JP4697629B2 - 内燃機関用のバルブスプリングおよびその製造方法、並びに陽極酸化皮膜形成チタン製部材の製造方法 - Google Patents

内燃機関用のバルブスプリングおよびその製造方法、並びに陽極酸化皮膜形成チタン製部材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、各種機械部品、建材、生体用金属材料などに適用可能な硬質のチタン製部材に係り、より詳しくは、陽極酸化皮膜を形成したβ型チタン合金のチタン製部材に関する。
純チタンやチタン合金は、軽量であり、かつ、比強度が大きいという特徴を有し、さらに耐食性、生体適合性などの点で優れた金属であるため、建材の分野、各種機械部品の分野、生体用金属材料の分野など、幅広い分野において応用・研究が進められており、純チタン製やチタン合金製の部材の利用量は年々増大している。
しかし、純チタン製およびチタン合金製の部材は、金属の性質上、焼付きを起こしやすく、かつ摩耗しやすいという欠点がある。
そのため従来は、摩耗しやすい機械部品等に用いられることはほとんどなかった。
例えば、自動車用のエンジンなどに用いられるバルブスプリングを例に説明すると、カムによるバルブの開閉回数がバルブスプリングの固有振動数に等しいか、またはその整数倍になった場合、バルブスプリングは、カムによる強制振動とスプリング自体の固有振動とが共振することで、カムによる作動とは無関係に波打ち現象(サージング(surging))が発生する。サージングが発生すると、バルブの開閉は正しく行なわれなくなるだけでなく、バルブスプリングの一部に大きな圧縮力がかかるとともに、サージングによって衝突する箇所が摩耗し、疲労折損してしまう。
かかる欠点を改善して純チタン製およびチタン合金製の部材の耐摩耗性などを向上させるため、種々の技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、β型チタン合金製スプリングの表面にショットブラスト処理を施した後、めっき皮膜を形成することにより耐摩耗性を高める技術が提案されている。
また、特許文献2には、純チタン製またはチタン合金製の素線の表面を微細な多結晶体からなるセラミックス膜で被覆することによって、耐摩耗性を高める技術が提案されている。
さらに、特許文献3には、建材や機械部品などとして使用されるチタン合金製の部材の表面を熱処理することによってアナターゼ型酸化チタンおよびルチル型酸化チタンの少なくとも一方を含む熱酸化皮膜を形成し、その熱酸化皮膜をさらに陽極酸化処理して陽極酸化皮膜を形成する技術が提案されている。
また、非特許文献1には、Ti−4質量%のAl−6質量%のV合金(以下、Ti−4Al−6V合金という)に対するアルカリ浴中での陽極酸化処理によって、Al2TiO5相を含む酸化物の生成が示されるとともに、耐磨耗性が向上することが記載されている。
特開平2−133578号公報([特許請求の範囲]) 特許第2823169号公報([特許請求の範囲]) 特公平6−248494号公報([特許請求の範囲]) A.L. Yerokhin, X. Nie A. Leyland, A. Matthews, "Surface and Coating Technology", Vol.130, pages 195-206 (2000)
しかし、特許文献1に記載の技術には、チタン合金の表面に形成されている不動態膜が安定であり、不活性であるために、めっき皮膜との密着性も良好とはいえなかった。そのため、めっき膜は剥離しやすく、例えば、バネ材などの複合摩耗を生じる製品に被覆した場合、その表面から剥離しやすいという問題があった。また、めっき皮膜が剥離すると、摩耗性が損なわれるばかりでなく、疲労特性をも悪化させるという問題があった。
また、特許文献2に記載の技術では、セラミックス膜を被覆する方法として、アーク放電式イオンプレーティング法やマグネトロンスパッタリング法を採用しているが、これらの方法では成膜時に高温に曝されるため、チタン製部材(素線)があたかも溶体化した状態となり、チタン製部材(素線)が有する機械的特性を劣化させるという問題があった。
そして、当該技術では、セラミックス膜としてTi(チタン)を含む結晶性酸化物膜(TiO2)を素線表面に付加的に被覆し得ることが開示されているが、Tiを含む酸化物膜は金属よりも靭性が劣るので、例えば、バネ材として使用される場合、バネ材を圧縮したときの衝撃によって酸化物膜が素材から剥離するという問題があった。その結果、摩耗性が損なわれるばかりか、酸化物膜が剥離した部位が摩耗して、焼き付きが発生し、応力集中によって破損するという問題があった。
さらに、特許文献3に記載の技術では、チタン合金製の部材の表面にアナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンが混在した熱酸化皮膜と陽極酸化皮膜を形成することによってチタン製部材の表面の耐食性を均一かつ充分に向上させている。
しかし、特許文献3に記載されている陽極酸化処理方法では、電解液に過酸化水素を添加するために酸化物が生成しやすいという問題のほか、電解液の濃度が変化しやすいために陽極酸化浴の管理や電解液の廃棄が非常に困難であるという問題があった。
また、非特許文献1で行われた研究においては、α−β型チタン合金であるTi−6Al−4V合金に対して陽極酸化皮膜を形成させているが、Ti−6Al−4V合金は伸び率などが低いために、例えば、バネ材として使用するときの機能特性に乏しい。そのため、バルブスプリングなどのように激しく伸縮するバネ材に用いることができない。
なお、バルブスプリングのように激しく伸縮するバネ材として使用することのできるチタン合金としては、β型チタン合金であるTi−15質量%V−3質量%Al−3質量%Sn−3質量%Cr合金(以下、Ti−15V−3Al−3Sn−3Cr合金という)があるが、かかる合金は、伸び率などが高いためにバネ材としての機能特性に富む反面、硬さが小さいために耐磨耗性が低いという問題がある。
このβ型チタン合金に耐摩耗性を付与するために、アーク放電式イオンプレーティング法やマグネトロンスパッタリング法により硬質皮膜を形成すると、成膜処理温度がβ型チタン合金の時効処理温度を上回り、チタン部材の強度が低下してしまうことから前記の成膜方法を採用することが難しい。そのため、高温度での処理をすることなく、機械的性質やバネ材としての機能特性等を維持するとともに表面の硬さを高めることができるチタン合金製の部材の開発およびその処理方法が強く要望されている。
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、好適な電解電圧、電解時間、周波数および電解液でβチタン合金のチタン製部材を陽極酸化処理して、その表面に陽極酸化皮膜を形成することで、伸縮性などの種々の機能特性を損なうことなく、硬さおよび耐摩耗性に優れた内燃機関用のバルブスプリングおよびその製造方法、並びに陽極酸化皮膜形成チタン製部材の製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決した本発明に係る内燃機関用のバルブスプリングは、β型チタン合金のチタン製部材の表面にアルミニウムを含む陽極酸化皮膜形成されている。
そして、この陽極酸化皮膜は、Al2TiO5相を含んだ構成とするのが好ましい。
このような構成の内燃機関用のバルブスプリングとすれば、陽極酸化処理によって生じた電解液中のアルミン酸イオンと反応して形成された陽極酸化皮膜中に、硬さが高いAl2TiO5相を含むために、内燃機関用のバルブスプリングの表面全体を硬質化することができる。
また、本発明の内燃機関用のバルブスプリングの陽極酸化皮膜は、多数の空隙を備えた構成とするのが好ましく、その空隙は、平均孔径が0μmを超え、3μm以下とするのがより好ましい。
このような構成の内燃機関用のバルブスプリングとすれば、陽極酸化皮膜が多数の空隙を有しているために、平滑な表面を有しているチタン製部材と比較して他物体との接触面積を減らすことができるので、摺動性を向上させることができる。また、前記したように、陽極酸化皮膜が形成されたことによって硬質化されているので、結果として耐摩耗性に優れる。さらに、陽極酸化皮膜の多数の空隙に油を保持させることにより、内燃機関用のバルブスプリングに潤滑性を持たせることも可能になる。
本発明の内燃機関用のバルブスプリングは、陽極酸化皮膜の膜厚、1〜100μmであるのが好ましい。
このように膜厚を厚くすることができるので、確実に硬質化することができるほか、さらに耐久性・信頼性にも優れたものとすることができる。
本発明の内燃機関用のバルブスプリングは、陽極酸化皮膜の硬さ、ビッカース硬さでHv500以上であるのが好ましい。
かかる範囲の硬さを有する内燃機関用のバルブスプリングであれば、非常に硬さが高いために耐磨耗性に優れている
本発明の課題を解決した本発明に係る内燃機関用のバルブスプリングの製造方法は、浸漬工程と、陽極酸化皮膜形成工程と、を含んでなる。
浸漬工程では、電解用電源の一の電極に接続されたβ型チタン合金のチタン製部材と、当該電解用電源の他の電極に接続された、交流電気をかけた電解液に対して不溶性の不溶性金属材と、をアルミン酸イオンを含む前記電解液中に浸漬する。
陽極酸化皮膜形成工程では、前記電解液中に浸漬した前記チタン製部材および前記不溶性金属材に交流電気を流して陽極酸化処理を行うことによって、前記チタン製部材の表面に陽極酸化皮膜を形成したバルブスプリングを製造する。
かかる工程を、必要とする膜厚を得るまで行い続けることによって、高い硬さと耐摩耗性を有する内燃機関用のバルブスプリングを製造することができる。
また、本発明の課題を解決した本発明の陽極酸化皮膜形成チタン製部材の製造方法は、浸漬工程と、陽極酸化皮膜形成工程と、を含んでなる。
浸漬工程では、電解用電源の一の電極に接続されたβ型チタン合金のチタン製部材と、当該電解用電源の他の電極に接続された、交流電気をかけた電解液に対して不溶性の不溶性金属材と、を陽極酸化浴のアルミン酸イオンを含む電解液中に浸漬する。
そして、陽極酸化皮膜形成工程では、電解液中に浸漬したチタン製部材および不溶性金属材に交流電気を流して陽極酸化処理を行うことによって、チタン製部材の表面に陽極酸化皮膜を形成することができる。
かかる工程を、必要とする膜厚を得るまで行い続けることによって、高い硬さと耐摩耗性を有する陽極酸化皮膜形成チタン製部材を製造することができる。そして、陽極酸化皮膜を形成した陽極酸化皮膜形成チタン製部材を400〜550℃で1〜20時間の時効処理を行う。
このように、陽極酸化処理したチタン製部材を時効処理することによって、母材を硬質化することができるので、より優れた陽極酸化皮膜形成チタン製部材を製造することができる。
本発明の陽極酸化皮膜形成チタン製部材の製造方法は、浸漬工程の前に、チタン製部材を前処理する前処理工程が含まれており、その前処理工程は、洗浄工程と、表面処理工程と、を含むのが好ましい。
このように、浸漬工程を行う前に前処理工程を行うことによって陽極酸化皮膜を形成しやすくすることができる。
かかる前処理工程は、まず、洗浄工程によって、チタン製部材の表面を洗浄することができ、表面処理工程によって、洗浄されたチタン製部材の表面を表面処理することができる。
本発明の陽極酸化皮膜形成チタン製部材の製造方法は、陽極酸化皮膜形成工程における陽極酸化処理が、火花放電陽極酸化処理であるのが好ましく、交流法、交流直流重畳法、定電流法、定電圧法、不完全整流法、電流反転法、またはパルス法のいずれかによって行うのが好ましい。
火花放電を伴う、これらの中から選択されたいずれかの陽極酸化処理を行うことによって、チタン製部材の表面に好適な陽極酸化皮膜を形成することができる。
また、本発明の陽極酸化皮膜形成チタン製部材の製造方法において、陽極酸化皮膜形成工程で流す交流電気は、周波数が60〜200Hzであるのが好ましい。
そして、交流電気の電圧は、正の電圧ピークとして、250〜400Vであるとともに、負の電圧ピークが正の電圧ピークの30%以下であるのが好ましい。
さらに、本発明の陽極酸化皮膜形成チタン製部材の製造方法において、陽極酸化皮膜形成工程の電解液温度は室温〜80℃であるのが好ましく、通電時間は10分間以上、45分間未満であるのが好ましい。
このように、陽極酸化皮膜形成工程で流す通電条件や温度条件を特定の範囲にすることによって、陽極酸化皮膜に含まれるAl2TiO5相の含有量や、空隙の平均孔径などを適宜に設定することができる。また、かかる条件とすることによって、高い硬さや耐摩耗性を有する陽極酸化皮膜を形成することができる。
そして、本発明の陽極酸化皮膜形成チタン製部材の製造方法に用いるアルミン酸イオンを含む電解液は、アルカリ性であるのが好ましく、特に、アルカリ性のアルミン酸イオンを含む電解液としては、アルミン酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミン酸バリウム、アルミン酸リチウム、アルミン酸マグネシウム、およびアルミン酸ベリリウムのうち少なくとも1種の化合物を含む電解液であるのが好ましい。
電解液中で電解されてカチオンのアルミン酸イオンとなると、母材中に取り込むことができないところ、このようなアルカリ性のアルミン酸イオンを含む電解液を用いることによって、電解液中でアニオンのアルミン酸イオンとなることができるので、好適にチタンと反応することができる結果、高い高度のチタン酸アルミニウム(Al2TiO5)を生成することが可能となる。
本発明の陽極酸化皮膜形成チタン製部材は、β型チタン合金のチタン製部材の表面にアルミニウムを含む陽極酸化皮膜を形成しているので、β型チタン合金のチタン製部材の表面硬さと、耐摩耗性を向上させることができる。
また、β型チタン合金にアルミニウムを含む陽極酸化皮膜を形成した内燃機関用のバルブスプリングは、複合摩耗が発生しても耐磨耗性に優れる。したがって、特に自動車等のエンジンに用いることで軽量化を図るとともに、当該バルブスプリングの固有振動数の向上によるエンジン回転数の向上を図ることができる。
また、本発明の陽極酸化皮膜形成チタン製部材の製造方法は、陽極酸化処理を特定の条件で行うので、チタン製部材の表面に好ましい状態の陽極酸化皮膜を形成することができる。
次に、適宜図面を参照しつつ、本発明に係る陽極酸化皮膜形成チタン製部材およびその製造方法について詳細に説明する。
参照する図面において図1は、陽極酸化皮膜形成チタン製部材の構造を示す説明図である。なお、図1は、実際に走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した図7(b)の状態を模式的に示したものである。
[1.陽極酸化皮膜形成チタン製部材]
はじめに、本発明の陽極酸化皮膜形成チタン製部材について説明する。
図1に示すように、本発明に係る陽極酸化皮膜形成チタン製部材1は、β型チタン合金のチタン製部材2の表面にアルミニウムを含む陽極酸化皮膜3が形成されて成る。
ここで、「β型チタン合金」とは、体心立方晶を有するチタン合金をいい、例えば、Ti−15質量%V−3質量%Al−3質量%Cr−3質量%Snのチタン合金(Ti−15V−3Al−3Cr−3Sn合金)や、Ti−13質量%V−11質量%Cr−3質量%Alのチタン合金(Ti−13V−11Cr−3Al合金)や、Ti−15質量%Mo−5質量%Cr−3質量%Alのチタン合金(Ti−15Mo−5Cr−3Al合金)などを具体的に挙げることができ、「チタン製部材」とは、β型チタン合金を用いて任意の形状に成形された板材、条材、鋳造材、鍛造材などをいう。
また、後記するように、本発明では、チタン製部材2の表面に陽極酸化皮膜3を形成する際に、室温〜80℃程度の低温で陽極酸化処理を行うが、その有効性は、高温でα型チタン合金に変態して機械的特性が劣化するβ型チタン合金などにおいて特に発揮される。
本発明に係る陽極酸化皮膜形成チタン製部材1の表面に形成されている陽極酸化皮膜3には、Al2TiO5(チタン酸アルミニウム)相が含まれている。Al2TiO5相は、ビッカース硬さでHv3000以上という高硬度を有するセラミックである。したがって、Al2TiO5相を多く含ませることによって陽極酸化皮膜形成チタン製部材1の表面硬さを著しく向上させることができる。
かかるAl2TiO5相は、電解液等の溶液から取り込んだアルミン酸イオンと母材であるチタン製部材2のチタンとが酸化することによって生じたチタン酸化物とが、陽極酸化処理時にチタン製部材2の表面で発生する火花放電によって局所的に加熱されることによって生成される。
また、陽極酸化処理時に、ルチル型酸化チタンやアナターゼ型酸化チタンが生成するとともに、アモルファス相なども生成していることが確認されていることから、これらの相や酸化物が陽極酸化皮膜3中に含まれることによってチタン製部材2の硬さを向上させていると考えられる。
陽極酸化皮膜3中に含まれるこれらのAl2TiO5相は、陽極酸化処理の条件によって存在比を制御することができる。したがって、用途に応じて、適切な硬さと耐摩耗性を示す陽極酸化皮膜3を調製できる。例えば、形成された皮膜にクラックが入りやすい条件で使用されるスプリングなどの部材に本発明を適用する場合は、Al2TiO5相の存在比を小さくし、アモルファス相を共存させることによって剥離しにくく、耐摩耗性に優れた陽極酸化皮膜3を形成することができる。
また、前記した火花放電によって、陽極酸化皮膜形成チタン製部材1の表面の陽極酸化皮膜3には、多数の空隙3aが形成され、多孔質(ポーラス)となる(図1、図7、図8参照)。
この空隙3aは、平均孔径が小さいほど好ましいが、概ね3μm以下であれば高い硬さを有することができる。空隙3aの平均孔径が3μmよりも大きいと空隙3a間を満たす壁などが薄くなるために構造的に弱くなるおそれがある。
つまり、空隙3aを小さく形成するほど陽極酸化皮膜形成チタン製部材1の硬さを向上させることができる。
したがって、陽極酸化皮膜3の体積に対する空隙3aの形成比率(多孔度ともいう)も小さいほど好ましいが、概ね30%以下であれば高い硬さを有することができる。かかる形成比率が30%よりも大きいと、空隙3aが多すぎるために構造的に弱くなる可能性がある。
つまり、陽極酸化皮膜3の体積に対する空隙3aの形成比率は、用途によっても異なるが、十分な強度や耐摩耗性を得るために、前記した特定の範囲内とするのが好ましい。
したがって、本発明の陽極酸化皮膜形成チタン製部材1の硬さは、Al2TiO5相の形成比率や空隙3aの平均孔径、陽極酸化皮膜3の体積に対する空隙3aの形成比率を任意に変更することで適宜に制御することが可能である。
そして、チタン製部材2の表面に形成される陽極酸化皮膜3は、陽極酸化処理によって形成されるため、めっき処理や蒸着処理によっては困難であった1μm以上の厚膜を容易に形成することができる。
なお、本発明の陽極酸化皮膜形成チタン製部材1においてはその膜厚を1〜100μmとするのが好ましく、1〜80μmとするのがより好ましく、1〜50μmとするのがさらに好ましく、1〜20μmとするのがさらにより好ましい。膜厚が1μm未満であると、例えば、本発明の陽極酸化皮膜形成チタン製部材1を摺動性の激しい部材に適用したときに、高い強度や耐摩耗性を長期間にわたって確実に維持することができない可能性がある。一方、膜厚が100μmを超えると、実用的でないばかりか剥離の原因にもなる。
膜厚は、陽極酸化皮膜3を形成する時間とともに増加するが、その増加速度は時間とともに低下する。したがって、時間や費用などのコスト的な観点からは、必要にして十分な膜厚を満たしたところで陽極酸化皮膜3の形成を停止するのが好ましい。かかる膜厚の設定は、後記する陽極酸化形成工程で用いる電解液12の組成や電流・電圧などを設定した上で事前に試験を行って決定しておくのがよい。なお、膜厚は渦電流膜厚計によって容易に計測することができる。
そして、陽極酸化皮膜形成チタン製部材1は、後記するように、陽極酸化皮膜3を形成した後に、400〜550℃で1〜20時間の時効処理を行ってもよい。時効処理によってチタン製部材2自体をさらに硬化させることができる。
そして、適切な陽極酸化皮膜3を形成したチタン製部材2(すなわち、陽極酸化皮膜形成チタン製部材1)を用いて適切な時効処理が行われたチタン製部材2は、高い硬さを具備したものとなる。その硬さは、ビッカース硬さでHv500以上、好ましくはHv600以上、より好ましくはHv700以上、さらに好ましくはHv800以上、よりさらに好ましくはHv900以上である。
ビッカース硬さでHv500未満であると、機械機能部品として使用することを考慮した場合に、十分な硬さと耐摩耗性を有しているとはいい難い場合がある。一方、硬さは硬いほど好ましく、その上限について特に制限はない。
なお、陽極酸化皮膜3の硬さはその厚さ方向の断面において測定することが望ましいが、陽極酸化皮膜3の厚さが5μm以下の場合は断面において硬さを測定することが難しくなるため、その場合は陽極酸化皮膜3の表面より軽加重で測定しても良い。
つまり、本発明の陽極酸化皮膜形成チタン製部材1は、従来のめっき膜や蒸着膜とは異なり、母材であるチタン製部材2の表面を直接改質して硬質化するので、剥離等が起きにくく、激しい摺動を伴う機械機能部材に好適に適用することができる。
例えば、高い硬さと耐磨耗性を有する本発明に係る陽極酸化皮膜形成チタン製部材1は、ビッカース硬さでHv500以上、より好ましくはHv600以上を有しているので、図2に示すような内燃機関用のバルブスプリング4として好適に用いることができる。
かかるバルブスプリング4は、例えば、Ti−15V−3Al−3Cr−3Sn合金を用いて、鋳造加工、または、熱間圧延後にコイリング加工することによって、つるまきバネ形状のバルブスプリング(未陽極酸化処理品)を作製する。
そして、かかる未処理のバルブスプリング4を陽極酸化処理することによって、その表面全体に陽極酸化皮膜3を形成することで、高い硬さと耐摩耗性を有するバルブスプリング4とすることができる。
したがって、陽極酸化皮膜3を有するバルブスプリング4は、高温で叩かれ摩耗および摺動摩耗等が複合した複合摩耗が発生する環境であっても耐久性に優れる。そのため、鋼材のものと比較してバネ材としての弾性力を維持して、固有振動数の向上およびエンジンの回転数の向上を図ることができるため、エンジンの性能を向上させることができる。
また、陽極酸化皮膜3が多孔質であるため、多数の空隙に油を保持させることで潤滑性をもたせることが可能であり、耐磨耗性の一層の向上を図ることができる。
[2.陽極酸化皮膜形成チタン製部材の製造方法]
次に、図3を参照して、本発明に係る陽極酸化皮膜形成チタン製部材の製造方法について説明する。図3は、陽極酸化皮膜を形成するための装置を模式的に示して説明する説明図である。
本発明の陽極酸化皮膜形成チタン製部材の製造方法は、浸漬工程と、陽極酸化皮膜形成工程と、を含んでなる。
(2−1.浸漬工程)
浸漬工程では、図3に示すように、電解用電源13の一の電極に接続されたβ型チタン合金のチタン製部材2と、電解用電源13の他の電極に接続された、交流電気をかけた電解液12に対して不溶性の不溶性金属材11と、を陽極酸化浴10のアルミン酸イオンを含む電解液12中に浸漬する。
ここで、電解用電源13は、電圧や電流を自由に設定でき、かつ、使用する電流を交流電流と直流電流とに切り替えられるだけでなく、これらを重畳して用いることができるものであることが好ましい。
電解液12については後に詳述する。
(2−2.陽極酸化皮膜形成工程)
次いで、陽極酸化皮膜形成工程では、電解液12中に浸漬したチタン製部材2および不溶性金属材11に交流電気を流して陽極酸化処理を行うことによって、チタン製部材2の表面に陽極酸化皮膜3(図1参照)を形成し、陽極酸化皮膜形成チタン製部材1を製造する。
そして、陽極酸化処理は、火花放電陽極酸化処理によって行うのが好ましい。火花放電陽極酸化処理は、電解液12中で火花放電を伴いながら金属(この場合はチタン製部材2)を陽極酸化して陽極酸化皮膜3を形成する方法である。また、火花放電を伴うことによって、陽極酸化皮膜3を多孔質(ポーラス)化することができる。その結果、厚膜の陽極酸化皮膜3を容易かつ確実に形成することができる。
また、陽極酸化処理は、従来公知の交流法、交流直流重畳法、定電流法、定電圧法、不完全整流法、電流反転法、またはパルス法のいずれの方法によって好適に行うことができる。中でも、交流直流重畳法を用いると、火花放電陽極酸化処理を容易に制御することができ、かつ、形成される陽極酸化皮膜3の形態も良好であるので特に好適である。
なお、交流法とは、交流電流によって陽極酸化処理をする方法であり、交流直流重畳法とは、交流電流に直流電流を重畳(図4および図5参照)して陽極酸化処理をする方法である。また、定電流法とは、電流を一定に保ちながら陽極酸化処理をする方法であり、定電圧法とは、電圧を一定に保ちながら陽極酸化処理をする方法である。そして、不完全整流法とは、整流波形の一部に非整流波形を加えた電流を用いて陽極酸化処理をする方法であり、電流反転法とは、周期的に電流又は電圧の極性を反転させて電解する方法であり、パルス法とは、パルス波形を用いた電解方法である。
なお、図4は、後に説明する[実施例]において、交流電流に正の直流電圧を重畳し、アノードのピーク電圧(Vmax)に対してカソードのピーク電圧(Vmin)が小さくなるように交流電圧を印加することを説明するグラフであり、図5は、後に説明する[実施例]において、P4浴中で交流電圧のVmax=400V、Vmin=−70Vとし、周波数60Hzで交流電解したときの交流電流iac(「イ」で示す)と直流成分idc(「ロ」で示す)の経時変化を示すグラフである。
また、チタン製部材2の対極に用いる金属材を不溶性金属材11としたことにより、電解を行っても電解液12に溶解されることがない。なお、対極に用いる金属材は不溶性であるものに限定されないことはいうまでもない。つまり、交流電解によって溶解してしまう金属材を用いることも可能である。
チタンは、水溶液中でアノード方向に分極すると、陽極酸化皮膜3が形成されることに起因して電子電流が流れにくくなって、主としてイオン電流が流れる一方で、水溶液中でカソード方向に分極すると酸化物が生成した後でも大きな電子電流が流れるために水素ガスを激しく発生するという性質を有する。
したがって、単純に交流電気を印加すると、アノードサイクルでのアノード電流に対して、カソードサイクルで非常に大きな水素発生電流が流れることになる。このカソードサイクルで発生した水素ガスによって、それまでに形成された陽極酸化皮膜3が激しく破壊されてしまうので、良質な陽極酸化皮膜3を得ることができない可能性がある。
そのため、陽極酸化皮膜形成工程で流す交流電気は、周波数が60〜200Hz、電圧が、正の電圧ピークとして、250〜400Vであるとともに、負の電圧ピークが正の電圧ピークの30%以下とするのが好ましい。
周波数が60Hz未満であると、カソード電極とアノード電極の交替が遅すぎるために、チタン製部材2の表面に水素ガスの気泡が多く発生することによって、陽極酸化皮膜3が破壊されてしまうおそれがある。また、陽極酸化皮膜3の空隙3aが大きくなりすぎてしまい、高い硬さを得ることができないおそれがある。一方、周波数が200Hzを超えると、カソード電極とアノード電極の交替が速すぎるために、直流電気を通電した状態に近い状態となる結果、前記と同様に、チタン製部材2の表面に水素ガスの気泡が多く発生するため、陽極酸化皮膜3が破壊されてしまうおそれがある。また、陽極酸化皮膜3の空隙3aが大きくなりすぎてしまい、高い硬さを得ることができないおそれがある。
電圧は、陽極酸化処理を行うチタン製部材2の材質によって異なる。例えば、α型チタン合金やα−β型のチタン合金では、合金元素が析出していることに起因して、正のピーク電圧で200V以上の電圧があれば十分に陽極酸化皮膜3を形成できるが、純チタンやβ型チタン合金である場合は、正のピーク電圧で250V以上が必要であることから、本発明においては、交流電気の電圧を、正のピーク電圧で250〜400Vを必要とする。
また、電圧が250V未満であると電圧が低すぎるために、十分な電流が流れにくく、β型チタン合金のチタン製部材2では陽極酸化皮膜3の形成が不十分となったり、陽極酸化皮膜3の形成が遅延したりするおそれがある。一方、電圧が400Vを超えると、電圧が高すぎるために、水素ガスの発生が激しくなり、陽極酸化皮膜3を破壊するおそれがある。また、負の電圧ピークが正の電圧ピークの30%以内でないと、水素ガスの発生が激しくなり、陽極酸化皮膜3を破壊してしまうおそれがある。
なお、用いる電気は前記したものに限定されることはなく、50〜350Vの電圧の直流電気の使用を妨げるものではなく、直流電気によっても陽極酸化皮膜3を形成することが可能である。
また、かかる条件の交流電気を流すことによって、電解液12中のチタン製部材2および不溶性金属材11の表面で火花放電を生じさせてチタン製部材2を多孔質化することができるとともに、チタン製部材2に生じたチタンイオンと電解液中に生じたアルミニウムイオンとを反応させてAl2TiO5相を生成させることができる。
なお、かかる交流電気を流しつつ、さらに電圧:50〜200Vの直流電気を、チタン製部材2がアノード電極となるように重畳して流すのも好ましい。この場合、アノードのピーク電圧(Vmax)に対してカソードのピーク電圧(Vmin)が小さくなるように交流電圧を印加するのが好ましい。このようにすると、カソードサイクルにおける陽極酸化皮膜3の破壊の程度を抑制することができる。例えば、カソードのピーク電圧(Vmin)を−70Vとし、アノードのピーク電圧(Vmax)を400Vとすることを一例として示すことができる。そして、交流電解を行う際は、VmaxとVminを制御して所定の時間行うと、高い硬さと耐摩耗性を備えた陽極酸化皮膜3を形成することができる。
また、電流を制御した交流電気や交流パルスを用いた陽極酸化処理も好適である。
さらに、電圧を制御した交流陽極酸化処理も好適である。この場合、交流電気のアノードピーク電流とカソードピーク電流ができるだけ等しくなるように、交流電気の電圧の正および負のピーク電圧を設定するのが望ましい。カソード電流が小さすぎると、交流電気の電力が時間とともに大きく減少するので、陽極酸化皮膜3を厚く成長させることが困難となる。
もちろん、これら交流電気や直流電気は、設定した条件を一定に保ち続けることに限られず、図に示すように、前記した特定の範囲内で経時的に変化させることができることはいうまでもない。なお、図は、後に説明する[実施例]のP4浴中で交流電圧のV max =400V、V min =−70Vとし、周波数60Hzで交流電解したときの交流電流i ac (「イ」で示す)と直流成分i dc (「ロ」で示す)の経時変化を示すグラフである。
そして、陽極酸化皮膜3を形成する際の電解液温度は、室温〜80℃とするのが好ましく、室温〜50℃とするのがより好ましい。かかる温度条件下で陽極酸化皮膜3を形成すれば、当該陽極酸化皮膜3を形成する際に母材であるチタン製部材2の機械的特性を損なうことがない。
温度条件が室温未満であると、電解液12の温度が低すぎるために、陽極酸化皮膜3の形成が進まず、遅延するおそれがある。一方、温度条件が80℃を超えると、温度条件が高すぎるために、電解液12中の水分が蒸発等しやすく、電解液12の組成が変化するおそれがある。
また、陽極酸化皮膜形成工程の通電時間は、10分間以上、45分間未満とするのがよい。通電時間が10分間より短いと、十分な膜厚の陽極酸化皮膜3を形成することができない。一方、通電時間が45分間以上であると、陽極酸化皮膜3の膜厚が厚くなりすぎるために、当該陽極酸化皮膜3が剥離しやすくなるおそれがある。
そして、陽極酸化皮膜形成工程で用いるアルミン酸イオンを含む電解液12は、含有する化合物が水溶液によって電解されることでアルカリ性となるのが好ましい。
電解液12がアルカリ性、すなわち電解されたアルミン酸イオンがマイナスに帯電(アニオン)することになるので、チタン製部材2のTiと反応することができる結果、高い硬さのAl2TiO5を生成することができる。
このような電解液12としては、アルミン酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミン酸バリウム、アルミン酸リチウム、アルミン酸マグネシウム、およびアルミン酸ベリリウムのうち少なくとも1種の化合物を含む電解液12を例示することができる。これらの化合物を用いれば、アニオンのアルミン酸イオンを生成することができるので、陽極酸化皮膜3の形成を好適に行うことができる。
これらの含有量は、形成する陽極酸化皮膜3の膜厚や形成条件によって異なるが、例えば、アルミン酸カリウムを用いた場合は、4〜50g/Lとすることができる。
なお、かかる電解液12には、電解液12の調整のために、適宜、リン酸三ナトリウム、リン酸ナトリウム、二リン酸ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸塩、ケイ酸塩などの他、種々の無機酸や有機酸などを添加することもできる。
これらの含有量は、形成する陽極酸化皮膜3の膜厚や形成条件によって異なるが、例えば、リン酸三ナトリウムを用いた場合は、1〜20g/Lとすることができる。
アルミン酸イオンを多く含む電解液12を用いると、Al2TiO5相の存在比が高い陽極酸化皮膜3を形成することができ、高い硬さを得ることができる。
また、添加剤を添加することで陽極酸化皮膜3に形成される多数の空隙3aの孔径や分布密度などを制御することができる。例えば、添加剤としてリン酸三ナトリウムを少量添加した場合、数μmの孔径の空隙3aを具備することができ、リン酸三ナトリウムを多量添加した場合、サブミクロンオーダーの孔径の空隙3aを具備することができる。
そして、陽極酸化皮膜形成チタン製部材1は、後記するように、陽極酸化皮膜3を形成した後に、400〜550℃で1〜20時間の時効処理を行ってもよい。時効処理によってチタン製部材2自体をさらに硬化させることが可能だからである。ここで、時効処理温度が400℃未満であったり、時効処理時間が1時間未満であったりすると、十分な時効処理を行うことができない可能性がある。一方、時効処理温度が550℃を超えたり、時効処理時間が20時間を超えたりしても最早時効処理の硬化は飽和してしまい、コスト的に不利である。
以上に説明した陽極酸化皮膜形成工程によって、チタン製部材2の表面に高い硬さと耐磨耗性を有する厚膜のアルミニウムを含む陽極酸化皮膜3を形成することができるが、浸漬工程前に後記する前処理工程を行ってもよい。
(2−3.前処理工程)
すなわち、前処理工程は、均一な膜厚と適切な空隙3aを有する多孔質を具備する陽極酸化皮膜3を形成するために、浸漬工程の前にチタン製部材2を前処理するものである。
かかる前処理工程は、洗浄工程と、表面処理工程と、を含んでなる。
洗浄工程では、チタン製部材2の表面を洗浄することで、次工程の表面処理工程の表面処理を好適に行わせることができるため、チタン製部材2の表面に付着した付着物や油性のよごれなどを除去するための洗浄を行う。また、チタン製部材2を洗浄することによって、前記した陽極酸化皮膜形成工程においても、膜厚が均一でムラのない陽極酸化皮膜3を形成することができる。
洗浄工程は、めっき処理やエッチング処理などの表面処理を行う際に通常行われる洗浄手段を用いることができる。このような洗浄手段としては、例えば、電解脱脂、酸洗浄、酸浸せき、アルカリ洗浄、電解洗浄、アノード洗浄、カソード洗浄、PR洗浄、超音波洗浄、溶剤洗浄、二相洗浄、エマルジョン洗浄、浸せき洗浄、スプレー洗浄、蒸気洗浄などを挙げることができ、これらを常法によって行うことができる。
表面処理工程では、チタン製部材2の表面を表面処理することによってチタン製部材2の表面の調整を行い、陽極酸化処理3を行いやすくするために洗浄工程で洗浄されたチタン製部材2の表面の表面処理を行う。
かかる表面処理工程も、めっき処理やエッチング処理で通常行われる表面処理手段を用いることができる。このような表面処理手段としては、例えば、機械研磨、電解研磨、化学研磨、油性研磨、バフ研磨、バレル研磨、がら研磨、研削、ボビング、グレイニング、筆電解研磨、サンドブラスト、ショットブラスト、液体ホーニング、デスマット処理、カソード電解処理、アノード電解処理などを挙げることができ、これらを常法によって行うことができる。
なお、これら洗浄工程および表面処理工程は、必要に応じて同種または異種の洗浄手段や表面処理手段を重複して行ったり、種々組み合わせて行ったりすることができることはいうまでもない。
次に、本発明の陽極酸化皮膜形成チタン製部材およびその製造方法について実施例を示して具体的に説明する。
(実施例1)
(1)チタン製部材の前処理
チタン製部材として、β型チタン合金のひとつであるTi−15V−3Al−3Cr−3Sn合金((株)神戸製鋼所製)を用いた。用いたチタン製部材は、厚さ1mmの板材であり、これは、熱延後溶体化(780℃より水冷)したものを30%の加工率で冷間圧延したものである。前処理として、アセトン(関東化学(株)社製01026-81)によるアセトン脱脂、エッチング(2wt%フッ化水素酸(フッ化水素46%含有、森田化学工業(株)社製)−10wt%硝酸(関東化学(株)社製28163-70)の混合液に60秒間浸漬)、カソード電解(10wt%硫酸、500A・m-2、60秒間)をこの順に行った。
(2)交流電解
電解液として、4g/Lのリン酸ナトリウム(Na3PO4・12H2O:和光純薬工業(株)社製197-02882)と、12g/Lのアルミン酸カリウム(K2Al24・3H2O:関東化学(株)社製32302-01)を含有するアルカリ性の電解液(P4浴)を用いた。リン酸ナトリウム濃度の影響を調べるために、リン酸ナトリウムを含まない浴(P0浴)、2g/Lおよび12g/Lのリン酸ナトリウムを含む電解液(それぞれP2,P12浴という)も用意した。いずれの浴もpH12.5であった。浴温は20℃とした。交流電解は、ステンレス製の電解セル(1L)を用い、これを対極としても用いた。チタン製部材を1.5mm×1.5mm×1.0mmのサイズとし、これに0.5mmφのチタン棒をスポット溶接してリードを取った。
電解用電源としてChroma ATE社製Programmable AC Source 61610を用い、電圧を制御して交流電解を行った。前記したように、チタンは単純に交流電流を印加すると、アノードサイクルでのアノード電流に対して、カソードサイクルで非常に大きな水素発生電流が流れることにより、水素ガスが激しく発生し、陽極酸化皮膜が破壊されてしまうおそれがある。
そこで、本発明では、かかる電解用電源を用いて、図4に示すように、交流電流に正の直流電圧を重畳し、アノードのピーク電圧(Vmax)に対してカソードのピーク電圧(Vmin)が小さくなるように交流電圧を印加してカソードサイクルにおける酸化膜の破壊の程度を制御できるようにした。交流電解は、VmaxとVminを制御して所定の時間行った。
(3)陽極酸化皮膜のキャラクタリゼーション
得られた陽極酸化皮膜の構造は理学電機(株)社製RINT2000 X線回折装置(XRD)を用いて評価した。X線回折の測定は、α−2θ(α=2°)法で行った。X線源には、CuKα線を用いた。チタン製部材の表面および断面観察を日本電子(株)社製JSM−5410走査電子顕微鏡を用いて行った。
また、組成分析(X線元素マッピング)を付属のOxford Instruments社製WDX−400によって行った。
さらに、グロー放電発光分光装置(HORIBA Jobin Yvon社製GDOES 5000RF)を用いて、陽極酸化皮膜の深さ方向の分析を行った。
また、生成した陽極酸化皮膜の密着性を定性的に評価するため、ニチバン(株)社製テープNW−15Sを用いてテープ剥離試験を行った。
さらに、陽極酸化皮膜の硬さを、超微小硬さ計(Fischer Instruments社製Fischerscope H100VP)を用いて、最大負荷30mNとして、押し込み深さ−荷重曲線から荷重負荷時の微小硬さを以下の式から求めた。
ここで、Fは荷重(N)、dは押し込み深さ(mm)である。
(4)実験結果
(4−1)P4浴での電解挙動と陽極酸化皮膜の特徴
図5に、P4浴中で交流電圧の最大値(Vmax)を400V、最小値(Vmin)を−70Vとし、周波数60Hzで交流電解したときの交流電流iac(「イ」で示す)と直流成分idc(「ロ」で示す)の経時変化を示す。ここで、iacは、交流電流の実効値である。iacは、最初の300秒間程度ほぼ一定の値を示した後、時間と共に減少し、3600秒間交流電解した後は、約1.2kA・m-2の電流密度となった。idcは、最初負の値を示し、約50秒間後に−800A・m-2の最小値を取った後、次第にゼロに近づき、2000秒間以降はほぼ−200A・m-2で一定となった。なお、idcが負であるのは、カソードサイクルにおけるカソード電流の方がアノードサイクルにおけるアノード電流よりも大きいことを表している。
dcがほぼ一定となり始めた30分の時点での陽極酸化皮膜のキャラクタリゼーションをまず行った。図6に、このチタン製部材のXRD回折パターンを示す。
母材のβ−Ti(●)由来の回折線に加えて、非常に鋭いルチル型酸化チタン(◆:Rutile)およびTiAl25相(▲)の回折線が強く現れている。一方、アナターゼ型酸化チタン(◇:Anatase)の回折線は非常に弱い。このことは、火花放電により準安定相であるアナターゼ型酸化チタンからルチル型酸化チタンへの相変態が進行していることを示している。さらに、電解液中のアルミニウムを取り込んでTiAl25相の生成もかなり進行していることを表している。
図7(a)(b)に、チタン製部材の表面および断面のSEM写真を示す。なお、(a)(b)において、スケールバーはそれぞれ1μmを示す。これは、(b)においても同じサイズである。なお、図1は、図7(b)を模式的に示したものである。
表面写真から酸化物層は多孔質であり、1〜2μmの円形ポアが多数表面に存在している。このような多孔質構造は、火花放電を伴う陽極酸化皮膜の特徴である。断面観察から、陽極酸化皮膜の膜厚は16μmであり、当該皮膜は2層構造であることがわかる。膜厚の70%程度を占める外層は多孔質であり、内層はかなり緻密な層となっている。
図8に、この断面のSEM写真とX線マイクロアナライザー(EPMA)による元素マッピング像を示す。図8において、(a)は、断面のSEM写真であり、(b)、(c)、(d)は、それぞれチタン(Ti)、アルミニウム(Al)、酸素(O)についてのEPMAマッピング像である。なお、(a)のスケールバーは5μmを示す。これは(b)、(c)、(d)においても同じサイズである。また、これらの像において、上側が外層であり、下側が内層である。
EPMAによるマッピング像から、外層と内層では、アルミニウム(Al)および酸素(O)の分布に大きな違いがあることがわかる。つまり、(c)および(d)のマッピング像では、外層に白い斑点が高い密度で分布していることから、外層にのみ多量のアルミニウムと酸素が電解液から取り込まれていることがわかる。一方、(b)のマッピング像では、内層に白い斑点が高い密度で分布していることから、外層に含まれるチタン(Ti)の量がやや減じていることもわかる。なお、白い斑点は、測定した元素が存在していることをイメージしたものである。
図9(a)(b)に、GDOESを用いて陽極酸化皮膜中のイオンの深さ方向の分析を行った結果を示す。
EPMAの分析結果と対応すると、アルミニウム(Al)は陽極酸化皮膜の外層に高濃度に存在していることがわかる。
また、リン(P)のプロファイルでは最表面を除き、母材を含めてほぼ一定の強度となっている。母材にはリンは存在しないはずであるから、他の元素との分光干渉が存在する可能性がある。
また、ナトリウム(Na)が母材と陽極酸化皮膜の界面に濃縮している。ナトリウムの濃縮量については不明であるが、密着性に悪影響を及ぼす可能性が考えられる。
さらに、水素(H)が母材中に取り込まれていることもわかる。これは、電解のカソードサイクルにおいてプロトンが還元され、母材中に吸収されたものであると考えられる。この水素吸蔵量について分析した結果、120ppm程度であることがわかった。これは、本発明に使用しているチタン製部材の水素量規定値(150ppm以下)内であった。
また、合金成分をみると、バナジウム(V)とクロム(Cr)のチタン(Ti)に対する割合は、陽極酸化皮膜中と母材中とでほぼ等しいことがわかる。これに対し、錫(Sn)は陽極酸化皮膜中で若干高濃度になっていることがわかる。
次に、電解時間の影響について検討を行った。図10は、それぞれ15分間(min)、30分間(min)および45分間(min)交流電解した後のXRDパターンである。
15minの交流電解で既に結晶性のよい酸化物(TiAl25相(▲)、ルチル型酸化チタン(Rutile(◆))およびアナターゼ型酸化チタン(Anatase(◇))が生成していること、および、電解時間が増しても特にXRDパターンに大きな変化は認められないことがわかる。
図11(a)〜(c)は、それぞれ15min、30min、45min交流電解したチタン製部材の表面SEM写真である。(a)のスケールバーは、1μmを示し、(b)(c)においても同スケールである。
いずれも多孔質であるが、空隙の密度は電解時間と共に増える傾向にある。また、表面粗さも増す傾向が認められる。
図12に、15min交流電解後の断面SEM写真を示す。スケールバーは5μmを示す。
15min交流電解した後のチタン製部材では、酸化物層のほとんどが多孔質層であり、30min交流電解した後のチタン製部材のような緻密な内層は存在しない。この多孔質層の厚さは11μmであり、30min交流電解後の試料の多孔質外層の厚さとほぼ一致する。したがって、30min交流電解した後のチタン製部材の酸化物層の2層構造は、初期の交流電解により多孔質層が生成し、その後緻密な内層が生成したと考えられる。
このような挙動は、交流電解時のidcの変化と対応していると考えられる。図12から、idcは、交流電解初期に比較的大きな負の値を示し、大きなカソード電流、すなわち水素発生電流が流れていることがわかる。この間に多孔質膜が生成し、idcが0(零)に近くなると、カソードサイクルにおいて陽極酸化皮膜が破壊される程度が減少し、緻密な陽極酸化皮膜が形成されるようになっていると考えられる。
各時間電解後の試料のテープ剥離試験結果を表1に示す。かかる結果から、45min交流電解すると密着性が低下し、全面剥離が生じたが、30minまでの交流電解では良好な密着性を示した。
そこで、30min交流電解したチタン製部材の硬さ測定を行った。表面から超微小硬さ計を用いて測定を行うと、多孔質のために正確な測定はできなかった。そこで、チタン製部材を樹脂に埋め込み、断面をダイヤモンドペーストで研磨して断面の硬さ測定を行った。
図13に、母材と酸化膜の押し込み深さ−荷重曲線を示す。
母材(Alloy substrate)に比べて、陽極酸化皮膜(Oxide layer)の押し込み深さはかなり小さいことから、陽極酸化皮膜の硬さが母材に比べて大きいことがわかる。母材の硬さ(HM)は約2.9GPaであるのに対し、陽極酸化皮膜の硬さは最大5.0GPaであり、母材より硬さが大きくなっていることがわかる。
(4−2)電解周波数の影響
次に、多孔質構造である陽極酸化皮膜の空隙の大きさなどを制御するために、各種電解パラメータの陽極酸化皮膜の構造と形態に及ぼす影響について検討を行った。
図14(a)〜(c)に、電解周波数の影響について検討した結果を示す。図14は、(a)40Hz、(b)100Hz、(c)500Hzで交流電解を行ったときのidcおよびiacの経時変化を示すグラフである。
図14の(a)〜(c)のiac(イ)に示すように、初期iacは周波数によらず4000A・m-2程度の値を示しているが、周波数が大きいほど電解時間と共にiacが大きく減少している。これは、idc(ロ)の挙動と対応していると考えられる。
(a)に示す40Hzでは、idc(ロ)は負の大きな値を示しており、30min電解しても−600A・m-2という比較的大きな負の値となっている。これは、水素ガスの発生が盛んに起こっており、このガス発生により陽極酸化皮膜が破壊され、大きなiacが流れ続けたためと考えられる。また、この陽極酸化皮膜は密着性が悪く、テープ剥離試験を行ったところ、簡単にテープ剥離が起こった。
また、周波数が大きくなると、idcは正の方へとシフトし、500Hzでは、全時間域にわたって正の値となっている。これは、周波数が大きくなるとカソードサイクルで陽極酸化皮膜を破壊するのに充分な水素発生の時間が与えられなくなっていると考えられる。このため、周波数が大きい場合には陽極酸化皮膜が成長すると共に電流が流れにくくなっているといえる。
図15に各周波数で30min交流電解後の表面写真を示す。60Hzまでの低周波数での電解では、均一な陽極酸化皮膜で母材がコーティングされているが、周波数が大きくなると黄色の皮膜が斑に観られるようになる。この黄色の皮膜は、直流電解で火花放電が充分に起こる前にも観られることから、周波数が大きくなると、火花放電が斑に起こっていることを示唆している。
これに対応して、図16のP4浴中で交流電圧のVmax=400V、Vmin=−70Vとし、各周波数で交流電解したときのXRDパターンにおいても、500Hzで電解したチタン製部材では、TiAl25相(▲)の回折ピークが弱くなっている。したがって、均一な陽極酸化皮膜を形成するには60Hz以下の低周波数電解で電解する必要がある。また、40Hz以下の周波数で30min交流電解して作製したチタン製部材は密着性が悪く、テープ剥離試験で全面剥離を生じた。そこで、以下の交流電解では、周波数を60Hzと固定して電解を行った。
(4−3)電解電圧の影響
まず、図17(a)〜(c)に、Vmax=400Vと一定とし、Vminを−30V,−50V,−70Vに変化させたときのiac,idcの変化を示す。Vminが小さくなるほどiacが大きくなり、陽極酸化皮膜が成長するようになっている。
(c)に示すように、Vmin=−70Vにおいて、idc(ロ)が負の大きな値のときに特にiac(イ)が大きくなっており,idcとiacに相関が認められる。このように、交流電解における陽極酸化皮膜の形成においてカソードサイクル時の水素発生が重要な役割を担っていることがわかる。
また、図18のP4浴中で交流電圧のVmax=400V、Vminを−30V,−50V,−70Vとし、各周波数で交流電解したときのXRDパターンに示すように、Vminによって陽極酸化皮膜の成長に大きな違いが生じていることは、当該XRDパターンからも明らかである。Vmin=−30VおよびVmin=−50Vのチタン製部材では、母材の回折線以外に、酸化物(Al2TiO5相、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン)の回折線が明瞭に現れていないことから、陽極酸化皮膜が薄く、結晶性が悪いことが示唆される。つまり、所望の強度を具備できないことを示す。このように陽極酸化皮膜の結晶性が悪いのは、電流が小さいために火花放電の密度が小さく、結晶化が進行しなかったためと考えられる。
一方、大きなiacが流れたVmin=−70Vのチタン製部材では、ルチル型酸化チタンとAl2TiO5相の回折線が強く現れている。
次に、Vmaxの影響について検討を行った。図19(a)〜(c)に、Vmin=−70Vと一定とし、Vmaxを(a)300V、(b)350V、(c)400Vの間で変化させたときのiac(イ)およびidc(ロ)の変化を示す。
図19(a)〜(c)に示すように、Vmaxを小さくすると、idcが負の大きな値を示すようになっている。これに対応してiacは、Vmaxが小さくなると、大きな値を維持する。
そして、図20に示すように、Vmax=350V,Vmin=−70Vで交流電解したチタン製部材の断面をSEMで観察すると、陽極酸化皮膜全体が多孔質となっていることがわかる。なお、図20のスケールバーは、5μmを示す。
これらの結果から、図19のようにidcが負の大きな値を示すときは、水素ガス発生のために陽極酸化皮膜の空隙の形成率(多孔度)が増すことが確認された。
また、図21(a)〜(c)に示すように、表面をSEM観察すると、Vmaxが大きくなるほどポア径が小さくなっている。なお、図21は、それぞれ(a)Vmaxを300V、(b)Vmaxを350V、(c)Vmaxを400Vとし、Vmin=−70として陽極酸化皮膜を形成したSEM写真である。なお、図21(a)のスケールバーは10μmを示す。スケールバーのサイズは(b)および(c)においても同じである。
(4−4)リン酸ナトリウム濃度の影響
Yerokhinらは、Ti−6Al−4V合金のplasma electrolytic oxidationにおいて、アルミン酸カリウムとリン酸ナトリウムの混合浴から緻密で多孔度の小さな酸化膜が生成すると報告している(A.L. Yerokhin, A. Leyland, A. Matthews, "Applied Surface Science", 200 (2002) 172.)。
そこで、次にリン酸ナトリウム濃度の陽極酸化皮膜の生成および陽極酸化皮膜の形態への影響について検討を行った。図22にその結果を示す。図22の(a)は、P0浴(Bath)を、(b)は、P4浴(Bath)を、そして(c)は、P12浴(Bath)を用いた場合に、Vmax=400V,Vmin=−70Vで交流電解したときの電流変化を示す。
dc(ロ)はいずれも負の値を示し、リン酸イオン濃度が大きくなるほどiac(イ)とidc(ロ)の絶対値が大きくなっている。特に、P12浴中では、iacとidcが極端に大きい。浴pHはいずれの電解液でも12.5であるので、リン酸イオンはチタンおよびバナジウムなどの合金成分の溶解を促進する作用があると考えられる。
次に、図23に、それぞれ(イ)P0浴、(ロ)P2浴、(ハ)P4浴、()P12浴で30min交流電解したチタン製部材のXRDパターンを示す。
(イ)のP0浴では、TiAl25相(▲)の回折ピークは非常に弱く、リン酸イオン濃度が4g/L(P4浴)に増えるにつれて、TiAl25相の相対ピークが増えており、この酸化物層の生成にリン酸イオン濃度が影響を与えていることがわかる。
そして、これらのチタン製部材のテープ剥離試験結果を表2に示す。前記したように、P4浴では密着性のよい陽極酸化皮膜を生成できたが、P0浴ではテープ剥離試験により陽極酸化皮膜が全面剥離した。また、P2浴から得られた陽極酸化皮膜も部分剥離を生じた。P12浴では、電流が大きかったために、密着性の悪い陽極酸化皮膜が生成した。
つまり、前記条件のP12浴では、電解電圧が大きすぎることが考えられた。そこで、VmaxおよびVminの最適化を行った。その結果、図24に示すように、P12浴では、Vmax=350V,Vmin=−50Vにおいて、図10に示すP4浴と類似の電流変化を示した。なお、図24は、P12浴中でVmax=350V,Vmin=−50Vで交流電解したときの電流変化を示すグラフである。
図25に、かかる条件で30min交流電解したチタン製部材のXRDパターンを示す。
ルチル型酸化チタン(◆)の回折ピークよりもTiAl25相(▲)の回折ピークが相対的に強くなっており、さらにアルミニウムの取り込み量が増えていることがわかる。
また、図26の(a)(b)に示す、Vmax=350V,Vmin=−50Vで30min交流電解したチタン製部材の表面SEM写真から、陽極酸化皮膜の空隙もP4浴に比べてかなり小さくなっていることがわかった。さらに、テープ剥離試験の結果も良好で、テープによる剥離が生じない、密着性のよい陽極酸化皮膜であることが確認された。なお、(a)のスケールバーは10μmを示し、(b)のスケールバーは5μmを示す。
次に、図27に、断面SEM写真およびEPMAによる元素マッピングを示す。図27において、(a)は、断面のSEM写真であり、(b)、(c)、(d)は、それぞれチタン(Ti)、アルミニウム(Al)、酸素(O)についてのEMAマッピング像である。なお、(a)のスケールバーは5μmを示す。これは(b)、(c)、(d)においても同じサイズである。また、これらの像において、上側が外層であり、下側が内層である。
EPMAによるマッピング像から、外層と内層では、アルミニウム(Al)および酸素(O)の分布に大きな違いがあることがわかる。つまり、(c)および(d)のマッピング像では、外層に白い斑点が高い密度で分布していることから、外層にのみ多量のアルミニウムと酸素が電解液から取り込まれていることがわかる。一方、(b)のマッピング像では、内層に白い斑点が高い密度で分布していることから、外層に含まれるチタン(Ti)の量がやや減じていることもわかる。なお、白い斑点は、測定した元素が存在していることをイメージしたものである。
また、P4浴で得られた陽極酸化皮膜に比べ、空隙の孔径は小さく、空隙の形成率(多孔度)は減少しているように見える。陽極酸化皮膜の膜厚は約9μmであった。
そして、図28に示すように、GDOESによる陽極酸化皮膜の深さ方向の分析によると、P4浴の結果と基本的に同じであり、ナトリウム(Na)が母材(Ti)との界面付近に濃縮しており、水素(H)が母材中に存在している。
(4−5)熱処理の影響
そして、最も多孔度が小さく、密着性の良好であったP12浴を用いて、Vmax=350V、Vmin=−50V、30minという条件で陽極酸化皮膜を形成したチタン製部材について、500℃×8時間の熱処理を行った。
その結果、熱処理後もテープ剥離を生じることなく、良好な密着性を維持した。
図29に、P12浴を用いて、Vmax=350V、Vmin=−50V、30minという条件で陽極酸化皮膜を形成したチタン製部材について時効処理する前後のXRDパターンを示す。まず、熱処理前に観られたβ型のチタン合金の回折ピークは、熱処理後には認められなかった。これは、熱処理によってチタン合金の形態がβ型チタン合金からα型チタン合金へと相変態したことに起因する。
α型チタン合金は、結晶性が低いため、TiAl25相(▲)、ルチル型酸化チタン(◆:Rutile)、アナターゼ型酸化チタン(◇:Anatase)などの酸化物の回折パターンと重なり、このXRDパターンには、明確に現れていない。
しかし、これらの酸化物の相対強度にも変化がみられる。熱処理後には熱処理前には弱かったアナターゼ型酸化チタンの回折ピークが強く現れている。アナターゼは準安定相であり、ルチル型酸化チタンやTiAl25相がアナターゼ型酸化チタンに変わることは考えられない。したがって、熱処理前の酸化物相中には、アモルファス状の酸化物も存在しており、これが、熱処理によりアナターゼ型酸化チタンへと結晶化したものと考えられる。ルチル型酸化チタンの相対強度も増えているが、これは、アナターゼ型酸化チタンを経てさらにルチル型酸化チタンまで結晶化した酸化物の存在を示唆している。
(4−6)まとめ
以上説明したように、時効前のβ型チタン合金であるTi−15V−3Al−3Cr−3Sn合金を、アルミン酸カリウムを含む電解液中で交流電解することにより、テープ剥離せず、密着性のよい陽極酸化皮膜を得ることができた。
(実施例2)
次に、(実施例1)のβ型チタン合金であるTi−15%V−3%Al−3%Cr−3%Sn合金とともに純チタンおよびα−β型チタン合金であるTi−6%V−4%Al合金について、各種条件で陽極酸化を行った。
その結果を表3に示す。
ピーク電圧は、正の電圧V+と負の電圧V-をV+−V-の形で表現している。
膜厚は、チタン製部材の各箇所で渦電流膜厚計を用いて求めた値の平均値である。
硬さは、ビッカース硬さ計を用いて測定したものである。
孔径は、表面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察して測定した。
以上、本発明の陽極酸化皮膜形成チタン製部材およびその製造方法について、本発明を実施する最良の形態、および、実施例を示して具体的に説明したが、本発明の内容は、前記した内容に限定して解釈してはならず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で広く変更・改変して用いることができることはいうまでもない。
例えば、本発明の陽極酸化皮膜形成チタン製部材は、β型チタン合金製の部材について好適に用いることができる構成であれば、これに限定されることはない。
また、例えば、本発明の陽極酸化皮膜形成チタン合金は、骨組織に固定して使用される金属材料として使用することもできる。このような金属材料として使用すると、多孔質の孔の中に骨組織を侵入させて堅固な力学的結合をはかることができる。
したがって具体的には、β型チタン合金を用いて人工骨、人工歯根、人工関節などの所定の形状に成形した後、本発明に係る陽極酸化皮膜形成チタン製部材の製造方法を適用してこれらに陽極酸化皮膜を形成することで、耐摩耗性に優れた好適な生体金属材料を製造することができることはいうまでもない。
本発明の陽極酸化皮膜形成チタン製部材の構造を示す説明図である。 本発明の陽極酸化皮膜形成チタン製部材の一適用例を示す図である。 陽極酸化皮膜を形成するための装置を模式的に示して説明する説明図である。 交流電流に正の直流電圧を重畳し、アノードのピーク電圧(Vmax)に対してカソードのピーク電圧(Vmin)が小さくなるように交流電圧を印加することを説明するグラフである。 P4浴中で交流電圧のVmax=400V、Vmin=−70Vとし、周波数60Hzで交流電解したときの交流電流iac(「イ」で示す)と直流成分idc(「ロ」で示す)の経時変化を示すグラフである。 チタン製部材のXRD回折パターンである。 (a)および(b)は、チタン製部材の表面および断面のSEM写真である。 チタン製部材の断面のSEM写真と、EPMAによるTi,Al,Oの元素マッピング像である。 (a)および(b)は、GDOESを用いて陽極酸化皮膜中のイオンの深さ方向の分析を行った結果を示す。 それぞれ15min、30minおよび45minで交流電解した後のXRDパターンである。 (a)15min、(b)30min、(c)45minで交流電解したチタン製部材の表面SEM写真である。 15min交流電解後の断面SEM写真を示す。 母材(チタン製部材)と酸化膜の押し込み深さ−荷重曲線を示す。 (a)40Hz、(b)100Hz、(c)500Hzで交流電解を行ったときのidcおよびiacの経時変化を示すグラフである。 各周波数で30min交流電解後の表面写真を示す。 P4浴中で交流電圧のVmax=400V、Vmin=−70Vとし、各周波数で交流電解したときのXRDパターンである。 (a)〜(c)は、Vmax=400Vと一定とし、Vminを−30V,−50V,−70Vに変化させたときのiac,idcの変化を示すグラフである。 P4浴中で交流電圧のVmax=400V、Vminを−30V,−50V,−70Vとし、各周波数で交流電解したときのXRDパターンである。 (a)〜(c)に、Vmin=−70Vと一定とし、Vmaxを(a)300V、(b)350V、(c)400Vの間で変化させたときのiac(イ)およびidc(ロ)の変化を示すグラフである。 max=350V,Vmin=−70Vで交流電解したチタン製部材の断面のSEM写真である。 (a)Vmaxを300V、(b)Vmaxを350V、(c)Vmaxを400Vとし、Vmin=−70として陽極酸化皮膜を形成したSEM写真である。 (a)は、P0浴を、(b)は、P4浴を、(c)は、P12浴を用いた場合に、Vmax=400V,Vmin=−70Vで交流電解したときの電流変化を示すグラフである。 (イ)P0浴、(ロ)P2浴、(ハ)P4浴、(二)P12浴で30min交流電解したチタン製部材のXRDパターンを示す。 P12浴中でVmax=350V,Vmin=−50Vで交流電解したときの電流変化を示すグラフである。 P12浴中でVmax=350V,Vmin=−50Vで30min交流電解したチタン製部材のXRDパターンを示す。 (a)(b)は、Vmax=350V,Vmin=−50Vで30min交流電解したチタン製部材の表面SEM写真である。 (a)は、断面のSEM写真であり、(Ti)、(Al)、(O)は、それぞれチタン、アルミニウム、酸素についてのERMAマッピング像である。 GDOESによる陽極酸化皮膜の深さ方向について分析したグラフである。 P12浴を用いて、Vmax=350V、Vmin=−50V、30minという条件で陽極酸化皮膜を形成したチタン製部材について時効処理する前後におけるXRDパターンである。
符号の説明
1 陽極酸化皮膜形成チタン製部材
2 チタン製部材
3 陽極酸化皮膜
3a 空隙
10 陽極酸化浴
11 不溶性金属材
12 電解液
13 電解用電源

Claims (17)

  1. β型チタン合金のチタン製部材の表面にアルミニウムを含む陽極酸化皮膜形成されていることを特徴とする内燃機関用のバルブスプリング
  2. 前記陽極酸化皮膜が、Al2TiO5相を含むことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用のバルブスプリング
  3. 前記陽極酸化皮膜が、多数の空隙を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関用のバルブスプリング
  4. 前記陽極酸化皮膜が備える多数の空隙は、平均孔径が0μmを超え、3μm以下であることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関用のバルブスプリング。
  5. 前記陽極酸化皮膜の膜厚が、1〜100μmであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の内燃機関用のバルブスプリング
  6. 前記陽極酸化皮膜の硬さが、ビッカース硬さでHv500以上であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の内燃機関用のバルブスプリング
  7. 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の内燃機関用のバルブスプリングを製造するための製造方法であって、
    電解用電源の一の電極に接続されたβ型チタン合金のチタン製部材と、当該電解用電源の他の電極に接続された、交流電気をかけた電解液に対して不溶性の不溶性金属材と、をアルミン酸イオンを含む前記電解液中に浸漬する浸漬工程と、
    前記電解液中に浸漬した前記チタン製部材および前記不溶性金属材に交流電気を流して陽極酸化処理を行うことによって、前記チタン製部材の表面に陽極酸化皮膜を形成したバルブスプリングを製造する陽極酸化皮膜形成工程と、
    を含む
    ことを特徴とする内燃機関用のバルブスプリングの製造方法
  8. 電解用電源の一の電極に接続されたβ型チタン合金のチタン製部材と、当該電解用電源の他の電極に接続された、交流電気をかけた電解液に対して不溶性の不溶性金属材と、をアルミン酸イオンを含む前記電解液中に浸漬する浸漬工程と、
    前記電解液中に浸漬した前記チタン製部材および前記不溶性金属材に交流電気を流して陽極酸化処理を行うことによって、前記チタン製部材の表面に陽極酸化皮膜を形成し、400〜550℃で1〜20時間の時効処理を行って、陽極酸化皮膜形成チタン製部材を製造する陽極酸化皮膜形成工程と、
    を含むことを特徴とする陽極酸化皮膜形成チタン製部材の製造方法。
  9. 前記浸漬工程の前に、前記チタン製部材を前処理する前処理工程が含まれており、
    前記前処理工程が、
    前記チタン製部材の表面を洗浄する洗浄工程と、
    洗浄された前記チタン製部材の表面を表面処理する表面処理工程と、
    を含むことを特徴とする請求項8に記載の陽極酸化皮膜形成チタン製部材の製造方法。
  10. 前記陽極酸化皮膜形成工程における陽極酸化処理が、火花放電陽極酸化処理であることを特徴とする請求項8または請求項に記載の陽極酸化皮膜形成チタン製部材の製造方法。
  11. 前記陽極酸化皮膜形成工程における陽極酸化処理が、交流法、交流直流重畳法、定電流法、定電圧法、不完全整流法、電流反転法、またはパルス法のいずれかであることを特徴とする請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の陽極酸化皮膜形成チタン製部材の製造方法。
  12. 前記陽極酸化皮膜形成工程で流す前記交流電気は、周波数が、60〜200Hzであることを特徴とする請求項8から請求項11のいずれか1項に記載の陽極酸化皮膜形成チタン製部材の製造方法。
  13. 前記陽極酸化皮膜形成工程で流す前記交流電気の電圧が、正の電圧ピークとして、250〜400Vであるとともに、負の電圧ピークが前記正の電圧ピークの30%以下であることを特徴とする請求項8から請求項12のいずれか1項に記載の陽極酸化皮膜形成チタン製部材の製造方法。
  14. 前記陽極酸化皮膜形成工程の電解液温度が、室温〜80℃であることを特徴とする請求項8から請求項13のいずれか1項に記載の陽極酸化皮膜形成チタン製部材の製造方法。
  15. 前記陽極酸化皮膜形成工程の通電時間が、10分間以上、45分間未満であることを特徴とする請求項8から請求項14のいずれか1項に記載の陽極酸化皮膜形成チタン製部材の製造方法。
  16. 前記アルミン酸イオンを含む電解液が、アルカリ性であることを特徴とする請求項8から請求項15のいずれか1項に記載の陽極酸化皮膜形成チタン製部材の製造方法。
  17. アルカリ性の前記アルミン酸イオンを含む電解液が、アルミン酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミン酸バリウム、アルミン酸リチウム、アルミン酸マグネシウム、およびアルミン酸ベリリウムのうち少なくとも1種の化合物を含む電解液であることを特徴とする請求項16に記載の陽極酸化皮膜形成チタン製部材の製造方法。
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