本発明における積層ポリエステルフィルムは、表面層(A)/中間層(M)/表面層(B)の少なくとも3層の層構成からなる積層ポリエステルフィルムであって、前記の表面層(A)は三次元十点平均粗さ(SRz)が0.20μm以下の平滑なポリエステル樹脂層であり、前記の中間層(M)はその内部に空洞又は無機粒子の少なくとも一方を含有してなるポリエステル樹脂組成物からなる白色遮光層であり、前記の表面層(B)は粒子を含有するポリエステル樹脂組成物からなる易滑層であり、前記の積層ポリエステルフィルムは光線透過率が20%以下であることが重要である。代表的な本発明の実施形態の層構成を図1に示す。また、他の実施形態として、表面層(B)を2層とした場合の層構成を図2に示す。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、総厚みが100〜300μmが好ましい。厚みの下限は、150μmがより好ましく、170μmが特に好ましい。一方、厚みの上限は、250μmがより好ましい。積層フィルムの厚みが100μm未満では、フィルムの腰が弱くなり、例えば、光反射板としてLCDのような最終製品に組み込む場合、ハンドリング性が低下しやすくなる。一方、積層フィルムの厚みが300μmを超える場合は、生産性の点から経済的に不利になる。なお、現在、一般的にLCDに用いられている反射板に用いる基材の厚みは188μmである。
本発明の積層ポリエステルフィルムの表面層(A)、中間層(M)、表面層(B)を構成するポリエステルは、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸又はそのエステルとエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのグリコールとを重縮合させて製造されるポリエステルである。これらのポリエステルは芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接反応させる直重法のほか、芳香族ジカルボン酸のアルキルエステルとグリコールとをエステル交換反応させた後、重縮合させるエステル交換法か、あるいは芳香族ジカルボン酸のジグリコールエステルを重縮合させるなどの方法によって製造することができる。
前記のポリエステルの代表例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートあるいはポリエチレン−2,6−ナフタレートが挙げられる。前記のポリエステルはホモポリマーであってもよく、第三成分を共重合したものであってもよい。これらのポリエステルの中でも、エチレンテレフタレート単位、トリメチレンテレフタレート単位、あるいはエチレン−2,6−ナフタレート単位が70モル%以上、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上であるポリエステルが好ましい。上記の各層を構成するポリエステルは、同種であっても、異種であっても構わないが、カール抑制及び経済性の点より同種が好ましい。
また、本発明の積層ポリエステルフィルムは、機械的強度や熱寸法安定性の点から、二軸配向ポリエステルフィルムであることが好ましい。
本発明の積層ポリエステルフィルムとして、上記の中間層(M)に空洞を含有させる方法で実施する場合は、ポリエステル樹脂に非相溶な熱可塑性樹脂に起因する空洞を含有しない白色ポリエステルフィルムや、通常の透明ポリエステルフィルムに比べ、巻き癖カールの発生が大きいという課題を有する。特に、本発明の積層ポリエステルフィルムはフィルム厚みが厚いのでカールが発生しやすくその対策が必要である。
なぜなら、厚物の二軸延伸フィルムの製造においては、先ずその未延伸フィルムが非常に厚くなるため、冷却ロールでの冷却が冷却面とその反対側で明らかに異なるため、結晶化度を始めとした構造がフィルムの裏表で異なるものになってしまう。さらに、内部に微細な空洞を含有する空洞含有ポリエステル系フィルムであるため、その空洞のサイズ、形状、体積分率がフィルムの厚み方向にわたって容易に変化するため、フィルム表裏の物性や構造を同一とするようなフィルムの製造は極めて困難である。
したがって、本発明においては、積層ポリエステルフィルムを無荷重の状態で110℃で30分加熱処理した後のカール値を1mm以下とすることが好ましい。0.9mm以下がより好ましく、0.8mm以下がさらに好ましい。
カール値が1mmを超える場合は、例えば、光反射板等として最終製品に組み込む場合の無緊張下での作業時のハンドリング性が悪化するので好ましくない。
カールを抑制する手法としては、(1)空洞の体積分率を小さくし、且つ各々の空洞サイズを小さく抑制しすることで、内部歪に耐えてカールの発生を抑制する方法、(2)フィルム厚み方向に空洞に分布を持たせる方法、(3)押し出し時の冷却差によるフィルム厚み方向の結晶化度の差に始まる各工程で付与されるフィルム表裏の構造差に起因するカールを制御するために、積極的にフィルム表裏の構造差を発生させ、必然的な構造差と補完しあってカール値をゼロに近づける方法、などが好適である。
具体的には、縦延伸や横延伸などの延伸工程及び熱固定工程で、フィルム表裏の温度又は熱量を異なる値とすることによって、フィルム表裏の配向度を独立して制御し、フィルム表裏の構造や物性がバランスする条件を採用することにより、ゼロカールの製膜が実現する。
また、カールが全幅にわたって低い状態で安定的に生産されるための基本的要件として、厚み斑の少ない延伸処方により、フィルム厚み方向に変化の少ない空洞を形成させることも重要である。
より具体的には、製膜直後の縦方向カールについては、縦延伸時のフィルム裏表の構造差を制御し、横方向のカールは横延伸及び熱固定時にフィルム裏表の構造差を制御することで、逆方向の内部歪を作りこみ、必然的に発生するフィルム表裏の構造差による内部歪とバランスさせ、カールを抑制するが好ましい。
また、カール発生の抑制方法としては、該積層ポリエステルフィルムの表面層(A)と(B)との厚みを同一にするのも有効な方法である。
(中間層M)
中間層(M)は、ポリエステル樹脂に空洞又は無機粒子の少なくとも一方を含有してなる樹脂組成物から構成された白色遮光層であり、積層ポリエステルフィルムでの光線透過率が20%以下とするために不可欠な層である。本発明において、中間層(M)は表面層(A)に金属薄膜層を設けた際に、金属薄膜層に厚みの変動があったとしても、いずれの場所でも反射率の変動が少なく、かつ高い反射率を維持するために設けられるものである。すなわち、金属薄膜層の厚みの不均一性による反射率の低下を補完する機能を有する層である。
遮光性を向上させるためには、中間層(M)の内部に微細空洞を多数含有させたり、無機粒子を含有させたりすることが有効である。微細空洞を多数含有させる方法は、遮光性を付与するとともに、積層ポリエステルフィルムを軽量化できるという利点がある。また、微細空洞と無機粒子とを併用することにより、さらに遮光性を高めることができる。中間層(M)としては、遮光性と軽量性の点から、微細空洞含有ポリエステル層、または無機粒子と微細空洞を含有するポリエステル層のいずれかの実施形態がより好ましい。
無機粒子としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム及びこれらの複合体よりなる白色顔料が好ましい。これらの無機粒子は、中間層(M)の樹脂組成物に対し、1〜25質量%含有させることが好ましい。遮光性をさらに高めるために、無機粒子の含有量を増やしすぎると、フィルム製造時に破断が多発し、工業レベルで安定した生産が行えなくなる。
空洞を含有させる方法としては、(1)発泡剤を含有せしめ押出時や製膜時の熱によって発泡、あるいは化学的分解により発泡させる方法、(2)押出時又は押出後に炭酸ガスなどの気体又は気化可能な物質を添加し、発泡させる方法、(3)ポリエステルと該ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂を添加し、溶融押出後、1軸又は2軸に延伸する方法、(4)有機もしくは無機の微粒子を添加して溶融押出後、1軸又は2軸に延伸する方法などを挙げることができる。
前記の空洞含有方法の中で、前記の(3)の方法、すなわちポリエステルと非相溶性の熱可塑性樹脂を添加し、溶融押出後、1軸又は2軸に延伸する方法が好ましい。ここで、ポリエステル樹脂に非相溶の熱可塑性樹脂としては、何ら制限されるものではないが、ポリプロピレンやポリメチルペンテンに代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂などが例示される。
これらの、ポリステル樹脂に非相溶の熱可塑性樹脂は単独で用いてもよく、また複数の熱可塑性樹脂を組合せて用いてもよい。これらポリステル樹脂に非相溶性の熱可塑性樹脂の含有量は、空洞含有ポリエステル層(中間層M)を形成する樹脂に対し3〜20質量%が好ましく、さらに好ましいのは5〜15質量%である。そして、ポリステル樹脂に非相溶性の熱可塑性樹脂の含有量が空洞含有ポリエステル層を形成する樹脂に対し3質量%未満では、フィルム内部に形成される空洞含有量が少なくなるため、遮光性(隠蔽性)が低下する。そのため、表面層(A)に金属薄膜層を設けた際に、金属薄膜層の厚み変動による反射率のバラツキを抑制する効果が不十分となりやすい。さらに、軽量性の特徴もいかせない。一方、非相溶性の熱可塑性樹脂の含有量が、空洞含有ポリエステル層(中間層M)を形成する樹脂に対し20質量%を超える場合には、フィルム製造工程での破断が多発するために好ましくない。本発明の積層ポリエステルフィルムの中間層(M)における空洞含有率は10〜50体積%が好ましく、より好ましくは20〜40体積%である。
前述のごとく、本発明で用いる中間層(M)では、上記のポリステル樹脂に非相溶の熱可塑性樹脂を配合し空洞を形成する方法と、白色顔料を配合する方法を併用する方法が最も好ましい。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、遮光性の指標の1つである光線透過率が20%以下であることが重要であり、好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下である。
積層ポリエステルフィルムの光線透過率が20%を超える、すなわち遮光性に劣る場合は、白色遮光層(中間層M)における金属薄膜層を透過した光の反射効果が低下しやすくなるため、金属薄膜層の厚み変動による反射光の不均一性を白色遮光層(中間層M)で補完する機能が低下する。その場合、金属薄膜層の厚みを厚くしないと、高い反射光が得られなくなり、経済的にも不利になる。
また、光線透過率が20%を超える場合は、本発明の積層ポリエステルフィルムに金属薄膜層を形成させた光反射フィルムとして用いる場合、金属薄膜層の成膜時に避けることが困難な金属薄膜層に生じるピンホールから透過した光を、中間層(M)で遮断して再びピンホールから戻しにくくなる。
積層ポリエステルフィルムの光線透過率を20%以下とするためには、中間層(M)の空洞含有率や無機粒子の含有量を、前記ので記載した範囲とすることが好ましい。また、光線透過率は厚み依存性がある。すなわち、中間層(M)が同一の樹脂組成物であっても、中間層(M)の厚みが薄くなると光線透過率が高くなり、遮光性が低下する、一方、中間層(M)の厚みが厚くなると、光線透過率は低下し遮光性が向上する。
積層ポリエステルフィルムの層厚みは、100〜300μmの範囲で、市場で使用する際の用途、規格により一般的に決められる。一方、表面層(A)の厚みは、中間層(M)の内部に存在する空洞や粒子が、表面層(A)の平滑性に悪影響を与えない範囲で、例えば5〜30μmが設定される。また、表面層(A)の厚みを厚くしすぎても、表面平滑性の効果は飽和する。もし、表面層(A)の厚みを、30μmを超えるような厚みにする必要がある場合には、中間層(M)の厚みを薄くしても遮光性を維持できるような設計を中間層(M)にすることが重要となる。具体的には、中間層(M)の空洞含有率や無機粒子の含有量を前記の範囲内で高めにすることが好ましい。これでも不十分な場合には、例えば、空洞発現剤となるポリエステルに非相溶菜樹脂中にも粒子を含有させる方法、中間層(M)を積層構造として、無機粒子を多量に含有する厚みの薄い層を積層する方法、カーボンブラックや青色顔料などの白色以外の着色顔料を併用する方法、などの薄物高隠蔽処方を用いてもよい。
白色は最も光を反射させるため、本発明の積層ポリエステルフィルムは、表面層(A)側より、JIS Z−8722に準拠して測定した白色度を75以上とすることが好ましく、より好ましくは80以上とする。白色度が75未満では、上記の金属薄膜層を透過した光を中間層(M)で反射させる効果が低下しやすくなる。
積層ポリエステルフィルムの白色度を75以上とするためには、前記ので述べた遮光性を高める手段のほかに、蛍光増白剤を併用することも有効である。遮光性を高める手段としては、(1)中間層(M)の空洞含有率を10〜50体積%とする方法、(2)中間層(M)に白色の無機粒子を、中間層(M)の樹脂組成物に対し、1〜25質量%含有させる方法、(3)両者の併用などが挙げられる。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、見かけ密度が0.6〜1.35g/cm3であることが好ましい。見かけ密度の下限は、取り扱い性の点から、0.65g/cm3がより好ましく、特に好ましくは0.7g/cm3である。一方、見かけ密度の上限は、軽量化の点から、1.30g/cm3がより好ましく、特に好ましくは1.20g/cm3である。見かけ密度が0.6g/cm3未満の場合、空洞含有率が高すぎるため、積層ポリエステルフィルムの強度が低下し、腰も弱くなり取り扱い性が悪化するなど、ポリエステルフィルムとしての特徴が損なわれる傾向がある。一方、見かけ密度が1.3g/cm3を超える場合、空洞含有率が低すぎて、軽量化の効果が不十分となる。
本発明においては、前記の中間層(M)中の空洞含有率、非相溶性の熱可塑性樹脂の種類や含有量、及び無機粒子の種類や含有量は、上記の積層ポリエステルフィルムの光線透過率や見かけ密度等の市場要求により、前記に開示した範囲内で適宜設定すればよい。
(表面層A)
本発明において、表面層(A)は、本発明の積層ポリエステルフィルムを鏡面反射フィルムの基材として使用する場合に、反射面となる金属薄膜層を形成させる層である。この表面層(A)は平滑性に優れており、金属薄膜層を形成させた際の反射率を高める機能を有する層である。
また、本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、表面層(A)の厚みは、5〜30μmが好ましい。表面層(A)の厚みの上限は、25μmがさらに好ましく、特に好ましくは20μmである。一方、表面層(A)の厚みの下限は、7μmがさらに好ましく、特に好ましくは10μmである。表面層(A)の厚みが5μm未満の場合は、中間層(M)に含有されている微細空洞や粒子が、表面層(A)の表面平滑性に悪影響を与える場合があるので好ましくない。一方、表面層(A)の厚みが30μmを超える場合には、遮光性を維持しながら中間層(M)の厚みを薄くせざるをえず、中間層(M)の設計を前記のように薄物高隠蔽の特別な処方に変更せざるを得ない場合があり、操作が煩雑となる。
前記の表面層(A)においては、三次元十点平均粗さ(SRz)を0.20μm以下とすることが重要である。SRzは0.18μm以下が好ましく、0.16μm以下がさらに好ましく、特に好ましくは0.15μm以下である。
金属薄膜層は表面の平滑度が高い程、光の反射率が向上する。したがって、該表面層(A)はできる限り表面平滑性に優れていることが好ましい。三次元十点平均粗さ(SRz)が0.20μmを超える場合、金属薄膜層を形成した時の金属薄膜層表面の光線反射率、特に正反射率が低下する。例えば、このような正反射率の劣る鏡面反射フィルムをLCD用の面光源反射板として使用した場合、ディスプレイの輝度が低下する。表面平滑性の指標は、一般的に3次元中心面平均表面粗さ(SRa)が用いられることが多い。しかしながら、同じSRaを有する表面であっても、高い突起が少数存在する場合や低い突起が多数存在する場合など表面形態が全く異なる場合がある。本発明においては、表面突起の中でも高い突起の方が、光線反射率に及ぼす影響が大きいことを見出した。本発明では、前記の理由から、表面平滑性の指標として三次元十点平均粗さ(SRz)を用いた。
表面層(A)のSRzの下限は、平滑性の点から、可能な限りゼロに近いことが好ましい。しかしながら、極限レベルの表面平滑化は極めて高度な技術を要すること、またそれを検出するための測定器の測定精度に加え、実用上の光線反射率や工業レベルでの安定生産性を考慮すると、SRzの下限は0.05μmで十分である。
本発明においては、上記特性を付与する方法は限定されないが、表面層(A)は、粒子を実質的に含まないことが好ましい実施態様である。「粒子が実質的に含有されていない」とは、例えば無機粒子の場合、原子吸光分析法や発光分析法など予め他の分析法での分析結果から作成した検量線を用いて、蛍光X線分析法で粒子に起因する元素を定量した際に50ppm以下、好ましくは10ppm以下、特に好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。これは、積極的に粒子をフィルム中に含有させなくても、原料ポリマーやフィルム製造時に微量の付着物、汚れ、外来異物が混入する場合があるためである。
さらに、本発明は、表面層(A)の表面に存在する高さが1μm以上で最大径が20μm以上の突起数が5個/m2以下であることが好ましい。4個/m2以下であることがより好ましく、3個/m2以下であることがさらに好ましい。表面層(A)の表面に存在する高さが1μm以上で最大径が20μm以上の突起は、表面層(A)に金属薄膜層を形成させた際に、金属薄膜層に発生するピンホールの原因の1つとなる。したがって、前記の突起数が5個/m2を超えた場合、表面層(A)に金属薄膜層を形成させる際に、金属薄膜層にピンホールが発生する頻度が増加し、このピンホールが存在する箇所で反射光が低下し、全体の反射光が不均一になる場合がある。
前記の突起数を5個/m2以下とするためには、表面層(A)を形成するポリエステル樹脂中に粒子を積極的に含有させないことが好ましい。さらに、金属薄膜層のピンホールの原因となる異物を可能な限り低減させることが好ましい。表面層(A)の内部に混入する異物は、原料ポリエステル樹脂中の触媒(重縮合反応触媒、エステル交換反応触媒)、添加剤(アルカリ金属塩・アルカリ土類金属塩のような静電密着改良剤や、リン酸又はリン酸塩のような熱安定剤など)の凝集物、及びこれらの金属還元物に起因するもの、外部から混入した汚染物、高融点有機物等に分類される。また、フィルム製造時に表面層(A)に付着する埃も金属薄膜層のピンホールの一因として挙げられる。
フィルム製造時に表面層(A)に付着する埃については、ヘパフィルターを用いで環境中に存在する1μm以上の異物を低減させたクリーンな環境下でフィルムを製造することにより、埃の付着低減することができる。
本発明において、表面層(B)は積層ポリエステルフィルムにハンドリング性(滑り性、巻き性、耐擦り傷性など)を付与する機能を有する層である。
また、本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、表面層(B)の厚みは、ハンドリング性付与という機能からは特に限定はなく、例えば、5〜30μmとする。しかしながら、表面層(A)と同様、表面層(B)の厚みを厚くした場合も、遮光性を維持しながら中間層(M)の厚みを薄くせざるをえず、中間層(M)の設計を前記のように薄物高隠蔽の処方に変更せざるを得ない場合があり、操作が煩雑となる。
本発明において、表面層(B)の三次元十点平均粗さ(SRz)は、前記の表面層(A)のSRzよりも高く3.0μm以下とすることが好ましい。表面層(B)のSRzの下限は、より好ましくは0.21μm、さらに好ましくは0.22μm、特に好ましくは0.24μmである。表面層(B)のSRzが、前記の表面層(A)のSRzよりも高くても、0.20μm以下の場合には、積層ポリエステルフィルムを巻き取る際に、表面層(A)と表面層(B)との間の滑り性が悪化し、例えば、積層ポリエステルフィルムの製造工程や金属薄膜層を形成する等の積層ポリエステルフィルムの加工工程において、該積層ポリエステルフィルムのロールへの巻き取り性が悪化しやすくなる。また、フィルム製造工程やフィルム加工工程で、平滑な表面層(A)表面に傷が発生し、表面層(A)に金属薄膜層を形成した場合の金属薄膜層表面の光反射特性が低下しやすくなる。
一方、表面層(B)のSRzの上限は、2.8μmがより好ましく、特に好ましくは2.6μmである。表面層(B)のSRzが3.0μmを越える場合には、ハンドリング性の改善効果が飽和するとともに、下記の(1)または(2)のような現象が生じやすくなり、表面層(A)の上に金属薄膜層を形成した場合、金属薄膜層表面の反射特性に悪影響がでる場合がある。
(1)表面層(B)の高い突起が削れて脱落し、その脱落物が積層ポリエステルフィルムをロール状に巻き取る際に、表面層(B)に接触する表面層(A)に転写する
(2)積層ポリエステルフィルムをロール状に巻取る際に、表面層(B)の粗大突起が表面層(A)に押し跡をつけ、表面層(A)の表面が荒れる(以下、刻印性と略す)
表面層(B)のSRzを制御する方法としては、表面層(B)を形成する樹脂に表面突起を形成する粒子を含有させる方法が好ましい。表面層(B)が単層の場合、表面層(B)を構成する樹脂に粒子を0.05〜5質量%含有させることが好ましい。
表面層(B)を構成する樹脂は、ポリエステル樹脂が好ましい。表面層(A)を構成するポリエステル樹脂と同一であっても、異種であっても構わない。同一が好ましい。
本発明においては、積層ポリエステルフィルムの表面層(A)と表面層(B)との静摩擦係数が0.60以下であることが好ましく、より好ましくは0.55以下で、特に好ましくは0.50以下である。なお、表面層Bが中間層(M)側から、層(B1)/易滑被複層(B2)の構成からなり、最外層が易滑被複層(B2)である場合には、前記の静摩擦係数は表面層(A)と易滑被複層(B2)との静摩擦係数を意味する。
前記の静摩擦係数が0.60を超える場合は、表面層(B)の三次元十点平均粗さ(SRz)が0.23μm以下の場合と同様の問題が発生しやすくなる。一方、前記の静摩擦係数が小さすぎると、ハンドリング性の改良効果が小さくなり、逆にロール状に巻き取る際の巻きずれが発生しやすくなる。したがって、前記の静摩擦係数の下限は、0.30が好ましく、より好ましくは0.35、特に好ましくは0.40である。
前記の静摩擦係数を0.60以下とするためには、表面層(B)中に粒子を含有させて表面層(B)のSRzを、0.23μmを超え2.0μm以下に制御することが有効である。また、粒子により表面粗さを制御する方法以外に、例えば、表面層(A)あるいは表面層(B)のいずれかの層に、高級脂肪酸のエステル誘導体、アミド誘導体あるいは金属塩等よりなる潤滑剤の配合、あるいは表面層(B)が下記の積層フィルムからなる場合には、易滑性被覆層(B2)に極性の低い界面活性剤の配合、などにより滑り性を改良する方法を併用することも可能である。
粒子としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、フッ化リチウム、ソジュウムカルシウムアルミシリケート等の無機粒子、蓚酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩等の有機塩粒子及びジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸又はメタクリル酸のビニル系モノマーの単独又は共重合体よりなる架橋高分子粒子、ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの耐熱性有機粒子等の不活性粒子が挙げられる。
上記粒子を樹脂中に含有させる方法は、例えば、ポリエステル樹脂を用いる時は、(a)ポリエステル構成成分であるジオール中で粒子をスラリー状に分散処理し、該粒子スラリーをポリエステルの重合反応系へ添加する方法、(b)ポリエステルフィルムの溶融押出し工程においてベント式二軸押出し機で、溶融ポリエステル樹脂に分散処理した粒子スラリーを添加する方法、(B2)ポリエステル樹脂と粒子を溶融状態で混練する方法(d)ポリエステル樹脂と粒子のマスターレジンを溶融状態で混練する方法などが例示される。
重合反応系に添加する方法の場合、粒子のジオールスラリーを、エステル化反応又はエステル交換反応前から重縮合反応開始前の溶融粘度の低い反応系に添加することが好ましい。また、粒子のジオールスラリーを調製する際には、高圧分散機、ビーズミル、超音波分散などの物理的な分散処理を行うとことが好ましい。さらに、分散処理したスラリーを安定化させるために、使用する粒子の種類に応じて適切な化学的な分散安定化処理を併用することが好ましい。
分散安定化処理としては、例えば、無機酸化物粒子や粒子表面にカルボキシル基を有する架橋高分子粒子などの場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ化合物をスラリーに添加し、電気的反発により粒子間の再凝集を抑制することができる。また、炭酸カルシウム粒子、ヒドロキシアパタイト粒子などの場合にはトリポリ燐酸ナトリウムやトリポリ燐酸カリウムをスラリー中に添加することが好ましい。
また、粒子のジオールスラリーをポリエステルの重合反応系へ添加する際、スラリーをジオールの沸点近くまで加熱処理することも、重合反応系へ添加した際のヒートショック(スラリーと重合反応系との温度差)を小さくすることができるため、粒子の分散性の点で好ましい。
また、表面層(A)の反対側の最表層のSRzを制御する他の層構成として、表面層(B)を中間層(M)側から、層(B1)/易滑性被覆層(B2)からなる積層構成とすることもできる。層(B1)は、表面層(A)と同様の、実質上粒子を含有しないポリエステル樹脂を用いるか、粒子含有量を100ppm未満としたポリエステル樹脂を用いる。さらに、層(B1)の上に、粒子を含む樹脂層よりなる易滑性被覆層(B2)を積層して最外層として、表面層(A)の反対面を粗面化する方法である。また、層(B1)の原料として、表面層(A)と同じ原料を用いることで、積層ポリエステルフィルムを製造する際の共押出工程をA/M/A(B1)と簡略化できる利点があり、より好ましい実施態様である。
積層ポリエステルフィルムが、表面層(A)/中間層(M)/層(B1)/易滑性被覆層(B2)からなる積層構成の場合、A/M/B1の積層部分を二軸延伸フィルムから構成し、易滑性被覆層(B2)は塗布層により積層し、最終乾燥後の塗布量を0.01〜0.5g/m2とする方法、あるいは易滑性被覆層(B2)を共押出し法で積層し、最終厚みを0.1〜3mと薄くする方法を用いることが好ましい。
上記易滑性被覆層(B2)は、積層ポリエステルフィルムの製造工程において、未延伸フィルム又は一軸延伸フィルムに易滑性被覆層(B2)用塗布液を塗布、乾燥し、次いで少なくとも一方向に延伸、熱処理することにより、易滑性被覆層(B2)を形成させる、いわゆるインラインコート法で形成する方法が、フィルム特性(滑り性、ブロッキング性、透明性など)及び経済性の点より好ましい。代表的な、表面層A/中間層M/層B1(A)/易滑性被覆層(B2)からなる積層ポリエステルフィルムの製造例を下記に示す。なお、下記製造例では、層B1の原料として層Aと同じ原料を使用した。
2台の押出し機を用いて、中間層(M)の両面に層(A)が積層された3層よりなる積層ポリエステルフィルムを共押しダイスを用いて回転冷却金属ロールにシート状に溶融押出しし、静電印加法により冷却固化せしめて未延伸ポリエステルシートを得る。得られた未延伸ポリエステルシートを、例えば、80〜120℃に加熱したロールで長手方向に2.5〜5.0倍延伸して、一軸延伸フィルムを得る。さらに、フィルムの端部をクリップで把持して、例えば、70〜140℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥後幅方向に2.5〜5.0倍に延伸する。引き続き160〜240℃の熱処理ゾーンに導き、1〜60秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させ積層ポリエステルフィルムを得る。このフィルム製造工程中の任意の段階、特に好ましくは、一軸延伸フィルムの段階で、積層ポリエステルフィルムのどちらか片面に、上記の易滑性被覆層(B2)を形成する塗布液をし、易滑性被覆層(B2)を積層する。
本発明においては、易滑性被覆層(B2)は、平均粒径20nm以上150nm未満の粒子a及び平均粒径150nm以上600nm以下の粒子bを含む樹脂組成物より構成することが好ましい。
かかる粒子の例としては、(1)炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、シリカーアルミナ複合酸化物粒子、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、(2)架橋ポリスチレン、架橋ポリメチルメタクリレート、架橋アクリル、などの架橋高分子粒子、(3)シリコン樹脂粒子、ポリイミド粒子、フッ素系樹脂粒子、などの耐熱性高分子粒子、(4)シュウ酸カルシウム等の有機粒子を挙げることができる。なかでも、シリカ粒子はポリエステル樹脂との親和性が良好であるため最も好適である。
本発明では、平均粒子径の異なる2種類の粒子(粒子a及び粒子b)を含有させることが好ましい。粒子aの平均粒径は20nm以上150nm未満が好ましく、さらに好ましくは30〜100nmである。粒子aの平均粒径が20nm未満であると、滑り性付与が不十分となる。一方、粒子aの平均粒径が150nm以上になると、耐擦り傷性が悪化する傾向がある。
本発明では、滑り性、耐擦り傷性及び刻印性とのバランスを向上させるために、粒子a以外に、粒子aよりも平均粒径が大きい粒子bを併用することが好ましい。粒子bの平均粒径は150〜600nmが好ましく、さらに好ましくは200〜500nmである。粒子bの平均粒径が150nm未満であると、滑り性や耐擦り傷性悪化する傾向がある。一方、粒子bの平均粒径が600nmを超えると、耐摩耗性が悪化するとともに、刻印性が増加する傾向がある。
さらに、粒子bと粒子aとの平均粒径の差を、好ましくは100nm以上、特に好ましくは150nm以上とすることで、滑り性、耐擦り傷性及び刻印性のバランスの点からさらに有効である。
本発明において、上記易滑性被覆層(B2)の三次元十点平均粗さ(SRz)は、前記の単層構成の場合における表面層(B)と同様の範囲とすることが好ましい
易滑性被覆層(B2)の三次元十点平均粗さ(SRz)を、前記の単層構成の場合における表面層(B)と同様の範囲とするためには、被覆層中の平均粒径20nm以上150nm未満の粒子aと平均粒径150nm以上600nm以下の粒子bとの質量比(a/b)を3〜30とし、かつ粒子Bの含有量を被覆層の樹脂組成物に対し0.1〜3質量%とすることが好ましい。特に、被覆層の樹脂組成物に対し、粒子bの含有量が3質量%を超えると、耐擦り傷性の低下が著しくなる傾向がある。ここで、被覆層の樹脂組成物とは、樹脂、粒子a、及び粒子bの固形分質量の総和を意味する。
本発明において、被覆層形成のために使用する塗布液は、溶媒、樹脂、粒子を主たる構成成分とする。溶媒としては、水系溶媒又は有機溶媒のいずれも使用できるが、作業環境、環境保護、生産性などの点から水系溶媒が好適である。
本発明で易滑被覆層(B2)に用いる水溶性または水分散性樹脂は、限定されない。ポリエステル系重合体、アクリル系重合体およびポリウレタン系重合体等の重合体およびこれらおよびその他の成分の共重体あるいはメラミン系樹脂等の他の樹脂との混合物が挙げられる。
下記(i)〜(iii)のいずれかからなるポリエステル系樹脂が好ましい。
(i)2重結合を有する酸無水物を含有する少なくとも一方のモノマーからなるラジカ
ル重合体を5重量%以上含有する、芳香族ポリエステル樹脂のグラフト共重合体
(ii)酸価が200eq/t以上のアクリル系樹脂またはその共重合体(但し、(iii)は除く)
(iii)2重結合を有する酸無水物を含有する少なくとも一種のモノマーからなるラジカル重合体を5重量%以上含有する、酸価が200eq/t以上のアクリル系樹脂の共重合体
芳香族ポリエステル系樹脂とは、ポリエステルの酸成分中、芳香族ジカルボン酸成分が30モル%以上含有する樹脂をいう。芳香族ジカルボン酸成分が30モル%未満であると、ポリエステル樹脂の加水分解性が顕著となり耐水性が悪化しやすくなる。
前記のアクリル系樹脂における酸価とは、樹脂溶液等を100Paの減圧下、80℃で2時間乾燥させた後の固形分を、濃度既知のエタノール性水酸化カリウム溶液で滴定して求めた値である。
前記のアクリル系樹脂の酸価が200eq/t未満では、水系溶媒への分散性が低下する場合があるので好ましくない。
酸価を200eq/t以上とするためには、分子中に極性基を含有させる必要がある。しかしながら、スルホン酸ナトリウムのように、加熱しても変化せず安定な極性基は、かえって被覆層の耐水性を悪化させるため好ましくない。
被覆層の耐水性を悪化させない極性基としては、加熱後に分解して極性が低下するカルボン酸のアミン塩が例示される。使用することができるアミンは、塗膜の乾燥条件で気化することが好ましく、例えばアンモニウム、ジエチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
さらに好ましくは、芳香族ポリエステル系樹脂又は酸価が200eq/t以上のアクリル系樹脂から選ばれる1種以上の樹脂又は2種以上の共重合体が、2重結合を有する酸無水物を含有する少なくとも1種のモノマーからなるラジカル重合体を5質量%以上含有することである。5質量%未満では耐水性の効果が不十分となりやすい。
前記の酸無水物を樹脂中に導入することにより、樹脂分子間で架橋反応を行なうことが可能となる。すなわち、樹脂中の酸無水物はコート液中では加水分解等によりカルボン酸に変化し、乾燥及び製膜中の熱履歴により、分子間で酸無水物又は他の分子の活性水素基と反応してエステル基等を生成し、塗布層の樹脂の架橋を行い、耐水性及び加熱白化防止性等を発現することができる。
2重結合を有する酸無水物を含有するモノマーとしては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、2,5−ノルボネンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。また、ラジカル重合体は、他の重合性不飽和単量体との共重合体であってもよい。
他の重合性不飽和単量体としては、(1)フマル酸、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチルなどのフマル酸のモノエステル又はジエステル、(2)マレイン酸、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどのマレイン酸のモノエステル又はジエステル、(3)イタコン酸、イタコン酸のモノエステル又はジエステル、(4)フェニルマレイミド等のマレイミド等、(5)スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレンなどのスチレン誘導体、(6)ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなど、(7)アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基等)などのアクリル重合性単量体、(8)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートのヒドロキシ含有アクリル単量体、(9)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミドのアミド基含有アクリル単量体、(10)N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートのアミノ基含有アクリル単量体、(11)グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートのエポキシ基含有アクリル単量体、(12)アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩)、などのカルボキシル基又はその塩を含有するアクリル単量体、などが挙げられる。
また、被覆層の耐水性をさらに向上させるために、塗布液調整時に酸化合物を添加することが特に好ましい。この酸化合物の添加により、樹脂中のカルボン酸基の酸無水化及びエステル化反応を促進させて樹脂の架橋を向上させることができる。
酸化合物の添加量は、樹脂に対して1〜10質量%の範囲が好ましい。また、酸化合物として種々の化合物を使用することが可能であるが、製膜時の熱で気化しやすく、被覆層中に残留量が少なくかつ残留時の悪影響が小さい、低沸点のカルボン酸が好ましい。低沸点のカルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘプタン酸等を挙げることができる。
本発明において、前記の酸無水物を用いた架橋反応を行なう際に、窒素原子又はフェノール類を含まない架橋剤を使用することが、優れた耐水性と回収再使用時の変色を抑制する点から好ましい。
窒素原子またはフェノール類を含まない架橋剤としては、例えば、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルおよびポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテル、などの多官能性エポキシ化合物が挙げられる。
窒素原子またはフェノール類を含む架橋剤は、熱等により酸化・分解し、窒素原子及び芳香環を中心とした共役構造を有する化合物を生成する。その結果、着色が著しくなる。しかしながら、本発明において、これらの架橋剤の使用を完全に否定するものではなく、優れた耐水性と回収再使用時の変色を抑制することができる範囲内であれば、架橋剤(硬化用樹脂)の種類に応じて適量使用することが可能である。
窒素原子を含む架橋剤としては、例えば、(1)尿素、メラミン、ベンゾグアナミンなどとホルムアルデヒドとの付加物、(2)これらの付加物と炭素原子数が1〜6のアルコールからなるアルキルエーテル化合物などのアミノ樹脂、(3)窒素原子を含む多官能性エポキシ化合物、(4)多官能性イソシアネート化合物、(5)ブロックイソシアネート化合物、(6)多官能性アジリジン化合物、(7)オキサゾリン化合物、などが挙げられる。
前記の(2)記載のアミノ樹脂としては、例えば、メトキシ化メチロール尿素、メトキシ化メチロールN,N−エチレン尿素、メトキシ化メチロールジシアンジアミド、メトキシ化メチロールメラミン、メトキシ化メチロールベンゾグアナミン、ブトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミンなどが挙げられる。この中でも、メトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミン、およびメチロール化ベンゾグアナミンなどが好適である。
前記の(3)記載の窒素原子を含む多官能性エポキシ化合物としては、例えば、トリグリシジルイソシアヌレート、ジグリシジルプロピレン尿素、などが挙げられる。
前記の(4)記載の多官能性イソシアネート化合物としては、例えば、低分子または高分子の芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネート、などが挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びこれらのイソシアネート化合物の3量体などが例示される。
さらに、これらのイソシアネート化合物の過剰量と、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの低分子活性水素化合物、又はポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類などの高分子活性水素化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物、などが挙げられる。
前記の(5)記載のブロックイソシアネートは、上記イソシアネート化合物とブロック化剤とを公知の方法より付加反応させて合成することができる。
イソシアネート化合物のブロック化剤としては、例えば、(a)フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、(b)チオフェノール、メチルチオフェノールなどのチオフェノール類、(B2)アセトキシム、メチルエチケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類、(d)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、(e)エチレンクロロヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類、(f)t−ブタノール、t−ペンタノールなどの第3級アルコール類、(g)ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、ν−ブチロラクタム、β−プロピルラクタムなどのラクタム類、(h)芳香族アミン類、(i)イミド類、(j)アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、(k)メルカプタン類、(l)イミン類、(m)、尿素類、(n)ジアリール化合物類、(o)重亜硫酸ソーダ、などを挙げることができる。
フェノール類を含む架橋剤としては、例えば、アルキル化フェノール類、クレゾール類などのホルムアルデヒドとの縮合物のフェノールホルムアルデヒド樹脂やビスフェノールAを含む多官能性エポキシ化合物、が挙げられる。
フェノールホルムアルデヒド樹脂としては、例えば、アルキル化(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル又はブチル)フェノール、p−ter−アミルフェノール、4,4′−sec−ブチリデンフェノール、p−ter−ブチルフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−シクロヘキシルフェノール、4,4′−イソプロピリデンフェノール、p−ノニルフェノール、p−オクチルフェノール、3−ペンタデシルフェノール、フェノール、フェニルo−クレゾール、p−フェニルフェノール、キシレノールなどのフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物が挙げられる。
窒素原子又はフェノール類を含まない架橋剤として、多官能性エポキシ化合物が挙げられる。しかしながら、多官能性エポキシ化合物は窒素原子を含むアミン系の架橋触媒を用いることが多いため、前記の触媒起因の着色が起こるという問題がある。また、触媒量を低減させたり、あるいはアミン等を含まない触媒を用いることにより、着色を押さえることが可能ではあるが、架橋が不十分であったり、回収時にゲル状の混合物が増加するため好ましくない。
前記の記載の多官能性エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル及びそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル及びそのオリゴマー、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル及びポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテル、などが挙げられる。
多官能エポキシ化合物の触媒として、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、ベンジルジメチルアミン、トリブチルアミン、トリス(ジメチルアミノ)メチルフェノール等の3級アミン、2−メチル−4−エチルイミダゾール、2ーメチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、ピリジン、メチルピリジン等の含窒素複素環化合物、また、アミン等を含まない触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強塩基、硼弗化亜鉛、四塩化錫などの金属化合物などが挙げられる。
また、水系塗布液を用いて被覆層を形成させる場合には、基材フィルム表面に塗布する際に、基材フィルムへの濡れ性を向上させ、塗布液を均一にコートするために、アニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤を適量、塗布液に添加することが好ましい。
また、塗布液中には、性能向上のために、複数の他の樹脂等を塗布液に添加してもよい。さらに、塗布液中には、ハンドリング性、帯電防止性、抗菌性など、他の機能性をフィルムに付与するために、無機及び/又は有機粒子、帯電防止剤、紫外線吸収剤、有機潤滑剤、抗菌剤、光酸化触媒などの添加剤を含有させることができる。
塗布液に用いる溶媒として水系溶媒を用いた場合、水以外にエタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール類を、全塗布液に対し50質量%未満の範囲で混合しても良い。さらに、10質量%未満であれば、アルコール類以外の有機溶剤を溶解可能な範囲で混合してもよい。但し、塗布液中のアルコール類とその他の有機溶剤との合計量は、50質量%未満とすることが好ましい。
有機溶剤の添加量が50質量%未満であれば、塗布乾燥時に乾燥性が向上するとともに、水のみの場合と比べ被覆層の外観が向上するという効果がある。50質量%以上では、溶剤の蒸発速度が速くなるため塗工中に塗布液の濃度変化が起こり、塗布液の粘度が上昇して塗工性が低下する。その結果、被覆層の外観不良が起こりやすくなる。さらに、環境面、作業者の健康面、火災の危険性などからも好ましくない。
さらに、塗布液中の異物を除去することは、易滑性被覆層(B2)の耐擦り傷性や刻印性の向上のために有効である。
塗布液を精密濾過するための濾材は、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が25μm以下であることが好ましい。濾過粒子サイズが25μmを超えると、粗大凝集物の除去が不十分となりやすい。そのため、濾過で除去できなかった粗大凝集物は、塗布乾燥後の一軸延伸又は二軸延伸工程での延伸応力により広がって、100μm以上の凝集物として欠点の原因になる。
塗布液を精密濾過するための濾材のタイプは、上記性能を有していれば特に限定はなく、例えば、フィラメント型、フェルト型、メッシュ型が挙げられる。塗布液を精密濾過するための濾材の材質は、上記性能を有しかつ塗布液に悪影響を及ばさない限り特に限定はなく、例えば、ステンレス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。
この塗布液を塗布するには、公知の任意の方法で行うことができる。例えば、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法及びカーテン・コート法などが挙げられ、これらの方法を単独であるいは組み合わせて行うことができる。
上記の易滑性被覆層(B2)は、二軸延伸ポリエステルフィルム基材に上記塗布液を塗布しても良いし(オフラインコート法)、未延伸あるいは一軸延伸後のポリエステルフィルム基材に上記塗布液を塗布した後、乾燥し、さらに一軸延伸あるいは二軸延伸を行なった後、熱固定を行っても良いが(インラインコート法)、性能及び経済性の点より後者のインラインコート法が好ましい。該塗布液が塗布されたフィルムは、延伸及び熱固定のためにテンターに導かれ、そこで加熱されて、熱架橋反応により安定な被膜を形成することができる。
未延伸あるいは一軸延伸後のポリエステルフィルム基材に上記塗布液を塗布した後、乾燥、延伸する、いわゆるインラインコート法の場合、塗布後の乾燥工程では水等の溶剤分のみを取り除き、かつ被覆層の架橋反応が進行しない温度及び時間を選定することが好ましい。
乾燥温度は70〜140℃で行うことが好ましく、乾燥時間は塗布液の固形分濃度及び塗布量に応じて調整するが、温度(℃)と時間(秒)の積として3,000以下とすることが好ましい。積が3,000を越えると、被覆層が延伸前に架橋反応を起こし、被覆層に割れ等が生じやすくなる。
また、被覆層は延伸後、フィルム幅長が変化しない様にフィルムを固定した状態で、赤外線ヒーターにより被覆層を250〜260℃で0.5〜1秒間の短時間で加熱処理することが架橋反応を促進する上で好ましい。
この際、塗布液中に酸化合物を樹脂に対して1〜10質量%添加していると、架橋反応がさらに促進され被覆層がより強固となる。そのため、フィルムを加熱した際にフィルム表面に析出してくるオリゴマーを被覆層によりブロックし、被覆層表面へのオリゴマー析出を抑制することができる。
延伸後のフィルムは通常2〜10%程度の弛緩処理を行うが、本発明においては被覆層の歪みが少ない状態、すなわちフィルム幅長が変化しないように固定した状態で、赤外線ヒーターで被覆層を加熱することが好ましい。このような方法を採用することにより、被覆層内の架橋が促進されより強固となる。加熱温度又は時間が前記の条件より大きいと、フィルムの結晶化又は溶解が起こりやすくなる。また、一方条件が加熱温度又は時間が前記の条件より小さいと、被覆層の架橋が不十分となりやすい。
最終的に得られる被覆フィルム表面の被覆層の乾燥後塗布量(フィルム単位面積当りの固形分重量)は、0.01〜0.50g/m2が好ましく、より好ましくは0.02〜0.40g/m2であり、特に好ましくは0.05〜0.30g/m2である。乾燥後の塗布量が0.01g/m2未満の場合、接着性が不十分となる。塗布量が0.50g/m2を超えると、ブロッキングしやすくなる傾向がみられ、被覆層中の異物の数も増加しやすくなる。
なお、未延伸フィルム作成後から塗布工程における空気中のクリーン度(0.5μm以上の粒子数/ft3 )を、クラス100,000となるようヘパフィルターによりコントロールすることは、フィルム表面に付着する異物を低減させるのに有効である。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、上記した積層ポリエステルフィルムを170℃で20分間加熱処理した時に表面層(B)の表面に析出する粒子の占有面積比が0.008μm2/μm2以下に制御することが好ましい。前記の加熱処理後に表面層(B)の表面に析出する粒子の占有面積比は0.007μm2/μm2以下であることがより好ましく、さらに好ましくは0.006μm2/μm2以下、特に好ましくは0.005μm2/μm2以下である。前記の加熱処理後に表面層(B)の表面に析出する粒子の占有面積比が0.008μm2/μm2を超える場合には、前述した表面析出粒子による諸問題が発生する。
上記の表面に析出する粒子は、主として環状三量体等の低重合オリゴマーやモノマーからなる低分子量物であり、従来は、ポリエステルフィルム表面を、該析出粒子を溶解する溶媒で洗浄あるいは溶出させ、該溶媒に溶解された環状三量体等を定量することにより定量されてきた。従って、前述したごとく、該方法はフィルム表面のみでなく、フィルム内部に存在するオリゴマーをも抽出してしまうために実用特性との対応がよくないという問題を有しており、該問題の解決が強く嘱望されていた。
そこで、本発明者等は、表面析出物は粒子として存在することに着目し、顕微鏡により表面に析出したこれらの析出粒子の占める面積を定量できることを見出した。すなわち、前述した金属薄膜層形成の加工工程で積層ポリエステルフィルムが受ける熱を想定した条件で加熱処理された積層ポリエステルフィルム表面を、干渉顕微鏡を利用した表面解析法で評価できることを見出した。これにより、前述した金属薄膜層形成の加工工程で発生するポリエステルフィルム中に含有される環状3量体等のオリゴマーが表面移行することにより引き起こされる表面汚染の問題を、モデル的に評価する評価法が確立できた、本発明に至った。
また、本発明においては、表面層(A)表面についても、170℃で20分間加熱処理した時に表面層(B)の表面に析出する粒子の占有面積比が0.008μm2/μm2以下に制御することが好ましい。その結果、析出粒子による金属薄膜層の欠点発生が抑制される。
本発明において、前記の析出粒子(主として環状三量体等の低重合オリゴマーやモノマーからなる低分子量物)を特定の範囲に低減する方法は限定されない。例えば、積層ポリエステルフィルムを構成する原料ポリエステル樹脂に含まれる環状三量体量を低減する方法や積層ポリエステルフィルム表面に環状三量体等のオリゴマー析出を抑制する架橋樹脂層を積層する方法等が挙げられる。特に前者が好ましい。
上記方法のうち、原料ポリエステル樹脂に含まれる環状三量体量を低減する方法で実施する場合は、積層ポリエステルフィルムを構成する全層のポリエステル樹脂に含まれる環状三量体量を低減してもよいし、表面層形成に用いるポリエステル樹脂のみを低減してもよい。経済性の点より後者で行うのが好ましい。該表面層のポリエステル樹脂のみを低減して実施する場合は、少なくとも表面層(B)の形成に用いるポリエステル樹脂に含まれる環状三量体量を低減することは不可欠である。表面層(A)の形成に用いるポリエステル樹脂に含まれる環状三量体量も同時に低減することも好ましい実施態様の一つである。本態様で実施することにより、表面層(A)表面の析出粒子数も低減され、前記の効果の発現に繋がる。
表面層形成に用いるポリエステル樹脂に含まれる環状三量体量のみを低減して実施する場合には、表面層(B)の厚みを十分に厚くすることが重要である。この厚みの下限は表面層(B)に用いるポリエステル樹脂に含まれる環状三量体量によって異なるが、例えば3000ppmのポリエステル樹脂を用いた場合、5μm以上の厚みを持たせることが好ましく、8μm以上であることがより好ましい。表面層(B)の厚みが不十分な場合には、中間層(M)から拡散、移行する環状三量体によって、表面層(B)表面に粒子が析出し、本発明の効果が不十分となる場合がある。
上記方法で実施する場合のポリエステル樹脂中の環状三量体量は、総量で8000ppm以下が好ましい。6000ppm以下がより好ましく、4000ppm以下がさらに好ましい。8000ppmを超えると表面析出粒子の個数が増大するので好ましくない。
本発明において用いられるポリエステル樹脂は、ジカルボン酸とグリコールをエステル化反応させ、次いで重縮合反応を行う重縮合法、あるいはジカルボン酸塩とグリコールをエステル交換反応させ、次いで重縮合反応を行うエステル交換法など、従来公知の方法によって製造される。
このポリエステル樹脂には、重縮合触媒、さらに場合によってはエステル交換反応触媒、及びリン酸又はリン酸塩などの熱安定剤が必須成分として用いられる。また、これら以外に、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩を適量含有させ、これらの金属塩とリン原子のモル比を制御することで、シート状溶融ポリエステル樹脂を回転冷却ロール上に静電印加法により密着固化させ、厚みの均一な未延伸シートを安定して得ることができる。
ポリエステル樹脂の代表的な重縮合触媒としては、三酸化アンチモン、アンチモングリコラートなどのSb系触媒、Ge系触媒、Ti系触媒などがある。これらのうち、透明性、熱安定性及び価格の観点から、フィルム用ポリエステル樹脂の重縮合触媒としては、三酸化アンチモン(Sb2O3)を使用する。
特に、重縮合触媒としてSb2O3を使用した場合、重合時及び/又は未延伸ポリエステルフィルムの製造時に、Sb2O3が金属Sbに還元され、フィルム表面に凝集物として析出しやすくなる。これが上記(A)の異物に該当するため、重縮合時間を著しく遅くしない範囲で、できるだけSb2O3の含有量を低減させることが好ましい。上記のような異形部の数を上記範囲内とするためには、ポリエステル樹脂中のSb2O3の含有量を、金属Sb換算で50〜250ppm、好ましくは60〜200ppm、さらに好ましくは70〜150ppmとすることが推奨される。
また、重縮合完了後、ポリエステル樹脂を孔径が7μm以下(初期濾過効率95%)のステンレススチール焼結体等の濾材よりなるフィルターで濾過処理し、あるいはペレット化のために押出機から溶融ポリエステル樹脂のストランドを冷却水中に押出す際に、予め冷却水を濾過処理(フィルター孔径:1μm以下)し、且つ、この工程を密閉した部屋で行い、ヘパフィルターで環境中に存在する1μm以上の異物を低減させておくことが好ましい。
さらに、後述するポリエステル樹脂の未延伸シート製造の際にも、該ポリエステル樹脂が溶融している段階で、該樹脂中に含まれる異物を除去するために精密濾過を行う。精密濾過に用いられる濾材は特に限定はされないが、ステンレススチール焼結体の濾材が、ポリエステル樹脂の重合触媒が還元されて生成する金属Sbなどや、重合からペレット化までの段階で混入するSi、Ti、Ge、Cuを主成分とする凝集物及び高融点有機物の除去性能に優れることから好適である。濾材の濾過可能な粒子サイズは15μm以下(初期濾過効率95%)であることが好ましい。15μmを超えるものでは、除去の必要がある20μm以上のサイズの粒子の除去が不十分となる場合がある。上記のような濾過性能を有する濾材を使用して溶融樹脂の精密濾過を行うことにより生産性が低下する場合があるが、光学欠陥の少ないフィルム積層体を得るには極めて好適である。
前記の環状三量体含有量を低減させたポリエステル樹脂(以下、低オリゴマーポリエステル樹脂と称する)の製造方法は限定されないが、固有粘度が0.40〜0.60dl/gの溶融重合ポリエステルプレポリマーを固相重合する方法や所定の固有粘度のポリエステルを不活性気体雰囲気下または減圧下に固有粘度が実質的に変化しない条件で加熱処理する方法等が挙げられる。さらに、環状三量体を溶解する溶媒で抽出する方法等もある。
表面析出粒子数を抑制する表面層を形成するポリエステル樹脂の全量を上記低オリゴマーポリエステル樹脂としてもよいし、低オリゴマーポリエステル樹脂と汎用のポリエステル樹脂との混合物を用いてもよい。
また、環状三量体はポリエステルフィルムの製造工程におけるポリエステル樹脂の溶融状態の工程において生成するので、ポリエステル樹脂を290℃の温度で30分間溶融した時の環状三量体の増加量を5000ppm以下に低下させる手法を採用することも出来る。環状三量体の増加量は、好ましくは3000ppm以下、より好ましくは2000ppm以下、特に好ましくは1000ppmである。
また、290℃の温度で30分間溶融したとき、環状三量体増加量が5000ppm以下に低下させる手法を下記に示す。成形時の溶融状態での環状三量体の再生を出来るだけ抑制するためには、ポリエステル中に残存する活性な重合触媒量を出来るだけ減少さすことが重要である。このような活性な重合触媒量を減らす代表的な手段としては、下記の方法が挙げられる。
一つの手段としては、ポリエステルを水と接触処理することによって重合触媒の不活性化を行う方法が挙げられる。
ポリエステルの重縮合触媒を失活処理する方法としては、溶融重縮合後や固相重合後にポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法が挙げられる。
水処理方法としては、水中に浸ける方法やシャワ−でチップ上に水をかける方法等が挙げられる。処理時間としては5分〜2日間、好ましくは10分〜1日間、さらに好ましくは30分〜10時間で、水の温度としては20〜180℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは50〜120℃である。
以下に、水処理を工業的に行う方法を例示するが、これに限定するものではない。また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えないが、工業的に行うためには連続方式の方が好ましい。
ポリエステルのチップをバッチ方式で水処理する場合は、サイロタイプの処理槽が挙げられる。すなわちバッチ方式でポリエステルのチップをサイロへ受け入れ水処理を行う。ポリエステルのチップを連続方式で水処理する場合は、塔型の処理槽に継続的又は間欠的にポリエステルのチップを上部より受け入れ、水処理させることができる。
またポリエステルのチップと水蒸気または水蒸気含有ガスとを接触させて処理する場合は、50〜150℃、好ましくは50〜110℃の温度の水蒸気または水蒸気含有ガスあるいは水蒸気含有空気を好ましくは粒状ポリエチレンテレフタレ−ト1kg当り、水蒸気として0.5g以上の量で供給させるか、または存在させて粒状ポリエチレンテレフタレ−トと水蒸気とを接触させる。
この、ポリエステルのチップと水蒸気との接触は、通常10分間〜2日間、好ましくは20分間〜10時間行われる。
以下に粒状ポリエチレンテレフタレ−トと水蒸気または水蒸気含有ガスとの接触処理を工業的に行なう方法を例示するが、これに限定されるものではない。また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えない。
ポリエステルのチップをバッチ方式で水蒸気と接触処理をする場合は、サイロタイプの処理装置が挙げられる。すなわちポリエステルのチップをサイロへ受け入れ、バッチ方式で、水蒸気または水蒸気含有ガスを供給し接触処理を行なう。
ポリエステルのチップを連続的に水蒸気と接触処理する場合は塔型の処理装置に連続で粒状ポリエチレンテレフタレ−トを上部より受け入れ、並流あるいは向流で水蒸気を連続供給し水蒸気と接触処理させることができる。
上記の如く、水又は水蒸気で処理した場合は粒状ポリエチレンテレフタレ−トを必要に応じて振動篩機、シモンカ−タ−などの水切り装置で水切りし、コンベヤ−によって次の乾燥工程へ移送する。
水又は水蒸気と接触処理したポリエステルのチップの乾燥は通常用いられるポリエステルの乾燥処理を用いることができる。連続的に乾燥する方法としては、上部よりポリエステルのチップを供給し、下部より乾燥ガスを通気するホッパ−型の通気乾燥機が通常使用される。
バッチ方式で乾燥する乾燥機としては大気圧下で乾燥ガスを通気しながら乾燥してもよい。
乾燥ガスとしては大気空気でも差し支えないが、ポリエステルの加水分解や熱酸化分解による分子量低下を防止する点からは乾燥窒素、除湿空気が好ましい。
また、上記方法による効果の小さいアルミニウムやチタン系の重縮合触媒の場合は、リン化合物を溶融重縮合後または固相重合後のポリエステルの溶融物に添加、重合触媒を不活性化する方法が挙げられる。
溶融重合ポリエステルの場合には、溶融重合反応終了後のポリエステルと、リン化合物を配合したポリエステル樹脂とを溶融状態で混合できるラインミキサ−等の機器中で混合してアルミニウム触媒を不活性化する方法が挙げられる。
また固相重合ポリエステルにリン化合物を配合する方法としては、固相重合ポリエステルにリン化合物をドライブレンドする方法やリン化合物を溶融混練して配合したポリエステルマスタ−バッチチップと固相重合ポリエステルチップを混合する方法によって所定量のリン化合物をポリエステルに配合後、押出機や成形機中で溶融し、触媒を不活性化する方法等が挙げられる。
触媒を完全に失活させるのに要するリン化合物の量は、ポリエステル中に残存する触媒金属含有量に対して、残存量で少なくとも5倍モルである。
使用されるリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。具体例としてはリン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニ−ルエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸モノブチルエステル、リン酸ジブチルエステル、亜リン酸、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエチルエステル、亜リン酸トリブチルエステル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジエチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジフェニ−ルエステル等であり、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
また、ポリエステルフィルムの製造工程における環状三量体の生成を抑制する方法として、ポリエステル樹脂を溶融させて押出し、シートを製造する際の溶融温度をより低温にし、かつその滞留時間をより短時間にすることが好ましい実施形態として挙げられる。溶融温度は、溶融した樹脂が通過する流路の温度を制御することで調節することが可能であり、当該ポリエステル樹脂の融点から+30℃までの範囲に制御することが好ましく、+15℃までの範囲に制御することがより好ましい。またポリエステル樹脂は結晶化速度が遅いために融点−10℃までの範囲では製造工程中で実質的に固化することなく流動するので、環状三量体の生成を低減させるためには、樹脂温度を上記温度範囲に制御することも好ましい実施形態である。
滞留時間は、溶融樹脂が通過するの流路の容積に対して、通過する樹脂の流量を大きくすることで低減させることが可能であり、滞留時間を60分以下にすることが好ましく、30分以下にすることがより好ましい。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、表面層(A)が平滑な表面になるように設計されており、該表面層(A)表面に金属薄膜層を設けることにより、光反射率、特に正反射率の高い鏡面反射層を形成できるので、光反射用部材として好適に用いることができる。したがって、本発明の積層ポリエステルフィルムは、表面平滑性に優れる表面層(A)に金属薄膜層を設けることが好ましい実施態様である。すなわち、本発明の積層ポリエステルフィルムを反射フィルムの基材として用い、前記の積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に金属薄膜層を形成し、金属薄膜層を反射面とする鏡面反射フィルムとすることで、本発明の作用効果を最大限発揮することができる。代表的な層構成を図3に示す。
さらに、本発明の積層ポリエステルフィルムは、金属薄膜層の反対面となる表面層(B)に易滑性の付与と、フィルム巻取り時の表面層(B)からの表面層(A)への汚れや押し跡などの転写を低減するよう、好適な表面設計がなされており、これらの機能は金属薄膜層を設けた鏡面反射フィルムについても反映されるので、光反射用部材として好適に用いることができる。
本発明においては、積層ポリエステルフィルムの層構成に及ぼす反射特性の影響を評価するために、各実施例において、積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に、アルミニウムからなる金属薄膜層を40nmの厚みで蒸着してなる、鏡面反射フィルムを作製した。本発明では、この鏡面反射フィルムにおける金属薄膜層表面の光線反射率が79%以上であることが好ましく、さらに好ましくは80%以上であり、特に好ましくは82%以上である。本特性を満足することにより、例えばLCD用の面光源反射板として使用することにより輝度の高いLCDが得ることができる。
前記の金属薄膜層を構成する金属は、前記に記載したアルミニウムに限定されず、光吸収の少ない金属であればよく、例えば、銀、金、白金、ステンレスやそれらの合金も試用できる。前記の金属として、銀や銀合金を用いることにより、アルミニウムを用いた場合よりも光線反射率のより優れた鏡面反射フィルムが得られる。市場要求により、金属の材料を適宜選択すればよい。また、金属薄膜には反射率を損なわない程度の非金属元素が微量含有していてもよい。金属薄膜は、単層構成であっても、積層構成であってもよい。前記の金属薄膜層の形成は、真空蒸着法が一般的であるが、スパッタリング法やCVD法によっても可能である。前記の金属薄膜の厚さは、10〜200nmの範囲が好ましい。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。なお、各実施例で得られたフィルム特性は以下の方法により測定、評価した。
(1)固有粘度
チップサンプル0.1gを精秤し、25mlのフェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。なお、測定は3回行い、その平均値を求めた。
(2)粒子の平均粒子径
粒子を走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−510型)で観察し、粒子の大きさに応じて適宜倍率を変え、写真撮影したものを拡大コピーした。次いで、ランダムに選んだ少なくとも200個以上の粒子について、各粒子の外周をトレースした。画像解析装置にてこれらのトレース像から粒子の円相当径を測定し、それらの平均値を平均粒子径とした。
(3)平均表面粗さ
フィルムの表面を、触針式三次元表面粗さ計(株式会社小坂研究所社製、SE−3AK)を用いて、針の半径2μm、荷重30mg、針のスピード0.1mm/秒の条件下で、フィルムの長手方向にカットオフ値0.25mmで、測定長1mmにわたって測定し、2μmピッチで500点に分割し、各点の高さを三次元粗さ解析装置(株式会社小坂研究所社製、TDA−21)に取り込ませた。これと同様の操作をフィルムの幅方向について2μm間隔で連続的に150回、即ちフィルムの幅方向0.3mmにわたって行い、解析装置にデータを取り込ませた。次に、前記の解析装置を用いて、三次元平均表面粗さSRa及び三次元十点平均粗さSRzを求めた。SRa及びSRzの単位は、いずれもμmである。なお、測定は3回行い、それらの平均値を採用した。
(4)表面層(A)の粗大突起数
(a)欠点の検出
下記の光学欠陥検出装置を用いて、100mm×100mmの積層ポリエステルフィルム片10枚について、表面層(A)面を観察して、光学的に20μm以上の大きさと認識される欠点を検出した。
[光学欠点の検出方法]
投光器として20W×2灯の蛍光灯をXYテーブル下方400mmに配置し、XYテーブル上に設けたスリット幅10mmのマスク上に測定対象の試験片を配置する。投光器と受光器を結ぶ線と、試験片表面の鉛直方向とのなす角度を12°となるよう光を入射すると、入射位置の試験片に傷が存在する場合に、その部分が光り輝く。その部分の光量をXYテーブル上方500mmに配置したCCDイメージセンサカメラで電気信号に変換し、その電気信号を増幅し、微分してスレッシュホールド(しきい値)レベルとコンパレータで比較して、光学欠点の検出信号を出力する。また、CCDイメージセンサカメラを用いて、粗大突起の画像を入力し、入力された画像のビデオ信号を所定の手順により解析して、光学欠点の大きさを計測し、大きさ20μm以上の欠点の位置を表示する。光学欠点の検出は、試験片の表面層(A)について行う。
(b)粗大突起の大きさと高さの測定
前記の光学欠点検出装置を用い、検出した欠点部分から表面層(A)の粗大突起による光学欠点を選び出した。さらに適当な大きさに切り取って、Al蒸着を行った。次いで、非接触式三次元粗さ計(マイクロマップ社製550)を用いて、フィルム面に対して垂直方向から観察した時の、表面層(A)の表面に存在する高さが1μm以上で最大径が20μm以上の粗大突起の個数を測定し、単位を「個/m2」に換算した。
(5)フィルムの厚み
ミリトロン厚み計を用い、1枚当たり5点を計3枚の15点を測定し、その平均値を求めた。
(6)積層フィルムの層厚み
ミクロトームを用いてフィルムを切削し、フィルム表面に垂直な断面を得た。この断面に白金・パラジウム合金をスパッタリングによって被覆したものを観察サンプルとした。走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−510型)を用いてフィルム断面を観察し、フィルム全厚みが一視野となる適当な倍率で写真撮影した。この像より、スケールを用いて各層の厚みを測定した。独立に作成した3点の断面サンプルについて測定を行い、この平均値をもって積層フィルムの層厚みとした。
(7)積層フィルムの光線透過率
JIS−B0601−1982に準じ、ポイック積分球式H.T.Rメータ(日本精密光学製)を用い測定した。この値が小さいほど遮光性が高いことを意味する。
(8)積層ポリエステルフィルムの見かけ密度
フィルムを5.0cm四方の正方形に4枚切り出して試料とした。この試料を4枚重ねにして、マイクロメーターを用いて有効数字4桁で、総厚みを場所を変えて10点測定し、重ね厚みの平均値を求めた。この平均値を4で除して有効数字3桁に丸め、一枚あたりの平均厚み(t:μm)とした。同試料4枚の質量(w:g)を有効数字4桁で自動上皿天秤を用いて測定し、次式より見かけ密度を求めた。なお、見かけ密度は有効数字3桁に丸めた。
見かけ密度(g/cm3)=w/(5.0×5.0×t×10-4×4)
=w×100/t
(9)積層ポリエステルフィルムのカール値
積層ポリエステルフィルムを長手方向に100mm、幅方向に50mmに枚葉状に切り出し、無荷重の状態で、110℃で30分間加熱処理した後、フィルムの凸部を下にして水平なガラス板上に静置し、ガラス板と立ち上がったフィルム4隅の下端との垂直距離を最小目盛り0.5mm単位で定規を用いて測定し、この4箇所の測定値の平均値をカール値とした。サンプルは3点準備し、繰り返し測定を行い、この平均値をカール値とした。
(10)表面層(A)の傷
(a)傷の検出
250mm×250mmのフィルム片16枚について評価した。該評価は製膜開始から24時間後のものについて評価した。
投光器として20W×2灯の蛍光灯をXYテーブル下方400mmに配置し、XYテーブル上に設けたスリット幅10mmのマスク上に測定対象の試験片の表面層(A)が上面となるよう置く。投光器と受光器を結ぶ線と、試験片表面の鉛直方向とのなす角度を12°となるよう光を入射すると、入射位置の試験片に傷が存在する場合に、その部分が光り輝く。その部分の光量をXYテーブル上方500mmに配置したCCDイメージセンサカメラで電気信号に変換し、その電気信号を増幅し、微分してスレッシュホールド(しきい値)レベルとコンパレータで比較して、光学欠点の検出信号を出力する。また、CCDイメージセンサカメラを用いて、傷の画像を入力し、入力された画像のビデオ信号を所定の手順により解析して、光学欠点の大きさを計測し、50μm以上の欠点の位置を表示する。光学欠点の検出は、試験片の表面層(A)について行う。
(b)傷の大きさの測定
上記(a)において検出される光学欠点部分から、傷による欠点を選出する。上記方法で傷と判定された部分が含まれるように、上記の試験片を適当な大きさに裁断し、形状観察用試験片を採取した。次いで、マイクロマップ社製3次元形状測定装置TYPE550を用いて、採取した試験片の表面層(A)を垂直方向から観察し、傷の大きさを測定する。なお、試験片、すなわちフィルムの表面に対して垂直方向から観察した時に、50μm以内に近接する傷の凹凸は同一の傷として考え、それらの傷の最外部を覆う最小面積の長方形の長さおよび幅を、傷の長さおよび幅とする。そして、これらの傷の深さ(傷の最も高いところと最も低いところの高さの差)及び長さを計測する。この結果より、深さ1μm以上で、かつ長さ3mm以上の傷の個数(個/m2)を求め、以下の基準で判定した。
◎:30個/m2以下
○:31〜50個/m2
△:51〜100個/m2
×:101個/m2以上
(11)静摩擦係数
JIS K 7125に準拠して測定した。但し、ロードセルとサンプルの接続にはバネを用いない直結とし、すべり片の質量は1.5kg、試験速度は200mm/分として測定した。一試料につき、3回測定して、その平均値を静摩擦係数とした。
(12)光線反射率
積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に、アルミニウムからなる金属薄膜層を40nmの厚みで蒸着してなる、鏡面反射フィルムを作製した。特に断らない限りは、前記の金属薄膜層の厚みは40nmとした。
分光光度計(日立製作所製、Spectrophotometer U-3500)に積分球を取り付け、アルミナ白板(日立計測器サービス社製、210−0740)の反射率が100%となるようにベースライン補正した。装置付属の鏡面測定用治具(傾斜角10度)を介して、蒸着フィルムの金属薄膜面が積分球側になるようサンプルを固定した。波長400〜700nmの範囲で、1nm刻みで反射率を測定した。545〜555nmの測定値(計11点)を平均して光線反射率とした。
なお、積層ポリエステルフィルムに金属薄膜層を設けない場合は、積層ポリエステルフィルムの表面層(A)の面が積分球側になるようにサンプルを固定し、前記の手順にしたがって、前記の表面層(A)に光を照射して、積層ポリエステルフィルムの光線反射率を求めた。
(13)金属薄膜層形成加工工程における積層ポリエステルフィルムの表面汚染のモデル評価
(a)加熱処理
測定すべきフィルムの任意の5箇所より小片を切り取り、端部を蛇の目クリップで把持して170℃の熱風中で20分間加熱した。この際、フィルムが他のフィルムや器具と触れないように保持して、キズなどが生じないように取り扱った。加熱後は室温中へ取り出して、十分に自然冷却した後、次の観察を行った。
(b)フィルム表面の析出粒子の占有面積比
まず、測定すべきフィルム小片から、除電ブロワーによって塵などを注意深く取り除いた。この表面を非接触型三次元形状測定装置(Micromap社製;Micromap557)で測定した。光学系にはミロー型二光束干渉対物レンズ(50倍)とズームレンズ(Body Tube,0.5倍)を使用し、5600オングストロームの光源を用いて、2/3インチCCDカメラで受光した。測定はWAVEモードで行い、245μm四方の視野を480ピクセル四方のデジタル画像として処理した。画像の解析には解析ソフトウェア(Micromap123、バージョン4.0)を用いて、4次関数モードで傾斜除去(Detrending)し、表面形状データを得た。当該形状データから解析ソフトウェア(SX−Viewer、バージョン3.4.2)を用いて粒子解析を行った。ソフトウェアの補正機能により、平面補正と補間を行った後、最長径が0.01から2000μm、高さが0.1μmから1000μmの突起を解析した。突起の解析のパラメータとして、二値化閾値0.01と再二値化閾値50、ブロックサイズ4を与え、突起を二値化して抽出した。得られた解析結果から突起の占有面積を求め、上記加熱処理の前後で増加した突起の占有面積と視野の面積(6.0×104μm2)の比率を占有面積比とした。なお、測定は5つのフィルム小片において、明確なキズや異物などを避けた任意の3箇所でそれぞれ行い、合計15視野での平均値を求めて用いた。
実施例1
[表面層(A)及び層(B1)用ポリエステル樹脂の製造]
エステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、テレフタル酸が86.4質量部及びエチレングリコールが64.4質量部からなるスラリーを仕込み、撹拌しながら、触媒として三酸化アンチモンを0.017質量部及びトリエチルアミンを0.16質量部添加した。次いで加熱昇温を行い、ゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った。
その後、エステル化反応缶内を常圧に戻し、酢酸マグネシウム4水和物0.071質量部、次いでリン酸トリメチル0.014質量部を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012質量部、次いで酢酸ナトリウム0.0036質量部を添加した。得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、減圧下で260℃から280℃へ徐々に昇温し、285℃で重縮合反応を行った。重縮合反応終了後、孔径5μm(初期濾過効率95%)のステンレススチール焼結体製フィルターで濾過処理を行った。
次に、空気中に存在する径が1μm以上の異物を、ヘパフィルターで減少させた密閉室内で、上記重縮合反応生成物であるポリエチレンテレフタレート(PET)をペレット化した。ペレット化は、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を流しながら、冷却水槽中に溶融PETを押出機のノズルから押出し、形成されたストランド状PET樹脂をカットする方法で行った。得られたPETのペレットは、固有粘度が0.62dl/g、Sb含有量が144ppm、Mg含有量が58ppm、P含有量が40ppm、カラーL値が56.2、カラーb値が1.6であり、不活性粒子及び内部析出粒子は実質的に含有していなかった。
[表面層(A)及び層(B1)用低オリゴマーポリエステル樹脂の製造]
上記方法で得られたポリエステル樹脂を減圧下160℃にて乾燥し、次いで、400ppmのエチレングリコールを含有する窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時40リットルで流通し、この反応系を1.2kg/cm2の微加圧に調整し、215℃で20時間加熱処理をして低オリゴマー化処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.612dl/gであり、環状三量体含有量は3400ppmであった。なお、低オリゴマー化する前のポリエステル樹脂中の環状三量体量は9600ppmであった。
[空洞形成剤含有マスターペレット(イ)の調製]
中間層(M)用原料の1つとして、メルトフローレート1.5のポリスチレン樹脂(日本ポリスチ社製、G797N)20質量%、メルトフローレート3.0の気相法重合ポリプロピレン樹脂(出光石油化学社製、F300SP)20質量%及びメルトフローレート180のポリメチルペンテン樹脂(三井化学社製:TPX DX−820)60質量%をペレット混合し、2軸押出機に供給して十分に混練りし、ストランドを冷却、切断して空洞形成剤含有マスターペレット(イ)を調整した。
[酸化チタン含有マスターペレット(ロ)の調製]
中間層(M)用原料の1つとして、極限粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂49.5質量%に平均粒径0.3μm(電顕法)のアナタース型二酸化チタン(富士チタン社製、TA−300)50質量%及び蛍光増白剤(イーストマンケミカル社製、OB−1)0.5質量%を混合したものをベント式2軸押出機に供給して予備混練りした後、溶融ポリマーを連続的にベント式単軸混練り機に供給して混練りして酸化チタン含有マスターペレット(ロ)を調整した。
[易滑性被覆層(B2)形成用塗布液の調製]
(共重合ポリエステル樹脂の調製)
撹拌機、温度計、及び部分還流式冷却器を具備したステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート345質量部、1,4−ブタンジオール211質量部、エチレングリコール270質量部、及びテトラ−n−ブチルチタネート0.5質量部を仕込み、160℃から220℃まで、4時間かけてエステル交換反応を行った。次いで、フマル酸14質量部及びセバシン酸160質量部を加え、200℃から220℃まで1時間かけて昇温し、エステル化反応を行った。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、29.3Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステルを得た。得られた共重合ポリエステルは、淡黄色透明であり重量平均分子量は20.000あった。また、NMR分析による芳香族成分の割合は70モル%であった。
(グラフト変性樹脂の調製)
撹拌機、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応器に共重合ポリエステル75質量部、メチルエチルケトン56質量部及びイソプロピルアルコール19質量部を入れ、65℃で加熱、撹拌し、樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、無水マレイン酸15質量部をポリエステル溶液に添加した。
次いで、スチレン10質量部、及びアゾビスジメチルバレロニトリル1.5質量部を12質量部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を0.1ml/分でポリエステル溶液中に滴下し、さらに2時間撹拌を続けた。反応溶液から分析用のサンプリングを行った後、メタノール5質量部を添加した。次いで、水300質量部とトリエチルアミン15質量部を反応溶液に加え、1時間撹拌した。その後、反応器内温を100℃に上げ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のトリエチルアミンを蒸留により留去し、水分散性グラフト樹脂を得た。この水分散性グラフト樹脂)は淡黄色透明であった。この樹脂の酸価は1400eq/tであった。
(塗布液の調整)
上記方法で調製した水分散性グラフト樹脂の25質量%水分散液を40質量部、水を24質量部及びイソプロピルアルコールを36質量部、それぞれ混合し、さらにアニオン系界面活性剤の10質量%水溶液を0.6質量部、プロピオン酸を1質量部、イオン交換水中でホモジナイザ−により分散処理したコロイダルシリカ粒子(日産化学工業社製、スノーテックスOL、平均粒径40nm)(粒子a)の20質量%水分散液を1.8質量部、イオン交換水中でホモジナイザ−により分散処理した乾式法シリカ粒子(日本アエロジル社製、アエロジルOX50、平均凝集粒径200nm、平均一次粒径40nm)(粒子b)の4質量%水分散液を1.1質量部添加し、塗布液とした。粒子aと粒子bの質量比は8、粒子bの含有量は被覆層の樹脂組成物に対して0.42質量%である。
[積層ポリエステルフィルムの製造]
前記の空洞形成剤含有マスターペレット(イ)7質量%、酸化チタン含有マスターペレット(ロ)7質量%、及び極限粘度0.62dl/gのPET樹脂86質量%よりなる混合物を中間層(M)の原料とした。また、前記の表面層(A)及び層(B1)用ポリエステル樹脂を、中間層(M)の両面に積層されるように2台の押出し機に供給し、表面層(A)/中間層(M)/層(B1)の厚み比率が8/84/8となるようにフィードブロックで接合した。次いで、3層ダイスより20℃に調節された冷却ドラム上に押し出し、厚み1.6mmの3層構成の未延伸フィルムを製造した。押出しに際しては、ポリエステル樹脂、及びポリエステル樹脂とマスターペレットとの混合物は予め真空乾燥した後に、押出し機に供給した。また、表面層(A)及び層(B1)に関しては、溶融PETの異物除去用濾材として濾過可能な粒子サイズが10μm(初期濾過効率95%)のステンレススチール製焼結濾材を用いて精密濾過を行った。さらに、冷却ドラムの反対面には20℃に温調した冷風を吹き付け冷却した。なお、表面層(A)及び層(B1)用ポリエステル樹脂は、すべて低オリゴマー化ポリエステル樹脂を用いた。
得られた未延伸フィルムを、加熱ロールを用いて65℃に均一加熱し、周速が異なる2対のニップロール(低速ロール:1m/分、高速ロール:3.4m/分)間で3.4倍に延伸した。このとき、フィルムの補助加熱装置として、ニップロール中間部に金反射膜を備えた赤外線加熱ヒータ(定格:40W/cm)をフィルムの両面に対向して設置(フィルム表面から1cmの距離)し、片面を18W/cm、反対面を12W/cmにて加熱した。該フィルム製造時に用いる全ロールに関し、ロールの表面粗度をRaで0.1μm以下に管理し、縦延伸工程の予熱入口と冷却ロールにロールクリーナーを設置した。縦延伸工程のロール径は150mmであり、サクションロール、静電密着、パートニップの密着装置を採用してフィルムをロールへ密着させた。
上記方法で調製した易滑性被覆層(B2)形成用塗布液を、濾過可能な粒子サイズ10μm(初期濾過効率95%)のフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過し、リバースロール法によって、上記一軸延伸PETフィルムの反冷却ロール接触面側に塗布、乾燥した。この際のコート量は、0.1g/m2であった。塗布後引き続いて、フィルムの端部をクリップで把持して130℃に加熱された熱風ゾーンに導いて乾燥した後、幅方向に4.0倍に延伸した。引き続いてフィルム幅の長さを固定した状態で赤外線ヒーターによって250℃で0.6秒間加熱し、易滑性被覆層を形成した厚さ188μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性値を表1に示す。なお、得られた積層ポリエステルフィルムの白色度は84であった。
上記方法で得られた積層ポリエステルフィルムの易滑性被覆層(B2)の反対面である表面層(A)表面に、以下の方法で、アルミニウムからなる金属薄膜層を設けた。すなわち、ベルジャー型真空蒸着装置のタングステンフィラメントにアルミ金属片(10mg)を固定し、これより10cm離して、評価すべきポリエステルフィルムを設置した。ベルジャーを密閉した後、真空ポンプを用いて0.01Paまで減圧し、フィラメントに電流を加えてアルミニウムを蒸発させた。およそ15秒程度の加熱でアルミニウム金属片をほぼ全て蒸発させた後、系が冷却されるのを待って常圧まで戻し、蒸着フィルム(鏡面反射フィルム)を取り出した。得られた鏡面反射フィルムの特性値を表1に示す。
本実施例1で得られた積層ポリエステルフィルムは、表面層(A)の平滑性に優れているおり、かつ中間層(M)の遮光性に優れているので、鏡面反射フィルムの光線反射率が高い。また、中間層(M)で遮光されているので、金属薄膜層のピンホールが観察されない。また、表面層(B)が層(B1)に易滑性被覆層(B2)が積層され、最外層となる易滑性被覆層(B2)の表面粗さが適度に粗面化されている。そのため、表面層(A)が平滑であるにもかかわらず、滑り性に優れており、かつ加熱によるカールの発生が抑制されており、フィルムの取り扱い性が良好である。また、中間層(M)に空洞が含有されており、積層ポリエステルフィルムの見かけ密度が小さく、軽量であるという特徴を有する。
さらに、本実施例1で得られた積層ポリエステルフィルムは、金属薄膜層形成加工工程における表面汚染のモデル評価法である、加熱処理された積層ポリエステルフィルム表面の析出粒子評価において、表面層(A)および(B)共に、粒子の表面析出は認められず高品質であった。
比較例1
実施例1の方法において、表面層(A)及び層(B1)がともに、中間層(M)と同じ組成の混合物よりなるポリエステル樹脂を用いるように変更する以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表1に示す。
本比較例1で得られた積層ポリエステルフィルムは金属薄膜層を形成する面である表面層(A)の平滑性が劣る。そのために、鏡面反射フィルムの金属薄膜層の表面における光線反射率が低く、光反射用部材としては低品質であった。
比較例2
実施例1の方法において、中間層(M)の原料を表面層(A)や層(B1)と同じポリエステル樹脂を用いるように変更する以外は、実施例1と同様にして比較例2の積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表1に示す。
本比較例2で得られた積層ポリエステルフィルムは表面層(A)の表面平滑性は良好である。しかしながら、中間層(M)の遮光機能がなく、光線透過率が高いので、鏡面反射フィルムとした場合に金属薄膜層表面における光線反射率が低く、金属薄膜層にピンホールが多く観察された。したがって、光反射用部材用としては低品質であった。ここで、表面層(A)の表面が平滑であるにもかかわらず、実施例1で得られた積層ポリエステルフィルムを基材とする鏡面反射フィルムに比べ、光線反射率が劣るのは、金属薄膜層を透過した光を中間層(M)で遮断し、反射する効果が不十分であったためと推察される。
比較例3
実施例1の方法において、中間層(M)に用いる原料として、ポリエステル樹脂組成物への酸化チタンマスターバッチ(ロ)の配合を取り止める以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表1に示す。
本比較例3で得られた積層ポリエステルフィルムは、中間層(M)の遮光機能が低く、光線透過率が高いので、鏡面反射フィルムとした場合に金属薄膜層の表面における光線反射率が劣るとともに、金属薄膜層のピンホールが多かった。したがって、光反射用部材としては低品質であった。
比較例4
比較例2の方法において、易滑性被覆層(B2)を形成する塗布液の塗布を取り止める以外は、比較例2と同様の方法で比較例4の積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表1に示す。
本比較例4で得られた積層ポリエステルフィルムは、比較例2での品質低下に加え、表面層となる層(B1)も表面層(A)と同様に平滑であるため、滑り性が著しく悪く、フィルムの巻き取り性等のハンドリング性が劣っていた。そのために、金属薄膜層を形成する面である表面層(A)における傷が多かった。したがって、光反射用部材としては低品質であった。
比較例5
比較例2の方法において、表面層(A)及び層(B1)に用いるポリエステル樹脂の製造時に、三酸化アンチモンの添加量を2倍量とし、かつ重縮合反応終了後に用いるポリエステルの濾過用フィルターの孔径を20μm(初期濾過効率95%)に変更する以外は、比較例2と同様にして、比較例5の積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表1に示す。
本比較例5で得られた積層ポリエステルフィルムは比較例2で得られた積層ポリエステルフィルムの品質低下に加えて、表面層(A)に粗大突起数が多く光反射用部材としては低品質であった。
比較例6
実施例1の方法において、表面層(A)及び層(B1)用ポリエステル樹脂として低オリゴマー化しないポリエステル樹脂を用いるように変更する以外は、実施例1と同様にして比較例6の積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表1に示す。
本比較例6で得られた積層ポリエステルフィルムは、金属薄膜層形成加工工程における表面汚染のモデル評価法である、加熱処理された積層ポリエステルフィルム表面の析出粒子評価において、表面層(A)および(B)共に、数多くの粒子の表面析出があり低品質であった。
実施例2
実施例1の方法において、表面層(A)及び層(B1)用ポリエステル樹脂として低オリゴマー化樹脂と低オリゴマー化しないポリエステル樹脂を3:7(質量比)で混合したものを用いるように変更する以外は、実施例1と同様にして実施例2の積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表1に示す。
本実施例2で得られた積層ポリエステルフィルムは実施例1で得られた積層ポリエステルフィルムと同様に高品質であった。本発明においては、少量の低オリゴマー化ポリエステル樹脂の使用で表面析出粒子が効率的に抑制できることが示される。
実施例3
実施例1の方法において、積層ポリエステルフィルムの製造時の押出し機を3台とし、表面層(B)を単膜構成とし、原料として使用するポリエステル樹脂として、平均粒径2μmの球状シリカ粒子500ppmを含む実施例1と同様の方法で低オリゴマー化したポリエチレンテレフタレート樹脂に変更し、かつ易滑性被覆層(B2)の形成用塗布液の塗布を取り止める以外は、実施例1と同様にして実施例3の積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表1に示す。
本実施例3で得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムは実施例1で得られたものと同様に高品質であり、光反射用部材として実用性の高いものであった。
実施例4
実施例3の方法において、表面層(A)を形成するポリエステル樹脂として低オリゴマー化処理しない樹脂を用いる以外は、実施例1と同様にして実施例3の積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表1に示す。
本実施例4で得られた積層ポリエステルフィルムは、実施例3で得られた積層ポリエステルフィルムと異なり、金属薄膜層形成加工工程における表面汚染のモデル評価法である加熱処理された積層ポリエステルフィルムの表面層(A)の表面に析出粒子が存在したが、金属薄膜層形成前にアンダーコートをする方法においては、該アンダーコート層によりオリゴマーの表面移行が抑制されるので本製造方法で実施する場合には鏡面反射フィルムの品質に及ぼす悪影響は緩和されるので、実施例3で得られた積層ポリエステルに近い品質の鏡面反射フィルムを得ることができる。
実施例5
実施例1の方法において、塗布液中の水分散性グラフト樹脂の水分散液をメチルメタクリレート55モル%/エチルアクリレート43モル%/N−メチロールアクリルアミド2モル%で構成されているアクリル樹脂(Tg=25℃)と架橋剤としてトリメトキシメチルメラミン(トリメチロールメラミンをメタノールでエーテル化したもの)をそれぞれ8:2(質量部)を25質量部含む水性溶液に変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施例5の積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表1に示す。
本実施例5で得られた積層ポリエステルフィルムは、実施例1で得られた積層ポリエステルフィルムと同様に高品質であった。
比較例7
実施例3の方法において、表面層(A)を形成するポリエステル樹脂として表面層(B)を形成するポリエステル樹脂と同じものを用いる以外は、実施例2と同様にして積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表1に示す。
本比較例7で得られた積層ポリエステルフィルムは、表面層(A)の表面平滑性に劣るため鏡面反射フィルムの金属薄膜層の表面における光線反射率に劣り、光反射用部材としては低品質であった。
比較例8
実施例3の方法において、3層全てを表面層(B)と同じポリエステル樹脂を用いるように変更する以外は、実施例2と同様にして積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表1に示す。
本比較例8で得られた積層ポリエステルフィルムは中間層(M)の遮光機能が低く、光線透過度が高く、かつ、表面層(A)の表面平滑性に劣るため、鏡面反射フィルムとした場合に金属薄膜層の表面における光線反射率が劣るとともに、金属薄膜層のピンホールが多かった。したがって、光反射用部材としては低品質であった。
比較例9
比較例7の方法において、積層フィルムの層厚み比率が表面層(A)/中間層(M)/表面層(B)=8/90/2となるようにし、かつダイスより押出した未延伸フィルムの冷却ドラムによる冷却時に冷却ドラムの反対面には20℃に温調した冷風を吹き付けることを取り止めるように変更する以外は、比較例7と同様にして比較例9の積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表1に示す。
本比較例9で得られた積層ポリエステルフィルムは、比較例7で得られた積層ポリエステルフィルムの品質低下に加えて、カールが大きく、例えば、光反射板等として最終製品に組み込む場合の無緊張下での作業時のハンドリング性が悪化するので光反射用部材としては低品質であった。
比較例10
実施例3の方法において、積層ポリエステルフィルムの全体厚みを100μmに変更し、さらに各層の厚み比率を、表面層(A)/中間層(M)/表面層(B)=1/98/1となるように変更すること以外は、実施例2と同様にして積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表1に示す。
本比較例10で得られた積層ポリエステルフィルムは、表面層(A)の表面平滑性に劣るため、鏡面反射フィルムとした場合に金属薄膜層の表面における光線反射率が劣り、光反射用部材としては低品質であった。
実施例6
実施例1で得られた積層ポリエステルフィルムを用いて、表面層(A)に真空蒸着法によりアルミニウムからなる金属薄膜層の厚みを0nm(蒸着無し)、41nm、104nmと変えた下記の3種類の実験を行った。得られた結果を図4に示す。
(実施例6−1)
実施例6−1は、実施例1の積層ポリエステルフィルムを用い、金属薄膜層を設けなかった実験例である。前記の積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に光を照射した際の光線反射率は69%であった。
(実施例6−2)
実施例6−2は、実施例1の積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に、真空蒸着法により、厚みが41nmのアルミニウムから構成された金属薄膜層を形成させた鏡面反射フィルムである。前記の鏡面反射フィルムの金属薄膜層に光を照射した際の光線反射率は72%であった。
(実施例6−3)
実施例6−3は、実施例1の積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に、真空蒸着法により、厚みが104nmのアルミニウムから構成された金属薄膜層を形成させた鏡面反射フィルムである。前記の鏡面反射フィルムの金属薄膜層に光を照射した際の光線反射率は85%であった。
比較例11
比較例2で得られた積層ポリエステルフィルムを用いて、表面層(A)に真空蒸着法によりアルミニウムからなる金属薄膜層の厚みを0nm(蒸着無し)、29nm、70nm、98nmと変えた下記の4種類の実験を行った。得られた結果を図4に示す。
(比較例11−1)
比較例11−1は、比較例2の積層ポリエステルフィルムを用い、金属薄膜層を設けなかった実験例である。前記の積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に光を照射した際の光線反射率は8%であった。
(比較例11−2)
比較例11−2は、比較例2の積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に、真空蒸着法により、厚みが29nmのアルミニウムから構成された金属薄膜層を形成させた鏡面反射フィルムである。前記の鏡面反射フィルムの金属薄膜層に光を照射した際の光線反射率は37%であった。
(比較例11−3)
比較例11−3は、比較例2の積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に、真空蒸着法により、厚みが70nmのアルミニウムから構成された金属薄膜層を形成させた鏡面反射フィルムである。前記の鏡面反射フィルムの金属薄膜層に光を照射した際の光線反射率は80%であった。
(比較例11−4)
比較例11−4は、比較例2の積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に、真空蒸着法により、厚みが98nmのアルミニウムから構成された金属薄膜層を形成させた鏡面反射フィルムである。前記の鏡面反射フィルムの金属薄膜層に光を照射した際の光線反射率は 83%であった。
図4より、実施例1で得られた積層ポリエステルフィルムを用いた場合の方が、比較例2で得られた積層ポリエステルフィルムを用いた場合より、光線反射率が高く、かつ金属薄膜層の厚みの変動による光線反射率の影響が小さい。このことは、金属薄膜層からの光の漏れを中間層(M)での遮断、反射効果が高いことを明確に示している。
金属薄膜層の厚みはその成膜方法により異なるが、一般的に約20%程度の厚みの変動がある。特に、加工装置内部で蒸着金属源から離れた端部の厚みが薄くなり易い。中間層(M)として白色遮光層を設けることにより、この金属薄膜層の厚み変動による光線反射率の変動を抑制することができる。また、上記金属薄膜層の厚み変動による製品収率の低下を抑制することができる。さらに、金属薄膜層の厚みを薄くしても、高い光線反射率が確保できるので経済効果も大きい。したがって、基材(積層ポリエステルフィルム)の平滑層(表面層A)の上に金属薄膜層を設けた鏡面反射フィルムにおいて、中間層(M)として白色遮光層を設けることにより、反射率の変動の低減及び経済性の両面において顕著な効果が得られる。