JP4693024B2 - 研磨材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体基板を平坦化するための研磨方法に関するものであり、特に、半導体ウエハ上に微細なパターンが形成されており、該パターンの微小な凹凸を平坦化する研磨工程に使われる研磨パッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、半導体ウエハは仕上げ加工工程や、デバイス化での多層配線プロセスにおいて、いわゆる化学的機械的研磨法(Chemical Mechanical Polishing )により鏡面研磨や、層間絶縁膜や導電膜の平坦化が行われている。この様な研磨では、ウエハ全面内での研磨量の均一性、凹凸段差の凸部の選択的研磨や、凹凸部の研磨後の平坦性などの特性が求められる。これらの要求に対して研磨パッドとしては、下記に挙げられるような構成の物が従来開発、検討されてきた。
【0003】
▲1▼弾性ポリウレタン層に研磨層である合成皮革層が積層されたもの(米国特許番号3,504,457)
【0004】
▲2▼発泡ポリウレタン層にポリウレタン含浸不織布を貼り合わせた構成のもの(特開平6−21028号公報)
【0005】
▲3▼研磨表面が設けられており、前記研磨表面に隣接し選択した厚さ及び剛性の剛性要素が設けられており、前記剛性要素へ実質的に一様な力を付与するために前記剛性要素に隣接して弾性要素が設けられており、前記剛性要素及び前記弾性要素が前記研磨表面へ弾性的屈曲力を付与して前記研磨表面に制御した屈曲を誘起させ、それが前記加工物の表面の全体的な形状に適合し且つ前記加工物表面の局所的な形状に関して制御した剛性を維持することを特徴とする研磨用パッド。(特開平06−077185号公報)
【0006】
▲4▼縦弾性係数EA の大きい表層Aと、縦弾性係数EB の小さい下層Bとを有し、両層A,Bとの間に上記B層よりも少なくとも縦弾性係数の大きい中間層Mを設けたことを特徴とする研磨布(特開平10−156724号公報)
【0007】
▲5▼研磨層と、研磨層より弾性の高い中間層と、柔らかい下地層の構成で、中間層が分割されているパッド(特開平11−48131号公報)
【0008】
▲6▼発泡ウレタン樹脂に酸化セリウム粒子を混合した構成の研磨パッド。(特開2000-354950号公報や特開2001-9697号公報)
【0009】
▲7▼溶剤に溶解したバインダー溶液に砥粒を分散させ、フィルム上にコーティングした構成の研磨パッド
【0010】
▲8▼バインダー樹脂中に砥粒を分散させ、樹脂基板上にコーティングし、該コーティングされた樹脂基板を、そのコーティング層よりも柔らかい部材で積層した構成のもの研磨パッド(特表2001-505489号公報や特表2001-512375号公報)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
前述の各種研磨パッドは次のような問題点を有している。
▲1▼この方式では、全面の均一性に関しては、弾性ポリウレタン層がウエハにかかる荷重を均一にする役目を果たしているが、最表層研磨層に、柔らかい合成皮革を使用しているため、スクラッチ等の問題は無いが、微小領域での平坦化特性が良くないという問題点がある。
【0012】
▲2▼ポリウレタンと不織布の積層でも、不織布層が前述▲1▼の弾性ポリウレタン層と同等の役目を果たし、均一性を得ている。また、研磨層も硬質の発泡ポリウレタン層を有している為、合成皮革に比べて平坦化特性も優れているが、近年、微小領域での平坦化特性の要求レベルの向上や、金属膜の研磨においては、要求レベルに達していない。また、硬質ウレタン層の硬度を更に上げる事で平坦化特性の向上を図れるが、この場合、スクラッチの多発を招き実用的ではない。
【0013】
▲3▼研磨層、剛性層、弾性層の構造のものは、表層の研磨層でスクラッチの起きない適度の硬度を持たせ、硬度が上げられず劣化する平坦化特性を第2層の剛性層で改善させる構成のものである。これは、前述▲2▼の方式の問題点を解決するものであるが、この場合、研磨層の厚さが0.003インチ以下が指定されており、この厚さでは実際に使用した場合、研磨層も削れてしまい、製品寿命が短い欠点がある。
【0014】
▲4▼同方式は、基本的思想は前述▲3▼の方式と同様であり、各層の弾性率の範囲を限定して、より効率的な範囲を得ようとしているが、該方式の中では実質的に何ら実現する手段がなく、研磨パッドを製作することは困難である。
【0015】
▲5▼この方式でも、基本的思想は前述▲3▼と同様であるが、ウエハ面内の均一性をより向上するために中間剛性層をある所定の大きさにて分割している。しかし、この分割する工程にコストが掛かり、安価な研磨パッドを供給することは出来ない。
さらに、これら、▲1▼から▲5▼の研磨パッドは、研磨中に高価なスラリーを流す必要があり製造コストの増加につながる。
【0016】
前記▲6▼及び▲7▼の方式は、砥粒をパッド内に含有するが、▲6▼では砥粒の濃度が高くなく、スラリーと併用せざるを得ない場合がある。また、▲7▼では、単に溶剤中で樹脂と砥粒を混合しているだけなので粒子の凝集を引き起こし、スクラッチの要因となる。
【0017】
▲8▼の場合は、積層することで均一性の向上を図っているが、コーティングされている固定砥粒層の厚さが厚く出来なかったり、表面に微細凹凸を作成しているがこの凹凸が使用中になくなってしまい、寿命が長くない問題が有る。また、これらパッドは▲7▼と同様の問題も抱えている。
【0018】
また、特表2001-505489には、3次元パターン化された固定砥粒層が硬質樹脂基板に成型され、該基板が該基板よりも柔らかい層で支持された構成のパッドに関する発明が開示されているが、この発明では、硬質樹脂基板によって、該研磨パッドを用いて研磨したウエハの均一性が損なわれる恐れがある。これに対して、本発明では、硬質樹脂基板を廃し、クッション層に直接、固定砥粒層を形成することで、極めて優れた面内均一性の実現を図ったものである
【0019】
本発明は、半導体ウエハ上に微細なパターンが形成されており、該パターンの微小な凹凸を平坦化する研磨工程に使われる研磨パッドにおいて、スラリーレス対応で、スクラッチの発生の少ない半導体ウエハ研磨用パッドを提供するものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、300〜1020eq/tonのイオン性基を含有する樹脂中に微粒子砥粒が分散されてなる研磨層と、該研磨層をコーティングしてなるクッション層と、該クッション層の研磨層をコーティングした面とは反対の面に、厚さ150μm以上の樹脂基板とを含み、
前記研磨層を構成してなる樹脂が、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、アクリル樹脂から選ばれた樹脂からなり、且つ、ガラス転移温度が60℃以上の樹脂と30℃以下の樹脂とを含み、
前記研磨層に含まれる微粒子砥粒の含有量が、前記樹脂と微粒子砥粒の合計重量に対して60wt%から95wt%であり、
前記クッション層のショアA硬度が55〜67であり、
前記樹脂基板の硬度が前記クッション層の硬度より大きく、
前記クッション層と前記樹脂基板との接着強度(JIS Z0237準拠)が180度剥離テストにおいて600g/cm以上であることを特徴とする研磨材、に関する。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明に於いては、砥粒が分散された研磨層を柔らかいクッション層で支持することで、研磨後のシリコンウエハの全面での研磨レートの均一性が向上する。本発明で用いられるクッション層はウエハの均一性を確保するためにショアA硬度において90以下であることが必須である。
【0022】
また、本発明のクッション層はショアA硬度90以下を実現する為に、好ましくはポリウレタン樹脂発泡体又はポリエチレン樹脂発泡体を用いるのが良く、また、スチレンブタジエン樹脂等のゴムを用いても良い。
【0023】
また、このクッション層の硬度は好ましくはショアA硬度で40から85、特に好ましくは50から80である。ショアA硬度が90以上の場合は、研磨したときのウエハ面内での研磨速度の均一性が損なわれる。また、ショアA硬度が40以下の場合は、研磨層をコーティングした後に、僅かな応力を積層された研磨体に加えただけで研磨層が剥離して研磨出来なくなることがある。
【0024】
本発明の研磨材においてコーティングされた研磨層には、溝が形成されていることが好ましい。本発明での溝形状としてはその溝ピッチが10mm以下が好ましい。さらに、より好ましくは、溝ピッチが10mm以下でかつ、溝幅が0.5mm以上で、溝深さは少なくとも研磨層の厚さの0.8倍以上あることが良い。更に特に好ましくは、溝ピッチが4mmから8mmの範囲で、溝幅が0.5mmから2mmの範囲で且つ、溝深さが研磨層の厚さの0.8倍から1.1倍が好ましい。
【0025】
溝ピッチが10mm以上の場合、ウエハと研磨パッドの接触面積が大きくなり、研磨中に振動や異音を発生したり、場合によってはウエハがウエハホルダーから外れてしまうことが有る。同様に溝幅が小さくなりすぎると、やはり接触面積が増加し前述の事態を招く。また、溝深さが所定の倍率以上ないと研磨を行なうと直ぐにパッドの溝が無くなってしまい、実質的なパッド寿命が短くなってしまう。
【0026】
本発明での溝の形成法としては、特に限定されるものではなく、例えば型押し成型法や機械的切削加工法などが好適に用いられる。機械的切削加工法では、例えばセラミックや金属刃による切削や、セラミック砥石等による研削によって溝を形成することが出来る。
【0027】
本発明では、該クッション層の研磨層をコーティングした面とは反対の面に、厚さ150μm以上のポリエステル樹脂フィルムやポリカーボネート板、ABS樹脂板、塩化ビニル樹脂板などの樹脂基板が両面テープにて貼り合わされた構成が望ましい。該樹脂基板が貼り合わされていない場合、コーティングされた研磨層と柔らかいクッション層のみでは、持ち運びをした場合、パッド自体が大きく変形してしまう時があり、その変形によってコーティングされた研磨層にクラックが発生したり、クッション層の剥離を招く。
【0028】
本発明に用いられる、ポリエステル樹脂フィルムは、厚さが150μm以上、好ましくは250μm以上である。また、該ポリエステル樹脂フィルムとしては、好ましくは延伸されたフィルムが良く、より好ましくは2軸延伸フィルムが良い。
【0029】
本発明に於いては、該樹脂基板が両面テープで張り合わされた反対面にも、両面テープが積層されている構成が好ましい。この両面テープを用いることで、通常の回転式研磨装置に、本発明の研磨材を貼り付けて容易に研磨することが可能となる。
【0030】
また、本発明に於いては、この研磨装置に貼り付けるための両面テープの粘着力が、研磨装置に貼り付けられる側の粘着力よりも、前記樹脂基板側の粘着力の方が大きいことが好ましい。研磨装置側に貼り付けられる粘着力の強度が樹脂基板側の粘着力よりも大きい場合、研磨パッドを使用後、装置から不要となったパッドを剥がす際に、装置側に両面テープのみが残ってしまい、再度残った両面テープを剥がす必要があり、作業性が悪化してしまう。
【0031】
このクッション層の厚みも研磨において研磨の均一性に影響を及ぼし、好ましくは0.3mmから2mmの範囲の厚さが良い。クッション層の厚さが0.3mm以下の場合は、その変形量が小さく、均一性が悪化してしまう。一方、2mm以上の場合は、逆にその変形量が大きくなってしまい、研磨してウエハ表面の平面性が悪化する。
【0032】
本発明に用いられる、砥粒を分散する樹脂としては、該イオン性基を有する樹脂のガラス転移温度が60℃以上の樹脂と30℃以下の樹脂とを2種類以上混合した構成である。ガラス転移温度が60℃以上の樹脂のみであると、コーティングを行い乾燥させた際に塗膜の収縮が発生しその応力に塗膜が耐えず表面に皺が発生してしまう。また、ガラス転移温度が30℃以下のみの樹脂でコーティングを行なうと、塗膜表面は良好でるが、スティッキーな表面となり、研磨を行なう時の摩擦抵抗が著しく上昇し安定した研磨が行なえない。この為、ガラス転移温度の異なる2種類以上の樹脂を混合しそのバランスを採る必要がある。
【0033】
本発明に用いられる、砥粒を分散する樹脂は、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、アクリル樹脂であり、特にポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂が好ましい。このポリエステル樹脂はウレタン、アクリル等で変性しても良い。
【0034】
本発明におけるポリエステル樹脂は多価カルボン酸と多価アルコ−ルとを縮重合して得られるものである。
【0035】
本発明における多価カルボン酸は、主としてジカルボン酸類からなる。ジカルボン酸類としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5−ナフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸p−(ヒドロキシエトキシ)安息香酸などの芳香族オキシカルボン酸、等を用いることができる。芳香族ジカルボン酸は多価カルボン酸成分の40mol%以上を用いることが好ましく、60mol%以上がさらに好ましい。芳香族ジカルボン酸の含有率がこの範囲に満たない場合には樹脂のガラス転移温度が低下する。本発明において好ましく用いられるジカルボン酸類としてはテレフタル酸、イソフタル酸である。これらは芳香族ジカルボン酸の内50mol%以上使用されることが好ましい。
【0036】
本発明においては他のジカルボン酸類としてコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フマ−ル酸、マレイン酸、イタコン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、等の不飽和脂肪族ジカルボンサン、および、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、ダイマー酸、トリマー酸、テトラマー酸等の(不飽和)脂環族ジカルボン酸等を使用することができる。本発明においては必要によりトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等のトリおよびテトラカルボン酸を少量含んでも良い。
【0037】
本発明における多価アルコ−ル成分としては、例えば、エチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、スピログリコ−ル、1,4−フェニレングリコ−ル、1,4−フェニレングリコ−ルのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、トリシクロデカンジメタノール、ダイマージオール、水添ダイマージオール、等のジオ−ル、ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物等々のジオ−ル類、さらに必要により、トリメチロ−ルエタン、トリメチロ−ルプロパン、グリセリン等のトリオ−ル、ペンタエルスリト−ル等のテトラオ−ル等、他に、ε−カプロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られる、ラクトン系ポリエステルポリオ−ル類を用いることができる。
【0038】
本発明では樹脂がイオン性基を有する。イオン性基は、樹脂の可溶性、水分散性を発現させるために必要である。樹脂に含まれるイオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸基、もしくはそれらの塩(水素塩、金属塩、アンモニウム塩)の基等のアニオン性基、または第1級ないし第3級アミン基等のカチオン性基であり、好ましくは、カルボキシル基、カルボン酸アンモニウム塩基、スルホン酸基、スルホン酸アルカリ金属塩基等を用いることができる。
【0039】
以下ポリエステル樹脂の場合を例にして、イオン性基含有樹脂を説明する。これらイオン性基は樹脂に共重合された形態にて含有されることが好ましい。ポリエステル樹脂に共重合可能なスルホン酸金属塩基含有化合物としては、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7ジカルボン酸、5〔4−スルホフェノキシ〕イソフタル酸等の金属塩をあげることができる。またスルホ安息香酸およびその金属塩等のモノカルボン酸を用いることにより高分子末端にイオン性基を導入することが出来る。勿論、ポリエステル樹脂末端に残存するカルボキシル基は、これを有効に使うことが出来る。なお、さらにポリエステル樹脂の重合末期に無水トリメリット酸。無水ピロメリット酸、無水フタル酸等、多価カルボン酸無水物を加えることにより、樹脂末端により多くのカルボキシル基を導入する事ができる。カルボキシル基は後処理により、アンモニア、アルカリ金属、アミン類等により中和することにより、イオン性基として有効に活用することができる。金属塩としてはLi、Na、K、Mg、Ca、Cu、Fe等の塩があげられる。
【0041】
本発明において樹脂は、2種以上併用する。また、溶融状態、溶液状態で、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、イソシアネ−ト化合物等と混合することもでき、またさらに、これらの化合物と一部反応させることもできる。
【0042】
(水分散体製法)
本発明における樹脂は、水分散能を有するため、自己乳化させることによりミクロな水分散体を得ることが出来る。かかるミクロな分散体の粒子径は0.01〜1μm程度である。
【0043】
自己乳化の具体的な方法としては、イオン性基としてカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸基を有するポリエステル樹脂の場合、
(1)ポリエステル樹脂を水溶性有機化合物に溶解。
(2)中和するためのカチオンを添加。
(3)水を添加。
(4)水溶性有機化合物を共沸、透析などにより除去。
【0044】
イオン性基としてカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸基の塩(金属塩、アンモニウム塩)の基等のアニオン性基、または第1級ないし第3級アミン基等のカチオン性基を有するポリエステル樹脂の場合、
(1)ポリエステル樹脂を水溶性有機化合物に溶解。
(2)水を添加。
(3)水溶性有機化合物を共沸、透析などにより除去。
なる手順を例示することができる。乳化の際に乳化剤、界面活性剤などを併用することも可能である。
【0045】
ここに、水溶性有機化合物としてはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ブチルセロソルブ、エチルセロソルブなどの比較的低沸点の水溶性溶剤を好ましく使用することができる。
【0046】
中和するためのカチオンの供給源としては、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属の炭酸水素塩、アンモニア、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、モノエチル時エタノールアミン、イソホロン、等のアミン類、アミノアルコール類、環状アミン等を用いることができる。
【0047】
また、本発明では、イオン性基を持つ樹脂を2種類以上混合することが必要である。ひとつは、ガラス転移温度が60℃以上の樹脂であり、もう一つはガラス転移温度が30℃以下の樹脂である。ガラス転移温度が60℃以上の樹脂のみで研磨層コート液をクッション層にコーティングすると、乾燥時にコート表面にひび割れが発生して良好な塗膜を得ることが出来ない。
【0048】
本発明に用いられる、微粒子砥粒は、5nmから1000nmであることが好ましい。粒子径が5nm以下の場合、該ポリエステル樹脂と分散する場合に、その混合が非常に困難となり、実質的に製造することが出来ない。また、粒子径が1000nmを超えた場合、これを用いて製作した研磨材にて研磨を行った際に、被研磨物に大きな傷を与えてしまう可能性がある。
【0049】
また、砥粒の種類として、好ましくは酸化ジルコニウム、塩化第2鉄、酸化クロム、ダイヤモンドなどが良く、特に好ましくは、酸化セリウム、酸化珪素、酸化アルミニウムが良い。これら砥粒はシリコンウエハそのものや、シリコンウエハ上に堆積させたシリコン酸化膜や、AL、Cuなど各種金属膜の研磨において最適なものを適宜選択することが出来る。特にシリコン酸化膜については、酸化セリウムや酸化ケイ素などが好ましく、金属膜には酸化アルミニウムなどが好ましい。
【0050】
本発明では、研磨層に含まれる砥粒の含有量は60wt%から95wt%であり、好ましくは75wt%から95wt%である。砥粒含有量が60wt%以下の場合、砥粒の体積含有率が低下し、研磨レートの低下ないしは研磨レートが出なくなることがある。また、砥粒含有量95wt%以上の場合、コーティングにより得られた塗膜の強度が得られず研磨中に塗膜の剥落が発生し、スクラッチの原因となる。
【0051】
本発明においては、該研磨層の厚さが、好ましくは350μm以上2mm以下であり、特に好ましくは400μm以上1mm以下である。厚さが350μm以下の場合、実際に研磨を行なった場合、研磨層も磨り減ってしまい研磨材の寿命が短くなり実用的ではない。一方、厚さが2mmを超える場合、研磨層の表面に大きなひび割れが発生し、綺麗な層を得ることが出来ない。
【0052】
さらに本発明に於いては、該研磨層のクッション層との密着強度がJISK-5400準拠の1mm角100升のクロスカットテストを用いた場合、90以上であることが望ましく、特に好ましくは100である。この値が90未満である膜は付着力が弱く、研磨を行なった場合、膜の剥落が発生し、スクラッチの原因となる。
【0053】
本発明では、研磨層がコーティングされた柔らかいクッション層と樹脂基板が積層された構成となっているが、コーティングされたクッション層と樹脂基板の貼り合せは、接着剤ないしは両面テープで張り合わせることが好ましい。
【0054】
この場合の接着剤ないしは両面テープは特に限定される物ではないが、好ましくはアクリル樹脂系、スチレンブタジエンゴム系などが上げられる。また、該層のJIS Z 0237準拠の接着強度は180度剥離テストにおいて600g/cm以上の強度が必須である。この接着強度が600g/cm未満の場合、研磨中に樹脂基板とクッション層との剥離が発生する場合がある。
【0056】
クッション層の材料としては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリアミドイミド系、アクリル系、セルロース系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリカーボネート、フェノール系、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0057】
また、前述の適切な硬度を得るためにそれら樹脂の発泡体を用いても良い。更に、該樹脂体が、前記範囲の硬度を持つ樹脂であるならば、特に気泡を含有する必要は無い。発泡体を用いる場合その発泡方法は特に限定される物ではなく、水発泡法、熱ガス発生法やマイクロバルーンを混合する方法などが挙げられる。
【0058】
本発明の研磨材で表面にパターンが形成された凹凸のシリコンウエハを研磨する場合、該研磨材は研磨対象であるシリコンウエハとある荷重を印加して接触させ相対的に移動することで研磨を行い、シリコンウエハを平坦化することが出来る。この場合、シリコンウエハと研磨材の動きは直線的な動きでも、曲線状の動きでも良い。
【0059】
また、本発明でシリコンウエハを研磨する場合、シリコンウエハと研磨材との間には何も介さなくても研磨することは可能であるが、スクラッチ等の低減の為には、好ましくは純水を流しながら研磨をしても良い。研磨対象物がシリコンウエハ上のシリコン酸化物の場合は、好ましくは、アルカリ性水溶液を流しても良く、また、シリコンウエハ上の研磨対象物がアルミ、タングステン、銅等の金属の場合、それら金属表面を酸化させることの出来る酸性水溶液を流しながら研磨しても良い。これらの場合、供給する純水、アルカリ水溶液、酸性水溶液はパッドの面積あたり少なくとも15mg/cm2・minの量を供給するのが良い。
【0060】
本発明に於いては、ウエハと研磨材の摩擦抵抗の低減や、スクラッチの低減、研磨速度の制御をする目的で、界面活性剤を滴下しながら研磨を行なっても良い。界面活性剤は、それ単独で本発明研磨材上に滴下しても良くまた、前述の純水中又はアルカリ水溶液、酸性水溶液中に予め混合して滴下しても良い。
【0061】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明はかかる実施例により何ら限定されるものではない。
【0062】
(実施例1)攪拌翼を備えたフラスコに、水分散体ポリエステル樹脂TAD1000(東洋紡績社製 ガラス転移温度65℃ イオン性基量816eq/ton 固形分濃度30wt%)30重量部、同じく水分散体ポリエステル樹脂TAD3000(東洋紡績社製 ガラス転移温度30℃ イオン性基量815eq/ton 固形分濃度30wt%)40重量部、架橋剤サイメル325(三井サイテック社製)3重量部及び消泡剤サーフィノールDF75(日信化学工業社製)0.7重量部を攪拌混合した後、酸化セリウムパウダー(バイコウスキー社製 平均粒子径0.2μm)100重量部を逐次添加し、均一になるように攪拌した。得られた塗液はペースト状であり、これを研磨層コート液とした。次にクッション層である厚さ0.8mmの発泡ポリウレタンシート(積水化学社製 THM ショアA硬度67)と、樹脂基板である厚さ0.5mmポリカーボネート基板(三菱エンジニアリングプラスティック社製 ショアA硬度95以上)とを両面テープ#5782(積水化学工業社製)で面荷重1kg/cm2を印加しながら貼り合せ、該クッション層側に、先に作製したコート液を、テーブルダイコーターにて約400μmの厚さでコーティングを行なった。その後、110℃の熱風オーブンにて約20分間乾燥を行い徐冷後取り出した。
【0063】
得られた研磨層は、クッション層上に約350μmの厚さがあり、その断面を走査型電子顕微鏡にて観察を行なったところ、酸化セリウム微粒子が凝集することなく均一に分散されていることが確認された。また、得られた研磨層のクロスカットテープ剥離を行なったところ残存数は100で全く剥離が見られなかった。次に前記樹脂基板の他面に再度両面テープを面荷重1kg/cm2を印加しながら貼り合せ研磨材とした。クッション層と樹脂基板との接着強度を引っ張り試験機で180度剥離テストを行なった結果、1000g/cm以上の接着力があった。得られた研磨材の研磨特性に関しては表1にしめす。得られた研磨材は研磨レートが高く、平坦化特性も極めて優れており、均一性も良好であることが確認された。
【0064】
(実施例2)実施例1と同様に水分散ポリエステル樹脂TAD3000に変えてTAD2000(東洋紡績社製 ガラス転移温度20℃ イオン性基量1020eq/ton 固形分濃度30wt%)を用いて、また、クッション層を発泡ポリウレタン樹脂からスチレンブタジエンゴム(ショアA55)に変えて、それ以外は実施例1と同様に研磨材を製作した。同じく結果を表1に併記するが、研磨レートが高く、平坦化特性も極めて優れており、均一性も良好であることが確認された。
【0065】
(実施例3)
実施例1と同様に水分散ポリエステル樹脂TAD1000に変えてMD1200(東洋紡績社製 ガラス転移温度67℃ イオン性基量300eq/ton 固形分濃度34wt%)を用いて、それ以外は実施例1と同様に研磨材を製作した。同じく結果を表1に併記するが、研磨レートが高く、平坦化特性も極めて優れており、均一性も良好であることが確認された。
【0066】
(実施例4)実施例1と同様にクッション層上にコーティングを行なった後、再度そのコート面に約400μmの厚さでコーティングを行い、それ以降は同様に製作を行なった。得られた研磨層の厚さは、約700μmとなり、クロスカットテープテストを行なった残存枚数は100で研磨層に変化は無かった。この研磨材を用いて研磨を行なったところ、研磨レートが高く、平坦化特性も極めて優れており、均一性も良好であることが確認された。
【0067】
(実施例5)実施例1において、樹脂基板をポリカーボネートから厚さ250μmの2軸延伸ポリエステルフィルムに変えて、それ以外は実施例1と同様に製作を行なった。この研磨材を用いて研磨を行なったところ、研磨レートが高く、平坦化特性も極めて優れており、均一性も良好であることが確認された。
【0068】
(比較例1)実施例1において、水分散ポリエステル樹脂TAD3000を混合せず、それ以外は実施例1と同様に研磨材を製作したところ、乾燥後の研磨層表面が大きくひび割れていた。このような研磨材で研磨を実施したところ、一部研磨層の剥落が発生し研磨していたウエハにスクラッチが多数観察された。
【0069】
(比較例2)実施例1において、水分散ポリエステル樹脂TAD1000を混合せず、それ以外は実施例1と同様に研磨材を製作したところ、良好な研磨層を得たが、表面はややべたついていた。このような研磨材で研磨を実施したところ、ウエハが研磨材表面に貼り付き研磨中に激しい振動が発生し遂にはウエハがウエハホルダーより外れてしまった。
【0070】
(比較例3)実施例1において、クッション層と樹脂基板を面荷重を殆ど印加せず貼り合せ研磨材を作製した。作製された研磨材のクッション層と樹脂基板との接着力を180度剥離テストで測定したところ400g/cmの接着力しかなかった。このような研磨材で研磨テストを行なったところ、ウエハを数枚処理したところで、クッション層と樹脂基板との間で研磨中に剥離が発生し、研磨することが出来なくなった。
【0071】
(比較例4)実施例1において酸化セリウムパウダー(バイコウスキー社製 平均粒子径1.5μm)500重量部に変更し、それ以外は同様にして研磨材を製作した。得られた研磨層は付着力、膜強度が極めて弱く研磨材を曲げたりすると研磨層が剥離してしまい、ポリエチレン発泡体層の積層ができなかった。
【0072】
(比較例5)
熱可塑性ポリエステル樹脂(東洋紡績社製 バイロンRV200)600重量部と直径0.5μmのシリカパウダー400重量部を、樹脂のTg以上の温度で溶融混合させようとしたが、粘度が非常に高く混合が不可能であった。
【0073】
(比較例6)
熱可塑性ポリエステル樹脂(東洋紡績社製 バイロンRV200)800重量部と直径0.5μmのシリカパウダー200重量部を、樹脂のTg以上の温度で溶融混合させ、離型剤の塗布またはコーティングされた容器に流し込み、厚さ10mm、直径60cmの円盤状の研磨パッドを得た。得られた研磨パッドの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、シリカ粒子が凝集し、数ミクロンの塊となっているのが観察された。
【0074】
(比較例7)
容器にポリエーテル系ウレタンプレポリマー(ユニローヤル社製アジプレンL−325)を3000重量部と、界面活性剤(ジメチルポリシロキサン・ポリオキシアルキル共重合体 東レダウコーニングシリコーン(株)社製 SH192)を19重量部と酸化セリウム(シーベルヘグナー ナノスケールセリア)5000重量部を入れ、その後、攪拌機を交換し硬化剤(4,4′−メチレン−ビス〔2−クロロアニリン〕を770重量部を攪拌しながら投入し、攪拌機にて約400rpmで攪拌しようと試みたが、急激に増粘し、攪拌不可能であった。
【0075】
(比較例8)容器にポリエーテル系ウレタンプレポリマー(ユニローヤル社製アジプレンL−325)を3000重量部と、界面活性剤(ジメチルポリシロキサン・ポリオキシアルキル共重合体 東レダウコーニングシリコーン(株)社製 SH192)を19重量部と酸化セリウム(シーベルヘグナー ナノスケールセリア)600重量部入れ、攪拌機にて約400rpmで攪拌し混合溶液を作り、その後、攪拌機を交換し硬化剤(4,4′−メチレン−ビス〔2−クロロアニリン〕を770重量部を攪拌しながら投入する。約1分間攪拌した後、パン型のオープンモールドへ混合液を入れ、オーブンにて110℃、6時間ポストキュアを行い、発泡ポリウレタンブロックを製作した。得られた発泡ポリウレタンはショアA硬度にて65、圧縮率0.5%、比重0.95であり、平均気泡径35μmであった。得られた研磨パッドの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、酸化セリウム粒子が凝集し、数ミクロンの塊となっているのが観察された。
【0076】
(比較例9)実施例1において、樹脂基板を張り合わせないクッション層にコーティングを行なったところ、乾燥工程にて大きな反りが発生し良好な研磨パッドを得ることが出来なかった。
【0077】
【表1】
【0078】
(研磨特性の評価)
研磨装置として岡本工作機械社製SPP600Sを用いて、研磨特性の評価を行った。酸化膜の膜厚測定には大塚電子社製の干渉式膜厚測定装置を用いた。研磨条件としては、薬液とし、超純水のみ又は、超純水にKOHを添加してpH11にした物を、研磨中に流量150ml/minで滴下した。研磨荷重としては350g/cm2、研磨定板回転数35rpm、ウエハ回転数30rpmとした。
【0079】
研磨特性の評価では、8インチシリコンウエハに熱酸化膜を0.5μm堆積させた後、所定のパターンニングを行った後、p−TEOSにて酸化膜を1μm堆積させ、初期段差0.5μmのパターン付きウエハを製作し、このウエハを前述条件にて研磨を行い、研磨後、各段差を測定し平坦化特性を評価した。平坦化特性としては2つの段差を評価した。1つはローカル段差であり、これは幅270μmのラインが30μmのスペースで並んだパターンにおける段差であり、もうひとつは30μmラインが270μmのスペースで並んだパターンのスペースの底部分の削れ量を調べた。また、平均研磨レートは上記270μmのライン部分と30μmのライン部分の平均値を平均研磨レートとした。
スクラッチ評価は、研磨し終えた6inシリコンウエハの酸化膜表面を、トプコン社製ウエハ表面検査装置WM2500にて0.2μm以上の条痕が幾つ有るかを評価した。
【0080】
【発明の効果】
本発明においては、研磨層の中に砥粒を含んでいるため、研磨において高価なスラリーを使う必要が無く、低コストな加工が提供できる。また、研磨層の砥粒の凝集が無く、スクラッチが発生しにくく、且つ、研磨対象の研磨レートの面内均一性が極めて良好である。
Claims (6)
- 300〜1020eq/tonのイオン性基を含有する樹脂中に微粒子砥粒が分散されてなる研磨層と、該研磨層をコーティングしてなるクッション層と、該クッション層の研磨層をコーティングした面とは反対の面に、厚さ150μm以上の樹脂基板とを含み、
前記研磨層を構成してなる樹脂が、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、アクリル樹脂から選ばれた樹脂からなり、且つ、ガラス転移温度が60℃以上の樹脂と30℃以下の樹脂とを含み、
前記研磨層に含まれる微粒子砥粒の含有量が、前記樹脂と微粒子砥粒の合計重量に対して60wt%から95wt%であり、
前記クッション層のショアA硬度が55〜67であり、
前記樹脂基板の硬度が前記クッション層の硬度より大きく、
前記クッション層と前記樹脂基板との接着強度(JIS Z0237準拠)が180度剥離テストにおいて600g/cm以上であることを特徴とする研磨材。 - 前記樹脂基板とクッション層とは両面テープにより張り合わされ、前記樹脂基板のもう一方の面にも別の両面テープが張り合わされており、それぞれ2つの両面テープの粘着強度が異なり、且つ、それぞれの両面テープの裏面と表面との粘着強度が異なることを特徴とする請求項1記載の研磨材。
- 前記研磨層が多数の溝を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の研磨材。
- 前記クッション層の厚さが、0.3mm〜2mmであることを特徴とする請求項1乃至3に記載の研磨材。
- 請求項1乃至4の研磨材を用いて、シリコンウエハ表面を平坦にする研磨方法であって、該研磨材とシリコンウエハとの間に液体を流しながら研磨することを特徴とする研磨方法。
- 前記液体が酸又はアルカリの液体であることを特徴とする請求項5に記載の研磨方法。
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