JP4692331B2 - 駆動装置 - Google Patents

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Description

この発明は、複数の駆動輪間において、それぞれの駆動力を変更可能な駆動装置に関する。
近年においては、車両の走行性能、ドライバビリティ、安全性の向上等を図るため、複数の駆動輪、例えば左右輪で駆動力差を発生させることが行われる。例えば、特許文献1には、差動装置の第1回転要素に出力軸が連結される第1の電動機と、差動装置の第2回転要素に出力軸が連結される第2の電動機とを有し、左右の駆動輪のうち一方を第1電動機の出力軸に連結し、他方を第2の電動機に連結する走行アシスト装置が開示されている。
特開平11−170881号公報
特許文献1に開示されている走行アシスト装置は、左右の駆動輪のうち一方が電動機に接続されているため、当該電動機の回転数を検出すれば、当該電動機に接続されている駆動輪のスリップを判定することができる。ここで、特許文献1に開示されている走行アシスト装置では、スリップしている駆動輪の回転数と当該駆動輪が接続される電動機の回転数とが等しい。
このため、例えば、駆動輪が低速で回転している状態でスリップが発生した場合には、スリップによる駆動輪の回転数変化が小さいため、当該駆動輪が接続されている電動機の回転数を検出する手法では、スリップを検出できないおそれがある。また、駆動輪の回転数が高い場合でも、駆動輪のスリップに起因する当該駆動輪の回転数変化が小さい場合には、同様にスリップを検出できないおそれがある。
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、駆動輪のスリップの検出精度を向上させることができる駆動装置を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するために、この発明に係る駆動装置は、第1の駆動力発生手段と、第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素を備え、かつ、前記第1回転要素に前記第1の駆動力発生手段が発生する駆動力を入力するとともに、前記第2回転要素から第1の駆動輪に対して、また前記第3回転要素から第2の駆動輪に対して、入力した前記駆動力を分割してそれぞれ出力する動力分配機構と、前記第3回転要素に出力軸が接続されるとともに、前記第2の駆動輪に対して駆動力を伝達する第2の駆動力発生手段と、を含み、前記第1回転要素の回転加速度の絶対値が所定の閾値以上である場合は、前記第1の駆動輪又は前記第2の駆動輪の少なくとも一方にスリップが発生していると判定することを特徴とする。
この駆動装置は、第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素を備え、かつ、第1回転要素に第1の駆動力発生手段が発生する第1の駆動力を入力するとともに、第2回転要素から第1の駆動輪に対して、また第3回転要素から第2の駆動輪に対して、入力した第1の駆動力を分割して出力する。また、第2の駆動力発生手段の出力軸は第3回転要素に接続されるとともに、第2の駆動力発生手段が発生する駆動力は、第2の駆動輪に伝達される。このような構成によって、スリップにより増加した駆動輪の回転数を動力分配機構の第1回転要素で増幅するとともに、第1回転要素の回転加速度の絶対値に基づいて駆動輪のスリップを判定するので、駆動輪のスリップの検出精度を向上させることができる。
次の本発明に係る駆動装置は、前記駆動装置において、前記第1回転要素の回転方向が、予め定めた第1の回転方向である場合には、前記第1の駆動輪にスリップが発生していると判定することを特徴とする。
次の本発明に係る駆動装置は、前記駆動装置において、前記第1回転要素の回転方向が、前記第1の回転方向とは反対方向となる第2の回転方向である場合には、前記第2の駆動輪にスリップが発生していると判定することを特徴とする。
次の本発明に係る駆動装置は、第1の駆動力発生手段と、第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素を備え、かつ、前記第1回転要素に前記第1の駆動力発生手段が発生する駆動力を入力するとともに、前記第2回転要素から第1の駆動輪に対して、また前記第3回転要素から第2の駆動輪に対して、入力した前記駆動力を分割してそれぞれ出力する動力分配機構と、前記第3回転要素に出力軸が接続されるとともに、前記第2の駆動輪に対して駆動力を伝達する第2の駆動力発生手段と、を含み、前記第1回転要素の回転加速度が、正の値として設定される第1の閾値以上である場合には、前記第1の駆動輪にスリップが発生していると判定し、また、前記第1回転要素の回転加速度が、負の値として設定される第2の閾値以下である場合には、前記第2の駆動輪にスリップが発生していると判定することを特徴とする。
この駆動装置は、第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素を備え、かつ、第1回転要素に第1の駆動力発生手段が発生する第1の駆動力を入力するとともに、第2回転要素から第1の駆動輪に対して、また第3回転要素から第2の駆動輪に対して、入力した第1の駆動力を分割して出力する。また、第2の駆動力発生手段の出力軸は第3回転要素に接続されるとともに、第2の駆動力発生手段が発生する駆動力は、第2の駆動輪に伝達される。このような構成によって、スリップにより増加した駆動輪の回転数を動力分配機構の第1回転要素で増幅するとともに、第1回転要素の回転加速度の大きさと方向とを考慮して駆動輪のスリップを判定するので、駆動輪のスリップの検出精度を向上させることができる。
次の本発明に係る駆動装置は、前記駆動装置において、前記第1駆動輪又は前記第2駆動輪の少なくとも一方にスリップが発生していると判定された場合には、前記第1の駆動力発生手段は前記第1の駆動力を調整して、スリップが発生したと判定された駆動輪に付与する駆動力を低減することを特徴とする。
次の本発明に係る駆動装置は、前記駆動装置において、前記第1の駆動力発生手段の駆動力を調整することに起因して、スリップが発生したと判定された駆動輪とは異なる駆動軸にスリップが発生すると予測される場合には、さらに前記第2の駆動力発生手段は前記第2の駆動力を調整することを特徴とする。
次の本発明に係る駆動装置は、前記駆動装置において、前記第1の駆動力発生手段の駆動力を調整することにより、スリップが発生したと判定された駆動輪とは異なる駆動輪へ付与される駆動力に基づいて算出される必要摩擦係数が所定値よりも大きい場合に、スリップが発生したと判定された駆動輪とは異なる駆動輪にスリップが発生すると判定することを特徴とする。
次の本発明に係る駆動装置は、第1の駆動力発生手段と、第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素を備え、かつ、前記第1回転要素に前記第1の駆動力発生手段が発生する駆動力を入力するとともに、前記第2回転要素から第1の駆動輪に対して、また前記第3回転要素から第2の駆動輪に対して、入力した前記駆動力を分割してそれぞれ出力する動力分配機構と、前記第2回転要素又は前記第3回転要素のうちいずれか一方と接続されるとともに、前記第2の駆動輪に駆動力を伝達する第2の駆動力発生手段と、を含むことを特徴とする。
この駆動装置は、第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素を備え、かつ、第1回転要素に第1の駆動力発生手段が発生する第1の駆動力を入力するとともに、第2回転要素から第1の駆動輪に対して、また第3回転要素から第2の駆動輪に対して、入力した第1の駆動力を分割して出力する。また、第2の駆動力発生手段の出力軸は第3回転要素に接続されるとともに、第2の駆動力発生手段が発生する駆動力は、第2の駆動輪に伝達される。このような構成により、スリップにより増加した駆動輪の回転数を、動力分配機構の第1回転要素で増幅して検出することができるので、駆動輪のスリップの検出精度を向上させることができる。
次の本発明に係る駆動装置は、前記駆動装置において、前記動力分配機構は、シングルピニオン式の遊星歯車装置であって、前記第1回転要素はサンギヤであり、前記第2回転要素はキャリアであり、前記第3回転要素はリングギヤであることを特徴とする。
次の本発明に係る駆動装置は、前記駆動装置において、前記動力分配機構は、ダブルピニオン式の遊星歯車装置であって、前記第1回転要素はキャリアであり、前記第2回転要素はリングギヤであり、前記第3回転要素はサンギヤであることを特徴とする。
本発明に係る駆動装置は、駆動輪のスリップの検出精度を向上させることができる。
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
なお、以下の説明においては、左右の駆動輪に対して駆動力を変化させる場合を説明するが、本発明は、前後の駆動輪に対して駆動力の配分を行う場合や、前後左右の駆動輪に対して駆動力の配分を行う場合等にも適用できる。すなわち、本発明は、複数の駆動手段を備え、かつ、複数の駆動輪に対する駆動力を変化させる場合に適用できる。また、次の説明においては、乗用車、トラック、バスその他の車両に対して本発明を適用した場合を例とするが、本発明の適用対象はこのような車両に限定されるものではない。
この実施形態は、次の点に特徴がある。すなわち、第1の駆動力発生手段と、第2の駆動力発生手段と、第1回転要素(例えばサンギヤ)、第2回転要素(例えばキャリア)及び第3回転要素(例えばリングギヤ)で構成される動力分配機構とを備える。そして、第1回転要素に第1の駆動力発生手段が発生する駆動力を入力するとともに、第2回転要素から第1の駆動輪に対して、また第3回転要素から第2の駆動輪に対して、入力した前記駆動力を分割して出力する。また、第2の駆動力発生手段の出力軸は第3回転要素に接続されるとともに、第2の駆動力発生手段が発生する駆動力は、第2の駆動輪に伝達される。このような構成において、サンギヤの回転加速度の絶対値が所定の値以上になった場合には、第1駆動輪又は第2駆動輪のうち少なくとも一方にスリップが発生していると判定する。次に、この実施形態に係る駆動装置について詳細に説明する。
図1は、この実施形態に係る駆動装置の構成を示す説明図である。図2は、この実施形態に係る駆動装置を車両に搭載した例を示す概略図である。この駆動装置10(図1参照)は、車両(例えば、乗用車やバス等)100に搭載される(図2参照)。車両100に駆動装置10が搭載された場合、図1、図2の矢印Y方向が車両100の前進時における進行方向となる。すなわち、第1の駆動輪(以下第1駆動輪)7Rが車両右側の駆動輪となり、第2の駆動輪(以下第2駆動輪)7Lが車両左側の駆動輪となる(図2参照)。
この実施形態に係る駆動装置10には、第1の駆動力発生手段として第1モータ1が備えられ、また、第2の駆動力発生手段として第2モータ2が備えられる。ここで、第1モータ1及び第2モータ2は、電気エネルギーを運動エネルギーに変換する、いわゆる電気モータであるが、油圧モータを用いてもよい。また、第2の駆動力発生手段としては、第2モータ2の代わりに内燃機関を用いてもよい。
駆動装置10は、遊星歯車列で構成される遊星歯車装置3を動力分割機構として備える。遊星歯車装置3は、リングギヤ3Rとキャリア3Cとサンギヤ3Sとの3要素で構成される。この遊星歯車装置3においては、サンギヤ3Sが第1回転要素に相当し、キャリア3Cが第2回転要素に相当し、また、リングギヤ3Rが第3回転要素に相当する。この実施形態において用いる遊星歯車装置3は、いわゆるシングルピニオン式の遊星歯車装置である。なお、後述するように、いわゆるダブルピニオン式の遊星歯車装置を動力分配機構として用いてもよい。
第1モータ1の出力軸1Sは、遊星歯車装置3のサンギヤ3Sに接続されており、第1モータ1が発生する駆動力が出力される。遊星歯車装置3のキャリア3Cには第1伝達ギヤ4Rが取り付けられており、第1伝達ギヤ4Rは、第1駆動軸6Rに取り付けられる第1駆動軸側ギヤ5Rと噛み合っている。第2モータ2の出力軸2Sは、遊星歯車装置3のリングギヤ3Rに接続されている。また第2モータ2の出力軸2Sには第2伝達ギヤ4Lが取り付けられており、第2伝達ギヤ4Lは、第2駆動軸6Lに取り付けられる第2駆動軸側ギヤ5Lと噛み合っている。
この駆動装置10は、遊星歯車装置3のサンギヤ3Sに第1モータ1が発生する駆動力が入力される。そして、遊星歯車装置3は、キャリア3Cから第1駆動輪7Rに対して、またリングギヤ3Rから第2駆動輪7Lに対して、入力した前記駆動力を分割して出力する。また、第2のモータ2が発生する駆動力は、第2駆動輪7Lとリングギヤ3Rとに対して出力される。
この実施形態において、第1モータ1及び第2モータ2は、それぞれ第1モータ用インバータ21、第2モータ用インバータ22によって制御される。第1モータ用インバータ21及び第2モータ用インバータ22には、例えばニッケル−水素電池やリチウムイオン電池等の車載電源23が接続されており、必要に応じて第1モータ1や第2モータ2へ電力を供給する。
第1モータ用インバータ21及び第2モータ用インバータ22は、ECU(Electronic Control Unit)50、及びECU50内に備えられる駆動力配分制御装置30によって制御される。第1モータ1の出力軸1Sには、第1モータ1の回転数を検出する第1モータ回転数検出手段として、第1レゾルバ41が取り付けられる。また、第2モータ2の出力軸2Sには、第2モータ2の回転数を検出する第2モータ回転数検出手段として、第2レゾルバ42が取り付けられる。ECU50や駆動力配分制御装置30は、第1レゾルバ41、第2レゾルバ42が検出する回転情報を取得して、第1モータ1、第2モータ2を制御する。
この実施形態に係る駆動装置10においては、第1モータ1のトルクTm1と第2モータ2のトルクTm2とを用いて、第1駆動軸6RのトルクTRと第2駆動軸6LのトルクTLとを、式(1)、式(2)のように表すことができる。ここで、gRは第1モータ1から第1駆動軸6Rまでの変速比であり、gLは第2モータ2から第2駆動軸6Lまでの変速比である。また、ρは遊星歯車装置3のサンギヤ−リングギヤ間の変速比であり、サンギヤ3Sの歯数/リングギヤ3Rの歯数となる。
TR=gR×((1+1/ρ)×Tm1)・・(1)
TL=gL×(Tm2−1/ρ×Tm1)・・(2)
この駆動装置10では、式(1)、式(2)に基づいて第1モータ1、第2モータ2の駆動力(トルク)を制御することにより、第1駆動軸6RのトルクTRと第2駆動軸6LのトルクTLとを制御する。これによって、第1駆動輪7R、第2駆動輪7Lの駆動力を独立して制御することができる。この駆動装置10は、第1駆動輪7R、第2駆動輪7Lの駆動力を制御する際には、第1モータ1あるいは第2モータ2は力行となる結果、電力を回生することはないので、エネルギーの利用効率が向上する。
図3は、この実施形態に係る駆動装置が備える遊星歯車装置の共線図である。図3中の実線Aは、車両100の直進時、すなわち、第1駆動輪7Rの駆動力と第2駆動輪7Lの駆動力とが同じ大きさで車両100が走行しており、かつ第1駆動輪7R、第2駆動輪7Lのいずれにもスリップが発生していない場合における遊星歯車装置3の状態を示している。説明の便宜上、車両100の直進時においては、遊星歯車装置3のリングギヤ3R、キャリア3C、サンギヤ3Sは、同じ回転数N1で回転しているものとする(図3の実線A)。また、車両100が前進する場合(図2の矢印Y方向に進行する場合)におけるリングギヤ3R、キャリア3C等の回転方向を正とする。なお、次の説明における回転数は、単位時間あたりの回転数(例えば1分あたりの回転数)である。
車両100の走行中、例えば、第2駆動輪7Lのみが氷の上に乗ってスリップした場合、第2駆動輪7Lの回転数は、直進時と比較して増加する。第2駆動輪7Lの回転数変化は、第2駆動軸6L、第2伝達ギヤ4Lを介して遊星歯車装置3のリングギヤ3Rへ伝達される。これによって、図3の一点鎖線Bに示すように、リングギヤ3Rの回転数はN1からN2へ増加する。
一方、第1駆動輪7Rにはスリップが発生していないため、第1伝達ギヤ4R、第1駆動軸側ギヤ5R、及び第1駆動軸6Rを介して第1駆動輪7Rに駆動力を伝達するキャリア3Cの回転数はN1のまま維持される。このように、第2駆動輪7Lにスリップが発生した場合、遊星歯車装置3のリングギヤ3Rの回転数はN1からN2へ増加するが、キャリア3Cの回転数はN1のまま維持される。これによって、サンギヤ3Sの回転数は、N1からN3へ低下する。そして、そのときのサンギヤ3Sの回転加速度asは負(as<0)となる。なお、回転加速度は、単位時間あたりの回転数を時間微分した値である。
次に、車両100の走行中、第1駆動輪7Rのみが氷の上に乗ってスリップした場合を考える。この場合、第1駆動輪7Rの回転数は、直進時と比較して増加する。第1駆動輪7Rの回転数変化は、第1駆動軸6R、第1伝達ギヤ4Rを介して遊星歯車装置3のキャリア3Cへ伝達される。これによって、図3の破線Cに示すように、キャリア3Cの回転数はN1からN4へ増加する。
一方、第2駆動輪7Lにはスリップが発生していないため、第2伝達ギヤ4Lや第2駆動軸6L等を介して第2駆動輪7Lに駆動力を伝達するリングギヤ3Rの回転数はN1のまま維持される。このように、第1駆動輪7Rにスリップが発生した場合、遊星歯車装置3のキャリア3Cの回転数はN1からN4へ増加するが、リングギヤ3Rの回転数はN1のまま維持される。これによって、サンギヤ3Sの回転数はN1からN5へ増加する。そして、そのときのサンギヤ3Sの回転加速度asは正(as>0)となる。
図3の二点鎖線Dは、第1駆動輪7R、第2駆動輪7Lのいずれにもスリップが発生していない状態(回転数がN1の場合)と比較して、遊星歯車装置3のリングギヤ3R、キャリア3C、サンギヤ3Sの回転数すべてがN1からN6に上昇している。この場合は、第1駆動輪7R及び第2駆動輪7Lの両方にスリップが発生している状態である。例えば、リングギヤ3Rの回転加速度ar、キャリア3Cの回転加速度ac、サンギヤ3Sの回転加速度asがいずれも所定の閾値を超えて変化した場合には、第1駆動輪7R、第2駆動輪7Lの両方にスリップが発生していると判断することができる。
この実施形態に係る駆動装置10では、サンギヤ3Sの回転数変化の大きさ及びサンギヤ3Sの回転方向に基づいて、第1駆動輪7R、第2駆動輪7Lのスリップを判定することができる。サンギヤ3Sの回転数変化の大きさによって、スリップ量を推定することができ、また、サンギヤ3Sの回転方向によって、スリップが発生している駆動輪を判定することができる。
サンギヤ3Sの回転数変化の大きさ及びサンギヤ3Sの回転方向を判断する尺度としては、例えば、サンギヤ3Sの回転加速度asを用いることができる。ここで、回転加速度は、単位時間あたりの回転数Nを時間微分した値dN/dtの他、回転角速度ωの時間微分値dω/dtや、回転速度vの時間微分値dv/dtも含まれる。
例えば、図1に示す駆動装置10の構成の場合、サンギヤ3Sの回転加速度asが負(as<0)であれば第2駆動輪7Lにスリップが発生しており、サンギヤ3Sの回転加速度asが正(as>0)であれば第1駆動輪7Rにスリップが発生していると判定できる。サンギヤ3Sの回転加速度asは、サンギヤ3Sに接続されている第1モータ1の回転加速度を検出することによって求めることができる。なお、第1モータ1の回転加速度は、第1モータ1の出力軸1Sと同軸に取り付けられる第1レゾルバ41で検出することができる。
この実施形態に係る駆動装置10では、リングギヤ3R又はキャリア3Cの回転数変化が増幅されてサンギヤ3Sの回転数の変化として現れる。また、リングギヤ3R又はキャリア3Cの回転数に変化があれば、直ちに(ほとんど応答遅れなく)サンギヤ3Sの回転数も変化する。したがって、サンギヤ3Sの回転数の変化に基づけば、駆動輪や駆動手段の駆動軸等の回転数を直接検出するよりも、第1駆動輪7R、第2駆動輪7Lのスリップを早期かつ確実に検出することができる。
また、スリップが発生している第1駆動輪7R、第2駆動輪7Lに対応するキャリア3C、リングギヤ3Rの回転数変化よりもサンギヤ3Sの回転数変化の方が大きくなるので、車両100が極低速で走行している場合等であっても、検出精度の高いセンサを設けることなく、確実に駆動輪のスリップを検出できる。また、第1駆動輪7Rあるいは第2駆動輪7Lのスリップはサンギヤ3Sによって増幅されるため、この実施形態に係る駆動装置10は、極低速走行時以外でも駆動輪のスリップを早期かつ確実に検出して、スリップから回復させることができる。次に、この実施形態に係る駆動装置の他の構成例を説明する。
図4は、この実施形態に係る駆動装置の他の構成例を示す説明図である。この駆動装置10aは、上記駆動装置10(図1参照)とほぼ同様の構成であるが、この駆動装置10aが備える遊星歯車装置3aは、いわゆるダブルピニオン式である点が異なる。遊星歯車装置3aは、リングギヤ3Raと、キャリア3Caと、サンギヤ3Saとを回転要素として有しており、サンギヤ3Saとリングギヤ3Raとの間に、サンギヤ3Saの周りを公転する一対のピニオンギヤ3P1、3P2を備える。また、この遊星歯車装置3aにおいては、キャリア3Cが第1回転要素に相当し、リングギヤ3Rが第2回転要素に相当し、また、サンギヤ3Sが第3回転要素に相当する。
この駆動装置10aでは、第1駆動軸6RのトルクTR及び第2駆動軸6LのトルクTLを、それぞれ式(3)、式(4)のように表すことができる。
TR=gR×(1+ρ/(1−ρ))×Tm1・・(3)
TL=gL×(Tm2−ρ/(1−ρ)×Tm1)・・(4)
この駆動装置10aは、第1駆動輪7R、第2駆動輪7Lの駆動力を制御する際には、第1モータ1あるいは第2モータ2が力行となる結果、電力を回生することはないので、エネルギーの利用効率が向上する。
ここで、Tm1は第1モータ1のトルクであり、Tm2は第2モータ2のトルクである。gRは第1モータ1から第1駆動軸6Rまでの変速比であり、gLは第2モータ2から第2駆動軸6Lまでの変速比である。また、ρは遊星歯車装置3aのサンギヤ−リングギヤ間の変速比であり、サンギヤ3Saの歯数/リングギヤ3Raの歯数となる。ダブルピニオン式の遊星歯車装置3aを用いると、変速比ρを小さくすることにより、第1モータ1のトルクTm1を小さくすることができるという利点がある。次に、この実施形態に係る駆動力配分制御装置30の構成を説明する。
図5は、この実施形態に係る駆動力配分制御装置の構成を示す概念図である。図5に示すように、駆動力配分制御装置30は、ECU50に組み込まれて構成されている。ECU50は、CPU(Central Processing Unit:中央演算装置)50pと、記憶部50mと、入力及び出力ポート55、56と、入力及び出力インターフェース57、58とから構成される。
なお、ECU50とは別個に、この実施形態に係る駆動力配分制御装置30を用意し、これをECU50に接続してもよい。そして、この実施形態に係る内燃機関の始動制御を実現するにあたっては、車両100を走行させるにあたって、ECU50が備えている第1モータ1や第2モータ2に対する制御機能を、前記駆動力配分制御装置30が利用できるように構成してもよい。
駆動力配分制御装置30は、スリップ判定部31と、駆動力演算部32と、駆動力制御部33とを含んで構成される。これらが、この実施形態に係る内燃機関の始動制御を実行する部分となる。この実施形態において、駆動力配分制御装置30は、ECU50を構成するCPU50pの一部として構成される。CPU50pと、記憶部50mとは、バス541〜543を介して、入力ポート55及び出力ポート56を介して接続される。
これにより、駆動力配分制御装置30を構成するスリップ判定部31と駆動力演算部32と駆動力制御部33とは、相互に制御データをやり取りしたり、一方に命令を出したりできるように構成される。また、駆動力配分制御装置30は、ECU50が有する第1モータ1及び第2モータ2の運転制御データを取得し、これを利用することができる。また、駆動力配分制御装置30は、この実施形態に係る駆動力配分制御を、ECU50が予め備えている運転制御ルーチンに割り込ませたりすることができる。
入力ポート55には、入力インターフェース57が接続されている。入力インターフェース57には、第1レゾルバ41、第2レゾルバ42、第1駆動輪回転数センサ43R、第2駆動輪回転数センサ43L、加速度センサ44、車速センサ45その他の、駆動装置10の制御に必要な情報を取得するセンサ類が接続されている。これらのセンサ類から出力される信号は、入力インターフェース57内のA/Dコンバータ57aやディジタルバッファ57dにより、CPU50pが利用できる信号に変換されて入力ポート55へ送られる。これにより、CPU50pは、第1モータ1及び第2モータ2の運転制御や、この実施形態に係る駆動力配分制御に必要な情報を取得することができる。
出力ポート56には、出力インターフェース58が接続されている。出力インターフェース58には、第1モータ1、第2モータ2その他の、駆動力配分制御における制御対象が接続されている。出力インターフェース58は、制御回路581、582等を備えており、CPU50pで演算された制御信号に基づき、前記制御対象を動作させる。このような構成により、前記センサ類からの出力信号に基づき、ECU50のCPU50pは、第1駆動輪7Rの駆動力及び第2駆動輪7Lの駆動力を制御することができる。
記憶部50mには、この実施形態に係る駆動力配分制御の処理手順を含むコンピュータプログラムや制御マップ、あるいはこの実施形態に係る駆動力配分制御に用いる、制御データマップ等が格納されている。ここで、記憶部50mは、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。
上記コンピュータプログラムは、CPU50pへ既に記録されているコンピュータプログラムと組み合わせによって、この実施形態に係る駆動力配分制御の処理手順を実現できるものであってもよい。また、この駆動力配分制御装置30は、前記コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアを用いて、スリップ判定部31、駆動力演算部32及び駆動力制御部33との機能を実現するものであってもよい。次に、この実施形態に係る駆動力配分制御を説明する。次の説明では、適宜図1〜図3、図5を参照されたい。
図6は、この実施形態に係る駆動力配分制御の手順を示すフローチャートである。この駆動力配分制御は、上記駆動力配分制御装置30によって実現できる。ここで、駆動力配分制御とは、左右の駆動輪、前後の駆動輪又は前後左右の駆動輪において、車両の走行条件等に応じてそれぞれの駆動輪の駆動力を変化させる制御をいう。この実施形態においては、駆動装置10の第1駆動輪(車両100の右側駆動輪)7Rと第2駆動輪(車両100の左側駆動輪)7Lとの間で駆動力配分制御を実行する。
この実施形態に係る駆動力配分制御を実行するにあたり、この実施形態に係る駆動力配分制御装置30(図5)のスリップ判定部31は、第1モータ1の回転数(第1モータ回転数)Nm1、第2モータ2の回転数(第2モータ回転数)Nm2、車両100の前後方向における加速度(車両加速度)Gxを取得する(ステップS101)。ここで、第1モータ回転数Nm1は第1レゾルバ41から、第2モータ回転数Nm2は第2レゾルバ42から、車両加速度Gxは加速度センサ44から取得する(図1、図4参照)。また、第1モータ回転数Nm1及び第2モータ回転数Nm2は、単位時間あたりにおける回転数であり、回転速度を表す。なお、第1モータ回転数Nm1はサンギヤ3Sの回転数(サンギヤ回転数)と等しく、第2モータ回転数Nm2は、リングギヤ3Rの回転数(リングギヤ回転数)と等しい。
スリップ判定部31は、ステップS101で取得したNm1、Nm2を用いて遊星歯車装置3のキャリア3Cの回転数(キャリア回転数)Ncを計算する(ステップS102)。ここで、キャリア回転数Ncは、式(5)で求めることができる。
Nc=(Nm1−Nm2)×ρ/(1+ρ)+Nm2・・(5)
スリップ判定部31は、ステップS101で取得したGx、Nm2(又はNm1)及びステップS102で計算したNcを用いて、推定車体速度Nveh(この実施形態では駆動軸の回転数に換算している)を求める(ステップS103)。次にスリップ判定部31は、第1駆動輪7Rの回転数(第1駆動輪回転数)と推定車体速度との偏差(第1駆動輪回転数偏差)ΔNr、第2駆動輪7Lの回転数(第2駆動輪回転数)と推定車体速度との偏差(第2駆動輪回転数偏差)ΔNl、第1モータ1の回転加速度(第1モータ回転加速度)ΔNm1を計算する(ステップS104)。この際には、ステップS101で取得したNm2、ステップS102で計算したNc、ステップS103で計算したNvehを用いる。なお、第1モータ回転加速度ΔNm1は、サンギヤ3Sの回転加速度である。
ここで、第1駆動輪回転数偏差ΔNrは式(6)で、第2駆動輪回転数偏差ΔNlは式(7)で、第1モータ回転加速度ΔNm1は式(8)で求めることができる。
ΔNr=Nc×gR−Nveh・・(6)
ΔNl=Nm2×gL−Nveh・・(7)
ΔNm1=(Nm1n−Nm1n-1)/(tn−tn-1)・・(8)
ここで、式(8)のNm1nは、時刻tnにおける第1モータ回転数であり、Nm1n-1は、時刻tn-1における第1モータ回転数である。すなわち、第1モータ回転加速度ΔNm1は、第1モータ回転数Nm1の単位時間あたりにおける変化率である。
ΔNr、ΔNl、ΔNm1を求めたら(ステップS104)、スリップ判定部31は、ΔNrと予め定めた第1スリップ判定閾値N_slip1とを比較し、また、ΔNm1と予め定めた第1の閾値である第1モータ回転加速度閾値最大値ΔNm1_maxとを比較する(ステップS105)。ここで、ΔNm1_max>0である。
その結果、ΔNr≧N_slip1かつΔNm1≧ΔNm1_maxが成立する場合(ステップS105:Yes)、スリップ判定部31は、第1駆動輪7Rがスリップしていると判定する(ステップS106)。この判定結果を受けて、駆動力配分制御装置30は対応制御1へ移行する(ステップS107)。対応制御1については後述する。
ΔNr≧N_slip1かつΔNm1≧ΔNm1_maxが成立しない場合(ステップS105:No)、スリップ判定部31は、ΔNlと予め定めた第2スリップ判定閾値N_slip2とを比較し、また、ΔNm1と予め定めた第2の閾値である第1モータ回転加速度閾値最小値ΔNm1_minとを比較する(ステップS108)。ここで、ΔNm1_min<0である。なお、この実施形態では、ΔNm1_max=ΔNm1_minとしているが、路面のカント等を考慮して、ΔNm1_maxとΔNm1_minとを異ならせてもよい。また、この実施形態ではN_slip1=N_slip2としているが、前記理由からN_slip1とN_slip2とを異ならせてもよい。
ΔNl≧N_slip2かつΔNm1≦ΔNm1_minが成立する場合(ステップS108:Yes)、スリップ判定部31は、第2駆動輪7Lがスリップしていると判定する(ステップS109)。この判定結果を受けて、駆動力配分制御装置30は対応制御2へ移行する(ステップS110)。対応制御2については後述する。
ΔNl≧N_slip2かつΔNm1≦ΔNm1_minが成立しない場合(ステップS108:No)、スリップ判定部31は、ΔNr及びΔNlと、予め定めた第3スリップ判定閾値N_slip3とを比較する(ステップS111)。ここで、N_slip3>N_slip1かつN_slip3>N_slip2である。
ΔNr≧N_slip3又はΔNl≧N_slip3のいずれか一方が成立する場合(ステップS111:Yes)、スリップ判定部31は、第1駆動輪7R及び第2駆動輪7Lの両方がスリップしていると判定する(ステップS112)。この判定結果を受けて、駆動力配分制御装置30は対応制御3へ移行する(ステップS113)。対応制御3については後述する。ΔNr≧N_slip3又はΔNl≧N_slip3のいずれも成立しない場合(ステップS111:No)、スリップ判定部31は、第1駆動輪7R及び第2駆動輪7Lには、いずれもスリップが発生していないと判定する(ステップS114)。
なお、この実施形態に係る駆動力配分制御では、ステップS105、ステップS108における第1駆動輪7R又は第2駆動輪7Lのスリップの判定では、少なくとも第1モータ回転加速度ΔNm1を用いて、その大きさ(ΔNm1の絶対値)と方向とによってスリップしている駆動輪を判定すればよい。しかし、上述したように、第1モータ回転加速度ΔNm1に加え、第1駆動輪回転数偏差ΔNrあるいは第2駆動輪回転数偏差ΔNlの大きさも判定することにより、駆動輪のスリップを判定する際の精度を向上させることができる。
また、第1モータ回転加速度ΔNm1の絶対値を所定の閾値(例えば第1モータ回転加速度閾値最大値ΔNm1_maxの絶対値)と比較すれば、第1駆動輪7R又は第2駆動輪7Lのうち少なくとも一方にスリップが発生しているか否かを判定することができる。例えば、第1モータ回転加速度ΔNm1の絶対値が所定の閾値以上である場合には、第1駆動輪7R又は第2駆動輪7Lのうち少なくとも一方にスリップが発生していると判定することができる。
また、この実施形態に係る駆動力配分制御において、ステップS105、ステップS108で第1駆動輪7Rあるいは第2駆動輪7Lのスリップを判定するにあたっては、リングギヤ3Rの回転とサンギヤ3Sの回転とを用いてもよい。例えば、サンギヤ3Sの回転加速度(ΔNm1に相当)が第1の閾値(ΔNm1_max)以上である場合において、リングギヤ3Rの回転数が駆動力配分制御を実行する前後で一定であり、かつリングギヤ3Rの回転方向がサンギヤ3Sの回転方向と同じであれば(図3参照)、キャリア3C、すなわち第1駆動輪7Rがスリップしていると判定する。
また、例えば、サンギヤ3Sの回転加速度(ΔNm1に相当)が第2の閾値(ΔNm1_min)以下である場合において、リングギヤ3Rの回転数が駆動力配分制御を実行する前後で一定であり、かつリングギヤ3Rの回転数が駆動力配分制御を実行する前後で増加すれば(図3参照)、リングギヤ3R、すなわち第2駆動輪7Lがスリップしていると判定する。次に、上述した対応制御1〜3の手順を説明する。
(対応制御1)
図7は、対応制御1の手順を示すフローチャートである。対応制御1は、第1駆動輪7Rがスリップした場合に、第1駆動輪7Rをスリップから回復させる、すなわち、第1駆動輪7Rをグリップ状態とするための制御である。対応制御1を実行するにあたり、駆動力配分制御装置30の駆動力演算部32は、駆動輪のスリップを判定したときに用いたTRとGxとから推定する、第1駆動輪7Rの摩擦係数の最大値(第1駆動輪推定摩擦係数最大値)μr_maxを求める(ステップS201)。なお、TR及びGxは、第1駆動輪7Rにスリップが発生したと判定されたときの値を用いる。そして、スリップ発生時のGxから第1駆動輪7Rの垂直荷重を推定し、スリップ発生時のTRと推定した第1駆動輪7Rの垂直荷重とに基づいて、第1駆動輪推定摩擦係数最大値μr_maxを推定する。
また、駆動力演算部32は、第2駆動輪7Lに必要な摩擦係数の最大値(第2駆動輪必要摩擦係数最大値)μl_n、第2駆動輪7Lの摩擦係数の最大値(第2駆動輪推定摩擦係数最大値)μl_maxを計算する(ステップS202)。ここで、ステップS201、S202の順序は問わない。なお、μl_nは式(9)で求めることができる。
μl_n=gL×(Tm2−α×μr_max×Fzr×R_tire/(gR×(1+1/ρ)×ρ))/(R_tire×Fzl)・・(9)
ここで、αは駆動力低下係数でありα<1である。また、Fzrは第1駆動輪の垂直荷重(第1駆動輪垂直荷重)であり、Fzlは第2駆動輪の垂直荷重(第2駆動輪垂直荷重)であり、R_tireは第1駆動輪7R及び第2駆動輪7Lの有効半径(駆動輪有効半径)である。なお、第1駆動輪7Rの有効半径と第2駆動輪7Lの有効半径とは同じ値である。
駆動力低下係数αは、スリップした駆動輪のグリップを回復させるために、スリップした駆動輪に与える駆動力(トルク)を、スリップ時における摩擦係数の最大値(推定値)を発生する駆動力(トルク)から、どの程度低下させればよいかを表す係数である。駆動力低下係数αは、駆動輪のスリップ量や車両100の速度(車速)等に応じて変更してもよい。これによって、スリップから回復させるための制御の精度を向上させることができるので、より迅速にスリップから回復させることができる。なお、第2駆動輪推定摩擦係数最大値μl_maxは、車両100の発進時における初期スリップでは推定できないので、1近傍に設定する。ただし、対応制御1の直前にμl_maxを推定した値があれば、それを用いてもよい。
次に、駆動力演算部32は、第2駆動輪必要摩擦係数最大値μl_nと第2駆動輪推定摩擦係数最大値μl_maxとを比較する(ステップS203)。μl_n≦μl_maxである場合(ステップS203:No)、第1モータ1の駆動力を低減することにより、スリップが発生している第1駆動輪7Rの駆動力を低減して、第1駆動輪7Rをスリップから回復させる。この実施形態では、第1モータ1の駆動力(より具体的にはトルク)Tm1を、式(10)のように設定する(ステップS204)。
Tm1=α×μr_max×Fzr×R_tire/(gR×(1+1/ρ))・・(10)
なお、第2モータの駆動力(より具体的にはトルク)Tm2は、駆動力配分制御の前後で同じ値とする。
α<1なので、第1駆動輪7Rがスリップする前よりもTm1は小さくなる。これによって、式(1)から、第1駆動軸6Rのトルクは第1駆動輪7Rがスリップする前よりも小さくなるので、第1駆動軸6Rに取り付けられる第1駆動輪7Rの駆動力を、スリップが発生する前よりも小さくして、第1駆動輪7Rをスリップから回復させることができる。駆動力制御部33は、ステップS204で決定された駆動力となるように、第1モータ1を制御する(ステップS205)。これによって、第1駆動輪7Rをスリップから回復させることができる。
第2駆動輪推定摩擦係数最大値μl_maxは、第2駆動輪7Lと路面との間で発生できる摩擦係数の最大値である。また、第2駆動輪必要摩擦係数最大値μl_nは、式(2)によって決定される第2駆動軸6Lの駆動力(トルク)で第2駆動輪7Lを駆動するときに必要な、第2駆動輪7Lと路面との間の必要摩擦係数である。そして、第2駆動輪必要摩擦係数最大値μl_nは、式(2)で決定される第2駆動軸6Lの駆動力(トルク)で第2駆動輪7Lを駆動するときにおける第2駆動輪7Lの駆動力と、第2駆動輪7Lの垂直荷重とから定まる。
したがって、μl_n>μl_maxである場合は(ステップS203:Yes)、第2駆動輪7Lにもスリップが発生すると予測される。すなわち、第1駆動輪7Rのスリップを抑えるために第1モータ1の駆動力を制御することによって、スリップが発生していない第2駆動輪7L(すなわち、スリップが発生した駆動輪とは異なる駆動輪)にもスリップが発生すると予測される。
この場合、第1モータ1の駆動力の低減に加え、さらに第2モータ2の駆動力も低減することにより、第2駆動輪7Lのスリップ発生を抑えつつ、スリップが発生している第1駆動輪7Rの駆動力を低減して、第1駆動輪7Rをスリップから回復させる。この実施形態では、駆動力演算部32が、第1モータ1の駆動力(より具体的にはトルク)Tm1を式(11)のように設定し、また、第2モータ2の駆動力(より具体的にはトルク)Tm2を式(12)のように設定する(ステップS206)。
Tm1=α×μr_max×Fzr×R_tire/(gR×(1+1/ρ))・・(11)
Tm2=μl_max×Fzl×R_tire/gL+α×μr_max×Fzr×R_tire/(gR×(1+1/ρ)×ρ)・・(12)
駆動力制御部33は、ステップS206で決定された駆動力となるように、第1モータ1及び第2モータ2を制御する(ステップS207)。これによって第2駆動輪7Lのスリップ発生を抑えつつ、第1駆動輪7Rをスリップから回復させることができる。
(対応制御2)
図8は、対応制御2の手順を示すフローチャートである。対応制御2は、第2駆動輪7Lがスリップした場合に、第2駆動輪7Lをスリップから回復させる、すなわち、第2駆動輪7Lをグリップ状態とするための制御である。対応制御2を実行するにあたり、駆動力配分制御装置30の駆動力演算部32は、駆動輪のスリップを判定したときに用いたTLとGxとから推定される第2駆動輪7Lの摩擦係数の最大値(第2駆動輪必要摩擦係数最大値)μl_maxを求める(ステップS301)。なお、TL及びGxは、第2駆動輪7Lにスリップが発生したと判定されたときの値を用いる。そして、スリップ発生時のGxから第2駆動輪7Lの垂直荷重を推定し、スリップ発生時のTLと推定した第2駆動輪7Lの垂直荷重とに基づいて、第2駆動輪推定摩擦係数最大値μl_maxを推定する。
また、駆動力演算部32は、第1駆動輪7Rに必要な摩擦係数の最大値(第1駆動輪必要摩擦係数最大値)μr_n、第1駆動輪7Rの摩擦係数の最大値(第1駆動輪推定摩擦係数最大値)μr_maxを計算する(ステップS302)。なお、μr_nは式(13)で求めることができる。
μr_n=gR×((1+1/ρ)×ρ×(α×μl_max×Fzl×R_tire/gL−Tm2))/(R_tire×Fzr)・・(13)
なお、第1駆動輪推定摩擦係数最大値μr_maxは、車両100の発進時における初期スリップでは推定できないので、1近傍に設定する。ただし、対応制御1の直前にμr_maxを推定した値があれば、それを用いてもよい。
次に、駆動力演算部32は、第1駆動輪必要摩擦係数最大値μr_nと第1駆動輪推定摩擦係数最大値μr_maxとを比較する(ステップS303)。μr_n≦μr_maxである場合(ステップS303:No)、第1モータ1の駆動力を低減することにより、スリップが発生している第2駆動輪7Lの駆動力を低減して、第2駆動輪7Lをスリップから回復させる。この実施形態では、第1モータ1の駆動力(より具体的にはトルク)Tm1を、式(14)のように設定する(ステップS304)。
Tm1=ρ×(α×μl_max×Fzl×R_tire/gL−Tm1)・・(14)
α<1なので、第2駆動輪7Lがスリップする前よりもTm1は小さくなる。これによって、式(2)から、第2駆動軸6Lのトルクは第2駆動輪7Lがスリップする前よりも小さくなるので、第2駆動軸6Lに取り付けられる第2駆動輪7Lの駆動力を、スリップが発生する前よりも小さくして、第2駆動輪7Lをスリップから回復させることができる。駆動力制御部33は、ステップS304で決定された駆動力となるように、第1モータ1を制御する(ステップS305)。これによって、第2駆動輪7Lをスリップから回復させることができる。
第1駆動輪推定摩擦係数最大値μr_maxは、第1駆動輪7Rと路面との間で発生できる摩擦係数の最大値である。また、第1駆動輪必要摩擦係数最大値μr_nは、式(1)で決定される第1駆動軸6Rの駆動力(トルク)で第1駆動輪7Rを駆動するときに必要な、第1駆動輪7Rと路面との間の必要摩擦係数である。そして、第1駆動輪必要摩擦係数最大値μr_nは、式(1)で決定される第1駆動軸6Rの駆動力(トルク)で第1駆動輪7Rを駆動するときにおける第1駆動輪7Rの駆動力と、第1駆動輪7Rの垂直荷重とから定まる。
したがって、μr_n>μr_maxである場合は(ステップS303:Yes)、第1駆動輪7Rにもスリップが発生すると予測される。すなわち、第2駆動輪7Lのスリップを抑えるために第1モータ1の駆動力を制御することによって、スリップが発生していない第1駆動輪7R(すなわち、スリップが発生した駆動輪とは異なる駆動輪)にもスリップが発生すると予測される。
この場合、第1モータ1の駆動力の低減に加え、さらに第2モータ2の駆動力も低減することにより、第1駆動輪7Rのスリップ発生を抑えつつ、スリップが発生している第2駆動輪7Lの駆動力を低減して、第2駆動輪7Lをスリップから回復させる。この実施形態では、駆動力演算部32が、第1モータ1の駆動力(より具体的にはトルク)Tm1を式(15)のように設定し、また、第2モータ2の駆動力(より具体的にはトルク)Tm2を式(16)のように設定する(ステップS306)。
Tm1=μr_max×Fzr×R_tire/(gR×(1+1/ρ))・・(15)
Tm2=α×μl_max×Fzl×R_tire/gL+μr_max×Fzr×R_tire/(gR×(1+1/ρ)×ρ)・・(16)
駆動力制御部33は、ステップS305で決定された駆動力となるように、第1モータ1及び第2モータ2を制御する(ステップS307)。これによって第1駆動輪7Rのスリップ発生を抑えつつ、第2駆動輪7Lをスリップから回復させることができる。
(対応制御3)
図9は、対応制御3の手順を示すフローチャートである。対応制御3は、第1駆動輪7R及び第2駆動輪7Lの両方がスリップした場合に、第1駆動輪7R及び第2駆動輪7Lの両方をスリップから回復させる、すなわち、第1駆動輪7R及び第2駆動輪7Lの両方をグリップ状態とするための制御である。対応制御3を実行するにあたり、駆動力配分制御装置30の駆動力演算部32は、両輪にスリップが発生したときのTR、TL及びGxから推定される第1駆動輪7R及び第2駆動輪7Lの摩擦係数の最大値(両駆動輪摩擦係数最大値)μ_maxを求める(ステップS401)。
両駆動輪摩擦係数最大値μ_maxは、例えば、両輪にスリップが発生したときのTR、TL及びGxを用いてそれぞれ求めた、第1駆動輪推定摩擦係数最大値μr_maxと第2駆動輪推定摩擦係数最大値μl_maxとの平均値とすることができる。また、第1駆動輪推定摩擦係数最大値μr_maxと、第2駆動輪推定摩擦係数最大値μl_maxとが異なる場合、それぞれの値を用いて、第1モータ1の駆動力(より具体的にはトルク)Tm1及び第2モータ2の駆動力(より具体的にはトルク)Tm2を設定してもよい。
両駆動輪摩擦係数最大値μ_maxを求めたら、第1モータ1の駆動力及び第2モータ2の駆動力の両方を低減することにより、第1駆動輪7R及び第2駆動輪7Lをスリップから回復させる。この実施形態では、駆動力演算部32が、第1モータ1の駆動力(より具体的にはトルク)Tm1を式(17)のように設定し、また、第2モータ2の駆動力(より具体的にはトルク)Tm2を式(18)のように設定する(ステップS402)。
Tm1=α×μ_max×Fzr×R_tire/(gR×(1+1/ρ))・・(17)
Tm2=α×μ_max×R_tire×(Fzl/gL+Fzr/(gR×(1+1/ρ)×ρ)・・(18)
駆動力制御部33は、ステップS402で決定された駆動力となるように、第1モータ1及び第2モータ2を制御する(ステップS403)。これによって第1駆動輪7R及び第2駆動輪7Lをスリップから回復させることができる。
以上、この実施形態では、第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素を備える遊星歯車装置で動力分配機構を構成し、かつ、第1回転要素に第1の駆動力発生手段が発生する駆動力を入力するとともに、第2回転要素から第1の駆動輪に対して、また第3回転要素から第2の駆動輪に対して、入力した前記駆動力を分割して出力する。また、第2の駆動力発生手段の出力軸は第3回転要素に連結されるとともに、第2の駆動力発生手段が発生する駆動力は、第2の駆動輪に出力される。このような構成で、記第1回転要素の回転加速度の絶対値が所定の閾値以上である場合は、第1の駆動輪又は第2の駆動輪の少なくとも一方にスリップが発生していると判定する。これによって、スリップにより増加した駆動輪の回転数を、動力分配機構の第1回転要素で増幅して検出することができるので、駆動輪のスリップの検出精度を向上させることができる。
以上のように、本発明に係る駆動装置は、駆動輪のスリップを検出する際に有用であり、特に、駆動輪のスリップの検出精度を向上させることに適している。
この実施形態に係る駆動装置の構成を示す説明図である。 この実施形態に係る駆動装置を車両に搭載した例を示す概略図である。 この実施形態に係る駆動装置が備える遊星歯車装置の共線図である。 この実施形態に係る駆動装置の他の構成例を示す説明図である。 この実施形態に係る駆動力配分制御装置の構成を示す概念図である。 この実施形態に係る駆動力配分制御の手順を示すフローチャートである。 対応制御1の手順を示すフローチャートである。 対応制御2の手順を示すフローチャートである。 対応制御3の手順を示すフローチャートである。
符号の説明
1 第1モータ
1S 出力軸
2 第2モータ
2S 出力軸
3、3a 遊星歯車装置
3C、3Ca キャリア
3R、3Ra リングギヤ
3S、3Sa サンギヤ
4R 第1伝達ギヤ
4L 第2伝達ギヤ
5R 第1駆動軸側ギヤ
5L 第2駆動軸側ギヤ
6R 第1駆動軸
6L 第2駆動軸
7R 第1駆動輪
7L 第2駆動輪
10、10a 駆動装置
30 駆動力配分制御装置
31 スリップ判定部
32 駆動力演算部
33 駆動力制御部
41 第1レゾルバ
42 第2レゾルバ
43R 第1駆動輪回転数センサ
43L 第2駆動輪回転数センサ
44 加速度センサ
45 車速センサ
100 車両

Claims (10)

  1. 第1の駆動力発生手段と、
    第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素を備え、かつ、前記第1回転要素に前記第1の駆動力発生手段が発生する駆動力を入力するとともに、前記第2回転要素から第1の駆動輪に対して、また前記第3回転要素から第2の駆動輪に対して、入力した前記駆動力を分割してそれぞれ出力する動力分配機構と、
    前記第3回転要素に出力軸が接続されるとともに、前記第2の駆動輪に対して駆動力を伝達する第2の駆動力発生手段と、を含み、
    前記第1の駆動輪の回転数又は前記第2の駆動輪の回転数を前記第1の回転要素によって増幅するとともに、前記第1回転要素の回転加速度の絶対値が所定の閾値以上である場合は、前記第1の駆動輪又は前記第2の駆動輪の少なくとも一方にスリップが発生していると判定することを特徴とする駆動装置。
  2. 第1の駆動力発生手段と、
    第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素を備え、かつ、前記第1回転要素に前記第1の駆動力発生手段が発生する駆動力を入力するとともに、前記第2回転要素から第1の駆動輪に対して、また前記第3回転要素から第2の駆動輪に対して、入力した前記駆動力を分割してそれぞれ出力する動力分配機構と、
    前記第3回転要素に出力軸が接続されるとともに、前記第2の駆動輪に対して駆動力を伝達する第2の駆動力発生手段と、を含み、
    前記第1回転要素の回転加速度の絶対値が所定の閾値以上である場合、かつ前記第1回転要素の回転方向が、予め定めた第1の回転方向である場合には、前記第1の駆動輪にスリップが発生していると判定することを特徴とする駆動装置。
  3. 前記第1回転要素の回転方向が、前記第1の回転方向とは反対方向となる第2の回転方向である場合には、前記第2の駆動輪にスリップが発生していると判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動装置。
  4. 第1の駆動力発生手段と、
    第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素を備え、かつ、前記第1回転要素に前記第1の駆動力発生手段が発生する駆動力を入力するとともに、前記第2回転要素から第1の駆動輪に対して、また前記第3回転要素から第2の駆動輪に対して、入力した前記駆動力を分割してそれぞれ出力する動力分配機構と、
    前記第3回転要素に出力軸が接続されるとともに、前記第2の駆動輪に対して駆動力を伝達する第2の駆動力発生手段と、を含み、
    前記第1回転要素の回転加速度が、正の値として設定される第1の閾値以上である場合には、前記第1の駆動輪にスリップが発生していると判定し、
    また、前記第1回転要素の回転加速度が、負の値として設定される第2の閾値以下である場合には、前記第2の駆動輪にスリップが発生していると判定することを特徴とする駆動装置。
  5. 第1の駆動力発生手段と、
    第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素を備え、かつ、前記第1回転要素に前記第1の駆動力発生手段が発生する駆動力を入力するとともに、前記第2回転要素から第1の駆動輪に対して、また前記第3回転要素から第2の駆動輪に対して、入力した前記駆動力を分割してそれぞれ出力する動力分配機構と、
    前記第3回転要素に出力軸が接続されるとともに、前記第2の駆動輪に対して駆動力を伝達する第2の駆動力発生手段と、を含み、
    前記第1回転要素の回転加速度の絶対値が所定の閾値以上である場合は、前記第1の駆動輪又は前記第2の駆動輪の少なくとも一方にスリップが発生していると判定し、
    前記第1駆動輪又は前記第2駆動輪の少なくとも一方にスリップが発生していると判定された場合には、
    前記第1の駆動力発生手段は前記第1の駆動力を調整して、スリップが発生したと判定された駆動輪に付与する駆動力を低減することを特徴とする駆動装置。
  6. 前記第1駆動輪又は前記第2駆動輪の少なくとも一方にスリップが発生していると判定された場合には、
    前記第1の駆動力発生手段は前記第1の駆動力を調整して、スリップが発生したと判定された駆動輪に付与する駆動力を低減することを特徴とする請求項〜4のいずれか1項に記載の駆動装置。
  7. 前記第1の駆動力発生手段の駆動力を調整することに起因して、スリップが発生したと判定された駆動輪とは異なる駆動軸にスリップが発生すると予測される場合には、
    さらに前記第2の駆動力発生手段は前記第2の駆動力を調整することを特徴とする請求項5又は6に記載の駆動装置。
  8. 前記第1の駆動力発生手段の駆動力を調整することにより、
    スリップが発生したと判定された駆動輪とは異なる駆動輪へ付与される駆動力に基づいて算出される必要摩擦係数が所定値よりも大きい場合に、スリップが発生したと判定された駆動輪とは異なる駆動輪にスリップが発生すると判定し、
    前記必要摩擦係数は、
    前記第1の駆動力発生手段のトルクと、前記第2の駆動力発生手段のトルクと、前記第1の駆動力発生手段から前記第1駆動軸までの変速比と、前記第2の駆動力発生手段から前記第2駆動軸までの変速比と、前記動力分配機構の変速比とに基づいて決定される駆動力で前記第1の駆動輪又は前記第2の駆動輪を駆動するときに必要な、前記第1の駆動輪又は前記第2の駆動輪と路面との間の摩擦係数であることを特徴とする請求項6に記載の駆動装置。
  9. 前記動力分配機構は、シングルピニオン式の遊星歯車装置であって、
    前記第1回転要素はサンギヤであり、前記第2回転要素はキャリアであり、前記第3回転要素はリングギヤであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の駆動装置。
  10. 前記動力分配機構は、ダブルピニオン式の遊星歯車装置であって、
    前記第1回転要素はキャリアであり、前記第2回転要素はリングギヤであり、前記第3回転要素はサンギヤであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の駆動装置。
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