本発明の知的な照明システムは、複数の照明器具が、それぞれの協調動作によってユーザの要求を満たすシステムであり、自律分散制御の概念に基づいて照明制御を行う。すなわち全体を統括して制御する要素が存在せず、個々の照明が共通のデータから自律的に学習動作を行うことによって、各場所の照度制御を行う。
本発明の照明システムは、複数の照明器具と1以上の照度計測装置を備える照明システムであって、前記照明装置と前記照度計測装置の位置関係に基づいて、前記各照明装置の光度値を決定し、前記照明装置が当該光度値に基づいて発光する照明システムである。また、複数の照明器具と1以上の照度計測装置を備える照明システムであって、前記照度計測装置は、目標となる照度の値を示す目標照度値を設定する設定部と、照度値を取得する取得部を具備し、前記照明器具は、前記目標照度値と前記照度値に基づき、光度値を生成する制御部と、前記制御部が生成した光度値に従って発光する光源を具備し、前記制御部は、前記各照明器具と前記照度計測装置の位置関係を表す相関関係情報を生成する相関関係情報生成部を具備し、前記相関関係情報に基づき、新しい光度値である新光度値を生成して、前記光源に供給する照明システムである。このような照明システムにより、照明器具と照度計測装置の位置関係によって、各照明器具において異なる光度の発光がなされ、1以上の照度計測装置が測定する照度が、それぞれ適切な照度になる。
電力計を更に設けて消費電力を計測し、電力消費が少なくてすむようにもできるし、電力計を設けずに、電力消費の少ない照明を行うこともできる。
相関関係情報は、照明装置と照度計測装置の位置関係を表す情報で、照明装置と照度計測装置の距離の大小に関わる情報であり、典型的には、後述する相関係数値が挙げられるが、これに限定されない。たとえば、大小を表す符号のような情報でもよい。
相関関係情報、または、相関係数値によって新光度値を生成する方法についても、上記課題解決の手段において列挙したように、多数の構成及び方法が可能である。具体的には、相関係数値と、光源に供給している現在光度値と光源に前回供給した前回光度値の一方とに基づき、新しい光度値である新光度値を生成して、光源に供給する。更に具体的には、相関係数値と目標照度値と取得部が取得した照度値、および、光源に供給している現在光度値と光源に前回供給した前回光度値の一方とに基づき、新しい光度値である新光度値を生成して、光源に供給する。あるいは、所定の目的関数値を算出し、この目的関数値の評価結果に従って新光度値の受理または非受理を決定し、決定に基づき、非受理の場合、新光度値を供給する前の光度値である前回光度値に基づき新たな新光度値を生成し光源へ供給する。相関係数値が小さい場合、光源に供給する新光度値を小さい値にする。これらの動作により、照度計測装置から遠い位置関係にある照明器具の光源の光度を、照度計測装置に近い位置関係にある照明器具の光源の光度より小さくすることを可能になり、省電力が実現可能になる。
以下、本発明の照明システムおよび照明制御方法の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素が同様の動作を行う場合には、再度の説明を省略する場合がある。
(実施の形態1)
本発明の知的照明システムは、複数の知的照明器具と複数の移動可能な照度計測装置および電力計をネットワークに接続することで構成される。知的照明器具とは学習判断を行う制御装置を備えた照明である。これにより、個々の照明が自律的に動作することが可能となる。
本発明の照明システムは、複数の照明器具と1以上の照度計測装置と電力計とを備える照明システムであって、照度計測装置は、目標となる照度の値を示す目標照度値を設定する設定部と、照度値を取得する取得部を具備し、電力計は、前記複数の照明器具が消費する電力値を取得し、前記照明器具は、前記目標照度値と前記照度値と前記電力値に基づき、光度値を生成して出力する制御部と、前記光度値に従って発光する光源を具備し、前記制御部は、前記光度値の時系列データと前記照度値の時系列データに基づき相関係数値を算出する相関係数値算出部を具備し、前記相関係数値と前記目標照度値と前記照度値と前記電力値に基づき、新光度値を生成して前記光源に新光度値を供給し、前記照度値を前記目標照度値に収束させるシステムである。
前回光度値は、新光度値を供給する前に光源に供給されていた光度値である。前回光度値を供給するとは、新光度値から前の光度値に戻すことを指す。
相関係数値は、照明器具と照度計測装置の距離の大小を表す距離指数値であってもよく、この場合、相関係数値算出部は、前記距離指数値を検出および算出する距離指数値算出部とする。
図1は、本発明の照明システムの構成を示す図である。図1(A)に示すように、部屋の天井に、L1からL15で示される複数の照明器具1が配置される。また、S1からS3で示される複数の照度計測装置2が、床の上や室内の机の上などに配置される。図1(A)には図示しないが、電力計3が、L1からL15で示される複数の照明器具1群への電力供給配線の経路に設けられ、全照明器具の消費電力値を計測する。なお、電力計3の配置場所は問わない。電力計3は、自ら複数の照明器具が消費する電力値を計測する必要はなく、他の計測手段(図示しない)が計測した電力値を取得すれば良い。
図1(B)は、上記照明器具1のブロック構成、照度計測装置2のブロック構成、および、電力計3を示す図である。照明器具1は、光源10、制御部11、および、受信部12を具備する。照度計測装置2は、取得部21、設定部22、および、送信部23を具備する。
照度計測装置2において、取得部21は、照度を検知する光センサであって、現在の照度値を計測し、取得した現在の照度値Lciを送信部23に供給する。設定部22は、照度計測装置2の目標照度値Ltiを設定するスイッチ、可変抵抗器、エンコーダなどの操作器であって、設定した目標照度値Ltiを送信部23に供給する。送信部23は、照度値Lciおよび目標照度値Ltiのデータを、複数の照明器具1の各受信部12宛に送る。cは現在値(カレント)の意味であり、tは目標値(ターゲット)の意味である。i(i=1〜n)は、照度計測装置2が複数ある場合、その番号を示す。送信部23は、相手を特定しないブロードキャスト送信を行えばよい。ただし、送信部23は、マルチキャストによる送信、その他の送信方法を行っても良い。また、送信部23が送信するデータの構造は問わない。
電力計3は、ここでは、複数個の照明器具1が消費する電力値Pのデータを計測し、複数の照明器具1の各受信部12宛に送信する。送信は、相手を特定しないブロードキャスト送信でよい。ただし、電力計3は、マルチキャストによる送信、その他の送信方法を行っても良い。
各照明器具1において、受信部12は、照度値Lci(以下、取得照度値Lci、あるいは、単に照度値ということがある。)および目標照度値Lti(以下、単に目標照度値ということがある。)のデータ、および、電力値Pのデータを受信し、制御部11に渡す。制御部11は、後述する自律分散制御アルゴリズムに従って、自身の光源10の光度値Cdjを決定し、光源10に供給して、光源10の光度を制御する。光源10は、蛍光灯ランプなどの発光体とその発光光度を制御するインバータ回路のような光度制御回路を備えているものとする。j(j=1〜m)は、複数の照明器具1に対応する番号を示す。照度計測装置2が、図1(A)に示すように複数個ある場合は、受信部12は、各照度計測装置2からの照度値Lciおよび目標照度値Ltiのデータを受信し、制御部11に渡す。制御部11は、複数組の照度値Lciおよび目標照度値Ltiのデータ、および、電力値Pのデータに基づき自律分散制御アルゴリズムを実行する。なお、本発明の照明システムにおける自律分散制御とは、各照明器具1(j=1〜m)が、それぞれ、独自に自身の光源10の光度値を制御するものである。
次に、本発明の照明システムで適用する自律的な照明コントロールを実現するための自律分散制御アルゴリズムについて述べる。本発明で使用する照明制御アルゴリズムは、公知の確率的山登り法(Stochastic Hill Climbing:SHC)を発展させて、照明制御用に相関係数に基づく近傍設計を組込んだものである。以後本発明で提案するアルゴリズムを、相関係数を用いた適応的近傍アルゴリズム(Adaptive Neighborhood Algorithm using Correlation Coefficient:ANA/CC)と呼ぶ。この制御アルゴリズムの目的は、照度を各照度計測装置の目標照度値に近づけること、および電力の最小化である。なお、照明システムの省電力を考慮した場合、光源の電源電圧特性が重要になる。電源電圧特性は光源の種類により様々であり、そのため同じ環境でも光源の種類によって、照明の最適な点灯パターンも異なる。本アルゴリズムでは光源として、現在オフィスなどで最も一般的に利用されている蛍光ランプを想定し、最適化を行う。しかしながら光源としては、蛍光ランプ以外でもよい。以下にこのアルゴリズムの基本的な流れを図2に示すフローチャートを用いて、まず簡単に説明し、その後に各構成要素の動作を含めた詳細の手順について説明する。なお、本フローチャートは、1つの照明器具1の内部動作を示すものである。他の照明器具も同様の内部動作を行うが、その動作は、互いに非同期の動作でよく、各照明器具自身が独自に判断して動作する。
まず、処理ステップ(ステップS10)において、制御部11は、一連の処理手順のプログラムの起動などの初期設定を行う。
(ステップS11)に進み、前記初期設定により設定した初期の光度である初期光度で、制御部11は、他の照明器具の状態とは無関係に、照明器具1自身の光源10を点灯させる。なお、目標照度値は照度計測装置2において設定されている、とする。
次に(ステップS12)に進み、制御部11は、各照度計測装置2の照度値および電力値を取り込む。
次に(ステップS13)に進み、照度値と目標照度値との差と電力値から目的関数値を計算する。目的関数値は、照度値が目標照度値を満たしているか、消費電力がどの程度かにより算出される指標の値である。目的関数値の値が小さいほど、照度値が目標照度値を上回っているか、あるいは、照度値が目標照度値に近く、かつ消費電力が小さい、すなわち、「良好」な状態であることを示す。目的関数値の算出式については、後で詳しく説明する。
次に(ステップS14)に進み、各照明器具1の制御部11は、相関係数を用いて選択された近傍度に対応して新光度値を生成し光源10を点灯させるとともに、新光度値を現在光度値として記憶しておく。新光度値は、その前の光度値を光度変更値に従って変化させた光度値である。なお、前の光度値である前回光度値は、後の処理において使用する場合があるので、制御部11は、前回光度値を記憶しておく。光度変更値については、後述する。
次に(ステップS15)に進み、制御部11は、照度計測装置2から新状態の照度値を取込む。新状態の照度値とは、当該照明器具1の光源10が新光度値に従って行う発光により3個の照度計測装置2の各位置において生成される各照度値である。この際、他の照明器具もそれぞれの判断により、その光度値を決めて発光している可能性があり、新状態の照度値は、それらの発光の影響も受けていることは言うまでもない。なお、照度計測装置2の取得部21は、たとえば、定期的に、あるいは、頻繁に、照度値を取得し、送信部23は、取得した照度値を送信する。新状態の照度値とは、送信部23が送信した最新の照度値である。
次に、(ステップS16)に進み、制御部11は、各照明器具1の光源10の光度値、および照度値から相関係数を計算する。本発明における、相関係数値とは、照明器具の光度が照度計測装置の測定する照度に及ぼす影響に関する情報であり、例えば、以下の説明する相関係数の数式により算出され得る。なお、以下の数式は、相関係数値を算出する式の一例であり、照明器具の光度が照度計測装置の測定する照度に及ぼす影響に関する情報を表すものであれば、他の数式や表現でもよいので、以下の相関係数式に限定されない。
以下の数式による相関係数は、統計学において、周知の係数であり、2つの数列がどの程度類似しているかを示す指標となる。相関係数値は、"0"から"1"の間の数値を取る。相関係数値が"1"の場合、2つの数列が同じ変化をすることを表す。相関係数値が"0"の場合、2つの数列には全く関係がないことを表す。
k=1〜NのN個(N≧2)からなる2つの変数x
k=x
1〜x
Nとy
k=y
1〜y
Nの間の相関係数値をrで表すと、
rは、r=Σ(X
k・Y
k)/{(ΣX
k 2)
1/2・(ΣY
k 2)
1/2}により表される。
ただし、x
kの平均値をx
mとし、y
kの平均値をy
mとした場合、X
k=(x
k−x
m)であり、Y
k=(y
k−y
m)である。Σは、1からNの加算を表す。上記の式を1つの式で表すと、次の数式1でもよい。
本発明においては、変数xkとして光度値Cdjの時系列データ{Cdj}を適用し、変数ykとして上記の取得した照度値Lciの時系列データ{Lci}を適用する。時系列データ{Cdj}は、制御部11が光源10に供給してきた光度値を供給の順番に並べたデータ列である。時系列データ{Lci}は、時系列データ{Cdj}の各光度値が光源10に供給されたときに、i番目の照度計測装置2が取得した照度値Lciを取得順に並べたデータ列である。各時系列データは、現在光度値Cdjと照度値Lciからさかのぼって、所定のN個を適用する。
この相関係数値が大きいということは、光度値の時系列データ{Cdj}における時間的な変化が、照度値の時系列データ{Lci}における時間的な変化とよく似ていることを示す。一方、この相関係数値が小さいということは、光度値の時系列データ{Cdj}の時間的な変化が、照度値の時系列データ{Lci}の時間的な変化とに類似性がなく、関係が余りないということを示す。照度計測装置2が照明器具Aに近い位置にある場合、照度計測装置2が取得する照度値は、その近くに位置する照明器具Aの光度値の影響を強く受ける。一方、照度計測装置2から離れている位置に、別の照明器具Bがある場合、照度計測装置2が取得する照度値は、照明器具Bの光度値の影響を受ける度合いが少なくなる。したがって、本発明に用いる相関係数値rは、照明器具1自身と照度計測装置2との距離の大小を表す距離指標値であるとも言える。
図1に示した実施例では、照度計測装置2が3個(i=1、2、3)あるので、相関係数値rも、ri=r1、r2、r3、の3つを演算する。図2のフローチャートの最初のループにおける(ステップS16)では、(ステップS12)において光源10が生成した初期光度値に対する3つの照度計測装置2の位置において取得した各1つの照度値と、(ステップS14)において光源10が生成した新光度値に対して、3つの照度計測装置2がその位置において取得した各1つの照度値が、(ステップS15)において得られている。すなわち、N=2での相関係数値の計算となる。処理手順のループが繰り返されるに従い、Nが増加する、すなわち、時系列データを構成するデータ数が、光度値の時系列データ{Cdj}と照度値の時系列データ{Lci}において増える。
なお、本発明は、照度計測装置2と照明器具1との距離、または距離に対応する数値、情報などを計測、算出、または取得し、距離の遠近に応じて光源10の光度値を増減して、目標照度値に近づける照明制御システムである。従って、上記、相関係数の式に限らず、光度値と照度値の時間変化パターンの類似度を表す値、すなわち、光度値と照度値の時間変化パターンの相関性を表す係数値であれば、他の式を適用してもよい。光度値と照度値の時間変化パターンの類似度が大きいほど、照明器具の光度が照度計測装置の測定する照度に及ぼす影響が大きいので、照明器具の光度が照度計測装置の測定する照度に及ぼす影響に関する情報に応じて、光源10の光度値を増減して、目標照度値に近づける照明制御システムでもある。
次に(ステップS17)に進み、制御部11は、新状態での目的関数値を計算する。(ステップS18)に進み、制御部11は、目的関数値が「良好」になっていると判定した場合、その新光度値を受理、すなわち確定し(ステップS20)へ進む。(ステップS18)において、制御部11は、目的関数値が「悪化」したと判定した場合、(ステップS19)に進み、与えた光度変化量を非受理、すなわち、キャンセルして、前回光度値に戻し、(ステップS20)へ進む。前回光度値に戻すとは、制御部11において(ステップS14)において生成し記憶しておいた現在光度値を前の光度値に戻す処理である。なお、制御部11は、戻した光度値を光源10には出力してもよいし、出力しなくてもよい。目的関数値が「良好」になっているとは、後述する目的関数値の場合、その値が前回算出した目的関数値から減少している場合を言う。目的関数値が「悪化」しているとは、後述する目的関数値の場合、その値が前回算出した目的関数値より増加している場合を言う。
(ステップS20)において、制御部11は、目標照度値に十分近くなったかどうか判定し、Noの場合、(ステップS12)に戻る。Yesの場合は、照度制御を終了できる。
なお、(ステップS20)から(ステップS14)ではなく(ステップS12)に戻る理由は、(ステップS13)〜(ステップS20)の動作時間内に外光が差込むなどの環境の変化に対応させるためである。また、(ステップS19)において、現在光度値として記憶しておいた新光度値を、前の光度値すなわち前回光度値に戻した。したがって、次の(ステップS14)においては、前回光度値に基づいて、改めて別の新光度値を生成する。よって、(ステップS18)においては、この別の新光度値の受理、非受理の判定を行うことになる。また、(ステップS12)と(ステップS15)の照度値の取得処理において、照度値の時系列データ{Lci}に新たな照度値Lciのデータが加わるが、照度値Lciの取得処理の直前に光源10に供給している光度値Cdjが、上記新たな照度値Lciのデータに対応する新たな光度値として光度値の時系列データ{Cdj}に加えられ、相関係数値riの算出に使用される。
次に、本発明の照明システムが、目標照度値を、省電力で実現する仕組みについて、順次説明する。本照明システムの自律的な照明コントロールにおける目的は、照度値を各照度計測装置の目標照度値に近づけること、および、電力の最小化である。この目的に近づいているかどうかは、制御部11が次のような目的関数(数式2)により評価する。
上記の数式2において、j=1〜mは照明器具1の番号、i=1〜nは照度計測装置2の番号である。fは目的関数であり、現在の照度値Lciと目標照度値Ltiの照度値差により決まる指標giと電力値Pからなる。wは、重み係数である。指標giは照度値差(Lci−Lti)が非負の場合、ゼロとし、照度値差(Lci−Lti)が負であった場合、照度値差の二乗値である。指標giは、ペナルティ(罰点)として働く。目的関数値fは、罰点が増えると、大きい値になり、罰点が減ると小さい値になる。照度値差(Lci−Lti)が非負の場合、目標照度が確保されているとして、ペナルティがゼロであり、照度値差(Lci−Lti)が負であった場合、目的関数値にペナルティが課される。したがって、現在の照度値が目標照度値を下回っていた場合、gi=(Lci−Lti)2であるので、照度値差が大きいほど、その2乗という大きな値になり、目的関数値fの第1項を大幅に増加させることになる。数式2で示すように、電力値Pは、各照明の光度Cdjの和で表せるが、この式は使用しない。その代わりに、電力値Pとしては、本発明の実施においては、電力計3から供給される電力の計測値を使用する。電力値Pの増加も目的関数値fに対するペナルティの増加として働く。電力値Pに乗算される重み係数wの値により、目標照度に向けての最適化を優先するか、電力の最小化を優先するかが決まる。目的関数値fの値が小さいほど、照度計測装置2の位置における照度値が目標照度値に近く、かつ、電力が少ない状態であることを表していることになる。なお、wは、電力値Pに対する重み係数であると共に、電力値Pのワット、キロワットなどの単位に基づく数値の大きさを補正するスケールファクタの役目も担っている。
本発明の照明システムは、上記ペナルティを最小にすることを目標とする制御方法である。既に説明したように、目的関数値fの値が、前回の算出値から減少した場合は、照明状態が「良化」しており、増加した場合は「悪化」したことになる。目的関数値fの値が変わらない場合は、「良化」も「悪化」もしていないが、便宜上、どちらかに分類する。目的関数値が小さいほど、照明器具全体により生成される照明の照度値が、目標照度値に近く、消費電力が少ない、好ましい状態である。このように本発明では、各照明器具1が、独立に、それぞれの目的関数値の最小化に向かって光度値の制御を行うことになる。
次に、(ステップS16)で行う相関係数値の算出の意義について説明する。相関関係があるとは2つ以上の現象がセットになって同時に変化することを指す。照明制御アルゴリズムにおいて、目標照度値を満たし,かつ省電力である「良好」な状態へと短時間で収束させるには、照明器具と照度計測装置の位置関係の把握が効果的であり、その位置関係を自律的に学習する方法としては、照明器具と照度計測装置の相関関係が有効であることが分った。図4(A)に示すように、3個の照明器具L1、L2、L3の内、左端のL1の直下に照度計測装置S1を配置した状態において、相関係数を計算しながらSHCで最適状態の探索を行った場合、相関係数の履歴は、図4(B)のようになった。縦軸は相関係数値、横軸は探索回数である。最初、相関係数値は、1.0近くであるが、100回程度で、それぞれの値に落ち着く。しかし、各照明器具L1、L2、L3共にランダムに光度値を変更するので、相関係数値は、評価のたびに多少変動する。照明器具L1は照度計測装置S1との相関係数値が大きく、約0.9前後であり、照明器具L2は相関係数値が小さく、平均で、約0.25前後である。照明器具L3は相関係数値が更に小さくなる。
3個の照明器具L1、L2、L3が、それぞれランダムに光度を変更している状態を想定し、各照明器具L1、L2、L3それぞれが生成する光度値の2以上のデータ(かかるデータは、既に説明した光度値の時系列データである)と、照度計測装置が計測する照度値の2以上のデータ(かかるデータは、既に説明した照度値の時系列データである)との相関の度合いを表す相関係数値を算出してみる。
照明器具L1は照度計測装置S1に最も近い位置にあるので、光度値の変化が照度計測装置2の計測する照度値に反映される影響は、照明器具L1が最も大きくなり、相関係数値も大きくなる。一方、照明器具L3は照度計測装置S1から最も遠い位置にあるので、照明器具L3の光度値の変化が照度計測装置S1の計測する照度値に及ぼす影響は最も少なく、照明器具L3における相関係数値は最も小さくなる。照明器具L2における相関係数値は中間の値になる。このことからも、図4(B)の結果が理解できる。すなわち、この相関係数値は、照明器具1と照度計測装置2の遠近関係を表す近傍度の値と考えてよい。近傍にあるほど、1.0に近い大きな数値となる。この相関係数値の情報を、次に説明する新光度生成における近傍度の選択に利用する。
本発明に使用するANA/CCのアルゴリズムには、新光度生成に用いる近傍度の候補として、図5(a)に示すように3種類の光度変更値の範囲を用意する。3種類の光度変更値の範囲を便宜上、近傍度[A]、近傍度[B]、近傍度[C]と呼ぶ。図中の数字は、現在の光度からの変化の相対的な割合を示す。近傍度[A]は、現在の光度から光度を下げることを重視した近傍の光度変化範囲である。近傍度[B]、は上下均等に次の新光度を生成するものであり、近傍度[C]は、近傍度[A]とは逆に光度を上昇させることを重視したものである。この3種類の近傍度の光度変更値の範囲を、相関係数値と照度計測装置の照度値を用いて適応的に使い分ける。
次に、近傍度の「使い分け基準」について説明する。i番目の照度計測装置2との相関係数値riが、ri<閾値の場合、近傍度[A]を採用する。ri≧閾値で、かつ、Lti≦Lciの場合、近傍度[B]を採用する。ri≧閾値で、かつ、Lti>Lciの場合、近傍度[C]を採用する。各照明器具1は、それぞれ、全ての照度計測装置2に対して上記の基準を適用し近傍度を決定する。照度計測装置2が複数ある場合には複数の近傍度が選定される可能性がある。その場合には、近傍度[C]〜近傍度[A]の順に優先権を与える。これは相関係数値の大きい照度計測装置に該当する近傍度を優先することを意味する。これは、複数の相関係数値riのうち、最大値を採用して、上記比較を行ってもよいことを意味する。また、図5(a)より分るように、近傍度[C]は、近傍度[A]に比べて、減光が少なく、増光が多い。すなわち、前記のようなriと閾値の比較結果に従って行う光度変更値の選択は、次のように行われる。相関係数値が小さい場合、減光用の光度変更値の選択頻度を大きくするか、増光用の光度変更値の選択頻度を少なくし、相関係数値が大きい場合、増光用の光度変更値の選択頻度を大きくするか、減光用の光度変更値の選択頻度を少なくする。このような選択により、相関係数値が大きいほど、相対的に増光重視の制御を行うことになる。
閾値の値は、相関係数の最大値1.0の半分程度とすればよい。
次に、上記「使い分け基準」を(ステップS14)において使用して新光度値を生成する具体的な手順の一例について、図5(b)を用いて説明する。図5(b)は、制御部11の内部の記憶部に設けられるテーブルである。照度計測装置2のi=1〜nに対応する相関係数値r1〜rn、および照度計測装置2から受信し取得した取得照度値Lciと目標照度値Ltiの差、ΔLi=Lci−Ltiの値を記憶する。上記「使い分け基準」は、図5(b)のテーブルを参照して次のように実行可能である。ΔLiの欄を調べ、負の値があれば、riの欄を調べ、ri≧閾値となる相関係数値riがあれば、近傍度[C]を選択し、なければ近傍度[A]を選択する。ΔLiの欄を調べ、負の値がなければ、riの欄を調べ、ri≧閾値となる相関係数値riがあれば、近傍度[B]を選択し、なければ近傍度[A]を選択する。選択した近傍度に割り振られた複数の光度変更値からランダムに光度変更値を1つ選択して、現在光度値と加算すれば、新光度値が生成できる。
近傍度[A]には、光度変更値パターンを表す光度変更値情報として、[+34、+17、0、−17、−34、−51、−68、−85、−102(cd)]の9段階の光度変更値を対応させる。近傍度[B]には、光度変更値情報として、[±68、±51、±34、±17、0(cd)]の9段階の情報を対応させる。近傍度[C]には、光度変更値情報として、[+238、+221、+204、・・・、+17、0、−17、−34(cd)]の17段階の情報を対応させる。近傍度[A]、近傍度[B]、近傍度[C]は、それぞれ、減光型、中立型、増光型といえる。この例では、光度変更値の最大値と最小値の幅は、近傍度[C]のみ他の2倍としている。各段階は、17(cd)単位のステップである。したがって、この場合は、17(cd)が、図5(a)の光度変更値の0.25の割合に相当する。
次に、光度変更値の最大値と最小値の幅について、近傍度[C]のみ、他の近傍度[A]、近傍度[B]の場合の2倍としている理由について説明する。部屋の照度が期待値より暗い場合、使用者は違和感をうけ、不満を抱きやすい。一方、明るすぎる場合には、使用者に不満はなく、気づかれない場合が多い。本「使い分け基準」では、取得照度値Lciが目標照度値Ltiを下回っている場合、照度計測装置2の近くに位置する照明器具1は、近傍度[C]を採用する。照明位置1の照度が暗い場合、近傍度[C]により、急速に照明器具1の光度を増加させて、取得照度値Lciが目標照度値Ltiを上回るように速やかに制御して違和感をなくすことが可能になる。一旦、取得照度値Lciが目標照度値Ltiを上回れば、照明器具1と照度計測装置2が近くに位置している場合でも、近傍度[B]が適用される。これは、取得照度値Lciが目標照度値Ltiを上回っているので、照明器具1の光度の増減をバランスさせておくことを意味する。したがって、近傍度[C]においては、構成する変更光度値の値を増光値のみとしてもよい。また、近傍度[A]における増光の光度変更値はなくしてもよい。なお、この場合も、相関係数値をより正確に算出するために、近傍度[A]と近傍度[B]の光度変更値の変化幅はそろえておくことが好ましい。
なお、これらの各数値は一例であり、他の数値でもよい。また、各近傍度は、3種類以外の数でもよい。各近傍度における光度変更値のパターン、すなわち、光度変更値の段階数、光度変更値の最大値と最小値の幅は、上記値以外でもよい。なお、近傍には、現在光度値の近傍で光度変更値情報が含む光度変更値だけ光度値を変化させるという意味もある。
なお、上記「使い分け基準」は、閾値のみで決定する基準でもよい。3種類に分類せず、2種類として、近傍度も、減光型と増光型の2種類だけを使用してもよい。また、光度変更値パターンを表す光度変更値情報として、増光方向、減光方向ともに5から15段階程度の光度変更値群のデータを1通り用意しておき、近傍度[A]は、0(cd)を含んで減光寄りの光度変更値を選択し、近傍度[B]は、0(cd)を含んで減光増光片寄りなく光度変更値を選択し、近傍度[C]は、0(cd)を含んで増光寄りの光度変更値の選択を行うようにしてもよい。また、上記の光度変化値は、後述するように、現在光度値または前回光度値に加算して新光度値を算出するための情報として説明したが、現在光度値または前回光度値を変化させるデータであれば他の形式でもよい。たとえば、光度変更値は、現在光度値または前回光度値に乗算する係数の形式でもよい。一例として、[1.0、±1.05、±1.1〜±1.5]などの値としてもよい。
以上説明した光度変更値の選択を纏めて説明しなおすと、相関係数値が小さい場合、減光方向、すなわち、減光用の光度変更値の選択頻度を大きくするか、増光方向、すなわち、増光用の光度変更値の選択頻度を少なくし、相関係数値が大きい場合、増光用の光度変更値の選択頻度を大きくするか、減光用の光度変更値の選択頻度を少なくする。つまり、照明器具1と照度計測装置2が近傍にあることを示す相関係数値の場合の増光と減光の割合を基準として、相関係数値が照明器具1と照度計測装置2が遠方にあるということを示す値の場合には、より減光の度合いを大きくすることになる。
なお、上記、相関係数値riから最大値を選択する処理は、(ステップS16)で行ってもよいし、(ステップS14)で行ってもよい。また、上記、相関係数値と閾値の比較、比較結果に基づく光度変更値の選択は、(ステップS14)において行う。
次に、上記アルゴリズムを実行する制御部11について説明する。図3に、制御部11の構成ブロック図を示す。制御部11は、演算制御部110、記憶部111、目的関数値算出部112、目的関数値評価部113、新光度値生成部114、相関係数値算出部115、および、光度値出力部116を具備する。
記憶部111は、照明器具1自身用の初期光度値を格納している。また、記憶部111は、自身の光源10に供給された光度値Cdjの時系列データ{Cdj}と各照度計測装置2から送られてきた照度値Lciの時系列データ{Lci}を記憶する。また、記憶部111は、演算制御部110の指示に従い、後述する各種データの記憶を行う。
目的関数値算出部112は、演算制御部110より、現在の照度値Lciと目標照度値Ltiと電力値Pの供給を受け、数式2に示した、照度値の差を演算し、差に基づいて指標giを演算し、目的関数値fの演算を行い、算出した目的関数値fを演算制御部110に渡す。また、目的関数値算出部112は、重み係数wを内部に記憶している。
目的関数値評価部113は、演算制御部110から前回目的関数値と、新目的関数値を供給され、両者を比較し、目的関数値が「良化」したか「悪化」したか評価し、評価結果を演算制御部110に返す。
新光度値生成部114は、近傍度[C]〜近傍度[A]に割り振られた複数の光度変更値情報を記憶しており、現在光度値Cdjを演算制御部110から受け取り、演算制御部110が指示する近傍度選択指示情報に基づき、近傍度[A]〜近傍度[C]の1つを選択する。次に、新光度値生成部114は、選択した近傍度に割り振られた複数の光度変更値から1つの光度変更値を選択し、現在光度値Cdjを光度変更値だけ変更して新光度値Cdj'を生成して演算制御部110に渡す。光度変更値の選択はランダムに行えばよい。
相関係数値算出部115は、演算制御部110が供給する過去の光度値の時系列データに新光度値Cdj'を加えた時系列データ{Cdj}と、過去に取得した照度値の時系列データに新照度値Lciを加えた時系列データ{Lci}に基づき相関係数を算出し、演算制御部110に返す。相関係数値算出部115は、照度計測装置2の数に対応した相関係数値、すなわち本実施の形態の場合、3つの相関係数値を算出して演算制御部110に返す。
光度値出力部116は、演算制御部110から光度値を受け取り、光源10に渡す。
演算制御部110は、図2のフローチャートで説明した手順に基づき、次のような動作を行う。電源ONを検出の後(ステップS10)において初期設定が終わると、(ステップS11)において、記憶部111より光源10の初期光度値を読み出し、光度値出力部116を介して光源10に供給し、初期光度値で点灯させる。なお、電源ONの検出を行うには、部屋の入り口の壁などに電源スイッチユニットを設けておき、電源スイッチをONにすると、電源スイッチユニットから電源ON情報を各照明器具1に送信し、受信部12が受信し、演算制御部110が電源ON情報により(ステップS10)の処理を起動させるようにすればよい。
次に(ステップS12)において、演算制御部110は、受信部12より各照度計測装置2の現在の照度値Lciと目標照度値Ltiと電力値Pを受け取り、(ステップS13)に進む。
(ステップS13)において、演算制御部110は、目的関数値算出部112に、照度値Lciと目標照度値Ltiと電力値Pを渡して、数式2で説明した目的関数値fを算出させ、算出結果を受け取り、記憶部111に記憶させる。また、演算制御部110は、上記現在の照度値Lciと現在の光度値Cdjとを記憶部111の過去の照度値の時系列データと光度値の時系列データに追加記憶させる。なお、図2のフローチャートのループを回る前には、過去の時系列データはないが、ループを繰り返すに従い、過去のデータが蓄積されてゆく。
次に(ステップS14)に進み、演算制御部110は、記憶部111に記憶してある、各照度計測装置2ごとの現在の照度値Lci、目標照度値Lti、相関係数値、および、現在光度値Cdjを読み出し、上記、近傍度の「使い分け基準」に従い、1つの近傍度を選択し、[A]、[B]、[C]何れかの近傍度情報を、現在光度値Cdjと共に、新光度値生成部114に渡す。新光度値情報生成部114は、既に説明したように、演算制御部110から受け取った近傍度情報に割り振られた光度変更値情報を構成する複数(例えば9段階)の光度変更値から1つの光度変更値を選択し、受け取った現在光度値Cdjを光度変更値だけ変更して新光度値Cdj'を生成して演算制御部110に渡す。光度変更値の選択はランダムに行なわれる。
次に、上記「使い分け基準」を(ステップS14)において使用して新光度値を生成する具体的な手順の一例については、図5(b)を用いて説明した方法を適用できる。図5(b)に示したテーブルは、制御部11の内部の記憶部111に設ければよい。記憶部111は、照度計測装置2のi=1〜nに対応する相関係数値r1〜rn、および照度計測装置2から受信し取得した取得照度値Lciと目標照度値Ltiの差、ΔLi=Lci−Ltiの値を記憶する。上記「使い分け基準」は、図5(b)のテーブルを参照して次のように実行可能である。新光度値生成部114は、記憶部111のテーブルにおいて、ΔLiの欄を調べ、負の値があれば、riの欄を調べ、ri≧閾値となる相関係数値riがあれば、近傍度[C]を選択し、なければ近傍度[A]を選択する。ΔLiの欄を調べ、負の値がなければ、新光度値生成部114は、riの欄を調べ、ri≧閾値となる相関係数値riがあれば、近傍度[B]を選択し、なければ近傍度[A]を選択する。新光度値生成部114は、選択した近傍度に割り振られた複数の光度変更値からランダムに光度変更値を1つ選択して、現在光度値と加算すれば、新光度値が生成できる。なお、図5(b)のようなテーブルを使用しない方法でも実現可能である。
演算制御部110は、新光度値生成部114から新光度値Cdj'を受け取り、記憶部111に現在光度値として記憶させると共に、光度値出力部116に渡す。また、演算制御部110は、現在光度値Cdjを前回光度値として記憶部111に記憶させる。なお、図2のフローチャートのループを回る前には、算出された相関係数値は未だないが、記憶部111に、1.0〜0.0、例えば、0.5のデフォルト値を記憶しておき、このデフォルト値を読み出して使用すればよい。
次に、(ステップS15)において、演算制御部110は、各照度計測装置2ごとの現在の照度値Lciと目標照度値Ltiと新電力値Pを受信部12より受け取り、記憶部111の過去の照度値の時系列データと過去の光度値の時系列データに、現在の照度値Lciと新光度値Cdj'を追加記憶させ、目標照度値Ltiと新電力値Pも記憶部111に記憶させる。
次に、(ステップS16)において、演算制御部110は、記憶部111から過去の光度値の時系列データと、過去に取得した照度値の時系列データに、新光度値Cdj'と、新取得照度値である現在照度値Lciをそれぞれ加えた2つの時系列データ{Lci}、{Cdj}を読み出し、相関係数値算出部115に供給し、各照度計測装置2ごとの相関係数値の算出を行わせる。相関係数値算出部115は、相関係数値を算出し、演算制御部110に渡す。演算制御部110は、算出された相関係数値を受け取って、記憶部111に記憶させる。なお、図2のフローチャートの第1回目のループでは、過去の時系列データはないので、初期の光度値と照度値、および、新光度値Cdj'と現在照度値Lciのみで相関係数値の算出を行うが、ループを繰り返すに従い、過去のデータが蓄積され、多数の時系列データによる相関係数値の算出が可能になり、算出精度が向上する。
次に(ステップS17)に進み、演算制御部110は、(ステップS15)において取得し記憶部111に記憶しておいた、各照度計測装置2の現在照度値Lciと目標照度値Ltiと新電力値Pを記憶部111から読み出し、目的関数値算出部112に渡して数式2で説明した目的関数値を算出させる。目的関数値算出部112は、数式2に従い目的関数値を算出し、演算制御部110に渡す。演算制御部110は、算出結果を受け取り、新目的関数値として記憶部111に記憶させる。
次に(ステップS18)に進み、演算制御部110は、記憶部111から前回目的関数値と新目的関数値を読み出して目的関数値評価部113に供給して両者を比較させ、評価結果を受け取る。目的関数値評価部113から受け取った評価結果が「良化」の場合、演算制御部110は、光度値出力部116に渡した新光度値をそのままの値として維持し、新光度値Cdj'を現在光度値Cdjとして記憶部111に記憶させ、(ステップS20)に進む。新光度値を維持することを「受理」と呼ぶ。目的関数値評価部113から受け取った評価結果が「悪化」の場合は、(ステップS19)に進み、演算制御部110は、記憶部111から前回光度値を読み出して光度値出力部116に渡し、新光度値を前回光度値に戻す。さらに、演算制御部110は、記憶部111の記憶内容を今回の新光度値生成に関わるよりも前の状態、例えば(ステップS14)の直前の状態に戻し、(ステップS20)に進む。このように、新光度値を前回光度値に戻し、今回の新光度値生成に関わるよりも前の状態に戻すことを「非受理」と呼ぶ。次に、演算制御部110は、(ステップS20)に進み、終了条件を満たさない場合、(ステップS12)に戻り、満たす場合は、演算制御部110は、処理を終わる。終了条件については後述する。
なお、上記、(ステップS14)の直前の状態とは、新光度値Cdj'を加えて相関係数値を算出する前の相関係数値、新光度値Cdj'と対応する照度値Lciを時系列データに加える前の光度値の時系列データ{Cdj}と、照度値の時系列データ{Lci}の状態である。上記「非受理」の場合、次に(ステップS14)の手順が来た際には、制御部11において、新光度値生成部114は、前回光度値に別の光度変更値を選択しなおして加算し、改めて新光度値を生成し、光源10に供給することになる。
なお、「非受理」の処理としては、上記処理内容以外でもよい。演算制御部110が、記憶部111に現在光度値として記憶してある新光度値Cdj'を前回光度値Cdjに戻すだけでもよい。この場合は、記憶部111においては、時系列データ{Cdj}と、照度値の時系列データ{Lci}には、新光度値Cdj'と対応する照度値Lciが追加されたままとなる。また、上記説明では、(ステップS19)において、演算制御部110は、新光度値Cdj'を前回光度値Cdjに戻した際に、前回光度値Cdjを光度値出力部116に渡して、前回光度値で発光させるようにしたが、前回光度値Cdjを光度値出力部116に渡さず、光源10を新光度値Cdj'のまま発光させてもよい。
以上のように(ステップS12)から(ステップS20)動作を繰り返し行うことにより、各照度計測装置2の位置における照度値は、一時的に何れかの照度計測装置2において、照度値Lciが目標照度値Ltiから遠ざかることもあるが、大局的には、段々と目標照度値に収束する。なぜなら、各照明器具1において、目的関数値を「良化」させる新光度値のみが受理され、「悪化」させる新光度値は、非受理となり、全体としては、どの照明器具1においても、目的関数値が小さい値になるように変化してゆくからである。この状態は、各照度計測装置2の位置において、取得する照度値が目標照度値に近く、かつ、消費する電力値Pが小さい状態である。なお、(ステップS20)から(ステップS14)ではなく(ステップS12)に戻る理由は、処理ステップ(ステップS13)〜(ステップS20)の動作時間内に、他の照明器具1も自律的にその光度を変更しており、更に、外光が差込むなどの環境の変化もありうるので、それらの変化に対応させるべく、(ステップS12)、(ステップS13)において、目的関数値の算出を改めて行うことにある。
なお、(ステップS16)の相関係数値算出と(ステップS17)の目的関数値算出との順序は逆でもよい。また、(ステップS16)の相関係数の算出を(ステップS14)の前に行うようにしてもよい。
(ステップS20)における終了条件としては、演算制御部110が、照度計測装置2から受信した現在照度値Lciと目標照度値Ltiとを比較し、全ての照度計測装置2について、現在照度値Lciが目標照度値Ltiに十分近い値になったと判断した場合、終了条件を満たしたと判断すればよい。
以上説明したように、演算制御部110が行う制御は、記憶部111の読み出しと書き込み、目的関数値算出部112、目的関数値評価部113、新光度値生成部114、相関係数値算出部115などへの各算出用や評価用のデータの供給と、供給したデータに従った各値の算出や評価の実行の指示を行なうことを含む。結果として各部が上記算出や評価の処理をすれば良い。
相関係数値の算出に使用する、光度値の時系列データ{Cdj}と、照度値の時系列データ{Lci}は、過去の時系列データ全部を用いる方法もあるが、最新時刻のデータから50個、100個、あるいは所定の数のデータのみを用いればよい。記憶部111には相関係数値の算出に使用する数だけのデータを記憶しておけばよく、相関係数値の算出時間も節約できる。
図1(B)に示した制御部11、および、図3に示した、演算制御部110、記憶部111、目的関数値算出部112、目的関数値評価部113、新光度値生成部114、相関係数値算出部115、および、光度値出力部116は、ハードウェア(専用回路)により構成することができる。しかし、制御部11、あるいは、演算制御部110、目的関数値算出部112、目的関数値評価部113、新光度値生成部114、および、相関係数値算出部115の動作は、MPUとメモリによるコンピュータシステムにより実現するのが好適である。上記処理手順をプログラムにより作製し、プログラムメモリに格納して、MPUが、プログラムを実行するようにすればよい。記憶部111とプログラムメモリは、不揮発性のメモリが適しているが、揮発性のメモリを使用しても上記動作の実現は可能である。メモリとしては、半導体メモリ、ハードディスクメモリなどを適用できる。なお、光度値出力部116は、光度情報を光源10に伝送するインタフェース回路でよい。
照度計測装置2が複数ある場合、それぞれの照度計測装置2が、目標照度値Ltiと取得した照度値Lciを送信する。各照明器具1においては、目標照度値Ltiと照度値Lciは、各照度計測装置2毎、すなわち、i毎に区別して、受信して記憶部111に記憶される。また、照度値Lciは、i毎に区別して、時系列データ{Lci}に追加される。このためには、照度計測装置2が目標照度値Ltiと照度値Lciを送信する際には、照度計測装置2の識別子iのデータを付加したパケット形式で送信する。照明器具1では、識別子i、目標照度値Lti、照度値Lciよりなるパケットを受信した際に、識別子iに従って、目標照度値Lti、照度値Lciの記憶先を選択して記憶部111に記憶し、i毎に相関係数値riの算出を行い、数式2のiの値に従った目的関数値の演算を行うようにする。
また、照度計測装置2が複数ある場合、それぞれの送信部23が送信する情報は、各照明器具1における受信部12で混信せずに受信されることが好ましい。このためには、各送信部23が異なる搬送周波数を使用するようにすればよい。しかし、混信の許容する方法もありうる。送信部23が送信する情報量は、それほど大きくなく、むしろ非常に小さい情報量であり、したがって、送信時間は短くできる。各送信部23のそれぞれが、ランダムな時間を空けて、目標照度値と観測した最新の照度値を、頻繁に送信するようにする。確率的に送信時刻が同じになり混信が起きても、次の受信時には、混信がない確率が高くなり、受信部12は、各照度計測装置2からの目標照度値と観測した最新の照度値を十分な頻度で得ることができる。各送信部23での送信周期を互いに異なる周期に設定しておいてもよい。周期的に混信が起きるがそれ以外の時刻には、各送信部23からの情報が独立に受信できる。これらの方式の場合は、混信により誤った情報を受信部12が受け取って本発明の制御に使用するのを防止するために、送信部23は、目標照度値と照度値に誤り検出符号や誤り訂正符号を付加して送信し、受信部12は、誤り検出や誤り訂正を行うようにするのが好ましい。各照明器具1の受信部12は、目標照度値と照度値の情報を次々受信するが、各照度計測装置2からの最新の受信情報を、照度計測装置2それぞれの現在の情報として記憶しておけばよい。演算制御部110は、目標照度値と照度値の情報を必要とする(ステップS12)と(ステップS15)の処理実行時に、最新の目標照度値と照度値の情報を、受信部12から受け取って、(ステップS13)と(ステップS16)の処理に使用するようにすればよい。このように、照明器具1と照度計測装置2の動作において、お互いに同期の必要性は、特にはない。非同期の場合、送信部23からの送信は、照明器具1における処理手順の1周期よりも短い周期で、より頻繁に行うのが好ましい。なお、同期を取ってもよいことは言うまでもない。電力計3が無線通信により電力値Pを受信部12に送信する場合も、混信防止のために、上記説明した方法を採用すればよい。
図2のフローチャートでは、相関係数値算出部115は、(ステップS16)において相関係数値の算出を行った。相関係数値を求める場合、近傍度[A]、近傍度[B]、近傍度[C]の各光度変更値の最大値と最小値の幅は、同じである方が、より正確に、照度計測装置2と照明器具1の距離に対応した値が得られる。このために、近傍度[C]の各光度変更値も、近傍度[A]、近傍度[B]と同様に、9段階としてもよい。なお、各照明器具1の初期光度値を大きい値からスタートさせる場合は、スタート後しばらくの間は、各照明器具1において、取得照度値Lciが目標照度値Ltiよりも上回っているので、ri≧閾値の場合でも、近傍度[C]は選択されず、近傍度[B]が選択される。したがって、正確な相関係数値の算出が可能である。
図2のフローチャートの手順中に、演算制御部110が、光度値をランダムに変更しながら光度値出力部116に供給し、受信部12から照度値を取得し、相関係数値算出部115に相関係数値を算出させる手順を50回程度繰り返す相関係数値算出ルーチンを組み込んでもよい。演算制御部110は、このような相関係数値算出ルーチンを、(ステップS11)の後や、(ステップS16)において、定期的に行なわせる。演算制御部110は、このルーチンにより求めた相関係数値を記憶部111に記憶させておいて、(ステップS14)において使用する。この相関係数値算出ルーチンでは、近傍度[B]を用いればよい。演算制御部110が、光度値をランダムに変更しながら光度値出力部116に供給し、受信部12から照度値を取得する手順を50回程度繰り返し、50回程度の光度値と照度値の各時系列値の間の相関係数値を相関係数値算出部115に算出させる手順を備えた相関係数値算出ルーチンを組み込んでもよい。このルーチン実行の間は、当該照明器具1においては、統計的にほぼ同じ照明状態が維持される。このルーチンの実行は各照明器具1間で同期がないから、他の照明器具1では、近傍度[A]、近傍度[B]、近傍度[C]を適応的に選択してランダムに光度が変わっており、その影響をノイズとして受ける。しかし、相関係数値を、50個のような多数の照度値と光度値の時系列値により算出することにより、ノイズの影響は軽減される。ここで照明器具1において得られる照度計測装置2別の相関係数値は、当該照明器具1と各照度計測装置2との距離に相当する情報になる。照度計測装置2の移動速度は通常遅く、移動は頻繁に行わないことが多いので、相関係数値の算出をフローチャートのループの毎回は実行せず、数回のループ毎に実行するようにしてもよい。
以上説明したように、本発明の照明システムは、複数の照明器具と1以上の照度計測装置と電力計とを備える照明システムであって、前記照度計測装置は、目標照度値を設定する設定部と、照度値を取得する取得部と、前記目標照度値と前記取得部が取得した前記照度値とを送信する送信部を具備し、前記電力計は、前記複数の照明器具が消費する電力値を取得し、当該取得した電力値を送信し、前記照明器具は、前記目標照度値と前記照度値、および、前記電力値を受信する受信部と、発光光度を光度値に従って制御可能な光源と、制御部を具備し、前記制御部は、前記光度値の時系列データ、前記受信した照度値の時系列データを記憶し、前記光度値の時系列データと前記照度値の時系列データに基づき、前記各照明器具と前記照度計測装置の位置関係を表す相関係数値を算出し、前記相関係数値の大きさに従って新光度値を生成して前記光源に供給し、所定の目的関数に基づいて算出される値である目的関数値を、前記目標照度値と前記照度値、および、前記電力値を用いて算出し、前記目的関数値の増減を評価し、前記目的関数値の評価結果に従って前記新光度値の受理または非受理を決定し、前記決定に基づき、非受理の場合、前記新光度値を供給する前の光度値である前回光度値に基づき新たな新光度値を次回光度値として生成して前記光源へ供給する制御部であることを特徴とする照明システムである。相関係数値が小さい場合、制御部11は、小さい新光度値を生成して光源10に供給する。すなわち、制御部11は、相関係数値が所定の閾値より小さい場合の光源10の発光光度を、相関係数値が所定の閾値より大きい場合の光源10の発光光度より小さくする。あるいは、相関係数値が所定の閾値より小さい場合、相関係数値が前記所定の閾値より大きい場合よりも小さい新光度値を光源10に供給する。本実施の形態では、相関係数値を使用することにより、照度計測装置2に近い位置にある照明器具の光度値を大きし、照度計測装置2から遠い位置にある照明器具の光度値が小さくすることができる。明るくしたい位置だけが照明され、暗くてもよい位置の照明が暗くなるので、無駄に電力が消費されることが回避される。また、照度の収束過程においては、目的関数値が悪化した場合は、そのときの新光度値がキャンセルされ、次回光度値の生成に使用されない。すなわち、目的関数値の悪化の影響を避けて、照度値の収束が進むことになり、目的関数値が好ましい値になる方向に、照度の制御が行われることになる。目的関数値が好ましい値とは、取得照度値が目標照度値以上であって、電力値が最も少ない状態の場合に相当することは言うまでもない。
また、以上説明した本発明の照明システムの照明制御方法を要約すると、目標照度値を設定するステップと、照度を計測して照度値を取得するステップと、複数の光源が消費する電力値を計測するステップと、前記電力値と前記目標照度値と前記照度値に基づき光源の光度値を制御する制御ステップを具備する照明制御方法であって、前記制御部ステップは、前記光度値の時系列データと前記照度値の時系列データに基づき、前記各照明器具と前記照度計測装置の位置関係を表す相関係数値を算出するステップを具備し、前記相関係数値と前記目標照度値と前記照度値と前記電力値に基づき、新光度値を生成して前記光源に新光度値または前回光度値に基づき次回光度値を生成して供給し、前記照度値を前記目標照度値に収束させる照明制御方法である。また、(ステップS14)のように、相関係数値が所定の閾値より小さい場合、相関係数値が所定の閾値より大きい場合よりも小さい新光度値を生成して光源10に供給するステップを具備することにより、照度計測装置2に近い位置にある照明器具1の発光光度を大きくし、照度計測装置2から遠い位置にある照明器具1の発光光度を小さくすることができ、省電力照明が実現できる照明制御方法である。
次に、実空間を計算機上に模倣して形成し、数値実験を行った結果について説明する。
図1(A)に示すように、9.6m×9.0mの部屋の天井に、1.2m長の蛍光灯を15本配置した。蛍光灯は、横方法に1.8mずつ隔てて5本ずつ並べ、蛍光灯の長手方向に2.0mずつ離して、3本ずつ配列した。3個の照度計測装置2のS1、S2、S3を図1(A)に示した平面位置で、天上から1.9m下に配置したものと想定した。目的関数値を求める際に必要な各照度計測装置の照度値は、直線光源用の逐点法を用いて計算機上で算出した。ANA/CCアルゴリズムの場合の、パラメータは、以下の通りである。
光源の種類:蛍光灯15個、
照度計測装置:3個、
目標照度値:750(lx)、800(lx)、600(lx)
近傍度[A]:+34、+17、0、−17、−34、−51、−68、−85、−102(cd)、の9段階
近傍度[B]:±68、±51、±34、±17、0(cd)、の9段階
近傍度[B]:+238、+221、+204、・・・、+17、0、−17、−34(cd)、の9段階
蛍光灯の最大光度値:1700(cd)
蛍光灯の最小光度値: 510(cd)
蛍光灯の初期光度値:1700(cd)
目的関数における重み係数:w=0.1
近傍選択の閾値:0.5
相関係数値算出サンプル数:50サンプル
また、相関係数を組込まない単純な確率的山登り法(SjmpleSHC:SSHC)との性能比較も行った。SSHCのパラメータ設定においては、光度の増減値のパターンは、常に近傍度[B]であり、閾値はない。その他のパラメータはANA/CCのパラメータ設定と同じである。
実験結果(1):環境を固定した場合
設置する照度計測装置2の目標照度値は、上記のとおり、S1を750(lx)、S2を800(lx)、S3を600(lx)とした。照度計測装置2の配置は図1(A)に示した通りである。まずANA/CCのシミュレーションでは、実験開始後、初期の照度が減少し、探索回数約200回で各照度計測装置S1、S2、およびS3の観測照度値は750、799、598(lx)となり、目標照度値に収束した。また、探索が進むにつれて電力の最小化が行われ、定常状態における電力は初期状態と比べて約46%減少した。またANA/CCとSSHCの比較では、照度値の収束に要する探索回数はほぼ同等だが、電力最小化においてはANA/CCがSSHCの約4倍高速であった。
実験結果(2):照度計測装置を移動させた場合
上記実験結果(1)の定常状態から照度計測装置S2を図1(A)における照明器具L1、L2、L6、L7の間の位置に移動させた時、照度と電力の変更がどのように起きるかを調べた。まず、ANA/CCのアルゴリズムによると、照度計測装置S2を図1(A)における照明器具L1、L2、L6、L7の間の位置に移動させた時、新しい位置における照度値は小さいので、取得照度値は目標照度値を大きく下回る。しかし、照度計測装置S2を移動させてから探索回数約130回で、目標照度値を下回っていた照度値が目標照度値に達した。定常状態での各照度計測装置S1、S2、S3の位置での照度値は、751、801、および600(lx)となり、目標照度値に収束した。照度計測装置S2が移動した先にある照明器具L1、L2、L3、および、L7は、光度を上げ、照明器具L14、L15は、どの照度計測装置にも影響がなくなったため光度を下げた。これにより、ANA/CCが照度計測装置の移動に対応できることが分かった。
またSSHCとの比較では、照度計測装置S2の移動後の電力上昇量は、ANA/CCの方が小さいことがわかった。これは、SSHCが照度計測装置S2の目標照度値を満たすために全照明が光度を上昇させるのに対し、ANA/CCは照度計測装置S2に影響する照明器具のみが光度を上昇させ、影響がなくなった照明器具が光度を下げたためである。
実験結果(3):知的照明器具が故障した場合
上記、実験結果(1)の定常状態に達した後、照明器具L3を故障(光度を0(cd))させた場合の照度と電力の変更過程を調べた。ANA/CCのアルゴリズムによると、照明器具L13を故障させた時、照度計測装置S1の位置の照度値が目標照度値を一旦下回り、その後、探索回数250回程度でほぼ目標照度値に達した。定常状態における各照度計測装置の照度値は749、808、および607(lx)となり、目標照度値にほぼ収束した。また、故障前後の各照明器具1の光度を比較すると、故障した照明器具L13の明るさを補うために、照明器具L1、L2、L4、L5、L7、L8、L9の光度は、増加した。これによりANA/CCは照明の故障に対応できるといえる。また、ANA/CCの方がSSHCと比較し、やや電力上昇量が少なかった。
以上の結果から、本発明の照明システムは、移動可能な照度計測装置の情報をもとに、自律的に任意の場所に任意の照度を与えることができ、かつ省電力を実現する。また、自律的な照度コントロールを行う自律分散型の制御アルゴリズムとして、相関係数を用いた適応的近傍アルゴリズムを用いると、様々な環境において適切な解探索を行うことが可能である。また単純な確率的山登り法と比較して、省電力の点で非常に優れた性能を示す。これらのことから本発明のANA/CCは、知的照明システムの制御アルゴリズムとして非常に有効である。
また、本発明の照明システムによれば、集中管理機構を必要としない照明システムを構築できるので、システムの耐故障性が高く大規模なビルにおいてもシステムの高い信頼性が得られる。また、照明器具および照度計測装置の追加が容易であり、さらにはビル照明の設計、および施工時に各照明器具や各照度計測装置に識別番号や配置情報などの設定が不要になる。また、本発明の照明システムは、ユーザが照度計測装置に目標照度値を設定するだけで、照明や照度計測装置の位置情報を必要とすることなく、自動的に有効な照明を判断し、適切な場所に適切な照度を提供することができる。また、不必要な照明器具、たとえば、照度計測装置2から遠く位置する照明器具1を不必要に明るく点灯させることがなく、省電力を実現できる。
(実施の形態2)
前記実施の形態1において説明した処理ステップ(ステップS20)における終了条件を判定するための、照度値Lciと目標照度値Ltiとの比較処理を、照度計測装置2において行ってもよい。照度計測装置2において、照度値Lciが目標照度値Ltiの許容誤差範囲に入った場合に、「終了許可」を表す情報を照度計測装置2から照明器具1に送信する。このためには、照度計測装置2に比較部を設け、取得部21と設定部22から照度値Lciと目標照度値Ltiをそれぞれ比較部に供給し、比較部において差を演算して許容誤差値以内かどうか判定し、判定結果を送信部23に渡して受信部12に送信するようにすればよい。受信部12は、この判定結果の情報を演算制御部110に渡し、演算制御部110は(ステップS20)の処理を行う。このような比較部は、MPUとメモリによるコンピュータシステムにより実現でき、上記差分演算と許容誤差判定のプログラムをメモリに格納しておき、MPUがそのプログラムを実行するようにすればよい。演算制御部110においては、全ての照度計測装置2から「終了許可」を受信した場合、(ステップS20)においてYesと判定し、制御処理を終了する。
(実施の形態3)
図2に示したフローチャートの代りに、図6のフローチャートの手順によって処理を行ってもよい。
図2の各ステップと対比すると、図6の(ステップS30)は図2の(ステップS10)に、(ステップS31)は(ステップS11)に、(ステップS32)は(ステップS14)に、(ステップS33)は(ステップS15)に、(ステップS34)は(ステップS16)に、(ステップS35)は(ステップS17)に、(ステップS36)は(ステップS18)に、(ステップS37)は(ステップS20)に、(ステップS38)は(ステップS19)に、(ステップS39)は(ステップS12)に、(ステップS40)は(ステップS34)に、それぞれ対応しており、次の点を除いて同じである。(ステップS31)から(ステップS32)に進む際には、相関係数値が算出されていないので、新光度値としては、初期光度値をそのまま使用する。(ステップS31)から最初に(ステップS34)に到達した段階では、光度値の時系列データ{Cdj}と、照度値の時系列データ{Lci}は、N=1の状態であるので、相関係数値の算出を行わず、次のループでの(ステップS34)から相関係数値の算出を開始する。(ステップS31)から最初に(ステップS35)に到達した段階では、前回の目的関数値の算出が未だないので、目的関数値のデフォルト値を記憶部111に記憶しておく。演算制御部110は、記憶部111からこのデフォルト値を読み出して前回目的関数値として使用し、目的関数値評価部113は、今回の目的関数値と比較して、「良化」、「悪化」の評価を行う。デフォルト値としては、悪い状態に相当する十分に大きい値としておく。本手順によれば、(ステップS36)における新光度値受理がYes(受理)でもNo(非受理)でも、1つのループ内では、照度と電力の計測手順と、目的関数値の算出手順が、それぞれ1回で済む。代りに、(ステップS36)でNo(非受理)の場合、相関係数値の算出が2回になる。
相関係数値の算出には、光度値の時系列データ{Cdj}と、照度値の時系列データ{Lci}の多数の数値の演算が必要である。相関係数値の算出に時間が掛かりすぎる場合は、(ステップS40)の相関係数値算出手順を省き、前回、または前々回の相関係数値を記憶部111に記憶しておいて、これを読み出して(ステップS32)において代用してもよい。収束過程に少しノイズ現象が混入する形になるが、収束時間に対する影響はそれほど大きくない。
図2や図6に示した各ステップの処理手順を、割込みにより起動するようにし、メインルーチンは、電源ON、OFF、各処理ステップの処理終了の割込みを待つようにし、メインルーチンは、各処理ステップからの割込み受付時にその処理ステップから処理結果を受け取り、その結果により、次の処理手順を選択して起動し、次の処理手順に必要なパラメータや変数を渡すようにした、割込み方式で実現してもよい。
(実施の形態4)
上記各実施の形態では電力計3を設け、電力値Pを照明制御のアルゴリズムに組み入れたが、本実施の形態では、電力計3を省いた場合の照明システムについて説明する。実施の形態1から変更する部分について説明する。
図1における電力計3は不要であるので、受信部12は、電力値Pのデータを受信する必要はない。数式2に示した目的関数の係数w=0とする。したがって、目的関数値fは、電力値Pの項を含まず、giによって決まる。図2のフローチャートの(ステップS12)、(ステップS15)における電力計測の処理は不要である。その他の処理ステップは、図2のフローチャートを適用する。
本実施の形態においては、光度変更値の範囲を図7のようにするのが好ましい。図7において、近傍度[A]と近傍度[C]は、図6において説明したのと同様の光度変更値の範囲とし、近傍度[B]は、増光側に0.75の割合、減光側に1.25の割合とする。また、0.25を17(cd)とする。すなわち、近傍度[B]は、減光方向の生起確率がやや大きい。これら、近傍度[A]、近傍度[B]、近傍度[C]の「使い分け基準」は、実施の形態1において、図5(a)と共に説明した「使い分け基準」に従うものとする。「使い分け基準」の実行は、図5(b)のテーブルで説明した方法が適用可能である。
各照明器具1の初期光度値が大きい値からスタートする場合、Lci≧Ltiであるから、近傍度[C]は選択されない。各照明器具1においては、近傍度[B]または近傍度[A]が選択される。近傍度[B]が選択された場合、光源10の光度値は、ランダムに変化するが、平均光度値は低下してゆく。なぜなら、近傍度[B]においては、増光値より減光値が光度変更値として選択される頻度が大きいからである。近傍度[A]が選択される場合も同様であるが、減光の速度は、近傍度[B]より大きい。従って、照度計測装置2の位置における取得照度値は、大きい値から徐々に低下して、目標照度値Ltiに近づいてゆく。とくに近傍度[A]では、増光値より減光値の選択頻度が近傍度[B]の場合より一層大きいので、照度計測装置2から遠い位置にある照明器具では光度を急速に低下させる。この過程では、各照度計測装置2において、Lci≧Ltiであるから、目的関数値f=0である。目的関数値が悪化しないので、新光度値Cdj'は(ステップS18)、(ステップS35)において受理される。
何れかの照度計測装置2において、取得照度値Lciが目標照度値Ltiを下回ると、目的関数値fは、0より大きい値に増加する、すなわち、目的関数値fは悪化する。(ステップS18)、(ステップS35)における判定結果は、非受理となり、新光度値の生成がやり直される。この状態においては、Lci<Ltiであるから、上記実施の形態1において説明した「使い分け基準」に従い、ri≧閾値の位置、すなわち、照度計測装置2の近傍にある照明器具1は、近傍度[C]を選択する。近傍度[C]では、増光の頻度が減光の頻度より大幅に大きいので、上記照度計測装置2では、Lci≧Ltiに戻り、目的関数値fは0に戻る。目的関数値fが0になると、フローチャートの次のサイクルでは、近傍度[B]が選択される。従って、各照度計測装置2の位置での取得照度値Lciは、目標照度値Ltiに近い値の付近で増減を繰り返す。すなわち、目標照度値Ltiに収束することになる。
各照明器具1の初期光度値が小さい値からスタートする場合、全照度計測装置2において、Lci<Ltiとなるから、照度計測装置2の近傍に位置する照明器具1は、近傍度[C]を選択して、それぞれの光度値を急速に増加させる。光度値が十分に大きくなれば、上記説明と同様に、近傍度[B]の選択に変わってゆき、近傍度[B]と近傍度[C]の選択を繰り返す、収束状態になる。
なお、(ステップS20)、(ステップS37)の収束条件については、実施の形態1の場合と同様であるので説明を省く。
以上のように、本実施の形態では、電力計3を省いたが、各照度計測装置2から離れた位置にある照明器具は、光度を下げ、各照度計測装置2の近傍に位置する照明器具は、目標照度値Ltiを達成するに必要最小限の光度値で発光するので、無駄な電力消費が起こらない。
なお、近傍度[A]、近傍度[B]、近傍度[C]の光度変化範囲は、図7の例以外でもよい。近傍度[A]は、減光の頻度を最も多くしておき、近傍度[B]は、減光の頻度をやや多くしておき、近傍度[C]は、増光の頻度を多くしておけばよい。実施の形態1の場合と比較すると、実施の形態1における近傍度[B]は、増光、減光がバランスした中立型の光度変更値分布であるのに対して、本実施の形態における近傍度[B]は、減光方向の光度変更値分布を大きくしたものである。したがって、近傍度[B]が適用された照明器具1においても、減光方向優勢の制御が行われる、すなわち、消費電力は減少方向になる。
上記説明の通り、本実施の形態では、相関係数値と、光源に供給している現在光度値と光源に前回供給した前回光度値の一方とに基づき、新しい光度値である新光度値を生成して、光源に供給する。更に具体的には、相関係数値と目標照度値と取得部が取得した照度値、および、光源に供給している現在光度値と光源に前回供給した前回光度値の一方とに基づき、新しい光度値である新光度値を生成して、光源に供給する。また、上記所定の目的関数値を算出し、この目的関数値の評価結果に従って新光度値の受理または非受理を決定し、決定に基づき、非受理の場合、新光度値を供給する前の光度値である前回光度値に基づき新たな新光度値を生成し光源へ供給する。相関係数値が小さい場合、制御部11は、小さい新光度値を生成して光源10に供給する。すなわち、制御部11は、相関係数値が所定の閾値より小さい場合の光源10の発光光度を、相関係数値が所定の閾値より大きい場合の光源10の発光光度より小さくする。あるいは、相関係数値が所定の閾値より小さい場合、相関係数値が前記所定の閾値より大きい場合よりも小さい新光度値を光源10に供給する。
本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、制御部11、あるいは、演算制御部110、記憶部111、目的関数値算出部112、目的関数値評価部113、新光度値生成部114、相関係数値算出部115、および、光度値出力部116は、ハードウェア(専用回路)により構成することができる。しかし、制御部11、あるいは、演算制御部110、目的関数値算出部112、目的関数値評価部113、新光度値生成部114、および、相関係数値算出部115の動作は、MPUとメモリによるコンピュータシステムにより実現するのが好適である。上記処理手順をプログラムにより作製し、プログラムメモリに格納して、MPUが、プログラムを実行するようにすればよい。記憶部111とプログラムメモリは、不揮発性のメモリが適しているが、揮発性のメモリを使用しても上記動作の実現は可能である。メモリとしては、半導体メモリ、ハードディスクメモリなどを適用できる。なお、光度値出力部116は、光度情報を光源10に伝送するインタフェース回路でよい。
(実施の形態5)
上記実施の形態4では、目的関数値fの算出を行ったが、次に、目的関数値fを使用しない実施の形態について説明する。本実施の形態でも、図7に示した近傍度[A]、近傍度[B]、近傍度[C]を用いる。近傍度の「使い分け基準」は、上記実施の形態1で説明した基準を使用する。
図8に本実施の形態による照明制御の手順を示す。図2のフローチャートと比較しながら説明する。処理ステップ(ステップS50)と(ステップS51)は、図8における(ステップS10)と(ステップS11)と同様である。本実施の形態では、上記実施の形態4の場合と同様、電力計3を使用しないので、制御部11は、(ステップS52)において電力値の取得は行わず、照度値を取得し、(ステップS53)に進む。
(ステップS53)において、制御部11は、相関係数値ri、取得照度値Lci、目標照度値Ltiに基づき、「使い分け基準」に従って近傍度[A]、近傍度[B]、近傍度[C]を選択し、図7に示した近傍度毎の光度変更値の範囲から光度変更値を選択して、新光度値Cdj'を生成し、光源10に供給する。近傍度[A]、[B]、[C]を選択、光度変更値の選択、および、新光度値Cdj'生成の処理の詳細は、実施の形態1で説明した手順と同様である。(ステップS53)は、相関係数値が所定の閾値より小さい場合、相関係数値が所定の閾値より大きい場合よりも小さい新光度値を生成して光源10に供給するステップである。
(ステップS54)に進み、制御部11は、再び照度値を取得し、(ステップS55)に進む。
(ステップS55)において、制御部11は、新光度値Cdj'と取得照度値Lciをそれぞれ加えた時系列データ{Cdj}と照度値の時系列データ{Lci}により、相関係数値riを算出する。
(ステップS56)に進み、制御部11は、取得照度値Lciが目標照度値Ltiに十分近いかどうかの判定を行うことにより終了条件を満たしているかどうかの判定を行う。終了条件を満たしていない場合にはNoとなり、制御部11は、(ステップS52)に戻り、次の新光度値を生成して、処理のループを繰り返す。
本実施の形態においては、上記実施の形態4の場合と同様、図7に示した近傍度[A]、近傍度[B]、近傍度[C]の光度変更値の範囲を使用しているので、実施の形態4で説明したのとほぼ同様の原理により、照度値が目標照度値に収束する。本実施の形態では、目的関数値を使用しないので、取得照度値Lciが目標照度値Ltiを下回る確率が、実施の形態4の場合に比べて、やや増えると思われるが、その程度は軽微である。予め目標照度値Ltiを少し高めに設定しておけば、この影響を回避することが可能である。本実施の形態は、目的関数値fの演算が不要であり、制御部11の処理が簡単になる利点がある。
以上説明したように、本実施の形態では、相関係数値と、光源に供給している現在光度値に基づき、新しい光度値である新光度値を生成して、光源に供給する。更に具体的には、相関係数値と目標照度値と取得部が取得した照度値、および、光源に供給している現在光度値に基づき、新しい光度値である新光度値を生成して、光源に供給する。制御部11は、相関係数値が所定の閾値より小さい場合の光源10の発光光度を、相関係数値が所定の閾値より大きい場合の光源10の発光光度より小さくする。あるいは、相関係数値が所定の閾値より小さい場合、相関係数値が前記所定の閾値より大きい場合よりも小さい新光度値を光源10に供給する。
本実施の形態では、目的関数を使用しないので、制御部11において、目的関数値の算出演算は不要になる。図3に示した制御部11の構成の場合、目的関数値算出部112、目的関数値評価部113は不要となる。
したがって、本実施の形態において、制御部11、あるいは、演算制御部110、記憶部111、新光度値生成部114、相関係数値算出部115、および、光度値出力部116は、ハードウェア(専用回路)により構成することができる。しかし、制御部11、あるいは、演算制御部110、新光度値生成部114、および、相関係数値算出部115の動作は、MPUとメモリによるコンピュータシステムにより実現するのが好適である。上記処理手順をプログラムにより作製し、プログラムメモリに格納して、MPUが、プログラムを実行するようにすればよい。記憶部111とプログラムメモリは、不揮発性のメモリが適しているが、揮発性のメモリを使用しても上記動作の実現は可能である。メモリとしては、半導体メモリ、ハードディスクメモリなどを適用できる。なお、光度値出力部116は、光度情報を光源10に伝送するインタフェース回路でよい。
(実施の形態6)
上記各実施の形態では、確率的山登り法を発展させ、相関係数値を活用した適応的近傍アルゴリズムANA/CCと名付けた本発明の方法により照度制御を行った。相関係数値は、資源分配法による照明制御方式にも適用できる。資源分配法では、多数の制御対象がある場合、それぞれを一定方向に所定量ずつ制御してゆき、制御結果を判定し、制御状態が悪化した場合、元に戻す制御を行う一連の手順を繰り返しながら、目標値に収束させる。
図9は、本実施の形態に使用する近傍度[A]、近傍度[B]、近傍度[C]の光度変更値の範囲を示す図である。図9に示すように、近傍度[A]は、減光方向に、2.0、近傍度[B]は、減光方向に、1.0、近傍度[C]は、増光方向に1.0、とする。0.25単位を17(cd)とする。
図10は、本実施の形態における制御部11の処理のフローチャートの図である。(ステップS60)の初期設定、(ステップS61)の初期光度生成は、実施の形態1における図2の(ステップS10)、(ステップS11)と同様である。(ステップS62)において、制御部11は、照度計測装置2より送信される照度値を取得する。
(ステップS63)から(ステップS66)は、相関係数値算出の処理ルーチンである。(ステップS63)において、制御部11は、初期光度値からランダムに変化させた新光度値を生成し光源10に供給する。ランダムに変化させる光度変更値の範囲は、図5(a)の近傍度[B]のように、増光、減光バランス型とする。また、各照明器具間においても互いにランダムな光度変更値が選択される。
(ステップS64)に進み、制御部11は、新光度値により照明されている状態での照度値を照度計測装置2から取得し、光度値の時系列データ{Cdj}と照度値の時系列データ{Lci}に追加する。
(ステップS65)に進み、数式1に従って、光度値の時系列データ{Cdj}と照度値の時系列データ{Lci}の相関係数値riを算出する。
(ステップS66)に進み、光度値の時系列データ{Cdj}と照度値の時系列データ{Lci}が、所定の数、たとえば、各50個になったかどうか判定し、Noの場合、(ステップS63)に戻り、光源10の光度値を別のランダムな新光度値に変更する。光度値の時系列データ{Cdj}と照度値の時系列データ{Lci}の数が各50個程度になれば、相関係数値riは、ほぼ安定した数値となり、必要な精度が得られる。
(ステップS66)において、時系列データが50個に到達したと判定されると、Yesとなり、(ステップS67)に進む。
(ステップS67)において、制御部11は、照度計測装置2から照度値を取得し、(ステップS68)に進む。
(ステップS68)において、制御部11は、相関係数値ri、取得照度値Lci、目標照度値Ltiに基づき、下記の「使い分け基準」に従って近傍度[A]、近傍度[B]、近傍度[C]を選択し、図9に示した近傍度毎の光度変更値の範囲から光度変更値を選択し、現在光度値に対して加算、乗算などの演算を行って、新光度値Cdj'を生成し、光源10に供給する。(ステップS68)は、相関係数値が所定の閾値より小さい場合、相関係数値が所定の閾値より大きい場合よりも小さい新光度値を生成して光源10に供給するステップである。
本実施の形態における「使い分け基準」は、以下の通りである。取得照度値Lci>目標照度値Ltiの場合には、ri≧閾値なら近傍度[B]を選択し、ri<閾値なら近傍度[A]を選択する。一方,取得照度値Lci≦目標照度値Ltiの場合には、riに関わらず近傍度[C]を選択する。照度計測装置2が複数あって、複数種類の近傍度が選択される場合は、近傍度[C]、[B]、[A]の順とし、近傍度[C]の優先度を最も高くする。この「使い分け基準」によれば、取得照度値Lciが目標照度値Ltiより大きい場合、照度計測装置2の遠方に位置する照明器具は、近傍度[A]に従い、どんどん減光し、照度計測装置2の近傍に位置する照明器具は、近傍度[B]に従い、ゆっくり減光してゆく。照度計測装置2の1つでも、取得照度値Lciが目標照度値Ltiを下回ると、全照明器具は、近傍度[C]に従い、増光する。
(ステップS68)の処理後、(ステップS69)において、終了条件を満たしたかどうか判定する。終了条件は、実施の形態1において説明したものと同様でよい。取得照度値Lciが、目標照度値Ltiの所定の許容誤差範囲内の値になった場合、Yesとなり、一連の処理を終わる。照度計測装置2が複数の場合、取得照度値Lciの1つでも許容誤差範囲外の場合は、Noと判定し、(ステップS67)に戻る。
図9の近傍度で、0.25単位を17(cd)とした場合、近傍度[A]は、[−17、−34、−51、−68、−85、−102、−119、−136(cd)]の8段階の光度変更値、近傍度[B]は、[−17、−34、−51、−68(cd)]の4段階の光度変更値、近傍度[C]は[+34、+17(cd)]の2段階の光度変更値を採ることができる。各近傍度の複数の光度変更値からの選択は、ランダムに行えばよい。
なお、図9の近傍度の変形として、近傍度[A]は、−34(cd)の1段階の光度変更値、近傍度[B]は、−17(cd)の1段階の光度変更値、近傍度[C]は+17(cd)の1段階の光度変更値としてもよい。また、17(cd)の倍数以外の値でもよい。
図9に示した近傍度[A]、近傍度[B]、近傍度[C]の上記「使い分け基準」を(ステップS63)において実行するには、制御部11の内部に、図5(b)に示したテーブルを設けて、以下の判定を行えばよい。制御部11は、テーブルのΔLiの欄を調べ、負の値があれば、riの欄を調べ、ri≧閾値となる相関係数値riがあれば、近傍度[C]を選択し、なければ近傍度[A]を選択する。ΔLiの欄を調べ、負の値がなければ、riの欄を調べ、ri≧閾値となる相関係数値riがあれば、近傍度[B]を選択し、なければ近傍度[A]を選択する。選択した近傍度に割り振られた複数の光度変更値からランダムに光度変更値を1つ選択して、現在光度値と加算すれば、新光度値が生成できる。
図11は、近傍度[A]、近傍度[B]の2つとした場合である。近傍度[A]の増光を0.5とし、近傍度[B]の増光を1.0の割合としている。本近傍度の場合の「使い分け基準」は、以下の通りである。取得照度値Lci>目標照度値Ltiの場合には、ri≧閾値なら近傍度[B]を選択し、その中で、減光の光度変更値を選択する。ri<閾値なら近傍度[A]を選択し、その中で、減光の光度変更値を選択する。一方,取得照度値Lci≦目標照度値Ltiの場合には、ri≧閾値なら近傍度[B]を選択し、その中で、増光の光度変更値を選択する。ri<閾値なら近傍度[A]を選択し、その中で、増光の光度変更値を選択する。照度計測装置2が複数あって、複数種類の近傍度が選択される場合は、近傍度[B]の優先度を高くする。この「使い分け基準」によれば、取得照度値Lciが目標照度値Ltiより大きい場合、照度計測装置2から遠方に位置する照明器具は、近傍度[A]に従い、どんどん減光し、照度計測装置2の近傍に位置する照明器具は、近傍度[B]に従い、ゆっくり減光してゆく。照度計測装置2の1つでも、取得照度値Lciが目標照度値Ltiを下回ると、増光を行うが、照度計測装置2の近傍にある照明器具の増光が、遠方の照明器具の増光よりも大きくなる。したがって、大きな照度を確保したい位置を明るくし、それ以外の位置を暗くできる。
図11に示した近傍度[A]、近傍度[B]の「使い分け基準」を(ステップS63)において実行するには、制御部11の内部に、図5(b)に示したテーブルを設けて、以下の判定を行えばよい。制御部11は、テーブルのΔLiの欄を調べ、負の値があれば、riの欄を調べ、ri≧閾値となる相関係数値riがあれば、近傍度[B]の増光値を選択し、なければ近傍度[A]の増光値を選択する。ΔLiの欄を調べ、負の値がなければ、riの欄を調べ、ri≧閾値となる相関係数値riがあれば、近傍度[B]の減光値を選択し、なければ近傍度[A]の減光値を選択する。選択した近傍度の増光、または減光に割り振られた複数の光度変更値からランダムに光度変更値を1つ選択して、現在光度値と加算すれば、新光度値が生成できる。
なお、図11の近傍度の場合、近傍度[A]は、+8.5、−34(cd)の2段階の光度変更値、近傍度[B]は、+17、−17(cd)の2段階の光度変更値としてもよい。この場合、各近傍度においては、ランダムな光度変更値の選択処理は無くなることになる。また、各光度変更値の間の大小関係が保たれる範囲で、上記以外の値でもよい。
各近傍度の光度変更値の大きさを、取得照度値Lciと目標照度値Ltiの差に応じて変更するようにしてもよい。制御部11が、取得照度値Lciと目標照度値Ltiの差分を演算し、差分と所定の係数と上記光度変更値を乗算し、光度変更値として使用するようにする。このようにすれば、取得照度値Lciが目標照度値Ltiから大きくずれている場合、大きな光度変更値が算出されて使用されるので、取得照度値Lciを目標照度値Ltiに急速に近づけることができ、取得照度値Lciが目標照度値Ltiに近づくにつれて、光度変更値が小さくなり、精密に目標照度値Ltiに到達させることができ、照度のちらつきも小さくできる。なお、近傍度[A]は、+17、+8.5、−34、−68(cd)の4段階の光度変更値、近傍度[B]は、+34、+17、−17、−34(cd)の4段階の光度変更値としておき、取得照度値Lciが目標照度値Ltiから大きくずれている場合、近傍度[A]は、+17、−68(cd)の2段階の光度変更値、近傍度[B]は、+34、−34(cd)の2段階の光度変更値から選択し、取得照度値Lciが目標照度値Ltiに近づくと、近傍度[A]は、+8.5、−34(cd)の2段階の光度変更値、近傍度[B]は、+17、−17(cd)の2段階の光度変更値から選択するようにすれば、同様の効果を得られる。
いずれにしても、本実施の形態では、前記相関係数値が小さい場合、減光用の光度変更値には、大きい減光用の光度変更値を適用し、相関係数値が大きい場合、減光用の光度変更値には、小さい減光用の光度変更値を適用するので、どの照度計測装置2からも遠い位置にある照明器具の光度値は、その他の照明器具1の光度値よりも小さい値になり、省電力になる。光度変更値をランダムに選択する場合は、選択した減光用の光度変更値の平均値が、上記、大きい、または、小さいということになる。
本実施の形態では、相関係数値算出の処理ルーチン、(ステップS63)から(ステップS66)を設けた。照度計測装置2にスタートボタンを設けておき、照度計測装置2を移動させた場合、使用者がスタートボタンを操作し、照度計測装置2から処理開始指令情報を各照明器具1の受信部12に送信し、制御部11が、図10の(ステップS60)の処理を開始するようにすればよい。このようにすると、照度計測装置2の新しい位置における相関係数値riの算出が(ステップS63)から(ステップS66)により行われる。
以上説明したように、本実施の形態では、相関係数値と、光源に供給している現在光度値に基づき、新しい光度値である新光度値を生成して、光源に供給する。更に具体的には、相関係数値と目標照度値と取得部が取得した照度値、および、光源に供給している現在光度値に基づき、新しい光度値である新光度値を生成して、光源に供給する。制御部11は、相関係数値が所定の閾値より小さい場合の光源10の発光光度を、相関係数値が所定の閾値より大きい場合の光源10の発光光度より小さくする。あるいは、相関係数値が所定の閾値より小さい場合、相関係数値が前記所定の閾値より大きい場合よりも小さい新光度値を光源10に供給する。
制御部11、または、制御部11を構成する演算制御部110、記憶部111、新光度値生成部114、相関係数値算出部115、および、光度値出力部116は、ハードウェア(専用回路)により構成することができる。しかし、制御部11、または、演算制御部110、新光度値生成部114、および、相関係数値算出部115の動作は、MPUとメモリによるコンピュータシステムにより実現するのが好適である。上記処理手順をプログラムにより作製し、プログラムメモリに格納して、MPUが、プログラムを実行するようにすればよい。記憶部111とプログラムメモリは、不揮発性のメモリが適しているが、揮発性のメモリを使用しても上記動作の実現は可能である。メモリとしては、半導体メモリ、ハードディスクメモリなどを適用できる。なお、光度値出力部116は、光度情報を光源10に伝送するインタフェース回路でよい。
(実施の形態7)
上記各実施の形態では、光度値Cdjとして、光源10の発光光度の大きさに対応した情報を適用した。本実施の形態では、光度値として、光源10の発光光度の変化分に対応した+17cd、+34cd、−17cd、−34cdのような定量的情報ΔCdj、あるいは、「もっと明るく」、「もっと暗く」のような定性的な情報を適用する。
まず、定量的情報ΔCdjを適用する場合について説明する。光度値として使用するΔCdjは、発光光度の絶対値ではなく、発光光度の変化分に相当する。このような発光光度の変化分ΔCdjを光度値の入力とする光源10は、以下のような構成であればよい。光源10には、現在の発光中の光度値、すなわち、それまでに光源に供給された変化分形式の光度値ΔCdjの積分値Cdjを内部に蓄積、記憶する機能を設ける。新しい光度値ΔCdjの供給を受けると、光源10は、記憶している積分値Cdjに対応する定量的情報に新光度値ΔCdjを累算し、新たな積分値(Cdj+ΔCdj)に基づいて発光を行う。また、電源ON時には、蓄積している積分値により発光し、電源OFF時には積分値を記憶する。別の構成としては、電源OFF時には、積分値=0とし、電源ON時に、初期の変化分形式の光度値ΔCdjとして、大きな値を光源に供給し、明るく発光させるようにしてもよい。
なお、上記変化分形式の光度値ΔCdj、および、積分値Cdjは、カンデラ単位の情報の形式以外に、それらの大きさに応じた単位のない数値情報のような定量的情報の形態でもよい。
このような変化分の光度値ΔCdj情報を用いる場合は、後述するような変化分に基づく相関係数値を算出して使用するのが好ましい。相関係数値が所定の閾値より大きい場合は、小さな減光光度になる光度値ΔCdj、たとえば、−17cdに相当する情報を新光度値とし、相関係数値が所定の閾値より小さい場合は、大きな減光光度になる光度値ΔCdj、たとえば、−34cdに相当する情報を新光度値として採用する。増光する場合は、相関係数値が所定の閾値より大きい場合は、大きな増光光度になる光度値ΔCdj、たとえば、+34cdに相当する情報を新光度値とし、相関係数値が所定の閾値より小さい場合は、小さな増光光度になる光度値ΔCdj、たとえば、+17cdに相当する情報を新光度値として採用する。したがって、本実施の形態では、新光度値生成部114の処理内容は、相関係数値、目標照度値、および、取得照度値に基づき光度値ΔCdjを選択して新光度値として出力する処理、または動作とすればよい。言い換えると、図5、図7、図9、図11において説明した種々の光度変更値から選択して、選択した光度変更値を光度値として光源10に供給することになる。
次に、光度値情報として、「もっと明るく」、「もっと暗く」のような定性的情報を適用する場合について説明する。「もっと明るく」、「もっと暗く」の情報自体には、増光光度量や減光光度量のような大きさの情報はなく、一種の符号情報の形態である。そこで、光源10の内部に定性的情報を定量的情報に変換する変換テーブルを設ける。この変換テーブルにより、光源10内部で、「もっと明るく」、「もっと暗く」の情報を、+17cd、−17cd、あるいは、+2%、−2%などの情報に変換し、上記積分値を演算して、積分値に基づき、光源10の発光体が所定の光度で発光するようにする。本発明では、照明器具1と照度計測装置2の位置関係を表す相関関係情報により、各照明器具1の発光光度を制御することにより、照明器具1の位置によって異なる光度の発光がなされ、照度計測装置2の位置によってそれぞれ適切な照度を実現する可能性が得られる。このためには、「もっと明るく」、「もっと暗く」に加えて、「更に暗く」のような光度値の情報を設けるのがよい。「更に暗く」は、たとえば、−34cdに相当するものとすればよい。このような光度値情報は数値情報ではないので、数式1のような計算式、あるいは、後述する変化分による相関係数値の算出方法をそのまま適用できないが、定性的な光度値情報を数値に置き換えれば、相関係数値の算出は可能である。制御部11は、相関係数値が所定の閾値より小さい場合の光源10の発光光度を、相関係数値が所定の閾値より大きい場合の光源10の発光光度より小さくする制御を行うことになる。
(実施の形態8)
上記、各実施の形態において、所望の照度分布に収束した状態での各照明器具1の光度値を、演算制御部110が、照明システムの電源OFF検出時に、制御部11の記憶部111に記憶しておき、公演等の前、照明システムの電源ON検出時に、記憶部111から光度値を読み出して光源10に供給することにより、所望の照度分布を即座に実現するようにできる。また、演算制御部110が、収束過程の任意の段階での各照明器具1の光度値を記憶部111に記憶させておき、後でその光度値を読み出してその光度に設定し、その段階から収束の手順を開始すれば、より速やかに所望の照度分布に到達できる。この機能を実現するには、各照明器具1の制御部11の演算制御部110において、電源ON、OFFの割込み機能を設けておき、電源OFFの割り込みが発生した時に、記憶部111に記憶済みの光度値Cdjをそのまま保持し、電源ONの割り込みが発生した時に、記憶部111から記憶済みの光度値Cdjを読み出して光源10に供給するようにすればよい。
(実施の形態9)
上記、各実施の形態において、所望の照度分布へ向かっての収束過程での各照明器具1の光度値、あるいは、照度計測装置2での照度値をディスプレイに表示するようにすれば、収束動作状況を確認できる。このためには、表示装置を更に設けておき、各光度値の各照明器具1から、各照度値Lciを各照度計測装置2から、それぞれ表示装置に送信し、表示装置が受信して表示するようにすればよい。収束までの進行状況を把握することができる。
(その他の実施の形態および補足)
目的関数は、数式2に限定されない。電力値が増加すると増加し、照度値Lciが目標照度値Ltiより小さいほど絶対値が増加する関数であればよい。電力値が増加すると減少し、照度値Lciが目標照度値Ltiより小さいほど減少する関数でもよく、この場合は、関数値が大きいほど「良好」とする。なお、既に説明したように、電力計3を設けない場合は、電力値Pの項は不要である。
上記各実施の形態においては、相関関係情報として、相関係数値riを算出して使用した。相関係数値算出部115は、相関関係情報を算出または生成する相関関係情報生成手段の一例である。相関関係情報生成部あるいは生成手段は、相関関係情報を算出または生成する手段であれば、相関係数値算出部115に限定されない。また、算出は、数値の計算に限定されず、情報の生成を含む。たとえば、相関関係情報は、照明器具1と照度計測装置2の位置関係の大小を表す「遠い」、「近い」の意味を有するような符号情報でもよく、相関関係情報生成部は、このような符号情報を生成するものでもよい。
また、相関関係情報、または、相関係数値は、照明器具の光度が照度計測装置の測定する照度に及ぼす影響に関する情報であって、その形態、数式を問わない。上記実施の形態1における相関係数値の説明においては、数式1において、変数xkとして光度値Cdjの時系列データ{Cdj}を適用し、変数ykとして上記の取得した照度値Lciの時系列データ{Lci}を適用して相関係数値rを算出した。別の方法として、変数xkとして光度値Cdjの変化分である差分値の時系列データ{ΔCdj}を適用し、変数ykとして上記の取得した照度値Lciの変化分である差分値の時系列データ{ΔLci}を適用してもよい。ΔCdjは、前回光度値から今回光度値への変化分、すなわち、光度変更値である。ΔLciは、今回光度値に対する照度値から前回光度値における取得照度値を引いた、照度値の変化分の値である。このような式による相関係数値は、光源10の光度の変化分が、照度計測装置2の取得照度値の変化分に対する影響の大きさを表すことになる。光源10の光度の変化分の時間的なパターンが、照度計測装置2の取得照度値の変化分の時間的なパターンに近いほど、光源10と照度計測装置2の位置関係が近いことになる。k=1からNの各ΔCdjは、時系列データ{Cdj}の隣り合うCdjを引き算して得、各ΔLciは、時系列データ{Lci}の隣り合うLcjを引き算して得ることができる。あるいは、光度変更値の時系列データを、時系列データ{Cdj}の代りに光度値の変化分として記憶し、取得照度値Lciの変化分である差分値ΔLciの時系列データを時系列データ{Lci}の代りに照度値の変化分として記憶しておき、相関係数値の算出に使用してもよい。なお、上記実施の形態1において説明した「非受理」の判断において、現在光度値ではなく、前回光度値に光度変更値を加算して新光度値を生成しなおす場合には、光度値Cdjの変化分である差分値ΔCdjとしては、1回前の光度変更値から今回の光度変更値を減算した値を適用し、記憶部111における差分値の時系列データ{ΔCdj}に追加記憶するようにすればよい。
また、照明器具1が照度計測装置2との距離を計測する手段を内蔵しておき、計測した距離の情報を上記相関係数値の代りに使用してもよい。照明器具1と照度計測装置2の距離が近いと、照度値は、照明器具1の光度の影響を強く受ける。照明器具1と照度計測装置2の距離が遠いと、照度値は、照明器具1の光度の影響を余り受けない。照度計測装置2の近くにある他の照明器具1の光度値の影響のほうが大きくなる。したがって、距離の情報は、本発明における相関係数値の概念に含まれる情報となる。この例によっても、相関関係情報、または、相関係数値の概念が、数式1の表現に限られないことになる。距離を計測する手段としては、レーダ装置を使用できる。照明器具1の制御部11にレーダ装置を搭載しておき、レーダ装置は、レーダ電波を照度計測装置2に発信して、照度計測装置2の位置を探索し、照明器具1と照度計測装置2の距離を計測する。制御部11は、計測した距離情報を相関係数値の代りに使用する。また、次のような構成でもよい。照明器具1と照度計測装置2にGPS受信機を内蔵しておき、照明器具1と照度計測装置2がそれぞれの緯度・経度を計測する。照度計測装置2は、計測した自身の緯度・経度情報を照明器具1に送信する。照明器具1は、自身の緯度・経度情報と、受信した照度計測装置2の緯度・経度情報の差から、お互いの間の距離を算出する。制御部11は、算出した距離情報を相関係数値の代りに使用する。レーダにより距離を計測する装置、GPS受信機により、自身の位置を計測する装置は、周知であるので、その詳細の説明は省く。GPS電波を受信できない環境では、照明器具1と照度計測装置2により、特定の室内で、GPSシステムと同様の位置計測システムを形成してもよい。
上記実施の形態においては、相関係数値riを閾値=0.5以上と以下の2つのランクに分類し、近傍度[A]、[B]、[C]のように、近傍度を、2種類、または3種類用意して、割り当てる例について説明した。別の例として、閾値を0.3、0.6の2つとし、相関係数値riを3つのランクに分類し、それぞれのランクに近傍度を割り当てるようにしてもよい。その場合、近傍度の数を4または3とすればよい。ランク数、近傍度の種類を更に多くしてもよい。閾値の値も、上記数値以外の値としてもよい。
なお、照度値Lciおよび目標照度値Ltiは、照度の大きさを表す数値情報、照度の大小の度合いを表す符号表示形式の情報などであれば、その形式を問わない。各種光度値も、光度の大きさを表す数値情報、光度の大小の度合いを表す符号表示形式の情報など形式を問わない。数式2の演算形式、またはその変形式、および、新光度値の算出演算に対応できる形式、すなわち大きさ、大小関係などを表現できる形式の情報であればよい。光度変更値についても同様である。
すなわち、光度値Cdjは、光源10の光度を設定する情報であれば、そのデータ形式を問わない。光源10は、白熱電球、蛍光灯、放電灯など、その種類により、発光光度の制御特性が異なる。光度値Cdjはカンデラ値で表される光度そのものであってもよいが、光源10の光度を設定できるデータであれば、単位のない値や大きさの程度を表す数値情報、あるいは、符号情報でもよい。光源10が内蔵している光度制御回路の制御入力信号により決まるデータ形式とすればよい。光源10の光度を電圧情報により制御する光度制御回路の場合は、光度値出力部116において、デジタル形式の光度値情報をデジタル・アナログ変換して電圧情報を光源10に供給すればよい。
また、光度値としては、実施の形態7において説明したように、光度値の変化分を表す定量的情報、あるいは、「もっと明るく」、「もっと暗く」のような定性的な情報でもよい。
また、光度変更値情報は、複数の光度変更値を含む情報であることは、既に説明したとおりである。光度変更値は、上記光度値Cdjを変更する情報であればよい。定量的な情報でなく、「もっと明るく」、「もっと暗く」のような定性的な情報でもよい。この場合、新光度値生成部114においては、上記定性的な情報に基づき新光度値用に光度値Cdjを生成すればよい。
光源10の光度制御回路は、インバータ方式のように、高周波パルス波形により発光体の点灯、消灯を繰り返し、点灯時間率を変えることにより、平均光度を制御する方式が、省電力の観点から好ましい。
上記各実施の形態において、照明器具の最高光度が低ければ、上記説明した手順により、所望の照度の調節が出来ない場合があるのは言うまでもない。また、光源10の数が少なく、照度計測装置2の数が多い場合、すべての位置の照度値を目標照度値のとおりに調節できない場合があるのも言うまでもない。また、目標照度値の一部に非常な高照度や低照度を含む場合、適切な位置に光源を設置しないと所望の照度値に調節できないのも言うまでもない。いいかえれば、全光源10の光度調節により実現がもともと可能な照度分布であれば、上記説明の手順により、所望の照度分布の実現が可能である。また、目標照度値に対して誤差は大きめでも、目標照度値の方向へ近づけることはできる。
上記、電力計3は、計測した電力値データを、電力ケーブルを介して、各照明器具1に送信してもよい。この場合、受信部12は、電力ケーブルを介して送信される電力値データを受信する有線通信受信部と、照度計測装置2の送信部23からの情報を受信する受信部とを具備すればよい。
上記各実施の形態において、ブロードキャスト方式の通信が使用できることを説明した。各照度計測装置2から各照明器具1への通信は、他の通信方式でも良い。
図12は、有線通信方式を適用した場合の本発明の構成図である。図12において、天井に取り付けられた照明器具Lj−1、Lj、Lj+1には電力計3と電力供給線5を介して電力が供給される。電力計3が計測した電力値Pの情報は、有線LAN回線6を通じて照明器具Lj−1、Lj、Lj+1の各受信部に供給される。室内の机の上などに設けられた照度計測装置S1、S2の出力する取得照度値Lci、目標照度値Lti(i=1、2)は有線LAN回線7、ルータ装置4を介して照明器具Lj−1、Lj、Lj+1の各受信部に供給される。
図13は、有線通信方式と無線通信方式を併用した場合の本発明の構成図である。図13において、天井に取り付けられた照明器具Lj−1、Lj、Lj+1には電力計3と電力供給線5を介して電力が供給される。電力計3が計測した電力値Pの情報は、有線LAN回線6を通じて照明器具Lj−1、Lj、Lj+1の各受信部に供給される。照度計測装置S1、S2の出力する取得照度値Lci、目標照度値Lti(i=1、2)は無線LAN通信方式によりにより無線LAN受信端末装置8に送られる。無線LAN受信端末装置8は、室内の天井などに設置しておく。無線LAN受信端末装置8は、取得照度値Lci、目標照度値Lti(i=1、2)を受信し、有線LAN回線6を通じて照明器具Lj−1、Lj、Lj+1の各受信部にマルチキャスト形式、または、ブロードキャスト形式で供給する。無線LAN方式では、送信パケットの混信、すなわち、衝突対策が施されているので、本発明に適用するのに適している。
なお、有線LAN回線6は、電力供給線5の上に形成してもよい。また、上記有線LAN回線以外の有線通信方式、無線LAN方式以外の無線通信方式を使用してもよい。
また、上記実施の形態4、5、6のように電力計3を使用しない場合には、図12、図13において、電力計3を省けばよいことは言うまでもない。
照度計測装置2と各照明器具1を結ぶスター型ネットワークでもよい。ネットワークの適切な箇所、例えば、スター型ネットワークであれば、その中心に全照明器具1を管理する中枢装置を置いてもよい。全照明器具1の制御部11をこの中枢装置に設置してもよい。これらの装置のネットワークとしての通信には、周知のLAN、無線LAN、赤外線LAN、Bluetooth(登録商標)方式、電灯線LAN、エコネットなどの通信プロトコルを使用してもよいし、それらのプロトコルの一部を利用してもよい。
上記各照度計測装置2で目標照度値と照度値の送信時刻をランダムにしたり、各照明器具1の内部で光度変更値をランダムに選択したりするためには、デジタル方式では擬似乱数発生器を用いるのが一般的である。しかし、各照度計測装置2、各照明器具1のそれぞれが互いにランダムに動作するには、個々の装置内部の乱数が互いにランダムな関係である必要がある。擬似ランダム発生器は時間的にはランダムな数値を発生できるが、2台の装置で同じ擬似乱数発生プログラムを同じ時刻に起動すると、発生する数値の時系列は、2台の装置間で全く同じになり、互いの間でのランダム性は得られない。各照度計測装置2、各照明器具1の個々において、擬似乱数発生の初期値などのパラメータや乱数発生手順を異なるようにする必要がある。しかし、この方法では、製品の一台一台で、互いに異なる設定を行わねばならず、同一のLSI(集積回路)などを用いることができないし、少なくともLSI毎に異なった初期設定が必要になる。また、大量に生産した場合、全く同じ擬似乱数を発生する製品ができてしまい、これを同じ部屋に設置してしまう危険は排除できない。このような課題を解決するには、各照度計測装置2、各照明器具1の内部に雑音信号発生回路を設けておき、雑音発生回路の出力する雑音信号を増幅してパルス信号に変換し、パルス信号のパルス幅やパルス数をカウンタにより計数し、計数値を乱数として使用したり、擬似乱数発生器の初期値などのパラメータとして使用したりすれば、元元の雑音信号の波形が雑音発生回路毎に必ず異なるので、パルス信号のパルス幅やパルス数も、各照度計測装置2、各照明器具1の間で互いにランダムになる。このような乱数を送信部23の送信時刻の選定や光度変更値の選択に使用すれば、照度計測装置2や照明器具1など、互いの間のランダム性が得られる。
上記各実施の形態では、基本的には、各照明器具1における処理を非同期で行うように説明したが、全体システムが、時間Tのスロットに従って同期動作するようにしてもよい。同期動作を行う場合は、同期信号発生器を設けておき、同期パルス信号を全照明器具1や全照度計測装置2に送信し、処理手順を同期的に進めるようにすればよい。照度計測装置2に受信部を設けておくことは言うまでもない。
前記各実施の形態において光度を変更しながら目標照度値に収束させる途中では、光源10の光度値変化により、部屋の明るさにちらつきを感じる可能性がある。ちらつき感を防止または減少させるためには、図2で説明した各処理手順のステップの速度をあげて、処理のループを1秒当たり、10回以上、更に好ましくは、30回以上にすればよい。人の目は、明るさの速い変化には気づかないので、この現象が起きる程度の速い処理速度にすればよい。一方、各光源の光度の安定時間を考慮して、新光度値による発光開始後、所定の安定時間の後、処理ステップ(ステップS12)や(ステップS15)における照度値や電力値の取り込み処理を実行するようにした方がよい。
上記各実施の形態において、各照明器具1における光度変更値の1ステップの値は、上記説明での値から、他の値にしても使用可能である。照度値と目標照度値の差照度の平均値を、各照明器具1の演算制御部110が算出し、平均値が減少するのに対応して、演算制御部110が、光度変更値の1ステップの値を徐々に小さくしてゆくようにしてもよい。収れんが進むにつれて光度変更値を小さくする方法としては、次のような方法でもよい。各照明器具1の演算制御部110が、変更制御の回数を計数してゆき、変更制御の回数が多くなるに従って光度変更値の1ステップの値を小さくしていってもよい。また、各照明器具の演算制御部110に時間計数器を設けておき、制御開始からの経過時間に従って、演算制御部110が、光度変更値の1ステップの値を小さくしていってもよい。
各照明器具1における初期光度値を、光源の光度の最高値と最低値の中間の適当な値にしてもよい。
照度計測装置2は、ホールや会議室の所定の固定的な位置、たとえば、天井と床面の中間に吊るすように設けてもよいが、リモコン装置のような小型の装置として、ホールや会議室の任意の位置に移動できるようにしてもよい。このようにすれば、任意の位置の照度を所望の値に制御することができる。たとえば、会議机の特定の位置を所望の明るさにすることができる。また、使用者が、設定部22を操作して目標照度値を設定できるようにしてもよい。
照度計測装置2を移動可能とした場合、室外に持ち出すことが起きる。また、例えば最大8個の照度計測装置2が使える場合、その一部だけの実際に使用する場合がある。制御部11に、照度計測装置2からの送信頻度情報を予め記憶させておき、取得照度値Lciと目標照度値Ltiを所定の頻度で送信してこない照度計測装置2の番号iに対しては、その照度計測装置2が使われていないものと判断して、相関係数値の算出処理、近傍度の選択処理、目的関数値の算出処理から除外するようにしてもよい。この場合は、除外する番号iについては、図5(b)のテーブルにおいても、「使い分け基準」の処理対象から除外すればよい。図5(b)のテーブルにおいて、除外対象の番号iの欄の相関係数値ri=0とし、ΔLi=0としておけば、「使い分け基準」に基づく近傍度の選択処理に影響を及ぼさなくなり、該当する番号iの照度計測装置2は無視されることになる。
各実施の形態において、本発明の処理手順を開始するためには、照度計測装置2に、スタートボタンを設けておき、ボタンを押すと、ブロードキャスト通信により、全照明器具1と他の照度計測装置2に上記説明した手順の開始命令を送信して通知するようにしてもよい。このためには、照度計測装置2の内部にMPUを設けておき、MPUが前記スタートボタンONを検知したときに、割込みを発生させ、送信部23に処理開始指示の情報を送信させ、演算制御部110の受信部12は、処理開始指示の情報を受信すると、制御部11の演算制御部110に割り込みを掛けて、演算制御部110が、図2の(ステップS10)の処理を開始するように、プログラムすればよい。
なお、上記各実施の形態では、通常の照明制御への応用について説明したが、照明に色をつける場合にも応用できる。上記各実施の形態の照明システムを、赤色用、青色用、緑色用として3システムを設け、各システムの光源10として、それぞれ、赤色、青色、緑色の3種類の発光体を取り付ける。3つの照明システムの内、赤色の照明システムの照度計測装置2の取得部21の照度センサは、赤色の照度を検知し、設定部22は、赤色の目標照度値を設定する。青色の照明システムの照度計測装置2の取得部21の照度センサは、青色の照度を検知し、設定部22は、青色の目標照度値を設定する。緑色の照明システムの照度計測装置2の取得部21の照度センサは、緑色の照度を検知し、設定部22は、青色の目標照度値を設定する。赤色、青色、緑色のいずれかにのみ感度を有する照度センサは、各照度センサの前に色フィルタを設ければ実現できる。このように、3色の照明システムを併設すれば、3色のそれぞれに対応する3つの照度計測装置2を1組として任意の位置に設置し、3色の照度値を設定部22を操作して設定することにより、設定値に対応した色と照度の照明が行える。3色に対応する3つの照度計測装置2を1つの筐体内に設けてもよい。すなわち、照度計測装置2の中に上記3システムの各色に対応する設定部22と取得部21を設けておき、3色のそれぞれの目標照度値を設定し、各色毎の照度値と目標照度値を、送信部23より、各照明器具1に送るようにし、各照明器具1では、自身の色に該当する照度値と目標照度値を受信して、本発明の制御手順によりその色の光源の光度を制御する。このようにすれば、照度計測装置2を置いた位置の明るさを制御するだけでなく、色も所望のものに制御できる。3種類でなく2種類の光源を使う場合には、本発明の照明システムを2システム設ければよい。
さらに、上記のすべての実施の形態における照明システムや照明システムの処理は、ソフトウェアで実現しても良い。そして、このソフトウェアをソフトウェアダウンロード等により配布しても良い。また、このソフトウェアをCD−ROMなどの記録媒体に記録して流布しても良い。
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。