JP2004011543A - 水平軸型風車 - Google Patents

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Abstract

【課題】水平軸型風車において、ブレードの過回転を防止して強風時等の安全性を高めるとともに、ロータに作用する荷重を格段に低減させて装置の軽量化および装置の建設コストの低減化を図る。
【解決手段】略水平方向に延在する回転自在な主軸と、この主軸に取り付けられたハブ31およびハブ31にピッチ変更自在に取り付けられたブレード32a、32bを有するロータ30と、を備える水平軸型風車1において、カットアウト風速を超える風速の風が作用した場合にブレード32a、32bの各々のピッチを独立して可変制御して、一のブレード32aのピッチをフルフェザー位置に、残りのブレード32bのピッチをフルフラット位置に、各々設定するピッチ制御機構を備える。
【選択図】    図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水平軸型風車に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自然風から安定した電力を得る目的で、水平軸型風車が提案され、実用化されている。この水平軸型風車には、強風時におけるブレードの過回転を防止する目的で各種ブレーキが設けられているが、このブレーキが何らかの要因によって故障したり、不測の停電が発生したりする場合がある。このため、ブレードの過回転防止手段を2重以上設けて冗長性を確保している。
【0003】
ブレードの過回転防止手段の一例としては、水平軸型風車のブレードの翼端に設けられる空力ブレーキが挙げられる。空力ブレーキは、遠心力や油圧によって、ブレードの過回転時に翼端部が略90°回転しながら半径方向外側に突出するものであり、空力ブレーキに作用する空気抵抗によってブレードの過回転を抑制することができる。
【0004】
一方、ブレード全体をフェザー側に操舵してブレードのピッチを変更することによって、ブレードの過回転状態を抑制するピッチ可変機構が提案されている。このようなピッチ可変機構としては、単一の油圧シリンダとこれに連結されたリンクによって全てのブレードを連動させる連動型の機構や、各ブレードを各々独立したアクチュエータによって駆動制御する独立型の機構が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ブレードの過回転防止手段として空力ブレーキを採用すると、通常ブレードのピッチ角は固定されているため、強い正面風が作用した場合にロータが大きな荷重を受けてしまう。また、ピッチ可変機構を採用した場合には、ブレードの過回転防止のためにブレードのピッチをフルフェザー位置に設定するが、この状態で停電が発生するとブレードがフルフェザー位置で固定されてしまうため、強い横風によってロータに大きな荷重が作用する。このため、タワーや基礎の設計強度を高める必要があり、水平軸型風車の重量の増加や建設コストの増大をもたらしていた。
【0006】
本発明の課題は、水平軸型風車において、ブレードの過回転を防止して強風時等の安全性を高めるとともに、ロータに作用する荷重を格段に低減させて装置の軽量化及び装置の建設コストの低減化を図ることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、略水平方向に延在する回転自在な主軸と、前記主軸に取り付けられたハブ及び前記ハブにピッチ変更自在に取り付けられた2枚以上のブレードを有するロータと、を備える水平軸型風車において、カットアウト風速を超える風速の風が作用した場合に前記ブレードの各々のピッチを独立して可変制御して、一の前記ブレードのピッチをフルフェザー位置に、残りの前記ブレードのピッチをフルフラット位置に、各々設定するピッチ制御機構を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、カットアウト風速を超える風速の風が作用した場合に、ピッチ制御機構によって一のブレードのピッチをフルフェザー位置に設定することができるので、ブレードの過回転を抑制することができる。
【0009】
また、請求項1に記載の発明によれば、カットアウト風速を超える風速の風が作用した場合に、ピッチ制御機構によって一のブレードのピッチをフルフェザー位置に、残りのブレードのピッチをフルフラット位置に、各々設定することができるので、ロータに作用する荷重を格段に低減させることができる。
【0010】
例えば、カットアウト風速を超える風速の正面風や背風が作用した場合において、ピッチをフルフラット位置に設定したブレード(以下、「フルフラットブレード」という)を正面風や背風の風下側に靡かせることができる。また、カットアウト風速を超える風速の正面風や背風が作用した場合でも、ピッチをフルフェザー位置に設定したブレード(以下、「フルフェザーブレード」という)が受ける荷重はきわめて小さい。従って、ブレードのピッチを全てフルフラット位置に設定した場合と比較すると、ロータに作用する荷重は格段に低減することとなる。この結果、装置全体の軽量化及び装置の建設コストの低減化を図ることができる。
【0011】
また、カットアウト風速を超える風速の横風が作用した場合において、例えばブレードを2枚とした場合には、フルフェザーブレードが横風の風下側に靡くようにロータが回転し、このフルフェザーブレードが略水平に配置されて釣り合った状態となる。この状態においてカットアウト風速を超える風速の横風が作用した場合でも、フルフラットブレードに作用する荷重はきわめて小さい。従って、ブレードのピッチを全てフルフェザー位置に設定した場合と比較すると、ロータに作用する荷重は格段に低減することとなる。この結果、装置全体の軽量化及び装置の製造コストの低減化を図ることができる。
【0012】
さらに、カットアウト風速を超える風速の横風が作用した場合において、例えばブレードを3枚とした場合には、1枚のフルフェザーブレードが横風の風下側に靡くようにロータが回転し、このフルフェザーブレードが略水平に配置され、他の2枚のフルフラットブレードが上下に配置されて釣り合った状態となる。この状態においてカットアウト風速を超える風速の横風が作用した場合でも、2枚のフルフラットブレードに作用する荷重はきわめて小さい。従って、ブレードのピッチを全てフルフェザー位置に設定した場合と比較すると、ロータに作用する荷重は格段に低減することとなる。この結果、装置全体の軽量化及び装置の建設コストの低減化を図ることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の水平軸型風車において、停電が発生した場合に、一の前記ブレードのピッチをフルフェザー位置に、残りの前記ブレードのピッチをフルフラット位置に、各々設定するピッチ予備制御手段を備えるとともに、前記ブレードは、停電が発生した場合にピッチ軸周りの回転拘束が解除されることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、停電が発生した場合においても、ピッチ予備制御手段によって、一のブレードのピッチをフルフェザー位置に、残りのブレードのピッチをフルフラット位置に、各々設定することができる。従って、停電が発生した場合においても、ピッチ制御機構による制御と同様の作用効果を発揮することができ、冗長性を確保することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の水平軸型風車において、前記ピッチ予備制御手段は、前記ピッチ制御機構の故障が発生した場合に、一の前記ブレードのピッチをフルフェザー位置に、残りの前記ブレードのピッチをフルフラット位置に、各々設定するものであるとともに、前記ブレードは、前記ピッチ制御機構の故障が発生した場合にピッチ軸周りの回転拘束が解除されることを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、ピッチ制御機構の故障が発生した場合においても、ピッチ予備制御手段によって、一のブレードのピッチをフルフェザー位置に、残りのブレードのピッチをフルフラット位置に、各々設定することができる。従って、ピッチ制御機構の故障が発生した場合においても、ピッチ制御機構による制御と同様の作用効果を発揮することができ、さらなる冗長性を確保することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水平軸型風車において、一の前記ブレードのピッチがフルフェザー位置に、残りの前記ブレードのピッチがフルフラット位置に、各々設定された場合に、ロータ軸周りの回転拘束が解除されることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
[第1の実施の形態]
本実施の形態においては、水平軸型風車とその制御方法について説明する。図1は、本実施の形態に係る水平軸型風車1の概要を示す斜視図である。水平軸型風車1は、タワー10と、このタワー10の頂部に取り付けられたナセル20と、このナセル20に略水平方向に延在して軸支された(図示されていない)主軸と、この主軸に取り付けられたロータ30と、を備えている。
【0020】
タワー10の頂部には、偏揺機構が設けられている。この偏揺機構によって、タワー10の頂部に取り付けられたナセル20を略水平面内で回動させることができ、ナセル20に取り付けられたロータ30の回転面を平均風向きの方向に正対させることができる。なお、本実施の形態におけるタワー10の基部の直径は2m、頂部の直径は1m、高さは20mとされている。
【0021】
ナセル20は、その内部に発電機、ギアボックス、コントローラ等の各種機器を搭載しており、タワー10の頂部に回動自在に取り付けられる。このナセル20には、水平軸型風車に作用する正面風、背風及び横風の速度を検出するセンサが搭載されている。なお、本実施の形態におけるナセル20の正面投影面積は4m、側面投影面積は8mとされている。
【0022】
ロータ30は、主軸の一端に取り付けられたハブ31と、このハブ31に取り付けられた2枚のブレード32a、32bと、を有するものである。各ブレード32a、32bのピッチ角は、後述するピッチ制御機構によって、独立して可変制御される。なお、本実施の形態におけるロータ30の直径は20m、ブレード32a(32b)の平面積は6mとされている。
【0023】
本実施の形態に係る水平軸型風車1は、ロータ30の各ブレード32a、32bのピッチを独立して可変制御するピッチ制御機構を備える。このピッチ制御機構について、ロータ30のハブ31からブレード32aを取り外した状態の斜視図である図2を用いて説明する。
【0024】
図2に示すように、ハブ31にはベアリング31aを介してリングギア31bが回動自在に取り付けられており、このリングギア31bにブレード32aの端部が取り付けられる。ハブ31の内部には、ピニオン31cを有するアクチュエータ31dが設けられており、このピニオン31cはリングギア31bと噛み合っている。そして、図示していないモータによってアクチュエータ31dのピニオン31cを回転させ、リングギア31bを回転させることによってブレード32aを回転させることができ、ブレード32aのピッチを変化させることができる。
【0025】
これらベアリング31a、リングギア31b、ピニオン31c及びアクチュエータ31dと同一の構成要素がブレード32b側にも設けられており、ブレード32a、32bのピッチを独立に変化させることができる。なお、ブレード32a駆動用のアクチュエータ31d及びブレード32b駆動用のアクチュエータは外部電源から電力を得ており、共通のモータ及び制御装置によって駆動制御される。以上説明したベアリング31a、リングギア31b、ピニオン31c、アクチュエータ31d、モータ及び制御装置によって、ピッチ制御機構が構成される。
【0026】
なお、運転中に停電が発生してモータへの電流供給が中断された場合には、アクチュエータ31dのピニオン31cの回転拘束が解除され、リングギア31bが回転自在となるように構成されている。このため、停電が発生した場合には、ブレード32a、32bのピッチ軸周りの回転拘束が解除され、後述するピッチ付勢手段の作用により、一方のブレード32aのピッチがフルフェザー位置に、他方のブレード32bのピッチがフルフラット位置に、各々設定されるようになっている。また、このとき、同時にロータ30のロータ軸周りの回転拘束が解除されるようになっている。
【0027】
また、ピッチ制御機構を構成するベアリング31a、リングギア31b、ピニオン31c、アクチュエータ31d及びモータの何れかに故障が発生した場合には、故障していない残りのブレードのピッチをフルフェザー位置又はフルフラット位置に設定することにより、安全性を確保することとしている。
【0028】
本実施の形態に係る水平軸型風車1は、停電が発生したり、ピッチ制御機構の構成要素に故障が発生したりしてモータに電流が供給されなくなった場合においても、一方のブレード32aのピッチをフルフェザー位置に、他方のブレード32bのピッチをフルフラット位置に、各々設定するピッチ予備制御手段を備えている。このピッチ予備制御手段について説明する。
【0029】
ピッチ予備制御手段は、ピッチ規制手段及びピッチ付勢手段から構成される。ピッチ規制手段は、図2に示したハブ31のベアリング31aに突設されたフェザー用係止部40と、ブレード32aの端部に設けられこのフェザー用係止部40に当接可能な図示していない係合部と、を備える。ブレード32aの係合部が、ハブ31のフェザー用係止部40に当接した場合に、ブレード32aのピッチがフルフェザー位置に規制される。
【0030】
一方、図2には示していないが、ブレード32b側のハブのベアリングにフラット用係止部が設けられるとともに、ブレード32bの端部にこのフラット用係止部に当接可能な係合部が設けられており、これらによってもピッチ規制手段が構成される。そして、ブレード32bの係合部が、ハブ31のフラット用係止部に当接した場合に、ブレード32bのピッチがフルフラット位置に規制されることとなる。
【0031】
なお、本実施の形態においてはブレード32a(32b)の係合部近傍に、図示していない緩衝手段(ダンパ)を設けているため、ブレード32a(32b)の係合部とハブ31のフェザー用(フラット用)係止部とが当接する際の衝撃を緩和することができる。
【0032】
本発明において「フルフェザー位置」とは、ブレード32aが、ロータ30のトルク出力を零にするようなピッチ角に設定された状態(例えば、ブレード32aのピッチ角θを図3に示したように定義すると、θが約+90degに設定された状態)を意味する。
【0033】
また、本発明において「フルフラット位置」とは、ブレード32bが、通常運転時におけるピッチ角よりフラット(正面風に対して略直角な状態)にされ、ロータ30にほとんど回転力が発生しないピッチ角に設定された状態(例えば、図3に示したθが約−15degに設定された状態)を意味する。
【0034】
ピッチ付勢手段は、ブレード32aをフェザー方向へ、ブレード32bをフラット方向へ、各々駆動する図示されていないバネで構成されている。このバネによる付勢力は、ブレード32a、32bに作用する空気力モーメントに対して充分に対抗できる大きさとされている。ピッチ付勢手段は、ブレード32a、32bのピッチ軸周りの回転拘束力が解除された場合に、ブレード32aをフルフェザー位置まで、ブレード32bをフルフラット位置まで、各々回転させるように機能するものである。
【0035】
次いで、本実施の形態に係る水平軸型風車1のピッチ制御動作について、図4及び図5を用いて説明する。
【0036】
まず、正常運転時においては、風速変動等に基づく予め設定された制御条件に従って発せられる制御装置からの信号によって、ピッチ制御機構の各アクチュエータ31dを駆動し、各ピニオン31cを正逆回転駆動し、各ピニオン31cに噛み合うリングギア31bを回転駆動して、各ブレード32a、32bのピッチを独立して可変制御する。
【0037】
ここで、運転中に、ナセル20に搭載されたセンサによって、水平軸型風車1にカットアウト風速を超える風速の風が作用している旨が検出された場合には、ピッチ制御機構によって、一方のブレード32aのピッチをフルフェザー位置に、他のブレード32bのピッチをフルフラット位置に、各々設定する。
【0038】
カットアウト風速を超える風速の正面風(背風)が作用した場合において、前記した制御動作を行った水平軸型風車1の正面図及び側面図を、図4(a)及び(b)に示した。また、カットアウト風速を超える風速の横風が作用した場合において、前記した制御動作を行った水平軸型風車1の正面図及び側面図を、図5(a)及び(b)に示した。なお、本実施の形態においては、カットアウト風速を25m/sと設定している。
【0039】
表−1は、本実施の形態に係る水平軸型風車に風速60m/sの風が作用した場合において、ブレード32a、32bの双方のピッチをフルフラット位置に設定した場合における風車基部のスラスト荷重(kN)及び転倒モーメント(kNm)と、ブレード32a、32bの双方のピッチをフルフェザー位置に設定した場合における風車基部のスラスト荷重(kN)及び転倒モーメント(kNm)と、ブレード32aをフルフラット位置に他方のブレード32bをフルフェザー位置に各々設定した場合における風車基部のスラスト荷重(kN)及び転倒モーメント(kNm)と、を示したものである。
【0040】
【表1】
Figure 2004011543
【0041】
表−1に示されるように、本実施の形態に係る水平軸型風車1のブレード32aをフルフラット位置に、他方のブレード32bをフルフェザー位置に、各々設定した場合においては、ブレード32a、32bの双方のピッチをフルフラット位置に設定した場合と比較すると、ブレードに作用するスラスト荷重(kN)及び転倒モーメント(kNm)は、ともに87%に低減していることがわかる。
【0042】
また、表−1に示されるように、本実施の形態に係る水平軸型風車1のブレード32aをフルフラット位置に、他方のブレード32bをフルフェザー位置に、各々設定した場合においては、ブレード32a、32bの双方のピッチをフルフェザー位置に設定した場合と比較すると、ブレードに作用するスラスト荷重(kN)は77%に低減するとともに、転倒モーメント(kNm)は69%に低減していることがわかる。
【0043】
また、運転中に、2枚のブレード32a、32bのうち何れか一方のブレード(例えばブレード32a)を駆動制御するピッチ制御機構に異常が発生し、フラット位置(運転時におけるピッチ角の位置)で固着した場合には、他の正常に作動するブレード32bのアクチュエータ31dのピニオン31cによってリングギア31bを回転させて、ブレード32bのピッチをフルフェザー位置又はフルフラット位置に設定する。
【0044】
一方、運転中に停電が発生したり、ピッチ制御機構を構成する構成要素に故障が発生したりしてモータに電流が供給されなくなった場合には、アクチュエータ31dのピニオン31cの回転拘束が解除され、各ブレードに設けたピッチ付勢手段が機能してブレード32aがフルフェザー位置まで、ブレード32bがフルフラット位置まで、各々回転する。なお、このとき、同時にロータ軸周りの回転拘束も解除される。
【0045】
本実施の形態に係る水平軸型風車1においては、カットアウト風速(25m/s)を超える風速の風が作用した場合に、ピッチ制御機構によって一方のブレード32aのピッチをフルフェザー位置に設定することができるので、ブレードの過回転を抑制することができる。
【0046】
また、本実施の形態に係る水平軸型風車1においては、カットアウト風速(25m/s)を超える風速の風が作用した場合に、ピッチ制御機構によって、一方のブレード32a(32b)のピッチをフルフェザー位置に、他方のブレード32b(32a)のピッチをフルフラット位置に、各々設定することができる。従って、ロータに作用する荷重を格段に低減させることができる。
【0047】
例えば、ブレード32aのピッチをフルフェザー位置に設定し、ブレード32bのピッチをフルフラット位置に設定すると、カットアウト風速(25m/s)を超える風速の正面風(背風)が作用した場合でも、フルフェザーブレードであるブレード32aに作用する荷重はフルフラットブレードであるブレード32bと比較すると大幅に低下する。従って、ブレードのピッチを全てフルフラット位置に設定した場合と比較すると、ロータに作用する荷重は格段に低減することとなる。この結果、装置全体の軽量化及び装置の建設コストの低減化を図ることができる。
【0048】
また、ブレード32aのピッチをフルフェザー位置に設定し、ブレード32bのピッチをフルフラット位置に設定すると、カットアウト風速を超える風速の横風が作用した場合に、フルフェザーブレードであるブレード32aが横風の風下側に靡くようにロータ30が回転し、このブレード32aが略水平に配置されて釣り合った状態となる(図5参照)。この状態においてフルフラットブレードであるブレード32bに作用する荷重はきわめて小さい。従って、ブレードのピッチを全てフルフェザー位置に設定した場合と比較すると、ロータに作用する荷重は格段に低減することとなる。この結果、装置全体の軽量化及び装置の製造コストの低減化を図ることができる。
【0049】
また、本実施の形態に係る水平軸型風車1においては、運転中に停電が発生したり、ピッチ制御機構を構成する構成要素に故障が発生したりしてモータに電流が供給されなくなった場合においても、ピッチ予備制御手段(ピッチ規制手段及びピッチ付勢手段)によって、ブレード32aのピッチをフルフェザー位置に、ブレード32bのピッチをフルフラット位置に、各々設定することができる。従って、停電が発生したり、ピッチ制御機構を構成する構成要素に故障が発生したりしてモータに電流が供給されなくなった場合においても、ピッチ制御機構による制御と同様の作用効果を発揮することができ、ロータに作用する荷重を格段に低減させることができる。
【0050】
[第2の実施の形態]
本実施の形態に係る水平軸型風車1Aは、第1の実施の形態に係る水平軸型風車1において、ロータ30の構成を変更したものであり、その他の構成については実質的に同一であるので、重複した構成については説明を省略する。
【0051】
本実施の形態に係る水平軸型風車1Aのロータ30Aは、主軸の一端に取り付けられたハブ31Aと、このハブ31Aに取り付けられた3枚のブレード32A、32B、32Cと、を有するものである。各ブレード32A、32B、32Cのピッチ角は、ピッチ制御機構によって、独立して可変制御される。
【0052】
ピッチ制御機構の構成は、第1の実施の形態に係る水平軸型風車1のものと実質的に同一であり、運転中に停電が発生したり、ピッチ制御機構の構成要素に故障が発生したりした場合には、各ブレード32A、32B、32Cはピッチ軸を中心に回転自在となるとともに、ロータ30Aはロータ軸を中心に回転自在となる。
【0053】
また、本実施の形態に係る水平軸型風車1Aのピッチ予備制御手段は、1枚のブレード32Aのピッチをフルフェザー位置に設定し、残りのブレード32B、32Cのピッチをフルフラット位置に設定するものとした。
【0054】
次いで、本実施の形態に係る水平軸型風車1Aのピッチ制御動作について、図6を用いて説明する。
【0055】
まず、正常運転時においては、風速変動等に基づく予め設定された制御条件に従って発せられる制御装置からの信号によって、ピッチ制御機構によって各ブレード32A、32B、32Cのピッチを独立して可変制御する。
【0056】
ここで、運転中に、ナセル20Aに搭載されたセンサによって、水平軸型風車1Aにカットアウト風速(25m/s)を超える風速の風が作用している旨が検出された場合には、ピッチ制御機構によって、1枚のブレード32Aのピッチをフルフェザー位置に、残りの2枚のブレード32B、32Cのピッチをフルフラット位置に、各々設定する。このような制御動作を行った水平軸型風車1の正面図及び側面図を、図6(a)及び(b)に示した。
【0057】
また、運転中に、3枚のブレード32A、32B、32Cのうち何れか1枚のブレード(例えばブレード32A)を制御するピッチ制御系統に異常が発生し、フラット位置で固着した場合には、他の正常に作動する2枚のブレード32B、32Cのうち何れか1枚のブレード(例えばブレード32B)のピッチをフルフェザー位置に設定し、残りの1枚のブレード(ブレード32C)のピッチをフルフラット位置に設定する。
【0058】
一方、運転中に停電が発生したり、ピッチ制御機構を構成する構成要素に故障が発生したりしてモータに電流が供給されなくなった場合には、各ブレード32A、32B、32Cはピッチ軸周りの回転拘束が解除される。そして、各ブレードに設けたピッチ付勢手段により、ブレード32Aのピッチがフルフェザー位置に設定され、残りのブレード32B、32Cのピッチがフルフラット位置に設定される。
【0059】
本実施の形態に係る水平軸型風車1Aにおいては、カットアウト風速(25m/s)を超える風速の風が作用した場合に、ピッチ制御機構によって、1枚のブレード(例えばブレード32A)のピッチをフルフェザー位置に、残り2枚のブレード(ブレード32B、32C)のピッチをフルフラット位置に、各々設定することができる。従って、ロータに作用する荷重を格段に低減させることができる。
【0060】
例えば、ブレード32Aのピッチをフルフェザー位置に設定し、ブレード32B、32Cのピッチをフルフラット位置に設定すると、カットアウト風速(25m/s)を超える風速の正面風が作用した場合でも、フルフェザーブレードであるブレード32Aに作用する荷重は、フルフラットブレードであるブレード32B、32Cと比較すると大幅に低下する。従って、ブレードのピッチを全てフルフラット位置に設定した場合と比較すると、ロータに作用する荷重は格段に低減することとなる。この結果、装置全体の軽量化及び装置の建設コストの低減化を図ることができる。
【0061】
また、カットアウト風速(25m/s)を超える風速の横風が作用した場合において、フルフェザーブレードであるブレード32Aが横風の風下側に靡くようにロータ30Aが回転し、このブレード32Aが略水平に配置され、他の2枚のフルフラットブレードであるブレード32B、32Cが上下に配置されて釣り合った状態となる(図6参照)。この状態において2枚のブレード32B、32Cに作用する荷重はきわめて小さい。従って、ブレードのピッチを全てフルフェザー位置に設定した場合と比較すると、ロータに作用する荷重は格段に低減することとなる。この結果、装置全体の軽量化及び装置の製造コストの低減化を図ることができる。
【0062】
なお、以上の実施の形態においては、ピッチ予備制御手段をピッチ規制手段及びピッチ付勢手段から構成したが、これに限られるものではない。例えば、ハブ内部やナセル内部にバッテリを備え、停電時にバッテリからモータに電流を供給して、一のブレードのピッチをフルフェザー位置に設定し、残りのブレードのピッチをフルフラット位置に設定することもできる。
【0063】
また、以上の実施の形態においては、電力で駆動するアクチュエータを備えた電動のピッチ制御機構を採用したが、これに限らず、流体圧式アクチュエータを採用することもできる。この場合には、圧縮空気を充填したタンクをナセル内部に搭載しておき、停電時にタンク内の圧縮空気をシリンダに送り込んで、一のブレードのピッチをフルフェザー位置に設定し、残りのブレードのピッチをフルフラット位置に設定することができる。
【0064】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、カットアウト風速を超える風速の風が作用した場合に、ピッチ制御機構によって一のブレードのピッチをフルフェザー位置に設定することができるので、ブレードの過回転を抑制することができる。
【0065】
また、請求項1に記載の発明によれば、カットアウト風速を超える風速の風が作用した場合に、ピッチ制御機構によって一のブレードのピッチをフルフェザー位置に、残りのブレードのピッチをフルフラット位置に、各々設定することができるので、ロータに作用する荷重を格段に低減させることができる。この結果、装置全体の軽量化及び装置の建設コストの低減化を図ることができる。
【0066】
請求項2に記載の発明によれば、停電が発生した場合においても、ピッチ予備制御手段によって、一のブレードのピッチをフルフェザー位置に、他のブレードのピッチをフルフラット位置に、各々設定することができる。この結果、停電時においてもピッチ制御機構による制御と同様の作用効果を発揮することができ、冗長性を確保することができる。
【0067】
請求項3に記載の発明によれば、ピッチ制御機構の故障が発生した場合においても、ピッチ予備制御手段によって、一のブレードのピッチをフルフェザー位置に、残りのブレードのピッチをフルフラット位置に、各々設定することができる。この結果、ピッチ制御機構の故障発生時においてもピッチ制御機構による制御と同様の作用効果を発揮することができ、冗長性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る水平軸型風車の斜視図である。
【図2】図1に示した水平軸型風車のピッチ制御機構の構成を説明するためのハブ周辺部分の斜視図である。
【図3】図1に示した水平軸型風車のブレードのピッチ角を説明するための説明図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る水平軸型風車のピッチ制御動作を説明するためのものであり、(a)は、強い正面風(背風)が作用した場合において一方のブレードのピッチをフルフェザー位置に他方のブレードのピッチをフルフラット位置に設定した状態の水平軸型風車の正面図、(b)は(a)の状態の水平軸型風車の側面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る水平軸型風車のピッチ制御動作を説明するためのものであり、(a)は、強い横風が作用した場合において一方のブレードのピッチをフルフェザー位置に他方のブレードのピッチをフルフラット位置に設定した状態の水平軸型風車の正面図、(b)は(a)の状態の水平軸型風車の側面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る水平軸型風車のピッチ制御動作を説明するためのものであり、(a)は、強い横風が作用した場合において一のブレードのピッチをフルフェザー位置に残り2枚のブレードのピッチをフルフラット位置に設定した状態の水平軸型風車の正面図、(b)は(a)の状態の水平軸型風車の側面図である。
【符号の説明】
1、1A   水平軸型風車
10      タワー
20      ナセル
30、30A  ロータ
31、31A  ハブ
31a    ベアリング
31b    リングギア
31c    ピニオン
31d    アクチュエータ
32a、32b ブレード
32A〜32C ブレード
40      フェザー用係止部

Claims (4)

  1. 略水平方向に延在する回転自在な主軸と、前記主軸に取り付けられたハブ及び前記ハブにピッチ変更自在に取り付けられた2枚以上のブレードを有するロータと、を備える水平軸型風車において、
    カットアウト風速を超える風速の風が作用した場合に前記ブレードの各々のピッチを独立して可変制御して、一の前記ブレードのピッチをフルフェザー位置に、残りの前記ブレードのピッチをフルフラット位置に、各々設定するピッチ制御機構を備えることを特徴とする水平軸型風車。
  2. 停電が発生した場合に、一の前記ブレードのピッチをフルフェザー位置に、残りの前記ブレードのピッチをフルフラット位置に、各々設定するピッチ予備制御手段を備えるとともに、
    前記ブレードは、
    停電が発生した場合にピッチ軸周りの回転拘束が解除されることを特徴とする請求項1に記載の水平軸型風車。
  3. 前記ピッチ予備制御手段は、
    前記ピッチ制御機構の故障が発生した場合に、一の前記ブレードのピッチをフルフェザー位置に、残りの前記ブレードのピッチをフルフラット位置に、各々設定するものであるとともに、
    前記各ブレードは、
    前記ピッチ制御機構の故障が発生した場合にピッチ軸周りの回転拘束が解除されることを特徴とする請求項2に記載の水平軸型風車。
  4. 一の前記ブレードのピッチがフルフェザー位置に、残りの前記ブレードのピッチがフルフラット位置に、各々設定された場合に、ロータ軸周りの回転拘束が解除されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の水平軸型風車。
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