JP4707012B2 - ヘドロの悪臭抑制処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヘドロ処理剤及びヘドロ処理方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、ヘドロからの悪臭の発生を即時に抑制するとともに、長期間にわたって消臭効果を持続することができるヘドロ処理剤及びヘドロ処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
河川、湖沼、内湾、運河などの底には、軟弱な泥すなわちヘドロが時を経るとともに堆積してゆく。ヘドロが堆積すると、所定の水量が確保できない、臭気が発生するなどの問題が生じることから、定期的に浚渫などの工事によるヘドロの除去が行われる。
建設汚泥は、最終処分場の確保難、容量の逼迫、天然資源の枯渇などの問題から、有効利用が推進されている。浚渫土は、産業廃棄物としての取り扱いを受けないものの、資源循環の観点からリサイクルが推進されている。
一方、ヘドロは、長期間嫌気性の状態で堆積されていることや、有機物の含有量が多いことから、硫化水素などの悪臭が発生することが多い。このために、固化材などにより強度を付加し、ヘドロの物理的性状を改質しても、リサイクル先で悪臭の発生が問題となり、有効利用を阻害する要因となる。
従来より、ヘドロの処理方法として、天日による乾燥、セメント系固化材を用いてアルカリ性とすることによる硫化水素の発生抑制、生物処理による脱臭が提案されている。しかし、天日による乾燥は、ヘドロの含水率が通常40〜95重量%であり、これを適度な含水率とされる25重量%以下まで乾燥するには、広い場所の確保が必要であり、また、晴天の条件下でも2〜5日という長時間を必要とすることから、適用し得る個所は限られる。
セメント系固化材を用いる方法は、ヘドロ1m3に対してセメント系固化材50〜150kgが必要であり、セメント系固化材の養生期間として半日ないし1日を要し、養生場所として広い場所が必要である。また、セメント系固化材が添加され、アルカリ性となったヘドロからは、アンモニアが発生しやすい。
生物処理による脱臭は、処理設備の設置費と運転費として多額の費用がかかることから、実施されている例は少ない。
ヘドロからの臭気は、ヘドロが有機物を多く含むために、長期間にわたって発生する。ヘドロ中の有機物の含有量を示す強熱減量は、一般的に5〜20重量%程度であり、底質浄化協会によると9〜13重量%が多いと報告されている(非特許文献1)。この有機物が、長期間にわたって微生物に分解されるに伴い、硫化水素などの悪臭が発生しつづける。このために、固化材で物理的な強度を向上させたヘドロを、盛土などとしてリサイクルした場合、リサイクルした場所で悪臭を長期間にわたって発生しつづけ、周辺環境に悪影響を及ぼすことになる。
【非特許文献1】
ヘドロ、No.59、27頁、1994年
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、河川、湖沼、内湾、運河などの底に堆積したヘドロからの悪臭の発生を即時に抑制するとともに、長期間にわたって消臭効果を持続することができるヘドロ処理剤及びヘドロ処理方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ヘドロに硝酸塩若しくは亜硝酸塩を添加することにより、ヘドロ中の有機物の微生物による分解が促進され、底泥が不活性化されて、長期間にわたる悪臭発生防止が可能となることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)ヘドロに、高分子凝集剤を100〜20,000mg/L添加して撹拌したのち、硝酸塩若しくは亜硝酸塩を添加することを特徴とするヘドロの悪臭抑制処理方法、
(2)ヘドロに、高分子凝集剤を100〜20,000mg/L添加して撹拌したのち、硝酸塩若しくは亜硝酸塩及び過酸化水素を添加することを特徴とするヘドロの悪臭抑制処理方法、
(3)ヘドロに高分子凝集剤を添加して撹拌することにより、ヘドロ中の微細粒子を凝集、架橋させて団子状に造粒する第1項又は第2項記載のヘドロの悪臭抑制処理方法、及び、
)硝酸塩若しくは亜硝酸塩の添加量が、ヘドロに対して、硝酸イオン若しくは亜硝酸イオンとして、100〜2,000mg/Lである第1〜3項のいずれか記載のヘドロの悪臭抑制処理方法、
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明のヘドロ処理剤は、硝酸塩若しくは亜硝酸塩を含有する。本発明のヘドロ処理方法においては、ヘドロに硝酸塩若しくは亜硝酸塩を添加する。
本発明に用いる硝酸塩としては、例えば、硝酸アンモニウム、硝酸ヒドロキシルアンモニウム、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸ルビジウム、硝酸セシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸ベリリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸バリウム、硝酸スカンジウム、硝酸イットリウム、硝酸マンガン、硝酸鉄、硝酸コバルト、硝酸ニッケル、硝酸銅、硝酸銀、硝酸亜鉛、硝酸アルミニウム、硝酸スズ、硝酸ビスマス、硝酸尿素、硝酸ヒドラジニウム、硝酸グアニジンなどを挙げることができる。本発明に用いる亜硝酸塩としては、例えば、亜硝酸アンモニウム、亜硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸ルビジウム、亜硝酸セシウム、亜硝酸マグネシウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸ストロンチウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸ニッケル、亜硝酸銅などを挙げることができる。ヘドロに硝酸塩若しくは亜硝酸塩を添加することにより、硝酸イオン若しくは亜硝酸イオンが硝酸塩還元菌の活動を抑制し、硫化水素などの悪臭物質の発生を防止するとともに、ヘドロの不活性化を促進する。
【0006】
本発明方法において、ヘドロに対する硝酸塩若しくは亜硝酸塩の添加量に特に制限はないが、硝酸イオン若しくは亜硝酸イオンとして、ヘドロに対して100〜2,000mg/Lであることが好ましく、200〜600mg/Lであることがより好ましい。硝酸塩若しくは亜硝酸塩の添加量が、硝酸イオン若しくは亜硝酸イオンとして、ヘドロに対して100mg/L未満であると、消臭効果が十分に発現しないおそれがある。硝酸塩若しくは亜硝酸塩の添加量が、亜硝酸イオン若しくは硝酸イオンとして、ヘドロに対して2,000mg/Lを超えると、硝酸塩若しくは亜硝酸塩による環境汚染を引き起こすおそれがある。
本発明方法によれば、硝酸塩若しくは亜硝酸塩の添加により、微生物によるヘドロ中の有機物の分解が促進され、水、炭酸ガス、メタンなどとなって、ヘドロが不活性な状態になり、安定化される。不活性な状態のヘドロからは、硫化水素、メチルメルカプタンなどの悪臭物質の発生は非常に少ないか、あるいは、ほとんど感じられない程度となる。
本発明方法においては、硝酸塩若しくは亜硝酸塩に加えて、ヘドロに過酸化水素を添加することができる。ヘドロに過酸化水素を添加することにより、ヘドロを十分に好気的な状態とし、硫化水素、メチルメルカプタンなどの臭気の原因となっている硫黄系化合物を酸化し、悪臭の発生を効果的に防止することができる。過酸化水素の添加量に特に制限はないが、ヘドロに対して100〜1,000mg/Lであることが好ましく、200〜500mg/Lであることがより好ましい。過酸化水素の添加量がヘドロに対して100mg/L未満であると、好気的な状態の発現が不十分となるおそれがある。過酸化水素の添加量は、ヘドロに対して1,000mg/L以下で十分に好気的な状態となり、通常はヘドロに対して1,000mg/Lを超える過酸化水素を添加する必要はない。
【0007】
本発明方法においては、ヘドロに硝酸塩若しくは亜硝酸塩を添加する前に、ヘドロに高分子凝集剤を添加して造粒することができる。使用する高分子凝集剤に特に制限はなく、例えば、アクリルアミドとジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート共重合体の四級化物、ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性物、キトサン、アクリロニトリルとN−ビニルホルムアミドの共重合体から誘導されるアミジン構造を有するカチオンポリマー、アクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合体などを挙げることができる。ヘドロに高分子凝集剤を添加して撹拌することにより、ヘドロ中の微細粒子を凝集、架橋して、ヘドロが自由水を取りこんで団子状に造粒する。この状態で硝酸塩若しくは亜硝酸塩又は硝酸塩若しくは亜硝酸塩及び過酸化水素を添加すると、添加された薬剤は、造粒されたヘドロ表面より水相に拡散し、造粒したヘドロ粒子に到達するために、消臭効果を高めることができる。
本発明方法において、高分子凝集剤の添加量に特に制限はないが、ヘドロに対して100〜20,000mg/Lであることが好ましく、500〜10,000mg/Lであることがより好ましい。高分子凝集剤の添加量がヘドロに対して100mg/L未満であると、ヘドロの造粒が不十分となるおそれがある。高分子凝集剤の添加量は、ヘドロに対して20,000mg/L以下で緻密なペレットが形成され、通常はヘドロに対して20,000mg/Lを超える高分子凝集剤を添加する必要はない。
硫化水素は、ヘドロ中の硫酸イオンが、硫酸塩還元菌によって還元されることにより生成する。酸素源としては、分子状酸素、硝酸態酸素、硫酸態酸素があり、分子状酸素のない状態を無酸素状態といい、さらに硝酸態酸素がない状態を嫌気状態という。硫酸塩還元菌は、嫌気状態でなくては硫化水素を生成しない。硫酸塩還元菌が、嫌気状態においてのみ硫酸イオンを還元することから、硫化水素は、嫌気状態でのみ発生する。嫌気状態のヘドロに、硝酸塩若しくは亜硝酸塩を添加することにより、ヘドロの酸化還元電位が高まり、より好気状態に移動することから、ヘドロから硫化水素が発生しなくなると考えられる。
【0008】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、実施例において、ヘドロの含水率は、ヘドロを105℃で3時間加熱して乾燥底泥としたときの減量から算出し、強熱減量は、この乾燥底泥を800℃で2時間加熱したときの減量から算出した。実施例及び比較例において、硫化水素濃度は、ガス検知管[(株)ガステック、4LL]を用いて測定した。また、生物化学的酸素消費量(BOD)は、ヘドロを試料としてJIS K 0102 21.に準じて測定した。
実施例1
湖沼のヘドロを用いて、悪臭の発生抑制効果を調べた。用いた湖沼のヘドロは、pH8.65、含水率75.3重量%、強熱減量12.8重量%であった。
500mLガラスビーカーにヘドロ200mLを採取し、亜硝酸ナトリウム40mg、すなわち200mg/Lを添加し、スパーテルを用いて混練し、ビーカーをポリ塩化ビニリデンフィルムで覆い、直ちにビーカー内の気相中の硫化水素濃度を測定した。硫化水素濃度は、22ppmであった。5分後、30分後、60分後及び24時間後に、同様にしてビーカー内の気相中の硫化水素濃度を測定したところ、それぞれ16ppm、0ppm、0ppm及び15ppmであった。
24時間後のヘドロを試料としてBODを測定したところ、92mg/Lであった。
実施例2
500mLガラスビーカーに実施例1と同じ底泥200mLを採取し、高分子凝集剤[栗田工業(株)、クリサットC−333L]1,000mgを添加して撹拌した。ヘドロが、団子状に造粒した。
造粒したヘドロに10重量%過酸化水素水600mgを添加して撹拌し、10重量%硝酸ナトリウム水溶液480mgを噴霧した。ビーカーをポリ塩化ビニリデンフィルムで覆い、直ちにビーカー内の気相中の硫化水素濃度を測定した。硫化水素濃度は、22ppmであった。5分後、30分後、60分後及び24時間後に、同様にしてビーカー内の気相中の硫化水素濃度を測定したところ、それぞれ14ppm、0ppm、0ppm及び14ppmであった。
24時間後の底泥を試料としてBODを測定したところ、86mg/Lであった。
比較例1
亜硝酸ナトリウムを添加しないこと以外は、実施例1と同様にして、ビーカー内の気相中の硫化水素濃度と、底泥のBODを測定した。
0分後、5分後、30分後、60分後及び24時間後の硫化水素濃度は、それぞれ22ppm、20ppm、21ppm、21ppm及び22ppmであった。BODは、250mg/Lであった。
実施例1〜2及び比較例1の結果を、第1表に示す。
【0009】
【表1】
Figure 0004707012
【0010】
第1表に見られるように、亜硝酸ナトリウムを添加しない比較例1では、硫化水素濃度が常に20〜22ppmであるのに対して、亜硝酸ナトリウムを添加した実施例1においては、30分後には硫化水素が検出されなくなり、24時間後も比較例1に比べて低い硫化水素濃度を保っている。また、底泥に高分子凝集剤を添加して造粒したのち、過酸化水素と硝酸ナトリウムを添加した実施例2では、硫化水素濃度が、実施例1よりもさらに低くなっている。
24時間後の底泥のBODが、実施例1及び実施例2の方が比較例1よりも小さいことから、実施例1及び実施例2では微生物による有機物の好気的分解が進み、底泥が不活性化されていることが分かる。
【0011】
【発明の効果】
本発明方法によれば、ヘドロに硝酸塩若しくは亜硝酸塩を添加することにより、ヘドロからの悪臭の発生を即時に抑制するとともに、ヘドロの不活性化を促進し、長期にわたって消臭効果を得ることができる。

Claims (4)

  1. ヘドロに、高分子凝集剤を100〜20,000mg/L添加して撹拌したのち、硝酸塩若しくは亜硝酸塩を添加することを特徴とするヘドロの悪臭抑制処理方法。
  2. ヘドロに、高分子凝集剤を100〜20,000mg/L添加して撹拌したのち、硝酸塩若しくは亜硝酸塩及び過酸化水素を添加することを特徴とするヘドロの悪臭抑制処理方法。
  3. ヘドロに高分子凝集剤を添加して撹拌することにより、ヘドロ中の微細粒子を凝集、架橋させて団子状に造粒する請求項1又は請求項2記載のヘドロの悪臭抑制処理方法。
  4. 硝酸塩若しくは亜硝酸塩の添加量が、ヘドロに対して、硝酸イオン若しくは亜硝酸イオンとして、100〜2,000mg/Lである請求項1〜3のいずれか記載のヘドロの悪臭抑制処理方法。
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