本発明は、電子写真法や静電記録法を用いて、着色トナー像を用紙等の転写材に形成する画像形成装置に係り、特に感光体や誘電体などの記録体に形成した静電電荷潜像を、その記録体の移動方向に沿って配置され、互いに逆方向に回転する第1現像ローラと第2現像ローラにより、磁性キャリアとトナーとを主成分とする2成分磁性現像剤で現像する画像形成装置に関する。
従来、電子写真法や静電記録法において、記録体である光導電感光体や誘電体に電荷潜像を形成し、これを互いに逆方向に回転する2本の現像ローラにより、磁性キャリアとトナーを主成分とする2成分磁性現像剤で現像する方式が、特許文献1(特公昭54−10869号公報)等に開示されている。
この方式は、現像能力が大きいために高画像濃度域での現像方向むらの発生を防ぐことができる反面、高抵抗現像剤を用いたとき、画像濃度DがD≦1である低画像濃度域や、網点或いは線構成の中間調画像では現像ブラシの方向にむらが残るという問題があった。
この問題を解決するために、特許文献2(特開平10−232562号公報)には、記録体の移動方向と逆方向に移動する第1現像ローラの周速(Vd1)と、記録体の周速(Vp)との周速比(S1=Vd1/Vp)を0.5〜2.5の範囲に規制し、且つ記録体の移動方向に移動する第2現像ローラの周速(Vd2)と、記録体の周速(Vp)との周速比(S2=Vd2/Vp)を1.5〜3.5の範囲に規制した装置が提案されている。
上記の提案にかかる現像装置では、記録体と現像ローラのギャップ(以下現像ギャップと称する)を0.5mmより広くとっていたが、現像ギャップが広く、高抵抗現像剤を用いた場合は、エッジ効果によって、ベタ画像の周辺部や、文字などの線画像へのトナー付着量が多くなるという問題を生ずる。このため、トナーを無駄に消費してしまうだけでなく、過剰に付着したトナーが転写時に飛散りを生じ、画像を不鮮明にしてしまうという問題がある。
このため本発明者は、現像ギャップを狭くすることを試みたが、現像ギャップを0.5mm以下に狭くすると、後端欠けが発生しやすくなってしまった。後端欠けとは、例えば縦横数cmの黒べた部を印刷する場合、黒べた部の後端の一部が欠けたり不鮮明になる現象を言う。
特公昭54−10869号公報
特開平10−232562号公報
J.J.Folkins:Intermediate ConductivitiesThe Crossover Function for Insulative and Conductive Two Component Magnetic Vrush Development in Electrophotography:IEEE−IAS Ann.Meeting Conf.Record,1510−1514(1985)
本発明は、上記のような従来の欠点を解決した画像形成装置を提供することを目的とする。具体的には、記録体の移動方向に沿って配置され、互いに逆方向に回転する第1現像ローラと第2現像ローラを備えた現像装置において、現像ギャップを約0.5mmより狭くした場合においても、画像の後端欠けが発生することなく、良質の画像を形成し得る画像形成装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために本発明は、所定の方向に回転する感光体ドラムの表面を帯電チャージにより一様に帯電した後、レーザビームで静電電荷潜像を形成し、その後、現像器により磁性キャリアとトナーとを主成分とする2成分磁性現像剤を用いて現像するようにした画像形成装置において、前記現像器は、前記感光体ドラムと同方向に回転する第1現像ローラと、前記感光体ドラムの回転方向に対し、前記第1現像ローラより下流側に配置され、前記感光体ドラムと逆方向に回転する第2現像ローラとを有し、前記第1現像ローラと前記感光体ドラムの間の第1現像ギャップ及び前記第2現像ローラと前記感光体ドラムの間の第2現像ギャップをそれぞれ0.1mm〜0.5mmとすると共に、前記第1現像ローラの直径を前記第2現像ローラより大きくして、前記第1現像ギャップを前記第2現像ギャップより狭くしたことに一つの特徴を有する。
本発明の他の特徴は、前記第1現像ギャップを前記第2現像ギャップより0.03〜0.05mm狭くしたことにある。
本発明によれば、現像ギャップを0.5mm以下に狭くすることにより、過剰なトナーの付着及び転写時の飛散りを防止できると共に、第1現像ローラの周速を第2現像ローラの周速より速くして、第1現像ローラと第2現像ローラによる現像トナー量のバランスをとることによって、後端欠けの発生も防止し得るという効果がある。
本発明に係る画像形成装置の具体的な実施形態を説明する前に、まず、本発明の基本原理について説明する。
本発明者は、互いに逆方向に回転する2個の現像ローラにより、記録体に形成した静電電荷潜像を現像する画像形成装置において、更に高画質化を図るべく感光体と現像ローラのギャップ、即ち現像ギャップを狭くした場合に生じる問題点の分析とその解決方法の理論的検討を行った。この理論検討を行うに当たり、非特許文献1を参考にし、この文献では正しい解が導かれていない記録体表面と現像ローラ表面の移動方向が逆の場合について検討を加え、初めて正しい解を見出した。
前記非特許文献1は、現像抵抗と印刷の絶対速度を考慮しており、現像によって感光体上に現像されて移動していく電荷量が、現像剤中を流れる電流と等しいという原理に基づくモデルである。これは、2成分磁気ブラシ現像での導電性現像と絶縁性現像の説明に用いられてきた現象を数式で表現したモデルである。
導電性現像と絶縁性現像は次のように説明される。現像抵抗が低い導電性現像の場合は、逆極電荷が磁気ブラシを通して速やかに中和されるので、更に次々と現像が継続的に進行して現像性が高くなる。一方、現像抵抗が高い絶縁性現像の場合は、磁気ブラシを通しての中和が遅く逆極電荷がいつまでも残ってしまうため、次の現像が進行しなくなるため現像性が低くなる。これを数式化したこの解析モデルは、磁気ブラシの抵抗で電流の流れ易さを考慮することで、導電性現像から絶縁性現像まで、現像抵抗については連続して扱えるようになっている。
この現像解析モデルを図2に示す。図2で感光体表面は周速vpで移動し、現像ローラのスリーブは周速vsで移動する。感光体表面は、図2の丸内に引き出したように、感光体上に現像されて感光体と同じ速度で移動する現像電荷量qと、磁気ブラシに残りスリーブと同じ速度で移動する残留逆電荷量Qが移動している。この電荷の合計の単位時間当たりの移動量が電流であり、キルヒホフの電流保存則の原理に基づいて、厚みb、誘電率εb、導電率σの現像剤層を流れる電流と等しいとするモデルである。
この解析モデルでは、現像ローラと感光体が同じ方向に移動する場合については正しい解が得られている。しかし、現像ローラと感光体が逆方向に移動する場合については、周速比を無限大にすると現像量も無限大になってしまうという矛盾が生じている。感光体上に現像される電荷量は、現像電位差と感光体の静電容量の積で決まる量が上限となるので、この非特許文献1の逆方向現像の解析結果は誤りであった。
本発明者は、この問題について検討を重ね、正しい解を得ることに成功した。以下、現像量の計算式の導出について説明する。
図2の現像モデルで、順方向現像、逆方向現像の現像電荷量の計算式(解析解)の導出を行う。
まず、厚み方向の電荷と電圧の関係式として数1が得られる。
ここで、スリーブに印加される直流電圧をVBとするとΔVは次式で表される。
導電率σの磁気ブラシを流れる電流I(X)が、感光体とスリーブの移動に伴ってプロセス方向に流れる電荷流の増減に等しいと置いて、数3が得られる。
ここで、
数1から数4を、qとQについて解いて、次式を得る。
ここで、
であり、R=1/σ,Dは積分常数である。
次に境界条件を適用して、積分定数Dを求める。電流の保存則より、現像域から総和として流出する電荷流は、磁気ブラシから流れこむ電流の総和と等しいとおけ、図3−1に示す記号を用いると数8を得る。
そして、次の境界条件を数8に代入することによって、数5、数6の積分定数Dが決定される。
(a)記録体と現像ローラの移動方向が同じ順方向の場合
図3−2のvp>0、vs>0の場合、現像域からの電荷の流出は、q(w)×vp+Q(w)×vsのみであり、数8で Q(0)=0、q(0)=0 とおく。
(b)記録体と現像ローラの移動方向が反対の逆方向の場合
図3−2のvp>0、vs<0の場合、現像域からの電荷の流出は、q(w)×vp−Q(0)×vsのみであり、数8で Q(w)=0、q(0)=0 とおく。
境界条件を代入して、積分常数を決定することによって次に示す解、即ち感光体上単位面積当たりに現像される電荷量の計算式が得られる。現像されるトナー重量は、この電荷量をトナー帯電量Q/Mで割ることによって求められる。なお、数9から数12は現像域w内の位置xでの電荷量であり、現像域を通過後の値は、xにwを代入して得られる。ここでは、逆方向現像の計算式中で、境界条件によって決められた指数関数内のwと明示的に区別するため、xの表記としている。
順方向の現像電荷量qj(jは順を意味する添え字)及び残留逆電荷量Qjは、数9、数10で表される。
逆方向の現像電荷量qg(gは逆を意味する添え字)及び残留逆電荷量Qgは、数11、数12で表される。
この計算式に基づいて、現像ギャップb=0.8mm、現像剤層の誘電率をεb=10ε(εは真空の誘電率)、感光層厚みp=30μm、誘電率をεp=3、感光体表面移動速度vp=0.5m/s、現像電位差ΔV=300V、現像域幅w=10mm、現像抵抗R=1.9×10の10乗Ωcm、トナー帯電量を20μC/gとし、周速比vs/vpを1.0から2.5まで、0.1毎に順方向と逆方向の現像トナー量を計算し、その比を求めた。その結果を表1に示す。
表1に示すように、同一の周速比では順方向の方が逆方向より、5〜6%程度現像トナー量が多い結果となっている。周速比1.0における順方向の現像トナー量は周速比1.1における逆方向の現像トナー量に等しく、周速比2.2における順方向の現像トナー量は周速比2.5における逆方向の現像トナー量と等しい。従って、逆方向の現像トナー量を順方向の現像トナー量と同じにするためには、逆方向の周速比を順方向より0.1〜0.3程度大きくする必要があることが分かる。
また現像ギャップが0.8mmと比較的大きい場合は、周速比が1.0〜2.5と大幅に変化しても順方向の現像ローラによる現像トナー量と逆方向の現像ローラによる現像トナー量の比は1.5〜1.6でほとんど変化しないことも分かる。
次に現像ギャップを変えた場合についての計算結果を示す。周速比vs/vp=1.5とし、現像ギャップを1.0mmから0.1mmまで狭くした場合の結果を表2に示す。現像ギャップと周速比以外の数値は表1の場合と同じである。
表2から分かるように、現像ギャップが0.6mm〜1.0mmと比較的大きい場合は、順方向の現像ローラによる現像トナー量と、逆方向の現像ローラによる現像トナー量との比(以下順逆トナー量比という)が1.05〜1.07と比較的小さいが、現像ギャップが小さくなるに従ってその比は徐々に大きくなり、現像ギャップが0.1mmになると、順逆トナー量比は1.11とかなり大きな値になる。
即ち、現像ギャップを狭くした場合に、画像の後端欠けが発生するようになったのは、逆方向の現像ローラによって現像されるトナー量が、順方向の現像ローラによる現像トナー量より大幅に少なくなったためと考えられる。つまり、逆方向の現像ローラは順方向の現像ローラに比べて画像の後端の現像性に、より大きく寄与していると考えられるが、順逆トナー量比が大きくなるに従って全体の現像トナー量のバランスが崩れ、後端欠けの現象が生じるようになったものと考えることができる。
以上のように本発明者による理論解析の結果は表1及び表2に示す実験結果とよく一致している。
これらの解析結果に基づいて本発明は従来技術とは逆に、感光体の表面移動方向と逆方向に表面が移動する第1の現像ローラの周速を、感光体表面と同方向に表面が移動する第2の現像ローラの周速より速くするように構成したものである。
以下、本発明画像形成装置の位置実施例について説明する。なお、本発明は、静電記録法や電子写真法を用いて、記録体上に形成された静電電荷潜像を現像してトナー像を得る画像形成装置全般に適用することができるが、以下説明の都合上、電子写真法による画像形成装置について述べる。
図1は、本発明の第1の実施例を示すレーザプリンタの構成図である。同図に示すように光導電性の感光体ドラム1は矢印A(時計回り)方向に回転し、その周囲には電子写真プロセス順に帯電チャージャ2、光書き込み用のレーザビーム3を発生する光学装置、現像器4、転写ローラ17、クリーナ29が配置されている。
感光体ドラム1の表面を帯電チャージャ2で一様に帯電した後、レーザビーム3で静電電荷潜像を形成する。ここで、本発明に適する感光体ドラム1の移動速度(周速)は10〜100cm/s、好ましくは20〜75cm/s程度である。感光体1の周速を上記のように選定する理由は、10cm/s未満のような低速では画像欠陥が出やすいためである。
感光体ドラム1の直径は40〜150mm、高速小形なプリンタを実現するに適する直径は60〜120mm程度、好ましくは60〜100mmである。帯電極性はプラス、マイナス何れでも良いが、この実施例ではマイナスとする。帯電電圧は−500乃至−1000Vの範囲であり、例えば−700Vに帯電する。レーザビーム3による露光はイメージライティング、即ち画像部を露光する方式である。
続いて現像器4で反転現像し、プラス極性のトナー像を感光体ドラム1上に形成する。レーザビーム3による露光をイメージライティングとは逆のバックグランドライティングとし正規現像しても良いが、本発明は反転現像の場合により大きな効果を発揮する。
現像器4は、感光体ドラム1と同方向(図1では時計方向)に回転する第1現像ローラ61と、感光体ドラム1と逆方向(図1では反時計方向)に回転する第2現像ローラ62を有する。両現像ローラ61及び62は、内部にそれぞれ固定されたマグネット51及びマグネット52を有し、これらマグネット51、52の磁力により、それぞれの現像ローラ61、62に磁性キャリアと着色トナー(磁性もしくは非磁性)とを主成分とする2成分磁性現像剤を吸着する。更に第1、第2現像ローラ61、62のそれぞれの回転により搬送し、現像剤を感光体ドラム1に接触せしめて電荷潜像を現像する。本実施例においては第1現像ローラ61と感光体ドラム1との現像ギャップ及び第2現像ローラ62と感光体ドラム1との現像ギャップは共に0.1mm〜0.5mmに設定されている。
現像磁極の磁束密度は700〜1200ガウス、感光体ドラム1の中心と第1、第2現像ローラ61、62の中心とを結ぶ線に対する現像磁極の中心がなす角度θは、第1現像ローラ61では回転手前0〜10度に、第2現像ローラ62では±10度に設定されている。トナーの帯電極性は感光体ドラム1の帯電極性と同極性のプラスである。
現像剤の搬送量は、規制板8と第1、第2現像ローラ61、62のギャップにより調整される。第1現像ローラ61にバイアス電源71、第2現像ローラ62にバイアス電源72が接続されて、共にトナーと同極性のプラスのバイアス電圧が印加される。例えば感光体ドラム1に加えられる帯電電圧V0がV0=−700Vのときには、−250〜−600Vのバイアス電圧が印加される。これらのバイアス電圧には100Hz〜10kHzの交流電圧を重畳してもよく、その場合の実効電圧の大きさは直流電圧の1/2〜2倍である。
現像器4内の現像剤は、切欠き羽根構造の一対のスクリュウオーガ11、12にて左右、前後に混合撹拌される。トナーをフィードローラ13から供給した際、速やかにトナーを現像剤中に分散せしめ、所定の帯電量にまで短時間で立ち上げることができるようにスクリューピッチや回転数を調整する。これにより、トナー補給時のかぶりや不均一現像の発生を防止できる。
斯くして混合撹拌された現像剤は、スクリュウオーガ12により第2現像ローラ62に吸着、搬送され、規制板8と第2現像ローラ62とのギャップを通過した現像剤が、第2現像ローラ62での電荷潜像の現像を行い、現像器4内に戻される。規制板8で規制された現像剤は第2現像ローラ62側に向かい吸着、搬送され、規制板8と第1現像ローラ61とのギャップを通過した現像剤が、第1現像ローラ61での電荷潜像の現像を行い、スクレーパ10を経て現像器4内に戻される。
第2現像ローラ部で規制された余剰の現像剤はガイド板9にてスクリュウオーガ部に戻される。第1、第2現像ローラ61、62での現像の際、感光体ドラム1上にトナーのみならず、キャリアが付着することがあるが、これを固定されたマグネット53を内蔵するキャッチローラ63にて引き戻し、その回転で現像器4内へ搬送、回収する。
キャッチローラ53には、付着キャリアの引き戻しを助けるために、感光体帯電電圧と同極性のバイアス電源73が接続され、感光体帯電電圧或いは第2現像ローラ62のバイアス電圧と同程度の電圧が印加されている。キャッチローラ63を装備することは、感光体ドラム1に付着したキャリアによる転写不良や感光体損傷等の不具合を避けたり、現像器4からのトナー飛散を防止するのに有用である。本実施例のように2本の現像ローラ61、62で現像する場合には、第2現像ローラ62が付着キャリアを除去する効果を有するため、マグネット53として安価なプラスティックマグネットを使用したり、或いは直径10mm程度の小形キャッチローラ53を使用することが可能となる。或いはマグネット53を除いた、単なる導電性ローラとすることも可能である。なお、印加する電圧に、第1、第2現像ローラ61、62の場合と同様の交流電圧を重畳すると、キャリアを除去する効果が増大する。
この構成の現像器4において、感光体ドラム1の周速度が20〜75cm/s、直径が60〜100mmであるとき、小形現像器にして大きな現像能力を得るに適した第1、第2現像ローラ61、62の直径は、感光体ドラム1の直径の1/3〜1/4である。例えば感光体ドラム1の直径が100mmであるとき、第1、第2現像ローラ61、62の直径は25〜30mmが好適である。
現像器4を配置する位置は図1に示すように、レーザビーム3での露光位置と2つの現像ローラ61、62の中心位置との成す角度を前述のθに設定すると、空間を効率よく使用でき、全体をコンパクトにまとめることができる。このようにできるのは、反転現像を採用しているためである。
本実施例では感光体ドラム1の感光体として、層厚25〜60μmの厚い有機光導電感光体が用いられ、現像剤としては反導電性現像剤が用いられている。また、第1現像ローラ61の周速比は第2現像ローラ62のそれより大きく設定され、第1現像ローラ61のバイアス電圧は、第2現像ローラ62のそれと同等乃至110%程度に選定されている。この結果、後述のように低画像濃度から高画像濃度に至るまで現像方向むらのない均一画像が得られる。
また反転現像を採用している本実施例では、第1現像ローラ61での現像の際、クリーニング機能が生じるために、感光体ドラム1へのトナーフィルミング現象を抑止できるので、感光体の寿命を長くすることができる。
記録紙14は、レジストローラ15、16にて感光体ドラム1上のトナー像と記録紙14との位置合わせをされつつ搬送され、転写ローラ17によりトナー像が記録紙14に転写される。転写ローラ17には、スイッチ18によりバイアス電源19及び20の一方が選択され、1000〜3000Vの電圧が印加される。
トナー像の転写時には、バイアス電源20が選択されて、転写ローラ17にプラス電圧が印加される。また記録紙間や記録動作のイニシャライズ時には、バイアス電源19が選択されて転写ローラ17にマイナス電圧が印加される。これにより転写ローラ17に付着したトナーを感光体ドラム1側に移行せしめ、転写ローラ17がトナーにより汚れるのを防止することができる。
消去ランプ21は記録紙14が通過しないときに感光体ドラム1上の電荷を減衰、消去するためのものである。消去ランプ21を転写位置に設けることで、記録紙14の先端部の電荷を減衰できるので、感光体ドラム1から記録紙14を分離し易くなる。記録紙14を感光体ドラム1から分離する際、除電針22で剰余の電荷を除電して分離を助ける。除電針22には、バイアス電源23が接続され、1000〜4000Vのマイナス極性の電圧が印加される。分離を更に安定にするために、このバイアス電圧には、3000Vから8000Vの振幅の交流電圧が重畳される場合もある。
転写後に記録紙14は、紙ガイド板24を経て、定着器25で加熱、加圧され、トナー像は定着される。定着器25は、内部にヒータ28を持つヒートローラ27、バックアップローラ26からなる。感光体ドラム1は、転写後に残るトナーをクリーナ29で除去し、次の作像に供される。クリーナ29は、ゴムブレード30、感光体ドラム1と接触回転するブラシ31、除去されたトナーを排出する排出クリーナ32からなる。
本発明を適用したレーザプリンタは、直径60〜100mmの感光体ドラム1を用いた小形プリンタであるにもかかわらず、記録速度が20〜75cm/sと高速で、且つ中間調の均一再現性に優れた画像をプリントできる。
なお、感光体は誘電率3〜5の場合、厚さ20〜60μm、好ましくは25〜50μmのものを用いる。これは電気力線の周辺効果を減じ、現像剤やクリーナブレードでの摩耗に対する裕度を確保し、感光体を長寿命とするためである。感光体の厚さが20μm未満では周辺効果が大きく、上述の画像欠陥が出やすく、寿命が短い。感光体の厚さが60μmを超えると光レスポンスの低下や残留電圧の増加が大きく、製作が難しい。感光層を厚くすることで生じる光レスポンスの低下や、残留電圧の増加による弊害は現像器4の設定位置θ、現像バイアス電圧の適正な設定及び補正により解消する。
現像剤のキャリアとしては、体積平均粒径20〜85μm、好ましくは35〜70μmのフェライトもしくはマグネタイトキャリアを用いる。20μm未満では感光体へのキャリア付着の増大、現像剤の流動性低下を来し、85μmを超すと画像濃度低下、画像乱れを知覚できてしまう。
これらキャリアのうち、飽和磁化密度40〜100emu/gのものが使用できる。40emu/g未満では搬送しづらく、100emu/gを超えると現像ブラシの剛性が大きくなり画質劣化を来す。現像磁極の磁束密度として適合する強さは700〜1200ガウスである。また、キャリアの表面に水溶性イオンが付着していると、現像剤の初期使用時におけるプリント枚数に対する経時的な帯電量変化が大きいので、キャリア製造後、水洗、乾燥処理したものを使用することが望ましい。また、表面をシリコン樹脂でコーティングしたキャリアを用いることとより望ましい。
トナーとしては、体積平均粒径4〜11μm、好ましくは5〜9μmのものを用いる。4μm未満では製作が困難であり、現像剤の流動性が低下する。11μmを超すと解像度が低下し、16本/mm以上の高解像度記録は困難である。キャリアがトナーで覆われる被覆率を0.3〜1.0、好ましくは0.4〜0.9とする。0.3未満ではトナー供給量が不足し、高画像が得られ難い。1.0を超すと帯電立ち上がり速度低下、画像かぶりの発生、トナー飛散等の弊害を発生し易くなる。
トナーの電荷量は絶対値で15〜30μC/g(感光体上に現像されたトナーの電荷量を測定)が好適である。例えば、トナー粒径7〜9μmの場合、17〜25μC/gが良好な結果を与える。15μC/g未満では過剰なトナー付着、トナー飛散が生じ、30μC/gを超すと画像濃度が不足する。
本発明に適する現像剤の動的電気抵抗率は、10の8乗〜10の11乗Ωcmの範囲であり、好ましいキャリアの動的電気抵抗率は10の7乗〜10の10乗Ωcmの範囲であることが見出された。ここで、動的電気抵抗率は、感光体ドラム1の代わりに金属(例えばアルミニウム)ドラムを用い、現像剤或いはキャリアを現像ローラ61、62で搬送した状態で、ドラム1に100Vの直流電圧を印加したときの電流値、ギャップ、接触幅、接触長より算出して求めた値である。
表3に、現像剤の動的電気抵抗率と現像トナー量の関係を示す。
表3から現像抵抗率が10の8乗Ωcm以下、10の11乗Ωcm以上では、順方向と逆方向の現像トナー量は同じになってしまうことが判る。本発明では第1現像ローラ61の周速を第2現像ローラ62の周側より早くすることにより現像トナー量を調整するので上記のように順逆現像トナー量が最初から等しい範囲は好ましくない。従って、本発明が効果を奏する現像抵抗率は、10の8乗〜10の11乗Ωcmとなる。キャリアの動的電気抵抗率を調整するには、キャリアにコーティングするシリコン樹脂にカーボンブラック等の導電性材料の添加量を調整することにより行うことができる。また、同じ条件のコーティングを施しても、キャリアのコア材を低抵抗のマグネタイトを用いれば抵抗を低くでき、高抵抗のコア材のマグネシウムフェライトを用いれば抵抗を高くできる。
次に一例として第1現像ローラ61及び第2現像ローラ62と感光体ドラム1の現像ギャップを0.3mmとしたとき、現像ローラの周速比とベタ画像の後端欠けとの関係を実験した結果について説明する。なお第1現像ローラ61の周速Vd1と感光体ドラム1の周速Vpとの比Vd1/Vpを周速比S1で表し、第2現像ローラ62の周速Vd2と感光体ドラム1の周速Vpとの比Vd2/Vpを周速比S2で表した。周速比S1、S2及び感光体ドラム1の移動方向は図1の矢印Aの方向を(+)としている。
またこの実験では画像欠陥を判別し易いように、ベタ部の画像濃度をD=1.3と若干薄めになるような現像バイアス電圧を印加している。この実験条件は、下記の通りである。
S2:1.5
感光体ドラム直径:100mm 有機感光体厚さ:23μm 比誘電率:約3
感光体ドラム周速Vp:410mm/s
第1、第2現像ローラ直径:30mm
第1、第2現像ローラと感光体ドラムの間隔:0.3mm
第1、第2現像ローラ現像磁極の磁束密度:1200ガウス
第1現像ローラと感光体ドラムとのなす角度:5°
第2現像ローラと感光体ドラムとのなす角度:0°
感光体ドラム帯電電圧V0:−550V
第1現像ローラのバアイス電圧Vb1:−400V
第2現像ローラのバアイス電圧Vb2:−400V
現像剤キャリア:マグネシウムフェライト 体積平均粒径65
飽和磁化密度5emu/g
動的電気抵抗値値2.0×10の9乗Ωcm
現像剤トナー:体積平均粒径8.5μm
電荷量−20μC/g現像剤:トナー被覆率0.5
動的電気抵抗値値1.9×10の10乗Ωcm
第1現像ローラの現像部での現像剤充填密度:33%
第2現像ローラの現像部での現像剤充填密度:33%
これらの条件で画像を形成し、そのときの黒ベタ後端部欠けが無くなるように第1現像ロールの周速比S1を調べた。
この結果、第1現像ローラ61の周速比S1を1.6以上にすると後端欠けを生じないことが見出された。第2現像ローラ62の周速比S2を1.5としているので、S1>S2のときに後端欠けが発生しないことになる。
更に第2現像ローラ62の周速比S2を1.0〜2.5の範囲で変化させたとき、第1現像ローラ61の周速比S1をS2より0.1〜0.5速くすることにより、後端欠けが見られなくなった。
図4は第2現像ローラ62の周速比S2を1.6とし、第1現像ローラ61の周速比S1を変化させたときのS1と順逆現像トナー量比との関係を示す。S1がS2より0.1大きいとき、即ちS1=1.7のときの順逆現像トナー量比は約1.06であり、S1がS2より0.5大きいとき、つまりS1=2.1のときの順逆現像トナー量比は約1.0であることが分かる。従って、周速比S1をS2より0.1〜0.5の範囲で大きくすると後端欠けが発生しないということは、順逆現像トナー量比が1.0〜1.06程度の範囲にあると後端欠けが生じないことを意味している。
以上説明したように、第1の実施例によれば、第1現像ローラ61及び第2現像ローラ62と感光体ドラム1との現像ギャップを0.1mm〜0.5mmとして線画像へのトナー付着量を適正化すると共に、周速比S1をS2より大きくすることによりベタ画像の後端欠けも生ずることがなく、高品質の画像を形成することが可能となった。
次に本発明の第2の実施例について説明する。本実施例は、第1現像ローラ61と感光体ドラム1との現像ギャップを、第2現像ローラ62と感光体ドラム1との現像ギャップより狭くして、第1現像ローラ61による現像性能を高めて、後端欠けを無くしたものである。
まず最初に、第1現像ローラ61及び第2現像ローラ62の直径を30mm、第1及び第2現像ギャップを0.4mm、周速比S1、S2を1.6とした。このときの順逆現像トナー量比は、図5に示すように1.07とかなり大きかった。
次に第1現像ローラ61の直径を30.1mmとし、第1現像ローラ61と感光体ドラム1との現像ギャップを0.35mmに狭くした。そのときの順逆現像トナー量を図5に示す。この場合、第1現像ローラ61の直径は30.1mmであり、第2現像ローラ62の直径30.0mmより僅かに大きいため、S1はS2より僅かに大きいが、その大きさの違いによる順逆現像トナー量の変化は小さい。即ち図5に示す順逆現像トナー量の変化は、主として現像ギャップの大きさの変化によってもたらされていると判断することができる。第1現像ローラ61の現像ギャップが0.4mmから0.35mmに狭められた結果、順逆現像トナー量比は約0.99となり、略1.0に近づくために後端欠けを無くすことができる。図5より、順逆現像トナー量比が0.99〜1.01の範囲にある第1現像ローラ61の現像ギャップは、0.35mm〜0.37mm程度である。即ち、第2現像ローラ62の現像ギャップ0.4mmより0.03mm〜0.05mm程度狭くすると順逆現像トナー量比が1.0に近くなり、後端欠けを無くすことができる。
本発明に係る画像形成装置の一実施例を示す構成図である。
現像の解析モデルを説明するための説明図である。
境界条件の適用モデルを説明するための説明図である。
境界条件の適用モデルを説明するための説明図である。
境界条件の適用モデルを説明するための説明図である。
本発明の第1実施例における第1現像ローラ周速比と順逆現像トナー量比の関係を示す説明図である。
本発明の第2実施例における第1現像ローラの現像ギャップと順逆現像トナー量比の関係を示す説明図である。
符号の説明
1:感光体ドラム
2:チャージャ
3:レーザビーム
4:現像器
14:記録紙
17:転写ローラ
25:定着器
29:クリーナ
61:第1現像ローラ
62:第2現像ローラ