JP4683167B2 - ドリル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ハイシリコン、アルミ合金、金属マトリックス複合材(MMC)、難削材等の孔加工をするためのドリルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ハイシリコン、アルミ合金、金属マトリックス複合材、難削材等の孔加工では刃部の磨耗が激しいことから、近年では先端切刃をダイヤモンド(PCD)や立方晶窒化硼素(PCBN)で構成させたドリルが出現している。
【0003】
この種のドリルは、超硬合金製のドリル母材に成形された先端溝内に、ダイヤモンドや立方晶窒化硼素の焼結体に超硬合金基板を裏打ちして成るチップを嵌入し、これら相互をロー付けして形成してある。ここで、上記のようなチップ8としては、例えば特開平5−177455号公報に開示されたものがあり、図9に示すように、五角形の超硬合金基板81の一辺に0.7mm程度のPCDやPCBNから成る焼結体(以下超高圧高硬度焼結体82という)を形成して成る半体80を二枚背中合わせにして構成してある。このチップ8は図10に示すようにランドにおける工具回転方向前縁側に超高圧高硬度焼成体82を位置させる態様で先端溝M内に嵌入後ロー付され、その後超高圧高硬度焼成体82に先端刃を形成される。
【0004】
しかしながら、上記ドリルでは、超高圧高硬度焼成体82,82相互のロー付け部分(図9の符号a部)、及び超高圧高硬度焼成体82と超硬合金基板81相互のロー付け部分(図9、図10の符号b部)は実質的に固着状態となっておらず、隙間ができた状態になっている。したがって、切削中において前記隙間に切粉が侵入して切削面を傷付けやすくなると共に、先端刃を形成した超高圧高硬度焼成体82が欠損しやすいものとなる。また、超高圧高硬度焼成体82と超硬合金基板81との熱膨張率が大きく相違することから、切削中に超高圧高硬度焼成体82と超硬合金基板81との界面に大きなストレスが発生し、使用中に超高圧高硬度焼成体82がドリル母材Dから外れることがあった。
【0005】
他方、特開平5−177423号公報に開示されたチップ9は、図11に示すように一枚の板状の超硬合金基板91の両側面に超高圧高硬度焼成体92を設けて構成してある。しかしながら、チップ9はその構成上コスト高になり、このチップ9を使用したドリルは高価になってしまうという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、この発明では、▲1▼安価で、▲2▼切削面に傷が付きにくく、▲3▼先端刃が形成された超高圧高硬度焼結体が欠損しにくく且つドリル母材から外れにくいドリルを提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
(請求項1記載の発明)この発明のドリルは、超硬合金製のドリル母材の先端部からボディにかけてドリル軸線方向に形成した溝に、ドリル先端角及びコーナー部と適合する角を有する超高圧高硬度焼結体とこの超高圧高硬度焼結体とが上下に一体焼結固着された超硬合金基板から成る一枚の五角形状のチップを嵌め込み、前記ドリル母材とチップとをチタンを含む活性銀ろう材を用いて固着してあり、前記チップを構成する超高圧高硬度焼結体の工具回転方向前縁側に先端刃を形成してあり、前記チップは、上部の超高圧高硬度焼結体とその下縁に一体焼結固着された下部の超硬合金基板から成る焼結体を、縦型五角形状の薄板に切断することで、超高圧高硬度焼結体部が、前記縦型五角形状のうち、2つの傾斜した上辺を有する三角形状を含む領域で構成される
(請求項2記載の発明)この発明のドリルは、上記請求項1記載の発明に関し、チップは、円板状の超高圧高硬度焼結体とこれの底面側に一体焼結固着された同径円板状の超硬合金基板から成るディスク状の焼結体を、縦型五角形状の薄板に切断することで、超高圧高硬度焼結体と超硬合金基板との一体焼結の境界縁が縦型五角形状内を略水平に分断するように形成してあり、このうち境界縁上部の超高圧高硬度焼結体部が、前記縦型五角形状のうち、2つの傾斜した上辺を有する三角形状を含む領域で構成される
(請求項3記載の発明)この発明のドリルは、上記請求項1又は2記載の発明に関し、チップは、3〜6mm厚の超高圧高硬度焼結体とこれに一体焼結固着された8〜12mm厚の超硬合金基板から成るディスク状の焼結体を、厚さ方向に放電ワイヤ又はYAGレーザーで一定幅の複数枚の縦型長方形状薄板に切断し、この切断により形成された長方形状薄板を放電ワイヤ又はYAGレーザーで一定分断幅を開けた複数個所にて下端から上部の超高圧高硬度焼結体の部分に到る途中高さまで略垂直に分断すると共に、上部の超高圧高硬度焼結体の部分のうち、その分断線上端の途中高さから両側方へ向かう略倒立三角形状部分のみを連続切除し、前記分断幅の略中央が頂部となるように山型に傾斜切断することで五角形状に形成してある。
(請求項4記載の発明)この発明のドリルは、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の発明に関し、超高圧高硬度焼結体は、ダイヤモンド粒子又は立方晶窒化硼素粒子を40体積%以上含んだ焼結体である。
【0008】
なお、上記した発明のドリルの作用・効果については以下の発明の実施の形態の欄で説明する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を実施形態として示した図面に従って説明する。
(実施形態1)
この実施形態のドリルは、図1や図2に示すように、超硬合金製のドリル母材1の先端部からボディにかけて形成した溝10に、超高圧高硬度焼結体21と超硬合金基板20とを一体焼結固着して成るチップ2を嵌め込み、前記ドリル母材1とチップ2とをチタンを含む活性銀ろう材により固着して構成してある。そして、前記チップ2を構成する超高圧高硬度焼結体21の工具回転方向前縁側に図1や図2に示すように先端刃21aを形成してある。なお、図1や図2中符号11はねじれ溝であり、符号12はランドである。
【0010】
ここで、チップ2を構成する超高圧高硬度焼結体21は、図1に示すように、ドリルの先端角及びコーナー部と適合する角を有した五角形状としてあり、超硬合金基板20は長方形状としてある。
【0011】
また、超高圧高硬度焼結体21は、ダイヤモンド粒子又は立方晶窒化硼素粒子を40体積%以上含んだ焼結体である
ここで、上記実施形態のドリルは、以下のような工程を経て製造される。
〔チップ2を製作する工程とドリル母材1を加工する工程〕
4mm厚の超高圧高硬度焼結体31と10mm厚の超硬合金基板30とが一体焼結固着され且つ直径が80mmのディスク状の焼結体3から、チップ2を製作する。なお、この焼結体3は比較的低価格で入手できる。
【0012】
先ず、焼結体3を、図3に示すように、厚さ方向に放電ワイヤ(EMD)又はYAG(Y3Al5O12)レーザーで切断し、同図及び図4に示すように、超高圧高硬度焼結体41と超硬合金基板40から成る長方形状薄板4を製作する。続いて、上記長方形状薄板4を図5に示す太線に従って放電ワイヤ又はYAGレーザーで五角形状に切断し、図6に示したチップ2を完成させる。
【0013】
他方、図7に示す超硬合金製のドリル母材1の先端部からボディにかけて放電ワイヤにより図8に示す如くドリル軸線方向に延びる溝10を形成する。
〔チップ2をドリル母材1に固着する工程〕
チップ2を溝10に嵌め込み、前記ドリル母材1とチップ2とをチタンを含む活性銀ろう材を用いて固着する。
〔先端刃を加工する工程〕
図1に示すように、チップ2を構成する超高圧高硬度焼結体21の工具回転方向前縁側に先端刃を形成する。これによりドリルは完成する。
【0014】
この実施形態のドリルは上記のような構成であるから、以下の▲1▼▲2▼に示すような作用・効果を奏する。
▲1▼ ドリル母材1とチップ2とはチタンを含む活性銀ろう材を用いて固着(界面ではチタンを含む活性銀ろう材が拡散している)されているから、ドリル母材1とチップ2との間にはロー付けのような隙間は生じていない。したがって、切削中においてドリル母材1とチップ2との間に切粉が侵入して切削面が傷付けられるようなことはないと共に、先端刃が形成された超高圧高硬度焼結体21は欠損しにくく且つドリル母材1から外れにくいものとなる。
▲2▼ チップ2は、比較的低価格で入手できる焼結体3から比較的容易に製作することができるから、他の工程を考えても、▲1▼の特徴を持つドリルを安価に提供できる。
(他の実施形態)
上記実施形態のドリルにかえて、チップ2を、ドリル先端角及びコーナー部と適合する角を有し且つ超高圧高硬度焼結体21のみで構成された五角形状のものとすることができる。
【0015】
また、チップ2の製作に使用するディスク状の焼結体3としては、超高圧高硬度焼結体31の厚みが3〜6mm、超硬合金基板30の厚みが8〜12mmの範囲であればよい。
【0016】
【発明の効果】
この発明は上記のような構成であるから次の効果を有する。
【0017】
発明の実施の形態の欄から明らかなように、▲1▼安価で、▲2▼切削面に傷が付きにくく、▲3▼先端刃が形成された超高圧高硬度焼結体が欠損しにくく且つドリル母材から外れにくいドリルを提供できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態のドリルにおける先端部の斜視図。
【図2】前記ドリルの先端面の正面図。
【図3】前記ドリルを構成するチップを製作するための焼結体の斜視図。
【図4】前記焼結体から製作された長方形状薄板の斜視図。
【図5】前記長方形状薄板からチップを製作するときの切断ラインを示した正面図。
【図6】前記チップの斜視図。
【図7】前記ドリルを構成するドリル母材の斜視図。
【図8】前記ドリル母材にチップを嵌め込むための溝を形成した状態を示す斜視図。
【図9】先行技術のチップの斜視図。
【図10】図9に示したチップをドリル母材の溝内にロー付けした状態を示す正面図。
【図11】他の先行技術のチップの斜視図。
【符号の説明】
1 ドリル母材
2 チップ
3 焼結体
10 溝
20 超硬合金基板
21 超高圧高硬度焼結体
21a 先端刃

Claims (4)

  1. 超硬合金製のドリル母材の先端部からボディにかけてドリル軸線方向に形成した溝に、ドリル先端角及びコーナー部と適合する角を有する超高圧高硬度焼結体とこの超高圧高硬度焼結体とが上下に一体焼結固着された超硬合金基板から成る一枚の五角形状のチップを嵌め込み、前記ドリル母材とチップとをチタンを含む活性銀ろう材を用いて固着してあり、前記チップを構成する超高圧高硬度焼結体の工具回転方向前縁側に先端刃を形成してあり、前記チップは、上部の超高圧高硬度焼結体とその下縁に一体焼結固着された下部の超硬合金基板から成る焼結体を、縦型五角形状の薄板に切断することで、超高圧高硬度焼結体部が、前記縦型五角形状のうち、2つの傾斜した上辺を有する三角形状を含む領域で構成されることを特徴とするドリル。
  2. チップは、円板状の超高圧高硬度焼結体とこれの底面側に一体焼結固着された同径円板状の超硬合金基板から成るディスク状の焼結体を、縦型五角形状の薄板に切断することで、超高圧高硬度焼結体と超硬合金基板との一体焼結の境界縁が縦型五角形状内を略水平に分断するように形成してあり、このうち境界縁上部の超高圧高硬度焼結体部が、前記縦型五角形状のうち、2つの傾斜した上辺を有する三角形状を含む領域で構成される請求項1記載のドリル。
  3. チップは、3〜6mm厚の超高圧高硬度焼結体とこれに一体焼結固着された8〜12mm厚の超硬合金基板から成るディスク状の焼結体を、厚さ方向に放電ワイヤ又はYAGレーザーで一定幅の複数枚の縦型長方形状薄板に切断し、この切断により形成された長方形状薄板を放電ワイヤ又はYAGレーザーで一定分断幅を開けた複数個所にて下端から上部の超高圧高硬度焼結体の部分に到る途中高さまで略垂直に分断すると共に、上部の超高圧高硬度焼結体の部分のうち、その分断線上端の途中高さから両側方へ向かう略倒立三角形状部分のみを連続切除し、前記分断幅の略中央が頂部となるように山型に傾斜切断することで五角形状に形成してある請求項1又は2記載のドリル。
  4. 超高圧高硬度焼結体は、立方晶窒化硼素粒子を40体積%以上含んだ焼結体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のドリル。
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