JP4684541B2 - 4−ピリジンメタノールの製造方法 - Google Patents

4−ピリジンメタノールの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、4−ピリジンメタノールの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
4−ピリジンメタノールの製造方法としては、4−シアノピリジンをラネー−ニッケル触媒などの存在下に酸性水溶液中で接触還元したり、鉛、錫、銅及び亜鉛から選ばれる少なくとも一種の金属を含有するパラジウム炭素触媒の存在下に酸性水溶液中で接触還元したのち、接触還元反応後の反応混合物を中和、アルカリ性にした後に、有機溶媒を加えて抽出処理を行い、有機層から4−ピリジンメタノールを分離、回収する方法がよく知られている。(例えば、特許文献1、特許文献2参照)
【0003】
しかし、このような方法においては、抽出処理後の有機層に目的とする4−ピリジンメタノールとともに副生成物である4−アミノメチルピリジンも含有されており、4−ピリジンメタノールを高純度で得るには、蒸留等によって当該有機層から4−アミノメチルピリジンを除去する必要があるが、4−ピリジンメタノールと4−アミノメチルピリジンとの沸点は比較的近似しているため、高純度の4−ピリジンメタノールを得るためには抽出処理後の有機層を精留塔を用いて精留しなければならず、そのエネルギーコストが高くなるなど経済的に不利であるという問題があった。
【0004】
【特許文献1】
特公昭61−53344号公報
【特許文献2】
特公平6−45598号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このようなことから、本発明者は、4−シアノピリジンを酸性水溶液中で接触還元して得られる4−ピリジンメタノールを含有する反応混合物から、4−ピリジンメタノールを選択的に抽出することができ、その後の蒸留操作においても精留を行うことなく、簡単な蒸留操作により、容易に高純度の4−ピリジンメタノールを製造し得る方法について検討の結果、本発明に至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、4−シアノピリジンを酸性水溶液中で接触還元して得られる4−ピリジンメタノールを含有する反応混合物に有機溶媒を添加し、抽出処理して4−ピリジンメタノールを製造する方法において、抽出処理をpH4〜5.7の範囲で行うことを特徴とする4−ピリジンメタノールの製造方法を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の方法において、4−シアノピリジンを酸性水溶液中で接触還元して4−ピリジンメタノールを得る反応それ自体は従来より公知の方法がそのまま適用され、特に限定されない。
【0008】
例えば、上記の接触還元反応における触媒としては、通常の接触水素還元反応で使用される例えばラネーニッケル触媒、パラジウム炭素触媒、白金炭素触媒、パラジウム−炭酸カルシウム触媒などが使用され、その使用量も触媒の種類、反応温度などの反応条件によっても変わるが、通常は原料4−シアノピリジンに対して0.5〜50重量%の範囲である。
【0009】
この反応は酸性水溶液中で行われ、酸性水溶液としては種々の無機酸あるいは有機酸からなる酸の水溶液が使用できるが、硫酸、塩酸、燐酸などの無機酸からなる水溶液が好ましく使用される。
【0010】
酸性水溶液として用いる酸の使用量は、それが多すぎたり少なすぎたりすると副反応が増えたり、反応時間が長くなるため、通常は原料4−シアノピリジンに対して1〜10当量倍の範囲である。
また、水の使用量は、通常、酸に対して0.5〜20重量倍である。
【0011】
反応は水素存在下に行われ、水素圧としては大気圧以上であれば特に制限はないが、一般的には水素分圧として0.1〜10Mpaの範囲である。
【0012】
反応温度は、使用する接触還元触媒の種類や使用量、酸性水溶液の酸の種類や濃度、水素圧などの諸条件によっても変わるが、一般的には0〜100℃、好ましくは20〜90℃の範囲である。
【0013】
このようにして、4−シアノピリジンを酸性水溶液中で接触還元を行うことにより4−ピリジンメタノールを含む反応混合物が得られ、該反応混合物中には通常、4−ピリジンメタノール100重量部に対して、副生物である4−アミノメチルピリジンが1〜30重量部程度含まれている。
【0014】
かくして得られる4−ピリジンメタノールを含む反応混合物に有機溶媒を添加し、抽出処理を行う。
抽出に使用される有機溶媒は、4−ピリジンメタノールを溶解し、かつ水と混和しない溶媒であれば特に制限されない。
【0015】
ここで、水と混和しないとは、必ずしも水と有機溶媒との相互溶解性がゼロであることを意味せず、抽出処理時において有機溶媒層と水層が分離可能な程度に混和しないことを意味する。
従って、使用する有機溶媒がある程度の水を溶解し、あるいは水にある程度溶解する性質を有していたとしても、抽出処理後の分液操作に際して有機溶媒層と水層とに分離可能であれば、その有機溶媒は本発明でいう水と混和しない有機溶媒に該当する。
【0016】
本発明に適用される前記有機溶媒としては、例えばトルエン、ベンゼンなどのように水との相互溶解性が殆どない有機溶媒も例示されるが、1−ブタノ−ル、酢酸エチル、エチルメチルケトンのように水との相互溶解性がある程度認められる有機溶媒が好ましく使用される。
【0017】
有機溶媒の使用量は、反応に使用した原料4−シアノピリジンに対して1〜5重量倍、好ましくは1.5〜2重量倍である。
【0018】
本発明は、このような抽出処理において、該抽出処理をpH4〜5.7、好ましくはpH5.3〜5.6の範囲で行うことに大きな特徴を有するものである。
抽出処理時のpHがこの範囲を外れると、有機溶媒層中への4−アミノメチルピリジンの混入が多くなって高純度の4−ピリジンメタノールが得られなくなったり、4−ピリジンメタノールの回収率が悪くなる。
【0019】
上記抽出処理に際して、pH調整のために使用されるアルカリとしてはアンモニア、水酸化ナトリム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど中和処理に一般的に使用されるアルカリが例示され、これらは固体状で、あるいは水溶液として、あるいはアンモニアなどの場合には気体状で使用されることもあるが、操作性あるいはpH調整の容易性から水溶液として使用するのが好ましく、とりわけ、工業的には入手の容易な濃水酸化ナトリウム水溶液が好ましく使用される。
【0020】
pH調整のタイミングは、前記有機溶媒を加える前の反応混合物に行ってもよいし、有機溶媒を加えた後に行ってもよく、特に限定されないが、有機溶媒を加えた後に、攪拌しながらアルカリを添加しつつpH調整を行うのが効率的である。
【0021】
上記本発明に特定するpH範囲で反応混合物と有機溶媒を十分に接触混合させた後、有機溶媒層と水層に分離して抽出処理を行う。
この抽出処理は1回のみでもよいが、4−ピリジンメタノールの収率を上げるためには、分離された水層に再び有機溶媒を加えて再抽出処理を行う操作を繰り返し、合計2〜3回程度行うのが好ましい。
尚、2回目以降の抽出処理に際しては、当該抽出操作の前に再度pH調整を行うことが好ましく、また、この際に使用する有機溶媒の使用量は、通常は先の抽出処理に用いたと同程度であるが、特にこれに拘るものではない。
【0022】
かかるpH調整および抽出処理における操作温度は特に限定されず、一般的には0℃〜有機溶媒の沸点温度の範囲であるが、好ましくは50℃以下、特に15〜40℃の範囲である。
【0023】
このような特定のpH範囲で抽出処理を行うことにより、副生物である4−アミノメチルピリジンは水層に残存し、4−ピリジンメタノールが選択的に有機溶媒層に移行するため、当該有機溶媒層から有機溶媒を大気圧下又は減圧下に留去した後、単蒸留するのみの簡単な蒸留処理で高純度の4−ピリジンメタノールを得ることができる。
単蒸留は、通常は40−160Paの減圧下で実施される。
【0024】
尚、本発明の方法において、抽出処理後の有機溶媒層からの4−ピリジンメタノールの回収は何ら蒸留法に限られるものではなく、任意の方法が採用しえるが、いずれの方法であっても、副生物である4−アミノメチルピリジンは水層中に残存し、4−ピリジンメタノールが選択的に有機溶媒層に抽出されているため、高純度の4−ピリジンメタノールを得ることができる。
【0025】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明が実施例に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0026】
実施例1〜2および比較例1
容量1リットルの電磁攪拌式オートクレーブに4−シアノピリジン124.8g、40%硫酸450gおよび5%−パラジウム炭素触媒10gを仕込み、そこへ水素圧0.2MPaとなるように水素を導入し、60℃で反応させた。反応の進行と共に水素圧0.2MPaとなるように逐次水素を追加導入し、60℃を維持しつつ水素の吸収が無くなるまで5時間反応させた。得られた反応混合物を濾過して触媒を濾別した。濾別した触媒を水で洗浄して洗浄液を回収し、この洗浄液と先の触媒の濾別により得た濾液を合わせ、4−ピリジンメタノールと4−アミノメチルピリジンを含む反応混合物795gを得た。
分析の結果、反応混合物中の4−ピリジンメタノールおよび4−アミノメチルピリジンの含量はそれぞれ14.3重量%、1.4重量%であり、その合計に対する両成分の割合は重量比で91:9であった。
【0027】
この反応混合物795gを3等分した。
3等分された反応混合物のそれぞれに1−ブタノール77gを加え、攪拌しながら48%水酸化ナトリウム水溶液を滴下してそれぞれのpHを5.3(25℃)、5.5(25℃)および13(25℃)に調整した。pH調整後更に30分間攪拌した後静置して1−ブタノール層と水層に分液した。
得られた三つの1−ブタノール層について、それぞれ減圧下に溶媒を留去して濃縮し、濃縮物を160Paの減圧下で単蒸留して、それぞれ4−ピリジンメタノールを得た。
得られたそれぞれの4−ピリジンメタノ−ルの収量および純度(ガスクロマトグラム)は、次のとおりであった。
pH5.3に調整した場合(実施例1) 収量:28.3g、純度:99.7%
pH5.5に調整した場合(実施例2) 収量:28.6g、純度:99.6%
pH13に調整した場合(比較例1) 収量:36.5g、純度:90.8%
【0028】
実施例3
実施例1と同様にして得た4−ピリジンメタノールと4−アミノメチルピリジンを含む反応混合物に1−ブタノール230gを加え、攪拌しながら48%水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを5.5(25℃)に調整した。pH調整後30分間攪拌し、静置した後、1−ブタノール層と水層に分液した。
分液した水層にさらに1−ブタノール230gを加え、攪拌、静置、分液する操作を2回繰り返し、合計三つの1−ブタノール層を得た。
三つの1−ブタノール層を混合後、減圧下に溶媒を留去して濃縮し、濃縮物を160Paの減圧下で単蒸留して4−ピリジンメタノール97.57gを得た。
得られた4−ピリジンメタノールの純度はガスクロマトグラムで99.9%以上であった。
【0029】
実施例4
実施例1と同様にして得た4−ピリジンメタノールと4−アミノメチルピリジンを含む反応混合物に1−ブタノール230gを加え、攪拌しながら48%水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを5.5(25℃)に調整した。その後30分攪拌し、静置した後1−ブタノール層と水層を分液した。
得られた水層にさらに1−ブタノール230gを加え、攪拌しながら再度48%水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを5.5(25℃)に調整した後、先と同様にして1−ブタノール層と水層を分液した。
この水層に再度1−ブタノール230gを加え、攪拌しながらさらに48%水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを5.5(25℃)に調整した後、先と同様にして1−ブタノール層と水層を分液した。
このようにして得た合計三つの1−ブタノール抽出層を混合後、減圧下に溶媒を留去して濃縮し、濃縮物を160Paの減圧下で単蒸留して4−ピリジンメタノール103.7gを得た。
得られた4−ピリジンメタノールの純度はガスクロマトグラムで99.9%以上であった。

Claims (1)

  1. 4−シアノピリジンを酸性水溶液中で接触還元して得られる4−ピリジンメタノールを含有する反応混合物に有機溶媒を添加し、抽出処理して4−ピリジンメタノールを製造する方法において、抽出処理をpH5.3〜5.6の範囲で行うことを特徴とする4−ピリジンメタノールの製造方法。
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