JP4697499B2 - 酸化物膜の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は酸化物膜の製造方法に関し、特に、たとえば厚膜やセラミックス薄層などの酸化物膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、無機膜の製造方法として、セラミックス原料溶液を基板上にコートし乾燥し熱処理することによってセラミックス膜を製造する方法が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の従来の無機膜の製造方法では、1回あたりのコートによる膜厚を0.1〜0.2μmに設定しなければ、乾燥時に膜にクラックが入るという問題があった。そのため、所望の厚い膜を製造するためには、何度もコート、乾燥、熱処理のプロセスを繰り返すことが必要で煩雑であった。
すなわち、上述の従来の無機膜の製造方法では、基板上で所望の厚い膜を一度に乾燥させると、膜が自由に収縮できず、発生応力によって膜にクラックが入る。そこで、所望の厚い膜を得るためには、薄い膜を形成し乾燥し熱処理するというサイクルを繰り返すことが必要であった。
最近、膜の乾燥時のクラック発生を防ぐために、水の表面上に金属アルコキシド溶液などの薄い液層を流し込み、水との反応によりゲル膜を形成させ放置することによって、膜の乾燥時の収縮を自由にさせる新たな方法が検討されている(たとえば、第47回応用物理学関係連合講演会の講演予稿集(2000年春季)のp.176の講演番号29p−T−9参照)。この新たな方法では、膜の収縮が終わったところでこの膜を基板上に配置し熱処理を加えることによって、所望の厚い膜を製造することが可能になるとされている。この新たな方法によると、一連のプロセスで厚さ1μm以上の良好な膜が得られるため、従来の無機膜の製造方法における煩雑なコート、乾燥、熱処理のプロセスの繰り返しが避けられるとしている。
しかしながら、この新たな方法では、従来の無機膜の製造方法に比べて、一連のプロセスで厚い膜を製造することができるものの、製造される膜の厚みに限界がある。
また、この新たな方法では、原料液層の厚みを大きくすると原料液層の溶液の溶媒が下の水の中に溶け込み、2液界面できれいに膜の形成が起こらないという問題が生じる。
さらに、この新たな方法では、特開昭63−166748号に開示されている方法と同様に、ソース原料に金属アルコキシドを用いているため、原料液の安定化のために特別の雰囲気下で溶液の保存や膜の形成を行う必要があり、簡便でない。
【0004】
それゆえに、この発明の主たる目的は、簡便であり、しかも、一連のプロセスでクラックのない1〜10μmの厚膜やセラミックス薄層などの酸化物膜を製造することができる、酸化物膜の製造方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明にかかる酸化物膜の製造方法は、アルコキシド系化合物ではないソース原料および溶媒成分からなる原料溶液と、原料溶液と不溶であって触媒成分および溶媒成分からなる触媒溶液との界面に、ソース原料を含む膜を析出させる工程と、析出させた膜を基体上に付着させる工程と、析出させた膜を乾燥させる工程とを含む、酸化物膜の製造方法である。
この発明にかかる酸化物膜の製造方法では、触媒溶液中の溶媒成分は、たとえば原料溶液中の溶媒成分を含む。
また、この発明にかかる酸化物膜の製造方法では、少なくとも原料溶液中のソース原料の一部は、たとえば水溶性である。
さらに、この発明にかかる酸化物膜の製造方法では、原料溶液中または触媒溶液中に界面活性剤が加えられてもよい。
また、この発明にかかる酸化物膜の製造方法では、膜の析出中に原料溶液中の組成が変えられてもよい。
【0006】
この発明にかかる酸化物膜の製造方法では、原料溶液と触媒溶液とが混ざり合わないので、一連のプロセスでクラックのない1〜10μmの厚膜やセラミックス薄層などの酸化物膜を製造することができる。なお、原料溶液と触媒溶液とが混ざり合わないようにするためには、原料溶液の溶媒成分を触媒溶液中に飽和に近い状態で溶解させればよい。
さらに、この発明にかかる酸化物膜の製造方法では、原料溶液中のソース原料としてアルコキシド系化合物が用いられないので、原料液の安定化のために特別の雰囲気下で溶液の保存や膜の形成を行う必要がなく、簡便である。
また、この発明にかかる酸化物膜の製造方法では、少なくとも原料溶液中のソース原料の一部が水溶性であると、通常の大気中で安定的に膜を製造することが可能である。
さらに、この発明にかかる酸化物膜の製造方法では、原料溶液中または触媒溶液中に界面活性剤が加えられると、製造される酸化物膜のc軸配向性などの結晶配向度を調整することが可能である。
また、この発明にかかる酸化物膜の製造方法では、膜の析出中に原料溶液中の組成が変えられると、厚み方向に見て組成が徐々に異なる組成傾斜を持った酸化物膜を製造することが可能である。
【0007】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明の実施の形態の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1はこの発明を実施するために用いられる酸化物膜製造装置の一例を示す図解図である。図1に示す酸化物膜製造装置10は、上端に開口を有する容器12を含む。容器12は、テーブル14の天板上に設置される。容器12の底板の中央には、容器12の内部に通じる排出管16が形成される。排出管16は、テーブル14の天板を貫通するように配置される。テーブル14の天板の下方において、排出管16には、コック18が設けられる。また、容器12の上には、カバー20が被せられる。さらに、容器12の底板上には、台22が形成される。
【0009】
【実施例1】
酸化亜鉛膜の製造方法の一例について説明する。
酸化亜鉛膜のソース原料として亜鉛アセチルアセトナートを選択し、これを0.001モル〜0.01モル秤量し、溶媒成分としての40mlの1−ブタノールに溶かして原料溶液とした。
また、触媒成分として塩基性のトリエチルアミンを選択し、溶媒成分としての1−ブタノールの飽和水溶液60mlにトリエチルアミン0.5ml〜6mlを溶かして触媒溶液とした。したがって、この触媒溶液中の溶媒成分には、原料溶液中の溶媒が構成成分として含まれる。
さらに、図1に示すように、基体としてガラス製の基板を酸化物膜製造装置10の台22上に配置した。
そして、容器12の中の下部に触媒溶液を入れ、さらに、容器12の中の上部に原料溶液を入れた。すると、容器12の中の原料溶液および触媒溶液の2液界面に膜が形成(析出)された。
それから、室温で24時間静置した後、コック18を開いて排出管16から触媒溶液を抜いて、膜を基板上に配置した。
そして、基板とともに膜を取り出して自然乾燥したものをサンプルとして結晶性などを調べた。この膜は、厚みが5μm程度であり、X線回折で評価したところ酸化亜鉛膜であることが分かった。
【0010】
なお、実施例1において、ソース原料として亜鉛アセチルアセトナートの水和物や酢酸亜鉛を用いて膜を製造しても、同様に酸化亜鉛膜が製造されることが分かった。
【0011】
また、実施例1において、原料溶液中の溶媒成分として、1−ブタノールのほかにも2−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−メチル−1−プロパノール、3−メチル−1−ブタノールなどを用い、さらに、触媒溶液中の触媒成分として、トリエチルアミンのほかにもジエチルアミン、エチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミンなどを用いても、同様に酸化亜鉛膜が製造できることが分かった。
【0012】
【実施例2】
実施例2では、実施例1と比べて、触媒溶液中に界面活性剤として0.001モルのセチルピリジウムブロマイドを添加して、実施例1と同様の一連のプロセスを用いて酸化亜鉛膜を製造した。
このようにセチルピリジウムブロマイドを添加して製造した酸化亜鉛膜、セチルピリジウムブロマイドを無添加で製造した酸化亜鉛膜、および酸化亜鉛粉体のそれぞれのX線回折プロファイルを図2に示す。
図2に示すX線回折プロファイルより、触媒溶液中に界面活性剤(セチルピリジウムブロマイド)を添加することによって、酸化亜鉛膜の(002)面の回折ピークが強くなることから酸化亜鉛膜のc軸配向性が大きくなることが分かる。
【0013】
【実施例3】
チタン酸バリウム膜の製造方法の一例について説明する。
アモルファスチタン粉体0.04g、過酸化水素水4.5ml、濃硝酸1ml、酢酸バリウム0.13gを混合して、ソース原料とした。このソース原料を、溶媒成分としての蒸留水35mlに溶かして、原料溶液とした。
触媒溶液としては、溶媒成分としてのベンジルアルコールに水を飽和させた溶液60mlに、触媒成分としてトリエチルアミンまたはジエチルアミンを1.5ml加えたものを用いた。
これらの原料溶液および触媒溶液を用いること以外は実施例1と同様にして膜を基板上に配置し、基板とともに膜を取り出して乾燥後、600℃で熱処理することによって、厚み10μmのチタン酸バリウムの単相膜が得られた。
このチタン酸バリウム膜のX線回折プロファイルを図3に示す。
【0014】
【発明の効果】
この発明によれば、簡便であり、しかも、一連のプロセスでクラックのない1〜10μmの厚膜やセラミックス薄層などの酸化物膜を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明を実施するために用いられる酸化物膜製造装置の一例を示す図解図である。
【図2】 この発明の実施例2で製造した酸化亜鉛膜などのX線回折プロファイルを示す図である。
【図3】 この発明の実施例3で製造したチタン酸バリウム膜のX線回折プロファイルを示す図である。
【符号の説明】
10 酸化物膜製造装置
12 容器
14 テーブル
16 排出管
18 コック
20 カバー
22 台
Claims (5)
- アルコキシド系化合物ではないソース原料および溶媒成分からなる原料溶液と、前記原料溶液と不溶であって触媒成分および溶媒成分からなる触媒溶液との界面に、前記ソース原料を含む膜を析出させる工程、
析出させた膜を基体上に付着させる工程、および
析出させた膜を乾燥させる工程を含む、酸化物膜の製造方法。 - 前記触媒溶液中の溶媒成分は、前記原料溶液中の溶媒成分を含む、請求項1に記載の酸化物膜の製造方法。
- 少なくとも前記原料溶液中のソース原料の一部は、水溶性である、請求項1または請求項2に記載の酸化物膜の製造方法。
- 前記原料溶液中または前記触媒溶液中に界面活性剤が加えられる、請求項1または請求項2に記載の酸化物膜の製造方法。
- 前記膜の析出中に前記原料溶液中の組成が変えられる、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の酸化物膜の製造方法。
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Citations (3)
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JPS63166748A (ja) * | 1986-12-27 | 1988-07-09 | 新日本製鐵株式会社 | セラミツクス前駆体薄膜の製造方法 |
JPH0194904A (ja) * | 1987-10-06 | 1989-04-13 | Teijin Ltd | ガス分離用中空複合膜の製造方法 |
JPH07138793A (ja) * | 1993-11-10 | 1995-05-30 | Mitsubishi Materials Corp | 酸化物薄膜の製造方法 |
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