JP4710070B2 - 攪拌装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は一般に、攪拌装置に関する。より詳細には、本発明は、プロペラ等の機械的な駆動源を必要とすることなしに、液体を攪拌することができる攪拌装置に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
従来の攪拌装置は基本的には、プロペラ等の手段を用いて液体を機械的に攪拌しようとするものであるため、プロペラ等の手段を駆動させるための駆動源を必要としており、これにより、装置の製造コスト、維持コストが高くなり、保守点検に手間がかかるという課題を有している。また、粘性の高い液体を攪拌しようとする場合には、このような型式の攪拌装置では、必ずしも満足のいく攪拌効果が得られない場合もあった。一方、雪塊を温水中に投入して融解させる型式の融雪装置が知られているが、このような融雪装置では、雪塊の融解により温水の温度が徐々に低下するため、良好な融雪効率が得られないという課題があった。
【0003】
このような現状に鑑み、本発明者は、プロペラ等の機械的な駆動源を必要とすることなしに、液体を効率的に攪拌する攪拌装置、および、雪塊を効率的に融解させる融雪装置を提案した(特許第3058876号)。
【0004】
本願発明は、特許第3058876号に係る発明を改良発展させたものであって、より簡単な構造で液体・雪塊を効率的に攪拌・融解する攪拌装置および融雪装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、円筒形容器内に液体を充填し、液面から高さHのところに配置した単孔ノズルから液面に向けて下向きにガスを噴射すると、液体中に気泡が吹き込まれ、吹き込まれた気泡によって液体中に気柱(ガスの柱)が形成され、この気柱が、液面から深さ(LV −H)=4.1dn Frm1/3 まで到達することを実験的に確認した(ここで、dn はノズル内径、Frmは修正フルード数を表す。なお、修正フルード数Frmは、ノズル先端でガスの持っている慣性力と浮力との比を表す無次元数であって、Frm=ρg Qg 2 /ρL gdn 5 )で表される。ρg はガス密度、Qg はガスの吹き込み流量、ρL は液体の密度、gは重力加速度、dn はノズル内径である。)。
【0006】
このようにして形成された気柱は、深さ(LV −H)の箇所に到達した後、崩壊して気泡噴流となって上昇するが、本発明者は、一定条件下において、この上昇気泡噴流によって、液体の攪拌に好ましい旋回現象が発生することを見い出した。すなわち、円筒形容器の内径をDとすると、Dと(LV −H)との関係が約0.3<(LV −H)/D<約1である場合に、気泡噴流の半径方向変位が比較的小さく、周期が短い旋回現象が発生し、円筒形容器内の液体は、スロッシングに似た挙動を示す。ここで、スロッシングとは、容器が軸方向又は半径方向に加振されることによって液体の振動が誘起される現象をいう。上述の旋回現象は、気泡の上昇に伴う気体から液体への周期的加振によって誘起されたものと推測される。
【0007】
なお、(LV −H)/D<約0.3である場合には、気泡噴流の半径方向変位が極めて小さいため、旋回は、液体を攪拌するには不十分なものとなる。また、(LV −H)/D>約1である場合には、旋回が安定せず、十分な攪拌効果が得られない。
【0008】
上述の旋回現象が気泡による液体への周期的な加振によって誘起されるものであるため、液体の攪拌に好ましい旋回現象が発生するためには、ガスの流量が、臨界値以上であることが必要である。
【0009】
本発明者は、ガスの流量の臨界値を以下のように算定した。スロッシングに関する研究によれば、容器の加振によって液面における波動が誘起され、この波動が粘性を介して液体の内部に伝わり、液体内部の運動が起こるといわれている。したがって、旋回は、液面の波動現象が抑えられることによって止まるものと推測される。本発明者の実験によれば、ノズル径が旋回の開始および停止に殆ど影響を及ぼさないことが分かっているので、液面近傍の液体の加振に気体がノズルから吹き出すときにもっている慣性力は無視することができ、加振力の主要な部分は、気泡が上昇して液面から出る際にほぼ周期的に液体に及ぼす力であろうと結論できる。この力は、上昇する液体の慣性力に依存すると仮定する。また、波動を止めようとする力には、表面張力が関与しているであろう。本発明者は、液体の慣性力と表面張力の比として定義されるウェーバー数We =ρL Qg 2 /(σL D3 )が10-5以上であれば、液体の攪拌に好ましい旋回現象が発生することを実験により確かめた。すなわち、上式のウェーバー数We =10-5が臨界値となる。ここで、ρL は液体の密度、Qg はガスの吹き込み流量、σL は液体の表面張力、Dは円筒形容器の内径である。
【0010】
上述のように、Dと(LV −H)との関係が約0.3<(LV −H)/D<約1である場合に液体の攪拌に好ましい旋回現象が発生するが、(LV −H)/D=約0.5の場合に、最も好ましい攪拌効果が得られる旋回現象が発生する。
【0011】
一方、深さ(LV −H)より上方の液体が、図3の矢印Aで示されるように、一方向に旋回すると、角運動量保存則により、深さ(LV −H)より下方の液体は、図3の矢印Bで示されるように、逆方向に旋回する。深さ(LV −H)より下方における旋回流Bは、深さ(LV −H)より上方における旋回流Aを安定化させており、旋回流Aへの固形物等の投入により旋回流Aの速度の低下や乱れが生じても、旋回流Bが存在していれば、容易に元の状態に復帰することができる。このため、深さ(LV −H)より下方に一定の深さの領域を設けるのが好ましい。液面から容器の底面までの深さをLとすると、最も好ましくは、約0.5D<〔L−(LV −H)〕<約2Dである。
【0012】
本願請求項1に記載の攪拌装置は、内径Dの円筒形容器又は内接円径Dの多角形の平面形状をもつ容器を備え、容器内には、攪拌しようとする液体又は水が収容されており、液面又は水面から高さHのところに下向きに配向され、液体又は水内に気体を吹き込むための1又は複数のノズルが配置されており、液面又は水面からの気泡の到達深さ(LV −H)=4.1dnrm 1/3 −H(ここで、dn はノズル内径、Frmは修正フルード数)と内径又は内接円径Dとの比(LV −H)/Dが、0.3〜1の範囲にあり、ノズルから液体又は水内に吹き込まれる気体の流量Qg が、ρLg 2 /(σL3 )=10-5(ここで、ρL は液体又は水の密度、σL は液体又は水の表面張力)を満足する流量以上であることを特徴とするものである。
【0014】
本願請求項2に記載の攪拌装置は、底壁のない内径Dの円筒体又は内接円径Dの多角形の平面形状をもつ筒体を備え、円筒体又は筒体が、不整形な領域内に収容された、攪拌しようとする液体又は水に挿入されており、円筒体又は筒体によって包囲される液体又は水の領域内の液面又は水面から高さHのところに下向きに配向され、液体又は水内に気体を吹き込むための1又は複数のノズルが配置されており、液面又は水面からの気泡の到達深さ(LV −H)=4.1dnrm 1/3 −H(ここで、dn はノズル内径、Frmは修正フルード数)と内径又は内接円径Dとの比(LV −H)/Dが、0.3〜1の範囲にあり、ノズルから液体又は水内に吹き込まれる気体の流量Qg が、ρLg 2 /(σL3 )=10-5(ここで、ρL は液体又は水の密度、σL は液体又は水の表面張力)を満足する流量以上であることを特徴とするものである。
【0016】
本願請求項3に記載の攪拌装置は、前記請求項1又は2の装置において、少なくとも1つのノズルが、容器内の中央に配置されていることを特徴とするものである。
【0017】
本願請求項4に記載の攪拌装置は、前記請求項1〜3のいずれか1項の装置において、
気体が空気又は反応性ガスであることを特徴とするものである。
【0018】
本願請求項5に記載の攪拌装置は、前記請求項1〜4のいずれか1項の装置において、
前記容器の底部に上向きに配向した第2のノズルが設けられていることを特徴とするものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係る攪拌装置および融雪装置について説明する。図1および図2において全体として参照符号10で示される本発明の第1の実施の形態に係る攪拌装置は、側壁12aと底壁12bとを有する円筒形容器12を備えている。円筒形容器12の内径は、図1に示されるように、Dである。円筒形容器12内には、深さLのところまで液体が充填されている。
【0021】
円筒形容器12の液面から高さHのところに、液面のほぼ中央に下向きに配向されたノズル14が配置されており、ノズル14は、エアコンプレッサ(図示せず)に連結されている。これにより、エアコンプレッサから供給された空気がノズル14から液面に向かって噴射されるようになっている。
【0022】
図2は、ノズル14から噴射された空気によって液体中に気柱が形成されている状態を示した図である。気柱は、上述のように、液面から深さ(LV −H)=4.1dn Frm1/3 −Hの箇所まで到達するが、深さ(LV −H)の箇所に到達した後、崩壊して気泡噴流となって上昇する。
【0023】
気柱到達深さ(LV −H)と円筒形容器12の内径Dとの比(LV −H)/Dは、約0.3〜約1の範囲にある。好ましくは、比(LV −H)/Dは、約0.5である。
【0024】
図3は、図1の攪拌装置10においてノズル14から空気が噴射されて液体中に気柱が形成され、気柱の崩壊によって生成された気泡により、液体が矢印Aで示されるように旋回している状態を示した模式図である。この場合において、ノズル14から噴射される空気の流量Qg は、ρL Qg 2 /(σL D3 )=10-5を満足する流量以上である。
【0025】
なお、ノズル14より下方の液体は、上述のように、角運動量保存則により、矢印Bで示されるように、逆方向に旋回する。
【0026】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る攪拌装置20を示した概略図である。攪拌装置20は、不整形な領域21内に充填された液体内に円筒体22を挿入する点を除いて、攪拌装置10と実質的に同一である。すなわち、攪拌装置20は、底壁のない、内径Dの円筒体22を備えている。攪拌装置10と同様に、円筒形容器22の液面から高さHのところに、液面のほぼ中央に下向きに配向されたノズル24が配置されており、ノズル24は、エアコンプレッサ(図示せず)に連結されている。攪拌装置10と同様に、(LV −H)/Dは、約0.3〜約1の範囲にあり、ノズル24から噴射される空気の流量Qg は、ρL Qg 2 /(σL D3 )=10-5を満足する流量以上である。以上の構成により、攪拌装置20においては、円筒体22内において液体が旋回する。
【0027】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0028】
たとえば、前記実施の形態においては、液面から高さHのところにノズルが配置されているが、ノズルを液体中に浸漬させてもよい。すなわち、図5に示されるように、ノズル14を液面から深さH1 の箇所まで浸漬させ、ノズル14から空気を噴射させると、上述の例と同様に、気柱は、深さH1 の箇所からLV1=4.1dn Frm1/3 の箇所まで到達し、しかる後、崩壊して気泡噴流となって上昇し、これにより液体が旋回する。気柱到達深さ(H1 +LV1)と円筒形容器12の内径Dとの比(H1 +LV1)/Dは、約0.3〜約1の範囲にあり、好ましくは、比(H1 +LV1)/Dは、約0.5である。なお、第2の実施の形態においても、ノズル24を液面から深さH1 の箇所まで浸漬させることにより、上述のように、液体を旋回させることができる。
【0029】
また、前記実施の形態においては、ノズル14、24が円筒形容器12又は円筒体22の上方の液面のほぼ中央に配置されているが、ノズルを中央から偏心した位置に配置してもよい。本発明者は、ノズルの偏心の影響を確認するため、種々の実験を行ったが、その結果が図6に示されている。図6(a)は、ノズルの偏心eが0の場合における液体の旋回を示した図、図6(b)は、ノズルの偏心eが1/4の場合における液体の旋回を示した図、図6(c)は、ノズルの偏心eが1/3の場合における液体の旋回を示した図、図6(d)は、ノズルの偏心eが1/2の場合における液体の旋回を示した図である。e=0の場合が最も好ましいが、e=1/4〜1/3の場合でも、液体は十分に旋回しているのが分かる。
【0030】
また、前記実施の形態では、ノズル14、24の数は1つであるが、複数のノズルを設けてもよい。
【0031】
また、前記実施の形態では、円筒形容器12又は円筒体22の平面形状は円であるが、容器又は筒体の平面形状をn角形(n≧3)にしてもよい。この場合のDは、n角形の内接円の径となる。
【0032】
また、前記第1の実施の形態では、液面の上方にノズル14を設けているが、図7に示されるように、円筒形容器12の底部に上向きに配向した第2のノズル16を設けてもよい。また、前記第2の実施の形態においても同様に、円筒体22によって包囲される液体の領域内の底部に上向きに配向した第2のノズル(図示せず)を設けてもよい。第2のノズルから噴射される空気により液体が循環されるので、円筒形容器12又は円筒体22の高さ(深さ)が高い場合であっても、液体を効率的に攪拌することができる。
【0033】
また、前記実施の形態では、ノズルから噴射される気体は空気であるが、液体を攪拌しつつ反応させようとする場合には、ノズルから噴射される気体を、目的に応じて、例えば酸素ガスのような反応性ガスとするのがよい。
【0034】
本発明の攪拌装置は、汚物やスラリーのような、粘性の高い、攪拌しにくい物質の攪拌に適している。また、スクラップのような固形物の溶解装置、或いはジャガイモ等の洗浄装置としても使用することができる。
【0035】
さらに、前記実施の形態においては、攪拌装置に関連して説明されているが、本発明に係る装置を融雪装置として使用してもよい。融雪装置として使用する場合の装置の構造は、攪拌装置として使用する場合の構造と同じである。融雪装置として使用する場合には、容器等に温水又は水を入れ、その中に雪塊を投入し、温水又は水を旋回させることによって雪塊を融解させる。
【0036】
【発明の効果】
本発明の攪拌装置は、プロペラ等の駆動源を必要としないため、構造が極めて簡単であり(特許第3058876号に示される装置よりも更に簡単な構造である)、従って、装置の製造コスト、維持コストを廉価に押さえることができ、保守点検に要する時間・手間を減少させることができる。また、粘性の高い液体を攪拌しようとする場合にも、良好な攪拌効果が得られる。また、ノズルを液面上から移動させさえすれば、旋回を停止させることができるので、装置の作動も非常に容易である。また、図1〜図4に示す形態では、ノズルを液体中に浸漬される必要がないため、反応性ガスを使用する場合に好都合である。また、融雪に使用する場合には、旋回により水温が均一化することに加えて、雪塊に衝突する気泡の衝撃力により、融解効率が高められる。さらに、融雪に使用する場合には、気泡の存在により水の密度が見かけ上減少し、雪塊が沈むことによって融解効率が一層高められる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る攪拌装置を示した概略図である。
【図2】図1の装置において液体内に気柱が形成されている状態を示した図である。
【図3】図1の装置内の液体が旋回している状態を示した模式図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る攪拌装置を示した概略図である。
【図5】ノズル先端が浸漬している図1の装置の変形例を示した図である。
【図6】ノズル位置の偏心の影響を示した図である。
【図7】底部に第2のノズルが設けられた図1の装置の変形例を示した図である。
【符号の説明】
10、20 攪拌装置
12、22 円筒形容器又は円筒体
14、24 ノズル

Claims (5)

  1. 内径Dの円筒形容器又は内接円径Dの多角形の平面形状をもつ容器を備えた攪拌装置であって、容器内には、攪拌しようとする液体又は水が収容されており、液面又は水面から高さHのところに下向きに配向され、液体又は水内に気体を吹き込むための1又は複数のノズルが配置されており、液面又は水面からの気泡の到達深さ(LV −H)=4.1dnrm 1/3 −H(ここで、dn はノズル内径、Frmは修正フルード数)と内径又は内接円径Dとの比(LV −H)/Dが、0.3〜1の範囲にあり、ノズルから液体又は水内に吹き込まれる気体の流量Qg が、ρLg 2 /(σL3 )=10-5(ここで、ρL は液体又は水の密度、σL は液体又は水の表面張力)を満足する流量以上であることを特徴とする装置。
  2. 底壁のない内径Dの円筒体又は内接円径Dの多角形の平面形状をもつ筒体を備えた攪拌装置であって、円筒体又は筒体が、不整形な領域内に収容された、攪拌しようとする液体又は水に挿入されており、円筒体又は筒体によって包囲される液体又は水の領域内の液面又は水面から高さHのところに下向きに配向され、液体又は水内に気体を吹き込むための1又は複数のノズルが配置されており、液面又は水面からの気泡の到達深さ(LV −H)=4.1dnrm 1/3 −H(ここで、dn はノズル内径、Frmは修正フルード数)と内径又は内接円径Dとの比(LV −H)/Dが、0.3〜1の範囲にあり、ノズルから液体又は水内に吹き込まれる気体の流量Qg が、ρLg 2 /(σL3 )=10-5(ここで、ρL は液体又は水の密度、σL は液体又は水の表面張力)を満足する流量以上であることを特徴とする装置。
  3. 少なくとも1つのノズルが、容器内の中央に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
  4. 気体が空気又は反応性ガスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
  5. 前記容器の底部に上向きに配向した第2のノズルが設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
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