以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1を参照し、本発明の一実施形態であるインクジェットプリンタ101の全体構成について説明する。
プリンタ101は、直方体形状の筐体101aを有する。筐体101aの天板上部には、排紙部4が設けられている。筐体101aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間A,Bには、給紙部23から排紙部4に向かう用紙搬送経路が形成されており、図1に示す黒太矢印に沿って用紙Pが搬送される。空間Aでは、用紙Pへの画像記録と、用紙Pの排紙部4への搬送が行われる。空間Bでは、用紙Pの搬送経路への給紙が行われる。空間Cからは、空間Aの2つのインクジェットヘッド1に対してインクが供給され、空間Aの処理液塗布機構2に対して前処理液が供給される。
空間Aには、2つのインクヘッドヘッド(以下、ヘッドと称する)1、処理液塗布機構2、搬送機構40、用紙Pをガイドする2つのガイド部10a,10b、2つの用紙センサ26,27、ヘッド昇降機構33(図8参照)、払拭機構50(図5参照)、2組の清掃部材(清掃手段:図5参照)70、クリーナユニット37、及び、制御部100等が配置されている。
各ヘッド1からは、2色のインクが吐出される。用紙搬送方向上流側のヘッド1からは、イエロー及びマゼンタのインクが吐出される。下流側のヘッド1からは、シアン及びブラックのインクが吐出される。これら2つのヘッド1は、同一構造を有しており、副走査方向に所定間隔で並び、ヘッドホルダ5を介して筐体101aに支持されている。各ヘッド1の下面は、複数の吐出口108(図3参照)が配列された吐出面1aである。
ヘッド1は、流路ユニット9及びアクチュエータユニット21からなるヘッド本体3(図2参照)に加えて、リザーバユニット(不図示)、フレキシブルプリント配線基板(FPC:不図示)、制御基板(不図示)等が積層された積層体である。制御基板で調整された信号は、FPC上のドライバICで駆動信号に変換され、アクチュエータユニット21に出力される。アクチュエータユニット21が駆動されると、リザーバユニットから供給されたインクが、吐出口108から吐出される。
次に、図2〜図6を参照しつつヘッド1について詳細に説明する。なお、図3では説明の都合上、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室110、アパーチャ112及び吐出口108を実線で描いている。
流路ユニット9は、図4(a)に示すように、9枚のステンレス製プレート122〜130を積層した積層体である。流路ユニット9の上面には、図2に示すように、計10個のインク供給口105bが開口している。流路ユニット9の内部には、図2〜図4に示すように、インク供給口105bを一端とするマニホールド流路105、及び、複数の副マニホールド流路105aが形成されている。副マニホールド流路105aは、マニホールド流路105から分岐して主走査方向に沿って延在し、主走査方向に隣接するインク供給口105bに接続されたマニホールド流路105同士を接続する。つまり、主走査方向に配列された5つのインク供給口105b同士は、互いに連通し、他の列に属する別の5つのインク供給口105bとは連通していない。このように本実施形態においては、流路ユニット9のインク供給口105bは、列毎に分けられており、各列に異なる色のインクがリザーバユニットから供給される。
各副マニホールド流路105aには、図4(a)に示すように、複数の個別インク流路132が接続されている。個別インク流路132は、副マニホールド流路105aの出口からアパーチャ112及び圧力室110を経て吐出口108に至る。流路ユニット9の下面は、吐出面1aであって、多数の吐出口108がマトリクス状に配置されている。
吐出面1aには、図5及び図6に示すように、2つの吐出領域91,92が画定されている。図6において、吐出領域91はインクを吐出する複数の吐出口108(第1吐出口:黒丸で示す)が集まった領域(これら黒丸で示す吐出口108を内包する領域)であり、吐出領域92は吐出領域91とは別色のインクを吐出する複数の吐出口108(第2吐出口:白丸で示す)が集まった領域(これら白丸で示す吐出口108を内包する領域)である。図2に示すように、台形の外形をなすように集まった複数の吐出口群が千鳥状配列で主走査方向に連なることで、各吐出領域91,92が構成されている。また、吐出領域91,92は、副走査方向に関して、領域の一部91a,92a同士が重なっている。つまり吐出領域91,92の一部91a,92aにある吐出口列109a,109bは互いに近接して配置されている。また、吐出領域91は、吐出面1aにおいて、その大部分が吐出領域92よりも搬送方向Dの下流にある。
図6に示すように、各吐出領域91,92における吐出口108は、主走査方向に所定の距離ずつ離れて並んでいる。本実施形態においては、300dpiに相当する距離ずつ離れて並んでいる。副走査方向には、吐出領域91の1つの吐出口108が、吐出領域92の1つの吐出口108と重なるように配置されている。プリンタ101はカラープリンタであって、別のヘッド1も加えると、1つの吐出口108は、副走査方向に3つの吐出口108と重なり、互いに異なる色のインクを吐出する。
吐出領域91に属する複数の吐出口108は、16列の吐出口列109aを構成するように配列されている。吐出口列109aは、主走査方向に沿って延びている。吐出領域92に属する複数の吐出口108も、16列の吐出口列109bを構成するように配列されている。吐出口列109bは、主走査方向に沿って延びている。
リザーバユニットには、2つのカーリッジ22aがポンプ38を介して接続されており、2色のインクが供給される。リザーバユニットには、色ごとにインク流路が形成された流路部材である。インク流路のリザーバには、流路ユニット9へのインクが貯留される。図2〜図4に示すように、リザーバユニットのインクは、インク供給口105bから流路ユニット9に供給される。このとき、列毎に同色のインクが、リザーバユニットからインク供給口105bに供給される。
ポンプ38は、カートリッジ22a毎に配置され、リザーバユニットを介して流路ユニット9にインクを強制的に供給する。図8においては、そのうちの1つのポンプ38が示されている。
次に、アクチュエータユニット21について説明する。アクチュエータユニット21は、流路ユニット9の上面に固定される。図2に示すように、4つのアクチュエータユニット21は、それぞれ台形の平面形状を有しており、インク供給口105bを避けるよう主走査方向に千鳥状に配置されている。
アクチュエータユニット21は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系セラミックス製であり、図4(b)に示すように、3枚の圧電層161〜163から構成されている。最上層の圧電層161は、厚み方向に分極され、上面の個別電極135及び下面全体の共通電極134に挟まれている。個別電極135は、大部分が圧力室110と対向し、平面視で圧力室外の一部が個別ランド136と接続している。この形態が、圧力室110毎に形成され、それぞれが個別のアクチュエータとして働く。つまり、アクチュエータユニット21には、圧力室110に対応した数のアクチュエータが作り込まれており、それぞれ圧力室110内のインクに選択的な吐出エネルギーを与える。
ここで、アクチュエータユニット21の駆動方法について述べる。各アクチュエータは、いわゆるユニモルフ型アクチュエータである。圧電層161の両電極134、135で挟まれた部分は、分極方向に電界が印加されると、分極方向と直交する方向(平面方向)に縮む。このとき、下の圧電層162、163との間で歪み差が生じるので、個別電極135と圧力室110で挟まれた部分が、圧力室110側に向かって突出する。これに伴い、圧力室110内のインクに圧力(吐出エネルギー)が付与され、吐出口108からインク滴が吐出される。
処理液塗布機構2は、ローラ2a、ローラ2aを回転可能に支持する支持部2b、及び、ソレノイド2cを有している。ソレノイド2cは可動鉄心を有しており、可動鉄心と支持部2bとが固定されている。可動鉄心は、鉛直方向に移動可能に構成されている。ローラ2aは、軸と、軸の外周面を覆う筒状のスポンジとからなり、図示しない処理液供給機構によってカートリッジ22bの前処理液がスポンジに供給される。ローラ2aは、通常、搬送ベルト43から離隔して配置されている。用紙Pに印刷が行われる時に、制御部100によってソレノイド2cが駆動され、ローラ2aが搬送ベルト43に当接する。これにより、搬送ベルト43に支持された用紙Pとローラ2aとが接触し、用紙Pの印刷面に前処理液が塗布される。本実施形態においては、用紙Pの全面に前処理液が塗布される。
搬送機構40は、2つのベルトローラ41,42と、搬送ベルト43と、プラテン46と、ニップローラ47と、剥離プレート45とを有している。搬送ベルト43は、両ローラ41,42の間に巻回されたエンドレスのベルトである。プラテン46は、ローラ2a及び2つのヘッド1に対向配置され、搬送ベルト43の上側ループを内側から支える。ベルトローラ42は、駆動ローラであって、搬送ベルト43を走行させる。ベルトローラ42は、図示しないモータによって、図1中時計回りに回転される。ベルトローラ41は、従動ローラであって、搬送ベルト43の走行によって回転される。ニップローラ47は、給紙部23から搬送されてきた用紙Pを搬送ベルト43の外周面に押さえ付ける。用紙Pは、シリコン層(弱粘着性の外周面被覆層)によって搬送ベルト43に保持され、ヘッド1に向かって搬送される。剥離プレート45は、搬送されてきた用紙Pを搬送ベルト43から剥離し、下流側の排紙部4へと導く。
2つのガイド部10a,10bは、搬送機構40を挟んで配置されている。搬送方向上流側のガイド部10aは、2つのガイド31a,31bと送りローラ対32とを有し、給紙部23と搬送機構40とを繋ぐ。画像記録用の用紙Pが、搬送機構40に向けて搬送される。搬送方向下流側のガイド部10bは、2つのガイド33a,33bと2つの送りローラ対34,35とを有し、搬送機構40と排紙部4とを繋ぐ。画像記録後の用紙Pが、排紙部4に向けて搬送される。
2つの用紙センサ26、27は、図1に示すように、搬送方向両側から2つのヘッド1を挟む位置に配置されている。上流側センサ26は、用紙Pの先端を検知し、その検知信号によりインクの吐出タイミングが決められる。下流側センサ27も用紙Pの先端検知を行い、センサ26とともにジャム検知機構(後述する)を構成する。
ヘッド昇降機構33は、ヘッドホルダ5を昇降させる。これにより、2つのヘッド1が印刷位置と退避位置の間で移動する。印刷位置では、図1に示すように、2つのヘッド1が移動範囲の下端に位置し、搬送ベルト43と印刷に適した間隔で対向する。退避位置では、2つのヘッド1が移動範囲の上端に位置し、搬送ベルト43から大きく離隔する。ワイピング位置は、印刷位置と退避位置との間にあり(図10(b)参照)、後述するワイパ51によって吐出面1aが払拭される。ワイピング位置及び退避位置では、2つのヘッド1と搬送ベルト43との間の空間を、ワイパ51が移動可能である。
払拭機構50は、図5及び図7に示すように、ワイパユニット55とこれを移動させるワイパユニット移動機構56とを有している。ワイパユニット移動機構56は、ワイパユニット55を主走査方向に往復移動させる。ワイパユニット55は、移動に伴って吐出面1aを払拭する。払拭機構50は、ヘッド1毎に設けられている。
ワイパユニット55は、ワイパ(払拭部材)51と、支持部52とを有している。ワイパ51は、板状の弾性部材(例えば、ゴム)からなる。ワイパ51は、副走査方向に関して、吐出面1aよりも若干長い。ワイパ51は、副走査方向に関して、吐出領域91における吐出口列と、吐出領域92における吐出口列とに跨るように延在している。
ワイパ51は、図5に示すように、主及び副走査方向に対して交差する方向に延在している。言い換えると、ワイパ51は、主及び副走査方向に対して傾いて配置されている。ワイパ51は、ワイパの延在方向に沿った第1面51aと、第1面51aとは反対側の第2面51bとを有している。また、ワイパ51は、ワイパユニット移動機構56がワイパユニット55を移動させることによって、第1待機位置(ホームポジション)(図5、図10(a)に示す位置)と、第2待機位置(図10(c)に示す位置)とをとる。ワイパユニット55は、後述する第1ワイピング動作において、第1待機位置から第2待機位置に向けて、図5中下方(払拭方向Y1)に移動される。そして、吐出面1aを通過した後に第2待機位置で一旦待機される。この第1ワイピング動作において、ワイパ51はその先端が吐出面1aと接触しながら移動されるため、吐出面1aがワイパ51により払拭される。なお、図11に示すように、第1ワイピング動作において、ワイパ51の第1面51aは、第2面51bよりも、払拭方向Y1の下流側に位置する。つまり、第1ワイピング動作において、吐出面1aに付着したインクは、ワイパ51の第1面51aにより拭き取られる。ワイパ51は、第1ワイピング動作において、吐出領域91の吐出口(第1吐出口)108がなす吐出口列109aと接触(対向)する部分(副走査方向においてワイパ51の中心よりも図5中右側部分)が、吐出領域92の吐出口(第1吐出口)108がなす吐出口列109bと対向する部分よりも、払拭方向Y1の上流となるように、延在している。また、後述する第2ワイピング動作において、第2待機位置から第1待機位置に向けて、図5中上方(払拭方向Y2)に移動される。この第2ワイピング動作においても、ワイパ51はその先端が吐出面1aと接触しながら移動されるため、吐出面1aがワイパ51により払拭される。なお、第2ワイピング動作において、ワイパ51の第2面51bは、第1面51aよりも、払拭方向Y2の下流側に位置する。つまり、第2ワイピング動作において、吐出面1aに付着したインクは、ワイパ51の第2面51bにより拭き取られる。なお、ワイパ51は、第2ワイピング動作において、吐出領域92の吐出口(第2吐出口)108がなす吐出口列109bと接触(対向)する部分(副走査方向においてワイパ51の中心よりも図5中左側部分)が、吐出領域91の吐出口108がなす吐出口列109aと対向する部分よりも、払拭方向Y2の上流となるように、延在している。
また、ワイパ51は、2つの突出部53a,53bを有する。突出部53aは、第1面51aから払拭方向Y1に突出して形成されている。突出部53bは、第2面51bから払拭方向Y2に突出して形成されている。これら突出部53a,53bは、図7に示すように、各面51a,51bにおいて、ワイパ51の上端から下端まで鉛直方向に延在している。副走査方向に関して、突出部53aの先端は、図5に示すように、吐出領域91の吐出領域92側の最外端よりも若干外側(吐出領域92側)にある。つまり、図6において、突出部53aの先端は、吐出領域91の吐出領域92側の最外端にある吐出口列109aと、この吐出口列109aに隣接する2つの吐出口列109bのうちの吐出領域91から離れた吐出口列109bとの間の吐出面1a領域とに接触可能に配置されている。副走査方向に関して、突出部53bの先端は、吐出領域92の吐出領域91側の最外端よりも若干外側(吐出領域91側)にある。つまり、図6において、吐出領域92の吐出領域91側の最外端にある吐出口列109bと、この吐出口列109bに隣接する2つの吐出口列109aのうちの吐出領域92から離れた吐出口列109aとの間の吐出面1a領域と、突出部53bの先端が接触可能に配置されている。
支持部52は、直方体形状を有し、ワイパ51が上面に立設されている。支持部52は、副走査方向に関してワイパ51よりも若干長い。支持部52の両端には、図5に示すように、主走査方向に貫通した孔54aが形成され、一方の孔54aには雌ねじが形成されている。
ワイパユニット移動機構56は、主走査方向に延びた一対のガイド(例えば、丸棒)57、駆動モータ59(図8参照)、及び、ガイド支持機構(接触圧変更機構)58から構成される。一対のガイド57は、孔54aに貫挿されて、ヘッド1を副走査方向両側から挟む。一方のガイド57は、外周面に雄ねじが形成され、孔54aの雌ねじと螺合している。このガイド57は、駆動モータ59の回転力を受ける。他方のガイド57には、他の孔54aの内周面が摺動する。
図10に示すように、駆動モータ59の正及び逆回転によって、ワイパユニット55がガイド57に沿って往復移動する。図10(b)に示すように、第1ワイピング動作においては、ワイピング位置のヘッド1に対して、ワイパ51が第1待機位置(図10(a)に示す位置)から図中右方に移動しながら、吐出面1aを払拭する。図10(d)に示すように、第2ワイピング動作においては、ワイピング位置のヘッド1に対して、ワイパ51が第2待機位置(図10(c)に示す位置)から図中左方に移動しながら、吐出面1aを払拭する。
ガイド支持機構(姿勢変更機構)58は、一対のガイド57の主走査方向の両端を支持する4つの支持部58a、及び、4つのソレノイド58bを有している。ソレノイド58bは可動鉄心を有しており、可動鉄心と支持部58aとが固定されている。可動鉄心は、鉛直方向に移動可能に構成されている。ガイド支持機構58は、ガイド57の鉛直方向の高さを変化させて、各ワイピング動作において、ワイパ51の吐出面1aに対する圧力を変化させる。
具体的には、ワイパユニット55が第1待機位置にあるときは、図7(a)に示すように、右側にあるガイド57が左側にあるガイド57よりも若干高い位置に配置され、且つ突出部53aの上端がちょうど吐出面1aと接触するように、4つのソレノイド58bが制御部100に制御される。これにより、一対のガイド57の中心を結ぶ直線が、水平線に対して鋭角θをなし、ワイパ51の先端が、左下がりとなるように傾く(第1状態)。このため、第1ワイピング動作においては、ワイパ51の吐出領域92の吐出口108に対する圧力(第2圧力)が、ワイパ51の吐出領域91の吐出口108に対する圧力(第1圧力)よりも低くなる。より詳細には、ワイパ51の先端部分(第1面51aの上端部分)において、突出部53aから図7(a)中右側の領域(吐出領域91と対向する領域)は吐出面1aと接触するとともに、図中右側に向かうに連れて吐出面1aに近づくように傾斜する。一方、突出部53aよりも図7(a)中左側の領域(吐出領域92と対向する領域)は、図中左側に向かうに連れて吐出面1aから離れる。言い換えると、ワイパ51は、図7中右側に向かうに連れて、ワイパ51が吐出面1aに当接したときの、撓み量が多くなる。
ワイパユニット55が第2待機位置にあるときは、図7(b)に示すように、左側にあるガイド57が右側にあるガイド57よりも若干高い位置に配置され、且つ突出部53bの上端がちょうど吐出面1aと接触するように、4つのソレノイド58bが制御部100に制御される。これにより、一対のガイド57の中心を結ぶ直線が、水平線に対して鋭角θをなし、ワイパ51の先端が、右下がりとなるように傾く(第2状態)。このため、第2ワイピング動作においては、ワイパ51の吐出領域91の吐出口108に対する圧力(第2圧力)が、ワイパ51の吐出領域92の吐出口108に対する圧力(第2圧力)よりも低くなる。より詳細には、ワイパ51の先端部分(第2面51bの上端部分)において、突出部53bから図7(b)中左側の領域(吐出領域92と対向する領域)は吐出面1aと接触するとともに、図中左側に向かうに連れて吐出面1aに近づく。一方、突出部53bよりも図7(b)中右側の領域(吐出領域91と対向する領域)は、図中右側に向かうに連れて吐出面1aから離れる。言い換えると、ワイパ51は、図7(b)中左側に向かうに連れて、ワイパ51が吐出面1aに当接したときの、撓み量が多くなる。
清掃部材70は、図5に示すように、ヘッド1毎に配置されており、一対の吸収体70a,70bを有している。一対の吸収体70a,70bは、対応するヘッド1を主走査方向に関して挟んでいる。各吸収体70a,70bは、副走査方向に関してワイパ51とほぼ同じ長さである。また、各吸収体70a,70bは、多孔質部材(例えば、スポンジ)から構成されている。吸収体70a,70bは、下面が、ワイピング位置にあるヘッド1の吐出面1aよりも若干低く配置されている。これにより、ワイパ51が吸収体70a,70bの下方を通過することで、ワイパ51の先端全体と当接し、そこに付着したインクを清掃することが可能となる。
クリーナユニット37は、ブレード37b及び移動機構37c(図8参照)を有し、搬送ベルト43の外周面をクリーニングする。クリーナユニット37は、図1に示すように、搬送ベルト43の右下方であって、ベルトローラ42に対向して配置されている。ブレード37bは、板状弾性部材(例えば、ゴム)で構成され、搬送ベルト43を全幅に亘って接触可能である。移動機構37cは、ブレード37bを搬送ベルト43の外周面に離接させる。クリーニング動作において、ブレード37bにより汚れが外周面から掻き取られる。
空間Bには、給紙部23が配置されている。給紙部23は、給紙トレイ24及び給紙ローラ25を有する。このうち、給紙トレイ24が、筐体101aに対して着脱可能となっている。給紙トレイ24は、上方に開口する箱であり、複数の用紙Pを収納可能である。給紙ローラ25は、給紙トレイ24内で最も上方にある用紙Pを送り出す。
ここで、副走査方向とは、搬送機構40によって搬送される用紙搬送方向Dと平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
空間Cには、5つのカートリッジ22a,22bが筐体101aに対して着脱可能に配置されている。4つのカートリッジ22aには、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのいずれかのインクが収容されている。各カートリッジ22aは、チューブ(図示せず)及びポンプ38(図8参照)を介してヘッド1と接続されている。なお、各ポンプ38は、ヘッド1にインクを強制的に送るとき以外は停止状態にあり、ヘッド1へのインク供給を妨げない。また、カートリッジ22bには、無色透明の前処理液が収容されている。カートリッジ22bは、処理液供給機構としてのチューブ及びポンプを介して、ローラ2aと接続されている。処理液供給機構は、制御部100の制御によって、印刷が行われるときに、所定量の前処理液がローラ2aに供給される。
一般的に、顔料インクに対しては顔料色素を凝集させる前処理液が使用され、染料インクに対しては染料色素を析出させる前処理液が使用される。前処理液の材料は、カチオン系高分子やマグネシウム塩等の多価金属塩を含有する液体等、適宜に選択可能である。かかる前処理液とインクとが混ざると、多価金属塩等がインクの着色剤である染料又は顔料に作用して、難溶性の金属複合体(塊)等が凝集又は析出により形成される。
次に、図8を参照しつつ、制御部100について説明する。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御部100を構成する各機能部は、これらハードウェアとROM内のソフトウェアとが協働して構築されている。図8に示すように、制御部100は、搬送制御部141と、画像データ記憶部142と、ヘッド制御部143と、ジャム検知部144と、処理液制御部145と、メンテナンス制御部150とを有している。
搬送制御部141は、外部装置から受信した印刷指令に基づいて、用紙Pが搬送方向に沿って所定速度で搬送されるように、給紙部23、各送りローラ対32,34,35及び、搬送機構40の各動作を制御する。画像データ記憶部142は、外部装置からの印刷指令に含まれる画像データ(インク吐出データ)を記憶する。
ヘッド制御部143は、記録動作及びフラッシング動作において、インクを吐出するようヘッド1を制御する。記録動作は、ヘッド制御部143が、画像データ記憶部142に記憶された画像データに基づいて、用紙Pに対してインクを吐出するように、ヘッド1からのインク吐出を制御する。インク吐出タイミングは、用紙センサ26による用紙Pの先端検知に基づいて決められ、用紙Pを検知した後の所定時間経過時である。なお、ここでいう所定時間は、ヘッド1のそれぞれについて、用紙センサ26が用紙Pの先端を検知したときの用紙Pの先端から、最も上流にある吐出口108までの搬送経路に沿った距離を、用紙Pの搬送速度で割った時間である。
フラッシング動作は、ヘッド制御部143が、予め記憶されたフラッシングデータに基づいて、搬送ベルト43に向けてインクを吐出するように、ヘッド1からのインク吐出を制御する。フラッシング動作には、第1〜第3フラッシング動作がある。第1フラッシング動作では、アクチュエータが駆動されて、吐出領域92の吐出口108だけからインクが吐出される。つまり、第1フラッシング動作において、吐出領域91の吐出口108からはインクが吐出されない。第2フラッシング動作では、アクチュエータが駆動されて、吐出領域91の吐出口108だけからインクが吐出される。つまり、第2フラッシング動作において、吐出領域92の吐出口108からはインクが吐出されない。これら第1及び第2フラッシング動作は、各ワイピング動作においてワイパ51が通過した直後の吐出口108から順にインクが吐出されるように実行される。第1及び第2フラッシング動作でのインク吐出タイミングは、予めワイピング動作を複数回実行し、そこで得られた実測値(時間データ)に基づいて設定されている。具体的には、ワイパ51が各待機位置から所定速度で移動し、各吐出口108をそれぞれ通過する時間を計測する。この時間計測を複数回行う。そして、各吐出口108において、ワイパ51が吐出口108を通過するまでの時間のうち、最も長い時間が経過したときにインクが吐出されるように、インク吐出タイミングが設定される。これにより、ワイパ51が吐出口108を通過するまでにインクが吐出されず、吐出口108を通過した直後に確実にインクが吐出される。第3フラッシング動作では、アクチュエータが駆動されて、すべての吐出口108からインクが吐出される。各フラッシング動作によるインクの吐出は、フラッシングデータ(画像データと異なるデータ)に基づいて行われる。
ジャム検知部144は、2つの用紙センサ26,27による用紙Pの先端の検出間隔が所定時間を超えたとき、吐出面1aと搬送ベルト43との間でジャムが発生したと検知する。ここでいう所定時間は、2つの用紙センサ26,27間の搬送距離を用紙Pの搬送速度で割った時間である。ジャム検知部144によってジャムが検知されると、ヘッド制御部143及び搬送制御部141は、インクの吐出、及び、用紙Pの搬送を停止する。ジャム検知部144によりジャムが検知されると、制御部100は音を発するようにブザー28(図8参照)を制御する。なお、ジャム検知部144及び用紙センサ26,27が、ジャム検知機構を構成している。
処理液制御部145は、外部装置から受信した印刷指令に基づいて、処理液塗布機構2を制御し、搬送ベルト43に対するローラ2aの離接動作を制御する。また、処理液制御部145は、外部装置から受信した印刷指令に基づいて、図示しないポンプ(処理液供給機構)を制御し、前処理液を所定量だけローラ2aに供給する。
メンテナンス制御部150は、各パージ動作、各ワイピング動作、及び、クリーニング動作等のメンテナンス動作において、搬送機構40、ヘッド昇降機構33、ワイパユニット移動機構56、移動機構37c、及び、ポンプ38を制御する。メンテナンス動作では、ヘッド1のインク吐出特性の回復や記録に係わる準備が行われる。パージ動作には、第1〜第3パージ動作がある。第1パージ動作では、ポンプ38が駆動されて、吐出領域91の吐出口108だけからインクが強制的に排出される。第2パージ動作では、ポンプ38が駆動されて、吐出領域92の吐出口108だけからインクが強制的に排出される。第3パージ動作では、すべてのポンプ38が駆動されて、すべての吐出口108からインクが強制的に排出される。ワイピング動作には、第1ワイピング動作と第2ワイピング動作とがある。第1ワイピング動作は、第1パージ動作の後に行われ、ワイパ51によって吐出面1aが払拭される。第2ワイピング動作は、第2パージ動作の後に行われ、ワイパ51によって吐出面1aが払拭される。こうして、吐出面1a上の残留したインクや異物が取り除かれる。また、クリーニング動作では、搬送ベルト43がクリーナユニット37によって払拭される。
次に、図9〜図11を参照し、プリンタ101のメンテナンス動作の一例について説明する。
まず、制御部100が、図9に示すように、ジャム検知以外のパージ指令(例えば、印刷待機時間が所定時間以上のときなど)を受信する(F1)。パージ指令を受信すると、メンテナンス制御部150は、ヘッド昇降機構33を制御して、ヘッド1を印刷位置に位置させる。次に、メンテナンス制御部150は、第1シーケンスを実行し、この後に第2シーケンスを続けて実行する。第1シーケンスとは、第1パージ動作を実行してから第1ワイピング動作及び第1フラッシング動作を行い、第2シーケンスに移行する前にワイパ51を吸収体70aで清掃することをいう。第2シーケンスは、第2パージ動作を実行してから第2ワイピング動作及び第2フラッシング動作を行い、この後にワイパ51を吸収体70bで清掃することをいう。
具体的には第1シーケンスにおいて、メンテナンス制御部150は、ポンプ38を制御し、図10(a)に示すように、吐出領域91の吐出口108だけから搬送ベルト43上にインクを排出させる(F2:第1パージ動作)。本実施形態におけるパージ動作は、各ヘッド1に対応する2つのポンプ38が選択的に駆動され、カートリッジ22a内の所定量のインクがヘッド1に強制的に送液されて、吐出口108からインクが排出される。このとき、吐出領域91の吐出口108から排出されるインクは、吐出領域92の吐出口108から排出されるインクよりも明度が小さい。つまり、第1パージ動作では、搬送方向上流のヘッド1からはマゼンタインク、下流のヘッド1からはブラックインクが排出される。
次に、メンテナンス制御部150は、図10(b)に示すように、ヘッド昇降機構33を制御してヘッド1をワイピング位置に移動させる。この後、メンテナンス制御部150は、駆動モータ59を制御して、図10(b)に示すように、ワイパユニット55を第1待機位置から払拭方向Y1へ移動させる(F3:第1ワイピング動作)。これにより、ワイパ51が吐出面1aと接触しながら払拭方向Y1へ移動し、吐出面1aがワイパ51に払拭される。ここで、図11に示すように、ワイパ51は、吐出面1aに対する相対移動方向に対して傾斜しているため、第1ワイピング動作においては、第1パージ動作で排出されたインク(図中ハッチングで示す部分)が吐出領域92から離れる方向に移動しやすくなって、当該領域92上に移動しにくくなる。このため、吐出領域92における吐出口108内において、インクの混色を抑制することが可能となる。また、突出部53aがワイパ51に形成されていることで、第1パージ動作で排出されたインクが、吐出領域92上に移動しにくくなる。このため、吐出領域92における吐出口108内において、インクの混色をより一層抑制することが可能となる。さらに、ワイパ51は、第1待機位置では第1状態を取るため、第1ワイピング動作においては第1状態で吐出面1aを払拭する。つまり、第1ワイピング動作において、ワイパ51の鉛直方向の傾きが変化されて吐出口108に対する圧力が変化されることで、インクが排出されていない吐出領域92の吐出口108の損傷を抑制することが可能となる。例えば、インクを排出せずに吐出面1aを払拭すると、ワイパ51と吐出面1aとの間の摩擦力が非常に大きくなる。このとき、吐出面1aに撥水膜などが形成されていると、この撥水膜が損傷する虞がある。インクを排出してから吐出面1aを払拭すると、吐出面1aにはインクが付着しているため、このインクによって摩擦力が小さくなって撥水膜の損傷を抑制することができる。本実施形態においては、第1パージ動作においては吐出領域92側からインクが排出されていないため、第1パージ動作後のワイピング動作によって撥水膜が損傷されやすくなるが、上述のように、ワイパ51の吐出面1aに対する圧力を部分的に下げることで、インクがパージされていない側であっても撥水膜の損傷を抑制することができる。
また、ステップF3においては、第1フラッシング動作も行われる。つまり、メンテナンス制御部150が、第1ワイピング動作中に、ヘッド制御部143を介してヘッド1を制御し、吐出領域92の吐出口108においてフラッシングを開始する。つまり、図10(b)に示すように、ワイパ51の通過順であって、ワイパ51が通過した直後の吐出口108からインクが吐出される。このため、払拭時に色の異なるインクが吐出口108に浸入したとしても、フラッシングによって排出される。
そして、メンテナンス制御部150は、ワイパ51が吸収体70aを通過した所定位置(図10(b)中2点鎖線で示す位置)に到達すると、駆動モータ59を制御して、その移動を一旦停止させる。このときまでには、第1フラッシング動作も終了されている。そして、メンテナンス制御部150が、駆動モータ59を逆回転させ、ワイパ51がヘッド1と吸収体70aとの間の第2待機位置(図10(c)参照)に配置されるように戻す。これにより、ワイパ51の先端が、吸収体70aの下面と2回当接し、ワイパ51の先端に付着したインクが効果的に除去される。また、このとき、メンテナンス制御部150は、ワイパ51が第2状態となるように、ガイド支持機構58を制御する。
次に、メンテナンス制御部150は、図10(c)に示すように、ヘッド昇降機構33を制御してヘッド1を印刷位置に移動させる。この後、ポンプ38を制御し、吐出領域92の吐出口108から搬送ベルト43上にインクを排出させる(F4:第2パージ動作)。
次に、メンテナンス制御部150は、ヘッド昇降機構33を制御してヘッド1をワイピング位置に移動させる。この後、メンテナンス制御部150は、駆動モータ59を制御して、図10(d)に示すように、ワイパユニット55を第2待機位置から払拭方向Y2へ移動させる(F5:第2ワイピング動作)。これにより、ワイパ51が吐出面1aと接触しながら払拭方向Y2へ移動し、吐出面1aがワイパ51に払拭される。ここで、図11に示すように、ワイパ51は、吐出面1aに対する相対移動方向に対して傾斜しているため、第2ワイピング動作においては、第2パージ動作で排出されたインクが吐出領域91から離れる方向に移動しやすくなって、当該領域91上に移動しにくくなる。このため、吐出領域91における吐出口108内において、インクの混色を抑制することが可能となる。また、傾斜したワイパ51を往復移動させるだけで、第1及び第2ワイピング動作の両方が完了するとともに、これら両ワイピング動作において、吐出口内の混色を抑制することが可能となる。さらに、第1及び第2ワイピング動作の払拭方向Y1,Y2が互いに反対であるため、各ワイピング動作において吐出面1aを払拭する面が互いに異なる。つまり、第1ワイピング動作では第1面51aにより、第2ワイピング動作では第2面51bにより吐出面1aが払拭される。このため、ワイパ51における混色を抑制することが可能となる。また、突出部53bがワイパ51に形成されていることで、第2パージ動作で排出されたインクが、吐出領域91上に移動しにくくなる。このため、吐出領域91における吐出口108内において、インクの混色をより一層抑制することが可能となる。さらに、ワイパ51は、第2待機位置では第2状態を取るため、第2ワイピング動作においては第2状態で吐出面1aを払拭する。つまり、第2ワイピング動作において、ワイパ51の鉛直方向の傾きが変化されて吐出口108に対する圧力が変化されることで、インクが排出されていない吐出領域91の吐出口108の損傷を抑制することが可能となる。第2パージ動作においては吐出領域91側から、インクが排出されていないため、第2パージ動作後のワイピング動作によって撥水膜が損傷されやすくなるが、上述のように、ワイパ51の吐出面1aに対する圧力を部分的に下げることで、インクが排出されていない側であっても撥水膜の損傷を抑制することができる。
また、ステップF5においては、第2フラッシング動作も行われる。つまり、メンテナンス制御部150が、第2ワイピング動作中に、ヘッド制御部143を介してヘッド1を制御して、吐出領域91の吐出口18においてフラッシングを開始する。つまり、図10(d)に示すように、ワイパ51の通過順であって、ワイパ51が通過した直後の吐出口108からインクが吐出される。このため、払拭時に浸入した色の異なるインクは、フラッシングによって排出される。
そして、メンテナンス制御部150は、ワイパ51が吸収体70bを通過した所定位置(図10(d)中2点鎖線で示す位置)に到達すると、駆動モータ59を制御して、その移動を一旦停止させる。このときまでには、第2フラッシング動作も終了されている。そして、メンテナンス制御部150が、駆動モータ59を正回転させ、ワイパ51がヘッド1と吸収体70bとの間の第1待機位置(図10(e)参照)に配置されるように戻す。これにより、ワイパ51の先端が、吸収体70bの下面と2回当接し、ワイパ51の先端に付着したインクが効果的に除去される。また、このとき、メンテナンス制御部150は、ワイパ51が第1状態となるように、ガイド支持機構58を制御する。
次に、メンテナンス制御部150は、図11(e)に示すように、ヘッド昇降機構33を制御してヘッド1を印刷位置に移動させる。この後、ヘッド制御部143が、各ヘッド1を制御して、すべての吐出口108からインクを吐出する(F6:第3吐出フラッシング動作)。
続けて、搬送ベルト43の洗浄液による清浄化が行われる。メンテナンス制御部150が、移動機構37cを制御してブレード37bを当接位置に移動させるとともに、搬送制御部141を介して搬送機構40を制御し、搬送ベルト43を走行させる(F7:クリーニング動作)。これにより、搬送ベルト43の外周面上の排出インクが、ブレード37bに掻き取られる。こうして、一連のメンテナンス動作が完了する。
次に、図12を参照し、印刷時に用紙Pのジャムが発生したときのメンテナンス動作について説明する。
まず、プリンタ101は、外部装置から印刷指令を受信する(G1)。このとき、画像データ記憶部142は、印刷指令に含まれる画像データをヘッド1からのインク吐出データとして記憶する。次に、ステップG2において、搬送制御部141が、給紙部23、ガイド部10a,10b、及び、搬送機構40を制御して、給紙部23から排紙部4に向けて用紙Pの搬送を開始する。このとき、処理液制御部145は、処理液体塗布機構2を制御し、ローラ2aを搬送ベルト43に当接させるとともに、処理液供給機構(不図示)を制御し、所定量だけ前処理液をローラ2aに供給する。また、このとき、ヘッド制御部143が、画像データ記憶部142に記憶された画像データに基づいて、各ヘッド1を制御して、用紙Pへの画像記録を開始する。
ステップG3において、ジャム検知部144はジャムが生じているか否かを判定し、ジャムが生じていない場合は、ステップG4に進み、ジャムが生じている場合はステップG5進む。ステップG4においては、制御部100が、印刷が終了しているか否かを判定し、終了していない場合はステップG3に戻る。印刷が終了すると、処理液制御部145が、処理液体塗布機構2を制御し、ローラ2aを搬送ベルト43から離隔させる。こうして、印刷フローが終了する。
ステップG5においては、制御部100がブザー28を制御して、ジャムが生じていることをユーザに知らせる。ジャム検知部144によりジャムが検知されると、ヘッド制御部143及び搬送制御部141は、各ヘッド1からのインク吐出、及び、用紙Pの搬送を停止する。
ユーザがブザー音に気付くことで、プリンタ101に対するジャム処理が施される。例えば、ヘッド1と搬送ベルト43との間において用紙Pにジャムが生じた場合は、ユーザが、このジャム状態の用紙Pを取り除く。その後、ユーザは押しボタン29を押す。押しボタン29は、筐体101aの天板に設けられており、ジャム状態の用紙Pを取り除いた後、ユーザによって押されるものである。そして、押しボタン29は、ユーザに押されることで、ジャムからの回復に対応するジャム処理完了信号を制御部100に出力する。これにより、ジャム処理完了信号を受信する(ステップG6)。制御部100は、ジャム処理完了信号を受信すると、音が鳴るのを停止するように、ブザー28を制御する。
次に、ステップG7において、第3パージ動作、ワイピング動作が行われる。このとき、ヘッド1は印刷位置にある。第3パージ動作では、メンテナンス制御部150が、各ポンプ38を制御し、ヘッド1のすべての吐出口108からインクを排出させる。そして、メンテナンス制御部150は、ヘッド昇降機構33を制御してヘッド1をワイピング位置に移動させる。そして、メンテナンス制御部150は、ガイド支持機構58を制御して、ワイパ51の上端を吐出面1aと平行にする。この後、メンテナンス制御部150は、駆動モータ59を制御して、ワイパユニット55を第1待機位置から第2待機位置へと移動させる。これにより、吐出面1aがワイパ51によって払拭され、ワイパ51に付着したインクも吸収体70aによって除去される。ジャムが生じた場合、用紙に付着した前処理液が吐出面1aに付着するおそれがある。前処理液が吐出面1aに付着すると、前処理液とインクとが混ざって、難溶性の金属複合体等が形成され、吐出口108が詰まるおそれがある。そのため、ジャムが生じた場合に、第1シーケンス及び第2シーケンスを行うと、第1シーケンスにおいて吐出領域92の吐出口108からのインクの排出が行われないため、吐出口108が詰まるおそれがある。本実施形態では、ジャムが生じた場合に、第3パージ動作を行い、第3パージ動作の後に払拭動作を行う。つまり、第3パージ動作において、吐出領域91及び92からインクの排出が行われるため、吐出口108の詰まりを抑制することができる。
この後、メンテナンス制御部150は、ヘッド昇降機構33を制御して、ヘッド1を退避位置に移動させる。メンテナンス制御部150は、駆動モータ59を制御して、ワイパユニット55を第2待機位置から第1待機位置へと移動させる。このとき、ヘッド1は退避位置にあるため、吐出面1aはワイパ51によって払拭されない。また、ワイパ51が第1待機位置に配置されると、メンテナンス制御部150は、ワイパ51が第1状態となるように、ガイド支持機構58を制御する。
次に、ステップG8において、上述のステップF7と同様なクリーニング動作が行われる。この後、メンテナンス制御部150は、ヘッド昇降機構33を制御してヘッド1を印刷位置に移動させ、ステップG2に戻る。こうして、搬送制御部141、ヘッド制御部143及び、処理液制御部145の制御により、ジャムによって行えなかった印刷を再開する。
こうして、ユーザによるジャム処理が完了した後、上述のような処理が行われ、ステップG4において、印刷が完了することで、フローが終了する。
以上に述べたように、本実施形態のプリンタ101によると、ジャム検知以外のパージ指令を受信した際に、吐出領域91又は吐出領域92だけからインクをパージした後に、吐出面1aを払拭することが可能となる。このため、払拭する直前では、吐出面1aに単色のインクしか付着しておらず、吐出面1a上でインクの混色が抑制される。この結果、各ワイピング動作において、混色したインクが吐出口108内に押し込まれにくくなり、各領域91,92における吐出口108内において、混色を抑制することが可能となる。
また、第1ワイピング動作における払拭方向Y1と、第2ワイピング動作における払拭方向Y2との方向が互いに反対であるため、これらワイピング動作を往復動作で行うことが可能となる。また、ステップF1で1つのパージ指令を受信すると、第1シーケンスに続けて第2シーケンスを行うため、吐出面1aを払拭するために要する時間が短くなる。
また、ワイパ51は主及び副走査方向に対して傾斜しているため、第1及び第2ワイピング動作において、各パージ動作で排出されたインクが、インクが排出されていない領域に移動しにくくなるため、吐出口における混色を抑制できる。また、第1ワイピング動作においては第1面51aが、第2ワイピング動作においては第2面51bが、吐出面1aを払拭するため、ワイパ51における混色を抑制することができる。また、突出部53a及び53bが設けられているため、第1及び第2ワイピング動作において、各パージ動作で排出されたインクが、インクが排出されていない領域により一層移動しにくくなるため、吐出口における混色を抑制できる。
また、清掃部材70が設けられていることで、各シーケンスで付着したインクをワイパ51から清掃することができる。このため、次回のワイピング動作を行う際に、吐出領域91(又は吐出領域92)から排出されたインクが吐出領域92(又は吐出領域91)の吐出口108により一層浸入しにくくなる。
また、吐出領域91の吐出口108から排出されるインクは、吐出領域92の吐出口108から排出されるインクよりも明度が小さい。これにより、第2パージ動作では、第1パージ動作におけるよりも明度の大きいインクが排出される。このため、第2ワイピング動作において、吐出領域91の吐出口108内に吐出領域92の吐出口108から排出されたインクが浸入しても、当該浸入するインクは明度が大きいため、混色の影響が小さい。また、第1ワイピング動作において、明度の小さいインクが吐出領域92の吐出口108内に浸入したとしても、当該浸入したインクは、第2パージ動作で外部に排出される。
また、第1ワイピング動作中に第1フラッシング動作が行われ、第2ワイピング動作中に第2フラッシング動作が行われるため、各ワイピング動作によって、異なる色のインクが吐出口108内に浸入しても、各フラッシング動作によって当該浸入したインクが吐出口108から排出される。このため、吐出口108内でのインクの混色をより抑制することが可能となる。
変形例として、各ワイピング動作が行われているときに、パージしていない吐出領域91,92の吐出口108からフラッシングが行われておればよい。このときのフラッシングのタイミングは、ワイパ51が通過する前であってもよいし、ワイパ51が通過して吐出口108からランダムにフラッシングが行われてもよい。これにおいても、吐出口108からインクが吐出されるので、吐出口108内でのインクの混色を抑制することが可能となる。
また、第2シーケンスの第2ワイピング動作が行われた後に、第3フラッシング動作が行われるため、吐出口108のインクメニスカスが安定する。このため、印刷品質が低下しない。また、吐出口108内での混色をより一層抑制することが可能となる。
また、別の変形例として、第1ワイピング動作後から第2シーケンスが行われるまでの間にも、第3フラッシング動作が行われていてもよい。こうすれば、さらに吐出口108のインクメニスカスが安定する。また、吐出口108内での混色をより一層抑制することが可能となる。
また、別の変形例として、吐出領域91,92同士が互いに重ならず、隙間を介して近接していてもよい。この場合、突出部53a,53bは、当該隙間と対向する位置に配置されておればよい。
また、別の変形例として、ワイパ51の上端部には、副走査方向に関して、中央から外側に向かうに連れて下方に傾斜する2つの傾斜部が形成されていてもよい。これら傾斜部のうち、一方の傾斜部は、ワイパ51が第1状態を取るときに、ちょうど、吐出面1aと平行な状態となり、他方の傾斜部は、ワイパ51が第2状態を取るときに、吐出面1aと平行な状態となる。このため、ワイパ51を第1又は第2状態としても、ワイパ51と吐出面1aとの接触圧が均等になる(特に外側における接触圧が過度に高くならない)。このため、吐出面1aがワイパ51によってより損傷しにくくなる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、ワイパ51は、副走査方向に沿って平行に延在していてもよい。この場合、各ワイピング動作が同じ方向に移動することで行われていてもよい。
また、ガイド支持機構58が設けられていなくてもよい。この場合、ワイパ51の吐出面1aに対する圧力を変化させることができないが、装置構成が簡易になるとともに、制御も簡単になる。ガイド支持機構58においては、ガイド57の高さを変化させてワイパ51の吐出面1aに対する圧力を変化させているが、姿勢変更機構は、吐出面1aの副走査方向両端の高さを変化させるようにヘッド1の姿勢を変更してもよいし、ヘッド1およびワイパ51の両者の姿勢を変更してもよい。
また、第1及び第2シーケンスが続けて行われていなくてもよいし、第2シーケンスの後に第1シーケンスが行われてもよい。また、清掃部材70が設けられていなくてもよい。また、突出部53a,53bが、ワイパ51に形成されていなくてもよい。
また、吐出領域91の吐出口108から排出されるインクは、吐出領域92の吐出口108から排出されるインクよりも明度が大きくてもよい。また、第1〜第3フラッシング動作の少なくともいずれか1つが行われていなくてもよい。
また、上述の実施形態のワイパユニット移動機構56においては、ワイパユニット55を主走査方向に移動させているが、移動機構は、ヘッド1を移動させてもよいし、ワイパユニット55及びヘッド1の両者を相対移動させてもよい。
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能である。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。さらに、本発明は、インクの吐出方式にかかわらず適用できる。例えば、本実施の形態では、圧電素子を用いたが、抵抗加熱方式でも、静電容量方式でもよい。