JP4691383B2 - 核酸マイクロアレイおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
今後、医療現場においては、費用が安価で、いわゆるベッドサイドでも検出・解析が可能なテーラーメイド医療に適するDNAチップ(マイクロアレイ)が求められている。本発明は、かかるDNAマイクロアレイおよびその製造方法などを提供することを目的とする。
(1) イオン化ガスとして不活性ガスを用いてイオンビーム処理された、または不活性ガス雰囲気下でプラズマ処理されたプラスチック基材上に核酸をUV照射により固定化してなる核酸マイクロアレイ。
(2) 前記プラスチックがポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリエチレンおよびポリメチルペンテンからなる群より選ばれたものである前記(1)に記載の核酸マイクロアレイ。
(3) 前記プラスチック基材の表面粗さRa(JIS B 0601−1994)が0.06〜0.5μmである前記(1)または(2)に記載の核酸マイクロアレイ。
(4) 前記核酸が50塩基以上の長さを有するものである前記(1)〜(3)いずれかに記載の核酸マイクロアレイ。
(5) 前記不活性ガスが窒素ガスである前記(1)〜(4)いずれかに記載の核酸マイクロアレイ。
(6) プラスチック基材を、イオン化ガスとして不活性ガスを用いてイオンビーム処理または不活性ガス雰囲気下でプラズマ処理する工程、および
処理後のプラスチック基材上に核酸をUV照射により固定する工程
を含む核酸マイクロアレイの製造方法。
(7) 前記プラスチックがポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリエチレンおよびポリメチルペンテンからなる群より選ばれたものである前記(6)に記載の製造方法。
(8) 前記不活性ガスが窒素ガスである前記(6)または(7)に記載の製造方法。
(9) 前記処理工程後のプラスチック基材と水との接触角θが60°以下である前記(6)〜(8)いずれかに記載の製造方法。
(10) 前記核酸が50塩基以上の長さを有するものである前記(6)〜(9)いずれかに記載の製造方法。
(11) 前記(1)〜(5)いずれかに記載の核酸マイクロアレイまたは前記(6)〜(10)いずれかに記載の製造方法により得られる核酸マイクロアレイと分析対象の核酸を含む試料とを接触させる工程、および
前記接触工程により形成された核酸ハイブリッドを検出する工程
を含む、特定の塩基配列を有する核酸の検出方法。
(12) 前記核酸ハイブリッドが標識されている前記(11)に記載の検出方法。
(13) 前記標識がアルカリホスファターゼである前記(12)に記載の検出方法。
ここで、本発明の核酸マイクロアレイは、核酸(プローブ)が一本鎖のDNAである場合、一般にDNAチップとも呼ばれる。
処理後のプラスチック基材上に核酸をUV照射により固定する工程
を含むことを特徴とする。
1)プラスチック基材表面を荒くすることで、表面積を増加させることにより、核酸の固定に適した表面形状の作製が達成されること、および
2)プラスチック基材表面の親水性を上げることで、前記プラスチック基材の前記溶液に対する濡れ性が向上すること
の両条件により、前記核酸を容易に固定することができる。すなわち、UV照射によりプラスチック基材への核酸の固定を行う場合、核酸固定時の表面の形状および表面の親水度が重要なファクターとなり、片方の条件のみ達成したのでは核酸の強固な固定は達成されない。プラズマ処理またはイオンビーム処理は、この2条件を達成するのに適した方法である。
前記核酸マイクロアレイまたは前記製造方法により得られる核酸マイクロアレイと分析対象の核酸を含む試料とを接触させる工程、および
前記接触工程により形成された核酸ハイブリッドを検出する工程
を含むことを特徴とする。
(1−1)分析対象の核酸(標的)の前処理
分析対象の核酸(標的)としては、その配列や機能が未知であるDNA断片試料またはRNA断片試料を用いることができる。前記標的核酸は、遺伝子発現を調べる目的では、生体の細胞や組織サンプルから単離することができる。標的核酸がmRNAの場合、逆転写反応によりcDNAとすることが好ましい。前記標的核酸は、遺伝子の変異や多型を調べる目的では、標識プライマーもしくは標識dNTPを含む反応系で標的領域の核酸を増幅させることが好ましいが、これに限定されるものではない。
ハイブリダイゼーションは、標的核酸、好ましくは標識した標的核酸が溶解あるいは分散した水性液を、本発明の核酸マイクロアレイ上に点着することによって実施することができる。点着の量は、目視または装置などで検出を容易にする観点から、1〜100μLの範囲にあることが好ましいが、これに限定されるものではない。ハイブリダイゼーションは、標的核酸とアレイに固定化された核酸とがハイブリッドを形成可能な条件下で行えばよいが、通常、約25〜70℃の温度範囲で、約10分〜24時間の範囲で実施することが好ましいが、これに限定されるものではない。ハイブリダイゼーション終了後、洗浄液を用いて洗浄を行い、未反応の標的核酸を除去する。洗浄液としては、緩衝液に界面活性剤を含有するものが例示される。
検出方法は、標識に応じて適宜設定することができる。RI標識の場合は、オートラジオグラフィーにより検出することができる。蛍光標識の場合は、それぞれの蛍光標識に適した励起波長の光を照射し、その蛍光強度を測定することにより、検出することができる。酵素標識の場合、各酵素の基質を添加して測定することができる。アルカリホスファターゼを用いた場合、例えば、基質としてp−ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)および5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルりん酸 p−トルイジン塩(BCIP)を添加し、その発色の程度を目視または、CCDカメラおよびデンシトメーターにより測定することができるが、これに限定されるものではない。
イオンビーム照射
プラスチック基材として押出成形されたポリカーボネート(PC)基板を用いた。
イオンビーム源として、小型ECRイオンシャワー装置(エリオニクス製、EIS−200ER)を用いた。PC基板を基板ホルダに取り付け、チャンバー内を約5.0×10−3〜3.0×10−4Paに排気した後、窒素を2.38sccmでチャンバー内に導入した。そして、プラズマ源内で50Wのマイクロ波を照射することにより窒素イオンを引き出し、600eVの電圧で加速することでPC基板表面に照射した。
DNAプローブとしては、配列番号1および2に示されるDNAプローブ(シグマジェノシスジャパン社提供)を用いた。配列番号1のDNAプローブは、第1エクソンと第2エクソンの間のイントロン領域内に存在するエストロゲン受容体対立遺伝子(XbaI多型)のうち、制限酵素XbaIにより切断される配列(X型)を検出することができるものである。一方、配列番号2のDNAプローブは、エストロゲン受容体対立遺伝子(XbaI多型)のうち、制限酵素XbaIにより切断されない配列(x型)を検出することができるものである。これらのDNAプローブに3’末端をターミナルトランスフェラーゼ(New England Biolab社製)を用いて、ポリチミンの付加を行った。具体的には、ターミナルトランスフェラーゼ(20unit/μl)を4μl、デオキシチミジン三リン酸(10pmol/μl)を10μl、配列番号1および2のDNAプローブ(50mM)を4μl、製品添付のNEBuffer4を5μl、および製品添付のカコジル酸緩衝液を5μl含んだ精製水50μlを調製した後、37℃で4時間反応させ、製品添付の20X SSC緩衝液50μlを加えることで、ポリチミン付加された核酸プローブ(平均約400bp長)2pmol/μlをそれぞれ得た。
x型検出用プローブ(配列番号2):gtggtctaga gttggg
次に、ポリチミン付加された配列番号1または2の核酸プローブを、それぞれ1.0pmol/μlとなるように、製品添付の10X SSC緩衝液で希釈し、前記イオンビーム処理されたPC基板上にそれぞれ0.5μLずつ塗布し、312nmの紫外線を2分間照射して固定化することで、核酸マイクロアレイを製造した。
実施例1において、イオンビーム照射しないこと以外は実施例1と同様にして、DNAマイクロアレイを製造した。
検体のゲノムDNAの増幅
xx型の検体のゲノムDNAを、配列番号3に示された塩基配列を有するフォワードプライマーおよび配列番号4に示された塩基配列を有し、かつ5’末端にビオチンを結合させたリバースプライマー、およびTaq DNAポリメラーゼ(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)を用いたPCR法によりXbaI多型を含む塩基配列の増幅を行った。増幅反応は、変性過程を94℃、30秒、アニール過程を55℃、20秒、鎖伸長過程を72℃、20秒の1サイクルを30サイクル行った。
リバースプライマー(配列番号4):cctgcaccag aatatgttac c
増幅したDNA溶液20μLに、水酸化ナトリウム(5M)、エチレンジアミン四酢酸(0.05M)の溶液(20μL)を加えてよく攪拌し、5分間放置して、増幅したDNAを1本鎖に変性させた。変性DNAを含む溶液に、ドデシル硫酸ナトリウム(0.01w/v%)、塩化ナトリウム(1.8w/v%)およびクエン酸ナトリウム(1.0w/v%)を含む溶液(1mL)を加え、実施例1または比較例1のマイクロアレイ1枚を浸潤させ、反応温度45℃で30分間振とうしてハイブリダイゼーションを行った。その後、アルカリホスファターゼ標識ストレプトアビジンを加え、さらにp−ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)および5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルりん酸 p−トルイジン塩(BCIP)を加えて、各プローブと結合した試料に結合したアルカリホスファターゼによる発色反応を行った。つまり、核酸の検出が正確な場合は、配列番号1の配列を含むDNAプローブは発色せず、配列番号2の配列を含むDNAプローブは発色することになる。
実施例1において、基板としてポリカーボネートの代わりにPMMAを用い、プローブとして、配列番号2の塩基配列にポリチミンを付加した核酸のみを固定したこと以外は、実施例1と同様にして、DNAマイクロアレイを製造した。
実施例2において、不活性ガスとして、窒素ガスの代わりにアルゴンを用いたこと以外は実施例2と同様にして、DNAマイクロアレイを製造した。
実施例1において、イオンビーム照射しないこと以外は実施例2と同様にして、DNAマイクロアレイを製造した。
実施例1および比較例1のPC基板製のマイクロアレイの代わりに、実施例2、3および比較例2のPMMA基板製のマイクロアレイを用いたこと以外は実験例1と同様にして、xx型の変異を含む核酸の検出を行った。
実施例2、3のDNAマイクロアレイ製造時において、核酸固定直前のPMMA基板と水との接触角θ(°)を測定した。具体的には,実施例2および3におけるイオンビーム照射直後のPMMA基板表面に0.25μLの蒸留水を滴下し、光学顕微鏡で測定した。
図3にPMMA基板に各種イオンビームを照射したときのイオンドーズ量(単位面積当りのイオン数)に伴う水とPMMA基板との接触角の変化を示す。図3に示すように、アルゴンおよび窒素イオンをそれぞれ照射した結果、ドーズ量が増加するに従ってPMMAと水との接触角が初期約80°であったものが、いずれの場合も20°以下に減少した。定量的には、接触角がそれぞれ実施例2では90%、実施例3では84%減少した。以上のことから、イオンビーム照射により、核酸固定時におけるプラスチック基材と水との接触角が60°以下であることがわかった。
実施例1において、イオンビーム処理の代わりにプラズマ処理を施したこと以外は実施例1と同様にして、DNAマイクロアレイを製造した。プラズマ処理は、小型高性能プラズマ表面処理装置(ヤマト科学社製、PDC200シリーズ)を用いた。PC基板を窒素雰囲気下のチャンバー内に配置し、約25℃、高圧(約20Pa)下、出力500Wで約600秒処理した。
実施例4において、プラズマ処理しないこと以外は実施例4と同様にして、DNAマイクロアレイを製造した。
実験例1において、実施例1および比較例1のマイクロアレイの代わりに、実施例4および比較例3のマイクロアレイを用いたこと以外は実験例1と同様にして、xx型の変異を含む核酸の検出を行った。
実施例1〜4および比較例1〜3で用いたプラスチック基板の表面粗さRaを、レーザ顕微鏡(キーエンス社製)を用いて測定した。具体的には、観察視野内の表面粗さの平均を製品添付の解析ソフトを用いて測定した。その結果を表1に示す。
実施例2、3および比較例2のPMMA基板の表面における元素組成比を、X線光電子分光分析装置(XPS、アルバックファイ社製)を用いて測定した。具体的には、X線源としてAl Kα線を用い、約25℃、減圧下(約10−5Pa以下)で帯電中和銃を用いながら測定した(分析面積:直径800μm)。
Claims (14)
- 不活性ガスをイオン化し、高速加速して得られたイオンビームをプラスチック基材の表面に照射することによって処理された、または不活性ガス雰囲気下で当該不活性ガスの電離作用によって生じるプラズマをプラスチック基材の表面に照射することによって処理された、表面粗さRa(JIS B 0601−1994)が0.06〜0.5μmであるプラスチック基材の表面に核酸をUV照射により固定化してなる核酸マイクロアレイ。
- 前記プラスチックがポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリエチレンおよびポリメチルペンテンからなる群より選ばれたものである請求項1に記載の核酸マイクロアレイ。
- 前記核酸が50塩基以上の長さを有するものである請求項1または2に記載の核酸マイクロアレイ。
- 前記核酸がポリdTオリゴマーを含む請求項1〜3いずれかに記載の核酸マイクロアレイ。
- 前記不活性ガスが窒素ガスである請求項1〜4いずれかに記載の核酸マイクロアレイ。
- プラスチック基材の表面に、不活性ガスをイオン化し、高速加速して得られたイオンビームまたは不活性ガス雰囲気下で当該不活性ガスの電離作用によって生じるプラズマを照射し、表面粗さRa(JIS B 0601−1994)が0.06〜0.5μmであるプラスチック基材を準備する工程、および
前記照射後のプラスチック基材の表面に核酸をUV照射により固定する工程
を含む核酸マイクロアレイの製造方法。 - 前記プラスチックがポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリエチレンおよびポリメチルペンテンからなる群より選ばれたものである請求項6に記載の製造方法。
- 前記不活性ガスが窒素ガスである請求項6または7に記載の製造方法。
- 前記準備工程で提供されるプラスチック基材と水との接触角θが60°以下である請求項6〜8いずれかに記載の製造方法。
- 前記核酸が50塩基以上の長さを有するものである請求項6〜9いずれかに記載の製造方法。
- 前記核酸がポリdTオリゴマーを含む請求項6〜10いずれかに記載の製造方法。
- 請求項1〜5いずれかに記載の核酸マイクロアレイまたは請求項6〜11いずれかに記載の製造方法により得られる核酸マイクロアレイと分析対象の核酸を含む試料とを接触させる工程、および
前記接触工程により形成された核酸ハイブリッドを検出する工程
を含む、特定の塩基配列を有する核酸の検出方法。 - 前記核酸ハイブリッドが標識されている請求項12に記載の検出方法。
- 前記標識がアルカリホスファターゼである請求項13に記載の検出方法。
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