JP4701857B2 - 防水床スラブおよび床スラブの防水方法 - Google Patents
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Description
本発明の第1実施形態に係る防水床スラブ1について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る防水床スラブ1を示す平面図である。防水床スラブ1は、例えばショッピングセンター等の、直下階に居室があって、上面が雨水に曝される駐車場フロア等に設けられている。図1に示すように、防水床スラブ1は、平面視矩形状に形成され、4本の柱4間に掛け渡された大梁2と、大梁2間に掛け渡された複数の小梁3とにより支持されている。本実施形態では、防水床スラブ1は、例えば700cm×900cmの矩形状に形成され、900cmの大梁2間に300cm間隔で長さ700cmの2本の小梁3が設けられている。
まず、デッキスラブ40を配置し、このデッキスラブ40の上の所定位置にせん断補強ユニット70を配置する。次に、デッキスラブ40を型枠として利用することにより、せん断補強部材50のプレート52の高さ位置までコンクリートを打設して、鉄筋コンクリート製の下層10を構築する。次に、下層10の表面およびプレート52の表面に、接着剤等を介して、防水層本体60同士が重なり合うように貼付して防水層30を構成する。次に、上側のシアー筋54間につなぎ筋(図示略)を施してから、シアー筋54を埋設する高さ位置までコンクリートを打設して、鉄筋コンクリート製の上層20を構築する。以上のようにして、鉄筋コンクリート製の下層10および上層20の間に防水層30が設けられた防水床スラブ1を施工する。なお、本実施形態では、上層20内に埋設されるシアー筋54間につなぎ筋を設けたが、特に設けなくてもよい。
本実施形態では、防水床スラブ1は、下層10や上層20に埋設されたシアー筋54によってせん断応力を負担できるように設計されている。具体的には、防水床スラブ1は、単位幅b:100cm、スパン長さ(大梁2および小梁3間の長さ)L:300cm、下層10の厚さ8cmおよび上層の厚さ6cmで合計の厚さh:14cmの寸法で形成されている。このような防水床スラブ1に対して、固定荷重:500kg/m2と積載荷重:400kg/m2の合計荷重Q:900kg/m2が掛かったと仮定すると、下層10と上層20との接合部分に発生するせん断応力Tは、安全率1.5を加味すれば、下記式(1)で表すことができる。
T=1.5×Q×1×L/2/(b・h)
=1.5×900kg/m2×1m×3m/2/(100cm×14cm)
=1.45kg/cm2 …(1)
図5(A)は防水床スラブを模した試験体200の一例(後述する試験体NO.3)を示す断面図であり、(B)はその平面図である。同図に示すように、本実験ではデッキスラブに使用することを想定して、単位幅60cm、スパン長さ(試験体の両支持端83間の距離)300cmの平板状に構築された防水床スラブ200を試験体とした。また、試験体の構成は、下層のコンクリート10の厚さ8cm、上層のコンクリート20の厚さ6cmの合計の厚さ14cmとし、上層のコンクリート20及び下層のコンクリート10の間に、防水層の種類により異なるが、概ね5mm程度の厚さの防水層30を設けた。また、下層のコンクリート10には、下端筋80として縦横方向に200mm間隔でD13及びD10の鉄筋を交互に埋設し、上層のコンクリート20には、上端筋として縦横150mm間隔、鉄筋径6mmの溶接金網(いわゆるメッシュ筋)81を埋設した。コンクリートは先打ち(下層の)コンクリート10、後打ち(上層の)コンクリート20ともに呼び強度21N/mm2のコンクリートを用いた。なお、上記実施形態におけるつなぎ筋56及び脚部58は構造体としての強度に関係しないため、本実験では省略している。
本実験で用いた試験体200はスパン長さL300cmであり、用いたスタッド82A、82Bはφ16mmであるので、上記の設計条件で想定した防水床スラブ100に関する値をそのまま用いることができる。このため、スタッドを40cm×60cm間隔で配置すれば、設計上の固定荷重及び積載荷重を支持することができる。
単純支持三等分載荷によるスパン中央部の曲げモーメントMppは、スパン長をL、点荷重をPPとすると、Mpp=1/6×PP×Lとなる。よって、本実験の試験体200ではスパン長L=3mであるので、PP=Mpp×2となる。設計用積載荷重wp=5kN/m2(=500kgf/m2)とすると、単位長さ1mあたりの中央曲げモーメントは、Mp=1/8×wp×L2=1/8×5×32=5.62kN・mとなる。本実験に用いる試験体200は幅0.6mであるため、設計荷重時の荷重PPは式(2)に示すように6.74kNとなる。
PP=5.62×2×0.6=6.74 …(2)
Py=(13.59−3.78)×2×0.6=11.76 …(3)
また、試験体幅0.6mのひび割れモーメントは、曲げ強度を27.9kgf/cm2と仮定すると、Mcr=5.47kN・mとなる。このため、ひび割れ時の荷重Pcrは式(4)に示すように6.4kNとなる。
Pcr=(5.47−3.78×0.6)×2=6.4 …(4)
図7は、各試験体の荷重―たわみ曲線を示す図であり、図8は、各試験体のひび割れ荷重Pcr[kN]、たわみ20mmまでの最大耐力Pmax[kN]、荷重5kN時のたわみ[mm]を示す表である。図7及び図8に示すように、各試験体のひび割れ荷重Pcr[kN]は、NO.2及びNO.3はそれぞれ10.1kN、10.3kNと略等しい値となり、NO.1のひび割れ荷重10.1kN及び式(4)で算出した設計上のひび割れ荷重を大きく超えている。また、図7に示すように、NO.1は16kN程度で鉄筋が降伏を起こしており、NO.2及びNO.3はそれ以上の荷重で降伏している。このように、NO.2及びNO.3は式(3)により算出した設計上の鉄筋の降伏応力以上の荷重に対しても耐力を有している。また、図8に示すように、たわみ20mmまでの最大耐力はNO.1では16.13kNであるのに対し、NO.2及びNO.3は17.87kNと、NO.1の値を超えている。また、荷重5kN時のたわみ[mm]は微小な荷重に対する変形の程度を示す値であるが、NO.1が0.68mm程度であるのに対して、NO.2及びNO.3はそれぞれ0.58、0.64と略等しい値となっている。このように、構造計算により得られた式(2)〜(4)の値及び比較対象のNO.1に対して、NO.2、NO.3は同等またはそれ以上の優れた曲げ性能を有することがわかる。
また、NO.4は式(4)の設計上のひび割れ荷重と略等しい6.1kNで曲げひび割れが発生した。また、荷重が大きくなるにつれて、スタッド82A,82Bによるせん断伝達効果があらわれたが、最大耐力は13.56kNと他の試験体よりも2割程度小さい値であった。しかし、この値は式(3)の鉄筋降伏曲げモーメント時の荷重11.76kNを超えており、スタッド82A、82Bの配置によって必要なせん断強度は確保されていることがわかる。
(1)上記設計条件を満足するような寸法や形状等のせん断補強部材50を有する防水床スラブ1を構成することにより、下層10と上層20との間でせん断応力を伝達させることができ、防水床スラブ1に十分な耐力を付与できる。このように下層10に加えて上層20も構造体として機能するため、従来のように防水層を押えるための押えコンクリートが不要となり、下層10および上層20を構成する材料の使用量を減少させて、コストを抑えることができる。
次に、本発明の第2実施形態に係る防水床スラブ100について説明する。なお、前記第1実施形態と同一または相当する構成部品には、同じ符号を付して、その説明を省略または簡略化する。
図9は、図1におけるA部を拡大して示すV−Vの縦断面図である。また、図10は、図9のB部を拡大して示す縦断面図である。図9に示すように、防水床スラブ100は、下層10と、上層20と、下層10および上層20の間に配置された防水層30とを備えている。防水層30には、例えば鋼製のデッキスラブが用いられている。下層10および上層20は、それぞれデッキスラブである防水層30を型枠として利用することにより構成された現場打ちの鉄筋コンクリート層である。防水層30は、矩形板状に形成され、大梁2側および小梁3側となる位置に、これらの梁2,3に沿って延びる凹状溝301がそれぞれ形成されている。このように防水層30に凹状溝301が形成されているため、下層10および上層20には、互いに嵌合するように隣接した凹凸部としての溝形コッター101,201がそれぞれ形成される。
まず、下層10用の配筋を施した後、型枠を設置してコンクリートを打設し、このコンクリートが硬化する前に、このコンクリートの上に防水層30であるデッキスラブを設置する。このようにして溝形コッター201を有する下層10を構築する。次に、防水層30の上側に配筋を施してから、防水層30を型枠としてコンクリートを打設することにより、凹状溝301によって形成された溝形コッター201を有する上層20を構築する。以上のようにして、鉄筋コンクリート製の下層10および上層20の間に防水層30が設けられるとともに、互いに嵌合するような溝形コッター101,201が形成された防水床スラブ100を施工する。
本実施形態では、防水床スラブ100は、下層10と上層20との接合部分で、溝形コッター101,201同士がせん断応力を負担できる強度で設計されている。具体的には、前述したように、下層10と上層20との接合部分に発生するせん断応力Tは、上記式(1)よりT=1.45kg/cm2である。
ところで、防水床スラブ100に大きな荷重が掛かって下層10と上層20との接合部分が破壊されるケースとしては、一般的に、以下の2つのケースが考えられる。すなわち、溝形コッター101,201の立上り部101A,201Aが支圧破壊される場合と、図6に示す、溝形コッター201の根元部分201Cがせん断破壊される場合である。なお、溝形コッター101,201は、幅9cmで、立上り部の長さ1.5cm、単位長さ100cmである。
単位長さ×立上り部の長さ=3×100cm×1.5cm=450cm2である。従って、単位面積(1m2)あたりの支圧面積は、450cm2/(150cm×100cm)=0.03cm2/cm2である。設計用の圧縮応力度を1/2Fc=150kg/cm2とすると、支圧によるせん断強度は、150kg/cm2×0.03cm2/cm2=4.50kg/cm2となる。
(7)防水層30の凹状溝301の入隅、出隅部分に面取り加工を施して、溝形コッター101,201の入隅、出隅部分に面取り部101B,201Bを形成したので、防水床スラブ100にせん断応力が掛かった場合であっても、防水層30の入隅、出隅部分の損傷を抑えることができる。
3 小梁 4 柱
10 下層 20 上層
30 防水層 40 デッキスラブ
50 せん断補強部材 52 プレート
54、82A、82B シアー筋(スタッド)
54A 本体部(シアー筋本体) 54B 頭部
56 つなぎ筋 58 脚部
60 防水層本体 70 せん断補強ユニット
80 下端筋 81 上端筋
83 支持端 100 防水床スラブ
101,201 溝形コッター(凹凸部)
101A,201A 立上り部 101B,201B 面取り部
200 防水床スラブ(試験体) 201C 根元部分
301 凹状溝
Claims (8)
- 防水加工が施された防水床スラブであって、
コンクリート製の下層と、
この下層の上側となるコンクリート製の上層と、
前記下層と前記上層との間に設けられる防水層とを備え、
前記下層と前記上層との間でシアー筋又は前記防水層を介してせん断力が伝達されるように構成され、
前記下層と前記上層とは、床スラブの躯体であることを特徴とする防水床スラブ。 - 請求項1に記載の防水床スラブにおいて、
前記防水層は、前記下層の上面に配置される非透水性のプレート、および、前記プレートの上下面からそれぞれ突出し、前記上層および前記下層の少なくともいずれかに埋設されるシアー筋を有する複数のせん断補強部材と、
前記せん断補強部材のプレート間に跨って、前記下層の上面を覆うように配置された非透水性材料からなる防水層本体とを備えることを特徴とする防水床スラブ。 - 請求項2に記載の防水床スラブにおいて、
前記せん断補強部材は、建物躯体を構成する互いに平行な2つの梁に沿って当該梁の近傍にそれぞれ設置されていることを特徴とする防水床スラブ。 - 請求項2または3に記載の防水床スラブにおいて、
前記シアー筋は、前記プレートに接合されたシアー筋本体と、前記シアー筋本体の先端側から外側へ張り出した頭部とを備えることを特徴とする防水床スラブ。 - 請求項2〜4のいずれかに記載の防水床スラブにおいて、
複数の前記せん断補強部材が互いに連結されることによりユニット化されていることを特徴とする防水床スラブ。 - 請求項2〜5のいずれかに記載の防水床スラブにおいて、
前記防水層本体は、アスファルト、樹脂製シート、およびウレタンゴム系塗膜の少なくともいずれかを含んで構成されていることを特徴とする防水床スラブ。 - 請求項1に記載の防水床スラブにおいて、
前記下層の上面には、凹凸部が形成され、
前記上層の下面には、前記下層の凹凸部に嵌合する凹凸部が形成され、
前記防水層は、前記下層および前記上層の凹凸部の嵌合面に沿って設けられていることを特徴とする防水床スラブ。 - 床スラブの防水方法であって、
コンクリート製の下層と、この下層の上側となるコンクリート製の上層とを前記床スラブの躯体として構築するとともに、前記下層と前記上層との間に防水層を設け、前記下層と前記上層との間でシアー筋又は前記防水層を介してせん断力が伝達されるように構成することを特徴とする床スラブの防水方法。
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