JP4686899B2 - ハイブリッド電気自動車の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、動力源として、ガソリンエンジンと電気モーターを備えたハイブリッド自動車両の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、動力源として従来のエンジンと電池で駆動するモータとを搭載し、状況に応じて動力源を使い分けることができるハイブリッド自動車両が注目されている。ハイブリッド自動車両は、制動エネルギーを回収して利用することにより省エネルギー性に優れ、CO2の排出も低減されるという利点を有する。ハイブリッド自動車両では、エンジン、モータ、CVTなどの動作に対する電子制御の高度化が進展している。この電子制御の一例として、クラッチの係合故障の判定と、その結果に基づく運転モードの制御に関する技術が提案されている。
【0003】
たとえば、特開2000−224712号公報は、クラッチの異常状態を検知したときに、モータジェネレータを電動機単独モードで運転する手段を備えたハイブリッド自動車の制御装置を開示する。なお、当該公報におけるクラッチの異常状態の検知は、クラッチ制御弁への指示電流が最小に固定した状態に陥った状態を検出することにより行われる。
【0004】
また、たとえば、特開平11−332009号公報は、クラッチの入力軸および出力軸の回転数の差を監視することによりクラッチの接続異常を判別する手段を備え、異常と判別された場合にはシリーズハイブリッド方式で駆動制御させるハイブリッド自動車を開示する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
クラッチ制御弁への指示電流が最小に固定した状態に陥ったか否かだけでは、クラッチの故障が適切に判定できなかった。たとえば、クラッチ自体が磨耗等によって引き摺りを起こした場合は検知することができず、クラッチの状態に基づいた適切な運転モードで走行することができなかった。
【0006】
また、クラッチ前後の軸回転数の差によりクラッチの係合故障を判定する手法では、車両が走行状態にあることが必須となり、車両が停止している場合には、クラッチの故障判定が行えなかった。
【0007】
したがって、ハイブリッド自動車のクラッチの係合故障判定と、それに基づく運転モードの制御については、より適切で、きめ細かな制御が必要とされていた。
【0008】
そこで本発明は、上記の課題を解決することのできるハイブリッド自動車の制御装置を提供することを目的とする。より詳しくは、本発明の目的は、ハイブリッド自動車のクラッチの故障判定をより適切に行い、その判定結果に基づいた走行モードを実現することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、エンジンと、モータジェネレータと、前記モータジェネレータの入出力軸が接続された第1の回転要素および前記エンジンの出力軸が接続された第2の回転要素を含む3軸入出力機構と、前記第1の回転要素と第1の結合機構を介して接続されるとともに、前記3軸入出力機構の第3の回転要素と第2の結合機構を介して接続されたベルト式無段変速機と、を有するハイブリッド自動車の制御装置であって、前記第1の結合機構の結合および開放を制御する第1の結合機構制御部と、前記モータジェネレータの入出力軸の回転状態を検出するモータ回転センサと、前記ベルト式無段変速機の入力軸の回転状態を検出するCVT入力軸回転センサと、前記第1の結合機構の接続良否を判定する第1の結合機構良否判定部と、を備え、前記第1の結合機構良否判定部は、前記第1の結合機構制御部により前記第1の結合機構に対して開放が指令された状態で、前記第2の結合機構制御部により前記第2の結合機構が係合された後に、車両が動かない程度の所定量のトルクが前記モータジェネレータに付与されたときの、前記モータジェネレータの入出力軸および前記ベルト式無段変速機の入力軸の回転状態の検出結果に基づいて、前記第1の結合機構の接続良否を判定する。
【0010】
これによれば、車両が停止した状態でも、モータジェネレータに付与するトルクを微少にすることにより、第1の結合機構(たとえば、クラッチ)の係合故障を判定することができる。
【0011】
本発明に係る前記ハイブリッド自動車は、前記第1の結合機構を制御するための油圧機構をさらに含み、前記所定量のトルクは、前記油圧機構の油圧温度に応じて設定されてもよい。
【0012】
これによれば、油圧の状態に応じて、モータジェネレータに付与するトルクを設定することにより、より適切なクラッチの係合故障判定を行うことができる。
【0013】
本発明は、前記第2の結合機構の結合および開放を制御する第2の結合機構制御部と、前記エンジンの駆動状態を検知するエンジン状態検出部と、をさらに備え、前記第2の結合機構制御部は、前記所定量のトルク付与により、前記第1の結合機構の接続が異常と判定された場合に、前記第2の結合機構を強制的に結合し、前記第1の結合機構良否判定部は、前記第2の結合機構が強制的に結合されたときの、前記エンジン状態検出部の検出結果に基づいて、前記第1の結合機構の接続良否についての本判定を行ってもよい。
【0014】
これによれば、モータジェネレータにジェネレータ所定量のトルク付与したときにクラッチが故障と判定された場合でも、クラッチが本当に故障しているのかどうかを確認でき、より精度の高い故障判定ができる。
【0015】
本発明は、前記第2の結合機構の接続良否を判定する第2の結合機構良否判定部をさらに備え、前記第1の結合機構良否判定部は、前記第2の結合機構良否判定部により前記第2の結合機構の接続が正常と判定された場合に、前記第1の結合機構の接続良否の判定を行ってもよい。
【0016】
これによれば、第2の係合機構(他のクラッチ)が故障した場合に、モータトルクが付加されることがないので、安全性を確保することができる。
【0017】
また、本発明は、エンジンと、モータジェネレータと、前記モータジェネレータの入出力軸が接続された第1の回転要素、および前記エンジンの出力軸が接続された第2の回転要素を含む3軸入出力機構と、前記第1の回転要素と第1の結合機構を介して接続されるとともに、前記3軸入出力機構の第3の回転要素と第2の結合機構を介して接続されたベルト式無段変速機と、を有するハイブリッド自動車の制御装置であって、前記第1の結合機構の接続良否を判定する第1の結合機構良否判定部と、前記第2の結合機構の接続良否を判定する第2の結合機構良否判定部と、を備え、前記第1の結合機構良否判定部は、前記第2の結合機構への係合指示または開放指示通りに前記第2の結合機構が係合または開放動作を行ったと前記第2の結合機構良否判定部が判定した場合に、前記第1の結合機構の接続良否の判定を行う。
【0018】
これによれば、第1の係合機構(クラッチ)の判定は、第2の係合機構(他のクラッチ)が故障した場合には、実施されないので、安全を確保した状態で、クラッチの故障判定をすることができる。
【0019】
また、本発明のハイブリッド自動車の制御装置は、前記第1の結合機構が故障と判定された場合に、運転モードの移行を、前記第1の結合機構を係合した状態の運転モードへの移行のみに制限してもよい。
【0020】
これによれば、第1の結合機構が係合故障している場合には、第1の結合機構を係合した状態の運転モードのみに移行するので、第1の結合機構が動作する必要をなくすことができる。
【0021】
また、本発明は、エンジンと、モータジェネレータと、前記モータジェネレータの入出力軸が接続された第1の回転要素および前記エンジンの出力軸が接続された第2の回転要素を含む3軸入出力機構と、前記第1の回転要素と第1の結合機構を介して接続されるとともに、前記3軸入出力機構の第3の回転要素と第2の結合機構を介して接続されたベルト式無段変速機と、を有するハイブリッド自動車の制御装置であって、前記第1の結合機構の結合および開放を制御する第1の結合機構制御部と、前記モータジェネレータを制御するモータ制御装置と、前記モータジェネレータの入出力軸の回転状態を検出するモータ回転センサと、前記第2の結合機構の接続良否を判定する第2の結合機構良否判定部をさらに備え、前記第1の結合機構制御部は、前記第2の結合機構制御部が、前記第2の結合機構に開放を指令した状態で、前記第1の結合機構に結合を指令し、前記モータ制御装置は、前記モータジェネレータを所定の回転数で駆動させ、前記モータ回転センサは、このときの前記モータジェネレータの入出力軸の回転状態を検出し、前記第2の結合機構良否判定部は、前記モータ回転センサによる検出結果に基づいて、前記第2の結合機構の接続良否を判定する。
【0022】
これによれば、ニュートラルの状態から、第1の結合機構を結合してモータジェネレータの入出力軸の回転状態を調べることにより、第2の結合機構についての故障判定を容易にすることができる。
【0023】
また、本発明のハイブリッド自動車の制御装置は、前記第2の結合機構が故障と判定された場合に、運転モードの移行を、前記第2の結合機構を係合した状態の運転モードへの移行のみに制限してもよい。
【0024】
これによれば、第2の結合機構が係合故障している場合には、第2の結合機構を係合した状態の運転モードのみに移行するので、第2の結合機構が動作する必要をなくすことができる。
【0025】
また、本発明は、エンジンと、モータジェネレータと、前記モータジェネレータの入出力軸が接続された第1の回転要素および前記エンジンの出力軸が接続された第2の回転要素を含む3軸入出力機構と、前記第1の回転要素と第1の結合機構を介して接続されるとともに、前記3軸入出力機構の第3の回転要素と第2の結合機構を介して接続されたベルト式無段変速機と、を有するハイブリッド自動車の制御装置であって、前記ベルト式無段変速機と前記第3の回転要素との間に介装され、前記第3の回転要素の回転にブレーキを掛ける第3の結合機構と、前記第3の回転要素の回転状態を検出する第3の回転要素回転検知手段と、前記第2の結合機構の結合および開放を制御する第2の結合機構制御部と、前記モータジェネレータの駆動を制御するモータ制御装置と、前記第3の結合機構の接続良否を判定する第3の結合機構良否判定部と、をさらに備え、前記モータ制御装置は、前記第2の結合機構制御部によって前記第2の結合機構が結合された状態で、前記第3の回転要素の回転が所定の回転数になるように、前記モータジェネレータの回転数を制御し、第3の結合機構良否判定部は、このときの前記第3の回転要素回転検知手段による検出結果に基づいて、第3の結合機構の接続良否を判定する。
【0026】
これによれば、3軸入出力機構(たとえば、遊星歯車)のサンギアおよびキャリアの回転状態を制御することにより、リングギアに接続された第3の結合機構の故障判定を簡便に行うことができる。
【0027】
また、本発明は、エンジンと、モータジェネレータと、前記モータジェネレータの入出力軸が接続された第1の回転要素および前記エンジンの出力軸が接続された第2の回転要素を含む3軸入出力機構と、前記第1の回転要素と接続されるとともに、前記3軸入出力機構の第3の回転要素と接続されたベルト式無段変速機と、を有するハイブリッド自動車の制御装置であって、前記ベルト式無段変速機と、前記第1の回転要素または前記第3の回転要素との間に介装された結合機構と、油圧の油路を切り換えることにより、前記結合機構の結合および開放を制御する結合機構制御手段と、前記結合機構の接続良否を判定する結合機構良否判定手段と、前記油路の切換を検出する油路切換検出手段と、前記結合機構良否判断手段が前記結合機構についての良否判定を行った結果、前記結合機構が正常と判定された場合であって、前記油路切換手段により、前記結合機構への油圧が抜けていることが検出された場合に、前記結合機構制御手段の故障判定を行う結合機構制御故障判定手段と、を備える。
【0028】
これによれば、結合機構(クラッチ)自体の故障を判定するとともに、クラッチへの油路の切換不良が起きているか否かを判定することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明する。
【0030】
図1は、本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、スタータインバータ22により駆動制御されるスタータモータ24によって始動されエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)26により運転制御されるエンジン28と、エンジン28の出力軸とサンギヤ接続された遊星歯車30にキャリア接続されたフロント駆動インバータ32により駆動制御されるフロント駆動用モータ34と、遊星歯車30のキャリアにC1クラッチ94を介して接続されると共にリングギアにB1クラッチ98(リングギア用のブレーキ手段)とC2クラッチ96とを介して接続され入力軸の回転数を無段階変速して前輪12の回転軸に出力するCVT36と、リア駆動インバータ44により駆動制御され後輪14の回転軸にトルクを出力するリア駆動モータ46と、各インバータ22,32,44に接続されバッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)47により管理されるバッテリ48と、車輪速センサ58からの車輪速や舵角センサ60からの操舵角、加速度センサ62からの加速度に基づいてスリップ制御やブレーキ制御を行うブレーキ用電子制御ユニット(以下、ブレーキECUという)64と、ハイブリッド自動車20全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット(以下、HVECUという)70とを備える。
【0031】
バッテリ48は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの充放電可能な単電池を直列に複数接続して100Vより高い電圧(たとえば、200Vや400Vなど)とした組電池として構成されており、走行用のフロント駆動用モータ34やリア駆動モータ46に電力を供給する。
【0032】
HVECU70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、処理プログラムを記憶したROM74と、一時的にデータを記憶するRAM76と、入出力ポート(図示せず)と、通信ポート(図示せず)を備える。RAM76には、C1クラッチ94、C2クラッチ96、およびB1クラッチ98に対しての故障判定の結果が記憶されている。各クラッチの故障判定については後述する。HVECU70は、エンジンECU26やバッテリECU47、ブレーキECU64と通信ポートを介して通信しており、エンジンECU26に向けて出力されるエンジン28の出力指令に基づいて、エンジンECU26によるエンジン28の運転制御がなされるようになっている。HVECU70の入力ポートには、シフトポジションセンサ88からのシフトレバーのポジション、アクセル開度センサ90からのアクセル開度、リングギア回転センサ110からのリングギアの回転状態、CVT入力軸センサ112からCVT入力軸の回転状態などが入力されている。また、HVECU70の入力ポートにはエンジン回転センサ(図示せず)からのエンジン回転状態、およびモータ回転センサ(図示せず)からのフロント駆動用モータ34の入出力軸の回転状態が入力されている。HVECU70の出力ポートからは、ウォーニングランプ92への点灯信号などが出力されている。
【0033】
また、HVECU70は、エンジンECU26への指令によって、CVT36用の油圧制御をソレノイド100に行わせる。また、HVECU70は、ソレノイド102を用いて、C2クラッチ96、およびB1クラッチ98の圧力制御を行うとともに、ソレノイド106を用いて、C1クラッチ96の圧力制御を行う。
【0034】
なお、エンジンECU26やバッテリECU47、ブレーキECU64は、図示しないが、HVECU70と同様に、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されている。
【0035】
本実施例のハイブリッド自動車20は、通常走行では、CVT36を介してエンジン出力が前輪12を駆動する。エンジン出力の一部は必要に応じてフロント駆動用モータ34を発電機として機能させ、バッテリ48を充電する。強い加速が必要な場合は、フロント駆動用モータ34とエンジン28の両方で前輪12を駆動するが、さらに、大きな駆動力が必要な場合には、リア駆動モータ46が駆動を補助する。
【0036】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の制御、特に、C1クラッチ94、C2クラッチ96、およびB1クラッチ98の故障判定、および、その判定結果に基づいた制御について説明する。
【0037】
図2は、運転モードが、C2クラッチ96を開放した状態から係合した状態に移行する場合(たとえば、ニュートラルモード(C1クラッチ94、C2クラッチ96、およびB1クラッチ98はともに開放状態)から何らかの走行モード(たとえば、C2クラッチ96のみが係合され、エンジン28が始動した状態で、エンジン28とフロント駆動用モータ34のトルクのバランスにより走行するモード:以下、電気トルコンモードという))に行われる処理を示すフローチャートである。
【0038】
まず、RAM76を参照して、C2クラッチ96が故障と判定されているか否かが調べられる(S10)。C2クラッチ96が故障と判定されている場合には、C1クラッチ94の故障判定を行わない。C2クラッチ96が正常と判定されている場合において、C1クラッチ94の故障判定が行われる(S20)。
【0039】
続いて、図3に移り、C2クラッチ96の係合指示から所定時間(200〜300msec)が経過したか否かが調べられる(S100)。所定時間が経過するまでは、フロント駆動用モータ34のモータトルク出力は制限されている。C1クラッチ94の係合指示から所定時間が経過した場合(かつ、C2クラッチ96の係合が機械的に行うマニュアルバルブ等を有する場合は、そのマニュアルバルブが係合側へ切り替わってから所定時間経過した場合)には、フロント駆動用モータ34に車両が動かない程度(たとえば、5N)のモータトルク(α)が付加される(S110)。なお、このモータトルク(α)は、油温をパラメータとして適宜変更可能である。たとえば、油温が低い場合には、モータトルク(α)を高めに設定することが好適である。次に、CVT入力軸の回転状態(回転数V)が検知される(S120)。この回転数Vとフロント駆動用モータ34の回転数(以下、モータ回転数という)Mとの差(絶対値)が所定量I(所定量Iは、付与したモータトルク(α)に応じて設定される)より大きい状態が、所定時間(たとえば、数100msec)継続したか否かが調べられる(S130)。所定時間継続している場合には、C1クラッチ94は正常であると判定され(S140)、C2クラッチ96を係合する運転モードに移行する(S150)。一方、そうでない場合には、C1クラッチ94に故障の可能性があるとし(仮判定)、C1クラッチ94の本判定に進む(S160)。ただし、C1クラッチ94の本判定に進まずに、この段階で、C1クラッチ94に故障の疑いがあるとして、運転モードの移行を、C1クラッチ94を係合する運転モードへの移行のみに制限してもよい。以上の判定により、車両が停止している状態においても、C1クラッチ94の係合故障を判定することができる。なお、ここでの判定結果は、RAM76に記録される。
【0040】
次に、図4に移り、C1クラッチ94の故障についての本判定が行われる。まず、HVECU70によって、C2クラッチ96が強制に係合させられる(S200)。その結果、エンジン28の運転状態がどうなったかがエンジンECU26により検知される(S210)。エンジンECU26による検知結果に基づいてC1クラッチ94についての本判定が行われる(S220)。エンジン28がストールしていないことが検知された場合には、C1クラッチ94は正常であると判定され(S230)、C2クラッチ96を使用する運転モードへの移行が行われる(S240)。一方、エンジン28がストールしたことが検知された場合には、C1クラッチ94が実際に故障していると判定される(S250)。つづいて、その旨がウォーニングランプ点灯等により、ドライバに警告されるとともに(S260)、運転モードの移行が、C1クラッチ94を使用する運転モードへの移行のみに制限される。ここでの判定結果は、RAM76に記録される。
【0041】
これによれば、たとえば、低温状態においてC1クラッチ94の引き摺りが大きいような場合に、微小トルクではフロント駆動用モータ34が回転しないため、C1クラッチ94が異常と判定されてしまうケースを回避し、より適切な故障判定をすることができる。
【0042】
次に、運転モードが、シフト切り換えによってC1クラッチ94を開放した状態からC1クラッチ94を係合した状態に移行する際に行われる、C2クラッチ96の故障判定について図5を用いて説明する。
【0043】
まず、CVT入力軸センサ112によりCVT36の入力軸の回転状態(回転数V)が検知される(S300)。HVECU70は、C1クラッチ94を開放した状態で、「検知されたCVT入力軸の回転数V+オフセット量γ」を目標値として、フロント駆動用モータ34の回転を制御する(S310)。制御開始から所定時間経過後に、モータ回転数Mが目標値と等しいか否か(所定量の誤差を考慮してもよい)が調べられる(S340)。モータ回転数Mが目標値と等しい場合には、C2クラッチ96は、正常と判定され(S350)、運転モードの移行が実行される(S360)。一方、検知された回転数Mが目標値と等しくない場合には、C2クラッチ96が故障と判定される(S370)。これは、モータ回転数は、回転数制御によって目標回転に一致、もしくは一致しようとするが、C2クラッチ96が係合故障状態にある場合には、シフト切り換えによってC2クラッチ96が係合しようとし、フィードバックに外乱を与えることに基づいている。C2クラッチ96が故障と判定された旨は、ウォーニングランプ点灯によりドライバに警告されるとともに(S380)、運転モードの移行が、C2クラッチ96を使用する運転モードへの移行のみに制限される(S390)。なお、ここでの判定結果は、RAM76に記録される。
【0044】
図6は、運転モードが、ニュートラルモードからエンジン自立運転モータ走行モード(C1クラッチ94のみを係合し、フロント駆動用モータ34の駆動力により走行するモード)に移行する場合の遊星歯車30の3軸の回転数を図示する共線図である。共線図には、サンギヤ(S)、キャリア(C)、およびリングギア(R)のそれぞれの回転数が縦軸に示されている。共線図上では、それぞれのギア回転数が必ず直線で結ばれる関係となる。この図は、C2クラッチ96が正常であれば、キャリアの回転数(モータ回転数)は、モータ制御による目標回転数に等しくなるが、C2クラッチ96が異常(故障)の場合には、キャリア(モータ)の回転数は、目標回転数にはならないことを示している。これは、C2クラッチ96が係合故障を起こしている場合に、CVT入力軸の回転が強制的にリングギアの回転と等しくなるために生じる。
【0045】
次に、運転モードが、C2クラッチ96を開放した状態からC2クラッチ96を係合した状態に移行する際に行われる、B1クラッチ98の故障判定について説明する。
【0046】
図7は、運転モードが、ニュートラルモードから電気トルコンモードに移行する場合に行われる別の処理を示すフローチャートである。
【0047】
まず、CVT入力軸センサ112によりCVT入力軸の回転数Vが検知される(S400)。次に、リングギアの回転数が「CVT入力軸の回転数V±λ(以下、目標リングギア回転数という。符号は、車両が前進するか後退するかによる。)」になるようにフロント駆動用モータ34の回転が制御される(S410)。たとえば、車両が停止していればVはゼロなので、結局、目標リングギア回転数は、±λとなる。この制御の後、リングギア回転センサ110により、リングギアの回転数Rが検知される(S420)。検知された回転数Rが、目標リングギア回転数と等しいか否かが調べられる(S430)。検知された回転数Rが、目標リングギア回転数と等しい場合(ただし、多少の誤差を許容してもよい)には、B1クラッチ98は正常であると判定され(S440)、所定の運転モードの移行が実行される(S450)。一方、検知された回転数Rが0の場合(ただし、必ずしもゼロに限られず、多少の誤差は許容される)には、B1クラッチ98は故障していると判定される(S460)。これは、B1クラッチ98が故障した場合に、回転数R=0になることを利用している。故障と判定されると、ウォーニングランプ92が点灯し、B1クラッチ98が故障している旨を示す警告がドライバに与えられるとともに(S470)、運転モードの移行が制限または禁止される(S480)。なお、ここでの判定結果は、RAM76に記録される。
【0048】
これにより、B1クラッチ98の故障を適宜判定し、判定結果に基づいて適切な運転モードの移行、または運転モードの移行を制限することができ、B1クラッチ98が故障した状態で、C2クラッチ96の係合が実行されること(ダブルロック)を未然に防ぐことができる。
【0049】
図8は、B1クラッチ98の故障判定時の遊星歯車30の3軸に対する共線図である。この図は、B1クラッチ98が正常であれば、リングギアの回転数は、モータ制御による目標回転数に等しくなるが、B1クラッチ98が異常(故障)の場合には、リングギアの回転数は、目標回転数にはならずに、0になることを示している。これは、B1クラッチ98が係合故障を起こしている場合に、リングギアが回転できなくなるために生じる。
【0050】
なお、クラッチの係合、および開放の動作を、機械的に油圧を遮断する機構(たとえば、油圧切換バルブ)により行っている場合には、上記いずれかのクラッチの故障判定の後に、図9に示す次のような処理を行ってもよい。
【0051】
まず、上述したようなクラッチに関する故障判定が行われ(S500)、その結果に基づいた判断が行われる(S510)。クラッチが故障と判定された場合には、運転モード移行制限などのフェールセーフが実行される(S550)が、クラッチが正常と判定された場合にも、次のような判定を行う。すなわち、図示しない油圧切換検出手段により、ソレノイドからクラッチに油圧が出力されているかが調べられ(S520)、油圧が出力されていない場合には、ここでの処理を終える。一方、油圧が出力されている場合には、油圧切換バルブにおけるバルブスティック故障についての判定が行われる(S530)。バルブスティックが発生していると判断された場合には、フェールセーフが実行される(S550)。一方、バルブスティックが発生していなければ、正常と判定される(S560)。
【0052】
これによれば、クラッチ自体の故障を判定するとともに、クラッチへの油路の切換不良が起きているか否かを判定することができる。
【0053】
なお、上記実施例においては、リングギアの回転数は、リングギア回転センサ110により検知されたが、これに限らず、モータ回転数とエンジン回転数から演算によりリングギアの回転数を求めてもよい。
【0054】
【発明の効果】
上記説明から明らかなように、本発明によれば、クラッチの故障を適切に判定し、きめ細かな運転モードの制御をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】 C1クラッチ94の故障判定の前段階の処理を示すフローチャートである。
【図3】 C1クラッチ94の故障判定を示すフローチャートである。
【図4】 C1クラッチ94の故障についての本判定を示すフローチャートである。
【図5】 C2クラッチ96の故障判定を示すフローチャートである。
【図6】 C2クラッチ96の故障判定時の遊星歯車30についての共線図である。
【図7】 B1クラッチ98の故障判定を示すフローチャートである。
【図8】 B1クラッチ98の故障判定時の遊星歯車30についての共線図である。
【図9】 バルブスティック故障の判定を示すフローチャートである。
【符号の説明】
20 ハイブリッド自動車、22 スタータインバータ、24 スタータモータ、28 エンジン、30 遊星歯車、32 フロント駆動インバータ、34 フロント駆動用モータ、44 リア駆動インバータ、46 リア駆動モータ、48 バッテリ、58 車輪速センサ、60 舵角センサ、62 加速度センサ、88 シフトポジションセンサ、90 アクセル開度センサ、92 ウォーニングランプ、94 C1クラッチ、96 C2クラッチ、98 B1クラッチ、100,102,106 ソレノイド、110 リングギア回転センサ、112 入力軸センサ。
Claims (10)
- エンジンと、
モータジェネレータと、
前記モータジェネレータの入出力軸が接続された第1の回転要素、および前記エンジンの出力軸が接続された第2の回転要素を含む3軸入出力機構と、
前記第1の回転要素と第1の結合機構を介して接続されるとともに、前記3軸入出力機構の第3の回転要素と第2の結合機構を介して接続されたベルト式無段変速機と、
を有するハイブリッド自動車の制御装置であって、
前記第1の結合機構の結合および開放を制御する第1の結合機構制御部と、
前記モータジェネレータの入出力軸の回転状態を検出するモータ回転センサと、
前記ベルト式無段変速機の入力軸の回転状態を検出するCVT入力軸回転センサと、
前記第1の結合機構の接続良否を判定する第1の結合機構良否判定部と、
を備え、
前記第1の結合機構良否判定部は、前記第1の結合機構制御部により前記第1の結合機構に対して開放が指令された状態で、前記第2の結合機構制御部により前記第2の結合機構が係合された後に、車両が動かない程度の所定量のトルクが前記モータジェネレータに付与されたときの、前記モータジェネレータの入出力軸および前記ベルト式無段変速機の入力軸の回転状態の検出結果に基づいて、前記第1の結合機構の接続良否を判定することを特徴とするハイブリッド自動車の制御装置。 - 前記ハイブリッド自動車は、前記第1の結合機構を制御するための油圧機構をさらに含み、
前記所定量のトルクは、前記油圧機構の油圧温度に応じて設定されることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド自動車の制御装置。 - 前記第2の結合機構の結合および開放を制御する第2の結合機構制御部と、
前記エンジンの駆動状態を検知するエンジン状態検出部と、
をさらに備え、
前記第2の結合機構制御部は、前記所定量のトルク付与により、前記第1の結合機構の接続が異常と判定された場合に、前記第2の結合機構を強制的に結合し、
前記第1の結合機構良否判定部は、前記第2の結合機構が強制的に結合されたときの、前記エンジン状態検出部の検出結果に基づいて、前記第1の結合機構の接続良否についての本判定を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のハイブリッド自動車の制御装置。 - 前記第2の結合機構の接続良否を判定する第2の結合機構良否判定部をさらに備え、
前記第1の結合機構良否判定部は、前記第2の結合機構良否判定部により前記第2の結合機構の接続が正常と判定された場合に、前記第1の結合機構の接続良否の判定を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のハイブリッド自動車の制御装置。 - エンジンと、
モータジェネレータと、
前記モータジェネレータの入出力軸が接続された第1の回転要素、および前記エンジンの出力軸が接続された第2の回転要素を含む3軸入出力機構と、
前記第1の回転要素と第1の結合機構を介して接続されるとともに、前記3軸入出力機構の第3の回転要素と第2の結合機構を介して接続されたベルト式無段変速機と、
を有するハイブリッド自動車の制御装置であって、
前記第1の結合機構の接続良否を判定する第1の結合機構良否判定部と、
前記第2の結合機構の接続良否を判定する第2の結合機構良否判定部と、
を備え、
前記第1の結合機構良否判定部は、前記第2の結合機構への係合指示または開放指示通りに前記第2の結合機構が係合または開放動作を行ったと前記第2の結合機構良否判定部が判定した場合に、前記第1の結合機構の接続良否の判定を行うことを特徴とするハイブリッド自動車の制御装置。 - 前記第1の結合機構が故障と判定された場合に、運転モードの移行を、前記第1の結合機構を係合した状態の運転モードへの移行のみに制限することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のハイブリッド自動車の制御装置。
- エンジンと、
モータジェネレータと、
前記モータジェネレータの入出力軸が接続された第1の回転要素および前記エンジンの出力軸が接続された第2の回転要素を含む3軸入出力機構と、
前記第1の回転要素と第1の結合機構を介して接続されるとともに、前記3軸入出力機構の第3の回転要素と第2の結合機構を介して接続されたベルト式無段変速機と、
を有するハイブリッド自動車の制御装置であって、
前記第1の結合機構の結合および開放を制御する第1の結合機構制御部と、
前記モータジェネレータを制御するモータ制御装置と、
前記モータジェネレータの入出力軸の回転状態を検出するモータ回転センサと、
前記第2の結合機構の接続良否を判定する第2の結合機構良否判定部をさらに備え、
前記第1の結合機構制御部は、前記第2の結合機構制御部が、前記第2の結合機構に開放を指令した状態で、前記第1の結合機構に結合を指令し、
前記モータ制御装置は、前記モータジェネレータを所定の回転数で駆動させ、前記モータ回転センサは、このときの前記モータジェネレータの入出力軸の回転状態を検出し、
前記第2の結合機構良否判定部は、前記モータ回転センサによる検出結果に基づいて、前記第2の結合機構の接続良否を判定することを特徴とするハイブリッド自動車の制御装置。 - 前記第2の結合機構が故障と判定された場合に、運転モードの移行を、前記第2の結合機構を係合した状態の運転モードへの移行のみに制限することを特徴とする請求項7に記載のハイブリッド自動車の制御装置。
- エンジンと、
モータジェネレータと、
前記モータジェネレータの入出力軸が接続された第1の回転要素および前記エンジンの出力軸が接続された第2の回転要素を含む3軸入出力機構と、
前記第1の回転要素と第1の結合機構を介して接続されるとともに、前記3軸入出力機構の第3の回転要素と第2の結合機構を介して接続されたベルト式無段変速機と、
を有するハイブリッド自動車の制御装置であって、
前記ベルト式無段変速機と前記第3の回転要素との間に介装され、前記第3の回転要素の回転にブレーキを掛ける第3の結合機構と、
前記第3の回転要素の回転状態を検知する第3の回転要素回転検知手段と、
前記第2の結合機構の結合および開放を制御する第2の結合機構制御部と、
前記モータジェネレータの駆動を制御するモータ制御装置と、
前記第3の結合機構の接続良否を判定する第3の結合機構良否判定部と、
をさらに備え、
前記モータ制御装置は、前記第2の結合機構制御部によって前記第2の結合機構が結合された状態で、前記第3の回転要素の回転が所定の回転数になるように、前記モータジェネレータの回転数を制御し、
第3の結合機構良否判定部は、このときの前記第3の回転要素回転検知手段による検出結果に基づいて、第3の結合機構の接続良否を判定することを特徴とするハイブリッド自動車の制御装置。 - エンジンと、
モータジェネレータと、
前記モータジェネレータの入出力軸が接続された第1の回転要素および前記エンジンの出力軸が接続された第2の回転要素を含む3軸入出力機構と、
前記第1の回転要素と接続されるとともに、前記3軸入出力機構の第3の回転要素と接続されたベルト式無段変速機と、
を有するハイブリッド自動車の制御装置であって、
前記ベルト式無段変速機と、前記第1の回転要素または前記第3の回転要素との間に介装された結合機構と、
油圧の油路を切り換えることにより、前記結合機構の結合および開放を制御する結合機構制御手段と、
前記結合機構の接続良否を判定する結合機構良否判定手段と、
前記油路の切換を検出する油路切換検出手段と、
前記結合機構良否判断手段が前記結合機構についての良否判定を行った結果、前記結合機構が正常と判定された場合であって、前記油路切換手段により、前記結合機構への油圧が抜けていることが検出された場合に、前記結合機構制御手段の故障判定を行う結合機構制御故障判定手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッド自動車の制御装置。
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