JP4693037B2 - 電流平衡トランス - Google Patents

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本発明は、負荷電流を平衡化するための4出力用のトランスに関し、更に詳しく述べると、3つの巻線領域を有し、各巻線領域のコイルがそれぞれ閉磁路を形成するようにした電流平衡トランスに関するものである。この電流平衡トランスは、冷陰極管や発光ダイオード群などの点灯回路に有用である。
ノート型パソコンや小型液晶モニタの液晶パネルには、バックライトとして通常1本あるいは2本程度の冷陰極管が使用されている。しかし、近年普及している大型の液晶テレビや液晶モニタには、4本以上の冷陰極管がバックライトとして使用されている。バックライトは、パネル全体をできるだけ均一に照明することが重要であり、そのため各冷陰極管にはできるだけ均一に電流を供給する必要がある。
かつては冷陰極管の本数と同数のインバータ回路を設置して、各冷陰極管を独立に駆動し、それぞれ電流を制御することが行われていた。しかし、この構成は、小型液晶モニタの液晶パネルのように冷陰極管の本数が少ない場合には大きな問題にはならないが、大型の液晶テレビや液晶モニタのように冷陰極管の本数が多くなると、インバータ回路が多数必要になると共に小型化が困難であり、多数の部品を使用するためコスト高になる問題があった。
そこで、図1に示すように、インバータ回路10と冷陰極管12との間にバランサ14を接続し、各冷陰極管を流れる電流を均等配分する負荷電流平衡装置が開発されている。この場合、従来技術では4つの負荷(冷陰極管12)に対して3個の同じバランサ14を使用する。各バランサは、同一巻軸上に2つの巻線枠を具備するボビンを用い、該ボビンの両巻線枠に巻かれたコイルと磁心とを組み合わせた構造の2出力の電流平衡トランスである。第1段目のバランサで電流を2分割し、第2段目の2つのバランサで電流を更にそれぞれ2分割するように、3個のバランサはツリー状に配置される。これによって、各冷陰極管12を流れる電流I1 〜I4 を均等配分するこのような技術は、特許文献1に開示されている。
このような負荷電流平衡装置は、インバータ回路の設置個数を低減できるため、制御回路やインバータトランスなどの部品点数を大幅に削減できる利点がある。しかし、液晶画面の大型化により、バックライトに使用する冷陰極管の本数も増加しており、例えば15インチパネルでは4本であったものが、32インチパネルでは16本にも増大している。そのため、上記のような2出力のバランサ方式では、15インチパネルで3個、32インチパネルで15個もの多数のバランサが必要となる。その結果、特に大型の液晶パネルになればなるほど回路基板設計が複雑になり、バランサの実装面積やコストも無視できないものとなる。
特開平6−269125号公報
本発明が解決しようとする課題は、単一構造のトランス部品でありながら4つの負荷に流れる電流の平衡をとることができ、それによって部品点数の低減や実装面積の削減、コストダウンを図ることができるようにすることである。
本発明は、同一巻軸上に複数の巻線枠を具備するボビンを用い、該ボビンの各巻線枠に巻かれたコイルと磁心とを組み合わせたトランスにおいて、前記ボビンは、中間部の2箇所の磁心組み込み溝によって分割される3つの巻線領域を有し、各巻線領域はそれぞれ2つの巻線枠を具備し、中央の巻線領域の両方の巻線枠に第1段目の電流分割用コイルが巻線され、両側に位置する巻線領域の両方の巻線枠にそれぞれ第2段目の電流分割用コイルが巻線され、各巻線領域のコイルが閉磁路を形成するように磁心が設けられていることを特徴とする電流平衡トランスである。
ここで、中央の巻線領域を2つの巻線枠に区分している仕切りに、連続巻線用の中継端子を設ける。このような構成にすると、両端を除く4個の巻線枠のコイルを連続して巻線でき、合計3つの巻線で全てのコイルを形成することができる。

磁心が、背板に対して2つの外脚と2つの内脚が同方向に突出した構造の2個の4脚コアと、Iコアとの組み合わせからなり、前記Iコアがボビンを貫通し、前記内脚がボビンの磁心組み込み溝に嵌合している構成でもよいし、磁心が、Iコアと目の字型コアの組み合わせからなり、前記Iコアがボビンを貫通し、目の字型コアの中間架橋部がボビンの磁心組み込み溝に嵌合している構成でもよい。
本発明において電流平衡トランスの負荷としては、冷陰極管あるいは発光ダイオード群がある。点灯回路に上記のような電流平衡トランスを1個以上組み込み、インバータ回路の出力を4の倍数に分割して、それぞれ負荷となる冷陰極管あるいは直列接続した多数の発光ダイオードを点灯させる。
本発明の電流平衡トランスは単一のトランス部品でありながら4つの負荷に流れる電流の平衡をとることができる。大型液晶パネルでは、通常、バックライトとして4の倍数の本数の冷陰極管が用いられるので、本発明の電流平衡トランスは、そのような使用状況にも合致している。このような電流平衡トランスを用いることによって、点灯回路は、回路基板設計が簡素化され、部品の実装面積の低減やコストの削減を図ることができる。より具体的には、4つの負荷に対して電流を平衡化させるためには、従来技術では3個のバランサが必要であったのが、本発明では1個で済むため、小型化が可能である。材料費についても、ボビン及びコアの点数を低減できるためコストダウンが可能であるし、巻線機にボビンを設置する時間も1/3に短縮でき、製造工程でのコストダウンも可能である。
図2は、本発明に係る電流平衡トランスの一実施例を示す説明図であり、Aは平面を、Bは側面を表している。この電流平衡トランスは、4つの負荷(冷陰極管など)へ供給する電流を平衡化するものであって、同一巻軸上に6個の巻線枠を並設したボビン20を用い、該ボビン20の各巻線枠に巻かれたコイル22と磁心24とを組み合わせた構造である。
図3はコイルの説明図であり、Aはボビンにコイルを巻いた状態を、Bはボビンの側面を、それぞれ示している。ボビン20は、2箇所の磁心組み込み溝によって分割される3つの巻線領域P,Q,Rを有し、各巻線領域P,Q,Rは、それぞれ2つの巻線枠を具備している。巻軸26から外方向に張り出す3枚のフランジ27で1つの巻線領域が形成され、巻軸26の両端に2個の直方体状の端子台28が設けられ、巻線領域の間に2個の直方体状の端子台29が設けられており、それら巻軸26、フランジ27、端子台28,29は一体成形品である。中央寄りの2個の端子台29の上方でフランジが対向する隙間が磁心組み込み溝となる。両側の端子台28の両端には各1個の端子30が設けられ、中央寄りの2個の端子台29の両端には端子30が2個ずつ設けられる。ここではボビンは面実装タイプとなっているが、ピンタイプであってもよいことは言うまでもない。
フランジで仕切られている6個の各巻線枠に、それぞれ巻線が施され、各コイルp1,p2,q1,q2,r1,r2の端末は、それぞれ近くに位置する端子30に絡げて半田付けなどにより接続される。巻線図を図4に示す。例えば、コイルp1,p2はそれぞれ200ターン、コイルq1,q2,r1,r2はそれぞれ410ターンなどとする。巻数は、必要なインダクタンス及び周波数特性などに応じて適宜設定する。各巻線領域の2つのコイルは同じ巻数とする。
このようなボビンに磁心を組み込む状態を図5に示す。磁心は、1本のIコア32と2つの4脚コア34との組み合わせからなる。4脚コア34は、E型コアの変形であり、背板に対して2つの外脚と2つの内脚が同方向に突出した構造である。ボビン20の巻軸にIコア32を挿通し、両側から4脚コア34を組み合わせる。その際、4脚コア34の2つの内脚が磁心組み込み溝に嵌るようにし、各脚の先端面がIコア32の側面に当接するように組み合わせる。これによって、各巻線領域P,Q,Rのコイルがそれぞれ閉磁路を形成する。
このような電流平衡トランスは、図6に示すように点灯装置に組み込まれる。インバータ回路10の出力がインバータトランス11を介して電流平衡トランス40に供給され、4つの出力がそれぞれ冷陰極管12を駆動する。点線の内部が電流平衡トランス40を表しており、端子間は印刷配線板のパターンで結線される。つまり、中央の巻線領域に第1段目の電流分割用コイルp1,p2が巻線され、両側の巻線領域にそれぞれ第2段目の電流分割用コイルq1,q2.r1,r2が巻線されている状態となる。ここでは第1段目のコイルの巻数を第2段目のコイルの巻数より少なくしている。
この時の磁路を図7に示す。Iコア32と対向する2個の4脚コア34とによって、図7の点線で示すように、中央の巻線領域Pを囲む閉磁路、両側の巻線領域Q,Rを囲む2つの閉磁路を形成する磁気回路が形成され、第1段目のコイルp1,p2を通る磁気回路により、両コイルp1,p2を流れる電流の平衡が取られ、第2段目のコイルq1,q2及びr1,r2を通る磁気回路により両コイルq1,q2及びr1,r2を流れる電流の平衡がそれぞれ取られ、その結果、本発明の電流平衡トランスに接続された4本の冷陰極管に流れる電流I1 〜I4 (図6参照)は均一となる。
従来の2出力の3個のバランサをツリー状に配置した図1に示す点灯装置と、本発明の4出力の電流平衡トランスを用いた点灯装置(図6)を試作し、それらについて、各冷陰極管(CFL1〜4)に流れる電流を測定した。その測定結果を表1に示す。表1から、管電流のばらつきは、本発明品は従来構成と同等であることが確認できた。
Figure 0004693037
図8は本発明に係る電流平衡トランスの他の実施例を示す説明図である。この電流平衡トランスも、4つの負荷(冷陰極管など)への電流を平衡化するものであって、同一巻軸上に6個の巻線枠を並設したボビンを用い、該ボビンの各巻線枠に巻かれたコイルと磁心とを組み合わせた構造である。この実施例は、ボビンの形状及びコイルの巻線構造を変えている。
図9はコイルの説明図であり、Aはボビンにコイルを巻いた状態を、Bは巻線図を、それぞれ示している。ボビン50は、2箇所の磁心組み込み溝によって分割される3つの巻線領域P〜Rを有し、各巻線領域P〜Rはそれぞれ2つの巻線枠を具備している。両側は3枚のフランジで1つの巻線領域が形成され、中央の巻線領域は4枚のフランジを備え仕切り51により2つの巻線枠に区分されている。巻軸の両端及び巻線領域の間に合計4個の直方体状の端子台52が設けられ、中央寄りの2個の端子台上でフランジが対向する隙間が磁心組み込み溝となる。各端子台52の両端には各1個の端子54が設けられ、中央の仕切り51には連続巻線用の中継端子55が設けられている。この実施例では、中継端子55を利用して巻線を中継することで、内部結線を図り、3巻線でトランスが完成するように工夫している。即ち、端子aから巻始めて端子bで巻終わる巻線、端子dから巻始めて端子c→中継端子i→端子e→端子fで巻終わる巻線、端子hから巻始めて端子gで巻終わる巻線の合計3巻線である。
このような電流平衡トランスは、図10に示すように点灯装置に組み込まれる。インバータ10の出力がインバータトランス11を介して電流平衡トランス60に供給され、4本の冷陰極管12を駆動する。点線の内部が電流平衡トランス60を表しており、端子間は内部で結線される。つまり、中央の巻線領域Pに第1段目の電流分割用コイルp1,p2が巻線され、両側の巻線領域Q,Rにそれぞれ第2段目の電流分割用コイルq1,q2及びr1,r2が巻線されている状態となる。この構成は、印刷配線板の結線パターンが不要となり、その分だけ簡素化できる。このような電流平衡トランス60を用いることにより、接続された4本の冷陰極管12に流れる電流を平衡化することができる。
図11は、電流平衡トランスの他の実施例を示す平面図である。ボビンの構造は図8の場合と同じである。勿論、図2に示す構造と同じであってもよい。この実施例では、2個の4脚コアに代えて目の字型コア62を用いている。目の字型コア62を上から被せ、その下面の一部がIコアの上面に当接するように組み合わせて、閉磁路を構成する。
図12は、本発明に係る電流平衡トランスを利用した点灯装置の他の例を示している。この例は、8本の冷陰極管12を駆動する例である。インバータ10の出力がインバータトランス11を介して2出力のバランサ64に供給され、該バランサ64の両出力を2個の電流平衡トランス60に供給し、合計8本の冷陰極管12を駆動する。電流平衡トランス60は、中央の巻線領域に第1段目の電流分割用コイルが巻線され、両側の巻線領域にそれぞれ第2段目の電流分割用コイルが巻線されている状態となる。これによって、8本の冷陰極管12を流れる電流の平衡化がなされる。
上記の実施例では負荷として冷陰極管を示しているが、それに限られるものではない。多数の発光ダイオード(LED)を直列接続した発光ダイオード群のLED点灯装置などにも本発明を適用できる。
なお、上記の実施例では、第1段目のコイルの巻数を第2段目のコイルの巻数より少なくしているが、同じ巻数であってもよい。また、液晶パネル全体の容量成分のばらつきや線の引き回しなどによって負荷電流にばらつきが生じる場合、個々の巻線の巻数を変更することによって、ばらつきがなくなるように調整することも可能である。
従来のバランサを用いた点灯装置の説明図。 本発明に係る電流平衡トランスの一実施例を示す説明図。 そのコイルの説明図。 その巻線図。 ボビンに磁心を組み込む状態の説明図。 本発明の電流平衡トランスを組み込んだ点灯装置の説明図。 本発明の電流平衡トランスにおける磁路の説明図。 本発明に係る電流平衡トランスの他の実施例を示す説明図。 そのコイルの説明図。 その電流平衡トランスを組み込んだ点灯装置の説明図。 電流平衡トランスの他の実施例を示す平面図。 本発明に係る電流平衡トランスを応用した点灯装置の他の例を示す説明図。
符号の説明
20 ボビン
22 コイル
24 磁心
26 巻芯
27 フランジ
28,29 端子台
30 端子
32 Iコア
34 4脚コア
P,Q,R 巻線領域

Claims (5)

  1. 同一巻軸上に複数の巻線枠を具備するボビンを用い、該ボビンの各巻線枠に巻かれたコイルと磁心とを組み合わせたトランスにおいて、
    前記ボビンは、中間部の2箇所の磁心組み込み溝によって分割される3つの巻線領域を有し、各巻線領域はそれぞれ2つの巻線枠を具備し、中央の巻線領域の両方の巻線枠に第1段目の電流分割用コイルが巻線され、両側に位置する巻線領域の両方の巻線枠にそれぞれ第2段目の電流分割用コイルが巻線されており、中央の巻線領域を2つの巻線枠に区分している仕切りに連続巻線用の中継端子を設けて、両端を除く4個の巻線枠のコイルを連続巻線し、各巻線領域のコイルが閉磁路を形成するように磁心が設けられていることを特徴とする電流平衡トランス。
  2. 磁心が、背板に対して2つの外脚と2つの内脚が同方向に突出した構造の2個の4脚コアと、Iコアとの組み合わせからなり、前記Iコアがボビンを貫通し、前記内脚がボビンの磁心組み込み溝に嵌合している請求項1記載の電流平衡トランス。
  3. 磁心が、Iコアと目の字型コアの組み合わせからなり、前記Iコアがボビンを貫通し、目の字型コアの中間架橋部がボビンの磁心組み込み溝に嵌合している請求項1記載の電流平衡トランス。
  4. 請求項1乃至のいずれかに記載の電流平衡トランスを1個以上組み込み、インバータ回路の出力を4の倍数に分割して、それぞれ負荷となる冷陰極管を点灯させるようにした冷陰極管点灯回路。
  5. 請求項1乃至のいずれかに記載の電流平衡トランスを1個以上組み込み、インバータ回路の出力を4の倍数に分割して、それぞれ負荷となる直列接続した多数の発光ダイオードを点灯させるようにしたLED点灯回路。
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