以下、この発明によるハンズフリー通話装置の実施形態およびハンズフリー通話機能付き音響再生装置の実施形態を、図を参照しながら説明する。
[ハンズフリー通話装置の実施形態(第1の実施形態)]
図1は、この発明によるハンズフリー通話装置の実施形態の構成例を説明するための図である。
図1に示す実施形態のハンズフリー通話装置10においては、使用者3の左耳の近傍にスピーカ1が配置される。このスピーカ1は、いわゆる裸のスピーカの構成とされる。すなわち、スピーカ1は、そのスピーカユニットの振動板の前方に放射される音と、後方から放射される音が混合可能となるように、当該スピーカユニットがスピーカボックスには収納されてはおらず、かつ、バッフル板に取り付けられてはいない。
この裸のスピーカ1では、図2に示すように、そのスピーカユニットの振動板の前から放射される音波Sfと、後ろから放射される音波Sbとが混合される。ここで、スピーカユニットの振動板の前から出る音波Sfの位相(図3(A)参照)と、振動板の後ろから出る音波Sbの位相(図3(C)参照)とでは、互いに逆相となる。このため、スピーカ1の振動板の外周端を含む面に平行な面内であって、当該振動板の外周端よりも外側の領域において、当該振動板の前後から出る音が加算されて相殺され(図3(B)参照)、音圧がほぼゼロになる領域(以下、音圧ゼロ領域と称する)Zoが存在する。
この音圧ゼロ領域Zoは、スピーカ1で音声を再生したときに、マイクロホンにより、当該スピーカ1からの放射音波を収音することにより、確認することができる。図2では、破線5により、この領域を示している。
この実施形態では、この音圧ゼロ領域Zoの任意の位置に、送話者(使用者3)の送話音声の収音用のマイクロホン2を配置する。実際的には、例えば、スピーカ1の振動板の外周フレーム部の近傍が音圧ゼロ領域Zoとなるので、当該スピーカ1の振動板の外周フレーム部に対してマイクロホン2が固定されて、音圧ゼロ領域Zoにマイクロホン2が配置される。つまり、この例では、マイクロホン2の保持手段は、スピーカ1となる。
この実施形態では、図4に示すように、スピーカ1は、使用者3が座る椅子6のヘッドレスト部7の、使用者3の左耳側に、振動板1Cの振動面が使用者側を向くように固定される。この例では、スピーカ1の振動板1Cの振動面が使用者側を向くようにするため、振動板1Cの振動面が、ヘッドレスト部7の長片方向に対して、例えば45度程度の斜めの状態で、スピーカ1は、ヘッドレスト部7に取り付けられる。
そして、図4に示すように、マイクロホン2は、スピーカ1の振動板1Cの外周フレーム部1Aにおいて、使用者3の口に対応する位置に固定される。図4の例では、スピーカ1の外周フレーム部1Aのマイクロホン2の取り付け位置が、最下端位置となるような状態で、スピーカ1は、ヘッドレスト部7に取り付けられる。
そして、このマイクロホン2により、使用者3が発声する通話音声が収音される。マイクロホン2で音響−電気変換されて得られる通話音声信号は、マイクアンプ11を通じてローパスフィルタ12に供給される。そして、ローパスフィルタ12の出力音声信号が、音声信号出力端子13を通じて、この実施形態では、携帯電話端末4の送話音声入力端子に供給される。
また、携帯電話端末4の受話音声出力端子からの通話の相手方からの受話音声信号が、音声信号入力端子14を通じて、この実施形態のハンズフリー通話装置10に入力される。そして、この音声信号入力端子14を通じて入力された受話音声信号は、パワーアンプ15を通じてスピーカ1に供給される。この場合、スピーカ1は、使用者の耳の近くに配置されるので、スピーカ1から放音する通話音声の音量は小さくてよい。このことも、ハウリング防止には、より効果的である。
ローパスフィルタ12は、この実施形態では、次のような理由により設けられている。すなわち、裸のスピーカ1の振動板1Cの前後から出る音のうち、特に、低い周波数については、振動板1Cの前後から出る音の相殺効果が大きい。裸のスピーカ1の振動板1Cの前後から出る音の中高域成分は、音圧ゼロ領域Zoでは大きく減衰したものとなるが、完全にはゼロにはならない。
そこで、この実施形態では、より確実にハウリング無く、安定に通話ができるようにするために、ローパスフィルタ12により、前述した音圧ゼロ領域Zoに配置したときにほぼ完全に相殺されて音圧がゼロになる通話音声帯域成分のみに制限するものである。この例では、ローパスフィルタ12におけるカットオフ周波数は、例えば2kHz程度とされている。このローパスフィルタ12のカットオフ周波数は、ハンズフリー通話装置の使用環境により異なり、例えばカットオフ周波数が1kHz以下の場合も考えられる。
以上の構成により、この実施形態のハンズフリー装置10によれば、ハウリングの心配なく、安定に通話を行なうことができる。そして、スピーカ1にマイクロホン2を固定する構成とすることができ、スピーカ1とマイクロホン2とが近接して1体として取り扱うことも可能であるので、取り付けや配線などが非常に簡単になるという効果もある。
また、例えば図4において、点線で示すように、右耳側に、右チャンネルスピーカSPRを配し、上述した実施形態のスピーカ1を左チャンネルスピーカとすることにより、2チャンネルステレオ用の音響再生装置を実現することも容易である。
なお、上述の実施形態では、使用者の左側にのみ、スピーカ1およびマイクロホン2を配置するようにしたが、使用者の右側に配置しても良いことはいうまでもない。
また、使用者の左側と右側の両方に、スピーカおよびマイクロホンを上述のスピーカ1とマイクロホン2と同様の配置関係で設け、両者をハンズフリー通話に用いるようにしても良い。その場合には、左右のマイクロホンで収音し、ローパスフィルタを通じた送話音声信号は、合成して、音声信号出力端子13から送出する。また、相手方からの受話音声信号は、左右のスピーカに分配して音響再生するようにする。
[ハンズフリー通話機能付き音響再生装置の実施形態]
<第2の実施形態>
図5は、ハンズフリー通話機能付き音響再生装置の実施形態(第2の実施形態)の構成例を示すブロック図である。図5において、上述したハンズフリー通話装置10と同一の構成部分には、同一番号を付してある。
この第2の実施形態は、左右2チャンネルのステレオ音響再生装置において、その一方のチャンネルのスピーカをハンズフリー通話機能用としても用いる場合である。
この実施形態のハンズフリー通話機能付き音響再生装置は、音声信号処理部20と、音声信号発生手段の例としての音楽ソース部30と、制御部40と、操作ボタン群41と、携帯電話端末4とから構成される。
そして、図6に示すように、この実施形態では、使用者3が座る椅子51のヘッドレスト部52の左右両側に左チャンネル用スピーカ1Lおよび右チャンネル用スピーカ1Rが取り付けられる。これら左右チャンネルのスピーカ1Lおよび1Rは、裸のスピーカの構成とされる。
そして、この実施形態では、左チャンネルのスピーカ1Lからの放射音波について、音圧ゼロ領域Zoの任意の位置に、送話者(使用者3)の送話音声の収音用のマイクロホン2が配置される。前述したように、スピーカ1Lの振動板の外周フレーム部の近傍が音圧ゼロ領域Zoとなるので、この実施形態においても、当該スピーカ1Lの振動板の外周フレーム部に対してマイクロホン2が固定されて、音圧ゼロ領域Zoにマイクロホン2が配置される。
この実施形態では、左チャンネルのスピーカ1Lがハンズフリー通話機能用として用いられるので、この左チャンネルのスピーカ1Lに対してのみ、マイクロホン2が設けられ、右チャンネルのスピーカは、ハンズフリー通話には用いられない。
音楽ソース部30は、この実施形態では、CD(Compact Disc)プレーヤと、ハードディスクドライブ(以下、HDDと略称する)31Hと、放送受信部31Bとを備えている。CDプレーヤ31Cは、CDがこれに装填されると2チャンネルの音声信号をデコードして出力する。HDD31Hには、多数の音楽コンテンツの音楽データが格納されており、これが選択されると、音楽データをデコードして、2チャンネルの音声信号を出力する。放送受信部31Bは、例えば、AMラジオ放送、FMラジオ放送およびテレビ放送などを受信可能であり、受信した放送音声を、2チャンネルの音声信号として出力する。
この実施形態では、CDプレーヤ31C、HDD31H、放送受信部31Bからの左右2チャンネルの音声信号は、音声信号処理部20に供給される。
音声信号処理部20では、CDプレーヤ31C、HDD31Hおよび放送受信部31Bからの2チャンネルの音声信号は、ソース選択回路32に入力される。
操作ボタン群41は、図7に示すように、電話ボタン61、CDボタン62、HDDボタン63、放送ボタン64などの選択ボタンと、音量調整つまみ65とを備えている。操作ボタン群41での使用者によるボタン操作に応じた操作信号は、制御部40に供給される。
なお、操作ボタン群41には、上述のような選択ボタンのほかに、CDプレーヤ31CやHDD31Hに対する、いわゆるリピート再生や、シャッフル再生、また、放送受信部31Bにおける放送選局用操作ボタンなども含む。しかし、説明の簡単のため、これらのボタンについては図示及び説明を省略する。
制御部40は、例えばマイクロコンピュータを搭載して構成されており、操作ボタン群41における使用者のボタン操作に応じた制御信号を生成し、音楽ソース部30および音声信号処理部20の必要な各部に供給するようにする。
この実施形態のハンズフリー通話機能付き音響再生装置では、電話ボタン61が押下されないときには、音楽ソース再生モードとなり、電話ボタン61が押下されたときには、ハンズフリー通話モードとなるように、制御部40により制御される。なお、この実施形態におけるハンズフリー通話モードにおいては、音楽ソースの再生が停止されるのではなく、後述するように、ハンズフリー通話に影響が無い程度に、音楽ソースの音量が絞られるように制御される。
そして、音楽ソース再生モードにおいて、CDボタン62、HDDボタン63、放送ボタン64などの音楽ソースについての選択ボタンが押下されると、制御部40は、ソース選択回路32にソース選択信号を供給する。
ソース選択回路32は、そのソース選択信号により選択制御されて、押下された選択ボタンに応じた音楽ソースを選択するように選択制御する。例えば、CDボタン62が押下されるとソース選択回路32は、CDプレーヤ31Cからの左右2チャンネルの音声信号を選択出力する。同様に、HDDボタン63が押下されると、HDD31Hからの左右2チャンネルの音声信号を、また、放送ボタン64が押下されると、放送受信部31Bからの左右2チャンネルの音声信号を、ソース選択回路32は、それぞれ選択出力する。
ソース選択回路32からの2チャンネルの音声信号のうちの、この実施形態では、左チャンネルの音声信号は、減衰部33Lを通じて、通話時の受話音声信号との混合回路36に供給される。この混合回路36の出力音声信号が音量調整用ボリューム34Lおよびパワーアンプ35Lを通じて、左チャンネル用のスピーカ1Lに供給されて、音響再生される。
また、ソース選択回路32からの2チャンネルの音声信号のうちの右チャンネルの音声信号は、減衰部33Rを通じ、音量調整用ボリューム34Rおよびパワーアンプ35Rを通じて、右チャンネル用のスピーカ1Rに供給されて、音響再生される。
この場合に、スピーカ1Lおよび1Rは、使用者の耳の近傍に配置されるので、これらスピーカ1Lおよび1Rから放音される音は、小出力音量でよい。
減衰部33Lおよび33Rは、この実施形態のハンズフリー通話機能付き音響再生装置において、ハンズフリー通話を行なうときに、音楽ソース部30からの音楽ソースの音量を低減するためのものである。音楽ソース再生モードにおいては、これら減衰部33Lおよび33Rの減衰量は、ゼロである。つまり、減衰部33L,33Rは、音楽ソース再生モードにおいては、入力音声信号を減衰せず入出力する。
そして、操作ボタン群41の電話ボタン61が使用者により押下されたとき、制御部40は、それを検知してハンズフリー通話モードに切り替え、減衰部33Lおよび33Rに減衰制御信号を供給して、ソース選択回路32からの音声信号を減衰させるようにする。
この場合において、減衰部33Lおよび33Rの減衰量は、通話の邪魔にならない程度に音楽ソースの音声信号を減衰させるように選定される。減衰部33Lおよび33Rの減衰量は、同一であっても良い。しかし、この実施形態では、通話用には、左チャンネルのみが用いられるので、左チャンネルの減衰部33Lの減衰量の方が、右チャンネルの減衰部33Rの減衰量よりも大きくされる。例えば、この実施形態では、ハンズフリー通話時における、左チャンネルの減衰部33Lの減衰量は−20dBとされ、右チャンネルの減衰部33Rの減衰量は−10dBとされる。
音量調整用ボリューム34Lおよび34Rは、使用者により音量調整つまみ65が操作されたときに、その操作に応じて、スピーカ1Lおよび1Rに供給する音声信号の音量を制御するためのものである。
すなわち、使用者が、音量調整つまみ65を、例えば右回転させると、制御部40は、それを検知して、スピーカ1Lおよび1Rに供給する音声信号の音量を、その回転量に応じた分だけ、大きくするように音量調整用ボリューム34Lおよび34Rを制御する。また、使用者が、音量調整つまみ65を、例えば左回転させると、制御部40は、それを検知して、スピーカ1Lおよび1Rに供給する音声信号の音量を、その回転量に応じた分だけ、小さくするように音量調整用ボリューム34Lおよび34Rを制御する。
次に、ハンズフリー通話の音声信号の処理系について説明する。
この実施形態では、図5に示すように、マイクロホン2により、使用者3が発声する通話音声が収音され、音響−電気変換されて通話音声信号とされ、音声信号処理部20に入力される。音声信号処理部20では、マイクロホン2からの通話音声信号は、マイクアンプ21を通じて、前述のローパスフィルタ12と同様のローパスフィルタ22に供給される。そして、ローパスフィルタ22の出力音声信号が、通話時と音楽ソース再生時とで切り換えられるスイッチ回路23の通話側端子(入力端子)Tに供給される。
このスイッチ回路23の音楽再生側端子(入力端子)Mは、この実施形態では接地されている。
このスイッチ回路23の切換端子(出力端子)は、音声信号出力端子24を通じて、この実施形態では、携帯電話端末4の送話音声入力端子に接続される。つまり、マイクロホン2で収音された使用者3の送話音声信号が、携帯電話端末4の送話音声入力端子に供給される。
また、携帯電話端末4の受話音声出力端子からの通話の相手方からの受話音声信号が、音声信号入力端子25を通じて、この実施形態の音声信号処理部20に入力される。そして、この音声信号入力端子25を通じて入力された受話音声信号は、通話時と音楽ソース再生時とで切り換えられるスイッチ回路26の通話側端子(入力端子)Tに供給される。
このスイッチ回路26の音楽再生側端子(入力端子)Mは、この実施形態では接地されている。そして、このスイッチ回路26の切換端子(出力端子)は、混合回路36に接続されており、通話時には、相手方からの受話音声信号が、通話側端子Tを通じて混合回路36に供給される。そして、この混合回路36の出力音声信号は、音量調整用ボリューム34Lおよびパワーアンプ35Lを通じて、左チャンネル用のスピーカ1Lに供給されて、音響再生される。
[第2の実施形態の動作説明]
音楽ソース再生モードにおいては、スイッチ回路23およびスイッチ回路26は、それぞれ音楽再生側端子Mに切り換えられており、マイクロホン2からの収音音声信号は、スイッチ回路23Aを通じて接地端に供給される。また、携帯電話端末4からの音声信号は、スイッチ回路26により遮断されている。
そして、音楽ソース部30からの音楽ソースが左右チャンネルのスピーカ1L,1Rに供給されて音響再生されている。このときの減衰部33L,33Rでの減衰量はゼロである。そして、出力音量は、操作ボタン群41の音量調整つまみ65の操作により変えられる。また、操作ボタン群41のCDボタン62、HDDボタン63、放送ボタン64などを操作することにより、音楽ソース部30から送出される2チャンネル音声信号のソース源が変更される。
次に、音楽ソース再生モードのときに、携帯電話端末4に着信があった場合、この実施形態では、使用者は、携帯電話端末4で着信応答操作(例えばオフフック操作)をすると共に、操作ボタン群41の電話ボタン61を押下操作する。
また、使用者3が携帯電話端末4から相手方に発信をしてハンズフリー通話をする場合には、この実施形態では、使用者3は、携帯電話端末4で相手方への発信操作をすると共に、電話ボタン61を押下する。
使用者が操作ボタン群41の電話ボタン61を押下すると、制御部40は、それを検知して、音声信号処理部20をハンズフリー通話モードに切り換える。そして、制御部40は、スイッチ回路23および26に対して、これらをそれぞれ通話側端子Tに切り換える切換制御信号を供給すると共に、減衰部33Lおよび33Rに対して、前述した減衰制御信号を出力する。これにより、減衰部33Lは、その入力音声信号を−20dB、減衰させて出力し、また、減衰部33Rは、その入力音声信号を−10dB、減衰させて出力する。
そして、マイクロホン2で収音された使用者3の発声音声の送話音声信号は、マイクアンプ21、ローパスフィルタ22、スイッチ回路23、音声信号出力端子24を通じて携帯電話端末4に供給されて、相手方に携帯電話網を通じて送られる。また、携帯電話端末4で受信された相手方からの受話音声信号は、音声信号入力端子25を通じて音声信号処理部20に入力される。
入力された相手方からの受話音声信号は、混合回路36で減衰部33Lからの左チャンネルの音声信号と混合され、音量調整用ボリューム34Lおよびパワーアンプ35Lを通じてスピーカ1Lに供給される。したがって、受話音声信号は、減衰された左チャンネルの音声信号と混合されてスピーカ1Lによって、音響再生される。
また、右チャンネルの音声信号は、−10dB減衰された、右チャンネルスピーカ1Rにより音響再生される状態となる。
このように、このハンズフリー通話モードにおいては、音楽ソース部30からの2チャンネル音声信号は、減衰部33Lおよび33Rにおいて、それぞれ−20dBおよび−10dBだけ減衰されるので、通話音声が聞きづらくなることが防止される。
したがって、ハンズフリー通話モードにおいては、音楽ソース再生モードにおいて使用者が聴取していた音楽ソースの聴取を続行しながら、携帯電話4を通じた相手方とのハンズフリー通話が可能となる。
そして、スピーカ1Lおよび1Rは、使用者の耳の近傍に配置されているので、元々の放音出力音量(音圧)が小さくてよい。このことと、マイクロホン2が、スピーカ1Lの音圧ゼロ領域Zoに配置されることも相俟って、この実施形態では、ハウリングを防止して、音楽ソースを聴取しながらのハンズフリー通話が可能となる。
使用者3が、電話ボタン61を押下し、携帯電話端末4から相手方に発信をしてハンズフリー通話をしようとした場合には、相手方が応答をすれば、上述のようにして、音楽ソースを聞きながらのハンズフリー通話が可能となる。
なお、この実施形態では、携帯電話端末4への着信に対する応答や、発信操作については、携帯電話端末4において着信応答操作したり、発信操作をしたりすることで、対応するようにしている。
しかし、携帯電話端末4がコンピュータとの接続端子を備える場合に、当該接続端子を用いて、自動着信/終話、登録された相手先へのワンタッチ発信機能を実現するようにするハンズフリーキットも存在する。そこで、このハンズフリーキットの機能を制御部40に備えるようにすることで、制御部40が自動着信/終話などの機能を行なうようにすることも勿論できる。
[第3の実施形態(ハンズフリー通話機能付き音響再生装置の実施形態)]
上述した第2の実施形態では、使用者は、音楽ソース部30のCDプレーヤ31C,HDD31H,放送受信部31Bなどの各ソース源についての制御は、操作ボタン群41の操作ボタンで行なうように説明した。
これに対して、この第3の実施形態では、ハンズフリー通話機能用のマイクロホンを、各ソース源の選択制御や音量制御を音声認識で行う場合の、音声制御語の収音用としても用いるようにした場合である。なお、この実施形態では、操作ボタン群41の操作ボタンによる制御も可能であるが、さらに、音声認識による制御が可能な構成とされる。
図8は、ハンズフリー通話機能付き音響再生装置の第3の実施形態の構成例を示すブロック図である。この図8において、図5の第2の実施形態の構成例を同一部分には、同一符号を付与して、その説明は省略する。
そして、この第3の実施形態においても、図6に示したように、使用者3が座る椅子51のヘッドレスト部52の左右両側に左チャンネル用スピーカ1Lおよび右チャンネル用スピーカ1Rが取り付けられる。これら左右チャンネルのスピーカ1Lおよび1Rは、裸のスピーカの構成とされる。そして、左チャンネルのスピーカ1Lからの放射音波について、音圧ゼロ領域Zoの任意の位置に、送話者(使用者3)の送話音声の収音用のマイクロホン2が配置される。
この実施形態においても、当該スピーカ1Lの振動板の外周フレーム部に対してマイクロホン2が固定されて、音圧ゼロ領域Zoにマイクロホン2が配置される。
この第3の実施形態では、図8に示すように、ローパスフィルタ22を通じたマイクロホン2からの音声信号は、スイッチ回路23Mの切換端子(入力端子)に供給される。そして、この実施形態では、ローパスフィルタ22を通じたマイクロホン2からの音声信号は、このスイッチ回路23Mの通話側端子(出力端子)Tから、音声信号出力端子24を通じて、携帯電話端末4の送話音声入力端子に供給される。
また、この実施形態では、ローパスフィルタ22を通じたマイクロホン2からの音声信号は、このスイッチ回路23Mの音楽再生側端子(出力端子)Mを通じて、音声認識回路42に供給される。この音声認識回路42では、「CD」、「HDD」、「放送」などのソース選択の発声語や、「リピート」、「チェンジ」、「音量アップ」、「音量ダウン」などの制御のための発声語を音声認識するように構成されている。そして、音声認識回路42での音声認識結果は、制御部40に供給される。
制御部40は、音声認識回路42からの音声認識結果に応じた制御を行なう。例えば、制御部40は、音声認識回路42から、「CD」、「HDD」、「放送」などのソース選択の発声語の音声認識結果を受けたと判別したときには、その発声語で指定されたソースを選択するようにソース選択回路32を切り換える。例えば、「CD」と発声されたと判別したときには、制御部40は、CDプレーヤ31Cを選択するようにソース選択回路32を切り換える。
また、制御部40は、ソースとして、「CD」および「HDD」が選択されているときに、「リピート」と発声されたと判別したときには、再生中の音楽コンテンツを、もう一度、繰り返し再生するようにする。また、制御部40は、ソースとして、「CD」および「HDD」が選択されているときに、「チェンジ」と発声されたと判別したときには、再生される音楽コンテンツを、現在再生中のものから、他の音楽コンテンツに変更するように、CDプレーヤ31CまたはHDD31Hを制御するようにする。また、制御部40は、ソースとして、「放送受信部」が選択されているときに、「チェンジ」と発声されたと判別したときには、受信する放送チャンネルを現在のチャンネルから他のチャンネルに変更するように、放送受信部31Bを制御するようにする。
また、制御部40は、「音量アップ」または「音量ダウン」と発声されたと判別したときには、音量調整用ボリューム34Lおよび34Rを、認識された発声語に応じて制御するようにする。
その他の構成および動作は、上述した第2の実施形態と同様である。すなわち、スイッチ23Mの音楽再生側端子(出力端子)Mに得られるマイクロホン2からの音声信号が音声認識回路42に供給される点を除くと、第2の実施形態と同様の構成となる。
上述した第3の実施形態によれば、上述の第2の実施形態の効果に加えて、以下のような効果を奏する。
すなわち、ハンズフリー通話の送話音声収音用のマイクロホンを、音楽ソースの選択や、音量制御などの制御用として用いられる音声認識用の発声語の収音用マイクロホンと兼用することができる。音声認識により、音楽ソースの選択や、音量制御などの制御ができるので、この第3の実施形態を、例えば車載用オーディオ装置に適用すれば、ハンズフリー通話のみでなく、音楽再生においても、ハンズフリーとなり、安全性が向上する。
なお、この第3の実施形態は、車載用オーディオ装置のみでなく、例えば前述したリビング用の椅子のヘッドレスト部にスピーカおよびマイクロホンを装着して構成の装置にも適用できることは言うまでもない。
[第4の実施形態(車載用オーディオシステム)]
この第4の実施形態は、2台のハンズフリー通話機能付き音響再生装置の間で、それぞれの使用者が音楽ソースの再生を楽しみながら、必要なときに、相互に通話を行なうことができるように構成したものである。以下に説明する実施形態は、車載用のオーディオシステムとして、例えば運転席と、助手席とに対してハンズフリー通話機能付き音響再生装置を設けた場合である。
図9に、この第4の実施形態の車載用オーディオシステムの全体の構成を示すブロックである。なお、上述した実施形態の各部と同一部分には同一符号を付してある。この図9に示すように、この第4の実施形態においては、例えば運転席に使用者3Bが着席し、助手席に使用者3Aが着席する場合である。
第4の実施形態では、使用者3Aおよび使用者3Bが座る椅子のヘッドレスト部(図示は省略)の左側端に左チャンネル用スピーカ1LAおよび1LBが、ヘッドレスト部の右側端に右チャンネル用スピーカ1RAおよび1RBが、取り付けられる。これら左右チャンネル用のスピーカ1LA,1LBおよび1RA,1RBは、裸のスピーカの構成とされる。
そして、この第4の実施形態では、助手席の使用者3Aについては、左チャンネルのスピーカ1LAからの放射音波について、音圧ゼロ領域Zoの任意の位置に、送話者(使用者3A)の送話音声の収音用のマイクロホン2Aが配置される。また、運転席の使用者3Bについては、右チャンネルのスピーカ1RBからの放射音波について、音圧ゼロ領域Zoの任意の位置に、送話者(使用者3B)の送話音声の収音用のマイクロホン2Bが配置される。
この実施形態においても、音圧ゼロ領域Zoとなる当該スピーカ1LAおよびスピーカ1RBの振動板の外周フレーム部に対してマイクロホン2Aおよび2Bが固定されて、音圧ゼロ領域Zoにマイクロホン2Aおよび2Bが配置される。
以上のように、この実施形態では、助手席の使用者3Aに対しては左チャンネル用のスピーカ1LA側にマイクロホン2Aを設け、運転席の使用者3Bに対しては右チャンネル用のスピーカ1RB側にマイクロホン2Bを設けている。
このように、マイクロホン2A,2Bを左、右に配置して離間させるようにしたのは、マイクロホン2Aが、使用者3Bの発声音声を収音するのをできるだけ防止し、また、マイクロホン2Bが、使用者3Aの発声音声を収音するのをできるだけ防止するためである。
この実施形態では、使用者3Aに対しては操作ボタン群41Aが設けられ、また、使用者3Bに対しては操作ボタン群41Bが設けられる。これら操作ボタン群41Aおよび41Bに対する使用者3Aおよび3Bの操作に応じた操作信号は、制御部40に供給される。制御部40は、操作ボタン群41Aおよび41Bのいずれが操作されたか、また、どの操作ボタンが押下操作されたかを判別し、その判別結果に応じた制御を行なう。
そして、使用者3Aに対しては、音声信号処理部20Aが、使用者3Bに対しては、音声信号処理部20Bが、それぞれ設けられる。そして、音声信号処理部20Aに対しては、携帯電話端末4Aが接続可能とされると共に、音声信号処理部20Bに対しては、携帯電話端末4Bが接続可能とされる。さらに、音楽ソース部30のCDプレーヤ31C、HDD31Hおよび放送受信部31Bのそれぞれからの左右2チャンネルの音声信号が、音声信号処理部20Aおよび20Bのそれぞれに供給される。
音声信号処理部20Aおよび20Bは、上述した第2の実施形態における音声信号処理部20と基本的には同様の構成とされる。すなわち、音楽ソース部30からの音楽ソースを選択して再生すると共に、携帯電話端末4A,4Bを通じて、携帯電話網を通じた外部の相手方との電話通信(ハンズフリー通話)が可能な構成とされる。
そして、この第4の実施形態においては、音声信号処理部20Aおよび20Bは、さらに、使用者3Aと使用者3Bとの間で、スピーカ1LA、マイクロホン2Aおよびスピーカ1RB、マイクロホン2Bを用いての、装置間通話が可能な構成とされている。この装置間通話は、携帯電話端末を使用した通話を外線通話とすると、いわば内線通話(使用者間会話)となる。
さらに、この第4の実施形態では、使用者3A,3Bが座る椅子(座席シート)には、使用者3A,3Bが当該椅子に座ったとき、それを検知する着席センサ43Aおよび43Bがそれぞれ設けられている。そして、この着席センサ43Aおよび43Bの着席検出出力が制御部40に供給されている。
制御部40は、着席センサ43A,43Bからの着席検出出力が、着席を示す状態になっている使用者3Aおよび/または3Bに対する音声信号処理部20Aおよび/または20Bのみを動作可能状態とする。例えば、制御部40は、着席を示す状態になっている使用者3Aおよび/または3Bに対する音声信号処理部20Aおよび/または20Bのみに電源電圧を供給して、その動作を可能として、省電力化を図るようにしている。
音声信号処理部20Aおよび20Bは、全く同様の構成を有する。図10に、音声信号処理部20Aの構成を、両処理部20A,20Bの代表として示す。この図10において、図5と同一部分には、同一番号にサフィックスAを付して示している。
また、図11は、音声信号処理部20Aおよび20Bにおけるハンズフリー通話のための構成部分のみを抽出して示したものである。この図11においては、音声信号処理部20Aと20Bとで同一部分には、同一番号にサフィックスAおよびBを付して示している。
この図10に示すように、マイクロホン2Aにより、使用者3Aが発声する通話音声が収音され、音響−電気変換されて通話音声信号とされ、音声信号処理部20Aに入力される。
音声信号処理部20Aでは、マイクロホン2Aからの通話音声信号は、マイクアンプ21Aを通じてローパスフィルタ22Aに供給される。そして、ローパスフィルタ22Aの出力音声信号が、通話時と音楽ソース再生時とで切り換えられるスイッチ回路23Aの通話側端子(入力端子)Tに供給される。
このスイッチ回路23Aの音楽再生側端子(入力端子)Mは、この実施形態では接地されている。そして、このスイッチ回路23Aの切換端子(出力端子)は、携帯電話端末4Aを通じた外線通話時と、他の使用者3Bとの会話(内線通話)時とで切り換えられるスイッチ回路27Aの切換端子(入力端子)に接続される。
このスイッチ回路27Aの外線通話側端子(出力端子)ETは、音声信号出力端子24Aを通じて、この実施形態では、携帯電話端末4Aの送話音声入力端子に接続される。
また、携帯電話端末4Aの受話音声出力端子からの通話の相手方からの受話音声信号が、音声信号入力端子25Aを通じて、この実施形態の音声信号処理部20Aに入力される。そして、この音声信号入力端子25Aを通じて入力された受話音声信号は、携帯電話端末4Aを通じた外線通話時と、他の使用者3Bとの会話(内線通話)時とで切り換えられるスイッチ回路28Aの外線通話側端子(入力端子)ETに供給される。
そして、この第4の実施形態においては、図11に示すように、スイッチ回路27Aの内線通話側端子(出力端子)ITは、他の使用者3Bの音声信号処理部20Bのスイッチ回路28Bの内線通話端子(入力端子)ITに接続される。また、他の使用者3Bの音声信号処理部20Bのスイッチ回路27Bの内線通話側端子(出力端子)ITが、使用者3Aの音声信号処理部20Aのスイッチ回路28Aの内線通話側端子(入力端子)ITに接続される。
そして、スイッチ回路28Aの切換端子(出力端子)に得られる音声信号は、スイッチ回路26Aの通話側端子(入力端子)Tに供給される。このスイッチ26Aの音楽再生側端子(入力端子)Mは、この実施形態では接地されている。
そして、このスイッチ回路26Aの切換端子(出力端子)に得られる音声信号は、混合回路36Aに供給され、減衰部33LAを通じてこの混合回路36Aに供給される左チャンネルの音声信号と加算される。
なお、使用者3Bについての音声信号処理部20Bの場合には、スイッチ回路28Bの出力端子に得られる音声信号は、スイッチ回路26Bの通話側端子Tを通じて右チャンネルの音声信号との混合回路36Bに供給される。そして、スイッチ回路28Bの出力端子に得られる音声信号は、この混合回路36Bで、減衰部33RBを通じた右チャンネルの音声信号と加算される。
この第4の実施形態においては、操作ボタン群41Aおよび41Bには、図12に示すように、会話ボタン66が、図7に示した操作ボタン群41の構成に追加される。制御部40は、この会話ボタン66が押下されたときには、ハンズフリー通話モードにおける内線通話要求が発生したと判断して、当該内線通話を行なえるようにするための制御動作を行なう。
[第4の実施形態の動作]
以上のように構成されている第4の実施形態のシステムにおいて、使用者3Aまたは3Bによって、操作ボタン群41Aまたは41Bのいずれかの操作ボタンが操作されたときの動作について、以下に説明する。
制御部40は、着席センサ43Aおよび43Bからの着席検出出力を監視して、使用者3A,3Bの座席シートに対する着席を検知する。そして、制御部40は、使用者3Aの着席を検知すると、音声信号処理部20Aに電源を投入して、その動作を可能状態にする。同様に、制御部40は、使用者3Bの着席を検知すると、音声信号処理部20Aに電源を投入して、その動作を可能状態にする。なお、この実施形態は、車載用システムであるので、キーによりアクセサリースイッチがオンとされたときに、当該システムに電源が投入されるものであることは言うまでも無い。
使用者3A、使用者3Bの着席が検出されて、制御部40により、動作可能となっている音声信号処理部20A、20Bにおいては、会話ボタン66が押下される場合を除くと、前述した第1の実施形態と同様の動作を行なう。
すなわち、電話ボタン61が押下されていない音楽ソース再生モードにおいては、この実施形態では、例えば音声信号処理部20Aでは、制御部40により、スイッチ回路23A,26Aが音楽再生側端子Mに接続される。そして、この音楽ソース再生モードにおいては、前述したようにして、制御部40の制御の下、CDボタン62、HDDボタン63、放送ボタン64などの押下に応じてソース選択され、2個のスピーカで、2チャンネルステレオ音声再生される。
この実施形態では、使用者3Aと使用者3Bとでは、異なる音楽ソースを選択して楽しむことができる。
そして、電話ボタン61が、音楽ソース再生モードにおいて押下されると、制御部40は、ハンズフリー通話モードに切り換える。この実施形態では、制御部40は、例えば音声信号処理部20Aでは、スイッチ回路23A,26Aを通話側端子Tに切り替え、スイッチ回路27Aおよび28Aを、外線通話側端子ETに切り換える。また、制御部40は、減衰部33LAは、その入力信号を−20dB減衰させるように制御し、減衰部33RAは、その入力信号を−10dB減衰させるように制御する。
このハンズフリー通話モードにおいては、前述したように、マイクロホン2Aからの送話音声を相手方に送ると共に、一方のチャンネルで、相手方からの受話音声を聴取する。これにより、音楽再生を継続してハンズフリー通話が可能となる。
次に、会話ボタン66が操作されたときの動作について説明する。この実施形態では、操作ボタン群41Aでの会話ボタン66の操作は、使用者3Aから使用者3Bへの内線通話要求になり、操作ボタン群41Bでの会話ボタン66の操作は、使用者3Bから使用者3Aへの内線通話要求になる。
内線通話要求が発生した場合、制御部40は、要求された相手方が着席していて、その音声信号処理部が動作可能状態になっているか否か判別し、動作可能状態になっていなければ、内線通話要求をした使用者に、その旨を通知する。この通知は、例えば、制御部40により、音楽ソースの音声信号に、ブザー音を混合させるなどの方法でなされる。
次に、内線通話要求された相手方の音声信号処理部が動作可能状態になっているときには、制御部40は、ハンズフリーによる内線通話(会話)をすることができる状態に制御する。
この制御を、例えば使用者3Aが会話ボタン66を押下した場合を例に説明する。制御部40は、先ず、音声信号処理部20Aにおいて、スイッチ回路23Aおよび26Aを、通話側端子Tに切り換えると共に、スイッチ回路27Aおよび28Aを、内線通話側端子ITに切り換える。そして、制御部40は、音声信号処理部20Bにおいて、スイッチ回路23Bおよび26Bを、通話側端子Tに切り換えると共に、スイッチ回路27Bおよび28Bを、内政通話側端子ITに切り換える。図11は、このときの、スイッチ回路23A,26A,27A,28A、23B,26B,27B,28Bの切換状態を示している。
また、制御部40は、音声信号処理部20Aの減衰部33LAおよび音声信号処理部20Bの減衰部33RBの減衰量を−20dBに制御する。また、制御部40は、音声信号処理部20Aの減衰部33RAおよび音声信号処理部20Bの減衰部33LBの減衰量を−10dBに制御する。
上記のスイッチ回路の切換により、マイクロホン2Aで収音された使用者3Aの送話音声信号は、マイクアンプ21A→ローパスフィルタ22A→スイッチ回路23A→スイッチ回路27Aの経路を通じて相手方の音声信号処理部20Bに供給される。
そして、音声信号処理部20Bでは、音声信号処理部20Aからの音声信号を、スイッチ回路28B→スイッチ回路26B→混合回路36B→音量調整用ボリューム34RB→パワーアンプ35RBの経路でスピーカ1RBに供給し、音響再生する。
これにより、使用者3Aからの送話音声が、使用者3Bの耳の近傍のスピーカ1RBで、減衰された音楽ソースの音声信号と共に再生される。
また、マイクロホン2Bで収音された使用者3Bの送話音声信号は、マイクアンプ21B→ローパスフィルタ22B→スイッチ回路23B→スイッチ回路27Bの経路を通じて相手方の音声信号処理部20Aに供給される。
そして、音声信号処理部20Aでは、音声信号処理部20Bからの音声信号を、スイッチ回路28A→スイッチ回路26A→混合回路36A→音量調整用ボリューム34LA→パワーアンプ35LAの経路でスピーカ1LAに供給し、音響再生する。
これにより、使用者3Bからの送話音声が、使用者3Aの耳の近傍のスピーカ1LAで、減衰された音楽ソースの音声信号と共に再生される。
以上により、ハンズフリーで、使用者3Aと3Bとの間で内線通話と同様の会話ができる。その場合に、この実施形態では、マイクロホン2Aと2Bとを、使用者3Aの左耳側、使用者3Bの右耳側に配して、互いが、より遠くなるように配置したので、ハウリングの防止効果は高い。
[第5の実施形態(車載用オーディオシステム)]
第5の実施形態は、第4の実施形態の発展形である。第4の実施形態は、運転席と助手席に、この発明のハンズフリー機能付き音響再生装置を適用した場合であった。この第5の実施形態は、セダンタイプの4人乗りの自動車を想定して、運転席と助手席のみではなく、後列の2つの座席シートに対しても、この発明のハンズフリー機能付き音響再生装置を適用するようにする。
図13は、この第5の実施形態の車載用オーディオシステムの構成例を示すブロック図である。なお、図13において、上述した第4の実施形態の各部と同一部分には同一符号を付してある。
この図13においては、助手席に使用者3Aが座り、運転席に使用者3Bが座り、助手席の後部には使用者3Cが座り、運転席の後部には使用者3Dが座るものとしている。そして、各使用者3A,3B,3C,3Dが座る椅子のヘッドレスト部(図示は省略)の左側に左チャンネル用スピーカ1LA、1LB、1LC,1LDが取り付けられる。また、各使用者3A,3B,3C,3Dが座る椅子のヘッドレスト部の右側に右チャンネル用スピーカ1RA、1RB,1RC,1RDが取り付けられる。
これら左および右チャンネルのスピーカ1LA,1LB,1LC,1LDおよび1RA,1RB,1RC,1RDは、裸のスピーカの構成とされる。
そして、この実施形態では、助手席の使用者3Aに対しては、左チャンネルのスピーカ1LAからの放射音波について、音圧ゼロ領域Zoの任意の位置に、送話者(使用者3A)の送話音声の収音用のマイクロホン2Aが配置される。同様に、助手席の後部席の使用者3Cに対しても、左チャンネルのスピーカ1LCからの放射音波について、音圧ゼロ領域Zoの任意の位置に、送話者(使用者3C)の送話音声の収音用のマイクロホン2Cが配置される。
また、運転席の使用者3Bに対しては、右チャンネルのスピーカ1RBからの放射音波について、音圧ゼロ領域Zoの任意の位置に、送話者(使用者3B)の送話音声の収音用のマイクロホン2Bが配置される。同様に、運転席の後部席の使用者3Dに対しても、右チャンネルのスピーカ1RDからの放射音波について、音圧ゼロ領域Zoの任意の位置に、送話者(使用者3D)の送話音声の収音用のマイクロホン2Dが配置される。
そして、この実施形態においても、音圧ゼロ領域Zoとなる当該スピーカ1LA,1LC、1RB,1RDの振動板の外周フレーム部に対してマイクロホン2A,2B,2C,2Dが固定されて、音圧ゼロ領域Zoにマイクロホン2A〜2Dが配置される。
以上のように、マイクロホン2Aと2B、また、マイクロホン2Cと2Dとを左右チャンネルに分けて配するようにしたのは、前述したように、左右に並ぶ隣接使用者の発声音声を収音するのをできるだけ防止するためである。これにより、マイクロホン2A〜2Dの設置位置と相俟って、ハウリング防止効果を高めることができる。
この実施形態では、4座席の使用者のそれぞれが個別に音楽ソースを楽しみ、外部の相手方と携帯電話網を通じて通話を行い、さらに、4座席のいずれか、あるいは複数人と会話(内線通話)をすることができるように構成されている。
マルチ切り替えボックス70は、そのために設けられるもので、図14に示すように、前述した制御部40を備えると共に、各座席の使用者3A,3B,3C,3Dのそれぞれに対して、音声信号処理部20A,20B,20C,20Dを備える。さらに、マルチ切り替えボックス70は、内線切り替え回路81を備える。
図14に示すように、各音声信号処理部20A,20B,20C,20Dに対しては、外部の相手方と携帯電話網を通じて通話を行うための携帯電話端末4A,4B,4,C,4Dが接続可能とされる。
また、各音声信号処理部20A,20B,20C,20Dからの内線通話のための音声入出力信号(例えば図9のスイッチ回路27Aおよびスイッチ回路28Aの内線通話側端子ITに得られる信号)は、内線切り替え回路71に全て供給される。
内線切り替え回路71は、制御部40からの制御信号に応じて、内線通話路を切り替えるようにする。
そして、図13に示すように、各座席の使用者3A,3B,3C,3Dのそれぞれに対して、操作ボタン群41A,41B,41C,41Dが設けられる。これら操作ボタン群41A,41B,41C,41Dからの操作信号は、マルチ切り替えボックス70が備える制御部40に供給される。
制御部40は、操作ボタン群41A,41B,41C,41Dのいずれが操作されたかを判別し、さらに判別した操作ボタン群のいずれの操作ボタンが操作されたかを判別する。そして、制御部40は、その判別結果に応じた制御を実行するようにする。
この実施形態では、操作ボタン群41A,41B,41C,41Dのそれぞれは、図16に示すような操作ボタンを備える。すなわち、前述の第4の実施形態と同様に、操作ボタン群は、41A,41B,41C,41Dのそれぞれは、電話ボタン61、CDボタン62、HDDボタン63、放送ボタン64、音量調整つまみ65、会話ボタン66を備える。この第5の実施形態では、さらに、会話ボタン66と関連付けられて、会話対象として他の3座席のいずれか1つ、あるいは複数を指定するための4個の相手指定ボタン671,672,673,674が設けられる。
なお、4個の相手指定ボタンのうち、3個の相手指定ボタン671,672,673は、各座席毎に異なる他の座席を指定するように、予め設定されている。そして、4個の相手指定ボタンのうちの残りの1個の相手指定ボタン674は、他の3座席全部を相手として指定する操作ボタンとされる。
また、各使用者3A,3B,3C,3Dの座席のそれぞれに対して着席センサ43A,43B,43C,43Dが設けられる。これら着席センサ43A,43B,43C,43Dの着席検出出力は、マルチ切り替えボックス70の制御部40に供給される。制御部40は、着席センサ43A,43B,43C,43Dの着席検出出力に基づいて、音声信号処理部20A,20B,20C,20Dのうち、使用者が着席している座席に対応する音声信号処理部のみに電源を投入して、その動作を可能とするように制御する。
各音声信号処理部20A,20B,20C,20Dは、音楽ソース選択部32A,32B,32C,32D(図示は省略)を備える。このため、各使用者3A,3B,3C,3Dは、操作ボタン群41A,41B,41C,41Dのそれぞれにおいて、自分が選択した音楽ソースを再生して楽しむことができる。
すなわち、例えば、使用者3Aが操作ボタン群41AのCDボタン62を押下すると、制御部40は、それを検知して、音声信号処理部20Aの音楽ソース選択部32Aを、CDプレーヤ31Cからの2チャンネルの音声信号を選択するように制御する。また、例えば、使用者3Bが操作ボタン群41BのHDDボタン63を押下すると、制御部40は、それを検知して、音声信号処理部20Bの音楽ソース選択部32Bを、HDD31Hからの2チャンネルの音声信号を選択する状態に制御する。他の使用者の選択ボタン操作についても同様である。
また、各使用者3A,3B,3C,3Dは、電話ボタン61を押下することにより、各音声信号処理部20A,20B,20C,20Dに接続される自分用の携帯電話端末4A,4B,4C,4Dを介して、携帯電話網を通じた相手方と通話をすることができる。このときの動作は、第4の実施形態において説明したので省略する。
そして、この第5の実施形態では、会話ボタン66を押下すると共に、相手指定ボタン671,672,673のいずれか1つを押下すると、当該押下された相手指定ボタンにより指定される座席の相手方と会話(内線通話)をすることができる。
例えば、使用者3Aが、操作ボタン群41Aにおいて、会話ボタン66を押下した後、使用者3Bを指定するように設定されている相手指定ボタン671を押下したとする。この場合、制御部40は、当該使用者3Aによる操作ボタン郡41Aでのボタン押下操作を検出し、内線切り替え回路71(図14参照)を、音声信号処理部20Aと音声信号処理部20Bの内線通話路を接続するように制御する。これにより、使用者3Aと使用者3Bとの間で会話ができる。
また、例えば、使用者3Aが、操作ボタン群41Aにおいて、会話ボタン66を押下した後、使用者3Bを指定するように設定されている相手指定ボタン671と、使用者3Cを指定するように設定されている相手指定ボタン672とを押下したとする。この場合、制御部40は、当該使用者3Aによる操作ボタン郡41Aでのボタン押下操作を検出し、内線切り替え回路71を、音声信号処理部20A、20Bおよび20Cでの3者による内線通話路を接続するように制御する。これにより、使用者3Aと使用者3Bと使用者3Cとの間で会話ができる。
また、例えば、使用者3Aが、操作ボタン群41Aにおいて、会話ボタン66を押下した後、他の使用者の全員を指定するように設定されている相手指定ボタン674を押下したとする。この場合、制御部40は、当該使用者3Aによる操作ボタン郡41Aでのボタン押下操作を検出し、内線切り替え回路71を、音声信号処理部20A、20B,20Cおよび20Dの全てによる内線通話路を接続するように制御する。これにより、使用者3Aと使用者3Bと使用者3Cと使用者3Dの全員の間での会話ができる。
なお、この例の場合も、前述したように、着席センサ43A,43B,43C,43Dの着席検出出力に基づいて、非着席の使用者に対する会話要求(内線通話要求)は、無効とされる。そして、その旨が前述したように警報ブザー音などにより、会話要求した使用者に知らされる。ただし、複数人との会話要求をしたときに、その一部の座席の使用者が非着席であったときには、着席している使用者との会話を可能として、非着席の使用者の存在を知らせるブザー音を省略するようにしても良い。
上述した第5の実施形態においても、音楽再生しながら、携帯電話端末を通じた外部の相手方との通話や内線通話(会話)を、ハウリングを防止して行なうことができるという効果は、前述の実施形態と全く同様に得ることができることは言うまでも無い。
[第6の実施形態]
この第6の実施形態は、ハンズフリー通話用のマイクロホンを、周囲外部ノイズを低減するためにノイズを収音するマイクロホンとしても兼用する場合の例である。すなわち、ハンズフリー通話モードのときには、送話音声収音用として用いるマイクロホン2を、音楽ソース再生モードのときには、周囲外部ノイズを収音するマイクロホンとして兼用するものである。
図16は、この第6の実施形態のハンズフリー通話機能付き音響再生装置の構成例のブロック図である。この図16の例は、図8に示した第3の実施形態の構成に対して、この第5の実施形態を適用した場合であり、図8の各部と同一部分には、同一参照番号を付すものとする。
図16に示すように、この実施形態では、左チャンネル用のスピーカ1Lを、ハンズフリー通話モードにおける受話音声信号の再生用スピーカとする。そして、この左チャンネル用のスピーカ1Lからの放音音声に対して音圧ゼロ領域にマイクロホン2Lを設け、このマイクロホン2Lを、ハンズフリー通話モードにおける送話音声信号の収音用マイクロホンとする。
このマイクロホン2Lで収音される送話音声信号は、マイクアンプ21Lおよびローパスフィルタ22を通じて、スイッチ回路23Mの切換端子(入力端子)に供給される。そして、この実施形態では、ローパスフィルタ22を通じたマイクロホン2Lからの音声信号は、このスイッチ回路23Mの通話側端子(出力端子)Tから、音声信号出力端子24を通じて、携帯電話端末4の送話音声入力端子に供給される。
また、この実施形態では、ローパスフィルタ22を通じたマイクロホン2Lからの音声信号は、このスイッチ回路23Mの音楽再生側端子(出力端子)Mを通じて、音声認識回路42に供給される。
また、この実施形態では、マイクロホン2Lは、音楽ソース再生モードにおける左チャンネルの音声信号に対する周囲ノイズの収音用マイクロホンとして用いる。そして、この実施形態では、右チャンネル用のスピーカ1Rに対しても、その放音音声に対して音圧ゼロ領域にマイクロホン2Rを設ける。そして、このマイクロホン2Rを、音楽ソース再生モードにおける右チャンネルの音声信号に対する周囲ノイズの収音用マイクロホンとして用いる。
そして、使用者3の周囲の雑音源から到来する外部ノイズ、例えばタイヤノイズやエンジンノイズが、マイクロホン2Lおよび2Rにより収音される。マイクロホン2Lおよび2Rで音響−電気変換されて得られる外部ノイズの音声信号は、マイクアンプ21Lおよび21Rをそれぞれ通じてローパスフィルタ81Lおよび81Rに供給される。
そして、ローパスフィルタ81Lおよび81Rの出力音声信号が、それぞれ、ノイズ低減用のフィルタ回路82Lおよび82Rに供給されてノイズ低減音声信号が生成される。フィルタ回路82Lからのノイズ低減音声信号は、混合回路36Lに供給され、音量調整用ボリューム34Lおよびパワーアンプ35Lを通じてスピーカ1Lに供給される。
また、右チャンネルについては、この実施形態では、減衰部33Rと音量調整用ボリューム34Rとの間に混合回路36Rを設ける。そして、フィルタ回路82Rからのノイズ低減音声信号は、混合回路36Rに供給され、音量調整用ボリューム34Rおよびパワーアンプ35Rを通じてスピーカ1Rに供給される。
ローパスフィルタ81L,81Rは、次のような理由により設けられる。すなわち、前述したように、裸のスピーカ1の振動板の前後から出る音のうち、特に、低い周波数については、振動板の前後から出る音の相殺効果が大きい。裸のスピーカ1の振動板の前後から出る音の中高域成分は、音圧ゼロ領域Zoでは大きく減衰したものとなるが、完全にはゼロにはならない。
そこで、この実施形態では、より確実にノイズ低減することができるようにするために、ノイズ低減対象を、ローパスフィルタ81L,81Rにより、前述した音圧ゼロ領域Zoに配置したときにほぼ完全に相殺されて音圧がゼロになる低域成分のみに制限する。これにより、ハウリング無く、安定にノイズ低減することができるようにするものである。ローパスフィルタ81Lおよび81Rにおけるカットオフ周波数は、例えば300Hz以下の周波数、この例では、300Hzとされる。
フィルタ回路82L,82Rは、基本的には、外部ノイズの音声信号を位相反転してノイズ低減音声信号を生成するためのものである。また、フィルタ回路82L,82Rは、外部ノイズ音源位置と、ノイズキャンセルすべき使用者3の聴取位置(ノイズキャンセルポイント)との間の空間伝達関数を考慮した補正、および、マイクアンプやパワーアンプにおける特性を補正するものである。フィルタ回路82L,82Rは、この例では、デジタルフィルタを用いた構成とされる。
すなわち、図示は省略するが、フィルタ回路82L,82Rは、それぞれローパスフィルタ81L,81Rからのアナログ音声信号をデジタル音声信号に変換するA/D変換回路を備える。そして、フィルタ回路82L,82Rは、それぞれ、このA/D変換回路からのデジタル音声信号を受ける、例えばFIR(Finite Impulse Response)フィルタからなるデジタルフィルタを備える。さらに、フィルタ回路82L,82Rは、それぞれ、デジタルフィルタで処理されたデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換するD/A変換回路を備える。
そして、フィルタ回路82L,82Rのデジタルフィルタのフィルタ係数として、入力音声信号を位相反転させるようにすると共に、前述した空間伝達関数やマイクアンプ21L,21Rやパワーアンプ35L,35Rの特性を補正するための値が供給される。
なお、この実施形態では、上述したように、ノイズ低減対象を、低域周波数成分と制限するようにしたが、この低域音声領域は、人間の方向感が無い領域であるので、前述したフィルタ回路82L,82Rによる空間伝達関数による補正は省略しても良い。そこで、位相反転回路のみを設けて、図16におけるフィルタ回路82L,82Rは設けなくても良い。しかし、前述したマイクアンプ21L,21Rやパワーアンプ35L,35Rの特性の分についての補正を行うことを考慮した場合には、フィルタ回路82L,82Rを、その補正範囲内で設けるようにした方がよい。
以上の構成により、スピーカ1L,1Rからは、ノイズ低減音が放射される。ここで、ノイズ低減音声信号は、外部ノイズの音声信号を位相反転したものであるので、ノイズ低減音は、外部ノイズNzとは逆相の音となる。したがって、使用者3の耳元では、外部ノイズと、当該外部ノイズとは逆相のノイズ低減音が合成される結果、外部ノイズが低減ないしキャンセルされた音となる。
図16の構成のノイズ低減装置は、いわゆるフィードフォワード方式のノイズ低減装置である。このフィードバック方式のノイズ低減装置のノイズ低減動作について、伝達関数を用いて、図17を参照しながら説明する。図17は、図16に示したノイズ低減処理系のブロックに対応して、各部をその伝達関数を用いて表したブロック図である。
この図17において、Aはパワーアンプ35Lや35Rの伝達関数、Dはドライバーとしてのスピーカ1Lや1Rの伝達関数、Mはマイクロホン2Lや2Rおよびマイクアンプ21Lや21Rの部分に対応する伝達関数である。また、−αはフィードフォワード方式のノイズ低減のために設計されたフィルタの伝達関数であり、位相反転分を含む。また、Fは、外部のノイズ源の位置からリスナの耳元のキャンセルポイントの位置に至るまでの空間伝達関数である。
この図17のように表したとき、図16のブロック構成のノイズ低減装置における使用者3の耳元のキャンセルポイントにおける音圧Pは、ノイズの伝達関数をNとしたとき、
P=−ADMαN+FN+ADS ・・・(式1)
となる。
ここで、空間伝達関数Fが、
F≒ADMα ・・・(式2)
であるとすると、つまり、(式2)を満足するようにフィルタ回路13の伝達関数−αが設計されていれば、前述の(式1)は、
P≒ADS ・・・(式3)
となる。
したがって、キャンセルポイントにおける音圧Pは、ノイズがキャンセルされて、音楽ソースSのみが存在するものとなる。(式3)において、音楽ソースS=0、つまり、音楽ソースが無いとすると、P≒0となり、キャンセルポイントにおける音圧Pは、ノイズがキャンセルされて存在しないものとなっていることを意味することになる。
ノイズキャンセル動作以外の他の動作は、上述した第3の実施形態と全く同様であり、上述したような作用効果が得られるものである。
[その他の実施形態]
上述の実施形態では、音楽ソースからの左右2チャンネルの音声信号は、そのまま左右のスピーカに供給するようにした。このため、音像が頭部近傍に定位するおそれがある。しかし、音楽ソースからの左右2チャンネルの音声信号に対して、頭部伝達関数を用いた仮想音像定位処理を施すことにより、左右2チャンネルのステレオ音像を、使用者(リスナ)の前方に仮想音像定位させるようにすることもできる。
すなわち、例えば、図5において、ソース選択回路32の出力側であって、減衰部33L,33Rの前段に、仮想音像定位処理部を設ける。そして、予め、使用者の前方に左右スピーカを設置すると共に、使用者、あるいはダミーヘッドの両耳近傍に設置したマイクロホンで、設置されたスピーカからの音波を収音し、頭部伝達関数を測定しておく。そして、測定した頭部伝達関数を、仮想音像定位処理部において、2チャンネルの音声信号に畳み込み処理する。これにより、使用者の両耳近傍、後部に置かれたスピーカ1L,1Rによる放音音声によって仮想音像が使用者3の前方に定位され、使用者3は、2チャンネル音声を、前方に置かれた左右スピーカから放音されたように、聴取することができる。
なお、この仮想音像定位処理によれば、2個のスピーカ1L,1Rを用いて、例えば5.1チャンネルのマルチサラウンドの仮想音像定位をさせるようにすることもできる。その場合には、5.1チャンネルサラウンド音声信号を仮想音像定位処理して2チャンネルの音声とし、その2チャンネルの音声信号のそれぞれをスピーカ1L,1Rに供給するようにする。
したがって、2個のスピーカ1L,1Rは、2チャンネルステレオ音声の左右チャンネル用のみとは限らない。
次に、上述の実施形態では、使用者の左右のスピーカ1L,1Rは、図18(A)に示すように、その振動板の振動面が使用者3の左右の耳に正対するように、上述の例では、使用者3が座る椅子のヘッドレスト部7の長辺方向に対して斜めの状態で固定した。
しかし、斜め方向にスピーカ1L,1Rを設置した場合、スピーカ1L,1Rの間が広がるため、運転者にとって、後方の視認性がそれだけ悪化するおそれがある。
そこで、運転席の場合には、図18(B)に示すように、スピーカ1L,1Rの振動板の振動面を、ヘッドレスト部の長辺方向に平行な方向となるように、ヘッドレスト部7に取り付ける。図18(B)では、ヘッドレスト部7内に、スピーカ1L,1Rを、裸のスピーカの状態で埋め込んだ状態を示している。
また、図18(C)に示すように、スピーカの構成を、ウーハー1Wと、左右の2個の小型の高域用スピーカ1Lsおよび1Rsとから構成される、いわゆる3D方式とするようにしても良い。この場合、ウーハー1Wには、例えば左右2チャンネルの音声信号の低域成分の加算信号が供給される。また、2個の小型の高域用スピーカ1Lsおよび1Rsのそれぞれには、例えば、左右チャンネルの音声信号をハイパスフィルタを通した音声信号が供給される。
この図18(C)の例の場合には、左右の小型の高域用スピーカ1Lsおよび1Rsは、使用者の左右の耳に正対するように、その振動板の振動面が斜め方向となるように配置される。しかし、スピーカ1Lsおよび1Rsは、小型の高域用であって、振動板の口径が小さいので、後方視認性は、図18(A)の場合よりも良い。
また、上述の実施形態では、ハンズフリー通話用のマイクロホンは、左右の2個のスピーカの一方にのみ設けるようにした。しかし、図18(A),(B),(C)に示すように、左右の両方のスピーカに対してマイクロホン2L,2Rを設け、そのいずれか一方を選択して使用するようにしても良い。
なお、図18(C)の場合には、ウーハー1Wにはマイクロホンは設けられず、左右の小型の高域用スピーカ1Lsおよび1Rsに対してマイクロホン2L,2Rが設けられる。
また、左右の両方のスピーカ1L,1Rに対して設けた2個のマイクロホン2L,2Rの両方を、ハンズフリー通話用のマイクロホンとして用いることもできる。図19は、ビジネス用椅子6のヘッドレスト部7に対して、左右のスピーカ1L,1Rを設けると共に、そのスピーカ1L,1Rのフレーム(音圧ゼロ領域)に、マイクロホン2L,2Rをそれぞれ設けたものを示している。
この場合、左のスピーカ1Lとマイクロホン2Lは、第1の電話回線についてのハンズフリー通話用とし、右のスピーカ1Rとマイクロホン2Rは、第2の電話回線についてのハンズフリー通話用とするように構成する。すなわち、電話回線を2回線設け、一方の回線に対するハンズフリー通話用として、左のスピーカ1Lおよびマイクロホン2Lを接続し、他方の回線に対するハンズフリー通話用として右のスピーカ1Rおよびマイクロホン2Rを接続するようにする。
椅子6に座ったオペレータは、顔を左右させることにより、第1の回線と、第2の回線との両方に対して、ハンズフリー通話ができる。この場合、第1の回線と、第2の回線との両方に対して同時のハンズフリー通話も可能である。したがって、図19の構成の装置は、コールセンターの電話応答のオペレータのハンズフリー通話用として好適である。この場合、図19の例は、電話応答用であるので、音楽ソースを再生するための信号処理系は、設ける必要は無い。
[実施形態の効果]
上述した実施形態のハンズフリー通話装置およびハンズフリー通話機能付き音響再生装置によれば、簡単なハードウエア構成で、ハウリングを防止しながらハンズフリー通話ができる。従来は、車載用装置などでは、サンバイザーやハンドルなどにハンズフリー通話用のマイクロホンを取り付けなければならない煩わしさがあった。
これに対して、上述の実施形態によれば、スピーカの音圧ゼロ領域であるフレーム部分にマイクロホンが取り付けられ、ヘッドレスト部にスピーカが取り付けられる構成であるので、そのような煩わしさが改善される。
また、ヘッドホンタイプのハンズフリー通話装置では、ヘッドホンを装着しなければならなかったので、身体にヘッドホンが接触することによる違和感や非衛生的などの問題点があった。
これに対して、この実施形態では、スピーカおよびマイクロホンは、使用者の近傍において、ヘッドレストなどに固定されるので、そのような問題点は解消される。
そして、スピーカは、使用者の耳の近傍に配置されるので、音響エネルギーは少なくてよく、自動車などの狭い空間においても、ハウリングを防止したハンズフリー通話を、他への影響を少なくして行うことができる。
また、上述のハンズフリー通話機能付け音響再生装置の実施形態においては、音楽ソースは、各使用者が個別に選択することができると共に、音量も個別に調整することができる。そして、ハンズフリー通話の際には、音楽ソースについては減衰させるようにして、音楽ソースを聴取しながらのハンズフリー通話が可能である。
また、第3の実施形態のように、ハンズフリー通話用のマイクロホンを、音楽再生モード時における音声認識用として兼用することができるという効果もある。
また、ハンズフリー通話用のマイクロホンを、音楽再生モード時におけるノイズキャンセルを行なうための外部ノイズの収音用としても兼用することもできるという効果もある。
[その他の変形例]
上述の実施形態では、ハンズフリー通話モード時においては、音楽ソースを聞きながらハンズフリー通話を行なうようにした。しかし、ハンズフリー通話モードにおいては、音楽ソース部からの2チャンネルの音声信号は、スピーカ1L,1Rに供給しないように制御するようにしてもよい。すなわち、ハンズフリー通話モードのときには、音楽ソース部30からの音声信号の出力レベルをゼロ(減衰量は−∞)に減衰させてしまったり、その発生を停止するようにしても良いし、音楽ソース部30からの音声信号をミューティングするようにしても良い。
また、上述した実施形態では、マイクアンプおよびローパスフィルタを通じてハンズフリー通話の送話音声を送出し、受話音声は、パワーアンプを通じるようにした。しかし、携帯電話端末の種類や、当該携帯電話端末との接続方法によっては、マイクアンプおよびローパスフィルタ、また、パワーアンプは省略するようにすることもできる。
上述の実施形態では、外部の相手方とは、携帯電話網を通じて通話を行なうようにしたが、電話網としては、携帯電話網に限らず、加入者電話回線網やその他の電話網を通じた通話が可能であることは勿論である。
また、ハンズフリー通話機能付きの音響再生装置は、上述の車載用オーディオシステムの場合に限らず、例えば家庭用の装置としても構成することもできる。
なお、上述の実施形態では、操作ボタン群は、有線で接続される状態を示したが、操作ボタン群は、リモコン送信機に設けられる構成であっても良いことはもちろんである。