JP4682407B2 - 積層セラミックコンデンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内部電極が卑金属から成り、JIS規格B特性或いはEIA規格X7R特性を満足し、スイッチング電源回路、DC−DCコンバータ回路、照明用インバータ回路等に中高圧用として広く使用される積層セラミックコンデンサ及びそれを製造する為の耐還元性誘電体組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ノート型パソコン等に代表される様に電子機器の軽薄短小化に伴いそれに使用される重要な受動部品の1つであるセラミックコンデンサも従来の円板型から積層型への移行が急速に進み、スイッチング電源回路やDC−DCコンバータ回路の小型化及び樹脂モールド化に寄与している。また、信用調査機関のデータによると西暦2005年にはセラミックコンデンサの積層化率は90%を超える事が確実であり、低定格電圧品のみならず中高圧品、更には安全規格品の領域にまで積層化が波及するのは時間の問題である。
【0003】
例えば、スイッチング電源回路の1次側スナバ用としては定格電圧が630VDCでJIS規格B特性或いはEIA規格X7R特性を満足する中高圧用積層セラミックコンデンサが多数使用されており、一大市場を形成しつつある。
【0004】
通常の積層セラミックコンデンサは、セラミック誘電体層と内部電極層が交互に複数積層されて静電容量を取得する有効層が形成され、その有効層の上下に全体の寸法調整と内部気密封止の為に誘電体層のみから成る無効層が形成されている。そして、内部電極層の電気的接続は、それらの終端部分が露出した両端面に外部電極を設けることによって行い、これら外部電極表面には半田付け実装を容易に且つ支障なく行える様に、Ni鍍金の上にSn鍍金又はSn−Pb系の半田鍍金が層状に施された構造となっている。
【0005】
従来より、この様な積層セラミックコンデンサに使用される誘電体組成物は、主成分であるBaTiO3に数種類の添加物を加えたものが主流であり、例えば特公平3−23504号公報にはBaTiO3にNb2O5とCoOを加えた組成物が開示されており、これによるとNb2O5とCoOが静電容量の温度変化率を平坦化する成分として作用し、EIA規格X7R特性を満足することが記載されている。同じく特公平3−61287号公報にはBaTiO3にNb2O5、CoO、CeO2及びZnOを加えた組成物が開示されており、Nb2O5とCoOが静電容量の温度変化率を平坦化し、CeO2は焼成温度を低下し、ZnOは電気特性を改善することが記載されている。
【0006】
しかしながら上記誘電体組成物は、内部電極としてPd系貴金属の使用を前提としたものであり、特に高積層数高静電容量の品種において原材料コストの面で問題があった。これを解決する方法として、Pd系の貴金属に代わりコストの安いNiあるいはNiを主成分とする合金を使用することが公知であり、積層セラミックコンデンサに占める卑金属内部電極品の割合は急増している。
【0007】
Niは卑金属であるので、従来の貴金属の積層セラミックコンデンサの様に酸素雰囲気中で焼成する事は不可能で、低酸素分圧雰囲気中においてNiが酸化されないように焼成しなければならない。セラミックコンデンサ用として公知であるBaTiO3に代表されるペロブスカイト酸化物は、1000゜C以上の高温においてNiの酸化還元平衡酸素分圧以下の雰囲気に晒されると還元され、絶縁抵抗値が低下したり、電界を印加した状態での信頼性試験、いわゆる負荷寿命での不良率が増大し、コンデンサ用セラミック誘電体としての機能を果たさなくなる。
【0008】
この課題に対し、これらペロブスカイト酸化物が、AサイトとBサイトに存在するイオンの化学量論比を変化させたり、あるいは結晶格子中にドナーとなって固溶しうる、例えば遷移金属イオン等を添加したりすることによって、前述のような熱処理を行っても還元されにくくなる性質を利用して、ペロブスカイト酸化物と微量の添加物から構成される多くの耐還元性誘電体組成物が考案され、開示されている。以前の耐還元性誘電体組成物は、静電容量の温度変化率が大きいJIS規格F特性が主流であったが、近年積極的な材料開発が行われ、温度変化率が小さいJIS規格B特性或いはEIA規格X7R特性が薄層大容量積層セラミックコンデンサに適用されている。例えば特開平8−124784号公報には主成分としてBaTiO3を副成分としてMgO、Y2O3、BaO及びCaOから選ばれる少なくとも1種とSiO2とを含有するNi及びNi系合金等の卑金属が使用可能な耐還元性誘電体組成物が開示されている。また、特開平9−171938号公報にはBaTiO3系の主成分に対して、副成分としてMgO、及び焼結助剤成分としてLi2O−B2O3−(Si,Ti)O2系の酸化物を含有した耐還元性誘電体組成物が開示されている。これにより、静電容量の温度変化率が小さく、しかも安価なNi系の内部電極を使用した大容量の積層セラミックコンデンサが主として16〜50VDCの低定格電圧品を中心に商品化されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の耐還元性誘電体組成物の多くは低定格電圧大容量の積層セラミックコンデンサ用として開発されたものであり、定格電圧が630VDC以上の中高圧用としては電気的特性上不向きであった。その上、従来の耐還元性誘電体組成物は主成分であるペロブスカイト酸化物に対する微量添加物の均一な分散性や反応性を考慮して設計されたものであるとは言い難く、工程上制御しえない要因によって製品の特性、品質が変動し、歩留まりの低下や信頼性不良を引き起こしている。例えば、従来のプロセスである仮焼混合法により作製した耐還元性誘電体組成物は微量添加物の中でも特にLi2O−B2O3−(Si,Ti)O2系やBaO−SiO2系等の焼結助剤成分を均一に分散させることが難しく、焼結助剤成分が不均一に分散した組成物であった。その結果、焼成時の反応過程で局部的な異常反応を起こし、結晶粒子径のばらつきが大きくなりしかもポアーが多い不均質な微細構造となり、静電容量や誘電体損失のばらつきが生じ、絶縁破壊電圧が低く、また超加速寿命試験(HALT)における故障時間の分布が広く、平均故障時間が短いという問題点を有していた。
【0010】
そこで本発明は以上の様な課題を解決し、焼結助剤成分が偏析することなく主成分中に均一に分散し、中高圧用として優れた電気的特性が発現できる耐還元性誘電体組成物を提供し、該耐還元性誘電体組成物を用いて初期特性及び耐久信頼性等のばらつきが小さい卑金属内部電極積層セラミックコンデンサを提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために本発明の積層セラミックコンデンサは、第1の複数のセラミック誘電体層の間にNi或いはNiを主成分とする合金より成る内部電極層を設けた有効層及び第2の複数のセラミック誘電体層より成る無効層を有した基体と、前記基体の両端部から側部に至るように設けられ、前記内部電極層と電気的に接合された一対の外部電極とを備え、前記セラミック誘電体層を、主成分であるBaTiO 3 100モルに対して、添加物としてDyの酸化物または焼成により酸化物になる化合物を酸化物Dy 2 O 3 換算で0.2〜1.3モル、Mgの酸化物または焼成により酸化物になる化合物を酸化物MgO換算で0.1〜1.2モル、Mnの酸化物または焼成により酸化物になる化合物を酸化物Mn 3 O 4 換算で0.02〜0.12モル含有し、焼結助剤としてBa 1-X Ca X SiO 3 の一般式で表され、Xが0≦X≦1の範囲内からなる成分を0.5〜3.5モル含有することを特徴とする耐還元性誘電体組成物で構成したことを特徴とするものである。これにより、優れた耐還元性を有し、中高圧用として遜色のない電気的特性を有する積層セラミックコンデンサを製造するための耐還元性誘電体組成物が得られる。
【0012】
また、主成分であるBaTiO3100モルに対して、前記添加物及び焼結助剤の添加量を規定することにより、さらに良好な電気的特性と信頼性を有する耐還元性誘電体組成物が得られる。
【0013】
また、本発明の耐還元性誘電体組成物は、Ba1-XCaXSiO3の一般式で表され、Xが0≦X≦1の範囲内からなる焼結助剤成分を、Ca及びBaの酢酸塩水溶液とSiの金属アルコキシドエタノール溶液との混合溶液を攪拌しながらアンモニア水を滴下して調整するものである。これにより、Ca、Ba及びSiを含有する成分が主成分であるBaTiO3粒子の周囲に均一にコーティングされる為、焼成時に局部的な異常反応がなく焼結助剤成分が均一に分散された非常に緻密な組織を形成することが可能な耐還元性誘電体組成物が得られる。
【0014】
また、本発明の積層セラミックコンデンサは有効層及び無効層を形成しているセラミック誘電体層を前記の耐還元性誘電体組成物で構成したチップ型、モールド型及びリード型の積層セラミックコンデンサであり、主として中高圧用としてそれぞれの特徴を生かしてユーザの要望に応じた使い分けが可能となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、第1の複数のセラミック誘電体層の間にNi或いはNiを主成分とする合金より成る内部電極層を設けた有効層及び第2の複数のセラミック誘電体層より成る無効層を有した基体と、前記基体の両端部から側部に至るように設けられ、前記内部電極層と電気的に接合された一対の外部電極とを備え、前記セラミック誘電体層を、主成分であるBaTiO 3 100モルに対して、添加物としてDyの酸化物または焼成により酸化物になる化合物を酸化物Dy 2 O 3 換算で0.2〜1.3モル、Mgの酸化物または焼成により酸化物になる化合物を酸化物MgO換算で0.1〜1.2モル、Mnの酸化物または焼成により酸化物になる化合物を酸化物Mn 3 O 4 換算で0.02〜0.12モル含有し、焼結助剤としてBa 1-X Ca X SiO 3 の一般式で表され、Xが0≦X≦1の範囲内からなる成分を0.5〜3.5モル含有することを特徴とする耐還元性誘電体組成物で構成したことを特徴とする積層セラミックコンデンサであり、中高圧用として遜色のない電気的特性を有する卑金属内部電極積層セラミックコンデンサを形成することが可能な耐還元性誘電体組成物を実現できるという作用を有する。
【0016】
また、焼成温度においてNiの酸化還元平衡酸素分圧以下の雰囲気中で優れた耐還元性が得られ、良好な電気的特性と高度な信頼性を有するNi内部電極積層セラミックコンデンサを形成することが可能な耐還元性誘電体組成物を実現できるという作用を有する。
【0017】
また、Ca、Ba及びSiを含有する焼結助剤成分が均一に分散されると同時に、主成分であるBaTiO3粒子の周囲がこれらの成分により均一にコーティングされる為、焼成時の局部的な異常反応が抑制され、前記焼結助剤成分が均一に分散された非常に緻密な組織を形成することが可能な耐還元性誘電体組成物を実現できるという作用を有する。
【0018】
また、非常に緻密で制御された微細組織を有し、良好な電気的特性と信頼性とを兼ね備え、回路基板等に表面実装可能な中高圧用の積層セラミックコンデンサを実現できるという作用を有する。
【0021】
本発明の実施において使用するチタン酸バリウム粉末は、平均粒子径と粒子径分布の幅が小さいものが好ましい。また、反応性についてはそれが小さい方がB特性あるいはX7R特性の発現が容易であるので、結晶化度の高い粉末を使用するのが好ましい。このようなチタン酸バリウム粉末を製造する工程において混入する不純物としては、バリウム以外のアルカリ土類金属や鉄、珪素及びアルミニウム等があるが、これら不純物は数千ppmのオーダで含有されていても特に支障はない。
【0022】
Ba1-XCaXSiO3の一般式で表され、Xが0≦X≦1の範囲内からなる焼結助剤成分の出発材料であるCa及びBaの酢酸塩及びSiのアルコキシドは一般的市販品が使え、これらに含有される不純物は似通った化学的性質を有する金属であるため、前述のチタン酸バリウムと同様に数千ppmのオーダで含有されていても特に支障はない。また、アルコキシドを溶解させるエタノールも一般的な市販品が使用できる。
【0023】
これら酢酸塩やアルコキシドは水ーエタノール溶液中で水和したイオンとして存在し、後のアンモニア水の滴下によって微細な水酸化物をコロイド状懸濁液の形で生成し、これをチタン酸バリウムと混合した際、均一な状態で分散されるのが望ましい為、アンモニア水の濃度は1モル/リットル以下、工程の設備的、時間的余裕がある場合にはより低濃度にするのが望ましい。アンモニア水の濃度が1モル/リットルを超えて濃厚になると、前述の水酸化物が偏って生成し組成的に不均一な状態でチタン酸バリウム粉末と混合される為、最終的に組成不均一な耐還元性誘電体組成物となり、本発明の意図するところとは全く異なった結果となる。
【0024】
チタン酸バリウム粉末に対して添加される各添加物の量は、製造する積層セラミックコンデンサの誘電率と誘電体損失、靜電容量の温度変化率、絶縁抵抗、絶縁破壊電圧、高温負荷寿命及び焼成温度における耐還元性の観点から限定される。チタン酸バリウム100モルに対しDy2O3が1.3モルを超えると焼成による緻密化が不完全になる為誘電率が低下し、また0.2モル未満になると靜電容量の温度変化率が大きくなり、高温負荷寿命が短くなる。チタン酸バリウム100モルに対しMgOが1.2モルを超えると誘電率の低下と誘電体損失の増大を招き、また0.1モル未満になると焼成温度における耐還元性が損なわれ、電気的特性及び寿命の全般にわたって劣化する。チタン酸バリウム100モルに対しMn3O4が0.12モルを超えると誘電体損失が増加し、また0.02モル未満になると絶縁抵抗及び絶縁破壊電圧が低下し、高温負荷寿命が短くなる。
【0025】
さらに、チタン酸バリウム100モルに対しBa1-XCaXSiO3の一般式で表され、Xが0≦X≦1の範囲内からなる焼結助剤成分が3.5モルを超えると誘電率が低下すると同時に高温負荷寿命が劣化し、また0.5モル未満になると焼結助剤としての効果が得られず、焼成による緻密化が不完全となり電気的特性及び寿命の全般にわたって劣化する。
【0026】
【実施例】
次に、本発明の具体例を説明する。
【0027】
(実施例1)
実験の概略は、(表1)(表2)に示した組成表に従って、主成分であるBaTiO3粉末(堺化学製BT−03)と添加剤であるDy2O3、MgO及びMn3O4の配合物と、Ca,Ba及びSiより成る焼結助剤成分のコロイド状懸濁液をボールミルで混合して各々の出発原料粉末を作製する。なお本実施例において、焼結助剤成分の組成はBa0.5Ca0.5SiO3とした。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
使用する原材料のメーカとグレードは(表3)にまとめて記載した。
【0031】
【表3】
【0032】
次に、作製した粉末を使用して、形状が3216サイズで定格電圧が630VDCを保証し10000PFの靜電容量値が取得可能な積層セラミックコンデンサを試作して総合評価するものである。
【0033】
以下に積層セラミックコンデンサの詳細な試作手順と評価方法について説明する。
【0034】
主成分であるBaTiO3粉末及び添加剤であるDy2O3、MgO及びMn3O4の各粉末を(表1)の組成表に基づいて電子天秤で所定量を秤量し、5mmφのZrO2質ボールが350g入った内容積が600CCのポリエチレン製ポットミル中に投入する。次に、(表1)の組成表に基づいてBa、Caの酢酸塩及びTEOS(テトラエトキシシラン)の所定量を電子天秤で秤量した後、酢酸塩は100CCの純水に、またTEOSは150CCのエタノールに別々に溶解させる。そして、酢酸塩水溶液をエタノール溶液中に投入して攪拌を続けながら1規定のアンモニア水を所定量滴下して、焼結助剤成分より成るコロイド状懸濁液を得た。次に、該コロイド状懸濁液を上記ボールミル中に投入し100rpmの回転速度で20時間混合した。混合物は150メッシュのシルクスクリーンで濾過して、テフロンシートを敷いたステンレスバット中に投入し、ドラフト中で加温しながらエタノール分を揮発させ、アルミ箔で蓋をして150゜Cの温度で乾燥した。乾燥した塊状物はアルミナ乳鉢中で解砕した後、32メッシュのナイロン篩を通過してアルミナ製坩堝に入れて400゜C/2時間の条件で熱処理してスラリー用粉末とした。
【0035】
次に、スラリー用粉末の所定量を溶剤及び可塑剤と共に混合することにより湿潤した。湿潤後、ポリビニルブチラール樹脂より成るビヒクルを混合してシート成形用スラリーを作製した。
【0036】
次に、該スラリーを150メッシュのシルクスクリーンで濾過した後、成膜してセラミック生シートを得た。そして、該セラミック生シートと、Niペーストより作製した内部電極シートを用いて転写工法により所定の積層仕様に基づいて積層した後、切断してグリーンチップを得た。
【0037】
次に、得られたグリーンチップを面取りした後、その両端面にNiペーストを塗布し乾燥した後、脱脂した。そして、回転式雰囲気炉により還元雰囲気焼成を実施した。焼成は、グリーンガス、CO2及びN2により調整したNiの平衡酸素分圧よりも2桁程度低い酸素分圧雰囲気中で1250゜Cの温度で2時間保持した。そして、焼成したチップの両端面に上層外部電極となるAgペーストを塗布して大気中で焼き付けた後、Ni鍍金及びその上にSn鍍金を施して本実施例のチップ型積層セラミックコンデンサを完成させた。作製した本実施例のチップ型積層セラミックコンデンサは、図1に示したようにBaTiO3質セラミック誘電体層13とNiを含む内部電極層12a,12b,12cとを交互に積層して形成された静電容量取得層となる有効層の上下に無効層としてBaTiO3質セラミック誘電体層13が積層されて積層体11が形成されており、該積層体11の両端部に前記内部電極層12b,12cと電気的に接合されたNi質下層外部電極14が設けられ、その上にAg質上層外部電極15が設けられていた。
【0038】
次に、試作したチップ型積層セラミックコンデンサの電気特性を評価した。靜電容量(Cap)と誘電体損失(tanδ)はYHP製LCRメータ4284Aを使用して1V/1KHzの信号電圧下で測定した。絶縁抵抗値(IR)はアドバンテスト社製絶縁抵抗計R8340Aを使用して500VDCを1分間印加して測定した。絶縁破壊電圧(BDV)は菊水電子製耐圧計を使用して空気中で直流破壊電圧を測定した。靜電容量の温度変化率(Cap−TC)は恒温槽にYHP製LCRメータ4284Aを接続して−55〜+125゜Cの範囲内で測定した。靜電容量と誘電体損失は各々20個測定に供し、絶縁抵抗値と絶縁破壊電圧は各々10個、温度変化率は2個測定し、平均値を算出してそれらの結果を(表4)(表5)に示した。
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
ここで、(表4)(表5)の試料Noは(表1)(表2)の試料Noに対応している。また、これらの表中の試料Noに※印を記したものは、電気的特性や焼結性などの評価項目の内少なくとも1つについて良好な結果が得られなかった試料である。
【0042】
(表1)(表2)及び(表4)(表5)より明らかな様に、チタン酸バリウム100モルに対しDy2O3が1.3モルを超えると、1250゜Cの焼成で若干焼結性が劣化するため、靜電容量が低下し、また0.2モル未満になると靜電容量の温度変化率が大きくなる傾向にあった。チタン酸バリウム100モルに対しMgOが1.2モルを超えると靜電容量の低下と誘電体損失の増大を招き、また0.1モル未満になると焼成時の耐還元性が損なわれる為、誘電体損失が増大し、絶縁破壊電圧及び絶縁抵抗が劣化した。チタン酸バリウム100モルに対しMn3O4が0.12モルを超えると靜電容量の低下と誘電体損失の増加を招き、また0.02モル未満になると絶縁抵抗及び絶縁破壊電圧が急激に劣化した。さらに、チタン酸バリウム100モルに対しBa0.5Ca0.5SiO3の一般式で表される焼結助剤成分が3.5モルを超えると誘電率が低下し、また0.5モル未満になると焼結助剤としての効果が得られず、焼成による緻密化が不完全となり電気的特性の全般にわたって劣化した。
【0043】
これに対し、本発明範囲内の耐還元性誘電体組成物により作製した積層セラミックコンデンサは、良好な焼結性と電気特性とを有し、またEIA規格X7R特性及びJIS規格B特性を満足し、形状が3216サイズで定格電圧が630VDCを保証し、10000PFの靜電容量値を有する中高圧用チップ型積層セラミックコンデンサとして使用可能なものであった。
【0044】
以上の様に、本発明の耐還元性誘電体組成物によれば、良好な焼結性と電気特性を有し、内部電極としてNiを用いた中高圧用チップ型積層セラミックコンデンサを実現することができる。
【0045】
(実施例2)
主成分であるBaTiO3粉末及び添加剤であるDy2O3、MgO及びMn3O4の各粉末を(表1)のRunNo.18組成に基づいて電子天秤で所定量を秤量し、5mmφのZrO2質ボールが2100g入った内容積が2800CCのボールミル中に投入する。次にBa、Caの酢酸塩及びTEOS(テトラエトキシシラン)の所定量をRunNo.18組成に基づいて電子天秤で秤量した後、酢酸塩は600CCの純水に、またTEOSは900CCのエタノールに別々に溶解させる。そして、該酢酸塩水溶液をエタノール溶液中に投入して攪拌を続けながら1規定のアンモニア水を240CC滴下して、焼結助剤成分より成るコロイド状懸濁液を得た。次に、該コロイド状懸濁液を上記ボールミル中に投入し50rpmの回転速度で20時間混合した。混合物は150メッシュのシルクスクリーンで濾過して、テフロンシートを敷いたステンレスバット中に投入し、ドラフト中で加温しながらエタノール分を揮発させ、アルミ箔で蓋をして150゜Cの温度で乾燥した。乾燥した塊状物はアルミナ乳鉢中で解砕した後、32メッシュのナイロン篩を通過してアルミナ製坩堝に入れて400゜C/2時間(昇降温速度:200゜C/H)の条件で熱処理してスラリー用粉末を約700g作製した。
【0046】
そして、実施例1と同様の手順により積層セラミックコンデンサ素子を作製した。次に、該積層セラミックコンデンサ素子の両端面に端子を付与した後、素子本体部をエポキシ系の熱硬化性樹脂に埋込んでモールド型の積層セラミックコンデンサを完成させた。
【0047】
作製した本実施例のモールド型積層セラミックコンデンサは、図2に示したようにBaTiO3質セラミック誘電体層23とNiを含む内部電極層22a,22b,22cとを交互に積層して形成された静電容量取得層となる有効層の上下に無効層としてBaTiO3質セラミック誘電体層23が積層されて積層体21が形成されており、該積層体21の両端部に前記内部電極層22b,22cと電気的に接合されたNi質下層外部電極24が設けられ、その上にAg質上層外部電極25が設けられていた。そして、熱硬化性樹脂26に埋込まれた積層体21の両端部から導電性の端子27が引出され、該端子27を介して回路基板に表面実装できるように構成されていた。
【0048】
次に、本実施例のモールド型積層セラミックコンデンサのたわみ試験を実施した。たわみ試験は表面実装用電子部品の信頼性を判断する為の重要な評価項目であり、専用のプリント基板に被試験品を半田付けした後、専用の治具で3点曲げを付加させながら静電容量を測定し、静電容量値が急激に低下した時点での基板のたわみ幅(mm)をたわみ強度とするものである。通常、静電容量値が急激に低下した時点で被試験品に亀裂が発生している場合が多い。それによると、本実施例のモールド型積層セラミックコンデンサの場合、たわみ幅が15mmを越えても静電容量値の低下がなく安定していた。同時に、実施例1のチップ型積層セラミックコンデンサの場合、たわみ幅(mm)が7mmで静電容量値が急激に低下して亀裂が発生した被試験品が見られた。たわみ幅の規格は最小値が2.0mmであるため双方共全く問題のないレベルであるが、明らかにモールド型の方が優れていた。また、実施例1のチップ型積層セラミックコンデンサは、素子表面の結露等により規格外の異常電圧に対して沿面リークが発生することがあるが、本実施例のモールド型積層セラミックコンデンサは、その可能性がなく信頼性の高いものであった。
【0049】
以上の様に、本発明の積層セラミックコンデンサは、熱硬化性樹脂で埋込みモールド型にすることにより高い信頼性と優れた表面実装性を実現することができる。
【0050】
(実施例3)
RunNo.18組成に基づいて実施例1及び実施例2と同様の手順により積層セラミックコンデンサ素子を作製した。次に、該積層セラミックコンデンサ素子の両端面にリード線を半田付けした後、素子本体部をエポキシ系の外装材で被覆してリード型の積層セラミックコンデンサを完成させた。
【0051】
作製した本実施例のリード型積層セラミックコンデンサは、図3に示したようにBaTiO3質セラミック誘電体層33とNiを含む内部電極層32a,32b,32cとを交互に積層して形成された静電容量取得層となる有効層の上下に無効層としてBaTiO3質セラミック誘電体層33が積層されて積層体31が形成されており、該積層体31の両端部に前記内部電極層32b,32cと電気的に接合されたNi質下層外部電極34が設けられ、その上にAg質上層外部電極35が設けられていた。そして、熱硬化性樹脂36に埋込まれた積層体31の両端部から導電性のリード線37が引出され、該リード線37を介して回路基板に半田付けできるように構成されていた。
【0052】
本実施例のリード型積層セラミックコンデンサは、異常電圧による沿面放電の心配がなく、さらに回路基板にはリード線が半田付けされる為たわみ等の機械的応力が一切印加されず、回路設計上優位性のあるものである。
【0053】
【発明の効果】
以上の様に本発明によれば、第1の複数のセラミック誘電体層の間にNi或いはNiを主成分とする合金より成る内部電極層を設けた有効層及び第2の複数のセラミック誘電体層より成る無効層を有した基体と、前記基体の両端部から側部に至るように設けられ、前記内部電極層と電気的に接合された一対の外部電極とを備え、前記セラミック誘電体層を、主成分であるBaTiO 3 100モルに対して、添加物としてDyの酸化物または焼成により酸化物になる化合物を酸化物Dy 2 O 3 換算で0.2〜1.3モル、Mgの酸化物または焼成により酸化物になる化合物を酸化物MgO換算で0.1〜1.2モル、Mnの酸化物または焼成により酸化物になる化合物を酸化物Mn 3 O 4 換算で0.02〜0.12モル含有し、焼結助剤としてBa 1-X Ca X SiO 3 の一般式で表され、Xが0≦X≦1の範囲内からなる成分を0.5〜3.5モル含有することを特徴とする耐還元性誘電体組成物で構成したことを特徴とするものであり、Ba1-XCaXSiO3成分を溶液の状態で添加するため、Ca、Ba及びSiを含有する成分が主成分であるBaTiO3粒子の周囲に均一にコーティングされ、焼成時に局部的な異常反応がなく焼結助剤成分が均一に分散された非常に緻密な組織を形成することが可能な耐還元性誘電体組成物が得られる。また、セラミック誘電体層を前記の耐還元性誘電体組成物で構成したチップ型、モールド型及びリード型の積層セラミックコンデンサが形成できるため、主として中高圧用としてそれぞれの特徴を生かしてユーザの要望に応じた回路設計ができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態における積層セラミックコンデンサを示す断面図
【図2】本発明の一実施の形態における積層セラミックコンデンサを示す断面図
【図3】本発明の一実施の形態における積層セラミックコンデンサを示す断面図
【符号の説明】
11,21,31 積層体
12a,22a,32a,12b,22b,32b,12c,22c,32c内部電極
13,23,33 セラミック誘電体層
14,24,34 Ni質下層外部電極
15,25,35 Ag質上層外部電極
26 熱硬化性樹脂
27 端子
36 外装材
37 リード線
38 半田
Claims (1)
- 第1の複数のセラミック誘電体層の間にNi或いはNiを主成分とする合金より成る内部電極層を設けた有効層及び第2の複数のセラミック誘電体層より成る無効層を有した基体と、前記基体の両端部から側部に至るように設けられ、前記内部電極層と電気的に接合された一対の外部電極とを備え、前記セラミック誘電体層を、主成分であるBaTiO 3 100モルに対して、添加物としてDyの酸化物または焼成により酸化物になる化合物を酸化物Dy 2 O 3 換算で0.2〜1.3モル、Mgの酸化物または焼成により酸化物になる化合物を酸化物MgO換算で0.1〜1.2モル、Mnの酸化物または焼成により酸化物になる化合物を酸化物Mn 3 O 4 換算で0.02〜0.12モル含有し、焼結助剤としてBa 1-X Ca X SiO 3 の一般式で表され、Xが0≦X≦1の範囲内からなる成分を0.5〜3.5モル含有することを特徴とする耐還元性誘電体組成物で構成したことを特徴とする積層セラミックコンデンサ。
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