JP2008273043A - 液体収納容器、ヘッドカートリッジ、およびインクジェット記録装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】液体収納容器に収納されたインクなどの液体の全域を効率的且つまんべんなく攪拌して、その液体を確実に均質化することができる液体収納容器、ヘッドカートリッジ、およびインクジェット記録装置を提供すること。
【解決手段】インク収納室内に揺動部材100,110を備え、揺動部材100が揺動したときに、その中空部内に、下側開口部から上側開口部に向かって液体の流れを生じさせる。また、揺動部材110が揺動したときに、その中空部内に、一端側開口部から他端側開口部に向かって液体の流れを生じさせる。
【選択図】図12
【解決手段】インク収納室内に揺動部材100,110を備え、揺動部材100が揺動したときに、その中空部内に、下側開口部から上側開口部に向かって液体の流れを生じさせる。また、揺動部材110が揺動したときに、その中空部内に、一端側開口部から他端側開口部に向かって液体の流れを生じさせる。
【選択図】図12
Description
本発明は、インクなどの液体を収納する液体収納容器、その液体収納容器を備えるヘッドカートリッジ、および、その液体収納容器を用いて画像を記録可能なインクジェット記録装置に関するものである。
本発明の記録装置は、一般的な記録装置の他、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリント部を有するワードプロセッサ等の装置、さらには、各種処理装置と複合的に組み合わされた産業用記録装置に適用することができる。
記録装置として、例えば、いわゆるシリアルタイプのインクジェット記録装置は、主走査方向に移動可能なキャリッジに、インクを吐出可能な記録ヘッドと、その記録ヘッドに供給するインクを収容するためのインクカートリッジと、が搭載される。画像の記録に際しては、キャリッジを主走査方向に移動させつつ、記録ヘッドの吐出口から記録媒体に向かってインクを吐出する動作と、主走査方向と交差する副走査方向に記録媒体を搬送する動作と、を繰り返す。記録ヘッドから吐出されたインク滴が記録媒体上に着弾することにより、所望の画像が記録される。
このようなインクジェット記録装置において用いられているインクの主流は、色材として染料を含有するインク(以下、単に「染料インク」ともいう)であった。しかし一般に、染料インクは耐光性および耐ガス性がやや低く、その染料インクによる記録物は、屋外掲示のような特殊用途において耐久性のある画像堅牢性を提供しにくい場合があった。
近年においては、色材として顔料を含有するインク(以下、単に「顔料インク」ともいう)を用いる記録装置が提供されてきている。顔料インクは耐光性および耐ガス性に優れ、それによる記録物も充分な画像堅牢性を発揮することができる。但し、顔料インクは、染料インクとは異なり、色材の分散性を考慮した取り扱いが要求される。
顔料インク中の顔料分子は、染料インク中の染料分子のようにインク溶液中には溶解せず、分散した状態で浮遊している。よって、顔料インクを収容するインクカートリッジが暫く静置されたままであると、そのインクカートリッジ内の顔料粒子は重力によって徐々に沈降し、インクカートリッジの高さ方向において顔料粒子の濃度傾斜が発生することがあった。すなわち、インクカートリッジの底部には色材濃度の高い層が位置し、その上部には色材濃度の低い層が位置することになる。この状態のインクカートリッジから記録ヘッドにインクを供給して画像の記録動作を開始し、そして記録動作を継続した場合には、記録動作の初期段階と後期段階において、画像に濃度差が発生するおそれがある。
具体的に説明するために、インクカートリッジの底部から記録ヘッドにインクを供給する構成のインクジェット記録装置を考える。この記録装置に、上述したように顔料粒子の濃度傾斜を有するインクカートリッジを装着して、記録を開始した場合、その当初においては、色材濃度の高いインクカートリッジ内の下層のインクが供給されるため、必要以上に高濃度な画像が記録される。その後、記録動作を続行することにより、インクカートリッジ内のインクの消費にしたがって、画像の記録濃度は徐々に低下する。そして、インクカートリッジ内のインクが少量になった状態においては、インクカートリッジ内には、当初の色材濃度よりも低い色材濃度のインクしか残存しなくなる。そのため、記録当初と同じ画像データに基づいて画像を記録したとしても、記録濃度が不十分となる。特に、顔料粒子の径や比重が大きい場合には、その沈降傾向が著しいため、インクカートリッジの非使用状態が数日間続くだけでも画像に影響が現れるほどの濃度傾斜が発生するおそれがある。
このように、インクカートリッジの使用に伴って、記録ヘッドから吐出されるインクの色材濃度が変化した場合には、インクカートリッジの使用初期と使用後期において記録画像に濃度差を発生させるだけではない。例えば、複数のカラーインクを用い、所定のカラーバランスのもとに所望の色相を表現するカラーインクジェット記録システムにおいては、カラーバランスが崩れるおそれがある。その場合には、より顕著な画像問題として認識されることになる。
インクカートリッジ内に残存するインク量の如何に拘わらず、記録ヘッドから吐出されるインク滴の色材濃度を所望の範囲内に維持するためには、少なくとも記録動作中に、インクカートリッジ内の顔料分子が一様に分散していることが望まれる。
このような顔料分子の一様な分散を実現するために、インクカートリッジの内部に、顔料分子を攪拌するための攪拌部材を設ける構成が提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
例えば特許文献1には、第1および第2の実施形態として、手動操作が可能な攪拌部材を備えたインクパック(あるいはタンク)が開示されている。その攪拌部材は、インクパックあるいはインクカートリッジに対して、外部から挿入されたような形状になっている。外部に突出している攪拌部材の部分は、インクパック(あるいはタンク)内に延在している攪拌部を動作させるための操作部として作用する。つまり、ユーザが定期的あるいは必要に応じて攪拌部を揺動させることにより、インクパック(あるいはインクカートリッジ)内のインクを攪拌して、顔料分子を分散できるようになっている。
また特許文献1には、第3の実施形態として、記録動作時にキャリッジが移動する際の慣性力を利用して、タンク内のインクを攪拌させる攪拌部材を設けたインクカートリッジが開示されている。例えば、インクカートリッジケースと一体に成形された撹拌部材が示されている。この例では、攪拌部材がインクカートリッジケースの天井から底部に向けて垂れ下がるように延出しており、その下端部には円柱状の錘部が形成されている。その攪拌部材は、キャリッジの加速・停止・反転の動作に伴う慣性力によって、天井の付け根部分を支点としてキャリッジの移動方向に揺動し、インクカートリッジ内のインクを攪拌する。
また、特許文献1には、別例として、インクカートリッジケースに固定されずに、インクカートリッジ内の底面を自由に移動可能な撹拌部材も開示されている。この攪拌部材は、キャリッジの加速・停止・反転の動作に伴う慣性力によって、インクカートリッジ内の底面を移動してインクを攪拌する。
一方、特許文献2には、キャリッジの移動に伴う慣性力によって、揺動中心軸を中心として左右に揺動する軸状錘と、この軸状錘と一体となって左右に揺動する複数のフィンと、を備えた攪拌機構が開示されている。この構成によれば、複数枚のフィンがインクカートリッジの高さ方向に並列に配置されているため、インクカートリッジ内の上層部から下層部にかけてインクが均等に攪拌される。
しかしながら、上記特許文献に記載の構成においては、撹拌部材によるインクの攪拌領域が限定されているため、インクを効率よく攪拌することが難しかった。
例えば、特許文献1の実施形態1および2に記載の手動式の攪拌部材を備えた場合には、その撹拌部材の移動の自由度が小さいために、インクカートリッジ内の限られた領域内のインクしか攪拌することができない。特に、攪拌部材とインクカートリッジとの接合部分(攪拌部の支点となる部分)の近傍では、攪拌部の移動域が狭いために充分な攪拌効果が得られない。
また、特許文献1の実施形態3における構成では、慣性力を効率的に利用してはいるものの、やはり攪拌可能な範囲が充分ではない。また、インクカートリッジ内の底面を自由に移動可能な撹拌部材を用いた場合には、インクカートリッジの底部近傍のインクに対する攪拌は期待できるものの、その撹拌部材から離れているインクカートリッジ内の上層部領域に対する撹拌効果は期待できない。
一方、特許文献2に記載の構成は、複数のフィンがインクカートリッジの高さ方向に配備されているため、その高さ方向における攪拌効果はある程度期待できる。しかし、インクカートリッジ内の中心軸付近はフィンの揺動量が小さいため、撹拌効果は小さい。また、このように複数のフィンや回転軸を備える揺動部材は複雑な構成となるため、インクカートリッジ自体も高価なものになってしまう。
上述したように、インクカートリッジ内における顔料インクは、顔料粒子が重力にしたがって徐々に沈降することにより、インクカートリッジの高さ方向に顔料粒子の濃度傾斜が引き起こされる。このようなインクカートリッジ内の濃度差を解消するには、インクカートリッジの下層部における高濃度のインクを積極的に上層部に巻き上げるように、インクを攪拌することがより効率的である。
本発明の目的は、液体収納容器に収納されたインクなどの液体を全体的に効率よく攪拌して、液体の濃度傾斜を小さくすることができる液体収納容器、ヘッドカートリッジ、およびインクジェット記録装置を提供することにある。
本発明の液体収納容器は、液体を収納可能な液体収納部と、前記液体収納部内の液体を撹拌するための揺動可能な複数の揺動部材と、前記液体収納部内の液体を外部に供給するための液体供給部と、を備えた液体収納容器において、前記複数の揺動部材は、それぞれ、液体が流入する第1開口部と、液体が流出する第2開口部と、前記第1および第2開口部を連通する中空部と、備え、前記複数の揺動部材は、少なくとも第1および第2の揺動部材を含み、前記第1の揺動部材は、前記液体供給部を重力方向の下方に位置させたときに、前記第1開口部が重力方向の下方に位置しかつ前記第2開口部が重力方向の下方に位置し、前記第2の揺動部材の前記第2開口部は、前記第1の揺動部材の前記第1開口部の方向を向くように開口することを特徴とする。
本発明のヘッドカートリッジは、上記の液体収納容器と、前記液体収納容器から供給された液体を吐出可能な液体吐出ヘッドと、を備えることを特徴とする。
本発明のインクジェット記録装置は、インクタンクと、前記インクタンクから供給されるインクを吐出可能なインクジェット記録ヘッドと、を搭載可能なキャリッジを備えるインクジェット記録装置において、前記インクタンクは、インクを収納可能なインク収納部と、前記インク収納部内のインクを撹拌するための揺動可能な複数の揺動部材と、前記インク収納部内のインクを外部に供給するためのインク供給部と、を備え、前記複数の揺動部材は、それぞれ、インクが流入する第1開口部と、インクが流出する第2開口部と、前記第1および第2開口部を連通する中空部と、備え、前記複数の揺動部材は、少なくとも第1および第2の揺動部材を含み、前記第1の揺動部材は、前記液体供給部を重力方向の下方に位置させたときに、前記第1開口部が重力方向の下方に位置しかつ前記第2開口部が重力方向の下方に位置し、前記第2の揺動部材の前記第2開口部は、前記第1の揺動部材の前記第1開口部の方向を向くように開口し、前記インクジェット記録装置は、少なくとも前記第1および第2の揺動部材を揺動させるために前記キャリッジを移動させる手段を備えることを特徴とする。
本発明によれば、第1および第2の揺動部材が生じさせた液体の流れを組み合わせることにより、液体収納部内の液体を攪拌する上において効果的な流れを生じさせることができる。すなわち、第2の揺動部材が生じさせた液体の流れを引き継ぐように、第1の揺動部材が重力方向の上方に向かう液体の流れを生じさせることにより、液体収納部内の液体全体に及ぶような液体の流れを生じさせることができる。例えば、第2の揺動部材によって、液体収納部内の液体の下層部に沈降しがちな液体の高濃度部分を第1の揺動部材の下方に集め、第1の揺動部材によって、その高濃度部分の液体を上層部に向かって押し上げることができる。
このように、第1および第2の揺動部材が生じさせた液体の流れを組み合わせることにより、液体収納部に収納されたインクなどの液体の全域を効率的にまんべんなく攪拌して、その液体の濃度傾斜を小さくすることができる。また、揺動部材と、液体収納部の内壁と、の相対的な近接および離間変位によって、機械的に液体の流れを生じさせることもできる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態におけるインク収納容器は、いわゆるシリアルスキャンタイプのインクジェット記録装置に搭載可能なインクカートリッジ(カートリッジタイプのインクタンク)としての適用例である。
本実施形態におけるインク収納容器は、いわゆるシリアルスキャンタイプのインクジェット記録装置に搭載可能なインクカートリッジ(カートリッジタイプのインクタンク)としての適用例である。
図1は、本例におけるインクジェット記録装置の外観斜視図である。この記録装置は、記録媒体に対しての記録を行なう装置本体M1000と、記録媒体を装置内へ供給するための給紙部M3022と、記録後の記録媒体を受容する排紙トレイM1004と、から主に構成されている。
図2は、装置本体M1000の内部機構を説明するための斜視図である。装置本体M1000の主な内部機構は、シャーシM3019に設置・保護されている。M4001はキャリッジであり、不図示の記録ヘッドカートリッジを搭載した状態で矢印Xの主走査方向へ往復移動可能である。記録動作コマンドが入力されると、給紙部M3022に積載されている記録媒体の1枚が給紙され、キャリッジM4001上の記録ヘッドカートリッジによって画像が記録可能な位置まで搬送される。その後、キャリッジM4001が主走査方向に移動しながら、記録ヘッドカートリッジの記録ヘッドが画像データに基づいてインクを吐出する記録走査と、搬送手段によって記録媒体を矢印Yの副走査方向へ搬送する動作と、を繰り返す。これにより、記録媒体に順次画像が形成される。
図3は、本例における記録ヘッドカートリッジH1001とインクカートリッジ(液体収納容器)の斜視図である。液体収納容器は、その液体収納部に記録のための液体を収納している。記録ヘッドカートリッジH1001の一側には、吐出口から液体収納部内に収納された液体を吐出可能な記録ヘッドH1000が備えられ、その反対側には、記録ヘッドH1000にインクを供給するためのインクカートリッジ1が着脱可能に装着される。本例の記録ヘッドカートリッジH1001には、6色分のインクカートリッジ1が独立に装着できるようになっている。
記録ヘッドH1000には、微細な記録素子が複数配列されており、各記録素子にはインクを吐出させるための機構が備わっている。例えば、発熱抵抗体(ヒータ)を有する電気熱変換素子が配備された構成では、インクの吐出信号に応じて、個々の電気熱変換素子に電圧パルスが印加される。これにより、発熱抵抗体の近傍のインクが急激に加熱され、そのときに生じる膜沸騰の作用によって、インク滴が吐出口から吐出される。インクの吐出エネルギーを発生するための手段としては、ピエゾ素子などを用いることもできる。
(インクカートリッジ全体の構成)
図4は、インクカートリッジの外観斜視図である。本例のインクカートリッジ1は、内部にインク収納室を備えた容器であり、主に、インク容器84と蓋部材83から構成されている。インクカートリッジ1の底部には、記録ヘッドH1000にインクを供給するためのインク供給口(インク供給部)85が備えられている。
(インクカートリッジ全体の構成)
図4は、インクカートリッジの外観斜視図である。本例のインクカートリッジ1は、内部にインク収納室を備えた容器であり、主に、インク容器84と蓋部材83から構成されている。インクカートリッジ1の底部には、記録ヘッドH1000にインクを供給するためのインク供給口(インク供給部)85が備えられている。
図5は、インクカートリッジ1の分解斜視図である。インクカートリッジ1のインク容器84は、例えばポリプロピレンで形成されている。インク容器84の内部は仕切壁87によって2つの空間に仕切れており、それらの空間は、仕切壁87の下側に形成される連通部90によって互いに連通されている。インク容器84の開口部は、蓋部材83によって封じられる。インク容器84内の一方の空間は、連通部90を除いて実質的に密閉されていて、インクを直接的に収納可能なインク収納室80を形成する。そのインク収納室80には、後述するように、インクを攪拌するための第1および第2揺動部材100、110が備えられる。他方の空間は負圧発生室89を形成しており、蓋部材83には、負圧発生室89内に負圧発生室89に大気を導入するため大気連通口86が形成され、インク容器84には、負圧発生室89内のインクを記録ヘッドに供給するための供給口85が形成されている。供給口85には、インクを保持するためのメニスカス形成部材88が備えられている。メニスカス形成部材88内に、インクによるメニスカスが形成されることにより、外部からの気泡がインク容器84内に侵入しないようになっている。
負圧発生室89内には、ポリプロピレンの繊維材料から形成されて毛管力を有する第1および第2の2つの負圧発生部材81および82が収納されている。負圧発生室内89内において、これらの負圧発生部材81および82は互いに圧接されて収納されている。負圧発生部材81および82は、負圧発生室89内のインクに付与する負圧を発生することができればよく、例えば、種々の多孔質体、または多数の繊維体からなる部材を含むことによって、インクを吸収することができる吸収体であってもよい。第1の負圧発生部材81の毛管力をP1、第2の負圧発生部材82の毛管力をP2、メニスカス形成部材88の毛管力をP3とすると、これらの毛管力はP1<P2<P3の関係にある。
このような構成において、負圧発生室89内のインクが記録ヘッドによって消費されると、大気連通口86から負圧発生室89に空気が導入され、その空気が連通部90を通してインク収納室80に入る。このようなインク収納室80への空気の導入に代わって、連通部90を通して、インク収納室80から負圧発生室89内の負圧発生部材81,82にインクが充填される。このように、連通部90を通して、空気とインクが気液交換される。
(充填されるインクの組成)
本例において使用されるインクは、例えば、顔料を含有するインク(顔料インク)である。その顔料インクの顔料は、例えば、分散剤や活性剤を用いる樹脂分散剤タイプの顔料(樹脂分散型顔料)や、活性剤分散タイプの顔料であってもよい。その顔料は、水不溶性色剤自体の分散性を高めることによって、分散剤等を用いることなく分散可能としたマイクロカプセル型顔料であってもよく、また、顔料粒子の表面に親水性基を導入した自己分散タイプの顔料(自己分散型顔料)でもよい。更には、顔料粒子の表面に高分子を含む有機基が化学的に結合することによって、改質された顔料(ポリマー結合型自己分散顔料)を用いることもできる。もちろん、これらの分散方法の異なる顔料を組み合わせて使用することも可能である。本発明において使用できる顔料は、特に限定されるものではない。
本例において使用されるインクは、例えば、顔料を含有するインク(顔料インク)である。その顔料インクの顔料は、例えば、分散剤や活性剤を用いる樹脂分散剤タイプの顔料(樹脂分散型顔料)や、活性剤分散タイプの顔料であってもよい。その顔料は、水不溶性色剤自体の分散性を高めることによって、分散剤等を用いることなく分散可能としたマイクロカプセル型顔料であってもよく、また、顔料粒子の表面に親水性基を導入した自己分散タイプの顔料(自己分散型顔料)でもよい。更には、顔料粒子の表面に高分子を含む有機基が化学的に結合することによって、改質された顔料(ポリマー結合型自己分散顔料)を用いることもできる。もちろん、これらの分散方法の異なる顔料を組み合わせて使用することも可能である。本発明において使用できる顔料は、特に限定されるものではない。
下表1に、本例において使用する顔料インクの組成を2種類(顔料インク1,2)例示する。しかし本発明は、これらの組成に限定されるものではない。
本例において使用する顔料インクは下表1に示すインク配合比であって、顔料分散体1には自己分散型の顔料が使用され、顔料分散体2には樹脂分散型の顔料が使用されている。また、顔料分散体1と顔料分散体2は、いずれも顔料に水を加えて、顔料濃度が10質量%となるように分散させることにより、分散液を調合している。各溶剤の配合は、下表1に記載されている。
インクタンクに注入する顔料インクの比重は、揺動部材の比重より小さいものが望ましい。本実施例における揺動部材は、ステンレス材料であって比重が8.0g/cm3であり、顔料インクの比重は1.0〜1.1g/cm3であり、揺動部材よりも顔料インクの比重が小さい。
(攪拌機構の構成)
図6は、第1および第2の揺動部材100,110の設置状態を説明するための斜視図、図7は、それらの揺動部材の拡大斜視図である。
図6は、第1および第2の揺動部材100,110の設置状態を説明するための斜視図、図7は、それらの揺動部材の拡大斜視図である。
第1の揺動部材100には、インク容器84の重力方向の下側に位置する下側開口部(第1開口部)102と、その上側に位置する上側開口部(第2開口部)103と、が形成されている。つまり、揺動部材100には、鉛直方向の上側位置する上側開口部103と、鉛直方方向の下側に位置する下側開口部102と、が形成されている。そして揺動部材100は、それらの開口部102,103の間の内部が中空の中空部104となるように、楕円形の筒状に成形されている。その中空部104によって、開口部102,103の間を連通するインク流路(液体流路)が形成されている。揺動部材100は、インク収納室80内にインクが充填されると、開口部102,103および中空部104がインク中に没する構成となっている。また、下側開口部102近傍において、楕円形の長軸に当たる位置の2カ所には、凹形状の支持部105が設けられている。
インク収納室80の内壁には固定部材108が設けられ、その固定部材108には突起部109が設けられている。突起部109と、揺動部材100の支持部105と、が嵌合することにより、支持部105は、揺動部材100が揺動する際の支点となる。これにより、揺動部材100は、重力方向と直交する方向に沿う軸線を中心として揺動自在となる。本例の揺動部材100は、その下側開口部102の近辺の支持部105が支持されるため、揺動部材100が揺動した際には、上側開口部103の変位量が下側開口部102よりも大きくなり、その移動速度(揺動速度)も速くなる。
一方、第2の揺動部材110には、水平方向において一端側に位置する一端側開口部(第1開口部)112と、その他端側に位置する他端側開口部(第2開口部)113と、が形成されている。そして揺動部材110は、それらの開口部112,113の間の内部が中空の中空部114となるように、楕円形の筒状に成形されている。その中空部114によって、開口部112,113の間を連通するインク流路(液体流路)が形成されている。揺動部材110は、インク収納室80内にインクが充填されると、開口部112,113および中空部114がインク中に没する構成となっている。また、一端側開口部112近傍において、楕円形の長軸に当たる位置の2カ所には、凹形状の支持部115が設けられている。
インク収納室80の底部には支持軸118が設けられている。その支持軸118は、支持部115を貫通することにより、揺動部材110が揺動する際の支点となる。これにより、揺動部材110は、重力方向に沿う軸線を中心として揺動自在となる。本例の揺動部材110は、その一端側開口部112の近辺の支持部115が支持されるため、揺動部材110が揺動した際には、他端側開口部113の変位量が一端側開口部112よりも大きくなり、その移動速度も速くなる。
本例の揺動部材100,110は、ステンレス材料によって形成されている。本発明における揺動部材の材質は、これに限られるものではない。しかし、揺動部材の形成材料は、インク収納室80内に収容されたインクよりも比重が大きい材料であることが望ましい。さらに、使用するインクの比重、粘度、および後述するキャリッジの移動速度等によって、揺動部材100の移動速度が変わって、撹拌効率が変わることがあるため、揺動部材100の比重は、種々の条件に応じて適宜選択されることが望ましい。また、中空部104,114の形状は楕円形に限らず、円形や角形であっても構わない。また、支持部105,115の形状は、凹形状であっても揺動部材を貫通している形状であってもよく、さらに、支持部105,115の位置は、揺動部材の楕円形の断面形状の長軸に当たる位置でなくても構わない。
(撹拌機構の動作および作用)
図8(a)から(d)は、図2におけるキャリッジの動作を説明するための記録装置の要部の概略構成図である。図9(a)から(h)は、本例における揺動部材100の動作、および中空部104内に生じるインク流の説明図であり、インクタンクの底部に沈降した濃い顔料成分のインクが撹拌される様子を表している。図9(a)から(h)は、図4のIX−IX線に沿う断面図に相当する。図10(a)から(h)は、本例における揺動部材110の動作、および中空部114内に生じるインク流の説明図であり、図4のX−X線に沿う断面図に相当する。
図8(a)から(d)は、図2におけるキャリッジの動作を説明するための記録装置の要部の概略構成図である。図9(a)から(h)は、本例における揺動部材100の動作、および中空部104内に生じるインク流の説明図であり、インクタンクの底部に沈降した濃い顔料成分のインクが撹拌される様子を表している。図9(a)から(h)は、図4のIX−IX線に沿う断面図に相当する。図10(a)から(h)は、本例における揺動部材110の動作、および中空部114内に生じるインク流の説明図であり、図4のX−X線に沿う断面図に相当する。
まず、図8(a)から(d)を用いて、液体収容器としてのインクカートリッジ1を装着したキャリッジM4001の動作について説明する。
キャリッジM4001は、図8(a)のようなホームポジションの位置から、記録装置M1000のシャーシに設置されたキャリッジシャフトM3020に沿って矢印X2方向に移動する(図8(b)参照)。そして、記録媒体の記録幅、もしくは、揺動部材100を動作させるために必要な距離だけ、キャリッジM4001を移動させて、それを図8(c)のように位置させる。そして、その位置からキャリッジM4001の移動方向を反転させて、それを矢印X1方向に移動させる(図8(d)参照)。そして、図8(a)の位置から、再び、キャリッジM4001の移動方向を反転させ、その後、その矢印X方向の往復移動を記録に必要な回数だけ反復する。キャリッジM4001は、その移動方向が反転する際に、減速、停止、および反対方向への加速が行なわれる。このように本例においては、記録のためのキャリッジM4001の往復移動に先立って、図8(b)から(d)のように、少なくとも1回はキャリッジM4001を往復移動させる。これにより、後述するように、記録動作に先立ってインクを攪拌することができる。
次に、図9(a)から(h)を用いて、キャリッジM4001の往復移動に伴うインクカートリッジ1内の揺動部材100の動作について説明する。これらの図に示すインク収容部80は、その内部がインクで満たされている状態にある。
図9(a)は、キャリッジM4001が図8(a)のようにホームポジションに静置され、インク収納室80内の揺動部材100は、その上側開口部103側がインク収納室80の内壁に接して静置している状態を示す。この状態は、キャリッジM4001が図8(a)の位置から動き出してから、図8(b)のようにX2方向に等速移動するときまで保たれたままである。
図9(b)から(e)は、キャリッジM4001が図8(c)の位置に到達してから、その移動方向がX2方向からX1方向に反転した時、もしくは図8(d)のように、キャリッジM4001が移動方向の反転後にX1方向に移動している時の状態を示す。キャリッジM4001の移動方向が反転する際、インクカートリッジ1には慣性力が働く。その慣性力が矢印X2方向に働く場合、つまりキャリッジM4001の移動方向が矢印X2方向からX1方向に反転する場合、揺動部材100は、図9(b)から(e)に示す順に、支持部105を支点として矢印S2方向に揺動する。そして、図9(e)に示すように、揺動部材100の上側開口部103側がインク収納室80の反対側の内壁(図9(a)において接する内壁とは反対側の内壁)に接することにより、その揺動部材100のS2方向への揺動が停止する。揺動部材100は、キャリッジM4001が図8(c)の位置から動き出してから、図8(d)のようにX2方向に等速移動するまでは、図9(e)に示す状態に保たれたままである。
図9(f),(g)は、キャリッジM4001がX1方向に移動して図8(a)の位置に到達してからX2方向に反転した時、もしくは、図8(b)に示すように、キャリッジM4001の移動方向が反転してからX2方向に移動している時の状態を示す。キャリッジM4001の移動方向が反転する時に生じる慣性力が矢印X1方向に働く場合、揺動部材100は、図9(f),(g)に示す順に、支持部105を支点として矢印S1方向に揺動する。その後、キャリッジM4001が再びX1方向に移動することにより、図9(h)に示すように、揺動部材100がS2方向に揺動する。
キャリッジM4001が往復移動を繰り返す間、揺動部材100は、以上のような往復移動を繰り返す。
次に、図9(a)から(h)を用い、揺動部材100の往復移動に伴って揺動部材100の中空部104内に生じるインク流、およびインクが撹拌される様子について説明する。
揺動部材100がS2方向に揺動し始めると、その揺動部材100が揺動したことにより生じる遠心力によって、図9(b)に示すように、中空部104内に存在するインクには、上側開口部103から流出する流れT2が生じる。それと同時に、下側開口部102近傍のインクタンク底部に存在しているインクには、中空部104に流入する流れT1が生じる。揺動部材100の揺動が継続されると、中空部104内のインクに作用する遠心力により、そのインクは、図9(b)から(d)中のように、中空部104内を流れて上側開口部103から流出する。
図9(e)のように、揺動部材100のS2方向への揺動が停止すると、中空部104内のインクには、揺動部材100の揺動の停止により生じる慣性力が作用し、中空部104内のインクの流れはさらに加速される。中空部104を経由したインクは、上側開口部103から流出された後、図9(f),(g)に示すような流れT3となって、顔料成分の薄いインク中に拡散される。また、インク収納室80のインクは、その内壁によって跳ね返るインクの流れT4によってさらに撹拌される。
上側開口部103から流出された顔料成分の濃いインクは、T2、T3、T4の流れおよび重力により、揺動部材100が設置されている高さにまで降りてくる。そして図9(h)に示すように、揺動部材100の揺動に伴って、その外壁とインク収納室80の内壁との相対的な近接および離間変位によって、それらの間に機械的な流れT5が生じる。その流れT5によって、インク収納室80内のインクはさらに撹拌される。
以上のような動作を1回もしくは複数回実施することにより、インク収納室80内のインクは、T1からT5の流れにより下層部から上層部にまで持ち上げられて撹拌される。その結果、インク収納室80の上層部のインクを含めて、インク収納室80内全体をまんべんなく撹拌することができる。
揺動部材100の揺動は連続的に実施することが望ましく、その連続的な揺動により、インク収納室80内の上部に向かってインクを巻き上げるための推進力を高めることができる。つまり、揺動部材100の中空部104内のインクに流れT2を生じさせるポンピング作用を高めることができる。
また本例では、揺動部材100の揺動方向を反転させながら撹拌を行った。しかし、その揺動方向は必ずしも反転する必要は無い。慣性力によって、インク収納室の底部に位置する顔料粒子を揺動部材の中空部を経由して容器上部へ巻き上げるための充分な推進力が加えられればよく、揺動部材の一方向の揺動の後、その揺動部材が停止しても構わない。また、インク収容室80内のインクが減少して液面が下がっても、揺動部材100の中空部104がインクに没している限り、上述したようなインクの撹拌効果を得ることができる。
また、インクの撹拌効果は、揺動部材の内径、周囲長、表面積、長さ、揺動部材の比重、揺動部材の移動速度、揺動部材の移動距離、インクの粘度、接触角、インクの比重等のパラメータにより差が生じる。しかし、このようなパラメータの如何に拘わらず、遠心力および慣性力によって、中空部104を経由して顔料成分の濃いインクをインク収納室80内の上部へ巻き上げるために充分な推進力が作用するように、揺動部材100を揺動させることができればよい。
次に、図10(a)から(h)を用い、揺動部材110の往復移動に伴って揺動部材110の中空部114内に生じるインク流、およびインクが撹拌される様子について説明する。これらの図中の矢印TA方向に、揺動部材100が位置する。
揺動部材100と同様に、揺動部材110は、キャリッジの往復移動に応じて支持部115を支点として矢印S11,S12方向に揺動する。
揺動部材110がS12方向に揺動し始めると、その揺動部材110が揺動したことにより生じる遠心力によって、図10(b)に示すように、中空部114内に存在するインクには、他端側開口部113から流出する流れT12が生じる。それと同時に、一端側開口部112近傍のインクには、中空部114に流入する流れT11が生じる。揺動部材110の揺動が継続されると、中空部114内のインクに作用する遠心力により、そのインクは、図10(b)から(d)のように、中空部114内を流れて他端側開口部113から流出する。
図10(e)のように、揺動部材110のS12方向への揺動が停止すると、中空部114内のインクには、揺動部材110の揺動の停止により生じる慣性力が作用し、中空部114内のインクの流れはさらに加速される。中空部114を経由したインクは、他端側開口部103から流出された後、図10(f),(g)に示すような流れT13となって、インク収納室80の底面に沿って移動する。この結果、インク収納部80の底面に滞留している顔料成分の濃いインクは、TA方向に位置する揺動部材100に向かって押し流される。また、インク収納室80のインクは、その内壁によって跳ね返るインクの流れT4によってさらに撹拌される。
図11および図12は、揺動部材100,110の攪拌動作によって生じるインクの流れの関係を説明するためのインクカートリッジ1の横断面図および縦断面図である。図12において、撹拌部材100を支持するための突起部109は、撹拌部材100を貫通する支持軸として現されている。
前述したように、キャリッジが矢印X1、X2方向に移動することにより、揺動部材100は、中空部104を通って上昇するインクの流れを生じさせ、揺動部材110は、インク収納室80の底面に沿って揺動部材100に向かうインクの流れTAを生じさせる。したがって、インク収納部80の底面に滞留している顔料成分の濃いインクは、揺動部材110によって揺動部材100に向かうTA方向に押し流され、そして揺動部材100によってインク収納室80内の上部へ巻き上げられる。この結果、図12のように、インク収納部80内に一連のインクの流れを積極的に生じさせて、インク全体をより効率よく攪拌することができる。
本発明者らは、攪拌効果を検証するために、揺動部材の中空部が没せられる位置まで顔料インクをインクカートリッジに注入した。そして、顔料インクの沈降する現象を短期間で検証するために、そのインクカートリッジを加温保存した。加温保存は温度60℃で90日間保存した。加温保存したインクカートリッジを常温環境化に置き温度をさました後、揺動部材を揺動させずにインクカートリッジ内の重力方向の下側に位置する顔料インクを採取した。また、同様に加温保存後の別のインクカートリッジでは、揺動部材を揺動させてから、インクカートリッジ内の重力方向の下側に位置する顔料インクを採取した。そして、これら両者のインクカートリッジから採取した顔料インクの顔料濃度を比較した。
下表2は、このように加温保存後に攪拌せずに採取した顔料インクの顔料濃度と、加温保存後に上述した方法によって攪拌してから採取した顔料インクの顔料濃度と、を示す。下表2中の顔料濃度は、加温保存前の顔料濃度を100としたときの相対値である。撹拌をしなかったときの前者の顔料濃度は170であり、撹拌をしたときの後者の顔料濃度は120未満であった。これにより、上述した撹拌方法を実施することにより、インクの顔料濃度を加温保存前の顔料濃度に近づくことが確認できた。
このように本実施形態においては、揺動部材100が揺動したときに、その上側に形成される開口部の移動速度が、その下側に形成される開口部よりも速くなるように構成することにより、インク収納室内の下層部から上層部に向かうインクの流れを生じさせる。また、揺動部材110が揺動したときに、揺動部材100側に位置する開口部の移動速度が、反対側に位置する開口部よりも速くなるように構成することにより、インク収納室の底面に沿って揺動部材100に向かうインクの流れを生じさせる。このようなインクの流れにより、インク収納室内にて、濃度の濃いインクと薄いインクとを対流させて、効率よく攪拌することができる。この結果、インクタンクの使用初期と使用後期において、記録画像に濃度差が生じることを防止したり、複数のカラーインクを用いた時に発生するカラーバランスの崩れを防止することができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。本実施形態における液体収納容器は、前述した図1から図3の記録装置に搭載可能なインクカートリッジとしての適用例である。
次に、第2の実施形態について説明する。本実施形態における液体収納容器は、前述した図1から図3の記録装置に搭載可能なインクカートリッジとしての適用例である。
(インクタンクの全体構成)
図13は、本実施形態におけるインクカートリッジ2の分解斜視図である。また、図14は、インクカートリッジ2の内部の斜視図である。インク容器212は、例えばポリプロピレンで形成されており、その開口部は蓋部材213によって封じられる。またインク供給口217を形成するインク容器212の部位には、メニスカス形成部材211が押え部材210によって外側から押されて止められている。
図13は、本実施形態におけるインクカートリッジ2の分解斜視図である。また、図14は、インクカートリッジ2の内部の斜視図である。インク容器212は、例えばポリプロピレンで形成されており、その開口部は蓋部材213によって封じられる。またインク供給口217を形成するインク容器212の部位には、メニスカス形成部材211が押え部材210によって外側から押されて止められている。
メニスカス形成部材211とインク容器212の内部との間は、インク流路によって連通されており、インク収納室214内のインクがインク供給口217から記録ヘッドH1000に供給できるようになっている。また、メニスカス形成部材211内にインクのメニスカスが形成されることにより、外部からの気泡がインク収納室214内に侵入しないようになっている。
蓋部材213には、インク収納部214内に大気を流入させるための大気連通口215が形成されており、インク収納室214は、大気連通口215を除いては外気と遮断されている。インク収納室214内には中空の細管216が備えられており、その一端は大気連通口215にて開口し、その他端は、インク収納室214内の重力方向における底部近傍にて開口する。このような構成により、インク収納室214内のインクの消費に伴って、細管216の底部近傍の一端からインク収納室214内に空気が流入する。この時、インク消費によるインク収納室214の減圧と、細管216内のインクのメニスカス力と、によって、インク収納室214内が負圧状態になる。
インク収納室214内には、前述した実施形態と同様に、揺動部材100および110が備えられている。
インク容器212におけるインク供給口217の近傍部分は、メニスカス形成部材211が備えられているため比較的複雑な形状となりやすく、インク中の顔料成分が沈降した際には、インク収納室214内の他の部分よりもインクが撹拌されにくい傾向がある。そのため揺動部材100は、図13に示すように、インク供給口217に対向する位置に設置することが望ましい。本例のインクカートリッジ2においても、第1の実施形態と同様に、揺動部材100,110の揺動によりインクの流れを生じさせて、インク全体を効率よく攪拌することができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
本実施形態におけるインクジェット記録装置M1001は、図15に示すように、シャフトM4002に沿って主走査方向(矢印X方向)に往復移動可能なキャリッジM4001に、インクジェットカートリッジH1002が着脱自在に搭載される。インクジェットカートリッジH1002は、サブタンク(液体収納容器)3とインクジェット記録ヘッドH1000とを一体的に結合した構成となっている。図16のように、サブタンク3内には、前述した第1の実施形態のインクカートリッジ1と同様に、揺動部材100,110が備えられている。サブタンク3内のインク90は、フィルター1303およびインク流路1304を通して、記録ヘッドH1000を構成する記録チップに供給され、その記録ヘッドH1000の吐出口から吐出される。
サブタンク3と、キャリッジM4001の外に設置されるメインタンク1311と、の間には、チューブ1301が接続されている。メインタンク1311にはインク90が収納されており、そのインク90は、ポンプ1302によってサブタンク3へ供給される。したがって、メインタンク1311内のインク90は、一旦、サブタンク3に入ってから、記録ヘッドH1000に供給されることになる。
画像の記録に際しては、前述した実施形態のシリアルスキャンタイプの記録装置と同様に、記録ヘッドH1000がキャリッジM4001と共に主走査方向に移動しつつインクを吐出する動作と、記録媒体を副走査方向に搬送する動作と、繰り返す。
サブタンク3内のインク90は、前述した実施形態と同様に、記録装置の非使用時間が長期間続いた場合には、顔料インク中の顔料粒子がサブタンク3の下層部に沈降しやすくなる。本例のサブタンク3においても、前述した第1の実施形態と同様に、揺動部材100,110の揺動によりインクの流れを生じさせて、インク全体を効率よく攪拌することができる。
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
本実施形態のインクカートリッジは、前述した第2の実施形態のインクカートリッジ2に対して、インク収納室214内の底面と平行な揺動部材110を2つ並べて配備した構成となっている。その他の構成は、前述した第2の実施形態と同様である。本例のインクカートリッジにおいても、前述した第1の実施形態と同様に、揺動部材100,110,110の揺動によりインクの流れを生じさせて、インク全体を効率よく攪拌することができる。その際、図17中右側と左側の2つの揺動部材110,110が効果的に機能する。すなわち、前者の揺動部材110によって左方に押し出されたインクは、後者の揺動部材110によって、揺動部材100に向かってさらに左方に押し出される。このようなインクの流れにより、インク収納室の下層部に広く分布している顔料濃度の濃いインクは、揺動部材100の下側開口部102近傍に集められてから、インク収納室の上層部に向かって押し上げられる。この結果、インク収納部内のインク全体を効率よく攪拌して、インクの濃度傾斜を小さくすることができる。
(他の実施形態)
本発明の液体収納容器に備わる複数の揺動部材は、少なくとも2つの開口部と、それらの間の中空部を通して、液体を攪拌するための液体の流れを積極的に生じさせることができればよい。少なくとも2つの開口部は、液体を導入する第1開口部と、液体を導出する第2開口部と、を含む。複数の揺動部材の内、少なくとも1つは、液体供給部を重力方向の下方に位置させる液体収納容器の使用姿勢において、重力方向の下方か上方に向かう液体の流れ(液体収納容器の底部から上部に向かう液体の流れ)を生じさせる第1の揺動部材とすることができる。また、少なくとも他の1つは、液体収納容器の底部に滞留している液体に第1の揺動部材の液体導入位置に向かう流れ(第1の揺動部材の第1開口部に向かう流れ)を生じさせる第2の揺動部材とすることができる。
本発明の液体収納容器に備わる複数の揺動部材は、少なくとも2つの開口部と、それらの間の中空部を通して、液体を攪拌するための液体の流れを積極的に生じさせることができればよい。少なくとも2つの開口部は、液体を導入する第1開口部と、液体を導出する第2開口部と、を含む。複数の揺動部材の内、少なくとも1つは、液体供給部を重力方向の下方に位置させる液体収納容器の使用姿勢において、重力方向の下方か上方に向かう液体の流れ(液体収納容器の底部から上部に向かう液体の流れ)を生じさせる第1の揺動部材とすることができる。また、少なくとも他の1つは、液体収納容器の底部に滞留している液体に第1の揺動部材の液体導入位置に向かう流れ(第1の揺動部材の第1開口部に向かう流れ)を生じさせる第2の揺動部材とすることができる。
液体の流れの方向は、液体の収納空間の形状、液体の種類などに応じて最適に設定することができる。例えば、前述した実施形態の場合とは逆に、第1の揺動部材によって上方から下方に向かう液体の流れを生じさせ、第2の揺動部材によって、第1の揺動部材から導出された液体を液体収納容器の底部に沿って流すようにしてもよい。したがって、揺動部材における中空部および開口部の位置、形状、および数などは任意である。
また、液体を攪拌するための撹拌部材としては、前述したように特定の支持部を中心として揺動可能な部材(揺動部材)の他、移動可能な部材(移動部材)であってもよい。その移動部材の移動形態は特に限定されず、それを所定の軌跡に沿って往復移動可能に備えたり、あるいは液体収納容器の底面上を自由に移動するように備えてもよい。要は、攪拌部材の移動を伴って、その中空部に液体の流れが生じればよい。
また、液体の流れを生じさせるための流動手段は、開口部と液体とを相対移動させたときに、ベルヌーイの定理により開口部付近に生じる液体の負圧を利用する他、液体の遠心力や慣性力などを利用することができる。すなわち、揺動部材の揺動に伴う中空部内の液体の遠心力を利用したり、揺動部材の移動停止時における中空部の内または外の液体の慣性力などを利用することができる。
また、揺動部材の中空部内における液体の流れと、揺動部材の動きによって液体が機械的に攪拌されるときの液体の動きと、を組み合わせることにより、より効率よく液体を攪拌することができる。
また、上述した実施形態の液体収納容器(インクカートリッジ)において、撹拌部材(揺動部材)が備わる液体収納部(インク収納部)は、液体の収納量が減っても容積が変化しない構成となっている。しかし、その収納部は、液体の収納量の減少に伴って容積が変化するように構成してもよい。例えば、その収納部の内壁の少なくとも一部、または、その収納部に連通する液室の内壁の少なくとも一部を可撓性部材により形成し、その可撓性部材が液体の収納量に応じて変形するようにしてもよい。つまり、液体の消費などによる液体の収納量の減少に伴って、収納部の容積が減少するように構成してもよい。可撓性部材は、ばねなどの付勢手段によって、収納部の容積を拡大させる方向に付勢してもよく、これにより収納部内の負圧を維持することもできる。このような可撓性部材または弾性部材を備えた液体収納容器は、「ばね袋タイプ」とも称されている。また、液体の収納量の減少に応じて収納部の容積が減少するように構成した場合には、その収納部内における液体の液面と、その収納部内に備わる撹拌部材と、の位置関係の変化を小さく抑えることができる。このことは、撹拌部材の攪拌機能を維持する上において有利である。
上述した実施形態は、本発明における液体収納容器の一例として、いわゆるシリアルスキャンタイプのインクジェット記録装置に搭載可能なインクカートリッジ(カートリッジタイプのインクンタンク)としての適用例を示したものである。しかしながら、本発明はインクカートリッジのみに適応されるものではない。液体を案内する中空部を備えた揺動部材を有する液体収納容器を、例えば、載置台に搭載し、往復移動することで、揺動部材を揺動させる形態で液体を撹拌するものであれば適用可能である。また、インクタンク(液体収納容器)と、そのインクタンク内から供給されるインク(液体)を吐出可能なインクジェット記録ヘッド(液体吐出ヘッド)と、とを備えたインクジェットカートリッジ(ヘッドカートリッジ)を構成することもできる。また、液体収納容器の移動は、往復移動に限らず、例えば、ある方向に移動した後、一旦停止してから再度同一方向に移動させるという動作であっても、揺動部材を揺動し、液体を撹拌することが可能である。
1,2 インクカートリッジ(液体収納容器)
100 第1の揺動部材
110 第2の揺動部材
102,112 第1開口部
103,113 第2開口部
104,114 中空部
105,115 支持部
80,90,214 インク収納室(液体収納部)
100 第1の揺動部材
110 第2の揺動部材
102,112 第1開口部
103,113 第2開口部
104,114 中空部
105,115 支持部
80,90,214 インク収納室(液体収納部)
Claims (12)
- 液体を収納可能な液体収納部と、前記液体収納部内の液体を撹拌するための揺動可能な複数の揺動部材と、前記液体収納部内の液体を外部に供給するための液体供給部と、を備えた液体収納容器において、
前記複数の揺動部材は、それぞれ、液体が流入する第1開口部と、液体が流出する第2開口部と、前記第1および第2開口部を連通する中空部と、備え、
前記複数の揺動部材は、少なくとも第1および第2の揺動部材を含み、
前記第1の揺動部材は、前記液体供給部を重力方向の下方に位置させたときに、前記第1開口部が重力方向の下方に位置しかつ前記第2開口部が重力方向の下方に位置し、
前記第2の揺動部材の前記第2開口部は、前記第1の揺動部材の前記第1開口部の方向を向くように開口する
ことを特徴とする液体収納容器。 - 前記第2の揺動部材の前記第1開口部は、前記液体供給部を重力方向の下方に位置させたときに、前記第2開口部よりも重力方向の下方に位置することを特徴とする請求項1に記載の液体収納容器。
- 前記第1の揺動部材は、前記液体供給部を重力方向の下方に位置させたときに、重力方向と直交する方向に沿う軸線を中心として揺動可能に支持され、
前記第2の揺動部材は、前記液体供給部を重力方向の下方に位置させたときに、重力方向に沿う軸線を中心として揺動可能に支持される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の液体収納容器。 - 前記第1および第2の揺動部材は、それぞれ、前記第2開口部の揺動速度が前記第1開口部の揺動速度よりも速いことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の液体収納容器。
- 前記第1および第2の揺動部材は、それぞれ、前記液体収納容器の移動に伴う慣性力によって揺動可能であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の液体収納容器。
- 前記第1および第2の揺動部材における前記中空部は、それぞれ、前記液体供給部を重力方向の下方に位置させたときに前記液体収納部内の液体に没することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の液体収納容器。
- 前記液体は、顔料成分を含むインクであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の液体収納容器。
- 前記液体収納容器は、前記液体としてインクを収納可能なインクカートリッジを構成することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の液体収納容器。
- 前記液体収納部内の液体に負圧を付与するための負圧発生手段を備えることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の液体収納容器。
- 前記負圧発生手段は、多孔質体、または多数の繊維体からなる部材を含むことを特徴とする請求項9に記載の液体収納容器。
- 請求項から10のいずれかに記載の液体収納容器と、
前記液体収納容器から供給された液体を吐出可能な液体吐出ヘッドと、
を備えることを特徴とするヘッドカートリッジ。 - インクタンクと、前記インクタンクから供給されるインクを吐出可能なインクジェット記録ヘッドと、を搭載可能なキャリッジを備えるインクジェット記録装置において、
前記インクタンクは、インクを収納可能なインク収納部と、前記インク収納部内のインクを撹拌するための揺動可能な複数の揺動部材と、前記インク収納部内のインクを外部に供給するためのインク供給部と、を備え、
前記複数の揺動部材は、それぞれ、インクが流入する第1開口部と、インクが流出する第2開口部と、前記第1および第2開口部を連通する中空部と、備え、
前記複数の揺動部材は、少なくとも第1および第2の揺動部材を含み、前記第1の揺動部材は、前記液体供給部を重力方向の下方に位置させたときに、前記第1開口部が重力方向の下方に位置しかつ前記第2開口部が重力方向の下方に位置し、前記第2の揺動部材の前記第2開口部は、前記第1の揺動部材の前記第1開口部の方向を向くように開口し、
前記インクジェット記録装置は、少なくとも前記第1および第2の揺動部材を揺動させるために前記キャリッジを移動させる手段を備える
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
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2007
- 2007-04-27 JP JP2007119914A patent/JP2008273043A/ja active Pending
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