本発明の第1実施形態は、アンテナの姿勢が許容範囲内にある電波強度測定端末が測定した電波強度を用いて電波強度分布を作成する無線環境調査システムに関する。なお、本第1実施形態の無線環境調査システムは、電波強度を測定するための単数又は複数の電波強度測定端末と、電波強度の測定および電波強度分布の作成工程を制御するための無線環境調査装置と、仮設置されたアクセスポイントとを有して構成される。
図1は本発明の第1実施形態の電波強度測定端末の構成図であり、電波強度測定端末1の主要なハードウエア構成を表している。図2は本発明の第1実施形態の電波強度測定端末1の斜視図であり、電波強度測定端末1の外観を表している。
図1を参照して、本第1実施形態の無線環境調査システムに用いられる電波強度測定端末1は、CPU133、メモリ134およびI/O制御回路132がバス135に接続され、コンピュータシステムを形成している。また,I/O制御回路132に接続して制御される表示装置130および入力装置131を備える。さらに、アンテナ110と、アンテナ110を介して無線通信するための無線通信モジュール111、および、アンテナ110の姿勢を検出する姿勢検知器120とを備える。
無線通信モジュール111は、受信器113と送信機114とを含み、仮設置されたアクセスポイント311(図6参照)を介して無線通信を行うことができる。加えて、無線通信モジュール111は、アンテナ110により感知される電波強度、即ちアクセスポイント311から発信(送信)された電波の強度を測定する電波強度検知器112を備える。本第1実施形態では、電波強度検知器112としてLQI値(Link Quality Indicator)を測定する検知器を用いた。もちろん、受信した電波の強度、例えば電界強度を測定する検知器を用いても差し支えない。
姿勢検知器120は、方位センサ121と、加速度センサ122とを含み、アンテナ110に固定されたXYZ座標軸と、方位角および鉛直軸との関係を検出することで、アンテナの姿勢を特定する。この姿勢の検出については後述する。
図2を参照して、電波強度測定端末1は、例えば直方体様の外観を有する。外観を直方体様にすることで、アンテナ110、即ち電波強度測定端末1に固定されたXYZ座標軸をその外観から判別し得る。例えば、電波強度測定端末1の筐体に固定されたアンテナ110を用い、直方体様の筐体の各稜線をXYZ座標軸の各軸に平行に設定する。これにより、XYZ座標軸の各軸の方向を外観から容易に識別することができる。もちろん外観を制約せず、次に述べる表示装置に筐体が向くべき方位、たとえばXY座標軸を表示してもよい。
電波強度測定端末1の一面に、地図を表示することができる表示装置130、例えば液晶表示装置が設けられる。この地図は調査エリアの地図であり、例えば通路31Cと室内31Dの位置を表示する。また、電波強度測定端末1を配置すべき予定の測定位置31Aが表示される。同時にその予定の測定位置31Aに配置された電波強度測定端末1が採るべき姿勢を、例えばXYZ座標軸と地図上の方位との関係を表示してもよい。
電波強度測定端末1には、さらに入力装置131として、移動ボタン131aと確定ボタン131bとが設けられる。移動ボタン131aは、表示装置130に表示されるカーソル131Aを上下左右に移動するために用いられる。確定ボタン131bは、カーソル131Aが表示する地図上の位置に電波強度測定端末1を配置したことを入力するために用いられる。
図3は本発明の第1実施形態の電波強度測定端末の回路基板の斜視図であり、ハードウエアを構成する各部品の配置の一例を表している。
図3を参照して、第1実施形態の電波強度測定端末1は矩形の回路基板150を備え、その回路基板150の主面上の一角に矩形板状の平面アンテナ110が配設される。アンテナ110の近くに無線通信モジュール111が配置されている。この無線通信モジュール111は、送信機114、受信機113および電波強度検知器112を収容する。また、回路基板150上には、CPU133、RAM又はROM等の半導体メモリ134、I/O制御回路132、必要ならばコプロセッサ136が搭載される。
さらに、回路基板150の主面上に、方位センサ121および加速度センサ122が固定される。このように、方位センサ121および加速度センサ122は、回路基板150上に一体として固定され、以下に説明するように、回路基板150の地表面に対する姿勢を測定する。なお、アンテナ110、方位センサ121および加速度センサ122は同一回路基板150に固定される。このため、方位センサ121および加速度センサ122により検出された回路基板150の姿勢は、同時に、アンテナ110の姿勢をも表している。従って、この方位センサ121および加速度センサ122は、アンテナ110の姿勢を測定する姿勢検知器120として機能する。
図4は本発明の第1実施形態の姿勢検知の座標軸を説明する図であり、アンテナ110の姿勢を表すXYZ座標軸と姿勢検知器120が有するNEg座標軸を表している。ここで、NEg座標は、北方位(N)、東方位(E)および鉛直方位(g)を座標軸とする座標系である。
図4を参照して、XYZ座標軸は、回路基板150に固定され、例えば、回路基板15の短辺に平行にX軸を、長辺に平行にY軸を、回路基板150の主面に垂直な方向をZ軸と定める。方位センサ121、加速度センサ122およびアンテナ110は、回路基板50に固定されるから、これら方位センサ121、加速度センサ122およびアンテナ110はXYZ座標軸に固定されている。このように、方位センサ121および加速度センサ122はXYZ座標軸に固定されおり、その姿勢は回路基板150の姿勢(通常は電波強度測定端末1の姿勢)により定まる。
一方、姿勢検知器120が有するNEg座標軸は、N軸が北方位、E軸が東方位に定められ、g軸は鉛直軸と定められる。即ち、NE平面は水平面をなす。このNEg座標軸は、地表に固定された座標系であり、その向きは鉛直軸と方位角とで表示される。従って、方位センサ121および加速度センサ122は、その姿勢に固定されたXYZ座標軸と地表に固定されたNEg座標軸を有する。姿勢検知器120は、以下に説明するように、XYZ座標軸とNEg座標軸との方位関係を検出する。
加速度センサ122は、XYZ座標軸の各軸への重力加速度Gの分力、即ちX軸への分力Gx、Y軸への分力Gy、および、Z軸への分力Gzの、重力加速度Gに対する大きさの比Gx/G、Gy/G、Gz/Gを測定する。方位センサ121は、XYZ座標軸の一つの軸、例えばY軸の方位角を測定する。姿勢検知器120は、回路基板150の姿勢(地表に固定されたNEg座標軸に対するXYZ座標軸の姿勢)、即ち地表に固定されたNEg座標軸に対するアンテナ110の姿勢を検出し、姿勢情報347(図12参照)として出力する。この姿勢情報347は、加速度センサ122が検知した重力加速度Gの分力の比Gx/G、Gy/G、Gz/Gと、方位センサ121が検知した例えはY軸の方位角αとの組、Gx/G、Gy/G、Gz/G、αとして表される。
図5は本発明の第1実施形態の電波強度測定端末の機能構成図であり、図1に示した電波測定端末のコンピュータシステムおよびハードウエアにより実現される主要な機能を表している。
図5を参照して、本第1実施形態の電波強度測定端末1は、送受信器114、113を含む無線通信手段111a、電波強度検知器112、姿勢検知器120、入力装置131および表示装置130により実現される機能を有する。これらの機器は、CPU133がメモリ134に格納されたプログラムを実行することで制御される。即ち、CPU133を含むコンピュータシステムは、制御手段140として機能する。
電波強度検知器112は、制御手段140の指示に従い、アンテナ110が受信した電波21の電波強度(LQI値)を測定する。無線通信手段111aは、制御手段140の指示に従い、アンテナ110が受信した信号を復調し、またアンテナ110へ送信信号を送電して無線通信用の電波11を発信する。姿勢検知器120は、制御手段140の指示に従い、アンテナ110の姿勢を測定し、その姿勢を表す姿勢情報347(図12参照)を出力する。
次に、本第1実施形態の無線環境調査システムに用いられた無線環境調査装置2を説明する。
図6は本発明の第1実施形態の無線環境調査装置の構成図であり、無線環境調査装置2の主要なハードウエア構成を表している。図7は本発明の第1実施形態の無線環境調査装置の機能構成図であり、無線環境調査装置2の主要な機能を表している。
図6を参照して、本第1実施形態の無線環境調査装置2は、バス335に接続されたCPU333、メモリ334、I/O制御回路332、記憶装置314および双方向の通信装置313を備えたコンピュータシステムを構築している。I/O制御回路332は、表示装置330および入力装置331(例えばキーボード)を制御する。また、通信装置313は、伝送線312を介してアクセスポイント311に接続され、アクセスポイント311を制御する。アクセスポイント311は通信装置313による制御に基づき、試験信号(試験電波)および通信用の信号を送信し、かつ、アクセスポイント311が受信した信号(例えば電波強度測定端末1が発信する電波11により送信される信号)を復調する。
図7を参照して、本第1実施形態の無線環境調査装置2は、CPU333がメモリ334に格納されたプログラムを実行することで、通信装置313、入力装置331、表示装置330および記憶装置314を制御する制御手段340として機能する他、電波強度分布作成手段341および姿勢抽出手段342として機能する。
記憶装置314には、地図情報343、AP情報344、測定位置情報345、電波強度情報346および姿勢情報347が格納される。地図情報343は、調査エリアの地図を含み、例えば建屋,階ごとに作成され、それぞれ異なる地図IDが付与された地図として提供される。AP情報344は、仮設置されるアドレスポイント311の予定設置位置を、地図上のxy座標表示で表す。測定位置情報345は、電波強度測定端末1が配置される予定の配置場所および採るべき予定の姿勢を表している。電波強度情報346は、電波強度測定端末1が測定した電波強度に関するデータであり、測定位置情報345および姿勢情報347と関連づけて記憶される。姿勢情報347は、その関連する電波強度が測定された時のアンテナの姿勢(電波強度測定端末1の姿勢)を表すデータである。
以下、本発明の第1実施形態の無線環境調査システムを用いた電波強度分布の作成方法を説明する。なお本第1実施形態の無線環境調査システムは、仮設置されたアクセスポイント311と、単数又は複数の電波強度を測定する電波強度測定端末1と、電波強度測定端末1を制御して電波強度分布を作成する無線環境調査装置とを含み構成される。
図8は本発明の第1実施形態の無線環境調査システムの動作フローチャート(その1)であり、無線環境測定の主要な工程を表している。
図8を参照して、本第1実施形態の無線環境調査システムでは、まず、ステップS100で、アクセスポイント311が発信する試験電波の強度を全ての所定の観測位置で測定する。その後、ステップS200で、測定された電波強度に基づき、電波強度分布を作成する。以下、工程を詳細に説明する。
図9は本発明の第1実施形態の無線環境調査システムの動作フローチャート(その2)であり、図8に示すフローの前半の工程(ステップS100)の詳細を表している。なお、図9の左側は電波強度測定端末1が実行するフローを、右側は無線環境調査装置2が実行するフローを表している。また、その間を結ぶ矢印付きの点線は、電波強度測定端末1と無線環境調査装置2との間で伝送される信号を表している。
図9を参照して、初めに、電波強度測定端末1は、ステップSw21で、無線環境調査装置2からの信号待ち状態に入る。次いで、図8に示すステップS100が実行されると、無線環境調査装置2はステップS101で、変数nをn=1に、ステップS102で、変数sをs=1に初期設定する。この変数nは、測定位置の特定に用いられ、変数sは使用する電波強度測定端末1の特定に用いられる。次いで、記憶装置314から地図情報343を読み出し、表示装置330に表示する。
図10は本発明の第1実施形態の地図情報の説明図であり、地図情報343に基づき表示装置330に表示された地図を表している。また、表示された地図上の座標系、xy座標と、NE座標(北方位と東方位からなる座標系)とを表示した。ここでは、y軸の方位角(N軸となす角)は80度であった。
図10を参照して、無線環境調査装置2の表示装置330には、調査エリアの地図、例えば建屋内部の地図が表示される。ここでハッチングされた部分は室内31D又は柱31Eを表し、白地の部分は通路31Cを表している。なお、建屋、階が異なる地図には、それぞれ固有の地図IDが付されており、変数nが表す測定位置31Aを含む地図(n)が選択されて読み出される。さらに、AP情報344および測定位置情報345が読み出され、地図(n)中に含まれるアクセスポイント311の仮設置位置(△で示す。)および電波強度を測定する予定の測定位置31、31A(◎および○で示す。)を、表示装置330に表示された地図上に重ねて表示する。ここで◎で示す測定位置31Aは、次の測定位置(現時点から最初に測定がなされるべき位置。)を表している。
次いで、ステップS103で、無線環境調査装置2は、表示された地図から、◎で示す次の測定位置31Aを含む領域30を切り出し、s番目の電波強度測定端末1へ送信する。この領域30は、電波強度測定端末1の表示装置130に表示するに適切な大きさに切り出される。この地図の送信と同時に、電波強度測定端末1が測定位置で採るべき姿勢を表す情報、例えはXYZ座標軸のY軸の方位角を送信する。なお、この姿勢を表す情報は、予め測定位置情報345に含まれている。送信後、ステップSw01で、無線環境調査装置2は電波強度測定端末1からの受信待ち状態に入る。
地図が送信された電波強度測定端末1は、ステップS121で、送信された地図の領域30をメモリ134に保存するとともに、地図を表示装置130に表示する。図2を参照して、表示された地図には、通路31Cと室内31Dとの位置関係の他、次の測定位置31Aが表示される。さらに、測定位置31Aで採るべき姿勢、例えばY軸が採るべき方位角を地図上に表示する。
次いで、ステップS122で、測定者により測定位置の設定がなされる。この設定に先立ち、測定者は、表示装置130に表示された地図を見ながら、次の測定位置31Aに電波強度測定端末1を配置する。なお、配置位置は、地図上の通路31Cと室内31Dとの位置関係から容易に判定することができる。設定は、表示装置130に表示された地図を見ながら移動ボタン131aを操作して、カーソル131Aが次の測定位置31Aに重なるように移動した後、確定ボタン131bを押下することでなされる。そして、確定ボタン131bを押下したときのカーソルの地図上の位置を、測定位置として検出する。この確定ボタン131bの押下は、電波強度測定端末1が測定位置31Aに配置されたことの確認に用いられる。このとき、測定者は、電波強度測定端末1の筐体のY軸に平行な辺を、地図上に表示された方位角の方向(例えばE方向から北に10度傾いた方位)に一致させて配置する。これにより、容易にアンテナ110の姿勢、即ち向きを所要の方位に一致させることができる。
次いで、ステップS123で、電波強度測定端末1は、自己の端末IDおよび検出した測定位置を端末情報345aとして送信し、ステップSw22で再び受信待ち状態に入る。この送信を受信した無線環境調査装置2は、ステップS104で、送信された端末情報345aを測定位置情報345に付加して記憶装置314に記憶する。即ち、測定位置nの測定位置情報345に、測定位置nに配置された電波強度測定端末1の端末IDと測定位置座標とが追加される。
図11は本発明の第1実施形態の測定位置情報および端末情報のデータ構造図であり、端末情報345aと測定位置情報345との関連を表している。
図11を参照して、測定位置情報345は、予定されている測定位置を、地図IDと地図上の(zy)座標とで表した情報である。なお、位置番号nは、n番目に測定する予定の測定位置を表している。
端末情報345aは、確定ボタン131bが押下された電波強度測定端末1の端末IDと、その電波強度測定端末1が置かれた地図上の位置を、その地図のID(地図ID)および地図上の(x,y)座標を用いて表記したものである。この端末情報345aの(x,y)座標と測定位置情報345の(x,y)座標とが相違するとき、無線環境調査装置2は電波強度測定端末へアラームを送信することが好ましい。これにより、予定された測定位置と異なる位置で電波強度を測定する事態を回避することができる。
この端末情報345aは、端末情報345aが測定された測定位置と同じ位置番号nの測定位置情報345に関連づけて記憶装置314に記憶される。
次いで、ステップS105で、無線環境調査装置2は、測定位置31Aに配置された電波強度測定端末1(ステップS104で送信された端末IDを有する。)に対して、電波強度の測定の指示をアクセスポイント311を介して送信し、ステップSw02で受信待ち状態に入る。
ステップS124で、指示を受けた電波強度測定端末1は、電波強度検知器112が電波強度を測定すると同時に、姿勢検知器120がアンテナ110の姿勢を検出する。次いで、ステップS125で、測定された電波強度(LQI値)および検出されたアンテナ110の姿勢を電波強度情報346および姿勢情報347として送信し、ステップSw23で受信待ち状態に入る。
図12は本発明の第1実施形態の電波強度情報および姿勢情報の説明図であり、記憶装置314に記憶された電波強度情報346と姿勢情報347とを表している。なお,後述するように電波強度情報346は一つの測定位置31から(例えば位置番号nが付与された測定位置から)複数回、例えばK回送信される。図12(a)、(b)および(c)は、それぞれ最初、k回目および最後(K回目)に送信された電波強度情報346および姿勢情報347を表している。
図12を参照して、電波強度情報346では、端末IDおよび電波強度(LQI値)とが、測定位置を表す位置番号nおよびその測定位置で測定された測定回kに関連づけられる。また、姿勢情報347では,アンテナの姿勢を表すデータが位置番号nと測定回kに関連づけられる。電波強度としてここでは、アンテナ110が受信するテスト信号を解析して算出されたLQI値を用いた。アンテナの姿勢は、方位センサ121により測定されたY軸の方位角と、加速度センサ122により測定された重力加速度GのX軸、Y軸、およびZ軸への分力(重力加速度Gの大きさで規格化された分力)とにより表示した。
図12(a)を参照して、最初の測定で電波強度としてLQI=118が測定され、k回目の測定でLQI=120が測定された。この最初からk回目の測定の間、Gx/G=0、Gy/G=0、Gz/G=1であった。即ち、Z軸は鉛直方向を向いている。また、Y軸の方位角は83度であり、予定する方位角80よりE方位側に3度ずれている。
一方、K回目の測定で電波強度としてLQI=90が測定されたとき、Gx/G=1、Gy/G=0、Gz/G=0と変化した。即ち、X軸が鉛直方向を向くように変化した。また、Y軸の方位角は−80度であり、W方位側に回転している。即ち、当初の姿勢から、Y軸まわりに90度回転し、さらにY軸が180度近く回転している。かかる姿勢の変化は、複数回の測定中に何らかの理由により,例えば人との接触により電波強度測定端末1が転倒ないし回転することで引き起こされる。
次いで、ステップS106で、無線環境調査装置2は、受信した電波強度情報346および姿勢情報347を測定位置番号nに関連づけて記憶装置314に記憶する。
次いで、ステップS107で、同一の測定位置で予め与えられた回数、例えばK回の測定がなされたか否かを判定し、所与の回数に達していなければ再びステップ105〜ステップ106を繰り返す。所与の回数の測定がなされると、次のステップ108を実行する。この測定の繰り返しは、複数回の測定結果を平均することで、偶発的又は一次的に発生するノイズの影響を回避するためになされる。なお、所定回数に代えて、所定時間内で測定を繰り返してもよい。
所与の回数の測定がなされると、ステップS108で,無線環境調査装置2は、ステップS106で受信した端末IDを有する電波強度測定端末1に測定終了を通知し、ステップS109を実行する。この測定終了の通知を受けた電波強度測定端末1は、ステップS126で、表示装置130に測定が終了した旨を表示する。これにより、測定位置31Aにおける電波強度の測定が完了する。その後、電波強度測定端末は初期状態(ステップSw21)に戻り、受信待ち状態に入る。この表示を見た測定者は、この電波強度測定端末1を次の測定位置に移動可能であると容易に判断することができる。。
次いで、ステップS109で、無線環境調査装置2は変数nを調べ、変数n=>N(Nは測定位置の個数)ならば、全ての測定位置での測定が完了したとしてステップ100を終了する。
変数n<Nならば、ステップS110でn=n+1とする。即ち、nを、次に測定すべき測定位置31の位置番号へ変更する。次いで、ステップS111で、変数sを調べ、変数s=>Sならば(即ち、使用可能な全ての電波強度測定端末1が使用された。)、再びステップS102から繰り返す。ここで、Sは使用される電波強度測定端末1の個数であり、変数sは次に使用される電波強度測定端末1を表している。
ステップS111で、s<S(未使用の電波強度測定端末1がある。)と判定されると、ステップS112で、s=s+1とし、ステップS103から繰り返す。このステップS110〜S112により、次の測定位置での測定を未使用の電波強度測定端末1を用いて行うことになる。これにより、複数の電波強度測定端末1を用いた効率的な測定が可能となる。
次いで、再び図8を参照して、ステップS100が完了した後,ステップS200で無線環境調査システムは電波強度分布を作成する。なお、このステップS200は、無線環境調査装置2により実行される。
図13は本発明の第1実施形態の無線環境調査システムの動作フローチャート(その3)であり、電波強度分布図の作成工程を表している。
図13を参照して、ステップS200が実行されると、無線環境調査装置2は、ステップS201で、変数nを1に設定する。この変数nは、図10に表示する測定位置31を識別するための位置番号nとして用いられる。なお、ステップS200の実行時には,図12に示す電波強度情報346および姿勢情報347が、位置番号1〜Nの全ての測定位置および1〜K回の全ての測定回ごとに取得され、記憶されている。
次いで、ステップS202で、変数kを1に設定する。この変数kは、位置番号nの測定位置において、ステップS104〜ステップS106の繰り返しにより測定されたデータのうちのk番目を表している。
次いで、ステップS202で、無線環境調査装置2は、位置番号がnの電波強度情報346および姿勢情報347を記憶装置314から読み出す。読み出された電波強度情報346および姿勢情報347はそれぞれ、ステップS104〜ステップS106の繰り返し回数(位置番号nでの測定回数K)に等しいデータ数(レコード数)を有する。
次いで、ステップS203で、無線環境調査装置2の姿勢抽出手段342は、k番目に測定された姿勢情報347を所定の許容範囲と比較する。具体的には、図12(a)を参照して、測定回k=1のレコードに記録されている、測定された方位角α=83度、測定された重力加速度GのX,YおよびZ軸方向の各分力Gx/G=0、Gy/G=0、Gz/G=1がそれぞれ許容範囲にあるか否かを判定する。即ち、
αL<α<αM
GxL<Gx/G<GxM
GyL<Gy/G<GyM
GzL<Gz/G<GzM
の全てが成立するとき、許容範囲内と判定し、一つでも満たさないときは許容範囲外と判定する。ここで、αLおよびαMは方位角の許容最小および最大値、GxLおよびGxMはGx/Gの許容最小および最大値、GyLおよびGyMはGy/Gの許容最小および最大値、GzLおよびGzMはGz/Gの許容最小および最大値である。
ここでは、αL=75度、αM=85度、GxL=GyL=−0.1およびGxM=GyM=0.1と設定し、GzL=0.9およびGzM=1.1と設定した。従って、図12(a)の測定回k=1のレコードの姿勢情報347は、許容範囲内にある姿勢を表すと判定される。同様に、図12(b)を参照して、測定回kに関する姿勢情報347も、許容範囲内の姿勢と判定される。ステップS203で姿勢が許容範囲内と判定されると、次のステップS205を実行する。
他方、図12(b)を参照して、位置番号Iの例えば最後(K回目)に測定された姿勢情報347は、方位角α=−80度、測定された分力Gx/G=1、Gy/G=0、Gz/G=0であり、この姿勢情報347は許容範囲外の姿勢を表すと判定される。このステップS203で姿勢が許容範囲外と判定されたとき、ステップS204で、この測定回Kのレコードの電波強度V(LQI値=90)を−1に設定する。従って、電波強度情報346のうち、許容範囲外の姿勢で測定された電波強度Vは−1に置換される。このステップS203〜S205は、全ての測定回について繰り返す。
次いで、ステップS205で、無線環境調査装置2は、位置番号nで測定されたK個の電波強度V(LQI値)の平均値<V>を算出する。この平均値<V>の算出では、V=−1に設定された電波強度V(LQI値=90)を除外する。即ち、V=−1でない電波強度Vのみの平均値<V>を算出する。
次いで、ステップS206で、変数nがn=>Nか否か、即ち位置番号nの全てのnについてステップS203〜S205が実行されたか否かを判定する。N未満と判定されると、ステップS209でn=n+1とし、再びステップS203〜ステップS205を繰り返す。全てのnについて実行された、即ち変数n=>Kと判定されると、無線環境調査装置2は次のステップS207を実行する。
次いで、ステッフ207で、無線環境調査装置2の電波強度分布作成手段は、電波強度分布を作成し、表示装置330に地図に重ねて電波強度分布図を表示する。この電波強度分布の算出は、電波強度の平均値が算出された測定位置31をxy座標とし、その測定位置の電波強度の平均値に基づきなされる。次いで、ステップS208で算出された電波強度分布を、地図上に例えば等高線として表示する。
図14は本発明の第1実施形態により作成された電波強度分布図である。電波強度を地図上の等高線(等電波強度線)として図示している。
図14を参照して、仮設置されたアクセスポイント311を中心に、等高線が楕円形に広がることが明らかにされている。ここで○は平均値<V>が求められた測定位置31aを、●は平均値<V>が求められなかった測定位置31bを表している。なお、測定位置31bでは、K回の測定において、アンテナ110の姿勢が全て許容範囲内になかったことを意味する。 上述した本第1実施形態では、無線強度測定端末1のアンテナ110の姿勢がばらついていても、無線環境調査装置2が許容範囲外のアンテナ姿勢で測定されたデータを除外する。従って、アンテナの姿勢のばらつきに起因する電波強度の測定精度の劣化が回避され、電波強度分布を正確に調査することができる。
また、本第1実施形態の電波強度測定端末1は、電波強度情報346に加えてアンテナ110の姿勢を測定して送信する。このため、アンテナ110の姿勢が許容範囲外のときに測定された電波強度情報346を除外して、正確な電波強度分布を調査することができる。
本発明の第2実施形態は、アンテナの姿勢が許容範囲外になったとき、アラームを発する電波強度測定装置1を用いた無線環境調査システムに関する。
図15は本発明の第2実施形態の電波強度測定端末の機能構成図であり、第二実施形態の無線環境調査システムで用いられる電波強度端末1Aの機能を表している。
図15を参照して、本第2実施形態の電波強度測定端末1Aは、姿勢範囲算出手段142を備える。その他は第1実施形態の電波強度測定端末1と同様である。以下、第2実施形態の無線環境調査システムの動作を説明する。
図16は本発明の第2実施形態の無線環境調査システムの動作フローチャートであり、電波強度測定端末1Aと無線環境測定装置2との動作フローを表している。なお、図16の左側に電波強度測定端末1Aの動作を、右側に無線環境測定装置2の動作を表している。
図16を参照して、ステップS101〜S103およびステップSw21〜S121までは第1実施形態と同様である。本第2実施形態では、無線環境測定装置2はステップS103と同時に又は続けて、ステップS301で、アンテナ110の姿勢の許容範囲を送信し、ステップSw01で受信待ち状態に入る。電波強度測定端末1Aは、姿勢の許容範囲を受信し、メモリ134へ記憶する。
次いで、ステップS123で、電波強度測定端末1Aは、第1実施形態のステップS123と同様、端末IDと測定位置を含む端末情報345aを送信する。次いで、電波強度測定端末1Aは、送信したとき(確定ボタンが押下されたとき)のアンテナ110の姿勢を検出し、ステップS323で、その姿勢がメモリ134に記憶された許容範囲内にあるか否かを判定する。
ステップS323で許容範囲外と判定されると、ステップS322で、電波強度測定端末1Aはアラームを、例えば表示装置130に表示する。従って、測定者はこのアラームの表示を見て、ステップS322で、電波強度測定端末1Aの姿勢を修正することができる。修正後、確定ボタン131bの押下により、再びステップS123が繰り返される。
ステップS323で許容範囲内と判定されると、ステップSw22で、電波強度測定端末1Aは受信待ち状態に入る。この後の電波強度測定端末1Aと無線環境測定装置2との動作は、第1実施形態と同様である。
本第2実施形態では、確定ボタン131bが押下されたときの電波強度測定装置1Aの姿勢(即ちアンテナ110の姿勢)が許容範囲外にあるときはアラームが表示されるので、その時点で測定者が姿勢を修正することができる。このため、アンテナ姿勢のばらつきを少なくすることができ、精密な電波強度の測定がなされる。
なお、ステップS322を含むループによるデッドロックが生じないように、一定時間内にステップS301からステップS105へ移行することが好ましい。
本発明の第3実施形態は、アンテナの姿勢が許容範囲外になったか否かの判断を無線環境調査装置2が行う無線環境調査システムに関する。
本題3実施形態の無線環境調査システムに用いられる電波強度測定端末1Aおよび無線環境測定装置2は第1実施形態と同様の機能を有する。
図17は本発明の第3実施形態の無線環境調査システムの動作フローチャートである。図17を参照して、本第3実施形態では、図9に示す第1実施形態のフローチャートに、ステップSw23、ステップS324〜S326、ステップSw03およびステップS302〜S304が追加されている。なお、ステップS325およびステップS302は、それぞれ図9中のステップS123およびステップS104を置き換えている。他は、第1実施形態のフローチャートと同様である。説明を簡明にするため、主に追加又は置き換えられたステップについて説明する。
図17を参照して、無線環境調査装置2が地図を送信して受信待ち状態に入るステップS103、Sw01までは第1実施形態と同様である。また、電波強度測定端末1が地図を表示し、確定ボタン131bの押下により測定位置を設定するステップS121、S122まで、第1実施形態と同様である。
本第3実施形態では、電波強度測定端末1は、ステップ122の実行後、即ち確定ボタン131bが押下された後、ステップS324で、姿勢検知器120はアンテナ110の姿勢を測定する。そして、ステップS325で、端末ID、測定位置を測定位置情報345として送信すると同時に、測定された姿勢を姿勢情報347として送信する。送信後、ステップSw22で、電波強度測定端末1は受信待ち状態に入る。
次いで、測定位置情報345および姿勢情報347を受信した無線環境調査装置2は、ステップS302で、これらの情報を記憶装置314に記憶する。
次いで、ステップ303で、無線環境調査装置2は、その姿勢情報347が表す姿勢が許容範囲内か否かを判定する。そして、許容範囲内と判定したとき、次のステップS105を実行する。ステップS105以下のフローは第1実施形態と同様である。
ステップS303で許容範囲外と判定されると、ステップS304で、無線環境調査装置2はアラーム信号を送信し、その後ステップSw03で受信待ち状態に入る。なお、ステップSw03では、無用なデッドロックを回避するために、一定時間経過後は次のステップS105を実行するようにしてもよい。
アラーム信号を受信した電界強度測定端末1は、ステップS326で、アラームを表示装置130に表示し、ステップSw22で受信待ち状態に入り、受信イベントが発生するまたは確定ボタン13bが押下されるまで待機する。測定者は、表示されたアラームを見て電界強度測定端末1の姿勢を修正し、確定ボタン131bを押下することで、ステップS324を再び実行することができる。
本第3実施形態では、電波強度測定端末1に姿勢範囲算出手段を設けないので、電波強度測定端末1の機能構成を増加させることなく、姿勢の修正機能を付加することができる。