JP2017133571A - 密封装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】流体圧力が低い状態においても封止機能を発揮させることのできる密封装置を提供する。【解決手段】周方向の1箇所に合口部110が設けられた樹脂製のシールリング100と、シールリング100の内周面と環状溝の溝底面に密着し、シールリング100を径方向外側に押圧する少なくとも一つの弾性体200と、を備え、シールリング100の内周面側には、それぞれの弾性体200の周方向の両端をそれぞれ支持する支持部120が複数設けられると共に、少なくともシールリング100における合口部110が設けられた部位の内周面には弾性体200が配置されていることを特徴とする。【選択図】図1
Description
本発明は、軸とハウジングの軸孔との間の環状隙間を封止する密封装置に関する。
自動車用のAutomatic Transmission(AT)やContinuously Variable Transmission(CVT)においては、油圧を保持させるために、相対的に回転する軸とハウジングとの間の環状隙間を封止する密封装置(シールリング)が設けられている。図18及び図19を参照して、従来例に係るシールリングについて説明する。図18は従来例に係るシールリングにおける油圧を保持していない状態を示す模式的断面図である。図19は従来例に係るシールリングにおける油圧を保持している状態を示す模式的断面図である。従来例に係るシールリング500の場合、軸300の外周に設けられた環状溝310に装着され、軸300が挿通されるハウジング400の軸孔の内周面と環状溝310の側壁面のそれぞれに摺動自在に接触することで、軸300とハウジング400の軸孔との間の環状隙間を封止するように構成される。
上記のような用途で用いられるシールリング500においては、摺動トルクを十分に低くすることが要求される。そのため、シールリング500の外周面の周長はハウジング400の軸孔の内周面の周長よりも短く構成されており、締め代を持たないように構成されている。したがって、自動車のエンジンがかかり油圧が高くなっている状態においては、シールリング500が油圧により拡径し、軸孔の内周面と環状溝310の側壁面に密着して十分に油圧を保持する機能を発揮する(図19参照)。これに対して、エンジンの停止により油圧がかからない状態においてはシールリング500が軸孔の内周面や環状溝310の側壁面から離れた状態となるように構成されている(図18参照)。
このように、従来例に係るシールリング500の場合、油圧がかからない状態では封止機能を発揮しない。そのため、ATやCVTのように油圧ポンプによって圧送される油により変速制御が行われる構成においては、油圧ポンプが停止した無負荷状態(例えば、アイドリングストップ時)では、シールリング500がシールしていた油がシールされずにオイルパンに戻って、シールリング500の近傍の油がなくなってしまう。従って、この状態からエンジンを始動(再始動)させると、シールリング500の近傍には油がなく潤滑のない状態で作動が開始されるので、応答性や作動性が悪いという問題がある。
また、一般的に、シールリング500には、環状溝310への装着性を高めるために、周方向の1箇所に合口部が設けられている。従って、合口部付近においては、特に密封性が低いという問題もある。
本発明の目的は、流体圧力が低い状態においても封止機能を発揮させることのできる密封装置を提供することにある。
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
すなわち、本発明の密封装置は、
軸の外周に設けられた環状溝に装着され、相対的に回転する前記軸とハウジングとの間の環状隙間を封止して、流体圧力が変化するように構成された密封対象領域の流体圧力を保持する密封装置であって、
周方向の1箇所に合口部が設けられた樹脂製のシールリングと、
該シールリングの内周面と前記環状溝の溝底面に密着し、前記シールリングを径方向外側に押圧する少なくとも一つの弾性体と、
を備え、
前記シールリングの内周面側には、それぞれの前記弾性体の周方向の両端をそれぞれ支持する支持部が複数設けられると共に、
少なくとも前記シールリングにおける前記合口部が設けられた部位の内周面には前記弾性体が配置されていることを特徴とする。
軸の外周に設けられた環状溝に装着され、相対的に回転する前記軸とハウジングとの間の環状隙間を封止して、流体圧力が変化するように構成された密封対象領域の流体圧力を保持する密封装置であって、
周方向の1箇所に合口部が設けられた樹脂製のシールリングと、
該シールリングの内周面と前記環状溝の溝底面に密着し、前記シールリングを径方向外側に押圧する少なくとも一つの弾性体と、
を備え、
前記シールリングの内周面側には、それぞれの前記弾性体の周方向の両端をそれぞれ支持する支持部が複数設けられると共に、
少なくとも前記シールリングにおける前記合口部が設けられた部位の内周面には前記弾性体が配置されていることを特徴とする。
本発明によれば、シールリングは、弾性体によって、径方向外側に押圧される。そのため、流体圧力が作用してない(差圧が生じていない)、または流体圧力が殆ど作用していない(差圧が殆ど生じていない)状態においても、シールリングを、ハウジングの軸孔の内周面に接した状態とすることが可能となる。これにより、密封機能が発揮されるため、密封対象領域の流体圧力が高まりだした直後から流体圧力を保持させることができる。また、少なくともシールリングにおける合口部が設けられた部位の内周面には弾性体が配置されているため、合口部からの密封対象流体の漏れをより確実に抑制することができる。また、シールリングの内周面側には弾性体の周方向の両端をそれぞれ支持する支持部が複数設けられているので、シールリングと弾性体との間で摺動摩耗が発生してしまうことも抑制することができる。
前記支持部は、前記シールリングの内周面から径方向内側に向かって突出する突起により構成されるとよい。
以上説明したように、本発明によれば、流体圧力が低い状態においても封止機能を発揮させることができる。
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。なお、本実施例に係る密封装置は、自動車用のATやCVTなどの変速機において、油圧を保持させるために、相対的に回転する軸とハウジングとの間の環状隙間を封止する用途に用いられるものである。また、以下の説明において、「高圧側」とは、密封装置の両側に差圧が生じた際に高圧となる側を意味し、「低圧側」とは、密封装置の両側に差圧が生じた際に低圧となる側を意味する。
(実施例1)
図1〜図11を参照して、本発明の実施例に係る密封装置10について説明する。図1は本発明の実施例1に係る密封装置10の側面図(概略的に示した側面図)である。図2は本発明の実施例1に係る密封装置10の側面図の一部拡大図であり、図1において丸で囲った部分の拡大図である。図3は本発明の実施例に係る密封装置10の側面図の一部拡大図であり、図1において丸で囲った部分を反対側から見た拡大図である。図4は本発明の実施例に係る密封装置10を外周面側から見た図の一部拡大図であり、図1において丸で囲った部分を外周面側から見た拡大図である。図5は本発明の実施例に係る密封装置10を構成するシールリング100を内周面側から見た図の一部拡大図であり、図1において丸で囲った部分を、シールリング100について内周面側から見た拡大図である。図6は本発明の実施例1に係る密封装置10を構成する弾性体200の斜視図である。図7は弾性体200Aの変形例を示す斜視図である。図8〜図11は本発明の実施例に係る密封構造(密封装置10の使用時の状態)を示す模式的断面図である。なお、図8及び図10は無負荷の状態を示し、図9及び図11は差圧が生じた状態を示している。
図1〜図11を参照して、本発明の実施例に係る密封装置10について説明する。図1は本発明の実施例1に係る密封装置10の側面図(概略的に示した側面図)である。図2は本発明の実施例1に係る密封装置10の側面図の一部拡大図であり、図1において丸で囲った部分の拡大図である。図3は本発明の実施例に係る密封装置10の側面図の一部拡大図であり、図1において丸で囲った部分を反対側から見た拡大図である。図4は本発明の実施例に係る密封装置10を外周面側から見た図の一部拡大図であり、図1において丸で囲った部分を外周面側から見た拡大図である。図5は本発明の実施例に係る密封装置10を構成するシールリング100を内周面側から見た図の一部拡大図であり、図1において丸で囲った部分を、シールリング100について内周面側から見た拡大図である。図6は本発明の実施例1に係る密封装置10を構成する弾性体200の斜視図である。図7は弾性体200Aの変形例を示す斜視図である。図8〜図11は本発明の実施例に係る密封構造(密封装置10の使用時の状態)を示す模式的断面図である。なお、図8及び図10は無負荷の状態を示し、図9及び図11は差圧が生じた状態を示している。
<密封構造及び密封装置の構成>
特に、図1及び図8〜図11を参照して、本発明の実施例に係る密封構造及び密封装置10の構成について説明する。本実施例に係る密封構造は、相対的に回転する軸300及びハウジング400と、軸300とハウジング400(ハウジング400における軸300が挿通される軸孔の内周面)との間の環状隙間を封止する密封装置10とから構成される。本実施例に係る密封装置10は、軸300の外周に設けられた環状溝310に装着され、相対的に回転する軸300とハウジング400との間の環状隙間を封止する。これにより、密封装置10は、流体圧力(本実施例では油圧)が変化するように構成された密封対象領域の流体圧力を保持する。ここで、本実施例においては、図8〜図11中の右側の
領域の流体圧力が変化するように構成されており、密封装置10は図中右側の密封対象領域の流体圧力を保持する役割を担っている。なお、自動車のエンジンが停止した状態においては、密封対象領域の流体圧力は低く、無負荷の状態となっており、エンジンをかけると密封対象領域の流体圧力は高くなる。
特に、図1及び図8〜図11を参照して、本発明の実施例に係る密封構造及び密封装置10の構成について説明する。本実施例に係る密封構造は、相対的に回転する軸300及びハウジング400と、軸300とハウジング400(ハウジング400における軸300が挿通される軸孔の内周面)との間の環状隙間を封止する密封装置10とから構成される。本実施例に係る密封装置10は、軸300の外周に設けられた環状溝310に装着され、相対的に回転する軸300とハウジング400との間の環状隙間を封止する。これにより、密封装置10は、流体圧力(本実施例では油圧)が変化するように構成された密封対象領域の流体圧力を保持する。ここで、本実施例においては、図8〜図11中の右側の
領域の流体圧力が変化するように構成されており、密封装置10は図中右側の密封対象領域の流体圧力を保持する役割を担っている。なお、自動車のエンジンが停止した状態においては、密封対象領域の流体圧力は低く、無負荷の状態となっており、エンジンをかけると密封対象領域の流体圧力は高くなる。
そして、本実施例に係る密封装置10は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの樹脂製のシールリング100と、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)、水素化ニトリルゴム(HNBR)などのゴム状弾性体からなる複数の弾性体200とから構成される。
シールリング100は、周方向の1箇所に合口部110が設けられている。そして、複数の弾性体200は、シールリング100の内周面と環状溝310の溝底面に密着し、シールリング100を径方向外側に押圧する役割を担っている。なお、シールリング100単体における外周面の周長は、ハウジング400の軸孔の内周面の周長よりも短く設定されている。
<シールリング>
特に、図1〜図5を参照して、本発明の実施例に係るシールリング100について、より詳細に説明する。シールリング100には、周方向の1箇所に合口部110が設けられている。また、シールリング100の内周面側には、複数の弾性体200の周方向の両端をそれぞれ支持する支持部120が複数設けられている。これらの支持部120は、シールリング100の内周面から径方向内側に向かって突出する突起により構成されている。本実施例に係るシールリング100は、断面が矩形の環状部材に対して、これら合口部110と複数の支持部120が形成された構成である。ただし、これは形状についての説明に過ぎず、必ずしも、断面が矩形の環状部材を素材として、合口部110と複数の支持部120を形成する加工を施すことを意味するものではない。勿論、断面が矩形の環状部材を成形した後に、合口部110及び複数の支持部120を切削加工により得ることもできるが、樹脂材料によっては、合口部110及び複数の支持部120を有したものを成形することもでき、製法は特に限定されるものではない。また、支持部120を別途作成して、環状のシールリング本体に取付けても構わない。
特に、図1〜図5を参照して、本発明の実施例に係るシールリング100について、より詳細に説明する。シールリング100には、周方向の1箇所に合口部110が設けられている。また、シールリング100の内周面側には、複数の弾性体200の周方向の両端をそれぞれ支持する支持部120が複数設けられている。これらの支持部120は、シールリング100の内周面から径方向内側に向かって突出する突起により構成されている。本実施例に係るシールリング100は、断面が矩形の環状部材に対して、これら合口部110と複数の支持部120が形成された構成である。ただし、これは形状についての説明に過ぎず、必ずしも、断面が矩形の環状部材を素材として、合口部110と複数の支持部120を形成する加工を施すことを意味するものではない。勿論、断面が矩形の環状部材を成形した後に、合口部110及び複数の支持部120を切削加工により得ることもできるが、樹脂材料によっては、合口部110及び複数の支持部120を有したものを成形することもでき、製法は特に限定されるものではない。また、支持部120を別途作成して、環状のシールリング本体に取付けても構わない。
合口部110は、外周面側及び両側壁面側のいずれから見ても階段状の合わせ面(切断面)が設けられた、いわゆる特殊ステップカットを採用している。これにより、シールリング100においては、合わせ面を介して一方の側の外周面側には第1嵌合凸部111X及び第1嵌合凹部112Xが設けられ、他方の側の外周面側には第1嵌合凸部111Xが嵌る第2嵌合凹部112Yと第1嵌合凹部112Xに嵌る第2嵌合凸部111Yが設けられている。なお、合わせ面を介して一方の側の内周面側の端面113Xと他方の側の内周面側の端面113Yは互いに対向している。特殊ステップカットに関しては公知技術であるので、その詳細な説明は省略するが、熱膨張収縮によりシールリング100の周長が変化しても安定した密封性を維持する特性を有する。なお、「合わせ面(切断面)」については、切削加工により得られる場合だけでなく、成形により得られる場合も含まれる。
<弾性体>
弾性体200について、より詳細に説明する。本実施例に係る弾性体200は、図6に示すように、ゴム製の直方体形状の部材により構成されている。ただし、例えば、図7に示す変形例に係る弾性体200Aのように、円柱状の部材を採用しても良く、その形状が限定されることはない。以上のように構成される弾性体200は、シールリング100の内周面に設けられた支持部120と支持部120の間に挟み込まれ、かつシールリング100の内周面に沿うように変形した状態で配置される。これにより、弾性体200は、周
方向の両端が一対の支持部120によって、それぞれ支持された状態となる。本実施例においては、2つの弾性体200が、シールリング100の内周面側に配置されている。これら2つの弾性体200のうちの一方の弾性体200は、シールリングにおける合口部110が設けられた部位の内周面に配置されている(図1参照)。
弾性体200について、より詳細に説明する。本実施例に係る弾性体200は、図6に示すように、ゴム製の直方体形状の部材により構成されている。ただし、例えば、図7に示す変形例に係る弾性体200Aのように、円柱状の部材を採用しても良く、その形状が限定されることはない。以上のように構成される弾性体200は、シールリング100の内周面に設けられた支持部120と支持部120の間に挟み込まれ、かつシールリング100の内周面に沿うように変形した状態で配置される。これにより、弾性体200は、周
方向の両端が一対の支持部120によって、それぞれ支持された状態となる。本実施例においては、2つの弾性体200が、シールリング100の内周面側に配置されている。これら2つの弾性体200のうちの一方の弾性体200は、シールリングにおける合口部110が設けられた部位の内周面に配置されている(図1参照)。
<シールリングの使用時のメカニズム>
特に、図8〜図11を参照して、本実施例に係る密封装置10の使用時のメカニズムについて説明する。図8及び図10は、エンジンが停止して、密封装置10を介して左右の領域の差圧がなく(または、差圧が殆どなく)、無負荷の状態を示している。図9及び図11は、エンジンがかかり、密封装置10を介して、左側の領域に比べて右側の領域の流体圧力の方が高くなった状態を示している。なお、図8及び図9中のシールリング100は、図1中のAA断面に相当する。また、図10及び図11中の密封装置10は図1中のBB断面に相当する。
特に、図8〜図11を参照して、本実施例に係る密封装置10の使用時のメカニズムについて説明する。図8及び図10は、エンジンが停止して、密封装置10を介して左右の領域の差圧がなく(または、差圧が殆どなく)、無負荷の状態を示している。図9及び図11は、エンジンがかかり、密封装置10を介して、左側の領域に比べて右側の領域の流体圧力の方が高くなった状態を示している。なお、図8及び図9中のシールリング100は、図1中のAA断面に相当する。また、図10及び図11中の密封装置10は図1中のBB断面に相当する。
上記の通り、本実施例に係るシールリング100単体における外周面の周長は、ハウジング400の軸孔の内周面の周長よりも短く設定されている。しかしながら、複数の弾性体200によって、シールリング100は径方向外側に押圧されている。これにより、無負荷状態においては、左右の領域の差圧がないものの、シールリング100の外周面は、ハウジング400の軸孔の内周面に接した状態を維持する(図8及び図10参照)。
そして、エンジンがかかり、差圧が生じた状態においては、高圧側(H)からの流体圧力によって、シールリング100は、環状溝310における低圧側(L)の側壁面に密着した状態となる(図9及び図11参照)。なお、シールリング100は、ハウジング400における軸孔の内周面に対して接した(摺動した)状態を維持していることは言うまでもない。従って、軸300とハウジング400との間の環状隙間が封止された状態となる。また、その後、エンジンが停止して、無負荷状態になっても、シールリング100には、複数の弾性体200によって、径が大きくなる方向に変形する力が作用している。そのため、シールリング100の外周面はハウジング400の軸孔の内周面に密着しており、シールリング100は軸線方向(軸300の中心軸線方向)には殆ど移動しない。つまり、シールリング100は、環状溝310における低圧側(L)の側壁面に密着した状態を維持している。従って、無負荷状態においても、軸300とハウジング400との間の環状隙間が封止された状態が維持される。
<本実施例に係る密封装置の優れた点>
本実施例に係る密封装置10によれば、シールリング100は、弾性体200によって、径方向外側に押圧される。そのため、流体圧力が作用してない(差圧が生じていない)、または流体圧力が殆ど作用していない(差圧が殆ど生じていない)状態においても、シールリング100を、ハウジング400の軸孔の内周面に接した状態とすることが可能となる。これにより、密封機能が発揮されるため、密封対象領域の流体圧力が高まりだした直後から流体圧力を保持させることができる。
本実施例に係る密封装置10によれば、シールリング100は、弾性体200によって、径方向外側に押圧される。そのため、流体圧力が作用してない(差圧が生じていない)、または流体圧力が殆ど作用していない(差圧が殆ど生じていない)状態においても、シールリング100を、ハウジング400の軸孔の内周面に接した状態とすることが可能となる。これにより、密封機能が発揮されるため、密封対象領域の流体圧力が高まりだした直後から流体圧力を保持させることができる。
つまり、アイドリングストップ機能を有するエンジンにおいては、エンジン停止状態からアクセルが踏み込まれることでエンジンが始動することによって、密封対象領域側の油圧が高まりだした直後から油圧を保持させることができる。ここで、一般的には、樹脂製のシールリングの場合、流体の漏れを抑制する機能はあまり発揮されない。しかしながら、本実施例に係るシールリング100においては、無負荷状態においても、軸300とハウジング400との間の環状隙間が封止された状態が維持されるため、流体の漏れを十分抑制する機能が発揮される。そのため、エンジンが停止することでポンプなどによる作用が停止した後も、しばらくの間差圧が生じた状態を維持させることが可能となる。従って、アイドリングストップ機能を有するエンジンにおいて、エンジンの停止状態がそれほど
長くない場合には、差圧が生じた状態を維持できるので、エンジンを再始動させた際に、その直後から好適に流体圧力を保持させることができる。
長くない場合には、差圧が生じた状態を維持できるので、エンジンを再始動させた際に、その直後から好適に流体圧力を保持させることができる。
また、本実施例においては、少なくともシールリング100における合口部110が設けられた部位の内周面には弾性体200が配置されているため、合口部110からの密封対象流体の漏れをより確実に抑制することができる。また、シールリング100の内周面側には弾性体200の周方向の両端をそれぞれ支持する支持部120が複数設けられている。そのため、シールリング100と弾性体200との間で摺動してしまうことがないため、シールリング100と弾性体200との間で摺動摩耗が発生してしまうことも抑制することができる。
また、本実施例に係る密封装置10においては、シールリング100単体における外周面の周長は、ハウジング400の軸孔の内周面の周長よりも短く設定されている。そして、シールリング100の内周面側に複数の弾性体200が設けられることにより、シールリング100の外周面が、ハウジング400の軸孔の内周面に密着するように構成されている。したがって、シールリング100の外周面とハウジング400の軸孔内周面との間の摺動トルクを低く抑えつつ、流体圧力が作用してない(差圧が生じていない)状態においても、シールリング100を、ハウジング400の軸孔の内周面に接した状態とすることが可能となる。
なお、本実施例に係る密封装置10は、軸線方向の中心面に対して対称的な形状をなしている。従って、環状溝310内に密封装置10を取り付ける際に、取付方向を気にする必要がなく、装着性に優れている。また、高圧側と低圧側が入れ替わるような環境下でも用いることができる。
(実施例2)
図12には、本発明の実施例2が示されている。上記実施例1では、一つのシールリングに対して弾性体が2か所に配置される場合を示した。これに対して、本実施例では、一つのシールリングに対して弾性体が4か所に配置される場合を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
図12には、本発明の実施例2が示されている。上記実施例1では、一つのシールリングに対して弾性体が2か所に配置される場合を示した。これに対して、本実施例では、一つのシールリングに対して弾性体が4か所に配置される場合を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
図12は本発明の実施例2に係る密封装置の側面図である。本実施例に係る密封装置10も、上記実施例1の場合と同様に、樹脂製のシールリング100と、ゴム状弾性体からなる複数の弾性体200とから構成される。また、本実施例に係るシールリング100も、上記実施例1の場合と同様に、合口部110と、複数の支持部120が設けられている。そして、本実施例の場合には、4つの弾性体200が、シールリング100の内周面側に配置されている。これら4つの弾性体200のうちの一つの弾性体200は、シールリングにおける合口部110が設けられた部位の内周面に配置されている(図12参照)。以上のように構成された本実施例に係る密封装置10においても、上記実施例1の場合と同様の効果を得ることができる。
(実施例3)
図13には、本発明の実施例3が示されている。上記実施例1では、一つのシールリングに対して弾性体が2か所に配置される場合を示した。これに対して、本実施例では、一つのシールリングに対して弾性体が1か所にのみ配置される場合を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
図13には、本発明の実施例3が示されている。上記実施例1では、一つのシールリングに対して弾性体が2か所に配置される場合を示した。これに対して、本実施例では、一つのシールリングに対して弾性体が1か所にのみ配置される場合を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
図13は本発明の実施例3に係る密封装置の側面図である。本実施例に係る密封装置1
0も、上記実施例1の場合と同様に、樹脂製のシールリング100と、ゴム状弾性体からなる弾性体200とから構成される。また、本実施例に係るシールリング100も、上記実施例1の場合と同様に、合口部110と、複数の支持部120が設けられている。そして、本実施例の場合には、1つの弾性体200が、シールリング100の内周面側に配置されている。この弾性体200は、シールリングにおける合口部110が設けられた部位の内周面に配置されている(図13参照)。以上のように構成された本実施例に係る密封装置10においても、上記実施例1の場合と同様の効果を得ることができる。
0も、上記実施例1の場合と同様に、樹脂製のシールリング100と、ゴム状弾性体からなる弾性体200とから構成される。また、本実施例に係るシールリング100も、上記実施例1の場合と同様に、合口部110と、複数の支持部120が設けられている。そして、本実施例の場合には、1つの弾性体200が、シールリング100の内周面側に配置されている。この弾性体200は、シールリングにおける合口部110が設けられた部位の内周面に配置されている(図13参照)。以上のように構成された本実施例に係る密封装置10においても、上記実施例1の場合と同様の効果を得ることができる。
(シールリングの変形例)
上記各実施例においては、シールリング100が、断面が矩形の環状部材に対して、合口部110と複数の支持部120が形成された構成の場合を示した。しかしながら、シールリング100の断面は矩形である必要はない。以下、その一例を説明する。
上記各実施例においては、シールリング100が、断面が矩形の環状部材に対して、合口部110と複数の支持部120が形成された構成の場合を示した。しかしながら、シールリング100の断面は矩形である必要はない。以下、その一例を説明する。
図14及び図15には、変形例1に係るシールリング100Xについて示されている。図14は本発明の実施例に係る密封装置を構成するシールリングの変形例1の側面図の一部である。図15は本発明の実施例に係る密封装置を構成するシールリングの変形例1の模式的断面図であり、使用時の状態を示している。また、図15中のシールリングは図14中のCC断面図である。
このシールリング100Xの外周面側には、一方の側面側に環状凹部130が設けられている。ただし、この環状凹部130については、合口部付近を除く領域にのみ設けても良い。なお、このシールリング100Xの場合には、環状凹部130が高圧側(H)となるように、環状溝310に装着される(図15参照)。
以上のように構成されるシールリング100Xによれば、差圧が生じた状態において、環状凹部130の溝底に作用する流体圧力と、シールリング100Xの内周面に作用する流体圧力が相殺される。これにより、ハウジング400の軸孔内周面に対するシールリング100Xの摺動トルクを低減させることが可能となる。従って、特にシールリング100Xの外周面側のみを摺動させるように設計する場合に効果的である。
この変形例1に係るシールリング100Xは、上記各実施例のいずれにも適用可能である。
図16及び図17には、変形例2に係るシールリング100Yについて示されている。図16は本発明の実施例に係る密封装置を構成するシールリング100Yの変形例2の側面図の一部である。図17は本発明の実施例に係る密封装置を構成するシールリングの変形例2の模式的断面図であり、使用時の状態を示している。また、図17中のシールリングは図16中のDD断面図である。
このシールリング100Yの外周面側には、両方の側面側にそれぞれ環状凹部140が設けられている。ただし、この環状凹部140については、合口部付近を除く領域にのみ設けても良い。
以上のように構成されるシールリング100Yによれば、差圧が生じた状態において、高圧側(H)の環状凹部140の溝底に作用する流体圧力と、シールリング100Yの内周面に作用する流体圧力が相殺される。これにより、ハウジング400の軸孔内周面に対するシールリング100Yの摺動トルクを低減させることが可能となる。従って、特にシールリング100Yの外周面側のみを摺動させるように設計する場合に効果的である。なお、この変形例2に係るシールリング100Yの場合には、両方の側面側にそれぞれ環状凹部140が設けられているので、シールリング100Yの装着方向を気にする必要がな
い。
い。
この変形例2に係るシールリング100Yについても、上記各実施例のいずれにも適用可能である。
(その他)
上記各実施例においては、シールリング100に設けられる合口部110が、特殊ステップカットの場合を示した。しかしながら、本発明におけるシールリングに設けられる合口部は、特殊ステップカットには限定されず、各種公知技術を採用できる。例えば、ストレートカット(径方向に真っ直ぐ切断される構造)、バイアスカット(径方向に対して斜めに切断される構造)、ステップカット(外周面及び内周面から見て階段状に切断され、両側面から見ると直線状に切断される構造、又は、両側面から見ると階段状に切断され、外周面及び内周面から見ると直線状に切断される構造)などの公知技術を採用することができる。
上記各実施例においては、シールリング100に設けられる合口部110が、特殊ステップカットの場合を示した。しかしながら、本発明におけるシールリングに設けられる合口部は、特殊ステップカットには限定されず、各種公知技術を採用できる。例えば、ストレートカット(径方向に真っ直ぐ切断される構造)、バイアスカット(径方向に対して斜めに切断される構造)、ステップカット(外周面及び内周面から見て階段状に切断され、両側面から見ると直線状に切断される構造、又は、両側面から見ると階段状に切断され、外周面及び内周面から見ると直線状に切断される構造)などの公知技術を採用することができる。
また、一つのシールリング100に対して、実施例1では弾性体200を2か所に配置し、実施例2では弾性体200を4か所に配置し、実施例3では弾性体200を一か所に配置する場合を示した。しかしながら、本発明において、一つのシールリング100に対して、配置する弾性体の数は限定されることはない。ただし、シールリング100の外周面全体がハウジングの軸孔の内周面に密着するように、シールリング100の内周面において、弾性体200が配置されていない連続する領域が、180°未満になるようにするのが望ましい。
10 密封装置
100,100X,100Y シールリング
110 合口部
111X 第1嵌合凸部
111Y 第2嵌合凸部
112X 第1嵌合凹部
112Y 第2嵌合凹部
113X 端面
113Y 端面
120 支持部
130 環状凹部
140 環状凹部
200,200A 弾性体
300 軸
310 環状溝
400 ハウジング
100,100X,100Y シールリング
110 合口部
111X 第1嵌合凸部
111Y 第2嵌合凸部
112X 第1嵌合凹部
112Y 第2嵌合凹部
113X 端面
113Y 端面
120 支持部
130 環状凹部
140 環状凹部
200,200A 弾性体
300 軸
310 環状溝
400 ハウジング
Claims (2)
- 軸の外周に設けられた環状溝に装着され、相対的に回転する前記軸とハウジングとの間の環状隙間を封止して、流体圧力が変化するように構成された密封対象領域の流体圧力を保持する密封装置であって、
周方向の1箇所に合口部が設けられた樹脂製のシールリングと、
該シールリングの内周面と前記環状溝の溝底面に密着し、前記シールリングを径方向外側に押圧する少なくとも一つの弾性体と、
を備え、
前記シールリングの内周面側には、それぞれの前記弾性体の周方向の両端をそれぞれ支持する支持部が複数設けられると共に、
少なくとも前記シールリングにおける前記合口部が設けられた部位の内周面には前記弾性体が配置されていることを特徴とする密封装置。 - 前記支持部は、前記シールリングの内周面から径方向内側に向かって突出する突起により構成されることを特徴とする請求項1に記載の密封装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016012726A JP2017133571A (ja) | 2016-01-26 | 2016-01-26 | 密封装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2016012726A JP2017133571A (ja) | 2016-01-26 | 2016-01-26 | 密封装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2017133571A true JP2017133571A (ja) | 2017-08-03 |
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Family Applications (1)
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JP2016012726A Pending JP2017133571A (ja) | 2016-01-26 | 2016-01-26 | 密封装置 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2017133571A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR20200008159A (ko) * | 2017-06-27 | 2020-01-23 | 엔오케이 가부시키가이샤 | 실 링 |
-
2016
- 2016-01-26 JP JP2016012726A patent/JP2017133571A/ja active Pending
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KR20200008159A (ko) * | 2017-06-27 | 2020-01-23 | 엔오케이 가부시키가이샤 | 실 링 |
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