JP2016008556A - 水平軸型風車及びその待機方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】タワー頂部に発生する曲げモーメントを低減し、風車倒壊のリスクを減らすことができること。【解決手段】本発明の水平軸型風車は、上記課題を解決するために、ハブと3枚以上のブレードから成るロータと、前記ハブに接続された回転軸を介して前記ロータを軸支するナセルと、該ナセルを支持するタワーと、少なくとも前記ブレードのピッチ角を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記ロータが遊転し、かつ、1枚の前記ブレードのピッチ角が制御不能になったことを検出すると共に、ピッチ角が制御不能になった前記ブレードを検出したら、正常な前記ブレードを、ファイン側若しくはネガティブファイン側となるピッチ角に設定することを特徴とする。【選択図】図9

Description

本発明は水平軸型風車及びその待機方法に係り、特に、ブレード全体の角度を変えることが可能なピッチ機構を有し、このブレードのピッチ機構が制御不能になった場合に対応した水平軸型風車及びその待機方法に関する。
近年、水平軸型風車が風力発電等の商業用として広く実用化されている。この水平軸型風車は、断面形状が翼型に形成された少なくとも2枚のブレードがハブから放射状に取付けられているロータと、ハブに接続されると共に、略水平方向に延在された回転軸を介してロータを軸支するナセルと、略鉛直方向に配置されると共に、ナセルを回転自在に支持するタワーとから概略構成されている。なお、一般的な水平軸型風車は、ナセルの回転運動であるヨー運動を自在に駆動制御可能なヨー駆動手段と、このヨー運動を制動するヨーブレーキと、ロータの回転を制動する回転軸ブレーキとを有して構成されている。
この水平軸型風車の1つであるダウンウィンド型の水平軸型風車は、タワーよりも風下側に配置されるように構成されたロータがブレードに受けた風の力によって回転され、その回転力が回転軸に伝達されることによって回転軸に接続された発電機が起動されて発電されるようになっている。なお、タワーの風上側に配置されたロータが回転されることにより発電可能に構成された水平軸型風車はアップウィンド型と呼ばれ、商業用風車として最も多く実用化されている。
ところで、上述した水平軸型風車においては、強風時に破損や倒壊を防ぐことを目的として、発電を停止し待機状態に移行する。水平軸型風車の待機状態においても、受風部である風車ロータは、風に晒されるため、暴風時には、風車の設計荷重となる大きな荷重が発生する場合がある。従って、水平軸型風車が、なるべく風圧を受けない状態で待機する方法を検討する必要がある。
水平軸型風車の待機状態において風圧を低減する方法として、ブレード全体の角度を変えることが可能なピッチ機構を有する水平軸型風車が、現在広く実用化されている。このブレード全体の角度を変えることが可能なピッチ機構を有する水平軸型風車においては、風車ロータが風に正対したときに、ブレードが風に対して平行となるピッチ角(フルフェザー)の状態で待機する対策が一般的に採られている。
一方、水平軸型風車の倒壊などの大きな事故は、台風時等の暴風に加えて、水平軸型風車が故障している時に発生することが多い。そのため、風車設計時には、そのような状況(例えば、水平軸型風車が故障した状況)を想定して設計することが求められている。従って、水平軸型風車が故障した状況において、水平軸型風車が受ける風圧を低減する対策を検討することは、大きな事故のリスクを低減することや経済的な設計をすることに有意義である。
このような水平軸型風車の故障時において荷重を低減する方法としては、例えば、特許文献1に記載された水平軸型風車が提案されている。この特許文献1に記載された水平軸型風車によれば、ヨー駆動手段が機能していなくても、ロータ及びブレード後縁が風下に靡くことにより荷重が低減されるとしている。
特開2006−16984号公報
上述した水平軸型風車の故障の中でも、リスクの大きなものとしてピッチ機構の故障(例えば、ピッチ角が変えられなくなるアクチュエータ(ピッチ駆動機構)の故障或いはエンコーダの故障)がある。
しかしながら、ピッチ機構が故障すると、風圧を小さくするフルフェザーピッチ角(フルフェザー)を維持できなくなり、ブレードに大きな荷重が発生する。特に、故障したピッチ機構のピッチ角が、ブレードの受風面積が大きくなる角度(ファイン角近傍)となり、そのブレードが上方(真上から±30度程度の範囲)にある場合には、タワー頂部に大きな曲げモーメントが発生し、風車倒壊のリスクが増大してしまう。
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、タワー頂部に発生する曲げモーメントを低減し、風車倒壊のリスクを減らすことができる水平軸型風車及びその待機方法を提供することにある。
本発明の水平軸型風車は、上記目的を達成するために、ハブと3枚以上のブレードから成るロータと、前記ハブに接続された回転軸を介して前記ロータを軸支するナセルと、該ナセルを支持するタワーと、少なくとも前記ブレードのピッチ角を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記ロータが遊転し、かつ、1枚の前記ブレードのピッチ角が制御不能になったことを検出すると共に、ピッチ角が制御不能になった前記ブレードを検出したら、正常な前記ブレードを、ファイン側若しくはネガティブファイン側となるピッチ角に設定することを特徴とする。
また、本発明の水平軸型風車の待機方法は、上記目的を達成するために、ハブと3枚以上のブレードから成るロータと、前記ハブに接続された回転軸を介して前記ロータを軸支するナセルと、該ナセルを支持するタワーと、少なくとも前記ブレードのピッチ角を制御する制御部とを備えた水平軸型風車が、発電を停止し待機状態に移行した際に、前記制御部で、前記ロータが遊転し、かつ、1枚の前記ブレードのピッチ角が制御不能になったことを検出したら、正常な前記ブレードを、ファイン側若しくはネガティブファイン側となるピッチ角に設定することを特徴とする。
本発明によれば、タワー頂部に発生する曲げモーメントを低減し、風車倒壊のリスクを減らすことができる効果がある。
本発明の水平軸型風車の実施例1であるダウンウィンド型の水平軸型風車を風上側から見た状態の図である。 図1の側面図である。 本発明の水平軸型風車の実施例1であるダウンウィンド型の水平軸型風車に搭載される制御部の構成を示すブロック図である。 図3に示した制御部が搭載された水平軸型風車を示す側面図である。 本発明の水平軸型風車であるダウンウィンド型の水平軸型風車におけるタワー頂部に曲げモーメントが発生するメカニズムを説明するための側面図である。 本発明の水平軸型風車であるアップウィンド型の水平軸型風車におけるタワー頂部に曲げモーメントが発生するメカニズムを説明するための側面図である。 本発明の水平軸型風車であるダウンウィンド型の水平軸型風車における正常なブレードのピッチ角を調整しスラスト力が大きくなった場合のタワー頂部の曲げモーメントへの影響を説明するための側面図である。 本発明の水平軸型風車であるアップウィンド型の水平軸型風車における正常なブレードのピッチ角を調整しスラスト力が大きくなった場合のタワー頂部の曲げモーメントへの影響を説明するための側面図である。 本発明の水平軸型風車の実施例1におけるロータの回転速度によるブレードの流入風への影響を示す図である。 本発明の水平軸型風車の実施例1における正常なブレードのピッチ角を調整しブレードに生ずる揚力が大きくなった場合のタワー頂部の曲げモーメントへの影響を説明するための正面図である。 図10の側面図である。 一般的な翼型における迎角に対する揚力係数と抗力係数の関係を示すとき製図である。 本発明の効果を確認するために本発明者等が行ったシミュレーションの結果であり、ケース1におけるピッチ角に対するタワー頂部の曲げモーメントの関係を示す特性図である。 本発明の効果を確認するために本発明者等が行ったシミュレーションの結果であり、ケース2におけるピッチ角に対するタワー頂部の曲げモーメントの関係を示す特性図である。 本発明の効果を確認するために本発明者等が行ったシミュレーションの結果であり、ケース3におけるピッチ角に対するタワー頂部の曲げモーメントの関係を示す特性図である。 本発明の効果を確認するために本発明者等が行ったシミュレーションの結果であり、ケース4におけるピッチ角に対するタワー頂部の曲げモーメントの関係を示す特性図である。 上述したケース1におけるピッチ角に対するロータ回転速度の関係を示す特性図である。 上述したケース2におけるピッチ角に対するロータ回転速度の関係を示す特性図である。 上述したケース3におけるピッチ角に対するロータ回転速度の関係を示す特性図である。 上述したケース4におけるピッチ角に対するロータ回転速度の関係を示す特性図である。
以下、図示した実施例に基づいて本発明の水平軸型風車及びその待機方法を説明する。なお、各図において、同一構成部品には同符号を使用する。また、下記はあくまでも実施例であり、本発明の実施態様を限定することを意図するものではない。
図1及び図2は、本発明の水平軸型風車の実施例1を示し、タワーよりも風下側にロータが配置されるダウンウィンド型の水平軸型風車の例である。
該図に示すように、本実施例の水平軸型風車は、断面形状が非対称の翼型に形成された3枚以上(本実施例では3枚)のブレード4a、4b、4cがハブ2から放射状に取付けられているロータ10と、ハブ2に接続されると共に、略水平方向に延在された主軸(図示せず)を介してロータ10を軸支するナセル3と、略鉛直方向に配置されると共に、ナセル3をヨー回転自在に支持するタワー1と、ブレード4a、4b、4cのピッチ角を制御する制御部(後述する)とから概略構成されている。なお、ナセル3の外面には、風速計6が取り付けられている(図4参照)。
また、ナセル3の内部には、図示しない増速機、発電機及び主軸ブレーキなどの動力伝達装置が収納されており、これらの各動力伝達装置には、主軸が連結されている。この主軸は、その先端がナセル3の外部に突出しており、この主軸の先端には、ロータ10が主軸と共に回転するように取り付けられており、ロータ10が、中心部に主軸と連結されたハブ2を有し、ハブ2の回転方向の周面には、3枚のブレード4a、4b、4cが放射状に取り付けられているものである。
図3に、本実施例の水平軸型風車に搭載される制御部の構成を、図4に、その制御部が搭載された水平軸型風車をそれぞれ示す。
図3及び図4に示すように、本実施例の水平軸型風車に搭載される制御部は、各ブレード4a、4b、4cのピッチ角を計測するために、各ブレード4a、4b、4cの付根部に設置されたピッチエンコーダ5と、各ブレード4a、4b、4cのピッチ角を変えるために駆動し、ハブ2と各ブレード4a、4b、4cの境界部分に設置されたピッチ駆動装置8と、タワー1内の底部に設置されると共に、ピッチエンコーダ5及びピッチ駆動装置8とそれぞれ線11a、11bを介して接続され、ピッチエンコーダ5で計測された各ブレード4a、4b、4cのピッチ角に基づいてピッチ駆動装置8に指令を出し、各ブレード4a、4b、4cのピッチ角を独立に制御する制御装置7とから構成されている。
制御装置7は、ピッチエンコーダ5で計測された各ブレード4a、4b、4cのピッチ角や、場合によっては線11cを介して制御装置7に接続されている風速計6で計測された風速データに基づいて、各ブレード4a、4b、4cのピッチ駆動装置8に指令を出すことにより、各ブレード4a、4b、4cのピッチ角を独立して制御することが可能である。
そして、本実施例では、ロータ10が遊転し、かつ、1枚のブレード4aのピッチ角が制御不能になったことを制御部で検出すると共に、ピッチ角が制御不能になったブレード4aを検出したら、正常なブレード4b、4cを、後述するファイン側若しくはネガティブファイン側となるピッチ角に設定するようにしたものである。具体的には、制御装置7でロータ10が遊転し、かつ、1枚のブレード4aのピッチ角が制御不能になったことを検出し、この制御装置7からの指令に基づいて、ピッチ駆動装置8で、正常なブレード4b、4cを、ファイン側若しくはネガティブファイン側となるピッチ角に設定するようにしたものである。
1枚のブレード4aのピッチ角が制御不能になったことの検出は、制御装置7からのピッチ角指令値とピッチエンコーダ5で計測されたピッチ角に差異があることを制御装置7で検出するか、或いはピッチエンコーダ5が故障している時の回転速度と設計値の回転速度に差異があることを制御装置7で検出することで行われるものである。
また、水平軸型風車の待機時には、正常なブレード4b、4cのうちの1つのピッチ角をフルフェザー角近傍(フルフェザー位置)にして待機することで、正常なブレードが風から受けるスラスト力を低減すると同時に、ロータ10が過回転となることを防ぐことができる。
なお、フルフェザー角とは、ロータ10が風に正対した場合に、いずれの方向にも回転しないピッチ角を指す。具体的には、実質的に90度であることを指す。ここで、実質的とは理想的には90度であるが、厳密なレベルで90度であることまでは必要としないことを意味する。
ところで、ブレード4a、4b、4cのうち1枚(例えば、ブレード4a)がピッチ制御不能となった場合には、タワー1の頂部に大きな曲げモーメントが発生する恐れがある。それは、図5に示すダウンウィンド型の水平軸型風車及び図6に示すアップウィンド型の水平軸型風車のように、制御不能となったブレード4aのピッチ角がファイン角又はネガティブファイン角付近(具体的には−20〜20度又は160〜200度程度)となり、そのブレード4aが上方に来た場合に生じる。そのとき、ロータ10の上側に大きなスラスト力F1が生じるのに対して、ロータ10の下側に生じるスラスト力F2は小さく、両者(F1とF2)のアンバランスにより、ロータ10に大きな曲げモーメントが発生する。その曲げモーメントがタワー1の頂部に伝わり、タワー1の頂部にあるベアリングなどが壊れる恐れがある。
制御不能となったブレード4aとは、例えば、ピッチが固着してブレード4aが動かなくなった場合や、ピッチを固定するブレーキが効かなくなりブレード4aが自由に動いてしまう場合などが挙げられる。
また、ファイン角とは、ロータ10が風に正対した場合に、ブレード4aが風向きに実質的に垂直となり、風からの抗力が最大値付近となる角度である。このファイン角の形成の仕方としては、実質的に0度と180度の2種類が存在する。ファイン角とは、特に実質的に0度の場合、ネガティブファイン角とは、特に実質的に180度の場合を意味する。なお、実質的とは、理想的には0度又は180度であるが、厳密なレベルで0度又は180度であることまでは必要としないことを意味する。
ここで、上述したタワー1の頂部に大きな曲げモーメントが伝わる際の荷重を、正常なブレード4b、4cのピッチ角を適切に設定することにより、低減することを検討する。
正常なブレード4b、4cのピッチ角を、フルフェザー角からずらすことによるタワー1の頂部の曲げモーメントへの影響としては、主に以下の3つがある。
1つ目は、図7に示すダウンウィンド型の水平軸型風車及び図8に示すアップウィンド型の水平軸型風車のように、正常なブレード4b、4cにスラスト力F3が発生し、ロータ10に加わるスラスト力F3のアンバランスが小さくなることで、タワー1の頂部の曲げモーメントが小さくなる。
2つ目は、ロータ10の回転速度が変わり、図9に示すように、ブレード4aに流入する風速や角度が変化する。これによる主な影響としては、制御不能のブレード4aに流入する風速が大きくなることで、ロータ10の上方に加わるスラスト力が大きくなり、タワー1の頂部の曲げモーメントが大きくなることである。
3つ目は、図10及び図11に示すように、正常なブレード4b、4cに揚力が発生し、その揚力の鉛直成分とロータ10及びタワー1中心とのオフセットにより、タワー1の頂部に曲げモーメントが発生する。鉛直上向きの揚力H1が発生する場合には、タワー1の頂部にロータ10と反対側に風車を倒す方向に曲げモーメントM1が働き、タワー1よりも風下側にロータ10が配置されるダウンウィンド型の水平軸型風車の場合に、タワー1の頂部の曲げモーメントが低減される。反対に、鉛直下向きに揚力H2が発生する場合には、タワー1の頂部にロータ10側に風車を倒す方向に曲げモーメントM2が働き、タワー1よりも風上側にロータ10が配置されるアップウィンド型の水平軸型風車の場合に、タワー1の頂部の曲げモーメントが低減される。
図12に、典型的な翼型における迎角に対する揚力係数及び抗力係数の関係を示す。ロータ10が風に正対している場合には、フルフェザー角(ピッチ角が実質90度)の場合に迎角が実質的に0度、ファイン角(ピッチ角が実質0度)の場合に迎角が実質的に90度、ネガティブファイン角(ピッチ角が実質180度)の場合に迎角が実質的に−90度になる。
図12に示すように、抗力係数Aは迎角0度付近では変化しないため、上述した1つ目の影響により荷重低減を図るには、フルフェザー角から比較的大きくピッチ角をずらす必要がある。しかし、そのようにするとロータ10の回転速度も上がる傾向になるため、上述した2つ目の影響により荷重が上がってしまい、ロータ10が過回転になるリスクが増える。一方、図12に示すように、揚力係数Bは0度付近で変化するため、上述した3つ目の影響は、フルフェザー角からそれほど大きくピッチ角をずらさなくても効果が出るというメリットがある。
そこで、本実施例は、上述した3つ目の影響を主に活用することで、荷重の低減を図るようにしたものである。
即ち、ダウンウィンド型の水平軸型風車の場合には、制御不能となったブレード4aから通常回転方向に0〜180度進んでいるブレードについては、フルフェザー角よりもネガティブファイン側にピッチ角を設定し、制御不能となったブレード4aから通常回転方向に0〜180度遅れているブレードについては、フルフェザー角よりもファイン側にピッチ角を設定するようにしたものである。
また、アップウィンド型の水平軸型風車の場合には、制御不能となったブレード4aから通常回転方向に0〜180度進んでいるブレードについては、フルフェザー角よりもファイン側にピッチ角を設定し、制御不能となったブレード4aから通常回転方向に0〜180度遅れているブレードついては、フルフェザー角よりもネガティブファイン側にピッチ角を設定するようにしたものである。フルフェザー角からずらす角度は、例えば40度以下とする。
なお、ロータ10の過回転のリスクを下げるため、正常なブレード4b、4cのうち1つをフルフェザー付近に設定することも1つの方法である。そのようにしない場合には、ロータ10の回転速度が大きくならないように注意して設定する必要がある。
タワー1の頂部の曲げモーメントが大きくなるのは、風速が高い場合に顕著であり、例えば、30m/s以上で本対策を実施する等の風速制限を適用することも考えられる。
このような本実施例とすることにより、1枚のブレードのピッチが制御不能になった場合において、ロータが過回転となるリスクの増加を抑えつつ、タワー頂部に発生する曲げモーメントを低減することができ、風車の倒壊リスクを低減することや経済的な風車設計が可能となる。
次に、本発明者等は、シミュレーションにより本発明の効果を確認したので、それについて説明する。なお、風車はロータ10がタワー1の風下側にくるダウンウィンド型の水平軸型風車を想定した。ロータ10の回転方向は、風上からみて時計回りに回る方向を通常(座標軸の正)とし、風上側から見て時計回りにブレード4a、4b、4cが設置されている。
解析ケースとしては、表1に示すケース1〜4の4つを実施した。いずれのケースにおいても、ブレード4aは制御不能となり、スラスト力が最大となるピッチ角0度で固まった状態とし、その他の正常なブレード4b、4cは、ピッチ角を振って設定した。
Figure 2016008556
ケース1及び2は、正常のブレード4b、4cのうち一方のピッチ角をフルフェザー角90度としてロータ10の回転速度が上昇するのを抑え、もう一方のピッチ角をファイン角0度からネガティブファイン角180度の各々の角度に設定して解析した。ケース3は、正常のブレード4b、4cの2枚を同じピッチ角とし、0〜180度の各々の角度に設定して解析した。ケース4は、正常のブレード4b、4cの2枚を90度を境に対称のピッチ角とし、0〜180度の各々の角度に設定して解析した。
風車に入力する風モデルは、平均風速55m/sの変動風とし、ナセル3の方位角と風向とのずれであるヨー角の平均値は−8、0、8度の各々に対して解析した。解析時間は1解析当たり10分間とした。
各ケースの、ピッチ角に対するタワー1の頂部の曲げモーメントの解析時間10分間における最大値を図13、図14、図15、図16に示す。ここで、ピッチ角90度からの増減を確認するため、ピッチ角90度の最大値で標準化した。また、ロータ10の回転速度の平均値を図17、図18、図19、図20に示す。
ここで、タワー1の頂部の曲げモーメントに対する評価を試みる。同じピッチ角でもヨー角の違いにより3つのデータがあるが、風向の変化によりいずれの状況も発生しうるため、最大値にて評価する。
正常なブレード4b、4cのうち一方を90度としたケース1及び2においては、正常な回転方向に対して120度遅れているブレード4cのピッチ角を操作するケース1(図13、図17)においては、フルフェザー角90度よりもファイン側(0度側)に設定すると、タワー1の頂部の曲げモーメントが小さくなり、正常な回転方向に対して120度進んでいるブレード4bのピッチ角を操作するケース2(図14、図18)においては、フルフェザー角90度よりもネガティブファイン側(180度側)に設定するとタワー1の頂部の曲げモーメントが小さくなることが分かる。フルフェザー角90度からの変位量が30〜40度程度までは減少し、最も小さくなるのはケース2(図14、図18)で、フルフェザーから40度ネガティブファイン側に操作した場合(130度付近)に、40%程度減少している。
正常なブレード4b、4cを同じピッチ角で設定したケース3(図15、図19)においては、いずれのピッチ角においてもフルフェザー角90度以上であり、荷重低減効果はみられない。
正常なブレード4b、4cの2枚を90度を境に対称の角度に設定したケース4(図16、図20)においては、正常な回転方向に対して120度進んでいるブレード4bのピッチ角をフルフェザー角90度よりもネガティブファイン側(180度側)、正常な回転方向に対して120度進んでいるブレード4bのピッチ角をファイン側(0度側)に設定した場合に荷重低減効果が大きいが、フルフェザー角90度からの偏差を大きくし過ぎると、ロータ回転速度(図20参照)が大きくなることで荷重が増加するので、ピッチ角の設定には注意が必要である。
以上の解析結果から、本発明によれば、ロータが過回転となるリスクの増加を抑えつつ、タワー頂部に発生する曲げモーメントを低減できることが理解される。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、さまざまな変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。実施例の構成の一部について、構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
1…タワー、2…ハブ、3…ナセル、4a、4b、4c…ブレード、5…ピッチエンコーダ、6…風速計、7…制御装置、8…ピッチ駆動装置、10…ロータ、11a、11b、11c…線。

Claims (14)

  1. ハブと3枚以上のブレードから成るロータと、前記ハブに接続された回転軸を介して前記ロータを軸支するナセルと、該ナセルを支持するタワーと、少なくとも前記ブレードのピッチ角を制御する制御部とを備え、
    前記制御部は、前記ロータが遊転し、かつ、1枚の前記ブレードのピッチ角が制御不能になったことを検出すると共に、ピッチ角が制御不能になった前記ブレードを検出したら、正常な前記ブレードを、ファイン側若しくはネガティブファイン側となるピッチ角に設定することを特徴とする水平軸型風車。
  2. 請求項1に記載の水平軸型風車において、
    前記制御部は、前記各ブレードのピッチ角を計測するピッチエンコーダと、前記各ブレードのピッチ角を変えるために駆動するピッチ駆動装置と、前記ピッチエンコーダで計測された前記各ブレードのピッチ角に基づいて前記ピッチ駆動装置に指令を出し、前記各ブレードのピッチ角を独立に制御する制御装置とから成り、
    前記制御装置で前記ロータが遊転し、かつ、1枚の前記ブレードのピッチ角が制御不能になったことを検出し、該制御装置からの指令に基づいて、前記ピッチ駆動装置で正常な前記ブレードを、ファイン側若しくはネガティブファイン側となるピッチ角に設定することを特徴とする水平軸型風車。
  3. 請求項2に記載の水平軸型風車において、
    1枚の前記ブレードのピッチ角が制御不能になったことの検出は、前記制御装置からのピッチ角指令値と前記ピッチエンコーダで計測されたピッチ角に差異があることを前記制御装置で検出するものであることを特徴とする水平軸型風車。
  4. 請求項2に記載の水平軸型風車において、
    1枚の前記ブレードのピッチ角が制御不能になったことの検出は、前記ピッチエンコーダが故障している時の回転速度と設計値の回転速度に差異があることを前記制御装置で検出するものであることを特徴とする水平軸型風車。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水平軸型風車において、
    前記タワーよりも風下側に前記ロータが配置されるダウンウィンド型の水平軸型風車は、前記制御不能になったブレードより通常回転方向に0〜180度遅れているブレードをフルフェザー位置よりもファイン側に、又は前記制御不能になったブレードより通常回転方向に0〜180度進んでいるブレードをフルフェザー位置よりもネガティブファイン側に設定することを特徴とする水平軸型風車。
  6. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水平軸型風車において、
    前記タワーよりも風上側に前記ロータが配置されるアップウィンド型の水平軸型風車は、前記制御不能になったブレードより通常回転方向に0〜180度進んでいるブレードをフルフェザー位置よりもファイン側に、又は前記制御不能になったブレードより通常回転方向に0〜180度遅れているブレードをフルフェザー位置よりもネガティブファイン側に設定することを特徴とする水平軸型風車。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の水平軸型風車において、
    前記水平軸型風車の待機時に、正常な前記ブレードの1つのピッチ角を、フルフェザー位置に設定することを特徴とする水平軸型風車。
  8. ハブと3枚以上のブレードから成るロータと、前記ハブに接続された回転軸を介して前記ロータを軸支するナセルと、該ナセルを支持するタワーと、少なくとも前記ブレードのピッチ角を制御する制御部とを備えた水平軸型風車が、発電を停止し待機状態に移行した際に、
    前記制御部で、前記ロータが遊転し、かつ、1枚の前記ブレードのピッチ角が制御不能になったことを検出したら、正常な前記ブレードを、ファイン側若しくはネガティブファイン側となるピッチ角に設定することを特徴とする水平軸型風車の待機方法。
  9. 請求項8に記載の水平軸型風車の待機方法において、
    前記制御部は、前記各ブレードのピッチ角を計測するピッチエンコーダと、前記各ブレードを、そのピッチ角を変えるために駆動するピッチ駆動装置と、前記ピッチエンコーダで計測された前記各ブレードのピッチ角に基づいて前記ピッチ駆動装置に指令を出し、前記各ブレードのピッチ角を独立に制御する制御装置とから成り、
    前記制御装置で前記ロータが遊転し、かつ、1枚の前記ブレードのピッチ角が制御不能になったことを検出し、その後、前記制御装置からの指令に基づいて、前記ピッチ駆動装置で正常な前記ブレードを、ファイン側若しくはネガティブファイン側となるピッチ角に設定することを特徴とする水平軸型風車の待機方法。
  10. 請求項9に記載の水平軸型風車の待機方法において、
    1枚の前記ブレードのピッチ角が制御不能になったことは、前記制御装置からのピッチ角指令値と前記ピッチエンコーダで計測されたピッチ角に差異があることを前記制御装置で検出するものであることを特徴とする水平軸型風車の待機方法。
  11. 請求項9に記載の水平軸型風車の待機方法において、
    1枚の前記ブレードのピッチ角が制御不能になったことは、前記ピッチエンコーダが故障している時の回転速度と設計値の回転速度に差異があることを前記制御装置で検出するものであることを特徴とする水平軸型風車の待機方法。
  12. 請求項8乃至11のいずれか1項に記載の水平軸型風車の待機方法において、
    前記タワーよりも風下側に前記ロータが配置されるダウンウィンド型の水平軸型風車の場合は、前記制御不能になったブレードより通常回転方向に0〜180度遅れているブレードをフルフェザー位置よりもファイン側に、又は前記制御不能になったブレードより通常回転方向に0〜180度進んでいるブレードをフルフェザー位置よりもネガティブファイン側に設定することを特徴とする水平軸型風車の待機方法。
  13. 請求項8乃至11のいずれか1項に記載の水平軸型風車の待機方法において、
    前記タワーよりも風上側に前記ロータが配置されるアップウィンド型の水平軸型風車の場合は、前記制御不能になったブレードより通常回転方向に0〜180度進んでいるブレードをフルフェザー位置よりもファイン側に、又は前記制御不能になったブレードより通常回転方向に0〜180度遅れているブレードをフルフェザー位置よりもネガティブファイン側に設定することを特徴とする水平軸型風車の待機方法。
  14. 請求項8乃至13のいずれか1項に記載の水平軸型風車の待機方法において、
    正常な前記ブレードの1つのピッチ角を、前記水平軸型風車の待機時にはフルフェザー位置に設定することを特徴とする水平軸型風車の待機方法。
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