JP4712413B2 - 可変光減衰器およびそれを備えた光学フィルタ - Google Patents

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Description

本発明は、例えば光通信等において利用される可変光減衰器およびそれを備えた光学装置に関し、特に、偏光回転素子として反射型の液晶偏光回転素子を備えた可変光減衰器およびそれを備えた光学フィルタに関する。
近年、光通信では大容量および高速化が推進されており、それに伴うバンド幅拡大の要求に応じて、様々な光デバイスが開発および導入されている。例えば、光通信における波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)のための波長選択スイッチやダイナミックゲインイコライザといったチューナブルフィルタ技術は、動的光ネットワークにおいて重要である。
高分解能のチューナブルフィルタを実現するために、レンズと、回折格子と、ピクセル化された複数の光学素子がアレイ化された光学デバイスとを備えた自由空間光学系が提案されている。このような自由空間光学系では、例えば、外部から入射側光ファイバを介して入射された光のビームがピクセル化された光学デバイスの所定の光学素子ピクセルに分波され、その分波光が、光学素子ピクセルで反射される。そして、その反射光が再び合波されて、出射側光ファイバに入射(結合)し、再び外部に出射される。
上記構成の自由空間光学系では、出射側光ファイバに入射する光量が、光学デバイスによって調整可能である。すなわち、ここでは、光学デバイスが、入射した光の減衰量を調整して前記光量を調整する可変光減衰器に相当する。例えば、アレイ化された可変光減衰器には、アナログティルトミラー方式や回折型のMEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)やDMD(Digital Micromirror Device)といったMEMS技術が開発および適用されている。
また、MEMSに代えて、液晶技術を利用した可変光減衰器がある。かかる可変光減衰器は、液晶の大きな複屈折、標準的なCMOS回路との集積の容易さ、および、液晶ディスプレイ技術に由来する液晶技術の成熟度の点から、動的光ネットワークの要求に応えるチューナブルデバイスを実現するための重要な方式の一つである。
液晶技術を利用した可変光減衰器は、MEMS技術を利用したものとは異なり、可動部品を必要としない。それゆえ、ミラー等の可動部品を要するMEMSでは、可動部品によって生じる摩擦、スティクション(可動部品が他の部材に付着する現象)、振動、帯電といった内部や外部の擾乱に起因して故障が生じる可能性が高いが、液晶を利用した可動部品を要しない可変光減衰器では、該故障の可能性がなく、よって、高信頼性を実現できる。
また、一般的に、MEMSを利用した可変光減衰器は、液晶を利用したものよりも高い駆動電圧を必要とし、さらに、MEMSが前述のように可動部品を備えることから、製造プロセスが複雑化する傾向がある。したがって、液晶を利用した可変光減衰器では、MEMSを利用した可変光減衰器と比較して、駆動電圧の低減化、コストの低減化および小型化が図られるとともに、標準的なCMOS回路と集積化するのに好適である。
図28は、液晶素子を備えた従来の可変光減衰器の構成を示す模式図である(例えば、特許文献1参照。)。図28に示すように、この可変光減衰器では、ファイバコリメータ271から出射された入射光L271が、偏光分離手段である入射側偏光ビームスプリッタ272に入射され、P偏光とS偏光とに分離される。このP偏光とS偏光とは、ともに偏光回転素子である液晶素子276に入射する。
ここでは、液晶素子276が、印加電圧を相互に独立して調整することができるように構成された2枚の45°ツイストネマティック液晶セル(以下、単に液晶セルと呼ぶ)274,275を貼り合わせて構成されている。液晶素子276に入射したP偏光およびS偏光が液晶セル274,275を透過する過程において、液晶素子276を出射する光の光量が調整される。
液晶素子276から出射された光は、さらに偏光合成手段である出射側偏光ビームスプリッタ273に入射し、ここで再び合波される。そして、合波された光は、出射側偏光ビームスプリッタ273の側面273a,273bから出射光L272,273としてファイバコリメータ278,279を介して出射される。
特開2001−13477号公報
上記の可変光減衰器では、入射側偏光ビームスプリッタ272と出射側偏光ビームスプリッタ273とをそれぞれ別個に設ける必要があるため、可変光減衰器を構成する部品点数が多くなる。そのため、小型化が困難であるとともに、コストの増加や製造プロセスの複雑化を招く。
また、P偏光およびS偏光が入射側偏光ビームスプリッタ272内を進む過程および出射側偏光ビームスプリッタ273内を進む過程において、両偏光の光路長に差が生じ、その結果、可変光減衰器のPMD(偏光モード分散)が劣化するおそれがある。
さらに、入射側および出射側偏光ビームスプリッタ272,273の各偏光軸が、両者共に液晶素子276の液晶ダイレクタに対して適切な角度に配置されていないと、PDL(偏光依存損失)が生じるおそれがある。
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、良好な光量調節が可能な小型の可変光減衰器およびそれを備えた光学フィルタを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の可変光減衰器は、外部からの光の入射および外部への光の出射を行う光入出射手段と、一対の電極の間に挟持され、該電極間に印加される電圧の制御により複屈折特性を制御可能な液晶を備え、前記液晶の複屈折特性を制御することにより前記光入出射手段を介して入射された光を前記光入出射手段側に反射させる液晶偏光回転素子と、前記光入出射手段と前記液晶偏光回転素子との間に配置され、前記光入出射手段を介して入射された光を偏光分離するとともに前記液晶偏光回転素子で反射された光を偏光合成して前記光入出射手段に導く複屈折板であって、分離された各偏光の該複屈折板内の各光路における光路長の差を補正可能に構成された光路長差補正複屈折板と、を備え、前記液晶偏光回転素子の前記液晶の複屈折特性を制御することにより、前記光入出射手段から出射される光の光量が制御されることを特徴とする。
具体例として、本発明の可変光減衰器は、上記の可変光減衰器において、前記光路長差補正複屈折板が、サバール板で構成されることを特徴とする。
また、本発明の可変光減衰器は、上記の可変光減衰器において、前記光路長差補正複屈折板が、前記光入出射手段と前記液晶偏光回転素子との間に配置され、前記光入出射手段を介して入射された光を偏光分離するとともに前記液晶偏光回転素子で反射された光を偏光合成して前記光入出射手段に導く複屈折板と、1/2波長板とを組み合わせ、分離された各偏光の該複屈折板内の各光路における光路長の差を補正可能に構成されることを特徴とする。
具体例として、本発明の可変光減衰器は、上記の可変光減衰器において、前述した光路長差補正複屈折板が、2枚の複屈折板板の間に前述した1/2波長板を挟持した変形サバール板で構成されることを特徴とする。この変形サバール板は一般に知られている(例えば文献:鶴田匡夫著「応用光学2」培風館(1990年)157〜158頁)に構成が記載されているものを用いることができる。
さらに本発明の可変光減衰器において、光路長差補正複屈折板と液晶偏光回転素子との間に、偏光を回転させる偏光回転用1/2波長板をさらに有することを特徴とする。
また、本発明の可変光減衰器は、上記の可変光減衰器において、前記液晶偏光回転素子が、一軸性可変波長板であることを特徴とする。
また、本発明の可変光減衰器は、上記の可変光減衰器において、前記液晶偏光回転素子の前面に、前記液晶の残留複屈折特性を打ち消す方向に結晶軸を有する残留複屈折補正板をさらに有することを特徴とする。
具体的には、本発明の可変光減衰器は、上記の可変光減衰器において、前記液晶偏光回転素子は、第1の電圧が印加されている時に、該液晶の前記複屈折特性により、前記反射されて該液晶から出射する光の偏光方向を90°回転させる1/4波長板となり、前記第1の電圧より大きい第2の電圧が印加された時に、該液晶の前記複屈折特性が消失するため前記偏光方向の回転が起こらず、よって波長板として機能せず、前記第2の電圧以下で前記第1の電圧以上の範囲で前記電圧を調整することにより該液晶の前記複屈折特性を調整して前記液晶の複屈折特性を調整し、それにより、所望の波長板とすることが可能な前記一軸性可変波長板であることを特徴とする。
また、本発明の可変光減衰器は、上記の可変光減衰器において、前記液晶偏光回転素子は、第1の電圧が印加されている時に、該液晶の前記複屈折特性が消失するため、波長板として機能せず、第2の電圧が印加された時に、該液晶の前記複屈折特性により、前記反射されて該液晶から出射する光の偏光方向を90°回転させる1/4波長板となり、前記第2の電圧以下で前記第1の電圧以上の範囲で前記電圧を調整することにより該液晶の前記複屈折特性を調整して前記液晶の複屈折特性を調整し、それにより、所望の波長板とすることが可能な前記一軸性可変波長板であることを特徴とする。
また、本発明の可変光減衰器は、上記の可変光減衰器において、前記液晶偏光回転素子の前方に入射偏光の偏光状態を変換する液晶偏光回転素子の複屈折特性を打ち消す方向に結晶軸を有するスイッチングモード反転波長板をさらに有し、前記液晶偏光回転素子は、第1の電圧が印加されている時に、該液晶と波長板との合成複屈折特性が消失するため前記偏光方向の回転が起こらず、よって波長板として機能せず、前記第1の電圧より大きい第2の電圧が印加された時に、該液晶の前記複屈折特性と波長板との合成複屈折により、前記反射されて該液晶から出射する光の偏光方向を90°回転させる1/4波長板となり、前記第2の電圧以下で前記第1の電圧以上の範囲で前記電圧を調整することにより該液晶の前記複屈折特性を調整して前記液晶の複屈折特性を調整し、それにより、所望の波長板とすることが可能な前記一軸性可変波長板であることを特徴とする。
かかる構成では、例えば、ネマティック液晶や、表面安定型の強誘電液晶や、反強誘電液晶等のような液晶ディスプレイで実績のある液晶を利用して、一軸波長板が構成される。
また、本発明の可変光減衰器は、上記の可変光減衰器において、前記液晶偏光回転素子は、前記液晶がホモジニアス配向または垂直配向であり、該液晶への前記電圧印加により、該液晶の厚み方向に電界が形成されることを特徴とする。
また、本発明の可変光減衰器は、上記の可変光減衰器において、前記液晶偏光回転素子は、前記液晶がホモジニアス配向または垂直配向であり、該液晶への前記電圧印加により、該液晶のラテラル方向に電界が形成されることを特徴とする。
また、本発明の可変光減衰器は、上記の可変光減衰器において、前記液晶偏光回転素子は、前記液晶がホモジニアス配向または垂直配向であり、該液晶への前記電圧印加により、該液晶の厚み方向とラテラル方向とに電界が形成されることを特徴とする。
これらの構成によれば、例えば、厚み方向に形成された電界により、液晶のリタデーションを制御することが可能となり、ラテラル方向に形成された電界により、厚み方向と垂直なラテラル方向における液晶の長軸の配置方向を制御することが可能となり、また、両電界を同時に形成することにより、液晶のリタデーションと長軸の配置方向とを制御することが可能となる。そして、これらの制御により、液晶による偏光方向の回転を制御することが可能となる。
また、本発明の可変光減衰器は、上記の可変光減衰器において、前記液晶偏光回転素子の前記一対の電極の一方がSi基板上に形成され、かつ、該Si基板上に、前記電圧の制御を行う駆動用回路が配設されたことを特徴とする。
例えば、本発明の可変光減衰器は、上記の可変光減衰器において、前記駆動用回路が、相補型金属酸化物半導体集積回路であることを特徴とする。
また、本発明の可変光減衰器は、上記の可変光減衰器において、パルス幅変調方式により前記電圧の制御が行われることを特徴とする。
また、本発明の可変光減衰器は、上記の可変光減衰器において、前記一対の電極が、透明導電膜から構成される透明電極と、反射導電膜から構成される反射電極とから構成され、前記透明電極が、ITiO膜から構成されたことを特徴とする。透明電極が構成される場合よりもプラズマ反射を抑制することが可能となる。したがって、光減衰特性がさらに向上する。
また、本発明の可変光減衰器は、上記の可変光減衰器において、前記光入出射手段は光ファイバで構成され、かつ、光の入射用の光ファイバと光の出射用の光ファイバとが別個に配設されたことを特徴とする。
また、本発明の可変光減衰器は、上記の可変光減衰器において、前記光入出射手段は光ファイバで構成され、かつ、光の入射と光の出射とが共通の光ファイバにより行われることを特徴とする。
例えば、本発明の可変光減衰器は、上記の可変光減衰器において、前記光ファイバに、入射した光と出射する光とを分離する光サーキュレータが接続されたことを特徴とする。
また、本発明の可変光減衰器は、上記の可変光減衰器において、前記光ファイバの先端にファイバコリメータが取り付けられたことを特徴とする。
また、本発明の可変光減衰器は、上記の可変光減衰器において、前記光ファイバと前記光路長差補正板との間に集光用の光学レンズが配設されたことを特徴とする。
また、本発明の可変光減衰器は、上記の可変光減衰器において、前記ファイバコリメータから入出射する光のビーム径が50μm以下に設定され、前記ファイバコリメータと前記光路長差補正板との間で、直接、光の入出射が行われることを特徴とする。
また、本発明の可変光減衰器は、上記の可変光減衰器において、前記液晶偏光回転素子は、複数の液晶偏光回転素子ピクセルがアレイ化された構成を有し、各前記液晶偏光回転素子ピクセルの各前記液晶にピクセル毎に独立して前記電圧を印加可能に構成されたことを特徴とする。
また、本発明の可変光減衰器は、上記の可変光減衰器において、液晶偏光回転素子が、アレイ配列の長手方向に対して平行、または垂直の角度で液晶偏光回転素子ピクセル内のリタデーションが大きくなるときの液晶ダイレクタを配向することを特徴とする。
また、本発明の可変光減衰器は、上記の可変光減衰器において、前記液晶偏光回転素子では、共通の前記Si基板上に前記液晶偏光回転素子ピクセルと該液晶偏光回転素子ピクセルの駆動回路とが配設されたことを特徴とする。
また、本発明の可変光減衰器は、上記の可変光減衰器において、前記駆動回路を駆動させるドライバをさらに備え、該ドライバは、前記液晶偏光回転素子ピクセルの配設領域の上方と下方とにそれぞれ配設され、前記駆動回路が、隣接する前記液晶偏光回転素子ピクセルにおいて交互に上方のドライバおよび下方のドライバに接続されたことを特徴とする。
また、本発明の可変光減衰器は、上記の可変光減衰器において、前記光入出射手段が光ファイバで構成され、光の入射用の該光ファイバの配設数が前記液晶偏光回転素子の前記液晶偏光回転素子ピクセルの配設数と同じか、または、これよりも少ないことを特徴とする。
かかる構成において、光の入射用の光ファイバの配設数が液晶偏光回転素子の液晶偏光回転素子ピクセルの配設数と同じ場合、可変光減衰器の光減衰動作における1チャネルが、一つの液晶偏光回転素子ピクセルによって実現される構成となる。一方、光の入射用の光ファイバの配設数が液晶偏光回転素子ピクセルの配設数よりも少ない場合には、可変光減衰器の光減衰動作における1チャネルが、複数の液晶偏光回転素子ピクセルによって実現される構成となる。
また、本発明の光学フィルタは、上記の可変光減衰器を備えたことを特徴とする。
例えば、本発明の光学フィルタは、上記の光学フィルタにおいて、上記の可変光減衰器を備えるとともに、前記可変光減衰器の前記光入出射手段を介して入射した光を波長毎に分光する分光手段をさらに備え、該分光手段により分光された各波長の光が、前記可変光減衰器の前記光路長差補正複屈折板を介して前記液晶偏光回転素子の所定の前記液晶偏光回転素子ピクセルに入射されることを特徴とする。
本発明にかかる可変光減衰器によれば、分離された偏光間の光路長差を低減することができるため、PDLおよびPMDを低減することが可能となる。それにより、良好な光減衰特性を有する小型の可変光減衰器を実現できるという効果を奏する。また、このような可変光減衰器を備えた光学フィルタによれば、小型でかつ良好なフィルタ特性を実現できるという効果を奏する。
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる可変光減衰器およびそれを用いた光学装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。ここでは、本発明にかかる可変光減衰器として、液晶偏光回転素子を備えた反射型の可変光減衰器を例示する。また、本発明にかかる光学フィルタとして、該可変光減衰器を備えたチューナブルフィルタを例示する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる可変光減衰器(VOA)の構成および動作を示す模式図である。また、図2は、図1の可変光減衰器のサバール板の模式的な正面図である。また、図3および図4は、可変光減衰器の動作を説明するための模式的な部分側面図である。
図1に示すように、可変光減衰器は、端部にファイバコリメータ102が装着された入射側光ファイバ101と、レンズ103と、サバール板104と、液晶偏光回転素子105と、端部にファイバコリメータ106が装着された出射側光ファイバ107とを主たる構成要素として備える。ここでは、入射側および出力側光ファイバ101,107が、シングルモードファイバ(SMF)である。
かかる構成では、入射側光ファイバ101、ファイバコリメータ102、レンズ103、出射側光ファイバ107、ファイバコリメータ106およびレンズ103が光入出射手段に相当し、サバール板104が光路長差補正複屈折板に相当する。
上記各構成要素101〜107は、以下のような光の入射経路および出射経路が形成されるように配置されている。具体的には、光の入射経路では、入射側光ファイバ101に入射した光L1が、ファイバコリメータ102およびレンズ103を経てサバール板104に入射する。サバール板104を経た光L1は、さらに液晶偏光回転素子105に入射するとともに、ここで反射される。そして、光の出射経路では、反射された光L2が、出射光として再びレンズ103およびファイバコリメータ106を経て出射側光ファイバ107に入射し、その後、外部に出射される。
レンズ103の前面側の焦点に位置するように、入射側および出射側光ファイバ101,107のファイバコリメータ102,106側端部が配置されている。また、レンズ103の背面側の焦点に位置するように、液晶偏光回転素子105の反射電極65(図6参照)が配置されている。
なお、上記においては、可変光減衰器の各構成要素101〜107の配置を説明するために、可変光減衰器における光の入射経路および出射経路を簡略化して説明したが、実際には、入射した光L1および出射した光L2について、サバール板104における偏光成分の分離と、液晶偏光回転素子105における偏光の回転を考慮する必要がある。その詳細については、後述する。
サバール板104は、2枚の複屈折板104a,104bを貼り合わせて構成される複屈折板であり、複屈折板104a,104bは、ともに異方性材料であるルチル(TiO2)から構成されている。図2に示すように、複屈折板104aの光軸104a’と複屈
折板104bの光軸104b’とが直交するように貼り合わされている。
ここでは、複屈折板104a,104bの光軸104a’,104b’が、液晶偏光回転素子105が後述のように1/4波長板として機能する際の液晶ダイレクタの方向に対して、適切な角度をなすように、サバール板104と液晶偏光回転素子105との配置が設定されている。
なお、複屈折板104a,104bの構成材料は、ルチルに限定されるものではなく、これ以外であってもよい。例えば、イットリウムバナジウムオキサイド(YVO4)で複
屈折板104a,104bが構成されてもよい。
図5〜図13は、可変光減衰器を構成する液晶偏光回転素子105の構成および動作を説明するための図である。具体的には、図5は、液晶偏光回転素子105に用いられる液晶の複屈折特性を示す図であり、横軸が液晶に入射する光の波長を示し、縦軸が該光の実効複屈折率を示している。
また、図6〜図9は、液晶偏光回転素子105に厚さ方向の電界を形成する構成における液晶の動作を説明するための模式図であり、図10〜図13は、液晶偏光回転素子105にラテラル方向(横方向)の電界を形成する構成における液晶の動作を説明するための模式図である。
例えば図6に示すように、液晶偏光回転素子105(図3参照)は、前面基板105aと背面基板105bとの間に、液晶分子105d(なお、正確には、105dは、液晶ダイレクタを図示したものである)から構成された液晶層105cが狭持されて構成される。前面基板105aは、透明基板61の表面に、透明電極63としてITO膜が形成され、さらにその表面に、配向膜64が形成されてなる。ここでは、透明基板61として、ガラス基板が用いられている。
一方、背面基板105bでは、Si基板62の表面に、電極と反射膜とを兼ねるAl膜が形成されて反射電極65が構成されている。このように、液晶偏光回転素子105は、反射型の素子である。反射電極65の表面には、さらに配向膜64が形成されている。前面および背面基板105a,105bに形成された配向膜64は、ここでは、ラビング処理されたポリイミド配向膜である。この前面基板105aと背面基板105bとが、互いの配向膜64を対向させて所定の間隔をあけ配置されている。
ここでは詳細な図示を省略しているが、透明電極63と反射電極65とは駆動回路に接続されている。例えば、この場合、駆動回路は、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)回路によって構成されている。
前面基板105aと背面基板105bとの間に狭持された液晶層105cは、ホモジニアス配向のネマティック液晶から構成される。このようなネマティック液晶では、図5に示すように、実効複屈折率Δnが波長依存性を有する。
ところで、液晶の実効複屈折率Δnは、液晶ダイレクタの長軸(主軸)方向の屈折率neと短軸方向の屈折率noとの差であり、以下の式(1)で示される。
Δn=ne−no ・・・(1)
液晶偏光回転素子105の液晶層105cを構成する液晶の実効複屈折率Δnは、例えば透過型分光エリプソメトリ法で求められる位相差Δφから、以下の式(2)によって算出される。
Δn=λ/(2π・d)×Δψ ・・・(2)
なお、式(2)で、λは液晶層105cに入射する光の波長であり、dは液晶層105cの厚みであり、Δψは液晶層105cを出射する光の位相差である。
続いて、液晶偏光回転素子105における偏光回転動作について説明する。この偏光回転動作は、後述の可変光減衰器の光減衰動作に直接的に寄与するものである。
液晶偏光回転素子105における偏光回転動作の概要を簡単に説明すると、液晶偏光回転素子105では、液晶層105cへの電圧無印加時および低電圧印加時に、液晶層105c中の液晶分子105dが配向膜64に則した配向状態となり、よって、ネマティック液晶配向が規制される。それゆえ、この場合には、液晶層105cが複屈折性を示し、よって、液晶偏光回転素子105が一軸性の波長板として機能する。
ここでは、電圧無印加時および低電圧時に、液晶偏光回転素子105が、1/4波長板として機能するように設計されている。また、後述の図7および図11に示すように、この時には、液晶分子105dが入射光L71と45°の角度をなすように、液晶偏光回転素子105が設計されている。
一方、液晶層105cへの高電圧印加持には、該電圧によって形成される電界の影響を受けて、液晶分子105dがネマティック液晶配向となる。それゆえ、液晶偏光回転素子105は波長板として機能をしない。このように、液晶偏光回転素子105では、印加電圧の大きさを調整することにより、液晶分子105dの配向状態を液晶層105cの複屈折性を制御することができる。したがって、ここでは、液晶偏光回転素子105が、一軸性の可変波長板として機能している。
液晶偏光回転素子105の偏光回転は、液晶層105cに印加される電圧の大きさと、該電圧によって形成される電界の向きとの影響を受ける。以下においては、液晶層105cに厚み方向(縦方向)の電界が形成される場合と、ラテラル方向(横方向)の電界が形成される場合とを分けて説明する。
はじめに、液晶層105cに厚み方向の電界が形成される場合について説明する。まず、図6に示すように、液晶層105cへの電圧無印加時、および、液晶層105cに低電圧が印加されて厚み方向に弱い電界が形成される際には、液晶層105cの液晶分子105dは、長軸(主軸)を前面および背面基板105a,105bの表面にほぼ平行にした状態、すなわち該表面に沿って寝た状態であり、よって、液晶層105cが複屈折性を示す。
なお、液晶層105cに印加される電圧とは、具体的には、前面基板105aの透明電極63に印加される電圧と背面基板105bの反射電極65に印加される電圧とによって決まる実効電圧のことである。
液晶分子105dのかかる状態では、図7に示すように、波長λの光(すなわち入射光L71)が前面基板105a側から入射し、前面基板105aを透過して液晶層105cに入射すると、入射光L71が液晶層105c中を透過する過程において偏光方向が回転する。それにより、液晶層105cから出射した入射光L71のリタデーション(Δn・d)がλ/2となる。
液晶層105cから出射された入射光L71は、背面基板105bの反射電極65(図6参照)に到達し、ここで反射される。その反射光は、出射光L72として、再び液晶層105c中を入射光L71と逆向きで透過し、前面基板105aに出射される。この液晶層105cの透過の際に、出射光L72の偏光方向がさらに回転する。その結果、前面基板105aの透明基板61から外部に出射される出射光L72のリタデーション(Δn・d)が、λ/4となり、出射光L72の偏光方向74は入射光L71の偏光方向73に対して90°回転する。このように、この場合には、液晶偏光回転素子105が1/4波長板として機能する。
一方、図8に示すように、液晶層105cに高電圧が印加されて液晶層105cの厚み方向に強い電界が形成されると、液晶層105cの液晶分子105dは、長軸を前面および背面基板105a,105bの表面にほぼ垂直とした状態、すなわち、両基板間で立った状態となり、よって、この場合には、液晶層105cの複屈折性が消失する。
それゆえ、液晶分子105dのかかる状態では、図9に示すように、波長λの光(すなわち入射光L71)が前面基板105a側から入射し、前面基板105aを透過して液晶層105cに入射すると、液晶層105cを透過する過程で入射光L71の偏光方向は変化せず、よって、液晶層105cから出射した入射光L71のリタデーション(Δn・d)は0である。
液晶層105cから出射された入射光L71は、背面基板105bの反射電極65(図8参照)に到達し、ここで反射される。その反射光は、出射光L72として、再び液晶層105cを入射光L71と逆向きで透過し、前面基板105aに出射される。この液晶層105cの透過の際においても、出射光L72の偏光方向は回転しない。したがって、この場合には、前面基板105aの透明基板61から外部に出射される出射光L72のリタデーション(Δn・d)が0となり、出射光L72の偏光方向74は入射光L71の偏光方向73と同じとなる。このように、この場合には、液晶偏光回転素子105が波長板として機能しない。
次に、液晶偏光回転素子105の液晶層105cのラテラル方向、すなわち、上記の厚み方向と直交する方向であり、言い換えれば、前面基板105aおよび背面基板105bの表面の延在方向、に電界を形成する場合について説明する。
まず、図10に示すように、液晶層105cへの電圧無印加時、および、液晶層105cに低電圧が印加されてラテラル方向に弱い電界が形成される際には、図6の場合と同様、液晶層105cの液晶分子105dは、長軸を前面および背面基板105a,105bの表面にほぼ平行にした状態、すなわち該表面に沿って寝た状態である。
液晶層105cの液晶分子105dがかかる状態では、図11に示すように、波長λの入射光L71が、前面基板105aの透明基板61側から入射し、前面基板105aを透過して液晶層105cに入射すると、入射光L71が液晶層105cを透過する過程で偏光方向が回転する。
液晶層105cから出射された入射光L71は、背面基板105bの反射電極65(図10参照)に到達し、ここで反射される。その反射光は、出射光L72として、再び液晶層105cを入射光L71と逆向きで透過し、前面基板105aに出射される。この液晶層105cの透過の際に、出射光L72の偏光方向がさらに回転する。その結果、出射光L72の偏光方向74は、入射光L71の偏光方向73に対して90°回転した方向となる。
一方、図12および図13に示すように、液晶層105cに高電圧が印加されて液晶層105cのラテラル方向に強い電界が形成されると、液晶層105cの液晶分子105dは、長軸が、前面および背面基板105a,105bの表面と平行な仮想面において両基板の側部端辺と平行となるように配置される。このように、ラテラル方向の電界を形成することにより、液晶分子105dの長軸の配置方向を制御することが可能となる。
液晶分子のかかる状態では、図13に示すように、波長λの入射光L71が前面基板105a側から入射し、前面基板105aを透過して液晶層105cに入射すると、液晶層105cを透過する過程で、入射光L71の偏光方向が変化しない。
液晶層105cから出射された入射光L71は、背面基板105bの反射電極65(図12参照)に到達し、ここで反射される。その反射光は、出射光L72として、再び液晶層105cを入射光L71と逆向きで透過して前面基板105aに出射される。この液晶層105cの透過の際においても、出射光L72の偏光方向は回転しない。したがって、この場合には、前面基板105aの透明基板61から外部に出射される出射光L72の偏光方向74が、入射光L71の偏光方向73と同じとなる。
ところで、後述するように、液晶偏光回転素子105に入射する波長λの光は、液晶偏光回転素子105の前面側に配置されたサバール板104(図1参照)によって、直交する2つの直線偏光成分、すなわちP偏光とS偏光とに分離されている。このことから、液晶偏光回転素子105では、入射光L71は、P偏光である場合と、S偏光である場合がある。
液晶偏光回転素子105では、入射光L71がP偏光およびS偏光のいずれであっても、図6〜図13において前述した偏光回転動作が実施される。
続いて、上記のような液晶偏光回転素子105の動作を踏まえて、図1の可変光減衰器の動作を説明する。
図1に示すように、入射側光ファイバ101に導入された入射光は、ファイバコリメータ102によって平行光となりレンズ103に入射する。レンズ103を経た光L1は、さらにサバール板104に入射する。
図3および図4に示すように、前面側に配置されたサバール板104の複屈折板104aでは、入射した光が、偏光方向が互いに直交関係にある異なる2つの光、すなわち直線偏光のP偏光31とS偏光32とに分離される。なお、図3および図4においては、説明の便宜上、複屈折板104aに入射する前の段階で既にP偏光31とS偏光32とに分離されたように図示しているが、実際には、複屈折板104aに入射して分離が行われる。
例えば、分離されたP偏光31は、複屈折板104aの光軸104a’(図2参照)の方向にしたがって、複屈折板104a内を傾斜して進む。一方、S偏光32は、複屈折板104a内を水平に進む。このように複屈折板104a内を異なる光路で進行したP偏光31およびS偏光32は、さらに、複屈折板104bに入射する。
ここで、複屈折板104aはルチルから構成されていることから、複屈折板104aから複屈折板104bに出射されるP偏光31とS偏光32との距離kは、屈折板の厚さjを用いてk=j/10と表される。このように、P偏光31とS偏光32とは異なる光路で複屈折板104a内を進行するので、複屈折板104a内における両者の光路長には差が生じている。ここでは、P偏光31の光路長の方がS偏光32の光路長よりも長くなっている。
複屈折板104bに入射したP偏光31およびS偏光32は、異なる光路で複屈折板104b内を進行する。ここでは、前述の複屈折板104aの場合とは逆に、P偏光31が複屈折板104b内を水平に進み、一方、S偏光32が、複屈折板104bの光軸104b’(図2参照)の方向にしたがって、複屈折板104b内を傾斜して進む。このように、P偏光31とS偏光32とは異なる光路で複屈折板104b内を進行するので、複屈折板104b内における両者の光路長には差が生じている。ここでは、S偏光32の光路長の方がP偏光31の光路長よりも長くなっている。
ところで、サバール板104では、複屈折板104aを透過する過程で生じたP偏光31とS偏光32との光路長差と、複屈折板104bを透過する過程で生じたP偏光31とS偏光32との光路長差とが、等しくなっている。したがって、サバール板104全体で見ると、各複屈折板104a,104bで生じるP偏光31およびS偏光32の光路長差は相殺され、P偏光31およびS偏光32の光路長が等しくなっている。
上記のようにしてサバール板104を透過したP偏光31およびS偏光32は、さらに液晶偏光素子105に前面基板105a側から入射する。そして、液晶層105cを透過して背面基板105bの反射電極65(図6参照)で反射される。反射されたP偏光31およびS偏光32は、再び液晶層105cを透過して前面基板105aからサバール板104に向けて出射される。
ここで、このような液晶偏光回転素子105におけるP偏光31およびS偏光32の挙動は、図6〜図13において前述したように、液晶層105cに印加される電圧によって決定される液晶層105c中の液晶分子105dの状態によって異なる。したがって、以下においては、液晶偏光回転素子105が電圧無印加状態または低電圧が印加された状態である場合と、高電圧が印加された状態である場合とに分けて説明する。
なお、ここでは、液晶層105cに印加される電圧によって、図6〜図9に示すように液晶層105cの厚み方向の電界が形成されてもよく、また、図10〜図13に示すようにラテラル方向の電界が形成されてもよく、また、両電界が形成されてもよい。
まず、液晶偏光回転素子105の液晶層105cが電圧無印加状態または低電圧印加状態であると、前述の図6、図7または/および図10、図11において説明したように、液晶偏光回転素子105で反射されて出射するP偏光31およびS偏光32の偏光方向が、液晶偏光回転素子105に入射したP偏光31およびS偏光32の偏光方向に対して90°回転する。
図3に示すように、このように偏光方向が回転して液晶偏光回転素子105を出射したP偏光31およびS偏光32は、再びサバール板104の複屈折板104bに入射する。この時、P偏光31およびS偏光32ともに液晶偏光回転素子105によって偏光方向が90°回転していることから、複屈折板104bへのP偏光31およびS偏光32の入射光路は、前述の複屈折板104bから液晶偏光回転素子105への出射光路とは異なる光路となる。
複屈折板104bに入射したP偏光31は、複屈折板104b内を水平に進んで複屈折板104aに達する。そして、複屈折板104a内を光軸104a’(図2参照)に沿って傾斜して進んだ後、複屈折板104aから外部に出射される。ここで、P偏光31は、上記のように入射時とは異なる光路で複屈折板104bに入射していることから、複屈折板104b,104aを順次透過する際の光路は、入射時とは異なる光路となる。
一方、複屈折板104bに入射したS偏光32は、複屈折板104b内を光軸104b’(図2参照)に沿って傾斜して進んで複屈折板104aに達する。そして、複屈折板104a内を水平に進んだ後、複屈折板104aから外部に出射される。ここで、S偏光32は、上記のように入射時とは異なる光路で複屈折板104bに入射していることから、複屈折板104b,104aを順次透過する際の光路は、入射時とは異なる光路となる。
上記のように複屈折板104b,104aをP偏光31およびS偏光32が順次透過する際には、前述の入射時の場合と同様、複屈折板104bにおけるP偏光31とS偏光32との光路長差と、複屈折板104aにおけるP偏光31とS偏光32との光路長差とが相殺し合う。したがって、サバール板104全体から見れば、出射するP偏光31およびS偏光32では、光路長差が解消されている。
サバール板104から出射されたP偏光31およびS偏光32は、図1に示すように、レンズ103を透過し、その過程でP偏光31とS偏光32とが再合成される。ここで、合成されるP偏光31とS偏光32とは、上記のように液晶偏光回転素子105によって偏光方向が回転されて入射時と異なる出射光路をたどってきたため、両者を合成して得られた出射光L2の光路は、出射側光ファイバ107に入射可能な位置からずれたものとなる。
したがって、この場合には、出射光L2が、出射側光ファイバ107に入射されない構成となる。それゆえ、この可変光減衰器は、液晶偏光回転素子105に電圧を印加しない状態では、外部への出射光L2が0となるノーマリオフ(クローズ)型の可変光減衰器である。
一方、液晶偏光回転素子105の液晶層105cに高電圧が印加されると、前述の図8、図9または/および図12、図13において説明したように、液晶偏光回転素子105で反射されて出射するP偏光31およびS偏光32の偏光方向が、回転することなく液晶偏光素子の入射時と同じ偏光方向となる。
図4に示すように、このように入射時と同じ偏光方向を保持して液晶偏光回転素子105を出射したP偏光31およびS偏光32は、再びサバール板104の複屈折板104bに入射する。この時、P偏光31およびS偏光32は入射時と同じ偏光方向であるため、複屈折板104bへのP偏光31およびS偏光32の入射光路は、前述の複屈折板104bから液晶偏光回転素子105への出射光路と同じ光路となる。
複屈折板104bに入射したP偏光31は、複屈折板104b内を水平に進んで複屈折板104aに達する。そして、複屈折板104a内を光軸104a’(図2参照)に沿って傾斜して進んだ後、複屈折板104aから外部に出射される。ここで、P偏光31は、上記のように入射時と同じ光路で複屈折板104bに入射していることから、複屈折板104b,104aを順次透過する際の光路は、入射時と同じ光路となる。
一方、複屈折板104bに入射したS偏光32は、複屈折板104b内を光軸104b’(図2参照)に沿って傾斜して進んで複屈折板104aに達する。そして、複屈折板104a内を水平に進んだ後、複屈折板104aから外部に出射される。ここで、S偏光32は、上記のように入射時と同じ光路で複屈折板104bに入射していることから、複屈折板104b,104aを順次透過する際の光路は、入射時と同じ光路となる。
上記のように複屈折板104b,104aをP偏光31およびS偏光32が順次透過する際には、前述の入射時の場合と同様、複屈折板104bにおけるP偏光31とS偏光32との光路長差と、複屈折板104aにおけるP偏光31とS偏光32との光路長差とが相殺し合う。したがって、サバール板104全体から見れば、出射するP偏光31およびS偏光32では、光路長差が解消されている。
サバール板104から出射されたP偏光31およびS偏光32は、図1に示すように、レンズ103を透過し、その過程でP偏光31とS偏光32とが再合成される。ここで、合成されるP偏光31とS偏光32とは、上記のように入射光路と同じ光路をたどるため、両者を合成して得られた出射光L2の光路は、出射側光ファイバ107に入射可能な位置と一致する。したがって、この場合には、出射光L2が、出射側光ファイバ107に入射される構成となる。
さらに、上記においては、液晶偏光回転素子105が1/4波長板として機能して出射側光ファイバ107に出射光が導入されない場合(図3参照)と、液晶偏光回転素子105が波長板として機能しないので出射側光ファイバ107に最大量で出射光が導入される場合(図4参照)とについて説明したが、液晶偏光回転素子105の液晶層105cに印加する電圧の大きさを上記低電圧と高電圧との間で調整し、液晶分子105dの配向状態を図3と図4と間の状態に調整することにより、出射側光ファイバ107に導入される光の量を調整することが可能となる。
すなわち、液晶偏光回転素子105への印加電圧を調整することにより、可変光減衰器から出射される光量を、0から最大値まで変化させることが可能となる。ここで、可変光減衰器の最大出射光量とは、入射光が減衰されずに出射した時の光量、すなわち可変光減衰器の入射光量と等しい光量である。
なお、上記の説明では、入射する光L1と出射する光L2とが、レンズ103のサバール板104側で形成する入射面と、サバール板104の2つの光軸の張る平面のなす角について特に規定しなかったが、光L1の入射角が大きくなる場合は、入射面と、2つの光軸の張る平面とを直交に設定した方が、斜め入射に起因するP偏光31とS偏光32との光路差を小さくできるため好ましい。
このような可変光減衰器における出射光量変化は、可変光減衰器における減衰光量ATTを示す式(3)を用いて、以下のように説明される。
ATT(V)=−10 log(cos2〔2πΔn・d/λ〕)・・・(3)
まず、液晶偏光回転素子105に印加される電圧が低電圧または電圧無印加である場合(図3参照)について説明する。この場合、液晶偏光回転素子105が1/4波長板として機能し、液晶偏光回転素子105から出射される光(具体的にはP偏光31とS偏光32)のリタデーションΔn・dがλ/4となる。したがって、Δn・d=λ/4を式(3)に代入すると、この場合における可変光減衰器の減衰光量ATTが算出される。
具体的には、Δn・d=λ/4を式(3)に代入すると、式(3’)が得られる。
ATT(V)=−10 log cos2(π/2) ・・・(3’)
ここで、cos2(π/2)=0であることから、式(3’)に基づき、可変光減衰器の減衰光量ATTは∞となることが示される。可変光減衰器の減衰光量ATTが∞の場合とは、言い換えれば、可変光減衰器からの出射光量が0となる場合のことである。
一方、液晶偏光回転素子105に高電圧が印加される場合(図4参照)には、前述のように液晶偏光回転素子105が偏光方向を回転させることがなく、よって、液晶偏光回転素子105から出射される光(具体的にはP偏31光とS偏光32)のリタデーションΔn・dが0となる。したがって、Δn・d=0を式(3)に代入すると、この場合における可変光減衰器の減衰光量ATTが算出される。
具体的には、Δn・d=0を式(3)に代入すると、式(3’’)が得られる。
ATT(V)=−10 log cos20 ・・・(3’’)
ここで、cos20=1であることから、式(3’’)に基づき、可変光減衰器の減衰光量ATTは0となることが示される。可変光減衰器の減衰光量ATTが0の場合とは、言い換えれば、可変光減衰器からの出射光量が最大となる場合のことであり、より具体的には、入射光量と等しくなる場合のことである。
さらに、液晶偏光回転素子105への印加電圧を、可変光減衰器の減衰光量ATTが∞となる上記低電圧から減衰光量ATTが0となる上記高電圧との間で変化させると、液晶偏光回転素子105から出射する光のリタデーションΔn・dが0からλ/4までの範囲の値となり、よって、これらの値を上記式(3)に代入することにより、減衰光量ATTが0から∞の間の範囲の値となる。したがって、液晶偏光回転素子105への印加電圧をこのように調整することにより、可変光減衰器の光減衰量を任意に調整可能であることが、上記式(3)から明らかである。
以上のように、本実施の形態にかかる可変光減衰器によれば、サバール板104を配置することによって、分離したP偏光31とS偏光32との間で生じる光路長差を低減することが可能となり、その結果、PDL(偏光依存損失)およびPMD(偏光モード分散)の低減化が図られる。したがって、良好な精度で所望の波長の光を所望の光量に調整することが可能となる。
また、この場合、サバール板の配置という簡単な構成によってかかる効果が実現されるので、部品点数が少なく小型で製造が容易な低コストの可変光減衰器を実現することが可能となる。
また、MEMSを用いた可変光減衰器とは異なり可動部品を必要としないので高信頼性が実現できるとともに、低電圧での駆動が可能となる。
上記で説明をした実施の形態の可変光減衰器では、ノーマリオフ型として動作する減衰器の例を示した。この構成によれば、入射偏光の偏光方向を変換するための液晶偏光回転素子105の液晶層105cに印加する電圧の大きさが高電圧印加の場合に出射光量が最大光量とすることができるが、残留複屈折に起因する減衰が生じる。この減衰を改善するために、図1における液晶偏光回転素子105を構成する前面基板105aとサバール板104との間に、液晶層105cの液晶分子105dと直行する方向に結晶軸を持つ残留複屈折補正板(図示せず)を設けることが望ましい。さらに好ましくは、前面基板105aの液晶層105cとは反対側の面に接着してこの残留複屈折補正板を設けることが望ましい。この構成とすることにより、前述した出射光量の減衰を改善することができるようになる。
また、上述した本実施の形態のノーマリオフ型の可変光減衰器は、液晶偏光回転素子105の液晶層105cに印加する電圧の大きさが低電圧印加の場合に、この液晶偏光回転子105からの出射光量が最小光量となり、高電圧印加の場合に出射光量が最大光量となる機能を有するが、低電圧印加の場合に出射光量が最大光量となり、所定の高電圧印加の場合に出射光量が最小光量となるノーマリオン(オープン)型の可変光減衰器としても本発明の効果を得ることができる。
このノーマリオン型の可変光減衰器とする場合には、図1における液晶偏光回転素子105を構成する前面基板105aとサバール板104との間に、液晶偏光回転子105のリタデーションを打ち消す方向に結晶軸を持つ(例えば水晶板等の)スイッチングモード反転波長板(図示せず)をさらに配置する。これにより、このスイッチングモード反転波長板と液晶偏光回転素子105との合成複屈折が上記低電圧印加時に最小となる構成となり、低電圧印加の場合に出射光量が最大光量となり、所定の高電圧印加の場合に出射光量が最小光量となるノーマリオン型の可変光減衰器を実現することが可能となる。
また、上記構成に代えて、初期配向であるプレティルト角が垂直に近い配向となるように、例えば酸化シリコンを用いて斜方蒸着法で配向膜64(図6参照)を形成し、液晶層105cにネガ型液晶を用いたホメオトロピック配向を用いた構成としてもノーマリオン型の可変光減衰器とすることができる。
さらに、上記構成に代えて、入射光偏光方向73(図11参照)を、低電圧印加時に液晶層105cと平行となるように液晶分子105dの方向を設定した液晶層105cを用いてもノーマリオン型の可変光減衰器とすることができる。
(実施の形態2)
図14は、本発明の実施の形態2にかかる可変光減衰器の構成を示す模式図である。図14に示すように、本実施の形態の可変光減衰器は、可変光減衰器への光の入射と可変光減衰器からの光の出射とが、共通の光ファイバ1401を介して行われると共に、入射する光と出射する光とを分離する光サーキュレータ1402に光ファイバ1401が接続されている。
そして、光の入射の際に光ファイバ1401から出射される入射光、および、光の出射の際に光ファイバ1401に入射される出射光をコリメートするとともに集光する複合レンズ1403が、光ファイバ1401の端部とサバール板104との間に配設されている。それ以外については、実施の形態1と同様である。
本実施の形態の可変光減衰器の動作では、光ファイバ1401を介して可変光減衰器に光が入射され、この入射光が、複合レンズ1403を経た後に、サバール板104および液晶偏光回転素子105に順次到達する。そして、液晶偏光回転素子105で反射された光が、出射光として、入射時と逆の経路をたどって進む。
それにより、実施の形態1において前述したように、液晶偏光回転素子105の動作によって入射光が適宜減衰されて出射光量が所望光量に調節される。出射光が光ファイバ1401を介して外部に出射される時には、光サーキュレータ1402が、光ファイバ1401中の光路の切り換えを行って入射光と出射光とを分離する。
かかる構成の本実施の形態の可変光減衰器においても、実施の形態1で前述した効果と同様の効果が奏される。
さらに、この可変光減衰器では、光の入射および出射が共通の光ファイバを用いて行われるので、構成の簡素化がさらに図られる。
(実施の形態3)
図15は、本発明の実施の形態3にかかる可変光減衰器の構成を示す模式図である。図15に示すように、本実施の形態の可変光減衰器では、入射側光ファイバ101の端部に設けられたファイバコリメータ102が、該入射側光ファイバ101から出射される光L1のビーム径を50μm以下とするように構成され、また、出射側光ファイバ107の端部に設けられたファイバコリメータ106が、該出射側光ファイバ107に入射する光L2のビーム径を50μm以下とするように構成されている。
このように光のビーム径を小さくすることが可能なファイバコリメータ102,106を用いることにより、本実施の形態では、実施の形態1のようにレンズ等の光学系をサバール板の前面に配設する必要がない。したがって、部品点数を減らすことが可能となり、小型化が図られる。ここで、サバール板104の厚みが厚くなってもよい場合は、ビーム径を小さくする必要はなく、図示しないが例えば入射側光ファイバ101と出射側光ファイバとを同一の2芯ファイバコリメータに接続した構成とすることも可能である。
かかる構成の本実施の形態においても、実施の形態1において前述した効果と同様の効果が奏される。
(実施の形態4)
上記の実施の形態1〜3においては、液晶偏光回転素子105の前面基板105aにITO膜から構成される透明電極63が形成された場合について説明したが、本発明の実施の形態4として、ITO膜の代わりに、インジウムにTiがドープされたITiO膜を液晶偏光回転素子105が備えた構成の可変光減衰器について、以下に説明する。なお、本実施の形態では、ITiO膜以外の構成は、実施の形態1〜3のいずれであってもよく、ここではその構成の説明を省略する。
図6に示すように、近赤外領域の波長域の光に対する可変光減衰器の動作では、液晶偏光回転素子105の前面基板105aに透明電極63として配設される透明導電膜の透過率が重要である。一般に、液晶ディスプレイに用いられる液晶素子では、透明電極を構成する透明導電膜として、低抵抗のITO膜が用いられている。
ITO膜は、通常、近赤外領域においてプラズマ反射に起因して高い反射率を示す。したがって、液晶素子の透明電極としてITO膜を用いるには、導電率を十分保ったままでITO膜の電子濃度を低減する必要がある。
一般に、ITOは、過剰に錫がドープされ縮退したn型の酸化インジウムと見なせる。錫ドーパントと酸素欠損の両方がドナーとして作用してITOの電導に寄与している。このことから、液晶素子の透明電極に用いられるITOでは、酸素欠損を中程度に減らすために、通常の低抵抗ITO成膜時よりも、高い酸素分圧で成膜が行われる。または、ITOを薄膜化して高透過率化することが行われる。
例えば、上記の実施の形態1〜3では、透明電極63としてより高い透過率を実現するために、膜厚の薄いITO膜をガラス基板からなる透明基板61上に形成している。この場合、膜厚が15〜30nmの範囲であり、シート抵抗が500〜1000Ω/□のITO膜を、電子ビーム蒸着により形成している。
ここで、例えば透過率が90%以上となるように膜厚を17nmとしてITO膜を形成し、このITO膜のシート抵抗は1000Ω/□とする。このITO膜に波長1550nmの光が入射すると、この時のITO膜の複素屈折率n〜は、以下の式(4)にn=0.56およびk=0.95を代入して表される。
n〜=n+ik ・・・(4)
なお、nはITO膜の実効屈折率であり、kは実効消衰係数であり、iは虚数単位である。
このようなITO膜を屈折率nが1.52のガラス基板上に配設して該ガラス基板側から光を入射させると、ITO膜とガラス基板との界面で、入射光量の1/100程度の反射が生じる。
図6に示すように、実施の形態1〜3の可変光減衰器では、液晶偏光回転素子105の前面基板105aが、上記のようなガラス基板(透明基板61に相当)上にITO膜(透明電極63に相当)を配設した構成を有するため、ガラス基板とITO膜との間でこのような反射が生じる。その結果、可変光減衰器において光の損失が生じ、光減衰動作におけるノイズとなるおそれがある。
そこで、本実施の形態では、液晶偏光回転素子105の透明基板61上に、ITO膜の代わりにITiO膜を形成して透明電極63を形成する。ITiO膜は、錫の代わりにチタン(Ti)を酸化インジウムにドープすることにより構成される。
ITiO膜を用いることにより、本実施の形態では、ITO膜を用いた場合と同様の導電性を確保することができ、さらに、液晶偏光回転素子105の前面基板105aにおける透明基板61と透明電極63との界面での反射、すなわち、ガラス基板とITiO膜との界面での反射を抑制することが可能となる。
例えば、透過率が90%以上となるように膜厚を60nmとしてITiO膜を形成した場合、該ITiO膜に波長1550nmの光が入射した際の該膜の複屈折率n〜は、上記の式(4)に、n=1.6およびk=0.02を代入して表され、ITiO膜では、ITO膜と比較して消衰係数の低減化が図られる。その結果、ITiO膜をガラス基板上に形成した場合には、ガラス基板とITiO膜との界面での反射率を、1/1000オーダにまで低下させることが可能となる。
したがって、ガラス基板からなる透明基板61上にITiO膜が透明電極63として形成された前面基板105aを有する液晶偏光回転素子105を備えた可変光減衰器では、液晶偏光回転素子105において、上記反射による光の損失が抑制され、ノイズの低減化が図られる。また、上記のITiO膜のシート抵抗は250Ω/□であり、よって、ITiO膜では、電子濃度が低く高移動度の膜が実現される。
以上のことから、ITiO膜は、可変光減衰器の液晶偏光回転素子105の透明電極63を構成する透明導電膜として、最適な膜である。このITiO膜を用いることにより、より良好な特性の可変光減衰器を実現することができる。
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5にかかる可変光減衰器は、上記の実施の形態1〜4の可変光減衰器の液晶偏光回転素子105が、温度調節手段を備えた構成を有するものである。それ以外の構成は、実施の形態1〜4のいずれであってもよく、よって、ここでは液晶偏光回転素子105以外の構成の説明を省略する。
図16は、液晶偏光回転素子の特性の温度依存性を示す図であり、具体的には、液晶偏光回転素子がノーマリオフ状態である際に液晶偏光回転素子に印加される電圧の温度依存性、言い換えれば、可変光減衰器における光の減衰量が最大となる際に液晶偏光回転素子に印加される電圧の温度依存性、を示す図である。
また、図17は、本実施の形態にかかる可変光減衰器の液晶偏光回転素子の構成を示す模式的な断面図である。
図17に示すように、本実施の形態の可変光減衰器では、液晶偏光回転素子105の背面側(すなわち背面基板105bの裏面側)に、温度調節手段であるペルチェ素子1701の一方の表面が接合されており、ペルチェ素子1701の他方の表面は、支持部材1702の側板1702’に接合されている。
図6に示す液晶偏光回転素子105の液晶層105cを構成する液晶分子105dは、特に、温度が低い場合に、応答速度が遅くなる。そして、このような応答速度の変化に起因して、図16に示すように、光の減衰量が最大となる際の液晶偏光回転素子105の印加電圧が、温度に応じて変化する。このような印加電圧の温度依存性は、可変光減衰器における光の減衰特性を劣化させるおそれがある。
そこで、本実施の形態では、ペルチェ素子1701(図17参照)を用いて液晶偏光回転素子105の温度を、外部環境の温度変化にかかわらず一定に保持する。それにより、外部環境の温度が変化しても、液晶偏光回転素子105の液晶分子105d(図6参照)では、安定した応答速度が実現され、よって、図16のような液晶偏光回転素子105の印加電圧の温度依存性が解消される。したがって、可変光減衰器において、安定した光減衰特性が実現可能となる。
なお、上記においては温度調節手段としてペルチェ素子1701を用いる場合について説明したが、ペルチェ素子以外の温度調節手段を配設してもよく、例えば、ヒータを用いてもよい。ヒータを用いた場合には、ペルチェ素子を用いた場合よりも低コスト化が図られる。
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6では、上記の実施の形態1〜5の可変光減衰器の駆動方法について説明する。
本実施の形態における可変光減衰器の駆動方法では、パルス幅変調方式(以下、PWM方式と呼ぶ)を適用する。PWM方式で駆動する可変光減衰器では、液晶偏光回転素子105の駆動回路(具体的にはCMOS回路)の小型化を図ることが可能となるとともに、容易な駆動制御が可能となる。さらに、多階調の駆動回路を完全にデジタル回路だけで構成することが可能となる。このように、可変光減衰器をPWM方式で駆動することにより、アナログ回路を必要とするパルス高変調方式(PHM方式)で駆動する場合よりも、有利な効果が奏される。
具体的なPWM方式による可変光減衰器の駆動方法を図18〜図20を参照して説明する。図18は、図6の液晶偏光回転素子105の前面基板105aの透明電極63と背面基板105bの反射電極65とにそれぞれ印加される電圧の波形を示す図であり、図中の実線波形Aは、透明電極63への印加電圧を示し、点線波形Bは、反射電極65への印加電圧を示している。ここでは、縦軸が印加電圧の大きさを示しており、横軸が時間を示している。
図18に示すように、ここでは、液晶偏光回転素子105の透明電極63に、5Vの電圧が所定の周期で所定時間印加され、電圧波形が矩形状のパルスとなる(図中の実線波形A参照)。一方、反射電極65には、透明電極63への電圧印加とタイミングをずらして、5Vの電圧が、透明電極63の場合と同じ周期で印加される(図中の点線波形B参照)。したがって反射電極65に印加される電圧の電圧波形Bは、透明電極63の場合の電圧波形Aと同様の矩形状パルスとなり、かつ、両者の電圧波形の位相がずれて位相差が生じる。
なお、このような透明電極63および反射電極65への電圧印加は、例えば、CMOS回路によって制御される。
図19は、図18に示す透明電極63および反射電極65への電圧印加によって液晶層105c(図18の枠内参照)に印加される実効電圧の波形を示す図である。図の縦軸は実効電圧の大きさを示し、横軸は時間を示している。
図19に示すように、液晶偏光回転素子105においては、透明電極63および反射電極65(ともに図18の枠内参照)に印加される電圧の差が、液晶層105c(図18の枠内参照)に印加される実効電圧となる。したがって、実効電圧の波形は矩形状のパルスとなり、両電極63,65の電圧波形A,B(図18参照)の位相差が、該実効電圧波形のパルス幅Wとなる。
具体的に、ここでは、透明電極63の印加電圧から反射電極65の印加電圧を減算した値を液晶層105c(図6参照)の実効電圧としており、透明電極63の印加電圧が反射電極65の印加電圧よりも高い場合に、実効電圧が正となり、反射電極65の印加電圧が透明電極63の印加電圧よりも高い場合に、実効電圧が負となる。
また、該実効電圧の周期、すなわち、液晶偏光回転素子105の駆動周期R1は、透明電極63に印加される電圧の電圧波形周期と一致する。ここでは、この駆動周期R1の半周期を、リフレッシュ周期R2と定義する。
このように、本実施の形態では、可変光減衰器において、図18に示すように液晶偏光回転素子105の透明電極63および反射電極65への電圧印加のタイミングを調整することにより、液晶層105cに印加される実効電圧のパルス幅を調整することが可能となる。それにより、PWM方式による駆動制御が実現される。
図20は、図19のように実効電圧が印加された際の、可変光減衰器から出射される光の強度変化を示す図である。ここでは、縦軸に、可変光減衰器から出射される光の相対強度を示し、横軸に、時間を示している。
図20に示すように、実効電圧の印加時(すなわち、図19の期間t1,t3)には、前述のように液晶偏光回転素子105において偏光方向の回転が抑制されるので、光の減衰が抑制される。したがって、可変光減衰器から出射される光の強度が増加する。
一方、実効電圧が印加されない時(すなわち、図19の期間t2,t4)では、前述のように液晶偏光回転素子105において偏光方向が回転するので、光の減衰が大きくなり、よって、出射される光の強度が減少する。
したがって、可変光減衰器から出射される光の強度は、実効電圧の駆動周期R1(図19参照)に対応して周期的に変化する。このような出射光強度の変化では、1周期が、前述のリフレッシュ周期と等しくなる。
ところで、液晶偏光回転素子105の液晶層105c(図18の枠内参照)が応答速度の遅いネマティック液晶で構成される場合、液晶は、電圧波形の実効値に応答して動作するが、応答速度が高速であるネマティック液晶で構成される場合には、パルス波形そのものに応答して動作しようとする。これは、液晶の応答時間が、リフレッシュ周期R2(言い換えれば、パルス列の間隔)よりも短いことに起因する。
そして、このようなパルス波形応答の結果、出射光の強度が、パルス波形の影響を受けた光学応答を示し、「波形応答」現象が生じてしまう。具体的には、出射光の強度が、駆動周期R1(図19参照)に対応して変化する以外に、図20に示すように、常時微細に増減してフリッカを生じる。このようなフリッカの発生は、可変光減衰器を光通信の用途で用いるのに好ましくない。
そこで、本実施の形態では、このようなフリッカの発生を抑制するために、液晶のパルス波形応答を生じさせない長さのリフレッシュ周波数に設定する。具体的には、例えばネマティック液晶にMJ011580(メルクジャパン)を使用した場合、波形応答が生じなくなる臨界リフレッシュ周波数を40KHzと決め、この臨界リフレッシュ周波数以下に周波数を設定する。それにより、フリッカの発生を抑制することが可能となり、よって、可変光減衰器において、良好な光減衰特性を実現することが可能となる。
なお、ここでは5Vの実効電圧が印加される場合について説明したが、実効電圧の大きさはこれに限定されるものではなく、駆動法が液晶の電気光学応答に与える影響を考慮して、適宜、設定を行う。また、実効電圧の駆動周期も、上記に限定されるものではない。
(実施の形態7)
図21および図22は、本発明の実施の形態7にかかる可変光減衰器の構成を示しており、図21は平面図であり、図22は側面図である。また、図23は、図21および図22のアレイ化液晶偏光回転素子の全体構成を示す模式図である。
図21および図22に示すように、本実施の形態の可変光減衰器は、図1の実施の形態の1の構成を有する可変光減衰ユニット2100が、複数ユニット、アレイ化されて一体的に構成されている。なお、本実施の形態の可変光減衰ユニット2100は、実施の形態1以外に、実施の形態2〜6の構成を基本構成として構成されてもよい。
かかる構成では、各可変光減衰ユニット2100が、光減衰動作における1つのチャネルを形成する。したがって、本実施の形態では、多チャネル型の可変光減衰器が実現される。ここでは、4つの可変光減衰ユニット2100を備えた4チャネルの可変光減衰器を図示しているが、チャネル数はこれに限定されるものではない。後述の図23に示すように、光通信の用途で用いられる可変光減衰器は、非常にたくさんのチャネルを有している。
かかる構成の多チャネル型の可変光減衰器では、各チャネルを形成する可変光減衰ユニット2100が、実施の形態1において前述したように、先端にファイバコリメータ102,106が取り付けられた入射側および出射側光ファイバ101,107と、レンズ103と、サバール板104を備える。
ここでは、図21に示すように、入射側光ファイバ101と出射側光ファイバ107とが、平面視において重なり合うように平行に配置されている。また、各可変光減衰ユニット2100に共通のサバール板104が設けられている。
なお、上記の説明では、入射する光L1と出射する光L2がレンズ103のサバール板104側で形成する入射面と、サバール板104の2つの光軸の張る平面のなす角について特に規定しなかったが、光L1の入射角が大きくなる場合は、入射面と、2つの光軸の張る平面とを直交に設定した方が、斜め入射に起因するP偏光31とS偏光32との光路差を小さくできるため好ましい。
また、本実施の形態の可変光減衰器は、複数の可変光減衰ユニット2100に共通に設けられたアレイ化液晶偏光回転素子2101を備える。アレイ化液晶偏光回転素子2101は、複数の液晶偏光回転素子ピクセル2102が、同一のSi集積基板2103にアレイ化された構成を有する。液晶偏光回転素子ピクセル2102は、各可変光減衰ユニット2100に1対1で配設されている。すなわち、ここでは、各チャネルの可変光減衰ユニットの液晶偏光回転素子が一体化した構成となっている。
図23に示すように、アレイ化液晶偏光回転素子2101は、CMOS回路等の回路が集積されたSi集積基板2103に、該Si集積基板2103を共通の背面基板105bとする図6の構成の液晶偏光回転素子ピクセル2102が、一次元的に配列されアレイ化されている。
具体的には、Si集積基板2103上に、フレキシブルプリント回路(FPC)2301と、ラッチ回路2302と、駆動回路を(図示せず)有する上部ドライバ領域2303および下部ドライバ領域2305とが配設されている。そして、この上部および下部ドライバ領域2303,2305に挟まれて、一次元的(ここでは横方向に一列)に、複数の液晶偏光回転素子ピクセル2102がアレイ化されて液晶偏光回転素子ピクセルアレイ領域2304が形成されている。
ここでは図示を省略しているが、Si集積基板2103上には、フレキシブルプリント回路2301に接続するための接続パッドや、接続のための配線等が配設されている。
また、例えば、上部および下部ドライバ領域2303,2305は、PWM方式で12ビット階調の分解能まで実現可能な駆動回路(図示せず)で構成されている。この駆動回路によって、各液晶偏光回転素子ピクセル2102のCMOS回路(図示せず)がそれぞれ独立して制御され、それにより、各液晶偏光回転素子ピクセル2102に印加される電圧がそれぞれ独立して制御される。
図中の部分拡大図で示すように、例えば、液晶偏光回転素子ピクセルアレイ領域2304では、縦380μm×横23.8μmの矩形状の液晶偏光回転素子ピクセル2102が、1.2μmのピッチで512ピクセル配列されている。各液晶偏光回転素子ピクセル2102におけるセルギャップは、5μmである。各液晶偏光回転素子ピクセル2102は、上部および下部ドライバ領域2303,2305の駆動回路(図示せず)のピッチを広げるために、隣接するピクセル毎に交互に上下のドライバの駆動回路にそれぞれ接続されている。
かかる構成のアレイ化液晶偏光回転素子2101では、一つの液晶偏光回転素子ピクセル2102が、可変光減衰器の1チャネルに対応することから、このように512ピクセルを備えたアレイ化液晶偏光回転素子2101では、512チャネルが実現される。
このようなアレイ化液晶偏光回転素子2101では、液晶偏光回転素子ピクセルアレイ領域2304と上部および下部ドライバ領域2303,2305とが分離されているため、液晶偏光回転素子ピクセルアレイ領域2304を平坦化する必要がない。したがって、液晶偏光回転素子ピクセル2102がマトリクス状に配列された通常のアレイ化液晶偏光回転素子2101では、ドライバ領域の駆動回路上に各液晶偏光回転素子ピクセル2102を形成するので、液晶偏光回転素子ピクセルアレイ領域2304の平坦化処理が必須であるのに対して、本実施の形態の構成では、該平坦化処理が不要となり、よって、製造工程の簡略化が図られる。その結果、多チャネルのアレイ化液晶偏光回転素子2101を、小型でかつ簡単なプロセスで製造することが可能となる。
アレイ化液晶偏光回転素子2101を備えた多チャネル型の可変光減衰器では、各可変光減衰ユニット2100の動作により、チャネル毎に独立して実施の形態1において前述した光減衰動作が行われる。それにより、各チャネルにおいて、実施の形態1と同様の効果が奏される。
以上のことから、本実施の形態の可変光減衰器によれば、各チャネルにおいてPDLおよびPMDの低減化が図られて光減衰特性が向上した、小型でかつ製造が容易な多チャネル型の可変光減衰器を実現することが可能となる。
(変形例)
上記においては、図21に示すように、可変光減衰器のチャネルと液晶偏光回転素子ピクセル2102とが1対1で対応する場合について説明したが、本実施の形態の変形例として、チャネルと液晶偏光回転素子ピクセル2102とが1対1の関係にない構成であってもよい。具体的には、複数の液晶偏光回転素子ピクセル2102を含んで1チャネルが構成されてもよく、複数のチャネルが同一の液晶偏光回転素子ピクセル2102を含んで構成されてもよい。
例えば、ゲインイコライザに用いられる多チャネル型の可変光減衰器では、液晶偏光回転素子ピクセル2102(図21参照)間の間隙に起因する光学特性のリプルを低減するために、1チャネルが複数の液晶偏光回転素子ピクセル2102を含んで構成される。この場合、1チャネルを構成する可変光減衰ユニット2100(図21参照)において、入射側および出射側光ファイバ101,107(図21参照)の配設数と、アレイ化液晶偏光回転素子2101(図21参照)の液晶偏光回転素子ピクセル2102の配設数とが異なる。かかる構成は、例えば、プリズム等の光学素子を入射側および出射側光ファイバ101,107とアレイ化液晶偏光回転素子2101との間に適宜配設することにより実現される。
(実施の形態8)
本発明の実施の形態8では、実施の形態7の多チャネル型の可変光減衰器を備えた自由空間光学系のチューナブルフィルタについて説明する。ここでは、波長分割多重(WDM)システムで用いられるチューナブルフィルタについて説明する。
図24は、本発明の実施の形態8にかかるチューナブルフィルタの構成を示す模式図である。図24に示すように、本実施の形態のチューナブルフィルタは、可変光減衰器2400と、複合レンズ2403と、分光器2404とを備える。可変光減衰器2400は、実施の形態7で前述した構成を有するアレイ化液晶偏光回転素子2101と、サバール板104と、光サーキュレータ2401に接続された入出射用光ファイバ2402とから構成される。
ここでは、アレイ化液晶偏光回転素子2101を構成する複数の液晶偏光回転素子ピクセル2102の各々が、可変光減衰器2400の1チャネルを構成しており、各チャネルで各波長の光の減衰動作が行われる。また、ここでは、各チャネルに共通して1本の入出射用光ファイバ2402および1枚のサバール板104が配設されている。このような可変光減衰器2400は、チューナブルフィルタの光学系のフーリエ面2410に配置される。
かかる構成のチューナブルフィルタでは、可変光減衰器2400の入出射用光ファイバ2402に入射した波長多重の光(ビーム1)が、複合レンズ2403に向けて入出射用光ファイバ2402の端部から出射される。ここでは、複合レンズ2403として、リトローレンズが用いられている。
なお、ここでは、チューナブルフィルタにおける光の挙動の説明の便宜上、可変光減衰器2400のアレイ化液晶偏光回転素子2101およびサバール板104中に入出射用光ファイバ2402が埋設された図示となっているが、実際には、入出射用光ファイバ2402は、アレイ化液晶偏光回転素子2101およびサバール板104と空間を隔てて配置されている。
したがって、このように入出射用光ファイバ2402から複合レンズ2403に向けて光(ビーム1)が出射される際、および、後述する複合レンズ2403から入出射用光ファイバ2402に光(ビーム1)が入射する際には、光(ビーム1)は、サバール板104を介さない光路をたどる。また、後述のようにアレイ化液晶偏光回転素子2101における光(ビーム2,3)の入射および出射において、入出射用光ファイバ2402が光(ビーム2,3)の妨げとなることはない。
複合レンズ2403を透過した光(ビーム1)は、分光器2404に入射し、ここで波長毎に分離されて反射される。分離された各波長の光(ビーム2,3)は、再び複合レンズ2403に入射し、さらに、可変光減衰器2400に入射する。可変光減衰器2400では、各波長の光(ビーム2,3)が、実施の形態7において前述したように、サバール板104を経てアレイ化液晶偏光回転素子2101に入射し、各波長に対応したチャネルの液晶偏光回転素子ピクセル2102によって反射される。
アレイ化液晶偏光回転素子2101の各液晶偏光回転素子ピクセル2102で反射された光(ビーム2,3)は、再びサバール板104を経て複合レンズ2403に出射される。そして、複合レンズ2403を透過した光(ビーム2,3)は、再び分光器2404に入射し、ここで反射される。この反射された光(ビーム1)は、再び複合レンズ2403を経て入出射用光ファイバ2402に再び入射する。このように、本実施の形態のチューナブルフィルタでは、4fのテレセントリックの光学系が実現されている。
ここで、可変光減衰器2400のアレイ化液晶偏光回転素子2401では、チャネル毎に液晶偏光回転素子ピクセル2101の液晶配向状態が制御され、それにより、各チャネルに分配された各波長の光(ビーム2,3)の偏光方向の回転が、チャネル毎に制御される。
したがって、実施の形態1で前述したように、例えばアレイ化液晶偏光回転素子2101において、液晶の配向状態を図6の状態に制御して偏光方向を90°回転させたチャネルからの出射光(ビーム1)は、入射時と異なる光路をたどるので、入出射用光ファイバ2402に再び入射することができず、一方、液晶の配向状態を図8の状態に制御して偏光方向を回転させないチャネルからの出射光(ビーム1)は、入射時同一の光路をたどるので、入出射用光ファイバ2402に再び入射時と同じ光量で入射する。
このように、かかる構成では、各チャネルにおいて、液晶偏光回転素子ピクセル2102の液晶の配向状態を制御することにより、入出射用光ファイバ2402に入射する光の光量を、チャネル毎(すなわち、分離された波長の光毎)に、適宜、調節することが可能である。
入出射用光ファイバ2402に入射した光(ビーム1)は、該入出射用光ファイバ2402を通じて外部に出射される。この時、入出射用光ファイバ2402では、光サーキュレータ2401により、入射光と出射光とが分離される。
以上のように、本実施の形態のチューナブルフィルタにおいては、可変光減衰器2400の各チャネルに分配された各波長の光(ビーム2,3)の減衰を、波長毎にそれぞれ独立して実施することが可能となる。したがって、チューナブルフィルタに入射した波長多重の光を、波長毎に所望の強度で分離することが可能となる。
図25は、本実施の形態のチューナブルフィルタの特性を示す図であり、各チャネルのON/OFFを順次行った場合について示している。
この場合、実施の形態1において前述したように、可変光減衰器2400では、各チャネルにおける各波長の光減衰において、良好な特性が実現される。したがって、波長多重の光を、良好な特性で容易に分離することが可能となる。また、前述のように可変光減衰器2400の小型化が図られていることから、小型で構成の簡素化が図られたチューナブルフィルタが実現可能となる。
(実施の形態9)
図26は、本発明の実施の形態9にかかるチューナブルフィルタの構成を示す模式図である。図26に示すように、本実施の形態のチューナブルフィルタは、実施の形態8と同様の構成を有するが、光の入出射手段の構成が、実施の形態8とは異なっている。
具体的には、実施の形態8では光サーキュレータ2401および1本の入出射用光ファイバ2402(ともに図24参照)によって光の入出射手段が構成されるが、本実施の形態では、先端にファイバコリメータ2602,2605が取り付けられた入射側および出射側光ファイバ2601,2604と、リレーレンズ2603とによって、光の入出射手段が構成される。すなわち、本実施の形態では、チューナブルフィルタの光入射手段と光出射手段とが、別個に設けられている。
かかる構成の本実施の形態においても、実施の形態8において前述した効果と同様の効果が奏される。
なお、上記の説明では、入射する光L1と出射する光L2がレンズ2603のサバール板104側で形成する入射面と、サバール板104の2つの光軸の張る平面のなす角について特に規定しなかったが、光L1の入射角が大きくなる場合は、入射面と、2つの光軸の張る平面とを直交に設定した方が、斜め入射に起因するP偏光31とS偏光32との光路差を小さくできるため好ましい。
また、実施の形態8および実施の形態9においては、本発明にかかる可変光減衰器を、チューナブルフィルタに適用する場合について説明したが、ブロッキングフィルタなどこれ以外の用途への適用も可能である。
(実施の形態10)
図27−1は、図1の可変光減衰器の変形サバール板の側面図と、この側面図から見て入射ビーム側のa面のビーム位置、出射ビーム側のb面のビーム位置を示す模式図であり、図27−2は、図27−1における変形サバール板を下面側から見た際の入射ビームの進行を示す模式図であり、図27−3は、図27−1におけるa面から見た変形サバール板を構成する複屈折板と1/2波長板の結晶軸方向を示す模式図である。
実施の形態10において、実施の形態1と異なる点はサバール板104の構成にある。実施の形態1におけるサバール板104が、単に2枚の複屈折板104a,104bを貼り合わせる複屈折板であるのに対し、実施の形態10のおけるサバール板(変形サバール板)104は、図27−1に示すように、2枚の複屈折板104a,104bの間に、水晶からなる1/2波長板を介して貼り合わせて構成される複屈折板であり、複屈折板104a,104bは、ともに異方性材料であるルチル(TiO2)から構成されている。
また、図27−3に示すように、複屈折板104aの光軸104a’と複屈折板104bの光軸104b’のそれぞれの表面への射影成分が、ともに平行になるように、また、各光軸104a’、104b’に対して1/2波長板の光軸104c’が45度になるように、この複屈折板を構成する各部材が貼り合わされている。
この構成により、図27−1に示すように、光L1(図1参照)は、a面入射図面の黒点で示す位置で複屈折板104aに入射し、複屈折板104bにおけるb面出射図面の黒点で示す箇所から出射することとなる。なお、この2つの偏光成分を有する光L1は、それぞれの偏光成分に応じて進路を変えて進むことは、図27−2に示す通りである。
ここでは、複屈折板104a,104bの光軸104a’,104b’が、液晶偏光回転素子105が後述のように1/4波長板として機能する際の液晶ダイレクタの方向に対して、適切な角度をなすように、変形サバール板104と液晶偏光回転素子105との配置が設定されており、光軸104a’と光軸104b’は、平行となっている(図27−3参照)。
上述した図3に示すように、このように偏光方向が回転して液晶偏光回転素子105を出射したP偏光31およびS偏光32は、再び変形サバール板104の複屈折板104bに入射する。この時、P偏光31およびS偏光32ともに液晶偏光回転素子105によって偏光方向が90°回転していることから、複屈折板104bへのP偏光31およびS偏光32の入射光路は、前述の複屈折板104bから液晶偏光回転素子105への出射光路とは異なる光路となる。
複屈折板104bに入射したP偏光31は、複屈折板104b内を光軸104b'(図27−3参照)に沿って傾斜して進んで1/2波長板104cで偏光の方位角を90度回転した後、複屈折板104aに達する。そして、複屈折板104a内を水平に進んだ後、複屈折板104aから外部に出射される。ここで、P偏光31は、上記のように入射時とは異なる光路で複屈折板104bに入射していることから、複屈折板104b,1/2波長板104c,複屈折板104aを順次透過する際の光路は、入射時とは異なる光路となる。
一方、複屈折板104bに入射したS偏光32は、複屈折板104b内を水平に進んで1/2波長板104cで偏光の方位角を90度回転した後、複屈折板104aに達する。そして、複屈折板104a内を光軸104a'(図27−3参照)に沿って傾斜して進んだ後、複屈折板104aから外部に出射される。ここで、S偏光32は、上記のように入射時とは異なる光路で複屈折板104bに入射していることから、複屈折板104b,104aを順次透過する際の光路は、入射時とは異なる光路となる。
上記のように複屈折板104b,1/2波長板104c,104aをP偏光31およびS偏光32が順次透過する際には、前述の入射時の場合と同様、複屈折板104bにおけるP偏光31とS偏光32との光路長差と、複屈折板104aにおけるP偏光31とS偏光32との光路長差とが相殺し合う。したがって、変形サバール板104全体から見れば、出射するP偏光31およびS偏光32では、光路長差が解消されている。
変形サバール板104から出射されたP偏光31およびS偏光32は、図1に示すように、レンズ103を透過し、その過程でP偏光31とS偏光32とが再合成される。ここで、合成されるP偏光31とS偏光32とは、上記のように液晶偏光回転素子105によって偏光方向が回転されて入射時と異なる出射光路をたどってきたため、両者を合成して得られた出射光L2の光路は、出射側光ファイバ107に入射可能な位置からずれたものとなる。
したがって、この場合には、出射光L2が、出射側光ファイバ107に入射されない構成となる。それゆえ、この可変光減衰器は、液晶偏光回転素子105に電圧を印加しない状態では、外部への出射光L2が0となるノーマリオフ型の可変光減衰器である。
一方、液晶偏光回転素子105の液晶層105cに高電圧が印加されると、前述の図8、図9または/および図12、図13において説明したように、液晶偏光回転素子105で反射されて出射するP偏光31およびS偏光32の偏光方向が、回転することなく液晶偏光素子の入射時と同じ偏光方向となる。
図4に示すように、このように入射時と同じ偏光方向を保持して液晶偏光回転素子105を出射したP偏光31およびS偏光32は、再び変形サバール板104の複屈折板104bに入射する。この時、P偏光31およびS偏光32は入射時と同じ偏光方向であるため、複屈折板104bへのP偏光31およびS偏光32の入射光路は、前述の複屈折板104bから液晶偏光回転素子105への出射光路と同じ光路となる。
複屈折板104bに入射したP偏光31は、複屈折板104b内を水平に進んで複屈折板104aに達する。そして、複屈折板104a内を光軸104a'(図27−3参照)に沿って傾斜して進んで1/2波長板104cで偏光の方位角を90度回転した後、複屈折板104aから外部に出射される。ここで、P偏光31は、上記のように入射時と同じ光路で複屈折板104bに入射していることから、複屈折板104b,104aを順次透過する際の光路は、入射時と同じ光路となる。
一方、複屈折板104bに入射したS偏光32は、複屈折板104b内を光軸104b'(図27−3参照)に沿って傾斜して進んで1/2波長板104cで偏光の方位角を90度回転した後、複屈折板104aに達する。そして、複屈折板104a内を水平に進んだ後、複屈折板104aから外部に出射される。ここで、S偏光32は、上記のように入射時と同じ光路で複屈折板104bに入射していることから、複屈折板104b,104aを順次透過する際の光路は、入射時と同じ光路となる。
上記のように複屈折板104b,1/2波長板104c,104aをP偏光31およびS偏光32が順次透過する際には、前述の入射時の場合と同様、複屈折板104bにおけるP偏光31とS偏光32との光路長差と、複屈折板104aにおけるP偏光31とS偏光32との光路長差とが相殺し合う。したがって、変形サバール板104全体から見れば、出射するP偏光31およびS偏光32では、光路長差が解消されている。
それ以外は、実施の形態1と同様であり、同一の符号を付してその説明は省略する。また、実施の形態2〜9についても、実施の形態1と同様に実施の形態10に適用することが可能である。
さらに、本発明の実施の形態7から9に記載した可変光減衰器にアレイ化された液晶偏光回転素子を用いた場合、アレイ配列の長手方向に対して平行、垂直、または45度の角度とすれば、液晶偏光回転素子ピクセル内のリタデーションが大きくなるときの液晶ダイレクタを配向することを用途に応じて選択することができるようになる。
例えば、変形サバール板104と液晶偏光回転子105との間に偏光回転用1/2波長板を配し、アレイ配列の長手方向に対して平行に液晶ダイレクタを配向した形態とすれば、特にピクセルピッチが狭い場合に電極のフリンジ電界で隣のピクセルの液晶ダイレクタがツイスト変形する作用を防ぐことができ、実効的なピクセルの有効エリアを広げることができる。
またさらに、各ピクセルへの印加電界パタンによっては、アレイ配列に対して垂直に液晶ダイレクタを配向した場合に、電極のフリンジ電界で隣のピクセルの液晶ダイレクタがリバースティルト変形する作用を防ぐことができる。
またさらに、アレイ配列に対して45度配向に液晶ダイレクタを配向した場合は、変形サバール板104から出射した偏光の向きを変えることなく、各ピクセルで変調可能となるため、先に示した偏光回転用1/2波長板を省略することができる。
また、本発明にかかる可変光減衰器およびそれを用いた光フィルタの構成および動作は、上記の実施の形態1〜10に限定されるものではなく、これ以外であってもよい。
例えば、サバール板以外の光路長差補正手段を備えた構成であってもよい。かかる光路長差補正手段は、例えば、偏光成分の光路長差を補正することが可能な、サバール板以外の複屈折板であってもよい。
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、サバール板で分離した2つの偏光成分の光路長を同一とすることが可能となる。その結果、可変光減衰器では、PDL(偏光依存損失)およびPMD(偏光モード分散)を低減化することが可能となり、よって、良好な光減衰特性を実現することが可能となる。
また、本発明の実施の形態によれば、複屈折板と、1/2波長板とを組み合わせ、分離された各偏光の複屈折板内の各光路における光路長の差を補正可能に構成したので、変形サバール板で分離した2つの偏光成分の光路長を同一とすることが可能となる。その結果、可変光減衰器では、PDL(偏光依存損失)およびPMD(偏光モード分散)を低減化することが可能となり、よって、良好な光減衰特性を実現することが可能となる。
また、本発明の実施の形態によれば、光路長差補正複屈折板と液晶偏光回転素子との間に、偏光を回転させる偏光回転用1/2波長板をさらに有するので、変形サバール板から出射した偏光の方位角方向を後段の液晶偏光回転素子の液晶ダイレクタ方向に対して最適な方向に設定することが可能となる。
また、本発明の実施の形態によれば、液晶偏光回転素子が、一軸性可変波長板であるので、液晶偏光回転素子からの出射光量の減衰を改善することができる。例えば、ネマティック液晶や、表面安定型の強誘電液晶や、反強誘電液晶等のような液晶ディスプレイで実績のある液晶を利用して、一軸波長板が構成される。
また、本発明の実施の形態によれば、液晶偏光回転素子が、液晶がホモジニアス配向または垂直配向であり、液晶への電圧印加により、液晶の厚み方向に電界が形成され、また、液晶がホモジニアス配向または垂直配向であり、液晶への電圧印加により、液晶のラテラル方向に電界が形成され、また、液晶がホモジニアス配向または垂直配向であり、液晶への電圧印加により、液晶の厚み方向とラテラル方向とに電界が形成されるので、例えば、厚み方向に形成された電界により、液晶のリタデーションを制御することが可能となり、ラテラル方向に形成された電界により、厚み方向と垂直なラテラル方向における液晶の長軸の配置方向を制御することが可能となり、また、両電界を同時に形成することにより、液晶のリタデーションと長軸の配置方向とを制御することが可能となる。そして、これらの制御により、液晶による偏光方向の回転を制御することが可能となる。
また、本発明の実施の形態によれば、液晶偏光回転素子の一対の電極の一方がSi基板上に形成され、かつ、Si基板上に、電圧の制御を行う駆動用回路が配設されるので、駆動回路や制御回路が集積化された高機能で消費電力の低い構成を実現することが可能となる。
また、本発明の実施の形態によれば、パルス幅変調方式により電圧の制御が行われるため、駆動回路の小型化が図られるとともに、制御が容易であり、かつ、多階調の駆動回路を完全にデジタル回路だけで構成することが可能となる。
また、本発明の実施の形態によれば、一対の電極が、透明導電膜から構成される透明電極と、反射導電膜から構成される反射電極とから構成され、透明電極が、ITiO膜から構成されるため、ITOから透明電極と同じ導電性を実現でき、かつ、ITOから透明電極が構成される場合よりもプラズマ反射を抑制することが可能となる。したがって、光減衰特性がさらに向上する。
また、本発明の実施の形態によれば、光入出射手段は光ファイバで構成され、かつ、光の入射用の光ファイバと光の出射用の光ファイバとが別個に配設されるため、光の入射と光の出射とが各光ファイバを介して別々に行われるので、光サーキュレータが不要となり、部品点数の低減化が図られる。
また、本発明の実施の形態によれば、光入出射手段は光ファイバで構成され、かつ、光の入射と光の出射とが共通の光ファイバにより行われるため、光ファイバの配設数を低減化することが可能となり、よって、構成の簡素化が図られる。
また、本発明の実施の形態によれば、光ファイバの先端にファイバコリメータが取り付けられるため、ファイバコリメータにより、光ファイバへの光の結合効率を向上させることが可能となる。
また、本発明の実施の形態によれば、光ファイバと光路長差補正板との間に集光用の光学レンズが配設されるため、また、ファイバコリメータから入出射する光のビーム径が50μm以下に設定され、ファイバコリメータと光路長差補正板との間で、直接、光の入出射が行われるため、光ファイバと光路長差補正板との間に集光用の光学レンズを配設しなくても、光学レンズを配設した場合と同様に集光することが可能となる。
また、本発明の実施の形態によれば、液晶偏光回転素子が、複数の液晶偏光回転素子ピクセルがアレイ化された構成を有し、各液晶偏光回転素子ピクセルの各液晶にピクセル毎に独立して電圧を印加可能に構成されるため、多チャネル型の可変光減衰器を実現することが可能となる。
また、本発明の実施の形態によれば、液晶偏光回転素子が、アレイ配列の長手方向に対して平行、または垂直の角度で液晶偏光回転素子ピクセル内のリタデーションが大きくなるときの液晶ダイレクタを配向するため、変形サバール板と偏光回転用1/2波長板とを組み合わせてアレイに対して平行に液晶ダイレクタを配向し、ピクセルピッチが狭い場合に、電極のフリンジ電界で隣のピクセルの液晶ダイレクタがツイスト変形する作用を防ぐことができる。そのため、アレイ化された実効的なピクセルの有効エリアを広げることができる。
また、本発明の実施の形態によれば、液晶偏光回転素子で、共通のSi基板上に液晶偏光回転素子ピクセルと液晶偏光回転素子ピクセルの駆動回路とが配設されるため、駆動回路等の回路と複数の液晶偏光回転素子ピクセルとが集積化された液晶偏光回転素子が実現され、よって、小型で消費電力の低減化が図られた多チャネル型の光減衰器を実現することが可能となる。
また、本発明の実施の形態によれば、駆動回路を駆動させるドライバをさらに備え、ドライバは、液晶偏光回転素子ピクセルの配設領域の上方と下方とにそれぞれ配設され、駆動回路が、隣接する液晶偏光回転素子ピクセルにおいて交互に上方のドライバおよび下方のドライバに接続されたるため、液晶偏光回転素子ピクセルの配設領域とドライバとが分離されているため、液晶偏光回転素子ピクセルの配設領域を平坦化処理する必要がなくなり、よって、製造プロセスを単純化できる。また、液晶偏光回転素子ピクセルが交互に上方および下方のドライバに接続されるので、ドライバ回路のピッチを広げることが可能となる。
また、本発明の実施の形態によれば、光入出射手段が光ファイバで構成され、光の入射用の光ファイバの配設数が液晶偏光回転素子の液晶偏光回転素子ピクセルの配設数と同じか、または、これよりも少ないため、光の入射用の光ファイバの配設数が液晶偏光回転素子の液晶偏光回転素子ピクセルの配設数と同じ場合、可変光減衰器の光減衰動作における1チャネルが、一つの液晶偏光回転素子ピクセルによって実現される構成となる。一方、光の入射用の光ファイバの配設数が液晶偏光回転素子ピクセルの配設数よりも少ない場合には、可変光減衰器の光減衰動作における1チャネルが、複数の液晶偏光回転素子ピクセルによって実現される構成となる。
また、本発明の実施の形態によれば、光学フィルタは、上記可変光減衰器を備えるため、可変光減衰器において上記の効果が奏されるので、良好なフィルタ特性を実現することが可能となる。
本発明にかかる可変光減衰器は、PDLおよびPMDが低減され良好な特性を実現可能な小型の可変光減衰器として有用であり、特に、波長分割多重のための波長選択スイッチやダイナミックゲインインコライザ等のチューナブルフィルタに用いられる可変光減衰器として有用である。
また、液晶セルと液晶セルを駆動させるためのCMOS回路とが組み合わされてSi集積基板上に形成された液晶偏光回転素子を備えた可変光減衰器では、集積化された空間光変調素子(SLM)の実現に有用である。また、このような可変光減衰器を備えた光学フィルタは、光通信において有用である。
本発明の実施の形態1にかかる可変光減衰器の構成を示す模式図である。 図1のサバール板の模式的な正面図である。 図1のサバール板および液晶偏光回転素子の構成を示す模式的な側面図である。 図1のサバール板および液晶偏光回転素子の構成を示す模式的な側面図である。 液晶偏光回転素子に用いられる液晶の複屈折特性を示す図である。 電圧無印加で厚み方向の電界が形成されていない状態における液晶偏光回転素子の液晶分子の状態を示す模式図である。 図6の状態の液晶偏光回転素子の液晶セルにおける光の挙動を示す模式図である。 高電圧を印加して厚み方向の電界を形成した状態における液晶偏光回転素子の液晶分子の状態を示す模式図である。 図8の状態の液晶偏光回転素子の液晶セルにおける光の挙動を示す模式図である。 電圧無印加でラテラル方向の電界が形成されていない状態における液晶偏光回転素子の液晶分子の状態を示す模式図である。 図10の状態の液晶偏光回転素子の液晶セルにおける光の挙動を示す模式図である。 高電圧を印加してラテラル方向の電界を形成した状態における液晶偏光回転素子の液晶分子の状態を示す模式図である。 図12の状態の液晶偏光回転素子の液晶セルにおける光の挙動を示す模式図である。 本発明の実施の形態2にかかる可変光減衰器の構成を示す模式図である。 本発明の実施の形態3にかかる可変光減衰器の構成を示す模式図である。 液晶偏光回転素子特性の温度依存性を示す図である。 本発明の実施の形態5にかかる可変光減衰器における液晶偏光回転素子の温度調節機構を示す模式図である。 本発明の実施の形態6にかかる可変光減衰器の駆動方法における電圧印加方法を示す図である。 図18の電圧印加方法により液晶偏光回転素子の液晶層に印加される実効電圧を示す図である。 図19に示す実効電圧により駆動された可変光減衰器における出射光の強度変化を示す図である。 本発明の実施の形態7にかかる多チャネル型の可変光減衰器の構成を示す模式的な平面図である。 図21の可変光減衰器の模式的な側面図である。 図21および図22のアレイ化液晶偏光回転素子の構成を示す模式図である。 本発明の実施の形態8にかかるチューナブルフィルタの構成を示す模式図である。 図24のチューナブルフィルタの特性を示す図である。 本発明の実施の形態9にかかるチューナブルフィルタの構成を示す模式図である。 本発明の実施の形態10にかかるサバール板(変形サバール板)の作用を説明する模式図である。 本発明の実施の形態10にかかるサバール板(変形サバール板)の作用を説明する模式図である。 本発明の実施の形態10にかかるサバール板(変形サバール板)の作用を説明する模式図である。 従来の液晶可変光減衰器の構成を示す模式図である。
符号の説明
101,2601 入射側光ファイバ
102,106 ファイバコリメータ
103 レンズ
104 サバール板(変形サバール板)
105 液晶偏光回転素子
105a 前面基板
105b 背面基板
105c 液晶層
105d 液晶分子
107,2604 出射側光ファイバ
1401,2402 入出射用光ファイバ
1402,2401 光サーキュレータ
1403 複合レンズ
1701 ペルチェ素子
2101 アレイ化液晶偏光回転素子
2102 液晶偏光回転素子ピクセル
2400 可変光減衰器
2404 分光器



Claims (18)

  1. 対の電極の間に挟持され、該電極間に印加される電圧の制御により複屈折特性を制御可能な液晶を備え、前記液晶の複屈折特性を制御することにより、入射光の偏光方向を回転し、入射した側へ反射させる液晶偏光回転素子と、
    記液晶偏光回転素子の入射側に配置され、複数の複屈折板を有する光路長差補正複屈折板と、を備え、
    前記光路長差補正複屈折板は、入射光をP偏光とS偏光に偏光分離し、かつ、それぞれ異なる光路で進行させて、前記液晶偏光回転素子に対して異なる箇所へ入射させ、
    前記液晶偏光回転素子は、入射した前記P偏光とS偏光との偏光方向を制御し、入射時と異なる光路で入射した側へ反射する光の光量と、入射時と同じ光路で入射側へ反射する光の光量とを可変し、
    前記光路長差補正複屈折板は、前記複数の複屈折板を通過して発生した前記P偏光と前記S偏光の光路長差を前記複数の複屈折板内で相殺し、前記P偏光と前記S偏光とが互いに等しい光路長として出射させることを特徴とする可変光減衰器。
  2. 前記光路長差補正複屈折板が、サバール板で構成されることを特徴とする請求項1に記載の可変光減衰器。
  3. 前記光路長差補正屈折板における複数の複屈折板のうち、一つの複屈折板は前記P偏光と前記S偏光のうちの一方の光を傾斜して進行させ、他方の光を水平方向に進行させ、他の複屈折板は前記他方の光を傾斜して進行させ、前記一方の光を水平方向に進行させることを特徴とする請求項1に記載の可変光減衰器。
  4. 前記液晶偏光回転素子が、一軸性可変波長板であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の可変光減衰器。
  5. 前記液晶偏光回転素子の前面に、前記液晶の残留複屈折特性を打ち消す方向に結晶軸を
    有する残留複屈折補正板をさらに有することを特徴とする請求項に記載の可変光減衰器。
  6. 前記液晶偏光回転素子は、第1の電圧が印加されている時に、該液晶の前記複屈折特性により、前記反射されて該液晶から出射する光の偏光方向を90°回転させる1/4波長板となり、
    前記第1の電圧より大きい第2の電圧が印加された時に、該液晶の前記複屈折特性が消失するため前記偏光方向の回転が起こらず、よって波長板として機能せず、
    前記第2の電圧以下で前記第1の電圧以上の範囲で前記電圧を調整することにより該液晶の前記複屈折特性を調整して前記液晶の複屈折特性を調整し、それにより、所望の波長板とすることが可能な前記一軸性可変波長板であることを特徴とする請求項4または5に記載の可変光減衰器。
  7. 前記液晶偏光回転素子は、第1の電圧が印加されている時に、該液晶の前記複屈折特性が消失するため、波長板として機能せず、
    第2の電圧が印加された時に、該液晶の前記複屈折特性により、前記反射されて該液晶から出射する光の偏光方向を90°回転させる1/4波長板となり、
    前記第2の電圧以下で前記第1の電圧以上の範囲で前記電圧を調整することにより該液晶の前記複屈折特性を調整して前記液晶の複屈折特性を調整し、それにより、所望の波長板とすることが可能な前記一軸性可変波長板であることを特徴とする請求項4または5に記載の可変光減衰器。
  8. 前記液晶偏光回転素子の前方に入射偏光の偏光状態を変換する液晶偏光回転素子の複屈折特性を打ち消す方向に結晶軸を有するスイッチングモード反転波長板をさらに有し、
    前記液晶偏光回転素子は、第1の電圧が印加されている時に、該液晶と波長板との合成複屈折特性が消失するため前記偏光方向の回転が起こらず、よって波長板として機能せず、
    前記第1の電圧より大きい第2の電圧が印加された時に、該液晶の前記複屈折特性と波長板との合成複屈折により、前記反射されて該液晶から出射する光の偏光方向を90°回転させる1/4波長板となり、
    前記第2の電圧以下で前記第1の電圧以上の範囲で前記電圧を調整することにより該液晶の前記複屈折特性を調整して前記液晶の複屈折特性を調整し、それにより、所望の波長板とすることが可能な前記一軸性可変波長板であることを特徴とする請求項4または5に記載の可変光減衰器。
  9. 前記液晶偏光回転素子の前記一対の電極の一方がSi基板上に形成され、かつ、該Si基板上に、前記電圧の制御を行う駆動用回路が配設されたことを特徴とする請求項1〜のいずれかに一つに記載の可変光減衰器。
  10. 前記駆動用回路が、相補型金属酸化物半導体集積回路であることを特徴とする請求項に記載の可変光減衰器。
  11. 前記一対の電極が、透明導電膜から構成される透明電極と、反射導電膜から構成される反射電極とから構成され、
    前記透明電極が、ITiO膜から構成されたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載の可変光減衰器。
  12. 前記液晶偏光回転素子は、複数の液晶偏光回転素子ピクセルがアレイ化された構成を有し、各前記液晶偏光回転素子ピクセルの各前記液晶にピクセル毎に独立して前記電圧を印加可能に構成されたことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の可変光減衰
    器。
  13. 前記液晶偏光回転素子は、アレイ配列の長手方向に対して平行、または垂直の角度で前記液晶偏光回転素子ピクセル内のリタデーションが大きくなるときの液晶ダイレクタを配向することを特徴とする請求項11に記載の可変光減衰器。
  14. 前記液晶偏光回転素子では、共通の前記Si基板上に前記液晶偏光回転素子ピクセルと該液晶偏光回転素子ピクセルの駆動回路とが配設されたことを特徴とする請求項11に記載の可変光減衰器。
  15. 前記駆動回路を駆動させるドライバをさらに備え、該ドライバは、前記液晶偏光回転素子ピクセルの配設領域の上方と下方とにそれぞれ配設され、前記駆動回路が、隣接する前記液晶偏光回転素子ピクセルにおいて交互に上方のドライバおよび下方のドライバに接続されたことを特徴とする請求項11に記載の可変光減衰器。
  16. 光の入射用の光ファイバの配設数が前記液晶偏光回転素子の前記液晶偏光回転素子ピクセルの配設数と同じか、または、これよりも少ないことを特徴とする請求項12〜15のいずれか一つに記載の可変光減衰器。
  17. 請求項1〜16のいずれか一つに記載の可変光減衰器を備えたことを特徴とする光学フィルタ。
  18. 請求項12〜16のいずれか一つに記載の可変光減衰器を備えるとともに、入射した光を波長毎に分光する分光手段をさらに備え、該分光手段により分光された各波長の光が、前記可変光減衰器の前記光路長差補正複屈折板を介して前記液晶偏光回転素子の所定の前記液晶偏光回転素子ピクセルに入射されることを特徴とする請求項17に記載の光学フィルタ。
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