅したり保持されるので、気泡を介して抽出部材と外気導入部材とが導通することを防止することができるという効果がある。
請求項4記載のインクジェット記録装置によれば、請求項2又は3に記載のインクジェット記録装置の奏する効果に加え、外気導入領域とインク抽出領域との間のインクの流通を許容する少なくとも1つの連通孔が、障壁のインク容器底部近傍となる位置に穿設されている。よって、外気導入領域内のインクをインク抽出領域へ流入させることができるので、インク容器内のインクをその底部近傍となるまで使い切ることができ、インクの使用効率を向上することができるという効果がある。
請求項5記載のインクジェット記録装置によれば、請求項2記載のインクジェット記録装置の奏する効果に加え、障壁が上端が開放した筒状の第1筒部材で構成され、且つ、抽出部材および外気導入部材より高い位置まで延びると共に抽出部材を囲んで配置されているので、インクが減少してその液面が筒状に形成された障壁の上端より低くなった場合には、外気導入領域で発生した気泡を抽出部材が囲まれた第1筒部材の内部に流入することを抑制できるので、気泡を介して抽出部材と外気導入部材とが電気的に導通することを防止することができ、また気泡によって抽出部材を通してインクを供給することが不安定になることを防止することができるという効果がある。
請求項6記載のインクジェット記録装置によれば、請求項5記載のインクジェット記録装置の奏する効果に加え、第1筒部材の外側と内側との間の流通を許容する少なくとも1つの連通孔が、その第1筒部材のインク容器底部近傍となる位置に穿設されている。よって、外気導入領域内のインクをインク抽出領域へ流入させることができるので、インク容器内のインクをその底部近傍となるまで使い切ることができ、インクの使用効率を向上することができるという効果がある。
請求項7記載のインクジェット記録装置によれば、請求項5又は6に記載のインクジェット記録装置の奏する効果に加え、障壁は、外気導入部材を囲むように配置され上端が開放した筒状の第2筒部材を含んでおり、その第2筒部材のインク容器底部近傍となる位置には、第2筒部材の外側と内側との間のインクの流通を許容する少なくとも1つの第2連通孔が穿設されている。よって、インク容器内のインク液面が第2筒部材の上端より低くなり、さらにインクが減少することに伴い、第2筒部材内部のインクが外部側へ流通するので、外気導入部材より発生する気泡は、その大部分が第2筒部材内部に保持される。従って、気泡が第2筒部材の外部へ流出し、その気泡が第1筒部材の内部へ流入することをより確実に抑制でき、インクエンプティを正確に検出することができるという効果がある。また、第2筒部材内部のインクをインク容器の底部近傍となるまで外部に流出するので、インクの使用効率を向上することができるという効果もある。
請求項8記載のインクジェット記録装置によれば、請求項7記載のインクジェット記録装置の奏する効果に加え、第1連通孔と第2連通孔とは、第1連通孔と第2連通孔とを通って抽出部材と外気導入部材とを結ぶ距離が、バッファタンク内での抽出部材と外気導入部材とを結ぶ距離よりも長くなる位置に穿設されている。よって、検出手段により検出される電気的特性が電気抵抗値である場合、インク容器内の抽出部材と外気導入部材との間を結ぶ第1経路の抵抗値が、バッファタンク内の抽出部材と外気導入部材との間を結ぶ第2経路の抵抗値より大きくなり、インク容器内にインクがある状態とバッファタンク内にのみインクがある状態とで、電気的特性が大きく異なることがないので、インクエンプティを安定して判定することができるという効果がある。
また、インク容器内での抽出部材と外気導入部材との間を結ぶ距離が長くなるので、外気の導入に伴い発生する気泡を介して抽出部材と外気導入部材との間が電気的に導通することをより確実に防止することができるという効果がある。
請求項9記載のインクジェット記録装置によれば、請求項4,6から8のいずれかに記載のインクジェット記録装置の奏する効果に加え、抽出部材には、その抽出部材の中空状の内部とインク容器の内部とを連通する開口が形成され、インク容器の底部には、障壁の連通孔が形成された位置よりも下方で抽出部材の開口を開口させるように、その開口が配置される凹部が形成されているので、インクエンプティを検出する時点では、抽出部材の開口付近のインクの液面が連通孔の下縁よりも下がってインクカートリッジの底部のインクと抽出部材との電気的な導通が実質的に遮断され、確実にインクエンプティを検出することができる。その時点でまだ抽出部材の開口が凹部のインク中にあって、インクエンプティを検出する前に実質的にインクを抽出不能になることがない。
請求項10および11記載のインクカートリッジによれば、インクカートリッジ内のインクが抽出部材をとおして外部へ供給されインク液面が障蔽部材の上端よりも下がってもインクカートリッジの底部近傍までインクを使用することができる。その際、外気導入部材から導入される外気がインク中を通って気泡となっても、その気泡は障蔽部材によって、抽出部材側に流通するのを障蔽される。したがって、インクカートリッジ内のインクを消費した後は、気泡が外気導入部材と抽出部材とを接触させて両者間の電気的特性に影響を与えることがなく、正確にインクエンプティを判定することができる。
請求項12記載のインクカートリッジによれば、請求項10又は11に記載のインクカートリッジの奏する効果に加え、障壁によって、抽出部材が配設されたインク抽出領域と外気導入部材が配設された外気導入領域とを、インクカートリッジ内の底部近傍と上部とを超えてインクの連通を確保しつつ仕切る。よって、インクカートリッジ内のインク残量が多量にある場合には障壁の上部を超えてインクが流通して気泡を広い領域内で自然に消滅させることができ、インク残量が減少してインク液面が障壁の上部より低くなった場合には気泡の流通を抑えると共にインクカートリッジの底部近傍で抽出部材と外気導入部材との間の電気的な導通を確保することができるので、抽出部材を通してインクを安定して供給することができると共にインク残量が少ない状態においても、抽出部材と外気導入部材との間の電気的特性を維持することができるという効果がある。
請求項13記載のインクカートリッジによれば、請求項12記載のインクカートリッジの奏する効果に加え、障壁が、抽出部材および外気導入部材より高い位置まで延び板状で構成され、且つ抽出部材と障壁との間の距離に比べて外気導入部材と障壁との間の距離が長くなると共に、インク抽出領域のインクカートリッジ側面と障壁との間の距離に比べて外気導入領域のインクカートリッジ側面と障壁との間の距離が長くなる位置に配置されている。よって、外気導入領域で発生した気泡は、抽出部材および外気導入部材より高い位置まで延びた障壁により、インク抽出領域に流入するこをより確実に抑制できると共に、外気導入領域内で 自然に消滅したり保持されるので、気泡を介して抽出部材と外気導入部材とが導通することを防止することができるという効果がある。
請求項14記載のインクカートリッジによれば、請求項12又は13に記載のインクカートリッジの奏する効果に加え、外気導入領域とインク抽出領域との間のインクの流通を許容する少なくとも1つの連通孔が、障壁のインクカートリッジ底部近傍となる位置に穿設されている。よって、外気導入領域内のインクをインク抽出領域へ流入させることができるので、インクカートリッジ内のインクをその底部近傍となるまで使い切ることができ、インクの使用効率を向上することができるという効果がある。
請求項15記載のインクカートリッジによれば、請求項12記載のインクカートリッジの奏する効果に加え、障壁が上端が開放した筒状の第1筒部材で構成され、且つ、抽出部材および外気導入部材より高い位置まで延びると共に抽出部材を囲んで配置されているので、インクが減少してその液面が筒状に形成された障壁の上端より低くなった場合には、外気導入領域で発生した気泡を抽出部材が囲まれた第1筒部材の内部に流入することを抑制できるので、気泡を介して抽出部材と外気導入部材とが電気的に導通することを防止することができ、また気泡によって抽出部材を通してインクを供給することが不安定になることを防止することができるという効果がある。
請求項16記載のインクカートリッジによれば、請求項15記載のインクカートリッジの奏する効果に加え、第1筒部材の外側と内側との間の流通を許容する少なくとも1つの連通孔が、その第1筒部材のインクカートリッジ底部近傍となる位置に穿設されている。よって、外気導入領域内のインクをインク抽出領域へ流入させることができるので、インクカートリッジ内のインクをその底部近傍となるまで使い切ることができ、インクの使用効率を向上することができるという効果がある。
請求項17記載のインクカートリッジによれば、請求項15又は16に記載のインクカートリッジの奏する効果に加え、障壁は、外気導入部材を囲むように配置され上端が開放した筒状の第2筒部材を含んでおり、その第2筒部材のインクカートリッジ底部近傍となる位置には、第2筒部材の外側と内側との間のインクの流通を許容する少なくとも1つの第2連通孔が穿設されている。よって、インクカートリッジ内のインク液面が第2筒部材の上端より低くなり、さらにインクが減少することに伴い、第2筒部材内部のインクが外部側へ流通するので、外気導入部材より発生する気泡は、その大部分が第2筒部材内部に保持される。従って、気泡が第2筒部材の外部へ流出し、その気泡が第1筒部材の内部へ流入することをより確実に抑制でき、インクエンプティを正確に判定することができるという効果がある。また、第2筒部材内部のインクをインクカートリッジの底部近傍となるまで外部に流出するので、インクの使用効率を向上することができるという効果もある。
請求項18記載のインクカートリッジによれば、請求項14,16,17のいずれかに記載のインクカートリッジの奏する効果に加え、抽出部材には、その抽出部材の中空状の内部とインクカートリッジ内部とを連通する開口が形成され、インクカートリッジの底部には、障壁の連通孔が形成された位置よりも下方で抽出部材の開口を開口させるように、その開口が配置される凹部が形成されているので、インクエンプティを検出する時点では、抽出部材の開口付近のインクの液面が連通孔の下縁よりも下がってインクカートリッジの底部のインクと抽出部材との電気的な導通が実質的に遮断され、確実にインクエンプティを検出することができる。その時点でまだ抽出部材の開口が凹部のインク中にあって、インクエンプティを検出する前に実質的にインクを抽出不能になることがない。
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施例におけるインクジェット記録装置1を模式的に示した図である。
インクジェット記録装置1は、主に、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のカラーインクがそれぞれ充填された複数のインクカートリッジ2と、そのインクカートリッジ2を着脱可能に装着すると共に、インクカートリッジ2から中空筒状の抽出針51を介して供給されるインクを貯留するバッファタンク3と、そのバッファタンク3から供給チューブ4を介して供給されるインクを印字用紙Pに向けて吐出する印字ヘッド5と、印字ヘッド5が搭載され直線方向に往復動作するキャリッジ6と、このキャリッジ6が往復移動する際のガイドとなるキャリッジ軸7と、印字用紙Pを搬送する搬送機構8と、パージ装置9とを備えている。
インクカートリッジ2は、インクを貯留する貯留部を有しインクカートリッジ2の外枠となるケース2aと、ケース2aの底部開口部に嵌合固着され、抽出針51、中空筒状の外気導入針52を受け入れるための2つの挿入部21,22を有するスパウト2bとを備えている。ケース2aの内底部は、スパウト2a方向に向かって、ケース2aの側面内部から下方に傾斜した傾斜部33,34を有しており、インクIをスパウト方向に誘導可能に構成されている。
各挿入部21,22には、インクカートリッジ2の内部を密封状態にする栓23,24が圧縮状態で嵌入されている。スパウト2bは、2つの挿入部21、22の内端を囲んでインクカートリッジ2内にそれぞれ突出する筒状の第1及び第2障壁64、66を一体成形して備える。第1及び第2障壁64、66は、抽出針51、外気導入針52が栓23、24を貫通した状態で、それぞれ両針51、52を囲みかつその各針よりも高く延び、その内部を上端の開口65、67からインクカートリッジ2内と連通させている。これにより両針51、52は、障壁64、66内部をとおってインクカートリッジ2内のインクIと接する。
第1障壁64のインクカートリッジ2底部近傍となる位置には、その第1障壁64の内側と外側との間を連通する第1連通孔62が穿設されており、第2障壁66のインクカートリッジ2底部近傍となる位置には、その第2障壁66の内側と外側との間を連通する第2連通孔63が穿設されている。両連通孔62、63の大きさは、インクIの流通を許容するが気泡は第2障壁66内に保持して流通させないように設定される。
また、第1連通孔62と第2連通孔63とは、その第1連通孔62と第2連通孔63とを通って抽出針51と外気導入針52とを結ぶ距離(図1における経路aの長さ)、および第1障壁64および第2障壁66との上端を超えて両針51、52を結ぶ距離(図1における経路bの長さ)のいずれもが、バッファタンク3内での両針51、52を結ぶ距離(図1における経路cの長さ)よりも長くなるように、両障壁64、66の側面の対向しない位置に、好ましくは互いに反対側の位置に穿設されている。
図1のように、抽出針51の外周を外気導入針52の長さよりも長い範囲にわたって絶縁材で被覆しているものでは、仮に、連通孔62、63を両障壁64、66の対向する側面に設けたとき、連通孔62、63を通って両針51、52を結ぶ距離と、バッファタンク3内での両針51、52を結ぶ距離とが略同等となり、かつ後述するインク残量を判定する際にインクIを介しての電気的な導通経路がインクカートリッジ2内とバッファタンク3内とで並列に形成されることになる。かかる場合では、インクカートリッジ2内の経路aと、バッファタンク3内の経路cとによって両針51,52間が導通している状態では、両針51,52間の合成抵抗値Rは、経路aの抵抗値をR1、経路cの抵抗値をR2とすると、1/R=1/R1+1/R2となる。経路aと経路cとの長さが略同等であると、抵抗値R1と抵抗値R2も略同等となり(R1≒R2)、合成抵抗値Rは抵抗値R2の略半分となる(R=0.5R2)。また、インクカートリッジ2内のインクIがなくなりバッファタンク3内の経路cのみが導通している場合の合成抵抗値Rは、経路cの抵抗値R2となる(R=R2)。
後述するように、バッファタンク3内のインクIが外気導入針52から離れる、すなわち経路cが遮断されることで、インクエンプティを検出するものでは、その直前に、インクカートリッジ2内のインクIがなくなることで、合成抵抗値Rが2倍になってさらに経路cが遮断され、検出動作が不安定になりやすい。
しかし、第1実施例では、連通孔62,63を両障壁64,66の互いに反対側となる側面に形成し、経路aの長さが経路cよりも十分に(好ましくは数倍以上)長くなるように構成しているので、抵抗値R1が抵抗値R2よりも十分に大きくなり、経路aと経路cとの両経路が電気的に導通している状態では、合成抵抗値Rは抵抗値R2に近づく。従って、インクカートリッジ2内にインクIがあり経路aと経路cとの両経路が電気的に導通している状態から、バッファタンク3内にのみインクIがあり経路cが電気的に導通している状態へ変化したときの合成抵抗値Rの変化量を小さくでき、検出動作の誤動作がなく、インクエンプティを安定して判定することができる。
また、スパウト2bは、挿入部21と挿入部22、第1障壁64と第2障壁66は、それぞれ同じ大きさに形成され、それらの中間に位置しかつ各挿入部および障壁の軸線方向と平行な中心線を基準として対称に形成されている。従って、2つの挿入部21、22のどちらに抽出針51及び外気導入針52を挿入しても同様に機能するから、ケース2aにスパウト2bを固着する際、両者の組み付け方向を配慮する必要がない。
バッファタンク3の天井壁には、前記抽出針51と外気導入針52とが貫通して互いに平行に固定されている。両針51、52は導電性材料で構成され、インクIの残量検出のための電極を兼ねる。両針51、52の間は、栓23、24およびスパウト2bにより電気的に絶縁されている。両針51、52の上端はバッファタンク3の上面からインクカートリッジ2に向け突出し、両針51、52の下端はバッファタンク3内で高さ方向に相互に差を持って位置し、抽出針51の下端はバッファタンク3内のインク中に浸漬し、外気導入針52の下端はそのインクに液面近傍で接触している。
バッファタンク3にインクカートリッジ2を装着すると、抽出針51及び外気導入針52の先端が栓23,24をそれぞれ突き刺して進入してインクIと接触する。なお、栓23,24は、ブチルゴム等の弾性材料からなり、抽出針51及び外気導入針52を突き刺し可能であり、また、上述したように圧縮状態で挿入部21,22に嵌入されているため、抜いた後でも弾性作用によって密閉状態に復元する。
バッファタンク3の上部には、上端が開放された外気接続路31が設けられており、この外気接続路31によって、バッファタンク3内の上部空間が大気に接続されている。
図1に示すように、バッファタンク3にインクカートリッジ2が装着された後、印字ヘッド5からインクIが印字用紙Pへ吐出されると、その吐出分のインクIが供給チューブ4を介してバッファタンク3から印字ヘッド5へ供給される。このインクIの供給に伴ってバッファタンク3内のインクの液面高さが降下し、外気導入針52の下端開口部がバッファタンク3内の上部空間中に露出される。その結果、インクカートリッジ2内には、外気接続路31、バッファタンク3の上部空間を介して、外気導入針52から導入される。
インクカートリッジ2内に大気が導入されると、インクカートリッジ2内のインクが、抽出針51を介して、バッファタンク3内へ導入される。このバッファタンク3内へのインクIの導入により、バッファタンク3内では、インクIの液面高さが再び上昇し、外気導入針52の下端開口部がインクIに浸漬される。その結果、バッファタンク3内のインクIの液面高さは、外気導入針52の下端開口部を通る高さの近傍に保たれる。なお、この定常状態においては、抽出針51と外気導入針52とは、それぞれインクIと接触する状態となる。
その後、インクカートリッジ2内のインクIがすべて消費された場合には、次いで、バッファタンク3内のインクIが消費され、そのインクIの液面高さが低下され、このインクIの液面高さの低下により、外気導入針52がインクIと非接触の状態となる。
印字ヘッド5には、複数のノズルが設けられており、このノズルからバッファタンク3に貯留されたインクIが吐出される。また、印字動作時には、キャリッジ6が往復移動しながらインクIを吐出して印字用紙Pに印刷がなされる。さらに、パージ処理時には、印字範囲外に設定されているパージ位置に移動し、このパージ位置に設けらている廃インクタンク(図示せず)に向けて異物を含むインクIを排出する。
パージ装置9は、印字ヘッド5のノズルを閉塞する高粘度化したインクIやエア(気泡)等を吸引して、良好な吐出状態を回復させるパージ処理を実行する装置であり、印字ヘッド5がパージ位置にある場合に、印字ヘッド5の吐出面に当接して吐出面と密閉空間を形成するパージキャップ10と、インクを吸引する吸引ポンプ(PGポンプ)11とを主に備えている。なお、パージキャップ10は、吐出面に対して当接隔離する方向に移動可能に構成されている。
図2は、インクジェット記録装置1の電気的構成を示したブロック図である。インクジェット記録装置1を制御するための制御装置は、本体側制御基板60と、キャリッジ6に搭載されたキャリッジ基板61とを備えており、本体側制御基板60には、1チップ構成のマイクロコンピュータ(CPU)62と、そのCPU62により実行される各種の制御プログラムや固定値データを記憶したROM63と、各種のデータ等を一時的に記憶するためのメモリであるRAM64と、イメージメモリ67と、ゲートアレイ(G/A)66とが搭載されている。
演算装置であるCPU62は、ROM63に予め記憶された制御プログラムに従い、各種処理を実行するものである。また、印字タイミング信号およびリセット信号を生成し、各信号をG/A66へ転送する。このCPU62には、パージ装置9のPGポンプ(吸引ポンプ)11を駆動するためのPGポンプ駆動回路68、キャリッジ6を往復動作させるCRモータ69を駆動するためのCRモータ駆動回路70、搬送機構8に備えられ印字用紙Pを搬送する搬送モータ(LFモータ)71を動作させるためのLFモータ駆動回路72、印字用紙Pの先端を検出するペーパセンサ73、キャリッジ6の原点位置を検出する原点センサ74、各種の情報を表示する表示パネルやユーザが印刷の指示などを行う複数の操作子などを有する操作パネル75、インクエンプティを判定する第1電極としての抽出針51と第2電極としての外気導入針52との間の抵抗値を検出する検出回路76などがそれぞれ接続されている。これら接続される各デバイスの動作は、このCPU62により制御される。
G/A66は、CPU62から転送されるタイミング信号と、イメージメモリ67に記憶されている画像データとに基づいて、その画像データを印字用紙に印刷するための印刷データ(駆動信号)と、その印刷データと同期する転送クロックと、ラッチ信号と、基本駆動波形信号を生成するためのパラメータ信号と、一定周期で出力される吐出タイミング信号とを出力し、それら各信号を、ヘッドドライバが実装されたキャリッジ基板61へ転送する。
また、G/A66は、コンピュータなどの外部機器からセントロ・インターフェース(I/F)77を介して転送されてくる画像データを、イメージメモリ67に記憶させる。そして、G/A66は、コンピュータなどからI/F77を介して転送されてくるセントロ・データに基づいてセントロ・データ受信割込信号を生成し、その信号をCPU62へ転送する。なお、G/A66とキャリッジ基板61との間で通信される各信号は、両者を接続するハーネスケーブルを介して転送される。上記したCPU62と、ROM63、RAM64及びG/A66とは、バスライン45を介して接続されている。
キャリッジ基板61は、実装されたヘッドドライバ(駆動回路)によって印字ヘッド5を駆動するための基板である。印字ヘッド5とヘッドドライバとは、厚さ50〜150μmのポリイミドフィルムに銅箔配線パターンを形成したフレキシブル配線板により接続されている。このヘッドドライバは、本体側制御基板60に実装されたG/A66を介して制御され、記録モードに合った波形の駆動パルスを各駆動素子に印加するものである。これにより、インクIが所定量吐出される。
検出回路76は、電極としても構成される抽出針51と外気導入針52とに電圧を印加すると共に、その抽出針51と外気導入針52との間のインクIの電気抵抗値を検出する。検出された抵抗値に基づく出力はCPU62に入力され、CPU62は、その入力値に基づいてバッファタンク3内およびインクカートリッジ2内のインク残量を検知する。
即ち、定常状態(図1参照)においては、インクIによる導通経路が抽出針51と外気導入針52との間に形成されるため、抽出針51と外気導入針52との間には、所定の抵抗値(例えば、略10kΩ〜略20kΩ)が検出されるが、バッファタンク3内のインクIが消費され、インク残量が外気導入針52よりも下方となった場合には、インクIによる導通経路が遮断されるため、上記抵抗値が極めて大きな値(例えば、略10MΩ〜略20MΩ)となる。CPU62は、この抵抗値変化に基づいて、インクエンプティを判定するのである。
次に、図3を参照して、インクカートリッジ2内のインク残量の状態変化について説明する。図3は、インクカートリッジ2およびバッファタンク3の縦断面図であり、図3(a)は、第1障壁64および第2障壁66よりインク液面が低くなった状態を示しており、図3(b)は、インクカートリッジ2内のインクIが無くなった状態を示しており、図3(c)は、バッファタンク3内のインクIが少なくなった状態を示している。なお、図中では、印字ヘッド5や供給チューブ4等が省略して図示されている。
インクカートリッジ2内にインクが多量にある状態(図1の状態)では、外気導入針52を介して導入される外気がインクを通して供給されるのに伴い発生する気泡Wは、第2障壁66の内部を通り、インクカートリッジ2の上方へ移動する。
その後、インクカートリッジ2内のインクIが消費され、インクカートリッジ2内のインクIの液面高さが第1障壁64および第2障壁66の上端より低くなると(図3(a)の状態)、外気導入針52から導入される外気によって発生する気泡Wは、第2障壁66の内部およびその周辺のインクIの液面上に残留する。
さらに、インクIが消費されて、インクカートリッジ2内のインクIが全て無くなると(図3(b)の状態)、インクカートリッジ2内部には、気泡Wのみが残留する。第2障壁66は、インクカートリッジ2底部近傍となる位置に第2連通孔63が穿設されているので、第2障壁66内側のインクIは外側に流出し、その内側に気泡Wの大部分が保持される。また、気泡Wが第2障壁66の外部へ流出したとしても、抽出針51が第1障壁64によりその周りを囲まれているので、気泡Wが第1障壁64内部へ侵入することを確実に防止している。よって、抽出針51と外気導入針52との間が気泡Wを介して電気的に導通することが防止される。
バッファタンク3内のインクIも消費されて、外気導入針52の下端開口部がインクIと非接触となると、抽出針51と外気導入針52との間の電気的な導通が無くなり、この状態がインクエンプティと判定される。
なお、外気導入針52がバッファタンク3内のインクと非接触となったことを検出したとき、操作パネル75の表示部にインク残量が少なくなったことを表示し、その後もインクジェット記録装置1の動作を継続して、印字ヘッド5から吐出したインク量およびパージ装置9で排出したインク量をソフトウエア的に計数しバッファタンク3内のインクを所定量消費したときに(図3(c)の状態)インクジェット記録装置1の動作を停止するように構成することもできる。
インクIが多量にある状態からインクIの液面高さが第1障壁64および第2障壁66の上端より低くなる状態へ変化する場合には、インクIの液面上に存在する気泡Wが第1障壁64の内部に侵入することも考えられるが、インクIの液面に対して第1障壁64の内径が極端に小さいことと、インクIの消費には時間を要するため時間経過と共に気泡が消滅したりインク液中に溶解するので、その気泡Wを介して抽出針51と外気導入針52との電極間が導通することはない。
以上、説明したように、第1実施例のインクジェット記録装置1は、第1障壁64と第2障壁66とによって、インクカートリッジ2内に発生する気泡Wにより抽出針51と外気導入針52との電極間が導通することを防止できる。よって、インクIの残量がインクエンプティの状態で、インクカートリッジ2内の気泡Wにより抽出針51と外気導入針52との間が電気的に導通することがないので、正確なインクエンプティを判定することができる。
次に、図4を参照して、第2実施例について説明する。第1実施例のインクカートリッジ2では、筒状に形成された第1障壁64と第2障壁66とによって気泡Wによる抽出針51と外気導入針52との間の電気的な導通を防止しているが、第2実施例のインクカートリッジ2では、板状に形成された障壁80によって気泡Wによる抽出針51と外気導入針52との間の電気的な導通を防止するように構成されている。図4は、第2実施例におけるインクカートリッジ2およびバッファタンク3の縦断面図である。なお、第1実施例と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
インクカートリッジ2は、底部に開口25,26が設けられており、各挿入部21,22内の栓につき刺された抽出針51と外気導入針52とがその開口25,26を通ってインクIと接している。
抽出針51と外気導入部材52との間には、インクカートリッジ2の底部から立ち上がって形成された板状の障壁80が配置されている。その障壁80のインクカートリッジ2底部近傍となる位置には、連通孔81が穿設されている。その連通孔81は、障壁80により仕切られた抽出針51が配設されるインク抽出領域と、障壁80により仕切られた外気導入針52が配設される外気導入領域との間でインクIの連通を許容するが気泡は阻止する大きさに設定されている。また、第1実施例同様に、インクカートリッジ2内部側面から底部に向かって傾斜した傾斜部33,34を備えており、連通孔81を介して外気導入領域のインクIがインク抽出領域に流入するので、インクカートリッジ2内のインクIの使い切りが良くなりインクIの使用効率が向上する。
障壁80の配置位置は、抽出針51と障壁80との距離に比して外気導入針52と障壁80との間の距離の方が長くなる位置に配置されると共に、抽出針51が配設されたインク抽出領域のインクカートリッジ2の側壁と障壁80との間の距離に比して、外気導入針52が配設された外気導入領域のインクカートリッジ2の側面と障壁80との間の距離の方が大きくなる位置に配置されている。そのため、外気導入領域の水平断面積は、インク抽出領域の水平断面積より極端に大きな面積となって構成されている。
よって、インクIが消費されてインクIの液面が障壁80の上端より低くなる状態では、障壁80によって気泡Wが外気導入領域からインク抽出領域に流入することを抑制すると共に、外気導入領域に発生した気泡Wは、その領域に保持されてると共に時間経過に伴い消滅したりインクI内に溶解するので、気泡Wを介して抽出針51と外気導入針52との間が電気的に導通することを防止できる。従って、正確なインクエンプティを判定することができる。
次に、図5を参照して、第3実施例について説明する。図5は、第3実施例のスパウト2b部分を拡大して示した拡大断面図であり、インクカートリッジ2内のインクIが最後まで抽出された状態を示している。
抽出針51および外気導入針52は、前記各実施例で使用したものと同様のもので、また公知の中空針と同様の構造であり、先端(上端)に、中空針の内部通路とインクカートリッジ2内部とを連通する開口51a、52aを有している。
第3実施例のスパウト2bは、第1実施例のものと同様に障壁としての第1および第2筒部材64,66を有し、両筒部材の内側下端に対応する各挿入部21,22に栓23,24を嵌入させている。この実施例では、栓23,24のインクと接する上面が、第1および第2の連通孔62,63の下縁から下方に深さHをもって配置され、両筒部材64,66の内側に、栓23,24の上面を底部とする凹部68,69が形成されている。
インクカートリッジ2は、バッファタンク3に接続したとき、両針51,52の開口51a、52aが凹部68,69の深さHの範囲内に位置するように、図示しない規制部材によりバッファタンク3に対する装着位置が規制されている。すなわち、この状態で、両針51,52の開口51a、52aは、第1および第2の連通孔62,63の下縁よりも下方で凹部68,69内で開口している。
図5に示すように、抽出針51からインクカートリッジ2内のインクが抽出され、インクカートリッジ2の底部上のインクIがなくなると、抽出針51を囲む凹部68内のインクが抽出される。その結果、凹部68内のインク液面Zは、インクカートリッジ2の底部よりも下になり、抽出針51と外気導入針52との間のインクを介しての電気的導通は実質遮断される。
仮に、図1の第1実施例のように、抽出針51および外気導入針52の開口が、連通孔62,63とほぼ同等の高さ、あるいはそれよりも高い位置にあると、抽出針51からインクの抽出ができなくなった状態でも、インクカートリッジ2の底部上に薄く残留したインクによって、抽出針51と外気導入針52とが電気的に高抵抗ながら導通してしまうことがある。検出回路で検出するインクエンプティの判断は、この高抵抗にもとづいて行うことができるが、より確実な検出が望まれる。
この第3実施例によれば、インクカートリッジ2の底部上に薄く残留したインクや気泡があっても、抽出針51を囲むインク液面は、インクカートリッジ2の底部とは下方に段差をもって位置するので、抽出針51からインクが抽出できなくなる前に、抽出針51と外気導入針52との間のインクを介しての電気的導通は実質遮断される。凹部68の内側面をインクが濡らしていたとしても、インクカートリッジ2の底部上に薄く残留するインクに比して微量であり、電気的にきわめて高抵抗であるから、インクエンプティの判断を第1実施例のものよりも確実に行うことができる。
以上実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記第1の実施例では、第1障壁64と第2障壁66とを設けるものとしたが、抽出針51が気泡Wと接触しなければ抽出針51と外気導入針52との間で電気的に導通することを防止できるので、第1障壁64のみを設けるものとしても良し、第2障壁66の高さをインクカートリッジ2の上部近傍まで延びる形状に構成して設けるものとしても良い。
また、上記実施例では、ケース2aに傾斜部33,34を設けるものとしたが、スパウト2bに傾斜部を設けて、インクカートリッジ2底部全体をスパウト2bとするものとしても良い。この場合、ケース2aの形状が簡略化されるので、製作効率をより向上することもできる。
また、第2実施例のインクカートリッジ2では、障壁80をインクカートリッジ2の底部から垂直に形成したが、障壁80を底部から上部に向かうに従って抽出針51側に傾斜する形状としたり、屈折部を設けるものとしても良い。
また、上記実施例では、インクカートリッジ2を装着した場合に、抽出針51と外気導入針52とがインクカートリッジ2内に挿入されるものとしたが、インクカートリッジ2に抽出針51と外気導入針52を一体的に固定し、両針をバッファタンク側に突き刺すようにしても良い。
第3実施例において、外気導入針52が挿入される側の第2筒状部材66内には、凹部69を必ずしも設けなくてもよい。また、第2実施例の構成にも、挿入部21の上端に第3実施例の凹部68を設けることもできる。