JP4690800B2 - 水平軸風車 - Google Patents
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Description
加えて、ナセルのヨー回転を自在に駆動制御可能なヨー駆動手段、ヨー回転を制動するヨーブレーキ、ロータの回転を制動する主軸ブレーキ等の制御手段を水平軸風車に設けることも従来行われている。
また、今日の商業風車のほとんどは、アップウィンド型の水平軸風車の構成をとっている。アップウィンド型の水平軸風車は、タワーの風上側に配置されたロータが回転して発電する構成の水平軸風車である。
従来技術1は、一般的なアップウィンド・ストール制御風車であり、主軸をブレーキで固定して暴風時に待機するものである。待機時にヨーを固定することが基本である。その中にはヨー制御をしてロータを風向きに平行にして、荷重低減を図るものもある。ヨー制御可能であっても、ヨー制御に必要な電源が遮断される場合や、ヨー制御に関するいずれかの機器に故障が生じた場合は、全方位からの暴風を受ける可能性がある。したがって、全方位からの暴風を想定して設計する必要がある。一般にストール制御機の場合、正面ならびに背面からの暴風時に大きな荷重が発生する。
従来技術2は、一般的なアップウィンド・ピッチ制御機であり、ロータを遊転、ヨーを固定して暴風時に待機するものである。ピッチ制御機の中には、ヨー制御をしてロータを風上に向け、荷重低減を図るものもあるが、これはヨー制御に必要な電源があるとともに、各機器が故障なく機能していることが前提となる。一般にピッチ制御機の場合、横風ならびに斜め前方/後方から暴風時に大きな荷重が発生する。
従来技術3は、アップウィンド・ピッチ制御機であり、全翼のフェザーを確保した後に、ナセル方位角をヨー制御により約180deg反転させ、弱いヨーブレーキで保持して暴風時に待機するものである(例えば、非特許文献1参照)。これにより、暴風時にはロータが風下に靡き、タワーへの荷重を軽減することができる。
柴田昌明、林義之、「設計荷重低減のための新コンセプト」、風力エネルギー利用シンポジウム、平成15年11月20日、p.225−227
しかし、暴風時にロータをタワーより風下に向かせるためにヨーモータを用いてナセルのヨー回転を駆動する従来の構成では、台風などの暴風発生時に併発してヨーモータへの電源供給遮断、ヨーモータを含むヨー駆動系の故障が生じた場合に、ロータをタワーより風下に配置する動力を失うから、ロータをタワーより風下に靡かせる待機形態をとることができない。
前記ハブに接続された主軸を介して前記ロータを軸支するナセルと、
前記ナセルをヨー回転自在に支持するタワーと、
前記ブレードのピッチ角をそれぞれ独立に制御する独立ピッチ制御装置と、
前記ナセルのヨー回転を制御するヨー制御装置とを備え、
所定値以下の風速時に前記ヨー制御装置の制御により前記ロータを前記タワーより風上に配置し前記ロータの回転を介して風力を利用する運転モードと、前記所定値を超える風速時に前記運転モードに備えて待機する待機モードとを有するアップウィンド型の水平軸風車において、
(1)前記独立ピッチ制御装置は、前記所定値を超える風速時に、すべての前記ブレードをフェザーにする第1ステップと、前記第1ステップ後に前記ブレードを1枚のみフェザーからフラット側に変角し、前記ナセルのヨー角変位が生じた後に前記1枚のブレードをフェザーに戻す第2ステップと、前記第2ステップ後に前記運転モードの復帰まですべての前記ブレードをフェザーの状態に保持する第3ステップとからなる制御動作を有し、
(2)前記ヨー制御装置は、前記所定値を超える風速時に、風力により前記ナセルに負荷されるヨー軸周りのトルクによるヨー回転を許容する制動値にヨーブレーキを制御する制御動作を有し、
前記待機モードとして、前記(1)の制御動作を実行し、前記(2)の制御動作を前記第2ステップの実行前に実行して、前記ナセルのヨー角変位を前記第2ステップ及び前記第3ステップにおいて得ることにより前記ロータを前記タワーより風下に靡かせることを特徴とする水平軸風車である。
その後の第2ステップによりブレードを1枚のみフェザーからフラット側に変角する。このブレード1枚のみの変角によってロータに空力アンバランスが生じ、風力によりナセルに負荷されるヨー軸周りのトルクを大きくことがきる。このトルクによるヨー回転を許容する制動値にヨーブレーキを制御することによって、ナセルのヨー角変位を得ることができる。
その後、その1枚のブレードをフェザーに戻し、運転モードの復帰まですべてのブレードをフェザーの状態に保持するが、第2ステップによってナセルは風向きに対してヨー角変位を得ており、風力によりナセルに負荷されるヨー軸周りのトルクによるヨー回転を許容する制動値にヨーブレーキを制御しているので、さらなるヨー角変位を得てロータをタワーの風下側へ配置することができ、ロータをタワーより風下に靡かせることができる。
ナセルが風向きに正対した状態からナセルを風力により反転させようとすると、ナセルのヨー回転開始までに大きな風力を必要とし、高風速となってからヨー回転を開始するため、急激なヨー回転となり風車に大きな荷重が負荷される。しかし、本発明によれば、第2ステップ完了時にナセルは風向きに対して正対せず、ヨー角変位を得ているので、比較的緩やかなヨー回転によりさらなるヨー角変位を得てロータをタワーの風下側へ配置することができる。
ロータがタワーより風下に配置されると、第2ステップの完了によりすべてのブレードの後縁がタワー側を向いた状態となり第3ステップによりこれを保持しているから、すべてのブレードは後縁から風を受けることとなり、翼前縁が風上側に向けられた場合に比べて風によって作用する揚力が大幅に低減される。その結果、暴風時の待機姿勢として、ブレード及びタワーに最も荷重がかからない状態で待機できる姿勢が整う。
以上のようにナセルが風力により緩やかに風下側へ反転し、その後も風力によりヨー回転してロータをタワーより風下に靡かせるから、ヨー駆動手段が機能していなくともロータ及びブレード前縁が風下に靡く待機形態を確保でき、この待機形態により風車の暴風時設計荷重を低減することができるという効果がある。
ナセル2はハブ3に接続された主軸(図示略)を介してハブ3とブレード4a〜4cからなるロータを軸支する。タワー1は、ナセル2をヨー回転自在に支持する。
また、ナセル2の外面には図示しない風速計及び風向計が取り付けられている。
なお、ピッチ角とは、ロータの回転面とブレード断面翼弦とのなす角である
発電に適する風速帯域では、風向計10により検知した風向に基づきヨー制御装置15が制御してロータをタワー1より風上に配置し、風速計13により検知した風速やロータ回転数などに基づき独立ピッチ制御装置12が適度なピッチ角にブレード4a〜4cを制御しロータが風を受けて回転する。このロータの回転力は、ハブ3に接続された主軸に伝達され、主軸に連結されるとともにナセル2の内部に収納された発電機に伝達されることで、回転運動による運動エネルギーが電気エネルギーに変換される。ヨー駆動装置14はヨー制御装置15からの制御信号を受けてナセル2を回転させるときは、ヨーブレーキを解除するか又は軽くし、ナセル2を一定方向に保持するときは、ヨーブレーキを最大にする。
(第1ステップ)台風などの暴風時に、風速計13によって風速がカットアウト風速を超えたことが検出されると、独立ピッチ制御装置12がすべてのブレード4a〜4cをフェザーにする。これにより、ブレード4a〜4c及びタワー1に作用する風荷重を軽減する。ロータは停止し、発電は中断される。
所定の制動値は、ナセル2を一定方向に保持するときの制動値より低く設定する。所定の制動値を一定値とする場合、カットアウト風速を超える風を想定したときナセル2が激しくヨー回転しない程度に高い値とする。また、所定の制動値は、ナセル2のヨー回転に応じて変動するものであっても良い。例えば、風力によりナセル2に負荷されるヨー軸周りのトルクが小さくてもナセル2のヨー回転を許容するために小さくされる一方、ナセル2のヨー回転の角速度を一定以下に制限するために大きくされることにより変動してもよい。
ブレード4aをフェザーからフラット側に変角した場合の変角後の角度は、フラット(0deg)〜45deg程度である。この角度は、得られるヨー角変位に影響する。
ヨー制御装置15が検出するナセル2のヨー角に基づき、ナセル2のヨー角変位が30deg程度生じたとき独立ピッチ制御装置12は、1枚のブレード4aをフェザーに戻す。
このヨー角変位は、30deg程度以上得ることが好ましい。ナセルが風向きに正対した状態からナセルを風力により反転させようとすると、ナセルのヨー回転開始までに大きな風力を必要とし、高風速となってからヨー回転を開始するため、急激なヨー回転となり大きな荷重が風車に負荷されるからである。
このヨー角変位が30deg程度以上得られるように、ブレード4aをフェザーからフラット側に変角した場合の変角後の角度と、ナセル2のヨー回転を許容するため制動値を設定する。
まず、上記第1ステップの実行により、図1(a)に示すように、すべてのブレード4a〜4cがフェザーになり、ロータの回転は停止する。
その後も待機モード中は、ヨーブレーキは上述したヨー回転を許容する所定の制動値にされているから、風向きの変化に応じてナセル2がヨー軸周りに滑ってロータがタワーより風下に靡く。
以上のように本実施形態の水平軸風車によれば、ナセル2が風力によりヨー回転しロータをタワー1より風下に靡かせるから、ヨー駆動手段が機能していなくともロータ及びブレード前縁が風下に靡く待機形態を確保でき、この待機形態により風車の暴風時設計荷重を低減することができる。
初期ヨー角θy0の種々に変更して特定の風況下で生じるヨー角、ロータ曲げモーメント、ヨー水平力の変化を解析した。本解析に適用した風況を図3に示す。風向は一定で、風速が60秒間に10[m/s]から70[m/s]まで変化する風況である。
初期ヨー角θy0は、5,15,30,45[deg]の4種を設定した。ブレードは全てフェザー(ピッチ角約86度)で、ヨーブレーキトルクは400[kNm]である。
図4に示すように横軸0[sec]におけるヨー角は、初期ヨー角θy0であるから、各グラフは5,15,30,45[deg]の点にある。
θy0=5[deg]やθy0=15[deg]では、ロータが風下に安定するまでに比較的大きな振幅で何度か揺り動く。これに対しθy0=30[deg]やθy0=45[deg]では、ロータが風下に回った際の揺り戻しも小さく速やかにロータが風下に安定する。
θy0=15[deg]では、θy0=5[deg]のときに対し変化はやや緩和するが、約36秒後まで初期ヨー角を維持してその後ヨー回転を開始するとともにロータ曲げモーメント、ヨー水平力の値が上昇している。
以上の2例に対し、θy0=30[deg]やθy0=45[deg]では、約25秒後程度までしか初期ヨー角を維持しておらず、比較的早期にヨー回転を開始し、ロータ曲げモーメント、ヨー水平力の値は比較的低レベルに収まっている。
以上の4例についてヨー急変時刻、ヨー急変時風速、ロータ曲げモーメントの最大値、ヨー水平力の最大値を表1にまとめた。
3枚の翼のピッチ角をθb1,θb2,θb3とする。θb1を86,60,45,30[deg]と種々に変更し、θb2=86[deg],θb3=86[deg]として、図7に示す風況下におけるナセル方位角(ヨー角)の変化を解析した。解析結果のグラフを図8に示す。カットアウト風速を25m/secと想定して、図7に示すとおり風速、風向一定の風況とした。本解析に適用した翼のフェザーのピッチ角は86[deg]である。図8に示すように、すべて例について初めのナセル方位角は0deg、すなわち、ロータは風向きに正対している状態から開始し、ヨーブレーキトルクは始終400[kNm]とした。
これに対し、θb1=45[deg]の例では、約11秒後にナセル方位角が約45度まで変化してこの角度に落ち着き、θb1=30[deg]の例では、約11秒後にナセル方位角が約77度まで変化してこの角度に落ち着いた。
本解析では、全翼フェザーとした後1枚の翼のチッピ角(θb1)のみ45[deg]程度まで戻すことにより、30[deg]以上の初期ヨー角が得られることがわかった。
上記(1)(2)の解析例の結果をまとめると、全翼フェザーとした後1枚の翼のピッチ角のみ45[deg]程度以下まで戻すことにより、30[deg]以上の初期ヨー角θy0が得られ、フェザーのピッチ角に戻して全翼フェザーとした後も、急激なナセル回転を避け、風車に負荷される荷重を低減できることがわかった。
上記(1)(2)の解析例で得られた値は、本発明を実施した場合の水平軸風車の形状や大きさ、ヨーブレーキトルクの値に依存するため、一般論ではない。
しかしながら、全翼フェザーとした後、ヨーブレーキトルクを適度な値に制御し、1枚のブレードのピッチ角のみを適度にフラット側へ戻すことにより、適度な初期ヨー角θy0が得られて、急激なナセル回転を避け、風車に負荷される荷重を低減できることがわかった。
また、上記(1)(2)の解析例に倣い、個々の水平軸風車に対して解析や実験を行うことによって、θb1やヨーブレーキトルクの最適値を決定し、本発明を広く実用することができる。
2 ナセル
3 ハブ
4a,4b,4c ブレード
Claims (1)
- ハブと少なくとも2枚以上のブレードとを有するロータと、
前記ハブに接続された主軸を介して前記ロータを軸支するナセルと、
前記ナセルをヨー回転自在に支持するタワーと、
前記ブレードのピッチ角をそれぞれ独立に制御する独立ピッチ制御装置と、
前記ナセルのヨー回転を制御するヨー制御装置とを備え、
所定値以下の風速時に前記ヨー制御装置の制御により前記ロータを前記タワーより風上に配置し前記ロータの回転を介して風力を利用する運転モードと、前記所定値を超える風速時に前記運転モードに備えて待機する待機モードとを有するアップウィンド型の水平軸風車において、
(1)前記独立ピッチ制御装置は、前記所定値を超える風速時に、すべての前記ブレードをフェザーにする第1ステップと、前記第1ステップ後に前記ブレードを1枚のみフェザーからフラット側に変角し、前記ナセルのヨー角変位が生じた後に前記1枚のブレードをフェザーに戻す第2ステップと、前記第2ステップ後に前記運転モードの復帰まですべての前記ブレードをフェザーの状態に保持する第3ステップとからなる制御動作を有し、
(2)前記ヨー制御装置は、前記所定値を超える風速時に、風力により前記ナセルに負荷されるヨー軸周りのトルクによるヨー回転を許容する制動値にヨーブレーキを制御する制御動作を有し、
前記待機モードとして、前記(1)の制御動作を実行し、前記(2)の制御動作を前記第2ステップの実行前に実行して、前記ナセルのヨー角変位を前記第2ステップ及び前記第3ステップにおいて得ることにより前記ロータを前記タワーより風下に靡かせることを特徴とする水平軸風車。
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