本発明のインクジェット記録装置は、インクを吐出する複数のノズルが形成されたインク吐出面を有するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドの上方から前記インクジェットヘッドの内部にインクを供給するインク流入流路と、前記インク流入流路を開閉することが可能な連通弁と、環状突起によって画定された凹部が形成されたキャップと、前記環状突起が前記インク吐出面に当接することによって前記インク吐出面と前記キャップとの間に閉鎖空間が形成される位置と、前記環状突起が前記インク吐出面から離隔して前記閉鎖空間が解消される位置とのいずれかに、前記キャップを変位させるキャッピング駆動機構と、前記閉鎖空間を減圧する減圧手段と、前記インク吐出面を払拭するためのワイパーと、前記インク吐出面に付着したインクが前記ワイパーによって除去されるように前記ワイパー及び前記インクジェットヘッドの少なくともいずれか一方を移動させるワイピング駆動機構とを備えている。そして、前記キャップが前記インク吐出面に当接するように前記キャッピング駆動機構を制御する第1のキャッピング制御手段と、前記第1のキャッピング制御手段により前記キャップが前記インク吐出面に当接すると、前記連通弁が開かれた状態において少なくとも前記ノズルからインクが排出され始めるまで前記減圧手段によって前記閉鎖空間を減圧してから前記減圧手段による減圧動作を停止させる閉鎖空間減圧制御手段と、前記閉鎖空間の気圧が前記ノズル内にインクが引き込まれない気圧となっている間に、前記連通弁を閉じる弁閉鎖制御手段と、前記弁閉鎖制御手段が前記連通弁を閉じると、前記キャップが前記インク吐出面から離隔されるように前記キャッピング駆動機構を制御するアンキャッピング制御手段と、前記アンキャッピング制御手段によって前記キャップが前記インク吐出面から離隔されると、前記インク吐出面に付着したインクを除去するために前記ワイパー及び前記インクジェットヘッドのいずれか一方を移動させるように前記ワイピング駆動機構を制御するワイピング制御手段と、前記インク吐出面に付着したインクが前記ワイパーによって除去されると、前記連通弁を開く弁開放制御手段とをさらに備えている。
本発明のインクジェット記録装置の駆動方法は、インクを吐出する複数のノズルが形成されたインク吐出面を有するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドの上方から前記インクジェットヘッドの内部にインクを供給するインク流入流路と、前記インク流入流路を開閉することが可能な連通弁と、環状突起によって画定された凹部が形成されたキャップと、前記環状突起が前記インク吐出面に当接することによって前記インク吐出面と前記キャップとの間に閉鎖空間が形成される位置と、前記環状突起が前記インク吐出面から離隔して前記閉鎖空間が解消される位置とのいずれかに、前記キャップを変位させるキャッピング駆動機構と、前記インク吐出面を払拭するためのワイパーと、前記インク吐出面に付着したインクが前記ワイパーによって除去されるように前記ワイパー及び前記インクジェットヘッドの少なくともいずれか一方を移動させるワイピング駆動機構とを備えたインクジェット記録装置の駆動方法において、前記キャップが前記インク吐出面に当接するように前記キャッピング駆動機構を制御する第1のキャッピング工程と、前記第1のキャッピング工程において前記キャップが前記インク吐出面に当接した後に、前記連通弁が開かれた状態において少なくとも前記ノズルからインクが排出され始めるまで前記閉鎖空間を減圧してから減圧動作を停止させる閉鎖空間減圧工程と、前記閉鎖空間の気圧が前記ノズル内にインクが引き込まれない気圧となっている間に、前記連通弁を閉じる弁閉鎖工程とを備えている。そして、前記弁閉鎖工程において前記連通弁が閉じられた後に、前記キャップが前記インク吐出面から離隔されるように前記キャッピング駆動機構を制御するアンキャッピング工程と、前記アンキャッピング工程において前記キャップが前記インク吐出面から離隔された後に、前記インク吐出面に付着したインクを除去するために前記ワイパー及び前記インクジェットヘッドのいずれか一方を移動させるように前記ワイピング駆動機構を制御するワイピング工程と、前記インク吐出面に付着したインクが前記ワイパーによって除去された後に、前記連通弁を開く弁開放工程とをさらに備えている。
これによると、パージ時の減圧によって閉鎖空間の気圧がノズル内にインクが引き込まれない気圧となっている間に連通弁が閉じられるので、その後にインク吐出面における気圧が大気圧まで上昇したとしても、インクの流動が規制された状態となる。つまり、インクには、ノズル内にインクを引き込もうとする圧力が働かなくなる。そのため、パージ時にインク吐出面に付着した気泡混在インクがノズルからインクジェットヘッド内に引き込まれにくくなる。
本発明において、前記減圧手段による減圧動作が停止した時刻からの経過時間を計測する計時手段と、前記計時手段が計測した経過時間が、前記閉鎖空間の気圧が前記ノズル内にインクが引き込まれる気圧にまで上昇していない所定時間に達したか否かを判定する経過時間判定手段とをさらに備えている。そして、前記弁閉鎖制御手段は、前記計時手段が計測した経過時間が前記所定時間に達したと前記経過時間判定手段が判定すると、前記連通弁を閉じることが好ましい。
本発明において、前記弁閉鎖工程では、減圧動作が停止した時刻からの経過時間が、前記閉鎖空間の気圧が前記ノズル内にインクが引き込まれる気圧にまで上昇していない所定時間に達した時点で前記連通弁を閉じることが好ましい。
また、本発明において、前記弁開放制御手段が前記連通弁を開くと、前記複数のノズルからインクが予備吐出されるように前記インクジェットヘッドを制御する予備吐出制御手段と、前記複数のノズルからインクが予備吐出されると、前記キャップが前記インク吐出面に当接するように前記キャッピング駆動機構を制御する第2のキャッピング制御手段とをさらに備えていることが好ましい。
また、本発明において、前記弁開放工程において前記連通弁が開かれた後に、前記複数のノズルからインクが予備吐出されるように前記インクジェットヘッドを制御する予備吐出工程と、前記複数のノズルからインクが予備吐出された後に、前記キャップが前記インク吐出面に当接するように前記キャッピング駆動機構を制御する第2のキャッピング工程とをさらに備えていることが好ましい。
また、本発明において、前記キャップが、前記凹部内と外部とを連通させる大気開放通路と、前記大気開放通路を開閉することが可能な遮断弁とを含んでいる。そして、前記第1のキャッピング制御手段によって前記キャップが前記インク吐出面に当接する前に、前記遮断弁を開く遮断弁開放制御手段と、前記第1のキャッピング制御手段によって前記キャップが前記インク吐出面に当接すると、前記遮断弁を閉じる遮断弁閉鎖制御手段とをさらに備えていることが好ましい。
また、本発明において、前記キャップが、前記凹部内と外部とを連通させる大気開放通路と、前記大気開放通路を開閉することが可能な遮断弁とを含んでいる。そして、前記第1のキャッピング工程において前記キャップが前記インク吐出面に当接する前に、前記遮断弁を開く遮断弁開放工程と、前記第1のキャッピング工程において前記キャップが前記インク吐出面に当接した後に、前記遮断弁を閉じる遮断弁閉鎖工程とをさらに備えていることが好ましい。
これにより、閉鎖空間を形成した時点において閉鎖空間内を確実に大気圧とすることができる。そのため、閉鎖空間を形成したときに、ノズル内に空気が入り込みにくくなる。
また、本発明において、前記インクジェットヘッドの上方にインク室を有するバッファタンクが配置されており、前記インク流入流路が前記インク室と前記インクジェットヘッドとを接続していることが好ましい。
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるカラーインクジェットプリンタの内部構成を描いた概略斜視図である。図1において、カラーインクジェットプリンタ1内には、ヘッドユニット2が配置されている。ヘッドユニット2のホルダ3には、マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックの4色のインクを貯溜するバッファタンク4と4色のインクを吐出するインクジェットヘッド5(図2参照)とが固着されている。ホルダ3は、駆動機構10により直線方向(主走査方向)に往復移動するキャリッジ11に固着されている。記録媒体たる用紙Pを搬送する搬送手段としてのプラテンローラ18は、その軸線がキャリッジ11の往復移動方向に沿うように配置され、ヘッドユニット2と対向している。
キャリッジ11は、プラテンローラ18の支軸と平行に配設されるガイド軸12及びガイド板13によって摺動自在に支持されている。ガイド軸12の両端部の近傍には、プーリー14,15が支持され、これらプーリー14,15の間に無端ベルト16が架け渡されている。キャリッジ11は、この無端ベルト16の適宜の位置に固定されている。
このような駆動機構10の構成において、一方のプーリー14がモータ17の駆動により正逆回転すると、キャリッジ11がガイド軸12及びガイド板13に沿って直線方向(主走査方向)に往復移動するため、これに伴ってヘッドユニット2も往復移動する。
用紙Pは、インクジェットプリンタ1の側方に設けられた給紙カセット(図示せず)から給紙され、インクジェットヘッド5とプラテンローラ18との間の空間に導かれて、インクジェットヘッド5から吐出されるインクにより印刷が施された後に排紙される。なお、図1においては、用紙Pの給紙機構及び排紙機構の図示を省略している。
また、インクジェットプリンタ1内には、図1中左下方に示すパージ機構20が設けられている。パージ機構20は、パージキャップ21でインクジェットヘッド5のインク吐出面40a(図3参照)を覆ってインクジェットヘッド5の内部に溜まる気泡やゴミなどを含んだ不良インクを強制的に吸引して除去するためのものである。パージキャップ21は、カム22aが回転することで、インクジェットヘッド5のインク吐出面40aに対して垂直方向(上下方向)に移動する。
つまり、カム22aを回転させてインクジェットヘッド5の複数のノズル60(図5参照)をパージキャップ21で覆う。そして、インクジェットヘッド5の内部に溜まる気泡などを含んだ不良インクを、ポンプ23によって吸引し、廃インク溜め24へ廃棄することにより、インクジェットヘッド5の復旧を行うようにしている。
また、パージキャップ21に隣接した右側位置には、弁開閉機構34とワイピング機構37とが配置されている。弁開閉機構34は、4つのスライド棒35を含んでいる。各スライド棒35は、カム22bの回転によってパージキャップ21と同様に上下方向に移動し、後述の連通弁26を開状態又は閉状態にする。ワイピング機構37は、インク吐出面40aの副走査方向の長さと同じ長さに同方向に延在したワイパー36aとワイパー36aを上下方向に移動させる昇降部36bとを含んでいる。ワイパー36aは、ゴムなどの弾性材料から構成されており、昇降部36bによってスライド棒35と同様に上下方向に移動する。つまり、インクジェットヘッド5がワイパー36aに隣接する位置に配置されたときに、昇降部36bがワイパー36aをインク吐出面40aに当接可能な位置に移動させる。そして、ワイパー36aの先端を弾性変形させた状態で駆動機構10のモータ17を駆動してヘッドユニット2を一方向に移動させることで、インク吐出面40aに付着したインクを払拭することが可能になる。なお、ワイピング機構において、ワイパーが主走査方向に移動可能な機構が設けられていてもよい。この場合、ワイパーをインク吐出面に当接させつつ主走査方向に移動させることで、インク吐出面に付着したインクを払拭することができる。
一方、パージキャップ21に隣接した左側位置には、インク受容部25が配置されている。このインク受容部25は、ノズル60からインクを予備吐出するいわゆるフラッシング時に、キャリッジ11上のインクジェットヘッド5を主走査方向の左端まで移動させたときに、ちょうどインク吐出面40aと対向する位置に配置されている。これにより、フラッシングによってノズル60から予備吐出されたインクをインク受容部25にて受けることが可能になる。なお、インク受容部25で受け取ったインクは廃インク溜め24へ廃棄される。
図2は、図1に示すヘッドユニット2の分解斜視図である。図3は、図2のIII−III線における断面図である。図4は、図2のIV−IV線における断面図である。ヘッドユニット2は、図2に示すように、合成樹脂材料により箱状に形成されたホルダ3と、ホルダ3の底板3aの下面側にフレーム30を介して固着されたインクジェットヘッド5と、底板3aの上側に固定されたバッファタンク4とを備えている。
バッファタンク4には、図3に示すように、右方からマゼンタ、イエロー、シアン、ブラックのインクが順に貯溜された4つのインク室6が形成されている。インク室6は、図2に示すように、対応するチューブ29の一方の端部と接続されている。各チューブ29の他端部は、インクジェットヘッド5よりも下方位置に配置されたインクカートリッジ(図示せず)と接続されており、各色のインクがチューブ29を介してインク室6にそれぞれ供給されるようになっている。また、各インク室6内には、インクと共に所定量の空気も充填されており、ヘッドユニット2が往復移動したときに発生するインクの動圧を空気によるダンパー効果で吸収・減衰している。
バッファタンク4には、図2に示すように、一側面から主走査方向に突出した突出部4bが形成されている。突出部4b内には、4つの連通弁26がインク室6の延在方向(副走査方向)に沿って並設されている。図4に示すように、バッファタンク4の上蓋4aには、下方に向かって垂直に突出した隔壁4cが形成されている。隔壁4cは、各連通弁26をそれぞれ取り囲んでおり、隔壁4cと連通弁26との間には連通弁26に通じる通路8がそれぞれ形成されている。これら通路8は、図4に示すように、隔壁4cの先端近傍において各連通弁26と対応するインク室6とを連通している。
バッファタンク4の底部7には、図4に示すように、各インク室6と対向する位置にインク導出口7aと、各連通弁26と対向する位置に貫通孔7bとが形成されている。各貫通孔7bには、ゴム等から形成された弾性部材9がそれぞれ配置されており、各貫通孔7bを塞いでいる。弾性部材9の連通弁26と対向する位置には、押圧部材19が配置されている。弾性部材9において押圧部材19の両側には、上方に向かって開口した切り欠き9aと、下方に向かって開口した切り欠き9bとが形成されている。これら切り欠き9a,9bによって弾性部材9は上下方向に変形しやすくなっている。押圧部材19は、先端が丸まった円柱形状を有しており、弾性部材9から連通弁26に向かって凸となるように配置されている。各連通弁26の下端面と弾性部材9及び押圧部材19との間には、各インク導出口7aとそれぞれ連通する通路32が形成されている。これら通路32は、対応する連通弁26とそれぞれ連通している。このような構成より、バッファタンク4には、インク室6から通路8、連通弁26及び通路32を通ってインク導出口7aに至るインク流路(インク流入流路)がインク室6毎に構成されている。
フレーム30は、図2に示すように、平面矩形形状を有しており、中央領域に厚み方向に貫通した貫通部31が形成されている。このフレーム30には、後述するアクチュエータユニット42及びフレキシブルプリント回路(FPC:Flexible Printed Circuit)50の一部が貫通部31内に配置されるようにしてインクジェットヘッド5が固着されている。
インクジェットヘッド5は、それぞれの色ごとに複数のインク流路が形成された流路ユニット41と流路ユニット41の上面に接着されたアクチュエータユニット42とで構成されたヘッド本体40と、アクチュエータユニット42の上方に接合されたFPC50とを含んでいる。図2に示すように、流路ユニット41及びアクチュエータユニット42はともに、長方形平面形状を有しており、バッファタンク4の下方に配置されている。ヘッド本体40のインク吐出面40aには、複数のノズル60(図5参照)がヘッド本体40の延在方向(副走査方向)に沿って配列されている。そして、用紙Pの上面に対向するように各ノズル60が下向きにて形成されている。
流路ユニット41の上面には、図2に示すように、アクチュエータユニット42を避けて、平面形状が楕円形状の4つのインク供給口41aが形成されている。これら4つのインク供給口41aが形成された領域には、各インク供給口41aと対向する位置にフィルタ45(図5参照)が配置されている。こうして、インク供給口41aから流路ユニット41内に供給されるインク中のゴミなどがフィルタ45によって捕獲される。フレーム30には、フレーム30に形成された貫通孔33と流路ユニット41に形成されたインク供給口41aとがそれぞれ連なるようにして流路ユニット41が接着されている。
また、ホルダ3の底板3aには、図3に示すように、フレーム30の貫通孔33及びバッファタンク4のインク導出口7aと対向する位置に厚み方向に貫通した貫通部3bが形成されている。貫通部3b内には、弾性部材44が配置されている。弾性部材44には、バッファタンク4のインク導出口7aとそれぞれ対向する位置に4つの連通孔43が形成されている。弾性部材44は、バッファタンク4の取り付け穴38a,38bとフレーム30の取り付け穴39a,39bとにネジが通されて、バッファタンク4とフレーム30とが締着されることで、バッファタンク4とフレーム30との間で圧縮状態になり、インク導出口7aと貫通孔33との接続をシールする。このような構成により、バッファタンク4内のインクが、インク導出口7a、連通孔43及び貫通孔33を通ってそれぞれに対応する流路ユニット41のインク供給口41aから流路ユニット41内に供給される。また、ホルダの底板3aには、図4に示すように、弾性部材9とそれぞれ対向した位置に厚み方向に貫通した孔3cが形成されている。これら孔3cには、連通弁26を開又は閉状態に動作させるときにスライド棒35(図11参照)が挿入される。
アクチュエータユニット42の上面に接合されたFPC50は、図3に示すように、主走査方向の一方に引き出され、底板3aに形成された貫通部3d内を通されて上方に引き出されている。FPC50は、スポンジなどの弾性部材27を介してバッファタンク4の側面に沿うように引き出され、このFPC50上にドライバIC51が設置されている。一方で、FPC50は、ドライバIC51から出力された駆動信号をアクチュエータユニット42に伝達するように、半田付けによって電気的にアクチュエータユニット42に接合されている。
図3において、ホルダ3のドライバIC51に対向する側壁には、U字形状に曲げられたヒートシンク28が配置されている。ドライバIC51は、間にFPC50を挟んで弾性部材27によりヒートシンク28に対して押圧されている。このヒートシンク28により、ドライバIC51で発生した熱を効率的に散逸させることができる。
図5は、図2に示すインクジェットヘッド5の分解斜視図である。図5から分かるように、ヘッド本体40は、流路ユニット41とアクチュエータユニット42とを含んでいる。このうち、流路ユニット41は、上から、キャビティプレート81、サプライプレート82、アパーチャプレート83、2枚のマニホールドプレート84,85、ダンパプレート86、カバープレート87、ノズルプレート88の計8枚のシート材が積層された積層構造である。本実施の形態において、合成樹脂製のノズルプレート88を除き、各プレート81〜87は、ステンレス鋼からなる。
ノズルプレート88には、図5に示すように、微小径のノズル60が微小間隔で多数穿設されている。これらノズル60は、ノズルプレート88における長手方向に沿って千鳥配列状で5列に配列されている。
図5に示すように、キャビティプレート81の中央には、複数の圧力室46がキャビティプレート81の長手方向に沿って千鳥配列状で5列に穿設されている。また、キャビティプレート81の長手方向の一端部側には、インク供給口41aとなる4つの孔65がキャビティプレート81の短手方向に沿って離隔して形成されている。各圧力室46は、細幅で角が丸められた略矩形形状に形成されている。それら圧力室46の長手方向は、キャビティプレート81の長手方向に対して直交している。また、各圧力室46の一端部は、図5に示すように、サプライプレート82、アパーチャプレート83、2枚のマニホールドプレート84,85、ダンパプレート86及びカバープレート87に千鳥配列状で穿設されている微小径の貫通孔61を介して、ノズルプレート88におけるノズル60に連通している。
図5に示すように、2枚のマニホールドプレート84,85のうち、アパーチャプレート83に近い側のマニホールドプレート84には、5つのインク室半部70aが貫通状に形成されている。これら5つのインク室半部70aは、マニホールドプレート84の長手方向に沿って延在されつつ、マニホールドプレート84の短手方向に互いに離隔している。
一方、ダンパプレート86側のマニホールドプレート85にも、5つのインク室半部70aと同様の5つのインク室半部70bが貫通して形成されている。この構成で2枚のマニホールドプレート84,85、アパーチャプレート83及びダンパプレート86の計4枚を積層することにより、対向する2つのインク室半部70a,70bが相互に接合され、このときに形成される上下の開口が、上からのアパーチャプレート83と下からのダンパプレート86とにより覆われる。これにより、貫通孔61の列の間及び外側に計5つの共通インク室70が形成される。なお、各共通インク室70の一端部がインク供給口41aとそれぞれ対向している。
サプライプレート82には、複数の貫通孔61の他に、複数の連絡孔62が貫通して形成されている。これらの連絡孔62は、一方の開口において圧力室46と連通し、他方の開口において後述のアパーチャ63と連通している。さらに、複数の連絡孔62は、各圧力室46に対応してサプライプレート82の長手方向に沿って千鳥配列状で5列に配列されている。また、サプライプレート82には、長手方向の一端部側に4つの孔66を有している。これら孔66は、それぞれキャビティプレート81の4つの孔35と対向するように形成されている。
アパーチャプレート83には、複数の貫通孔61の他に、アパーチャプレート83の短手方向に沿って延在した略長方形平面形状のアパーチャ63が、アパーチャプレート83の長手方向に沿って千鳥配列状で5列に配列されている。アパーチャ63は、一端部において連絡孔62と連通し、他端部において共通インク室70と連通している。アパーチャ63は、インク流動方向と直交する方向の断面積が若干小さくなっており、インク吐出時に圧力室46から共通インク室70側に逆流しようとするインクの流れを制限するものである。また、アパーチャプレート83には、4つの孔65あるいは孔66とそれぞれ対向する位置に孔67が形成されている。各孔67は、一方の開口において孔66とそれぞれ連通し、他方の開口において対応する共通インク室70の一端側とそれぞれ連通している。
なお、4つの孔67のうち、図5中最も奥に位置する1つの孔67は、図5中奥の2つの共通インク室70と連通しており、他の3つの孔67は、図5中手前の3つの共通インク室70とそれぞれ連通している。つまり、5つの共通インク室70のうち、図5中奥に位置する2つの共通インク室70には、1つのインク供給口41aからのインクがそれぞれに供給され、他の3つの共通インク室70には、対応する1つのインク供給口41aからのインクがそれぞれに供給される。本実施の形態において、図5中奥の2つの共通インク室70には、ブラックのインクが供給され、図5中手前から奥に向かって配置する3つの共通インク室70には、マゼンタ、イエロー及びシアンの順にインクが供給されている。
ダンパプレート86には、図5に示すように5列のダンパ溝68が凹設されている。これらダンパ溝68は、カバープレート87に向けてのみ開放するように形成され、その位置及び形状は共通インク室70と同形状となっている。したがって、マニホールドプレート84,85及びダンパプレート86を接合したときは、ダンパプレート86の共通インク室70と対向する部分には、ダンパ部69が位置する。ここで、ダンパ部69は、適宜弾性変形し得るステンレス鋼に形成された凹部の底面として構成されているので、共通インク室70側及びダンパ溝68側に自由に振動することができる。このような構成により、インク吐出時に圧力室46で発生した圧力変動が共通インク室70に伝播しても、これに対応してダンパ部69が弾性変形することによって吸収減衰させることができる。
このような流路ユニット41の構成により、流路ユニット41の内部には、インク供給口41aから順に共通インク室70、アパーチャ63、連絡孔62、圧力室46及び貫通孔61を通ってノズ60に至るインク流路が構成されている。インク供給口41aから流路ユニット41内に流入したインクは、一旦共通インク室70に貯溜される。そして、アパーチャ63を経由して、各圧力室46に供給される。各圧力室46でアクチュエータユニット42により圧力が付与されたインクが、各貫通孔61を経由して対応するノズル60から吐出される。
アクチュエータユニット42は、図示しないが2枚の圧電シートと、絶縁性を有するトップシートとの3枚のシートを積層した構造であり、各シートの1枚の厚さが約30μm程度となっている。2枚の圧電シートのうち下方に位置する圧電シートの上面には、各圧力室46と対向した領域ごとに細幅の個別電極がアクチュエータユニット42の長手方向(副走査方向)に沿って列状に形成されている。各個別電極は、その長手方向がアクチュエータユニット42の長手方向と直交している。一方、2枚の圧電シートのうち上方に位置する圧電シートの上面には、複数の圧力室46に対して跨って形成された共通のコモン電極が形成されている。最上段に位置するトップシートの上面には、複数の個別電極のそれぞれに対して電気的に接続される表面電極71と、コモン電極に対して電気的に接続される表面電極72とが設けられている。
このようなプレート型のアクチュエータユニット42の下面全体に接着シートが予め貼着され、流路ユニット41に対して、アクチュエータユニット42がその個別電極を流路ユニット41における各圧力室46の各々に対応させて接着・固定することでヘッド本体40が構成されている。そして、FPC50が、アクチュエータユニット42と重ね合わされつつ、FPC50の複数の配線パターン(図示せず)がアクチュエータユニット42の表面電極71,72とそれぞれ半田で接合され、インクジェットヘッド5が作成される。
図6は、図4に描かれた一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。図7は、図6に示された連通弁26の弁部材を示しており、(a)は弁部材の側面図であり、(b)は弁部材の下面図である。図8は、図6に示された連通弁26のスライド部材を示しており、(a)はスライド部材の断面図であり、(b)はスライド部材の上面図である。図6に示すように、連通弁26は、略円筒形状のケース91と、ケース91の上端部に固着された蓋体92と、ケース91内の下端部に上下にスライド可能に配置されたスライド部材93とを含んでいる。蓋体92には、厚み方向に貫通した貫通孔94が形成されており、対応する通路8とそれぞれ連通している。また、連通弁26の下端には、貫通孔91bが形成されている。この構成により、通路8と通路32とが連通弁26を介して連通している。
図6に示すように、ケース91内において、蓋体92とスライド部材93との間には、バネ96と、弁部材97と、Oリング98とが配置されている。蓋体92は、その下端外周が切り欠き92aによって欠設されており、蓋体92の下端部にバネ96の一端部が嵌合固定されている。
弁部材97には、図7(a)に示すように、上方に向かって開口した凹部99が形成されている。凹部99の底部99aのほぼ中央領域には、下方に向かって突出した突出部100が形成されている。突出部100は、円柱形状の胴部101と先端に向かって先細りとなった先端部102とを有している。先端部102の外周面には、外側に向かって突出し且つ胴部101から先端近傍まで延在した3つの突起103が形成されている。これら突起103は、図7(b)に示すように約120°の間隔をおいて互いに離隔されている。また、3つの突起103の先端には、同じ傾斜角を有する傾斜面104がそれぞれ形成されている。また、凹部99内には、バネ96の他端部が嵌合しており、バネ96が弁部材97を常にスライド部材93に近づく方向(下方)に押圧している。
Oリング98は、弁部材97の底部99a外端とケース91内に形成された段部91aとの間に配置されている。この構成により、バネ96が弁部材97を押圧して、弁部材97がOリング98を段部91aとの間において挟み込んで変形させることで、連通弁26が閉状態となる。一方、弁部材97がOリング98を段部91aと挟み込んで変形させていないとき、すなわち、図6に示すように弁部材97とOリング98とが離隔しているときは、連通弁26が開状態となる。連通弁26の内部は、ケース91の下端に形成された貫通孔91bを介して通路32と連通しているため、連通弁26が開又は閉状態になることでインク室6も通路8を介して通路32と連通可能又は連通不可能となる。つまり、連通弁26が開状態のときは、インク室6から流路ユニット41にインクが供給されるが、連通弁26が閉状態のときでは、インク室6から流路ユニット41にインクが供給されなくなる。
スライド部材93には、図8(a)に示すように、上方に向かって開口した凹部105が形成されている。スライド部材93の外周面には、外側に向かって突出し且つ図8(a)中上下方向に延在した6つの突起106が形成されている。これら突起106は、図8(b)に示すように、約60°の間隔をおいて互いに離隔されている。また、突起106は、ケース91の貫通孔91bの外周縁と上下方向において重なるような突出量を有している。これによって、スライド部材93は貫通孔91bから下方に抜け落ちないようになっている。スライド部材93の開口端は、山部107と谷部108とが交互に形成されるように上下方向にジグザグ形状となっている。なお、スライド部材93の開口端は、図6に示すように、弁部材97の突起103と上下方向において重なっており、スライド部材93が図6に示す状態から上方に移動すると、突起103と当接するようになっている。
図9は、ほぼ円筒形状の連通弁26の下端部を展開した図であり、(a)は連通弁26の下端内壁に形成された複数の溝を示す説明図であり、(b)は図9(a)におけるIXA−IXA線の断面図であり、(c)は図9(a)におけるIXB−IXB線の断面図である。なお、図9は、連通弁26が閉状態のときの展開図である。図9(a)、(b)に示すように、ケース91の下端内壁には、内側に向かって突出した突出部109が形成されている。突出部109には、上下方向に延在した2種類の溝110a,110bが複数形成されている。溝110aは、図9(b)に示すように、スライド部材93の突起106の突出量に対応した深さ(ケース91の厚み方向の深さ)を有している。溝110bは、図9(c)に示すように、弁部材97の突起103の突出量に対応した深さを有している。つまり、溝110aは、溝110bよりも深さが浅く形成されているため、弁部材97の突起103が溝110a内に配置不可能となっている。スライド部材93の突起106だけが上下方向に摺動できる。一方、溝110bは、溝110aよりも深さが深く形成されているため、弁部材97の突起103及びスライド部材93の突起106が溝110b内に配置可能となっている。すなわち、弁部材97の突起103及びスライド部材93の突起106が共に上下方向に摺動できる。
また、図9(a)、(b)に示すように、突出部109の弁部材97側の端部において、各溝110bに挟まれた領域における溝110aの底部領域には、同じ傾斜角を有しつつその先端が同じ高さレベルに位置する傾斜面111aが形成されている。一方、突出部109の弁部材97側の端部において、溝110a及び溝110a底部領域と、溝110bとに挟まれた領域には、同じ傾斜角を有しつつ、その先端が同じ高さレベルに位置した傾斜面111b,111cが形成されている。傾斜面111aは、その頂点が傾斜面111bの低点と重なるように形成されている。つまり、図9(a)に示すように、傾斜面111aと傾斜面111aの右側に隣接する傾斜面111bとが連続する連続傾斜面113となっている。一方、傾斜面111aとその左側に隣接する傾斜面111cとは斜面どうしが連続していない。
続いて、連通弁26の開及び閉状態の動作について以下に説明する。図10は、図6に示す連通弁26の開及び閉状態に係る動作を示しており、(a)は連通弁26の開状態を示す説明図であり、(b)は連通弁26の開状態を閉状態にするときのスライド部材及び弁部材の動作を示す説明図であり、(c)は連通弁26の閉状態を開状態にするときにスライド部材及び弁部材の動作を示す説明図である。なお、図10は、連通弁26の下端部を展開して示した図である。
図6に示すように、連通弁26の弁部材97がOリング98と離隔した位置で保持されている状態、すなわち、連通弁26が開状態のときは、図10(a)に示すように、弁部材97の突起103の傾斜面104が傾斜面111aと接触している。ちょうど、上下方向に見たときに、突起103が溝110aと重なる位置にある。上述のように突起103の突出量に比べて溝110aの深さが浅いので、突起103の下端面(傾斜面104)が溝110aの底部領域に形成された傾斜面111aと当接した状態になっている。このとき、弁部材97がOリング98と離隔した位置で保持され、弁部材97の底部99a外端と段部91aとの間のシール性がなくなり、連通弁26が開状態となる。この連通弁26の開状態を閉状態にするときは、図10(b)に示すようにスライド部材93を上方にスライドさせて、スライド部材93の山部107の頂点を突起103の傾斜面104に当接させつつ、スライド部材93とともに弁部材97を上方にスライドさせる。突起103の傾斜面104の先端が傾斜面111cの頂点を超える位置に達したときに、図10(b)に示すように、スライド部材93の上端面をすべりながら谷部108側に移動する。そして、この状態からスライド部材93を図9(a)に示すように、下方にスライドさせると、今度は、突起103が傾斜面111cに沿って斜め下方に移動する。この移動した先には、溝110bがある。上述のように、突起103の突出量に対応して溝110bの深さが決められているので、突起103は溝110bに沿って落ち込む。このとき、弁部材97の底部99aの外端はOリング98と接触し、バネ96の復元力により底部99a外端と段部91aとの間でOリング98が変形する。こうして、弁部材97の底部99a外端と段部91aとの間でOリング98によるシール性が発揮され、連通弁26が閉状態となる。
次に、この連通弁26の閉状態を開状態にするときは、図10(c)に示すように、スライド部材93を上方にスライドさせて、スライド部材93の山部107の頂点を突起103の傾斜面104に当接させつつ、スライド部材93とともに弁部材97を上方にスライドさせる。突起103の傾斜面104の先端が傾斜面111bの頂点を超える位置に達したときに、図10(c)に示すように、スライド部材93の上端面をすべりながら谷部108側に移動する。そして、この状態からスライド部材93を図10(a)に示すように、下方にスライドさせると、傾斜面111aの低点と突起103の傾斜面114の先端とが重なる位置まで突起103が連続傾斜面113に沿って斜め下方に移動する。このとき、突起103の傾斜面104は、上述のように傾斜面111aと接触しているので、弁部材97とスライド部材93とが当接していなくても弁部材97がその位置(突出部109の上端部)に保持され、連通弁26が開状態となる。本実施の形態において、スライド部材93は、押圧部材19がスライド棒35の上下動によって移動することで、上下方向に移動される。また、各傾斜面どうしのすべり移動は、弁部材97がバネ96から受ける復元力により起こされている。
続いて、パージ機構20及び弁開閉機構34の構成について以下に詳述する。図11は、図1に示すパージ機構20及び弁開閉機構34の概略構成図である。なお、図11は、パージ機構20及び弁開閉機構34に対向する位置にヘッドユニット2が配置されたときの図2に示したIV−IV線と同様な位置関係における断面を示している。
パージ機構20のパージキャップ21は、図11に示すように、インク吐出面40aに対向する底部53からインク吐出面40aに向かって突出した環状突起54を有している。つまり、パージキャップ21には、底部53と環状突起54とによってインク吐出面40aに向かって開口した凹部55が形成されている。本実施の形態では、環状突起54にチューブ57が接続されている。チューブ57は、凹部55内と連通した通路56を有している。チューブ57の途中部位には、通路56を開閉可能とする遮断弁58が配置されている。この構成により、凹部55内が、遮断弁58が開状態のときに通路56を介して大気と連通可能状態となり、遮断弁58が閉状態のときに大気と連通不可能状態となる。パージキャップ21の底部53には、凹部55内と連通した通路47が接続されている。この通路47は、ポンプ23と接続されている。なお、パージキャップ21内に吸い出されたインクを確実に排出するという観点からは、チューブ57は底部53に接続されていてもよい。
弁開閉機構34は、本体34aと、本体34aの孔34b内を摺動可能に配置されたスライド棒35と、スライド棒35を上下方向にスライドさせるカム22b(図1参照)とを備えている。スライド棒35は、ほぼ円柱形状を有しており、その直径が底板3aに形成された孔3cの直径より若干小さくなっている。これにより、スライド棒35がカム22bの回転によって上下方向にスライドしても、孔3cと対向する位置において、スライド棒35は孔3c内に侵入可能となる。
続いて、インクジェットプリンタ1の制御系について、図12を参照して説明する。図12は、本発明による一実施形態のインクジェットプリンタの制御構成を示す概略ブロック図である。インクジェットプリンタ1に含まれる制御部120は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行する制御プログラム及び制御プログラムに使用されるデータが記憶されているROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時記憶するためのRAM(Random Access Memory)とで構成されている。
制御部120は、図12に示すように、印刷制御部121と、メンテナンス制御部123とを備えている。インクジェットプリンタ1内には、カム22a,22bを駆動するカム駆動制御回路131と、ポンプ23を駆動するポンプ駆動回路132と、ポンプ23の駆動が停止した時刻からの経過時間を計測するカウンタ133と、カウンタ133によって計測された経過時間(以後、単に「経過時間」と称することがある)が入力され、これが所定時間に達したか否かを判定するセレクタ134と、遮断弁58の開閉動作を行う遮断弁駆動回路135と、昇降部36bを駆動するワイパー駆動回路136と、モータ17を駆動するキャリッジ駆動回路137と、インクジェットヘッド5を駆動するインクジェットヘッド駆動回路138と、プラテンローラ18を回転させる搬送モータ141を駆動する搬送モータ駆動回路140とを備えている。
印刷制御部121は、PC(パーソナルコンピュータ)115から送信された印刷データを制御部120が通信処理部118を介して受信した後、用紙に対して印字が行われるように、インクジェットヘッド駆動回路138及び搬送モータ駆動回路140を制御する。
メンテナンス制御部123は、パージキャップ制御部145と、ポンプ制御部146と、連通弁制御部147と、遮断弁制御部148と、ワイピング制御部149と、フラッシング制御部150とを備えている。パージキャップ制御部145は、PC115から送信されたパージ信号を制御部120が通信処理部118を介して受信した後、キャリッジ駆動回路137及びカム駆動制御回路131を制御する。このとき、キャリッジ駆動回路137は、ヘッドユニット2をインク吐出面40aがパージキャップ21と対向する位置に移動させるようにモータ17を駆動する。一方、カム駆動制御回路131は、パージキャップ21をインク吐出面40aに近づく方向及び離れる方向に移動させるようにカム22aを回転駆動する。パージキャップ21がインク吐出面40aに当接した場合は、パージキャップ21とインク吐出面40aとの間に閉鎖空間180(図14参照)が形成される。また、パージキャップ21がインク吐出面40aから離隔した場合は、上述の閉鎖空間180が解消される。
ポンプ制御部146は、PC115から送信されたパージ信号を制御部120が通信処理部118を介して受信した後、ポンプ駆動回路132を制御する。このとき、ポンプ駆動回路132は、パージキャップ21とインク吐出面40aとの間に形成された閉鎖空間180内の減圧を行うようにポンプ23を駆動する。
連通弁制御部147は、カウンタ133によって計測された経過時間が所定時間に達したとセレクタ134が判定した結果に基づいて、カム駆動制御回路131を制御する。カム駆動制御回路131は、連通弁26を閉状態にするようにカム22bを回転駆動してスライド棒35を上下方向にスライドさせる。また、カム駆動制御回路131は、閉鎖空間180が解消される位置にパージキャップ21が配置された後、連通弁26を開状態にするようにカム22bを回転駆動してスライド棒35を上下方向にスライドさせる。
遮断弁制御部148は、パージキャップ21がインク吐出面40aとの間で閉鎖空間180を形成する直前に、遮断弁駆動回路135を制御して遮断弁58を開状態にして、閉鎖空間180が大気と連通可能にする。そして、パージキャップ21がインク吐出面40aとの間で閉鎖空間を形成した直後、遮断弁駆動回路135を制御して遮断弁58を閉状態にして、閉鎖空間180が大気と連通不可能にする。
ワイピング制御部149は、パージキャップ21がインク吐出面40aから離隔された後、ワイパー駆動回路136及びキャリッジ駆動回路137を制御する。このとき、ワイパー駆動回路136は、昇降部36bを駆動してワイパー36aをインク吐出面40aに当接する位置及びインク吐出面40aから離隔する位置に移動させる。一方、キャリッジ駆動回路137は、インク吐出面40aにワイパー36aが当接した状態においてヘッドユニット2を移動させ、ワイパー36aによってインク吐出面40aを払拭する。
フラッシング制御部150は、PC115から送信されたフラッシング信号を制御部120が通信処理部118を介して受信した後、キャリッジ駆動回路137及びインクジェットヘッド駆動回路138を制御する。このとき、キャリッジ駆動回路137は、モータ17を駆動してヘッドユニット2をインク吐出面40aがインク受容部25と対向する位置に移動させる。一方、インクジェットヘッド駆動回路138は、ノズル60からインクが予備吐出されるようにインクジェットヘッド5を駆動する。
続いて、インクジェットプリンタ1のパージ時における動作フローについて、図13〜図15を参照しつつ以下に説明する。図13は、本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタ1のパージ時の動作フローを示すフローチャートである。図14は、本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタ1のパージ時のインクジェットヘッド5及びパージ機構20の一連の動作状態を示しており、(a)はパージキャップ21がインク吐出面40aに当接した状態を示す断面図であり、(b)は弁開閉機構34が連通弁26を閉状態にするときの状態を示す断面図であり、(c)は連通弁26が閉状態になった状態を示す断面図である。図15は、本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタ1のパージ時のインクジェットヘッド5及びパージ機構20の一連の動作状態を示しており、(a)はパージキャップ21がインク吐出面40aから離隔されたときの状態を示す断面図であり、(b)は弁開閉機構34が連通弁26を開状態にするときの状態を示す断面図である。
インクジェットプリンタ1において、インクジェットヘッド5内のインクの高粘度化及びインク中に気泡などが混在したときに行うパージ動作では、まず、ステップ1(S1)において、図11に示すように、ヘッドユニット2をインク吐出面40aがパージキャップ21と対向する位置に移動させる。このとき、弾性部材9及び連通弁26のスライド部材93がスライド棒35のそれぞれと対向する位置に配置される。
次に、ステップ2(S2)において、遮断弁58を開状態にする。そして、ステップ3(S3)において、図14(a)に示すように、パージキャップ21をその環状突起54の先端がインク吐出面40aと当接するように移動させる(キャッピング動作)。こうして、パージキャップ21の凹部55内がインク吐出面40aとパージキャップ21とで囲まれた閉鎖空間180となる。このとき、パージキャップ21の凹部55内がチューブ57及び遮断弁58を介して大気と連通しているので、閉鎖空間180を形成するためにパージキャップ21をインク吐出面40aに対して押し付けても、そのときに閉鎖空間180で圧縮された空気がノズル60内に入り込まなくなる。
次に、ステップ4(S4)において、遮断弁58を閉状態にして閉鎖空間180を大気と連通しないようにして密閉する。そして、ステップ5(S5)において、ポンプ23を駆動して閉鎖空間180内を減圧する。これによって、インクジェットヘッド5内のインクがノズル60から吸引される。なお、連通弁26が開状態になっていないとインクジェットヘッド5にインク室6のインクを供給することができないので、通常、開状態になっている。そのため、ポンプ23で閉鎖空間180内が減圧されることで、ノズル60からインクジェットヘッド5及びインク室6内のインクが吸引される。また、ノズル60からのインクの吸引時において、インクカートリッジからインク室6に流入するインク量は吸引されるインク量とほぼ同じ量となっているので、インク室6のインク液面はほとんど変動しない。
次に、ステップ6(S6)において、ポンプ23が所定回転数だけ回転したか否かを判定する。ポンプ23が所定回転数回転していなければ、そのまま繰り返し所定回転数になるまで待機する。つまり、ステップ6が繰り返し行われる。ポンプ23が所定回転数回転すると、ステップ7(S7)に進み、ステップ7において、ポンプ23を停止する。ここで、ポンプ23は、所定回転数だけ回転すると閉鎖空間180内に所定圧力(インクカートリッジによる負圧よりも大きい負の圧力)を発生させることが可能であり、この所定圧力によってノズル60からインクが吸引されている。
次に、ステップ8(S8)において、カウンタ133で計測された経過時間が所定時間に達したかどうかをセレクタ134で判定する。このとき、経過時間が所定時間に達していなければ、所定時間に経過時間が達するまでその状態で待つ。つまり、ステップ8が繰り返し行われる。この所定時間は、ポンプ23によって閉鎖空間180が所定の負圧力まで減圧されてポンプ23が停止してから、閉鎖空間180内の圧力が自然にほぼ大気圧(ノズル60から吸引されたインクがインクカートリッジからの負圧力によってノズル60内に引き込まれない程度に上昇した圧力)になるまでの時間である。なお、インクジェットヘッド5内のインクは、閉鎖空間180が減圧された時点からポンプ23停止後、閉鎖空間180内がほぼ大気圧まで上昇する間、ノズル60から吸引されている。ステップ8において、経過時間が所定時間に達したらステップ9(S9)に進む。このときには、ノズル60からのインクの吸引が終了している。
ステップ9において、連通弁26を閉状態にする。連通弁26を開状態から閉状態にするときは、図14(b)に示すように、スライド棒35を上方にスライドさせてその先端を弾性部材9に当接させつつ、弾性部材9を変形させて押圧部材19の先端をスライド部材93に当接させる。そして、そのままスライド部材93を上方に移動させてスライド部材93と弁部材97とを当接させ、弁部材97も上方に移動させる。次に、図14(c)に示すように、スライド棒35を下方にスライドさせて変形した弾性部材9を元の状態に戻し、押圧部材19、スライド部材93及び弁部材97を下方に移動させて、連通弁26を閉状態にする。次に、ステップ10(S10)において、図15(a)に示すように、パージキャップ21をインク吐出面40aから離隔する(アンキャップ動作)。こうして、インク吐出面40aとパージキャップ21とで囲まれた閉鎖空間180が解消される。このとき、インクジェットヘッド5内のインクには、連通弁26が閉状態となっていることで、インクカートリッジからの負圧力が生じていない状態になっている。さらに、インクはインクの自重によってノズル60から外部に漏れだそうとするので、インク吐出面40aに付着した気泡混在インクはノズル60内に引き込まれない。ここで、インクはノズル60から漏れだそうとしているが、実際には、ノズル60の毛細管現象によってインクはノズル60から漏れない。
次に、ステップ11(S11)において、インク吐出面40aに付着したインクをワイピング動作によって払拭する。このワイピング動作は、昇降部36bによってワイパー36aの先端がインク吐出面40aに当接可能な高さにまで上昇され、その状態でヘッドユニット2がゆっくりと移動することによって行われる。
次に、ステップ12(S12)において、連通弁26を開状態にする。これも、上述のようにスライド棒35をスライドさせ、図15(b)に示すように、スライド部材93及び弁部材97を上方に移動させて連通弁26を開状態にする。これにより、インクジェットヘッド5のパージが終了する。
次に、ステップ13(S13)において、インク吐出面40aがインク受容部25に対応する位置にヘッドユニット2が移動した状態で、ノズル60からインク受容部25に向かってインクを予備吐出する(フラッシング動作)。これにより、インク吐出面40aに付着したインクをワイパー36aによって除去した際に、ノズル60内に侵入した混色インクを排出することができる。こうして、インクジェットプリンタ1における一連のパージ動作などが終了した後、印刷に備えて、ステップ14(S14)において、ヘッドユニット2をインク吐出面40aがパージキャップ21と対向する位置に移動させるとともに、ノズル60のインク乾燥を防止するために、インク吐出面40aをパージキャップ21によってキャッピングする。
以上のように、本実施の形態のインクジェットプリンタ1によると、パージ時の減圧によって閉鎖空間180の気圧がノズル60内にインクが引き込まれない気圧となっている間に連通弁26が閉じられ、インクジェットヘッド5内のインクにインクカートリッジからの負圧力が作用しない状態になってから、パージキャップ21がインク吐出面40aから離隔される。したがって、閉鎖空間180の解消によってインク吐出面40aが大気圧まで上昇したとしても、インクの流動が連通弁26によりできない状態となっているので、ノズル60内のインク面は連通弁26が閉じられたときの状態のままである。むしろ、ノズル60からインクが漏れだそうとしている(実際には、インクは流動することができないので、ノズル60から漏れない)ので、パージ時にインク吐出面40aに付着した気泡混在インクがノズル60からインクジェットヘッド5内に引き込まれにくくなる。なお、このインクをノズル60から漏れ出させようとする力は、インクジェットヘッド5から流路32を介して連通弁26内のOリング98の高さまで存在するインクの自重により生じるものである。また、パージ時において、カウンタ133によって計測された経過時間が所定時間に達してから、連通弁26を閉状態にしているので、センサなどが不必要で装置構成が簡略化される。また、インクジェットヘッド5の上方にインク室6を配置することによって、インクジェットヘッド5への安定したインク供給を実現できる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述した本実施の形態においては、バッファタンク4がインクジェットヘッド5の上方に配置されているが、バッファタンク4を設けずに、インクカートリッジとインクジェットヘッドとをチューブなどの連通部材を介して接続し、その連通部材の途中部位に開閉可能な連通弁を設けておればよい。また、上述したインクジェットプリンタ1に、カウンタ133やセレクタ134が設けられていなくてもよい。また、制御部120にフラッシング制御部150が設けられていなくてもよい。つまり、フラッシング動作を行わなくてもよい。また、パージキャップ21には、ポンプ23と連通する通路47以外の通路(本実施の形態においてはチューブ57)が接続されていなくてもよい。また、上述したインクジェットプリンタ1は、ヘッドが往復移動するシリアルプリンタであるが、ヘッドが固定されたラインプリンタでもよい。さらに、上述のインクジェットプリンタ1では、インクジェットヘッド5がパージ位置に設置されたときに、パージキャップ21がインク吐出面40aに当接するために変位する形態を有していたが、これとは逆にインクジェットヘッド(インク吐出面)がキャップに当接するために変位する形態であってもよい。このときのインクジェットヘッドは、シリアルプリンタ用であってもラインプリンタ用であってもよい。すなわち、インクジェットヘッドとキャップとが相対的に変位することで、インクジェットヘッドのインク吐出面とキャップとの間で閉鎖空間の形成と解消がなされるものであれば、本発明と同様の効果を実現することができる。