JP4709701B2 - シャフトシール装置の組み付け方法及びシャフトシール装置 - Google Patents
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Description
図9に示す端面リップシール900は、回転装置のハウジング901に密封的に取り付けられる固定側の密封環(以下、固定環と称する。)903と、シャフト902に密接嵌合されて一体で回転するゴム材製の端面シール(以下、ゴム端面シールと称する。)904とを有し、ゴム端面シール904に形成される突出リップ905が固定環903の端面に対して外径方向へ傾斜して延在密接することにより密封摺動面が形成され、これにより、突出リップ905の外周部に存在する被密封流体Q’が、固定環103より内径側、背面側の大気空間A’へ漏洩するのを防止する構成となっている。
従って、固定環903とゴム端面シール904とを回転装置に組み付けた際の両部品間の軸方向距離(以下、シール取り付け長と称する。)L1は、回転装置のハウジング901とシャフト902との取り合い寸法(相対位置)に依存する。
前述したように、従来の端面リップシール900の組み付け方法においては、シール取り付け長L1は、回転装置のハウジング901とシャフト902との取り合い寸法(相対位置)に依存する。しかし、回転装置は、端面リップシール900よりも構造体の寸法が大きく、かつ、通常はハウジング901やシャフト902以外にも多数の部品(ベアリング等)が使用される。そのため、ハウジング901とシャフト902との取り合い寸法の公差、すなわちばらつきはある程度の値となり、その結果、端面リップシール900のシール取り付け長L1のばらつきもある程度の範囲となる。このばらつきの範囲を、前述したようなメカニカルシールと比較して極めて小さいようなごくわずかな範囲に抑えることは非常に困難である。
また、本発明の他の目的は、簡単な工程によりシール取り付け長が高精度に設計基準値となるように組み付けることができるシャフトシール装置を提供することにある。
図1は、本実施形態を示すシャフトシール装置100の半断面図である。
本実施形態のシャフトシール装置100は、回転装置のシャフト102に取り付けられて、シャフト102が通過するハウジング101内において、シャフト102に沿って被密封流体Qと大気空間Aとをシールするものである。
また、本実施形態のシャフトシール装置100は、さらに、スペーサー107及びシール固定部品108を有し、これらにより、固定環103及びゴム端面シール104を、設計基準値通りに厳密かつ容易にハウジング101及びシャフト102に組み付けることができる構成となっている。
また、ゴム端面シール104の補強環109は、例えば鉄、鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、エンジニアプラチック等により形成され、切削加工、プレス加工、又はモールド成形により製作される。
固定側シール部品120は、第1パッキン121、第1パッキン121を介してハウジング101に固定される円環状の補強ケース122、補強ケース122の内周側で補強ケース122とシールリップ124及び固定環103との間に介在される第2パッキン123、及び、シールリップ124を有する。
第1パッキン121は、補強ケース122とハウジング101との間から被密封流体が漏洩しないように、補強ケース122とハウジング101との間をシールしている。
また、第2パッキン123は、固定環103の外周面と補強ケース122の内周面との間を密封し、さらに、シールリップ124の固定環103側の端面と、補強ケース122の支持部126の端面との間を密封して被密封流体が漏洩しないようにしている。
本実施形態において、スペーサー107は、ゴム端面シール104の外周に嵌合することで、ゴム端面シール104と一体的に組み立てられた構成である。
スペーサー107の切り欠き107aは、固定環103の摺動面103aの潤滑・冷却を考えると、寸法は大きいこと、すなわち被密封流体Q及び潤滑液に対する開口面積が大きいことが好ましいが、反面、切り欠き107aの寸法を大きくし過ぎると強度が低下する。強度が低下すると、シール組み付け時にシャフト段差端面102aと固定環103の摺動面103aとに挟まれて圧縮される際に、容易に変形してしまい、シール取り付け長を規定する部品としての機能を果たせない。従って、スペーサー107の切り欠き107a及び突起部107bの形態は、摺動面の潤滑・冷却性能と強度のバランスを考慮して適切に決定する必要がある。
本実施形態において、スペーサー107の材質はステンレス鋼で、外径はφ21mmであり、その固定環103側端部周縁を8等配し、その各等配区間に幅2.7mmで高さ1.5mmの突起部107bを形成した構成である。
また、スペーサー107は、ゴム端面シール104と一体で回転するため、軽量であることが好ましい。そのためには、スペーサー107の本体に穴あけ加工を施したような構成であってもよい。
そして、そのスペーサー107の軸方向の寸法L2は、シール取り付け長L1よりも若干小さく形成してある。
なお、シール取り付け長L1は、回転装置に対してシャフトシール装置100を正規の位置に取り付けた状態において、固定環103の摺動面103aからシャフト段差端面102aまでの軸方向の寸法である。
まず、図4に示すように、スペーサー107をゴム端面シール104の外周に嵌合させて一体化する。そして、シャフト102とハウジング101の組み立てが完了した回転装置に対して、一体化されたゴム端面シール104とスペーサー107を、圧入治具を用いて図示のごとくシャフト102の軸端側からハウジング101内に挿入し、シャフト102に嵌合させると共にシャフト段差端面102aに突き当てる。
なお、この時には、スペーサー107の圧縮変形の量(固定環103を3.0kNで圧入した場合、本実施形態のスペーサー107は0.2mm変形される)をも考慮して、摺動面103aとシャフト段差端面102aとの距離L2を規定される。
また、これにより、ゴム端面シール104の突出リップ105も、通常の状態よりも圧縮変形されている。
なお、シール固定部品108を戻した時点では、固定環103は固定側シール部品120を介してハウジング101に嵌合保持されているので、スペーサー107の突起部107bに突き当たった位置に留まったままである。
本実施形態においては、シール固定部品108を0.6mmだけ戻したが、スペーサー107の0.2mmの変形も戻るので、固定環103の摺動面103aとスペーサー107の突起部107bの先端との間は、0.4mmとなる。
すなわち、本発明に係るシャフトシール装置100では、ゴム端面シール104及び固定環103の取り付け基準が、共にシャフト段差端面102aに統一されていることから、ハウジング101と固定環103との相対位置、及びハウジング101とシャフト102の相対位置を管理する必要がない。換言すると、ゴム端面シール104及び固定環103のシール取り付け長L1が、回転装置のハウジング101とシャフト102との取り合い寸法の公差(寸法のばらつき)に影響されないと言える。従って、従来技術のように回転装置のハウジング901とシャフト902(図9参照)との取り合い寸法(相対位置)を予め計測する必要がなく、また、前述寸法の設計基準値との差異を修正するために、例えばシム、金属ワッシャー等の別部品を使用する必要もない。
なお、このような構成のゴム端面シール204においても、その突出部207に、図2に示した本実施形態のスペーサー107のような摺動面103aの潤滑及び冷却を目的とする切り欠き107aを設けることもできる。
101…ハウジング
102…シャフト
103…固定環
104…ゴム端面シール
105…突出リップ
107…スペーサー
109…補強環
108…シール固定部品
120…固定側シール部品
121…第1パッキン
122…補強ケース
123…第2パッキン
124…シールリップ
125,126…支持部
200…シャフトシール装置
204…ゴム端面シール
205…突出リップ
207…突出部
209…補強環
210…ゴム材
900…端面リップシール(シャフトシール装置)
901…ハウジング
902…シャフト
903…固定環(固定側密封環)
904…ゴム端面シール
905…突出リップ
906…固定側シール
907,908…パッキン
909…補強ケース
910…シールリップ
Claims (12)
- シャフトが通過するハウジングに固定される固定環と、前記シャフトに固定される端面シールとを有し、前記固定環の摺動面に前記端面シールの突出リップを摺動可能に密接させることにより前記シャフトに沿って被密封流体をシールするシャフトシール装置の組み付け方法であって、
前記端面シールを前記シャフトの所定位置に設置するとともに、当該シャフト上において前記固定環が組み付けられる正規位置から前記端面シール側に所定の調整距離だけ離れた固定環押し込み位置を規定するスペーサーを前記シャフトに設置する第1工程と、
前記固定環を前記ハウジングに挿入し、前記固定環の摺動面が前記スペーサーに突き当たるまで前記固定環を前記端面シール方向に押し込む第2工程と、
前記固定環を前記調整距離だけ前記端面シールから離れる方向に戻す第3工程と
を有するシャフトシール装置の組み付け方法。 - 前記第2工程においては、前記ハウジングに対して前記シャフトの軸方向に移動及び固定が自在なシール固定部品を介して、前記固定環を前記端面シール方向に押し込み、
前記第3工程においては、前記シール固定部品を前記調整距離だけ前記端面シールから離れる方向に戻した後、固定側シール部品を前記端面シールから離れる方向で前記シール固定部品に当接するまで押し戻すことにより、前記固定環を前記調整距離だけ前記端面シールから離れる方向に戻す
ことを特徴とする請求項1に記載のシャフトシール装置の組み付け方法。 - 前記第3工程においては、前記被密封流体が収容される空間内の圧力を上げることにより、前記摺動面に印加される圧力荷重により前記固定側シール部品を前記シール固定部品に当接するまで押し戻すことを特徴とする請求項2に記載のシャフトシール装置の組み付け方法。
- 前記スペーサーは、前記シャフトの所定の基準面と前記固定環押し込み位置との距離に相当する長さを有し、前記端面シールの外周に嵌合する環状のスペーサーであって、
前記第1工程においては、
前記端面シール及び前記スペーサーを、順次、前記シャフトに嵌合させ、当該シャフトの前記基準面に突き当たるまで移動させることにより、あるいは、
前記スペーサーを前記端面シールの外周に嵌合して一体化した前記端面シール及び前記スペーサーを、前記シャフトに嵌合させ、当該シャフトの前記基準面に突き当たるまで移動させることにより、
前記端面シール及び前記スペーサーを前記シャフトに設置することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシャフトシール装置の組み付け方法。 - 前記スペーサーは前記端面シールの一部を突出させることにより当該端面シールと一体的に形成されたものであって、
前記第1工程においては、前記スペーサーが一体的に形成された前記端面シールを、前記シャフトに嵌合させ、当該シャフトの所定の基準面に突き当たるまで移動させることにより、前記端面シール及び前記スペーサーを前記シャフトに設置することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシャフトシール装置の組み付け方法。 - シャフト及び当該シャフトを通過させるハウジングに設置されて、前記シャフトに沿って被密封流体をシールするシャフトシール装置であって、
前記ハウジングに密封固定される固定環と、
前記シャフトに密封固定され、前記固定環の摺動面に突出リップを摺動可能に密接させる端面シールと、
前記シャフト上において前記固定環が組み付けられる正規位置から前記端面シール側に所定の調整距離だけ離れた固定環押し込み位置を規定するスペーサーと
を有することを特徴とするシャフトシール装置。 - 前記スペーサーは、前記シャフトの所定の基準面と、前記固定環押し込み位置との距離に相当する長さを有し、前記端面シールの外周に嵌合する環状のスペーサーであることを特徴とする請求項6に記載のシャフトシール装置。
- 前記スペーサーは、前記端面シールと一体的に形成されていることを特徴とする請求項6に記載のシャフトシール装置。
- 前記スペーサーは、前記摺動面と対向する側の環状の端面に切り欠き部が形成されていることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のシャフトシール装置。
- 前記ハウジングに対して前記シャフトの軸方向に移動及び固定が自在なシール固定部品であって、当該シャフトシール装置の組み付け時に前記固定環を前記固定環押し込み位置まで前記ハウジングに押し込み、その後前記調整距離だけ前記端面シールから離れる方向に戻されて前記固定環の設置位置を規定するシール固定部品
をさらに有することを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載のシャフトシール装置。 - 前記シール固定部品は、内側に係合切り欠き部を有することを特徴とする請求項10に記載のシャフトシール装置。
- 前記シール固定部品は、少なくとも前記シャフトの軸方向の両端部において、前記ハウジングの内面に嵌合されるように形成されていることを特徴とする請求項10又は11に記載のシャフトシール装置。
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