JP4704507B1 - 粘着シートのインフレーション押出成形装置およびその方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】樹脂材料を導入した金型120からインフレーション法により樹脂材料10を押出して所定の径の円筒状に膨大せしめた後、所定角度で相対向した2つの安定板200A、200Aの間を上記円筒状樹脂材料10を通過させて粘着シートを作製する粘着シートインフレーション押出成形装置300において、安定板200Aが、表面に複数個の窪みを設けて各窪みの開口にエアパイプの吹き出し口を臨ませてなるエア浮揚部を備え、かつその安定板200Aを一方向に回転するようにした。
【選択図】図1
Description
ここで、「シート」とは所定の厚み(例えば、200μm)以上の薄層物を言い、「フィルム」とは前記所定の厚み未満の薄層物を意味しているが、以下の記載では、両者含めて単に「シート」と総称する。
インフレーション押出成形方法によるシートの製造では、ガイドローラ群を用いた従来方法1がある。これは、押出機から押し出されて円筒状に膨大したシートを複数列のガイドローラ群で構成される安定板で偏平にしつつ移送するものであって、効率よくシートを製造することが可能となることから、従来から広く利用されている。
しかしながら、普通のシートと違って、一方に粘着剤層を有する粘着シートをインフレーション押出成形法によって製造する場合、円筒状に膨大しつつある粘着性円筒状体を複数列のガイドローラ群で偏平にしつつ搬送しようとすると、粘着性円筒状体の走行方向とガイドローラの回転方向が一致しないことが生じ、粘着性円筒状体の場合、その方向のズレをガイドローラの表面で滑って修正することができにくいため、粘着テープ表面が波打ったり、シワ(皺)が発生したりすることがあった。
そこで、従来方法1の改良として、インフレーション法により押し出された粘着シート等の樹脂材料を偏平に折り畳んだときにシワ等の発生を抑制できる従来方法2が開発された(特許文献1参照)。
それによれば、複数個のローラを一列に配列したものを複数列配列して安定板を構成し、その安定板の各ローラの向きを、樹脂材料が偏平な楕円状に変形する際に展開する方向と略同一方向としたものである。
これによって、インフレーション法により押し出された粘着シートの樹脂材料を容易に偏平な楕円状に変形させ、折り畳まれた後にシワ等の発生を大幅に抑制できるようになった。
従来方法2によれば、従来方法1と比べると折り畳まれた後にシワ等の発生を大幅に抑制できるようになった。このように、シートの走行方向とローラの回転方向に僅かの差がある場合、従来のような粘着力の低い粘着シートであればシートがローラ上で滑って向きが若干修正されてシートの本来の走行方向にシートが向かうことができたので問題がなかった。
しかしながら、従来のような被着体がフラットな場合には従来の粘着シートで何ら問題はなかったが、被着体が粗面のような場合には粘着性を上げる必要が生じた。このような粘着性を有する粘着剤が最表面に形成されている場合、粘着剤がローラ上で滑り難くなって向きが修正できず、したがって、シートが本来のシート走行方向に向かうことができにくくなり、シワの発生が散見されるようになった。
さらに、前記安定板の前記エア浮揚部を有する側の表面を多孔質体によって覆ったことを特徴とするものである。
また、前記2つの安定板間を通過させた所定幅の粘着シートをカッターで2枚に分けることを特徴とするものである。
そして、本発明は粘着シートに関し、上記粘着シートインフレーション押出成形方法によって作られることを特徴とするものである。
(1)膨大した円筒状の樹脂材料の通過方向が円筒状の樹脂材料のそれぞれの部位によって各々微妙に異なるけれども、本発明によれば、樹脂材料に向けてエアを吹きつける安定板を用いることにより、エアが樹脂材料を非接触で浮揚させているので、樹脂材料の各部位はそれぞれの通過方向に移動できるため、表面にシワ等が発生せずに偏平な楕円状に折り畳むことが容易となる。
(2)しかも、エアが非接触で浮揚させているので、安定板の表面に粘着剤層が粘着しなくなり、従来行っていた安定板の表面の掃除などの定期的なメンテナンスが不要となる。
(3)従来の安定板ロールでは、安定板ロールに付着した異物(浮遊粉塵等)が製品粘着面に付着して製品品位を低下させる問題があったが、本発明では非接触で浮揚させているので、安定板側に付着した異物が製品粘着面に付着することがないため、製品品位の低下を防止することができる。
(4)従来の安定板ロールでは、安定板ロールの回転ムラにより、製品表面に擦り傷が発生し、製品品位を低下させる問題があったが、本発明では非接触で浮揚させているので、回転ムラによる擦り傷の発生が起こり得ないため、製品品位の低下を防止することができる。
(5)また、金型から出てくる樹脂の流量偏差(金型形状起因、金型温度分布など)により、その厚みが変化して、厚み分布を持ったシートとなる。厚み分布を持ったシートをそのまま巻き取って製品化された従来のロールではロールの幅方向の特定部位が他の部位と比べて盛り上がった凹凸のある状態で長時間保管されるので、シート自体にその凹凸が記憶されることになり、使用に際してロールからシートを引き出すと、シートに凹凸ができているので被着体に貼り付けたときに凹凸部分がシワとして残ることとなったが、本発明では、安定板を回転させるようにしたので、シートをロール状に巻き上げても、厚み分布をロールの幅方向に分散できるため、ロール状に巻き上げた際、ロール径を均一化でき、特定の部位に凹凸が記憶されることはない。したがって、使用に際してロールからシートを引き出しても、シートには凹凸が形成されていないので、被着体に貼り付けたときにシワが出ることはない。
(6)さらに、安定板のエア浮揚部を有する側の表面を多孔質体によって覆った場合には、エア浮揚部のエア吹き出しから吹き出されたエアの勢いが一旦多孔質体によって抑制されるため、より均一に吹き出され、表面に均等なエア層が形成できる。
また、本発明は、樹脂材料を安定板に非接触で浮上させているので、粘着性のシートに対してもくっつかなくなり、シワが発生しない。
〈押出機110〉
図1において、溶融状態の基材層用樹脂材料10Kを収納した樹脂供給口110Hから押出機110によって押し出された基材層用樹脂材料10Kが金型(ダイス)120に導入される。同じく、粘着剤層用樹脂材料10Nを収納した樹脂供給口110Hから押出機110によって押し出された粘着剤層用樹脂材料10Nが金型120に導入される。同じく、背面層用樹脂材料10Hを収納した樹脂供給口110Hから押出機110によって押し出された背面層用樹脂材料10Hが金型120に導入される。
図2は金型120の内部の各樹脂材料の流路を示す断面図である。吹き出し口120Fへ通じる通路を通過した樹脂材料(背面層用樹脂材料10H、基材層用樹脂材料10K、粘着剤層用樹脂材料10N)は、同心円状に形成された環状の吹き出し口から上方に同心円筒状となるように押し出され、かつ、金型120には空気導入管(図示省略)が形成されており、この空気導入管を介して円筒状の樹脂材料10H、10K、10Nの内部に空気を吹き込み、樹脂材料10H、10K、10Nを所定径の肉厚の円筒状体から大径の肉薄の円筒状体に膨大させるようにしている。図2においては、環状の上方の吹き出し口から、粘着剤層用樹脂材料10Nを外層とし、基材となる基材層用樹脂材料10Kを内層とし、背面層用樹脂材料10Hを背面層となって、金型120内で上昇するにしたがって互いに接近し、金型120の吹き出し口120Fから吹き出される。吹き出されたシート10は内側から空気が吹き込まれるため互いに密着状態で所定径に膨大された肉薄の円筒状体となって吹き出している。
粘着性円筒状体をなす樹脂材料10を形成する本実施形態の場合は、粘着剤層用樹脂材料10Nを外層とし、基材となる基材層用樹脂材料10Kが内層とし、背面層用樹脂材料10Hを背面層となるように各々の樹脂材料をそれぞれの通路に導入し、金型120内で上昇するにしたがって互いに接近し、金型120の吹き出し口から押し出されるときは3層の樹脂材料は内側から外側に、背面層用樹脂材料10H、基材層用樹脂材料10K、粘着剤層用樹脂材料10Nの順で互いに密着状態で大径の円筒状に膨大されたシートとなっている。粘着剤として、ここでは特に高粘着剤を用いている。これらの材料については、後で詳述する。
〈ガイド130〉
円筒状に噴出した樹脂材料10(10H、10K、10N)は、前後左右にぶれないようにガイド130で位置決めガイドされ、円筒状に膨大された樹脂材料はぶれることなく上方に移動していく。
円筒状に膨大した樹脂材料10は、所定角度で対向した安定板200A、200A間に導入され、ここで偏平な楕円状に狭圧されたあと、折り畳まれながら、1対のピンチロール200P、200Pに導かれる。
2枚の安定板200A、200Aは、金型120から噴出して円筒状に膨大した樹脂材料10を偏平な楕円状に変形できるように、樹脂材料10の進行方向に対してその通路を狭めるようにして所定角度(開度)θ(図4(A)参照)で相対向して配置されている。
安定板200A、200A間の開度θは、円筒状に膨大した樹脂材料10の安定板200A、200A間での変形勾配等を考慮する必要があり、樹脂材料10の粘度によって適宜選択することが好ましく、10°〜45°、好ましくは10°〜30°、より好ましくは10°〜25°の範囲とすることが好ましい。
図3に示すように、安定板200A、200Aはそれぞれ矩形状の板であり、表面にエア浮揚部20Aを多数個備えており、これによってシートが安定板200Aと非接触で安定板200A、200A間を通過できるのが特徴である。
各エア浮揚部20Aは、安定板200Aの表面にそれぞれ形成された矩形状の窪み20Kと、この窪み20Kの中央近傍に設けられたエア吹き出し口20Bとを備えている。エア吹き出し口20Bはエアパイプ20Pに繋がっている。エア吹き出し口20Bから噴出するエアは、固定側のエア供給源(図示省略)からロータリージョイント(図示省略)を介して回転装置側のエアパイプ20Pに送られ、このエアパイプ20Pを経てエア吹き出し口20Bに達する。安定板200Aの表面にそれぞれ矩形状の窪み20Kが形成されているので、エア吹き出し口20Bから噴出したエアは窪み20Kの中に広がり、窪み20Kの中に広がったエアがシートを面圧として浮揚させるように働くので、エア吹き出し口20Bは以下に述べるようにそれほど多くなくても、シート全体を浮揚することができる。
安定板200Aは横方向および縦方向にエア浮揚部20Aを複数個設けている。図3では、横方向に3個、縦方向に4個、合計で12個を隙間なく密接に配置している。また、窪み20Kの中からエアがシートを面圧として浮揚させるので、エア吹き出し口20Bの数は少なくても、シートを安定板200Aから非接触で浮揚させることができる。したがって粘着剤層が安定板200Aに接触することがなくなり、シートの表面にシワ等が発生せず、偏平な楕円状に折り畳むことが容易となる。
図4は安定板を通過するシートの搬送方向を説明する概念図で、(A)安定板近傍の円筒状シートの正面図、(B)はエア浮揚部20Aのシートの搬送方向を説明する部分拡大図である。
図4(A)では、安定板200Aを2枚上方に向けて互いに開度θで接近するように配置している。円筒状に膨大した樹脂材料10が2枚の安定板200Aの上方にあるピンチロール200Pによって引き上げられるとき、2枚の安定板200Aの間を通過していくうちに円筒状から徐々に偏平な楕円状に変形していく。
図4(B)に示すように、シートのある部位10Aは真上に引き取られる力が働くと共に安定板200A間においては円筒状から偏平な楕円状に変形する力が水平方向に加わるので、その部位10Aは引取方向(真上方向)ベクトルと展開方向(水平方向)ベクトルとの合成ベクトルであるバブル移動合成ベクトルの方向に移動することになるが、前述のとおり、エア浮揚部20Aはその面全体からのエアでシートを浮揚させるため、エア吹き出し口20Bの数は少なくても、シートを安定板200Aから非接触で容易に浮揚させることができ、したがってまた、シートの各部位は容易にバブル移動合成ベクトルの方向に移動することができる。したがって、シートの搬送方向ベクトルとバブル移動合成ベクトルの方向が一致するので、シート部位10Aにねじれが生じず、しかも非接触なので、シート部がエア浮揚部20Aに触れることがなく、シートをキズつけることなく、シワを発生させたりすることがない。
しかも、エアが非接触で浮揚させているので、安定板の表面に粘着剤層が粘着しなくなり、従来行っていた安定板の表面の掃除などの定期的なメンテナンスが不要となる。
図1に戻って、図1ではピンチロール200P、200Pの間を通って扁平に折り畳まれた樹脂材料10のその折り畳まれた両端部の位置する箇所にカッター(図示省略)を設けている。扁平に折り畳まれた樹脂材料10はこのカッターにより、図1のように左右に2つに切断され、それぞれ左右のガイドロール200R、200Rを介してそれぞれの末端にある巻き取りロール(図示省略)に巻き取られる。
このように、本発明によれば、折り畳まれた樹脂材料の両端をカッターで切断することで、1回のインフレーションで従来法よりも2倍のシートを製造することができ、生産性が著しく向上する。
図1のインフレーション押出成形装置は、固定部と回転部とから成っている。図5は図1のインフレーション押出成形装置の固定部と回転部を分かり易くするため、回転装置を上方に分離して示した模式概略図である。
図5において、100は円筒状樹脂材料形成装置(固定部)であり、200は一方向回転装置(回転部)である。一方向回転装置200は一方向回転体200Dの上に2台の安定板200A、200Aを固定しており、一方向回転体200Dがモータ(図示省略)でゆっくり一方向に回転することで、2台の安定板200A、200Aおよび巻き取り部(ガイドロール200R)も同じくゆっくり一方向に回転する。
円筒状樹脂材料形成装置100から上昇してきた樹脂材料10は一方向回転体200Dの中央に開けられている開口部200Hから安定板200A、200Aの間に入って上記のように扁平にされながら、かつ、樹脂材料10を中心に一方向回転体200Dが回転するので安定板200A、200Aも回転し、したがって、樹脂材料10の折り畳み両端は図1で紙面の手前と奥に形成されるが、次に一方向回転体200Dが矢印方向に90°回転すると樹脂材料10の両端は紙面の左右に形成されることになり、さらにそれから一方向回転体200Dが矢印方向に90°回転すると樹脂材料10の両端は紙面の手前と奥に形成され、さらにそれから一方向回転体200Dが矢印方向に90°回転すると樹脂材料10の両端は紙面の左右に形成され、さらにそれから一方向回転体200Dが矢印方向に90°回転すると図1の状態に戻る。このように折り畳み両端が円筒状樹脂材料の全周に亘って移動するため、円筒状樹脂材料の厚みが全周に亘り均等となり、巻き取った際に後述の凸部は生じない。
図6は安定板を回転させた場合の安定板から吹き出すエアにより浮揚するシートの搬送方向を説明する概念図で、(A)は安定板の横断面図、(B)は正面図である。
図6(A)に示すように、安定板200Aが矢印方向に回転すると、それと近接しているシート部位10Aも回転方向(水平方向)に力を受けることとなる。
したがって、シート部位10Aの受けるバブル移動合成ベクトルは図4(B)の合成ベクトルにさらに「回転方向ベクトル」が加わるので、引取方向ベクトルから大きく外れた向きとなる。
しかしながら、本発明で採用したエア浮揚部20Aによるエア浮揚でシートの移動方向が自由なので、バブル移動合成ベクトルの方向が引取方向ベクトルから大きく外れた向きであってもその方向に移動することとなり、安定板200Aが回転しても、シワ発生などの問題は生じない。
エア浮揚部付き安定板の実施形態2は、図7に示すように、実施形態1と同じく、それぞれ矩形状の板であり、表面にエア浮揚部20Aを多数個備えており、各エア浮揚部20Aは、安定板200Aの表面にそれぞれ形成された矩形状の窪み20Kと、この窪み20Kの中央近傍に設けられたエア吹き出し口20Bとを備えている。エア吹き出し口20Bはエアパイプ20Pに繋がっている。そして、実施形態2では、安定板210A、210Aのエア浮揚部を有する側の表面を多孔質体21によって覆っているのが特徴である。
これによって、エア浮揚部20Aのエア吹き出し口20Bから吹き出されたエアの勢いが一旦多孔質体21によって抑制されて、その後、多孔質体21の内部の多孔質通路を介して吹き出るようになるため、実施形態1よりもさらに均一に吹き出され、表面に均等なエア層が形成できる。
多孔質体21の材質は特定されないが、ステンレス、チタン、銅、ニッケル、アルミニウム、およびこれらの合金などの金属、およびアルミナ(Al2O3)や炭化珪素(SiC)などのセラミックス焼結体、ならびにガラス繊維、さらにはPE,PP、EVA、PA、PMMA、AS、ABS、PC、PVC、PVDF、PTFEなどの高分子材料が好ましい。
多孔質体21の気孔径としては、0.1−1000μm、好ましくは1−500μm、さらに好ましくは10−50μmのものがよい。
多孔質体21の気孔率としては、10−80%、好ましくは10−50%のものがよい。
多孔質体21の厚さとしては、5−30mm、好ましくは5−20mm、さらに好ましくは8−15mmのものがよい。
図8は、従来装置において、一部だけ厚みの異なる部位(ここでは仮に凸部Rとする。)が生じる金型から吹き出される偏平な楕円状体に変形して成るシートを説明する図で、(I)は偏平な楕円状体に変形して成るシートの平面図で、(A)は一方の平面図、(B)は反対側の平面図である。(II)は(I)のシートをロール状に巻き上げたロールの正面図である。
金型の吹き出し口に温度分布があって円筒状シートの周方向の粘度が変化したり、粘着剤量が偏って出たりしている場合、シートの厚みが変化して一部だけ厚みの異なる部位(図8では凸部Rとした。)が生じることがある。この場合、安定板200Aを従来のように固定したままの場合は、図8(I)のように幅方向のα°の一箇所だけ厚みの異なる部位がシートの長さ方向にシートの縁と平行に形成される。したがってこのようなシートを巻きあげて図8(II)のようにロール状に巻くと、円筒状のロールの表面のα°の部位が周方向に盛り上がる凸部が発生する。
このような凸部が生じたロールの状態で保管されると、シート自体にこの凹凸が記憶されてしまう。したがって、使用時にシートをロールから引き出して被着体に貼ると、シート自体に残っている凹凸が被着体にそのままシワとなって残ることとなった。
一方、特許文献2記載の装置では安定板を180度〜360度で往復回転させているので厚みの異なる部位凸部Rが横方向に拡散して均等化されるため、従来装置の図8(II)のような凸部はなくなる。しかしながら特許文献2記載の装置でも新たに径差が発生する。図9は特許文献2記載の装置で270度往復回転の場合において、一部だけ厚みの異なる部位が生じる金型から吹き出される偏平な楕円状体に変形して成るシートを説明する図で、(I)は偏平な楕円状体に変形して成るシートの平面図で、(A)は一方の平面図、(B)は反対側の平面図である。(II)は(I)のシートをロール状に巻き上げたロールの正面図である。
《折り返しまでの領域に凸部はなくなる》
図9では安定板を270度回転させているので、その回転中は(I)のように幅方向の一か所だけ厚みの異なる凸部Rはシートの長さ方向すすむにつれてシートの縁に対して斜めに移動していく。したがってこの間は凸部Rが幅方向に拡散するので、ロール状に巻き上げると、「α°〜270°+α」の区間は図9(II)のKのように均等化されるため凸部(図8)はなくなる。
《しかし非折り返し領域との境に径差が生じる》
ところが「270°+α」までくると安定板がUターンするため、ロール状に巻き上げると、「270°+α」〜「0°+α」の間は凸部Rが幅方向に拡散しないので、(II)のHの部位のようにロールの径が均等化部位Kと比べて小さい部位が生じて、その境の2か所に径差(K−H)ができる。
《折り返し点に新たな凸部Tが生じる》
しかも、往復回転の場合は、Uターン時に安定板の回転が停止するがインフレーションは停止しないので、折り返し時点α°および270°+α°での凸部Rは他の部位の凸部Rと比べて長い時間t1その部位に留まることとなり、その部位だけ長さ方向に長い凸部が形成されることとなる。そして、この凸部は幅方向に常に同じ部位に形成されるので、ロールの状態に巻き上げた場合、最終的に図9(II)のように、t1時間継続することによる新たな凸部Tが2箇所の段部の位置に生じる。
このような径差および凸部Tが生じたロールの状態で保管されると、シート自体にこの凹凸が記憶され、したがって、使用時にシートをロールから引き出して被着体に貼ると、シート自体に残っている凹凸が被着体にそのままシワとなって残ることとなった。
図10は特許文献2記載の装置で360度往復回転の場合において、一部だけ厚みの異なる部位が生じる金型から吹き出される偏平な楕円状体に変形して成るシートを説明する図で、(I)は偏平な楕円状体に変形して成るシートの平面図で、(A)は一方の平面図、(B)は反対側の平面図である。(II)は(I)のシートをロール状に巻き上げたロールの正面図である。
《非折り返し領域がないため径差は発生しない》
図10では安定板を360度でUターンさせているので、凸部Rが幅方向に拡散して図10(II)のKのように均等化されるため、図9(II)のような径差(K−H)は解消する。
《折り返し点に新たな凸部Tが生じる》
しかしながら、図9(II)で説明したように、Uターン時に安定板の回転が停止するがインフレーションは停止しないので、折り返し時点のαでの凸部Rは他の部位の凸部Rと比べて長い時間t1継続することによる新たな凸部Tが折り返し部位に生じる。
このような凸部Tが生じたロールの状態で保管されると、シート自体にこの凹凸が記憶され、したがって、使用時にシートをロールから引き出して被着体に貼ると、シート自体に残っている凹凸が被着体にそのままシワとなって残ることとなった。
しかしながら、本発明では安定板200Aを一方向に連続回転させるようにしたので、図11(I)のように厚みの異なる部位凸部Rが幅方向に(Uターンすることなく)連続して移動するため、偏平な楕円状体の両端をカッターで切断して2枚のシートに分け、それぞれをロール状に巻きあげても、図11(II)のように、厚みの異なる凸部Rが幅方向に拡散してKのように均等化されるため、凸部(図8)、径差(図9のK−H)および凸部T((図9および図10参照)はなくなる。
したがって、使用時にシートをロールから引き出して被着体に貼っても、シート自体に凹凸がないので被着体にシワが発生することはない。
このように、安定板200A、200A間において樹脂材料10は容易に展開し、不定期なシワの発生が抑えられることから、各種樹脂材料を成形することが可能である。成形可能な樹脂材料としては、例えば、ホモポリプロピレン、エチレンを共重合成分とするブロック系、ランダム系等のプロピレン系ポリマー、低密度、高密度、リニア低密度等のエチレン系ポリマー、ポリスチレン、ポリエステル、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体などのエチレンと他モノマーとの共重合体であるオレフィン系ポリマーやスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン・イソプレンブロック共重合体(SI)、スチレン・ブタジエンブロック共重合体(SB)、スチレン・エチレンプロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・エチレンブチレンプロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン・エチレンブチレンブロック共重合体(SEB)、スチレン・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体(SEBC)、オレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体(CEBC)、スチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン・ブタジエンランダム共重合体(SBR)、水添スチレン・ブタジエンランダム共重合体(HSBR)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・プロピレンゴム(EPR)、エチレン・プロピレン・αオレフィンゴムなどが挙げられる。もしくはこれらの1種もしくは2種以上を混合したものであってもよい。
また、以上のように、各種樹脂材料の成形が可能であるとともに、例えば、粘着シート等のように、一方の面に粘着剤層が設けられているような場合であってもシワの発生のない粘着シートを形成することが可能である。
粘着剤層用樹脂材料としては、例えば、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン・イソプレンブロック共重合体(SI)、スチレン・ブタジエンブロック共重合体(SB)、スチレン・エチレンプロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・エチレンブチレンプロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン・エチレンブチレンブロック共重合体(SEB)、スチレン・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体(SEBC)、オレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体(CEBC)、スチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン・ブタジエンランダム共重合体(SBR)、水添スチレン・ブタジエンランダム共重合体(HSBR)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・プロピレンゴム(EPR)、エチレン・プロピレン・αオレフィンゴムなどが挙げられる。もしくはこれらの1種もしくは2種以上を混合したものであってもよい。
さらに、粘着剤となる樹脂材料として、SEEPS(スチレン・エチレン‐エチレン/プロピレン、スチレンのブロック共重合体が挙げられる。
さらに、粘着剤の他に基材としても用いることができるものとして、熱可塑性ウレタンや、以下に述べるアクリルブロック共重合体を用いることができる。
粘着剤層用樹脂材料を構成するアクリル系ブロック共重合体としては、メタクリル酸エステルを主成分とするメタクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル酸エステルを主成分とするアクリル系重合体ブロック(b)からなるアクリル系ブロック共重合体(A)が挙げられる。
アクリル系ブロック共重合体(A)の構造は、線状ブロック共重合体、分岐状(星状)ブロック共重合体のいずれか、またはこれらの混合物であってもよい。このようなブロック共重合体の構造は、必要とされるアクリル系ブロック共重合体(A)の物性に応じて適宜選択されるが、コスト面や重合容易性の点で、線状ブロック共重合体が好ましい。
また、粘着性をさらに向上させるため、上記樹脂材料に添加する粘着付与剤(粘着付与樹脂)としては、例えば、脂肪族系や芳香族系、脂肪族・芳香族共重合体系や脂環式系等の石油系樹脂、クマロンインデン系樹脂やテルペン系樹脂やテルペンフェノール系樹脂やアルキルフェノール系樹脂やロジン系や重合ロジン系樹脂やキシレン系樹脂、あるいはそれらの水添系樹脂などの粘着剤で公知の適宜なものが挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
〈軟化剤〉
同様に、軟化剤としては、例えば、低分子量のポリイソブチレン、ポリブテン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン及びこれらの片末端もしくは両末端にOH基やCOOH基やエポキシ基等の反応基を持った誘導体、プロセス油、ナフテン油、ひまし油、アマニ油、大豆油、フタル酸エステル系可塑剤やリン酸エステル系可塑剤、液状脂肪族系石油樹脂など適宜なものの1種又は2種以上を用いることができる。
基材層用樹脂材料としては、例えば、ホモポリプロピレン、エチレンを共重合成分とするブロック系、ランダム系等のプロピレン系ポリマー、低密度、高密度、リニア低密度等のエチレン系ポリマー、ポリスチレン、ポリエステル、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体などのエチレンと他モノマーとの共重合体であるオレフィン系ポリマーやスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン・イソプレンブロック共重合体(SI)、スチレン・ブタジエンブロック共重合体(SB)、スチレン・エチレンプロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・エチレンブチレンプロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン・エチレンブチレンブロック共重合体(SEB)、スチレン・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体(SEBC)、オレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体(CEBC)、スチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン・ブタジエンランダム共重合体(SBR)、水添スチレン・ブタジエンランダム共重合体(HSBR)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・プロピレンゴム(EPR)、エチレン・プロピレン・αオレフィンゴム等とが挙げられる。
基材層用樹脂材料としては、熱可塑性ポリエステル(単体での使用が可能である。)、ホモポリプロピレン(ランダム、ブロックは記載済みだがホモも使える)、エチレン‐ビニルアルコール共重合体(EVOH)がある。
基材層用樹脂材料としてさらに、上述の熱可塑性ウレタンやアクリルブロック共重合体を用いることもできる。
基材層用樹脂材料に含有され得る添加剤としては、上記の添加剤の他にも、例えば、紫外線吸収剤、耐熱安定化剤、充填剤、滑剤等が挙げられる。上記基材層用樹脂材料に含有される添加剤の種類、数および量は、目的に応じて適切に設定され得る。
上記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾ−ル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾェ−ト系化合物等が挙げられる。上記紫外線吸収剤の含有量は、積層フィルムの成形時にブリードアウトしない限りにおいて、任意の適切な含有量を採用し得る。代表的には、基材層中の熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.01重量部〜5重量部である。
上記耐熱安定化剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物およびシアノアクリレート系化合物等が挙げられる。上記耐熱安定化剤の含有量は、積層フイルムの成形時にブリードアウトしない限りにおいて、任意の適切な含有量を採用し得る。代表的には、基材層中の熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.01重量部〜5重量部である。
上記充填剤としては、例えば、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、硫酸バリウム、ウイスカー、水酸化マグネシウム等の無機充填剤が挙げられる。充填剤の平均粒径は、好ましくは、0.1μm〜10μmである。充填剤の含有量は、基材層中の熱可塑性樹脂100重量部に対して、好ましくは、1重量部〜200重量部である。
そして、金型120内に送り込まれたこれら粘着剤層用樹脂材料と基材層用樹脂材料を、粘着剤層用樹脂材料が外層となるようにして、金型120に設けられている環状のリングから共に押し出す。ここで、粘着剤層を外層となるようにするのは、安定板200A、200A間で折り畳まれた後に内面で粘着することを防止するためである。
以上のように、本発明に係る粘着シートインフレーション押出成形装置によれば、粘着シートを含む各種樹脂材料をシワの発生のない高品質に成形することが可能となる。
基材層形成材料として、ブロックポリプロピレン(日本ポリプロ社製 ウィンテックWFX6)をΦ60mmスクリュー押出機110の樹脂供給口110Hに供給し、粘着剤層形成材料として、スチレンーエチレンーブチレンースチレンブロック共重合体(SEBS)(クレイトンポリマー社製 G1657)75部と粘着付与剤(荒川化学工業社製 アルコンP−125)25部からなる100重量部を別のΦ60mmスクリュー押出機110の樹脂供給口110Hに供給し、粘着剤用押出機回転数15rpm、基材用押出機回転数140rpmで運転し、これらを金型120に吐出させた。金型120の直径は400mmで、環状の吹き出し口が同心円状に2重に設けられており、各吹き出し口のギャップは3.0mmである。そして、粘着剤用押出機の設定温度を平均220℃、基材用押出機の設定温度を平均180℃、金型120の設定温度を220℃としてこれら各樹脂材料を共押出成形した。共押出成形され円筒状に膨大した樹脂材料10は安定板200A、200A間を通過して偏平な楕円状に折り畳むように成形される。
安定板200A、200Aとしては、図3に示したもの、すなわち、エア浮揚部20Aを横方向に3個、縦方向に4個、合計で12個設けたものを用いた。
この安定板間を通過させることによって、厚さ110μm×幅1350mmの2枚の粘着シートを得ることができた。これら各シートは、表面にシワもなく、また、各シートは厚みも略均等であり、高品質の粘着シートであった。
比較例としては、特許文献1に記載されたロールを用いた安定板を使用した。すなわち、安定板としては、傾斜角αが6°となるように、左右対称に配列されたPTFEからなる17mm幅、ロール径Φ46mmの狭幅のロールを一列に56個設け、各ロール間の取り付け間隔を55mmとし、ロール間ギャップが9mmとなるように8段配置された第1ロール部と、12mm幅、ロール径Φ38mmの狭幅のロールを一列に90個設け、各ロール間の取り付け間隔を50mmとし、ロール間ギャップが12mmとなるように2段配置された第2ロール部と、で構成されている。なお、ここで、第1ロール部と、第2ロール部との隙間は8mmとなるように配置している。そして、これら各狭幅のロールが千鳥状に配列され、開度θが24°に設定されたものを使用した以外、実施例1と同一の樹脂材料を同様の条件で成形した。これによって、厚さ110μm×幅1350mmの2枚の粘着シートを得ることができた。
しかしながら、これら各シートは、表面に不定期なシワが発生した。
10A 近接しているシート部位
10K 基材層用樹脂材料
10N 粘着剤層用樹脂材料
10H 背面層用樹脂材料
20A エア浮揚部
20B エア吹き出し口
20K 窪み
20P エアパイプ
100 円筒状樹脂材料形成装置
110 押出機
110H 樹脂供給口
120 ダイス(金型)
120F 吹き出し口
130 ガイド
200 一方向回転装置
200A 実施形態1の安定板
210A 実施形態2の安定板
200D 一方向回転体
200P ピンチロール
200R ガイドロール
300 本発明に係るインフレーション押出成形装置
Claims (5)
- 複数の押出機と、
前記複数の押出機からそれぞれ押し出された粘着剤および樹脂材料(以下、「樹脂材料」と総称する。)をそれぞれ導入してインフレーション法により所定の径に膨大せしめた複数の樹脂材料層から成る円筒状体にして吹き出し口から押し出す金型と、
前記金型から押し出しされた前記円筒状体を通過させて所定幅の偏平な楕円状体に変形するための所定角度で相対向した2つの安定板と、
を備えたシート又はフィルム(以下、「シート」と総称する。)を作製する粘着シートインフレーション押出成形装置であって、
前記安定板が前記円筒状体および偏平な楕円状体に向けてエアを吹きつけるエア浮揚部を複数個有して成るものであり、かつ、前記安定板が前記円筒状体の中心軸を中心に一方向に回転するものである粘着シートインフレーション押出成形装置において、
前記エア浮揚部が、前記安定板の表面に形成された窪みと、前記窪みの中央近傍に設けられたエア吹き出し口とを有することにより、前記エア吹き出し口から噴出したエアが前記窪みの中に広がり、前記シートを面圧として浮揚させるようにすることを特徴とする粘着シートインフレーション押出成形装置。 - 前記安定板の前記エア浮揚部を有する側の表面を多孔質体によって覆ったことを特徴とする請求項1記載の粘着シートインフレーション押出成形装置。
- 複数の押出機からそれぞれの樹脂材料を押し出して金型内に導入し、前記金型からインフレーション法により前記それぞれの樹脂材料を所定の径の円筒状体に膨大せしめた後、前記上方に向けて互いに接近するように所定角度で相対向した2つの安定板間を通過させて所定幅の粘着シートを作製するインフレーション押出成形方法であって、前記安定板の間を通過させつつ前記安定板を前記円筒状体の中心軸を中心に一方向に回転させるようにしたインフレーション押出成形方法において、
前記安定板として、前記安定板の表面に形成された窪みと前記窪みの中央近傍に設けられたエア吹き出し口とを有するエア浮揚部を備えるものを用い、前記エア浮揚部の前記エア吹き出し口から噴出したエアが前記窪みの中に広がり、前記シートを面圧として浮揚させるようにすることを特徴とするインフレーション押出成形方法。 - 前記2つの安定板間を通過させた所定幅の粘着シートをカッターで2枚に分けることを特徴とする請求項3記載の粘着シートインフレーション押出成形方法。
- 請求項3または4記載の粘着シートインフレーション押出成形方法によって作られた粘着シート。
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