以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明においては、“通信”は、通話を含む各種データの送信または受信、あるいは送受信を意味する。
図1は、本実施の形態に関わる通信システムの構成を示す図である。通信システムは、通信端末の一例となる携帯電話機1と、情報サーバ50とを含む。情報サーバ50は、基地局60および公衆回線網70を介して、複数の携帯電話機1と双方向で通信する。図1には、複数の携帯電話機1として、AおよびBの2台の携帯電話機1が示されている。情報サーバ50は、実際には、3台以上の数多くの携帯電話機1と双方向通信する。
携帯電話機1は、基地局60を介して、他の携帯電話機1との通信を行なう。携帯電話機1は、複数のGPS衛星80(図1では1つのみ図示)から出力される測位用電波81を入力して現在位置を測位する機能を備える。
さらに、携帯電話機1は、基地局60との無線通信に利用される電波61の受信レベルを算出する機能を備える。携帯電話1は、算出した受信レベルデータを、測位により得られた位置情報と対応させて記憶する。また、携帯電話1は、算出した受信レベルデータを、測位により得られた位置情報と対応させて、観測情報として情報サーバ50へ送信する。
情報サーバ50は、情報を送受信する通信部51と、通信可能エリアのデータを記憶する通信可能エリア記憶部52と、受信した観測情報を記憶する観測情報記憶部54と、全国の地図情報を記憶する地図情報記憶部55と、各部を制御する制御部53とを備える。
通信部51は、携帯電話機1から送信された観測情報を受信する。制御部53は、通信部51が受信した観測情報を観測情報記憶部54に記憶する。また、制御部53は観測情報に基づいて、通信可能エリア記憶部52の通信可能エリア情報を更新する。
制御部53は、携帯電話機1の要求に応じた地図を地図情報記憶部55から読み出す。また、制御部53は、携帯電話機1の要求に応じた観測情報を観測情報記憶部54から読出す。さらに、制御部53は、読出した地図あるいは観測情報を通信部51を介して、送信要求を受けた携帯電話機1へ送信する。
携帯電話機1は、記憶した観測情報に基づいて、各測位ポイントにおける電波の受信状況を第1表示部14に表示する機能を備える。その結果、利用者は、周囲の電波状況を把握できる。特に、この実施の形態に関わる携帯電話機1は、無線電波の受信状態が悪いときなどに、利用者の操作に応じて、現在位置から通信可能ポイントへ移動するためのルートなどを第1表示部14に表示する機能を備える。その結果、利用者は、通信できない場所に位置するときに、通信可能ポイントへ容易に移動することが可能となる。
情報サーバ50の観測情報記憶部54および通信可能エリア記憶部52の各々の記憶データにより、データベースが構築されている。情報サーバ50は、携帯電話機1から受信した観測情報に基づいて、データベースを更新する。このデータベースは、全国の複数の携帯電話機1から送信される観測情報に基づいたデータである。したがって、情報サーバ50のデータベースによって、現地の電波受信状況が忠実に反映された全国的なデータを入手することが可能となる。しかも、各携帯電話機1から送信される観測情報に基づいて情報を随時、更新することによって、極力、新しいデータに基づいた情報を把握できる。
図2は、携帯電話機1の斜視図である。携帯電話機1は、主に、第1の筐体2と第2の筐体4とから構成される。
第1の筐体2には、突出部8が取付けられている。突出部8には、ヒンジ部3が、当該突出部8の左右両端と接続されるように、軸A1を回転軸として回動可能に取付けられている。ヒンジ部3には、第2の筐体4が、当該ヒンジ部3に対して軸A2を回転軸として回動可能に取付けられている。
第1の筐体2には、その主面に、ユーザが電話番号等の情報を入力するための機能ボタン群6および入力ボタン群9が設けられ、さらに、後述するマイク(マイク11)に音声を入力するための第1のマイク孔11A、および、第2のマイク孔11Bが設けられている。また、第1の筐体2の側面には、後述するカメラ(カメラ18)のシャッタボタン12およびLED(light emitting diode)36が設けられている。
第2の筐体4には、その主面に、ほぼ長方形状の第1表示部14およびレシーバ孔15が備えられている。
図3は、携帯電話機1が折り畳まれた状態を示す図である。携帯電話機1は、図2の状態に比較して、ヒンジ部3が軸A1に沿って回動されることにより、第2の筐体4と第1の筐体2とが対向する状態となっている。
また、図4は、携帯電話機1の、図3に示された状態の裏面を示す図である。なお、図3および図4に示された状態に対して、図2に示された携帯電話機1の状態を、「開かれた状態」と呼ぶ。
図3および図4に示されるように、携帯電話機1が折り畳まれた状態では、第1の筐体2と第2の筐体4とは、その主面同士が当接している。
そして、特に図4に示されるように、第1の筐体2の主面の裏面には、第2表示部20、後述するカメラ(カメラ18)の撮影レンズ18A、当該カメラの撮影に利用されるフラッシュ19、および、スピーカ孔21が設けられている。
図5は、携帯電話機1の構成を示すブロック図である。図5を参照して、携帯電話機1は、当該携帯電話機1の動作を全体的に制御する制御部10を備える。制御部10は、制御用プログラムに基づいて携帯電話機1を制御するCPU101(Central Processing Unit)、制御用プログラムを予め記憶するROM(Read only memory)102、CPU101による演算結果を一時記憶するRAM(Random Access Memory)103を備える。
さらに、携帯電話機1は、アンテナ30と、アンテナ30を介して携帯電話用の基地局との無線通信を行なう無線通信部31と、アンテナ40と、アンテナ40を介してGPS衛星から測位用電波を受信するGPS受信部41と、スピーカ22と、マイク11と、写真あるいは動画撮影のためのカメラ18と、第1表示部14と、第2表示部20と、傾き検出部5と、方位検出部37と、機能ボタン群6と、入力ボタン群9と、第1の筐体2内に内蔵され着信時に第1の筐体2を振動させるためのバイブレータ35と、地図情報その他のデータを格納する内部メモリ107と、外部メモリ39を収容するスロット部30とを備える。
傾き検出部5は、携帯電話機1の傾き度合い(重力ベクトル)を検出する。具体的には、傾き検出部5は、3次元空間上の基準姿勢に対して携帯電話機1がどの程度傾いているかを検出する。傾き検出部5は、たとえば、3軸加速度センサである。
方位検出部37は、方位(地磁気ベクトル)を検出する。具体的には、方位検出部37は、携帯電話機1が予め定めた方向に対してどの程度ずれているかを検出する。方位検出部37は、たとえば、3軸磁気センサである。
傾き検出部5および方位検出部37の検出信号によって、絶対方位を含めた携帯電話機1のすべての姿勢状態を検出できる。
スピーカ22は、アンテナ30を介して受信した音声(電話における通話相手から送られる音声等)、および、ROM102に記憶された音声データに基づいた音声(着信音等)を出力する。前者の音声は、主に、レシーバ孔15を介して出力され、後者の音声は、主に、スピーカ孔21を介して出力される。
図6は、携帯電話機1による観測で収集される観測情報を示す図である。図示する観測情報は、携帯電話機1の内部メモリ107若しくは外部メモリ39、または両メモリに記憶される。また、収集された観測情報は、情報サーバ50へ送信される。なお、携帯電話機1相互間で観測情報を送受信し合うようにしてもよい。
観測情報は、観測日時(日時情報)と、位置情報と、受信レベルと、受信度合いとを含む。観測日時は、位置情報および受信レベルが観測された日時を示す情報である。図6には、観測時間間隔が10分の場合が示されている。位置情報は、GPSを利用した測位により得られた情報である。受信レベルは、測位ポイントにおける通信用無線信号の受信レベルデータである。
受信レベルは、観測時の携帯電話機1の姿勢を考慮して補正されたデータである。受信度合いは、補正後の受信レベルを0〜3の等級に分類したときの等級を示すデータである。等級は、0が最も受信状態が悪く、その数字が上がるごとに受信状態が良好であることを示す。
これらの観測情報のうち、観測日時および受信度合いのいずれか一方、または双方ともに記録しないようにしてもよい。また、受信レベルは、補正前の実測値であってもよい。また、この実施の形態では、受信レベルを補正することとしたが、補正することなく実測値を利用してもよい。また、観測日時の情報に代えて、日付の情報を除いた時間情報のみを採用してもよい。
次に、受信レベルの補正について詳細に説明する。図7は、携帯電話機1の姿勢状態と補正値との関係を示す図である。この実施の形態では、傾き検出部5と方位検出部37との検出値に基づいて、携帯電話機1の姿勢状態が、図7に示すA〜Dの4つのいずれかに分類される。
Aが基地局からの電波を最も受信し易い姿勢状態である。たとえば、Aは、少なくともアンテナ30が鉛直上向きとなっている姿勢状態である。本実施の形態では、姿勢状態Aが、各測位ポイントにおける受信レベルを決定するときの基準姿勢とされている。Aの次に、基地局からの電波を受信し易い姿勢状態がBである。以下、C、Dの順に電波を受信し難い姿勢状態である。
補正値は、基準姿勢以外の姿勢状態で検出された受信レベルを基準姿勢のときの受信レベルに補正するための値である。したがって、姿勢状態がAのときの補正値は0である。つまり、解析された姿勢状態が基準姿勢のときは検出された受信レベルを補正しない。姿勢状態がBのときの補正値はX1である。姿勢状態がCのときの補正値はX2である。姿勢状態がDのときの補正値はX3である。これらX1〜X3は、いずれも正数であり、「0<X1<X2<X3」の関係にある。X1〜X3の値は、基準姿勢Aでの受信レベルと、各姿勢状態B〜Dでの受信レベルとの差を実測することを様々な観測点で繰り返し行ない、その実測によって得たデータを分析することによって求めることができる。
補正後の受信レベルは、図7に示されているように、「受信レベルの実測値+補正値」によって算出される。
ここでは、姿勢状態を4つに分類することを例に挙げて説明したが、さらに細かく姿勢状態を分類してもよい。また、携帯電話機1が折り畳まれた状態にあるか、開いた状態にあるかを携帯電話機1に設けた折り畳みセンサによって検出し、その検出結果に基づいて、姿勢状態を分類してもよい。また、ここでは、基地局からの電波を最も受信し易い姿勢状態を基準姿勢としたが、その他の姿勢状態を基準姿勢としてもよい。
姿勢状態と補正値との関係を示すデータおよび受信レベルを補正するための演算式のデータは、ROM102に格納されている。制御部10は、ROM102に格納されたデータに基づいて、受信レベルを補正する。
次に、図6に示される受信度合いの算出手法を説明する。図8は、補正後の受信レベルRと、受信度合いとの関係を示すデータである。なお、「表示記号」の欄には、受信度合いを地図上に表示するときの表示記号が示されている。
受信レベルRがr1未満のときには、受信度合いが0に決定される。受信レベルRがr1以上r2未満のときには、受信度合いが1に決定される。受信レベルRがr2以上r3未満のときには、受信度合いが2に決定される。受信レベルRがr3以上のときには、受信度合いが3に決定される。
r1〜r3は、適宜定めることができる。本実施の形態では、r1は、通信可能な受信レベルとして定められた限界強度に設定されている。また、r2、r3については、限界強度を超え、かつ各々の間に適度な幅を持たせた値に設定されている。図6を用いて前述したように、受信度合いは、0が最も受信状態が悪く、その数字が上がるごとに受信状態が良好であることを示す。r1〜r3が上記のように定められているため、受信度合いが0のときには実質的に通信が不可能である。したがって、受信度合い0は、通信不可能であることを示し、受信度合い1〜3は、通信可能であることを示す。
図8に示されるデータは、ROM102に格納されている。制御部10は、ROM102に格納されたデータに基づいて、受信度合いを算出する。なお、この実施の形態では、受信度合いを0〜3の4段階に設定しているが、それ以上の段階に設定してもよい。あるいは、2段階や、3段階に設定してもよい。
図9は、検索モードを説明するための図である。検索モードは、観測情報に基づいて、現在位置から通信可能ポイントを検索するときの検索半径の初期値を設定するためのモードである。
携帯電話機1には、検索モードとして、モード1〜モード4の複数種類の検索モードが用意されている。各検索モードでは、現在位置を基準として通信可能ポイントを検索するときの検索半径Rの初期値が異なっている。検索モードを複数種類の中から選択できるようにしたのは、移動体の移動速度を考慮の上で、最適な通信可能ポイントを検索できるようにするためである。
モード1は、概ね徒歩かあるいはランニングによる移動を想定したモードである。モード2は、概ね自転車による移動を想定したモードである。モード3は、概ね自動車による移動を想定したモードである。モード4は、検索半径Rの初期値を利用者が直接入力できるモードである。
図9に示されるモード1〜3の検索半径Rの初期値は、以下の検討に基づいて設定されている。まず、各モード別に移動限界速度を想定する。想定された移動限界速度Vaは、図9に示されているとおりである。すなわち、モード1の移動限界速度は10m/秒であり、モード2の移動限界速度は20m/秒であり、モード3の移動限界速度は60m/秒である。
次に、想定された移動限界速度により10秒間で移動できる距離を算出する。そして、算出された値を検索半径Rの初期値と定める。その結果、モード1の検索半径Rの初期値は100mとなる。また、モード2の検索半径Rの初期値は200mとなる。また、モード3の検索半径Rの初期値は600mとなる。したがって、想定された移動限界速度が遅いモードほど、検索半径Rの初期値が小さくなる。携帯電話機1のROM102には、各検索モードと検索半径Rの初期値との関係を示すデータが予め記憶されている。
なお、ここでは、移動限界速度を図9に示されるような値として想定したが、適宜、速度値を変更して設計することも可能である。また、ここでは、検索半径Rの初期値を設計するときの移動時間を10秒としたが、その時間を適宜変更することも可能である。
図10は、観測処理を説明するためのフローチャートである。観測処理は、携帯電話機1の制御部10によって実行される処理である。観測処理を実行するためのプログラムは、制御部10のROM102に格納されている。
観測処理は、たとえば、利用者が携帯電話機1を観測モードに設定したときに実行される。観測モードでは、一定時間間隔Tiごとに現在地が測位されるとともに受信レベルが算出される。なお、Tiは、予めROM102に記憶された固定値、または利用者の操作によって任意に設定できる値のいずれであってもよい。
図10を参照して、最初に、測位ポイントを示すnが1に、時間を計時するタイマtが0に、各々、セットされる(S20)。その後、タイマtによる計時が開始される。
次に、タイマtがTiを計時したか否かが判断される(S21)。そして、tが観測時間間隔Tiに達するまで、S21の処理が繰り返し実行される。S21において、tが観測時間間隔Tiに達していると判断されたときには、tが0にリセットされた後(S22)、GPSを利用して現在位置Pnが測位される(S23)。
次に、基地局60から出力される無線信号の受信レベルが検出される(S24)。続いて、現在時刻を示す日時情報(観測日時)が取得される(S25)。なお、日時情報は、たとえば、携帯電話機1が備える時計機能を利用して取得される。ただし、これに代えて、GPS衛星から送信される信号に基づいて日時情報を取得してもよい。または基地局を介して所定のサーバから送信される信号に基づいて日時情報を取得してもよい。
次に、携帯電話機1の姿勢が解析される(S26)。携帯電話機1の姿勢は、携帯電話機1が備える傾き検出部5と方位検出部37との検出値に基づいて解析される。具体的には、両検出器の検出値に基づいて、携帯電話機1の姿勢状態が、予め定めた幾つかの姿勢状態のうちのいずれかに分類される。次に、解析された携帯電話機1の姿勢に基づいて、受信レベルが補正される(S27)。なお、姿勢状態の解析および補正の手順は、図7を用いて説明したとおりである。
S27の後、補正された受信レベルに基づいて受信度合いが算出される(S28)。受信度合いの算出手順は、図8を用いて説明したとおりである。
S28の後、測位データPnがフォーマット変換される(S29)。これによって、WGS−84座標系による座標データが、携帯電話機1に記憶されている地図情報に対応する公共座標系の座標データに変換される。
次に、フォーマット変換後の位置情報Pn、補正後の受信レベルR、日時情報、受信度合いが、内部メモリ107若しくは外部メモリ39、またはその両方のメモリに記憶される(S30)。これにより、図6に示された観測情報がメモリに1つ追加される。
次に、Pnに対応する地図情報を保有しているか否かが判断される(S31)。Pnに対応する地図情報を保有している場合には、S33に進む。地図情報を保有していない場合には、該当する地図情報をダウンロードする処理が実行される(S32)。具体的には、まず、地図情報の送信を要求するコマンドが基地局60を介して情報サーバ50へ送信される。このコマンドには、Pnの位置情報が含まれる。これを受けて、情報サーバ50が、要求に応じた地図情報を携帯電話機1へ送信する(図14のS84参照)。
次に、観測処理を終了させる終了条件が成立したか否かが判断される(S33)。観測処理を終了させるための利用者の操作等が検出されたときには、S33で終了条件が成立したと判断されて観測処理が終了する。一方、終了条件が成立していないと判断されたときには、nが1加算される(S34)。次に、再び、タイマtがTiを計時したか否かが判断される(S21)。そして、タイマtがTiを計時した段階で、S22以降に進み、次の観測ポイントにおいて測位および受信レベルの検出が行なわれる。
以下、同様にして、観測時間間隔Ti毎に測位および受信レベルの検出が繰り返し行なわれる。その結果、位置情報や受信レベル、日時情報等から成る利用者の移動履歴が蓄積される。また、移動履歴の表示に必要な地図情報が必要に応じて情報サーバ50からダウンロードされる。
図11および図12は、復帰ルート処理を説明するためのフローチャートである。復帰ルート処理は、携帯電話機1の制御部10によって実行される処理である。復帰ルート処理を実行するためのプログラムは、制御部10のROM102に格納されている。
復帰ルート処理が実行されることによって、観測情報に基づいた利用者の移動履歴と、現在位置と、推奨される通信可能ポイントと、現在位置からその通信可能ポイントへ復帰するためのルートと、その通信可能ポイントの方向とが第1表示部14に表示される。その結果、利用者は、通信できない場所に位置するときに、通信可能ポイントへ容易に復帰することが可能となる。なお、表示例については、図15を用いて後述する。
図11および図12を参照して、復帰ルート処理を説明する。利用者が復帰ルート処理を実行するための操作を行なうことにより、検索モードの選択画面が第1表示部14に表示される(S40)。検索モードの具体例は、図9に示したとおりである。
次に、選択操作が検出されたか否かが判断される(S41)。そして、選択操作が検出されるまで、S41の判断が繰り返される。
モード1が選択されたときには、S42でYESと判断されて、検索半径Rの初期値が100mに設定される(S43)。モード2が選択されたときには、S44でYESと判断されて、検索半径Rの初期値が200mに設定される(S45)。モード3が選択されたときには、S46でYESと判断されて、検索半径Rの初期値が600mに設定される(S47)。モード4が選択されたときには、S42、S44、S46のいずれにおいてもNOと判断されて、検索半径Rの初期値の入力待ち画面に切換わる。そして、ここで、入力された値に応じて検索半径Rの初期値が設定される(S48)。
S43、S45、S47、またはS48の後、GPSを利用して現在位置が測位される(S49)。次に、S49で測位された測位ポイントを中心とした検索半径R内での通信可能ポイントが検索される(S50)。
通信可能ポイントは、内部メモリ107または外部メモリ39に記憶されている観測情報に基づいて検索される。たとえば、携帯電話機1の制御部10は、図6に示されるような観測情報を参照して、検索半径R内の測位ポイントの中から、受信度合いが1以上である測位ポイントを抽出する。なお、受信度合いが2以上、あるいは3に対応する測位ポイントを抽出するようにしてもよい。
次に、通信可能ポイントが存在するか否かが判断される(S51)。通信可能ポイントが存在しない場合には、観測半径Rにαを加算した値が、新たな観測半径Rとして設定される(S53)。続いて、新たな観測半径Rによって、再びS50およびS51の処理が実行される。これにより、通信可能ポイントが存在するまで、徐々に観測半径Rが広げられる。なお、αの値は適宜設定できる。ここでは、αを検索モードに限らず一定値としているが、検索モードに応じてαの値を異ならせてもよい。
S51において、通信可能ポイントが存在すると判断されたときには、通信可能ポイントの選定およびルート演算が行なわれる(S52)。具体的には、S50によって複数の通信可能ポイントが抽出されているとき、設定されている検索モードと現在位置から通信可能ポイントへ向かうための道路情報とに応じて、最適な通信可能ポイントとルートとが決定される。
たとえば、現在位置に対して最も近い通信可能ポイントPaと、それよりも遠い場所に位置する通信可能ポイントPbとがS50によって抽出されたとする。検索モードは、仮にモード3の自動車を対象としたモードに設定されているとする。制御部10は、地図情報に基づいて、PaおよびPbへの自動車による移動ルートを検索する。たとえば、Paへは徒歩でなければ到達が困難である一方、Pbへは車道を利用して自動車で到達できる場合には、制御部10は、自動車で到達可能なPbを通信可能ポイントとして選定し、そのPbへのルートを出力する。
あるいは、現在位置に対して直線距離にして最も近い通信可能ポイントPcと、それよりも遠い場所に位置する通信可能ポイントPdとがS50によって抽出されたとする。ただし、Pcは、現在地点から川を隔てた向こう岸に存在し、相当の迂回をしなければ、辿りつくことができない場所に位置するものとする。一方、Pdは、ルート的にはPcへの迂回ルートよりも現在地点に近い位置にあるものの、自動車での到達が困難な場所に位置しているものとする。検索モードは、仮にモード3の自動車を対象としたモードに設定されているとする。この場合、制御部10は、自動車で到達可能なPcを通信可能ポイントとして選定し、かつそのPcへの迂回ルートを出力する。
S52では、以上のようにして、通信可能ポイントの選定およびルート演算が行なわれる。なお、S51において抽出された通信可能ポイントが1つしか存在しない場合には、S52において、その通信可能ポイントが選定される。なお、ルート演算の結果、その通信可能ポイントへの到達が困難な場合には、S53に進んで検索半径Rを広げて、再度、S50で通信可能ポイントを検索するようにしてもよい。
S54の後、選定された通信可能ポイントに対する方向が算出される(S54)。この方向は、方位検出部37の検出出力と、現在位置の測位データと、選定された通信可能ポイントの測位データとに基づいて算出される。
次に、観測情報に基づいた利用者の移動履歴と、現在位置と、選定された通信可能ポイントと、現在位置からその通信可能ポイントへ復帰するためのルートと、その通信可能ポイントの方向とが第1表示部14に表示される(S55)。その後、処理が終了する。
なお、復帰ルート処理を実行する段階で、付近の観測情報を記憶していない場合には、S50の検索が不可能である。たとえば、利用者が初めて訪れた場所で、携帯電話機1を用いて図10の観測処理を実行する前に、復帰ルート処理を実行した場合には、付近の観測情報が携帯電話機1に蓄積されていない可能性がある。このような場合を考慮して、次のような処理が実行されるようにしてもよい。
図12のS49の後、S49で測位された測位ポイントを含む所定範囲の観測情報が記憶されているか否かを判断する。記憶されている場合にはS50に進む。記憶されていない場合には、前記所定範囲の観測情報の送信を情報サーバ50へ要求する。そして、前記所定範囲の観測情報を情報サーバ50から受信してメモリに蓄積する。その後、S50に進み、蓄積された観測情報に基づいて処理を進める。
図13は、送受信処理を説明するためのフローチャートである。送受信処理は、携帯電話機1の制御部10によって実行される処理である。送受信処理を実行するためのプログラムは、制御部10のROM102に格納されている。
送受信処理は、携帯電話機1に蓄積されている観測情報を情報サーバ50へ送信する一方、現在地点付近の地図情報および観測情報を情報サーバ50から受信する処理である。この送受信処理は、利用者の所定操作によって実行される。あるいは、自動的に実行されるようにしてもよい。たとえば、所定時間間隔で自動的に実行されるようにしてもよく、観測処理が終了する毎に自動的に実行されるようにしてもよい。
最初に、内部メモリ107若しくは外部メモリ39から観測情報が読出される(S60)。次に、読出された観測情報が情報サーバ50へ送信される(S61)。次に、GPSを利用して現在位置が測位される(S62)。次に、測位情報とともに情報サーバ50へ観測情報の送信要求が出力される(S63)。なお、情報サーバ50は、この要求に応じて、現在地点付近の観測情報を、携帯電話機1へ送信する(図14のS87)。
次に、情報サーバ50から送信された観測情報が受信される(S64)。次に、受信された観測情報が、内部メモリ107若しくは外部メモリ39、またはその両方のメモリに記憶され(S65)、処理が終了する。
これにより、利用者は、初めて訪れた町でも、情報サーバ50から送信された観測情報を利用して、即座に通信可能ポイントを把握できる。なお、図13は、観測情報を携帯電話機1と情報サーバ50との間で相互に交換する処理である。しかしながら、観測情報の送信処理と、観測情報の受信処理とが利用者の操作に応じて独立して行なわれるようにしてもよい。また、携帯電話機1相互で、観測情報を交換できるようにしてもよい。
図14は、情報サーバ処理を説明するためのフローチャートである。情報サーバ処理は、情報サーバ50の制御部53によって実行される処理である。情報サーバ処理を実行するためのプログラムは、制御部53のROM(図示省略)に格納されている。
情報サーバ処理は、携帯電話機1からの要求に応じて地図情報または観測情報を送信するとともに、携帯電話機1から送信されてきた観測情報に基づいて自らが記憶しているデータベースを更新する処理である。
図14を参照して、最初に、携帯電話機1から観測情報を受信したか否かが判断される(S80)。観測情報を受信していないときにはS82に進む。観測情報を受信したときには、その受信した観測情報によってデータベースが更新される(S81)。これにより、通信可能エリア記憶部52に記憶された通信可能エリア情報と、観測情報記憶部54に記憶された観測情報とが共に更新される。
観測情報記憶部54には、たとえば、図6に示す情報と同様の情報が蓄積される。なお、図6に示した観測情報に加えて、情報を受信した携帯電話機1を識別できる識別情報をさらに記録するようにしてもよい。
通信可能エリア記憶部52には、地図上で通信可能エリアを視覚的に識別できるようにした通信可能エリア情報が記憶されている。通信可能エリア情報は、点在する各基地局60の位置情報と、電波特性に基づいて算出されるエリアカバー情報と、観測情報記憶部54に記憶された観測情報とによって作成される。
この通信可能エリア情報は、たとえば、以下のようにして作成される。地図を所定サイズのメッシュで区切る。各メッシュの交差部分について、上記各情報に基づいて、通信の可能/不可能を定義する。定義した情報に基づいて地図全体を通信可能な領域と通信不可能な領域とを区分する。通信可能な領域と通信不可能な領域との各々の領域を色分けする。
通信可能エリア記憶部52の通信可能エリア情報は、新たに受信された観測情報に基づいて逐次更新される。たとえば、新たに受信された観測情報が、電波特性に基づいて算出されるエリアカバー情報によって通信可能とされている通信可能領域に属するとする。この場合、受信された観測情報が、通信不可能を示す情報であるときには、その測位ポイント部分については、通信不可能なポイントに更新される。そして、更新結果に基づいて、通信可能エリア情報が更新される。受信された観測情報に基づいたこのような更新が繰り返し行われる結果、通信可能エリア情報記憶部52内の通信可能エリア情報が、実際の観測に基づいた細やかな情報に更新される。
観測情報記憶部54のデータの更新手法としては、以下のものが考えられる。1つは、すでにデータベースに蓄積されている観測情報と同じ測位ポイントあるいは、ほぼ同じ測位ポイントの観測情報が受信された場合には、新たに受信した観測情報によって情報を書き換えてしまうという手法である。これによれば、データベースを最新の情報に保つことができる。
2つ目は、そのような場合であっても、情報を書き換えずに共に保存しておくという手法である。これによれば、日時情報を有効利用して、時間帯、季節に応じた電波の受信レベルの変化を解析できる。あるいは、別途、気象情報を入力することによって、天候、気圧等の変化と受信レベルとの関係を解析することが可能となる。あるいは、また、高い受信レベルがコンスタントに得られていたにも関わらず突然、電波の受信状況が悪化したような測位ポイントを検出できる。これによって、基地局の故障、基地局周辺の異常をいち早く察知できる。
3つ目は、そのような場合には、受信レベルデータについて、平均化処理を施して、記憶するという手法である。これにより、個々の携帯電話機1での観測誤差を考慮した平均的な受信レベルから成るデータベースを構築できる。
S81ではいずれの手法を採用してもよい。
S81の後、あるいは、S80でNOと判断された後、携帯電話機1から地図情報の送信要求があったか否かが判断される(S82)。地図情報の送信要求がない場合にはS82に進む。地図情報の送信要求があった場合には、その送信要求に含まれる測位点の位置情報に対応する地図情報が地図情報記憶部55から読出される(S55)。次に、読み出された地図情報が送信要求元の携帯電話機1へ送信される(S84)。
S84の後、あるいは、S82でNOと判断された後、携帯電話機1から観測情報の送信要求があったか否かが判断される(S85)。観測情報の送信要求がなければ処理が終了する。観測情報の送信要求があったときには、その送信要求に含まれる測位点の位置情報に対応する観測情報が観測情報記憶部54から読出される(S86)。次に、読み出された観測情報が送信要求元の携帯電話機1へ送信される(S87)。その後、処理が終了する。
図14に示される処理が実行されることにより、情報サーバ50は、観測情報を携帯電話機1から直接入手して、自身のデータベースを逐次、更新することができる。なお、情報サーバ50が能動的に各携帯電話機1に対して観測情報の送信を促す指令を送信するようにしてもよい。
図15は、第1表示部14に表示される画面図の一例を示す図である。ここには、図12のS55の処理による表示例が示されている。図15において、P1〜P16は、画面図における測位ポイントを説明するための参照用符号である。したがって、実際の画面上にはこれらの符号は表示されない。ただし、このような符号を実際に画面上に表示するようにしてもよい。
図15には、利用者の移動に応じてP1〜P16の各測位ポイントで観測情報を収集した後、ポイント300にて、復帰ルート処理を実行したときの具体例が示されている。この具体例は、検索モードがモード3に設定されている場合を示す。なお、P10からP11までの観測間隔が長くなっているのは、P10で一旦、観測情報の収集が中断された後、P11で改めて観測情報が再開されたためである。
各測位ポイントP1〜P16には、無線信号の受信度合いが表示記号によって示されている。200は、復帰ルート処理によって選定された通信可能ポイントである。ここでは、測位ポイントP8が、現在位置から復帰するための通信可能ポイント200に選定されている。
また、400は、復帰ルート処理によって演算された、現在地点300から通信可能ポイント200に移動するためのルートである。現在地点300から通信可能ポイント200への移動には、ルート401を利用したほうが距離的には短くなる。しかしながら、検索モードが3であることを考慮して、自動車が移動可能なルート400が選定されている。
301は、現在地点300から通信可能ポイント200への方向を示す矢印画像である。この矢印画像301は、携帯電話機1が位置する場所を中心として、通信可能ポイント200が実際に位置する方向を示す。したがって、第1表示部14に表示された地図の方位と、実際の方位とが一致しているときには、図15に示されるように、矢印画像301が地図上の通信可能ポイント200を指し示す。しかし、携帯電話機1の姿勢状態が変化することによって、第1表示部14に表示された地図の方位と、実際の方位とがずれたときには、そのずれた分だけ、矢印画像301が通信可能ポイント200を指し示す方向がずれる。これにより、利用者は、携帯電話機1の姿勢状態を適宜、調整することによって、正確な方向を見定めることができる。
なお、矢印画像301を表示せずに、携帯電話機1の姿勢状態の変更に応じて、地図を表示した画面全体を絶対方位に合致するように回転させるようにしてもよい。
図15に示されるような画面図が表示されるため、利用者は、現在地点を基準としたときに、どの辺りに通信可能ポイントが存在するか、あるいは電波を良好に受信できるポイントがどの辺りであるのかを容易に把握できる。これらの点は、現在地点で通信が不可能な場合に特に有効な効果ではある。しかしながら、現在地点で通信が可能であるものの、より受信状態のよい場所を検索するときにも有効であるといえる。また、現在地点で通信が良好であるか否かに関わらず、通信が良好な場所を予め把握しておいて、その場所に向かう場合にも有効である。
また、図15に示されるように、第1表示部14には、移動方法と地理上の事情とを考慮して、推奨される通信可能ポイントと推奨される復帰ポイント(通信可能ポイント)とが表示されるため、利用者は、極めて容易に通信可能ポイントに復帰できる。
なお、図15には、P1〜P16までの移動履歴のみに基づいて、各測位ポイントにおける受信度合いが表示されている。しかしながら、携帯電話機1が蓄積している全ての観測情報を地図上に反映させた画面を表示してもよい。これにより、情報サーバ50から受信した観測情報をも表示画面上に反映させることが可能となる。
また、図15では、受信度合いを各々異なる表示記号によって示した。しかしながら、受信度合いを把握可能であれば、図示するような表示記号でなくてもよい。たとえば、記号自体が同一で表示色によって受信度合いを示すようにしてもよい。あるいは、受信度合いではなく、受信レベルそのものを各測位ポイントに表示してもよい。
また、この実施の形態では、復帰ルート処理を実行することによって、通信可能ポイントへ移動するための復帰ルートと周辺の受信度合いとが表示される。しかしながら、周辺の受信度合いを表示する受信度合い表示機能と、復帰ルートを表示する復帰ルート表示機能とを別にしてもよい。つまり、利用者が受信度合い表示機能を選択したときには、図15に示される画面図のうちの、ルート400と通信可能ポイント200と矢印画像301とを除く画像が表示されるようにする。そして、利用者が復帰ルート表示機能を選択したときには、図15に示される画面図が表示されるようにする。
以上、説明したように、本実施の形態によれば、通信可能ポイントを画面上で認識できる。しかも画面上に表示される通信可能ポイントは、通信事業者が提供している、従来の大まかな通信可能エリア情報とは異なり、実際の観測に基づいた細やかな情報である。したがって、本実施の形態によれば、利用者に対して実質的な通信可能エリア情報を提供することが可能になる。さらに通信可能ポイントを利用者が容易に知ることができるため、通信事業者は、基地局増強などの対策をとることなしに、通信可能エリア外での通信要求に対して対応することができる。また、情報サーバ50に蓄積されるデータベースを活用することによって、通信事業者は、基地局の数を無駄に増やすことがなく、経済的な負担が軽減される。
図10〜図13に示すアルゴリズム、あるいは図14に示すアルゴリズムをコーディングして、生成されたプログラムを提供することも可能である。このようなプログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体に記録して、プログラム製品として提供することも可能である。なお、この種の記録媒体としては、CD−ROMに限られるものではなく、コンピュータに付属するフレキシブルディスク、CD−ROM、あるいはメモリカードなどであってもよい。また、ネットワークを介したダウンロードによって、このようなプログラムを提供することもできる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 携帯電話機、10 制御部、30 アンテナ、31 無線通信部、40 アンテナ、41 GPS受信部、50 情報サーバ、52 通信可能エリア記憶部、53 制御部、54 観測情報記憶部、55 地図情報記憶部。