JP4679998B2 - さび止め油組成物 - Google Patents

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Description

本発明はさび止め油組成物に関する。
従来、鋼板、軸受、鋼球、ガイドレールなどの金属製部材の分野では、部材のさびの発生を防止ためにさび止め油が使用されている。このようなさび止め油としては、例えば、さび止め添加剤としての多価アルコールの部分エステルを所定基油に添加したさび止め油が知られている。(例えば、特許文献1を参照。)
特開2002−302690号公報
しかしながら、多価アルコールの部分エステルを含む上記従来のさび止め油であっても、そのさび止め性、特に大気暴露性の点で未だ改善の余地がある。また、従来使用されている多価アルコールの部分エステルのうち、さび止め性が良好なものは基油に対する溶解性が不十分となる傾向にあり、さび止め性と貯蔵安定性とを両立することは必ずしも容易ではない。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、多価アルコールのエステルによるさび止め性と貯蔵安定性とを高水準で両立することが可能なさび止め油組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、多価アルコールの部分エステルを構成するカルボン酸には水酸基を有するもの(ヒドロキシカルボン酸)と水酸基を有さないものとがあり、このようなカルボン酸の構造の相違がさび止め性や貯蔵安定性に与える影響が大きいことを見出した。そして、本発明者らは、かかる知見に基づき更に研究を重ねた結果、特定のカルボン酸組成を有する多価アルコールの部分エステルを用いることによって上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、鉱油及び/又は合成油からなる基油と、多価アルコールとカルボン酸との部分エステルとを含有するさび止め油組成物であって、部分エステルを構成するカルボン酸に占めるヒドロキシカルボン酸の割合が5〜80質量%であり、且つ部分エステルを構成するカルボン酸に占める不飽和カルボン酸の割合が5〜95質量%であることを特徴とするさび止め油組成物(以下、便宜的に「第1のさび止め油組成物」という。)を提供する。
上記第1のさび止め油組成物によれば、部分エステルを構成するカルボン酸の組成が上記条件を満たすことで、部分エステルの基油に対する溶解性を十分に維持しつつ、部分エステルの添加効果を最大限に発揮することができるようになるため、さび止め性と貯蔵安定性とを高水準で両立することが可能となる。
また、本発明は、鉱油及び/又は合成油からなる基油と、多価アルコールとカルボン酸との部分エステルとを含有するさび止め油組成物であって、部分エステルを構成するカルボン酸に占めるヒドロキシカルボン酸の割合が5〜80質量%であり、且つ部分エステルのヨウ素価が5〜75であることを特徴とするさび止め油組成物(以下、便宜的に「第2のさび止め油組成物」という。)を提供する。
上記第2のさび止め油組成物によれば、部分エステルを構成するカルボン酸の組成及び部分エステルのヨウ素価がそれぞれ上記条件を満たすことで、部分エステルの基油に対する溶解性を十分に維持しつつ、部分エステルの添加効果を最大限に発揮することができるようになるため、さび止め性と貯蔵安定性とを高水準で両立することが可能となる。
上記第1及び第2のさび止め油組成物において、部分エステルを構成するカルボン酸はラノリン脂肪酸を含むことが好ましい。ラノリン脂肪酸を含むカルボン酸で構成された多価アルコールの部分エステルを用いることによって、さび止め性と貯蔵安定性とをより高水準で両立することが可能となる。
また、本発明は、鉱油及び/又は合成油からなる基油と、多価アルコールとラノリン脂肪酸とで構成される第1の部分エステルと、多価アルコールと水酸基を有さないカルボン酸とで構成される第2の部分エステルとを含有するさび止め油組成物であって、第1及び第2の部分エステルの合計量に占める第1の部分エステルの割合が20〜95質量%であることを特徴とするさび止め油組成物(以下、便宜的に「第3のさび止め油組成物」という。)を提供する。
上記第3のさび止め油組成物によれば、構成カルボン酸がラノリン脂肪酸である第1の部分エステルと、構成脂肪酸が水酸基を有さないカルボン酸である第2の部分エステルとを、両者の割合が上記条件を満たすように併用することで、さび止め性と貯蔵安定性とを高水準で両立することが可能となる。
本発明によれば、多価アルコールのエステルによるさび止め性と貯蔵安定性とを高水準で両立できるさび止め油組成物が提供可能となる。
以下、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明する。
本発明のさび止め油組成物には鉱油及び/又は合成油からなる基油が含まれる。
鉱油としては、具体的には、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理の1種もしくは2種以上の精製手段を適宜組み合わせて適用して得られるパラフィン系又はナフテン系の鉱油等が挙げられる。
また、合成油としては、ポリオレフィン、アルキルベンゼン等が好適に使用される。
ポリオレフィンとしては、炭素数2〜16、好ましくは炭素数2〜12のオレフィンモノマーを単独重合又は共重合したもの、並びにこれらの重合体の水素化物等が挙げられる。なお、ポリオレフィンが構造の異なるオレフィンモノマーの共重合体である場合、その共重合体におけるモノマー比やモノマー配列には特に制限はなく、ランダム共重合体、交互共重合体及びブロック共重合体のうちのいずれであってもよい。また、前記オレフィンモノマーは、α−オレフィン、内部オレフィン、直鎖状オレフィン、分岐鎖状オレフィンのうちのいずれであってもよい。このようなオレフィンモノマーとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、直鎖状又は分岐鎖状のペンテン(α−オレフィン、内部オレフィンを含む)、直鎖状又は分岐鎖状のヘキセン(α−オレフィン、内部オレフィンを含む)、直鎖状又は分岐鎖状のヘプテン(α−オレフィン、内部オレフィンを含む)、直鎖状又は分岐鎖状のオクテン(α−オレフィン、内部オレフィンを含む)、直鎖状又は分岐鎖状のノネン(α−オレフィン、内部オレフィンを含む)、直鎖状又は分岐鎖状のデセン(α−オレフィン、内部オレフィンを含む)、直鎖状又は分岐鎖状のウンデセン(α−オレフィン、内部オレフィンを含む)、直鎖状又は分岐鎖状のドデセン(α−オレフィン、内部オレフィンを含む)、直鎖状又は分岐鎖状のトリデセン(α−オレフィン、内部オレフィンを含む)、直鎖状又は分岐鎖状のテトラデセン(α−オレフィン、内部オレフィンを含む)、直鎖状又は分岐鎖状のペンタデセン(α−オレフィン、内部オレフィンを含む)、直鎖状又は分岐鎖状のヘキサデセン(α−オレフィン、内部オレフィンを含む)及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらの中でも、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、炭素数5〜12のα−オレフィン及びこれらの混合物等が好ましく用いられる。さらに、炭素数5〜12のα−オレフィンの中でも、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン及びこれらの混合物等がより好ましい。
上記したポリオレフィンは従来公知の製造することができる。具体的には例えば、無触媒による熱反応によって製造することができるほか、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物触媒;塩化アルミニウム、塩化アルミニウム−多価アルコール系、塩化アルミニウム−四塩化チタン系、塩化アルミニウム−アルキル錫ハライド系、フッ化ホウ素等のフリーデルクラフツ型触媒;有機塩化アルミニウム−四塩化チタン系、有機アルミニウム−四塩化チタン系等のチーグラー型触媒;アルミノキサン−ジルコノセン系、イオン性化合物−ジルコノセン系等のメタロセン型触媒;塩化アルミニウム−塩基系、フッ化ホウ素−塩基系等のルイス酸コンプレックス型触媒、等の公知の触媒を用いて、上記のオレフィンを単独重合又は共重合させることによって目的のポリオレフィンを製造することができる。
このような方法により得られるポリオレフィンは、通常、二重結合を有しているが、本発明においてはこれらのポリオレフィン中の二重結合炭素を水素化した、いわゆるポリオレフィンの水素化物を基油として用いることが好ましい。ポリオレフィンの水素化物を用いると、得られるさび止め油組成物の熱・酸化安定性が向上する傾向にある。なお、ポリオレフィンの水素化物は、例えば、ポリオレフィンを公知の水素化触媒の存在下で水素で水素化し、ポリオレフィン中に存在する二重結合を飽和化することによって得ることができる。また、オレフィンの重合反応を行う際に、使用する触媒を選択することによって、オレフィンの重合と重合体の水素化といった2工程を経ることなく、オレフィンの重合と重合体中に存在する二重結合の水素化を1工程で完遂させることも可能である。
本発明において基油として好適に使用されるポリオレフィンの中にあって、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン(ナフサ熱分解の際に副生するブタン−ブテン留分(1−ブテン、2−ブテン及びイソブテンの混合物)の重合によって得られる共重合体)、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、1−ドデセンオリゴマー並びにこれらの水素化物、さらにはこれらの混合物等は熱・酸化安定性、粘度−温度特性、低温流動性に優れている点で好ましく、特にエチレン−プロピレン共重合体水素化物、ポリブテン水素化物、1−オクテンオリゴマー水素化物、1−デセンオリゴマー水素化物、1−ドデセンオリゴマー水素化物並びにこれらの混合物がより好ましい。なお、潤滑油用基油として市販されているエチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン及びポリ−α−オレフィン等の合成油は、通常、その二重結合が既に水素化されているものであり、本発明においてはこれらの市販品も基油として用いることができる。
また、本発明にかかる基油として好適に使用されるアルキルベンゼンとしては、分子中に炭素数1〜40のアルキル基を1〜4個有するものが好ましい。ここでいう炭素数1〜40のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基(すべての異性体を含む)、ブチル基(すべての異性体を含む)、ペンチル基(すべての異性体を含む)、ヘキシル基(すべての異性体を含む)、ヘプチル基(すべての異性体を含む)、オクチル基(すべての異性体を含む)、ノニル基(すべての異性体を含む)、デシル基(すべての異性体を含む)、ウンデシル基(すべての異性体を含む)、ドデシル基(すべての異性体を含む)、トリデシル基(すべての異性体を含む)、テトラデシル基(すべての異性体を含む)、ペンタデシル基(すべての異性体を含む)、ヘキサデシル基(すべての異性体を含む)、ヘプタデシル基(すべての異性体を含む)、オクタデシル基(すべての異性体を含む)、ノナデシル基(すべての異性体を含む)、イコシル基(すべての異性体を含む)、ヘンイコシル基(すべての異性体を含む)、ドコシル基(すべての異性体を含む)、トリコシル基(すべての異性体を含む)、テトラコシル基(すべての異性体を含む)、ペンタコシル基(すべての異性体を含む)、ヘキサコシル基(すべての異性体を含む)、ヘプタコシル基(すべての異性体を含む)、オクタコシル基(すべての異性体を含む)、ノナコシル基(すべての異性体を含む)、トリアコンチル基(すべての異性体を含む)、ヘントリアコンチル基(すべての異性体を含む)、ドトリアコンチル基(すべての異性体を含む)、トリトリアコンチル基(すべての異性体を含む)、テトラトリアコンチル基(すべての異性体を含む)、ペンタトリアコンチル基(すべての異性体を含む)、ヘキサトリアコンチル基(すべての異性体を含む)、ヘプタトリアコンチル基(すべての異性体を含む)、オクタトリアコンチル基(すべての異性体を含む)、ノナトリアコンチル基(すべての異性体を含む)、テトラコンチル基(すべての異性体を含む)等が挙げられる。また、本発明にかかるアルキルベンゼンのアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよいが、安定性、粘度特性等の点から分岐鎖状のアルキル基が好ましく、特に入手が容易であるという点から、プロピレン、ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマーから誘導される分岐鎖状アルキル基がより好ましい。
本発明において使用されるアルキルベンゼン中のアルキル基の個数は1〜4個が好ましいが、安定性、入手可能性の点から1〜2個のアルキル基を有するアルキルベンゼン、すなわちモノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、又はこれらの混合物が最も好ましい。また、アルキルベンゼンとしては、単一の構造のアルキルベンゼンだけでなく、異なる構造を有するアルキルベンゼンの混合物であっても良い。
本発明にかかるアルキルベンゼンは、例えば、芳香族化合物を原料とし、アルキル化剤及びアルキル化触媒を用いて製造することができる。ここで、原料として使用される芳香族化合物としては、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、ジエチルベンゼン、及びこれらの混合物等が挙げられる。またアルキル化剤としては、具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン等の低級モノオレフィン、好ましくはプロピレンの重合によって得られる炭素数6〜40の直鎖状又は分枝鎖状のオレフィン;ワックス、重質油、石油留分、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱分解によって得られる炭素数6〜40の直鎖状又は分岐鎖状のオレフィン;灯油、軽油等の石油留分からn−パラフィンを分離し、これを触媒によりオレフィン化することによって得られる炭素数9〜40の直鎖状オレフィン、及びこれらの混合物等が挙げられる。さらにまた、アルキル化の際のアルキル化触媒としては、塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のフリーデルクラフツ型触媒;硫酸、リン酸、ケイタングステン酸、フッ化水素酸、活性白土等の酸性触媒、等の公知の触媒が挙げられる。
本発明において、上記した各種基油の40℃における動粘度は通常1〜1000mm/s、好ましくは2〜100mm/s、より好ましくは3〜95mm/sの範囲から選ばれ、これらの基油は1種を単独で用いてもよく、2種以上の基油を混合して用いてもよい。なお、本発明のさび止め油組成物は40℃における動粘度が100mm/s以上の重質基油を含んでもよいが、持ち出し量の増加の抑制並びに脱脂性及び噴霧性の点から、当該重質基油をできるだけ含まないことが好ましく、具体的には、当該重質基油の含有量が、組成物全量規準で、15質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが好ましく、当該重質基油を含まないことが特に好ましい。また、本発明のさび止め油組成物が基油と多価アルコールの部分エステルとで構成される場合、当該さび止め油組成物における上記基油の含有量は、多価アルコールの部分エステルを除く残部とすることができる。また、本発明のさび止め油組成物は、後述するように、多価アルコールの部分エステル以外の添加剤を含有することができ、その場合の基油の含有量は多価アルコールの部分エステル及びその他の添加剤を除く残部とすることができる。
また、本発明のさび止め油組成物は、多価アルコールとカルボン酸との部分エステルとを含有する。ここで、部分エステルを構成するカルボン酸は水酸基を有するカルボン酸(ヒドロキシカルボン酸)と水酸基を有さないカルボン酸とを含み、部分エステルを構成するカルボン酸の全量に占めるヒドロキシカルボン酸の割合は5〜80質量%であることが必要である。また、部分エステルを構成するカルボン酸に占める不飽和カルボン酸の割合は5〜95質量%であることが必要である。
なお、上記のヒドロキシカルボン酸の割合及び不飽和カルボン酸の割合は、さび止め油組成物に含まれる部分エステル全量を規準としたものであり、部分エステル一分子中の構成カルボン酸の組成はこれらの条件を満たしていなくてもよい。
また、多価アルコールの部分エステルとは、多価アルコール中の水酸基の少なくとも1個以上がエステル化されておらず水酸基のままで残っているエステルであり、その原料である多価アルコールとしては任意のものが使用可能であるが、分子中の水酸基の数が好ましくは2〜10個(より好ましくは3〜6個)であり且つ炭素数が2〜20(より好ましくは3〜10)である多価アルコールが好適に使用される。これらの多価アルコールの中でも、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びソルビタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の多価アルコールを用いることがより好ましく、ペンタエリスリトールを用いることが特に好ましい。
本発明で用いられる部分エステルにおいて、多価アルコールが有する水酸基のうち未反応のままで残っている水酸基の個数は特に制限されない。例えば、多価アルコールがペンタエリスリトールである場合、部分エステルはモノエステル、ジエステル又はトリエステルのいずれであってもよく、あるいはこれらの2種以上の混合物であってもよい。
他方、部分エステルを構成するカルボン酸はヒドロキシカルボン酸と水酸基を有さないカルボン酸との双方を含む。なお、本発明でいう「ヒドロキシカルボン酸」とは、カルボン酸基(−COOH)に含まれる水酸基以外に水酸基を有するカルボン酸を意味する。また、本発明でいう「水酸基を有さないカルボン酸」とは、カルボン酸基(−COOH)に含まれる水酸基以外に水酸基を有さないカルボン酸を意味する。
ヒドロキシカルボン酸は、飽和カルボン酸であっても不飽和カルボン酸であってもよいが、安定性の点から飽和カルボン酸であることが好ましい。また、ヒドロキシカルボン酸は、直鎖カルボン酸又は分岐カルボン酸であってもよいが、直鎖カルボン酸、あるいは炭素数1又は2(より好ましくは炭素数1)の分岐鎖を1〜3個(より好ましくは1〜2個、特に好ましくは1個)有する分岐カルボン酸であることが好ましい。
また、ヒドロキシカルボン酸の炭素数は、さび止め性と貯蔵安定性との両立の点から、2〜40であることが好ましく、6〜30であることがより好ましく、8〜24であることがさらに好ましい。
ヒドロキシカルボン酸が有するカルボン酸基の個数は特に制限されず、当該ヒドロキシカルボン酸一塩基酸又は多塩基酸のいずれであってもよいが、一塩基酸であることが好ましい。
また、ヒドロキシカルボン酸が有する水酸基の個数は特に制限されないが、安定性の点から、1〜4個であることが好ましく、1〜3個であることがより好ましく、1〜2個であることが更に好ましく、1個であることが特に好ましい。
また、ヒドロキシカルボン酸における水酸基の結合位置は任意であるが、カルボン酸基の結合炭素原子に水酸基が結合したカルボン酸(αヒドロキシ酸)、及びカルボン酸基の結合炭素原子から見て主鎖の他端の炭素原子に水酸基が結合したカルボン酸(ωヒドロキシ酸)であることが好ましい。
ヒドロキシカルボン酸の好ましい例としては、具体的には、下記一般式(1)で表されるαヒドロキシ酸、及び下記一般式(2)で表されるωヒドロキシ酸が挙げられる。
Figure 0004679998
[式中、Rは水素原子、炭素数1〜38のアルキル基又は炭素数2〜38のアルケニル基を示す。]
Figure 0004679998
[式中、Rは水素原子、炭素数1〜38のアルキレン基又は炭素数2〜38のアルケニレン基を示す。]
上記一般式(1)において、Rは水素原子、炭素数1〜38のアルキル基又は炭素数1〜38のアルケニル基を示す。Rで示されるアルキル基及びアルケニル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基、ヘントリアコンチル基、ドトリアコンチル基、トリトリアコンチル基、テトラトリアコンチル基、ペンタトリアコンチル基、ヘキサトリアコンチル基、ヘプタトリアコンチル基、オクタトリアコンチル基等のアルキル基(全ての異性体を含む);エテニル基(ビニル基)、プロペニル基(アリル基)、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基、トリアコンテニル基、ヘントリアコンテニル基、ドトリアコンテニル基、トリトリアコンテニル基、テトラトリアコンテニル基、ペンタトリアコンテニル基、ヘキサトリアコンテニル基、ヘプタトリアコンテニル基、オクタトリアコンテニル基等のアルケニル基(すべての異性体を含む)などが挙げられる。
また、上記一般式(2)において、Rは水素原子、炭素数1〜38のアルキレン基又は炭素数2〜38のアルケニレン基を示す。Rで示されるアルキレン基及びアルケニレン基としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、イコシレン基、ヘンイコシレン基、ドコシレン基、トリコシレン基、テトラコシレン基、ペンタコシレン基、ヘキサコシレン基、ヘプタコシレン基、オクタコシレン基、ノナコシレン基、トリアコンチレン基、ヘントリアコンチレン基、ドトリアコンチレン基、トリトリアコンチレン基、テトラトリアコンチレン基、ペンタトリアコンチレン基、ヘキサトリアコンチレン基、ヘプタトリアコンチレン基、オクタトリアコンチレン基等のアルキレン基(全ての異性体を含む);エテニレン基(ビニレン基)、プロペニル基(アリレン基)、ブテニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基、ノネニレン基、デセニレン基、ウンデセニレン基、ドデセニレン基、トリデセニレン基、テトラデセニレン基、ペンタデセニレン基、ヘキサデセニレン基、ヘプタデセニレン基、オクタデセニレン基、ノナデセニレン基、イコセニレン基、ヘンイコセニレン基、ドコセニレン基、トリコセニレン基、テトラコセニレン基、ペンタコセニレン基、ヘキサコセニレン基、ヘプタコセニレン基、オクタコセニレン基、ノナコセニレン基、トリアコンテニレン基、ヘントリアコンテニレン基、ドトリアコンテニレン基、トリトリアコンテニレン基、テトラトリアコンテニレン基、ペンタトリアコンテニレン基、ヘキサトリアコンテニレン基、ヘプタトリアコンテニレン基、オクタトリアコンテニレン基等のアルケニレン基(すべての異性体を含む)などが挙げられる。
このようなヒドロキシカルボン酸を含む原料として、羊の毛に付着するろう状物質を精製(加水分解等)して得られるラノリン脂肪酸を好ましく使用することができる。
多価アルコールとカルボン酸との部分エステルにおいて、構成カルボン酸の全量に占めるヒドロキシカルボン酸の割合は5〜80質量%であることが必要である。ヒドロキシカルボン酸の割合が5質量%未満であると防錆性が不十分となる。同様の理由から、当該ヒドロキシカルボン酸の割合は、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。また、当該ヒドロキシカルボン酸の割合が80質量%を超えると、貯蔵安定性及び基油に対する溶解性が不十分となる。同様の理由から、当該ヒドロキシカルボン酸の割合は、60質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましく、20質量%以下であることが特に好ましい。
また、水酸基を有さないカルボン酸としては、飽和カルボン酸であっても不飽和カルボン酸であってもよい。
水酸基を有さないカルボン酸のうち、飽和カルボン酸は直鎖カルボン酸又は分岐カルボン酸のいずれであってもよいが、直鎖カルボン酸、あるいは炭素数1又は2(より好ましくは炭素数1)の分岐鎖を1〜3個(より好ましくは1〜2個、更に好ましくは1個)有する分岐カルボン酸であることが好ましい。
水酸基を有さない飽和カルボン酸の炭素数は、さび止め性と貯蔵安定性との両立の点から、2〜40であることが好ましく、6〜30であることがより好ましく、8〜24であることが更に好ましい。
水酸基を有さない飽和カルボン酸におけるカルボン酸基の個数は特に制限されず、一塩基酸又は多塩基酸のいずれであってもよいが、一塩基酸であることが好ましい。
水酸基を有さない飽和カルボン酸としては、具体的には、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸(全ての異性体を含む)、ペンタン酸(全ての異性体を含む)、ヘキサン酸(全ての異性体を含む)、ヘプタン酸(全ての異性体を含む)、オクタン酸(全ての異性体を含む)、ノナン酸(全ての異性体を含む)、デカン酸(全ての異性体を含む)、ウンデカン酸(全ての異性体を含む)、ドデカン酸(全ての異性体を含む)、トリデカン酸(全ての異性体を含む)、テトラデカン酸(全ての異性体を含む)、ペンタデカン酸(全ての異性体を含む)、ヘキサデカン酸(全ての異性体を含む)、ヘプタデカン酸(全ての異性体を含む)、オクタデカン酸(全ての異性体を含む)、ノナデカン酸(全ての異性体を含む)、イコサン酸(全ての異性体を含む)、ヘンイコサン酸(全ての異性体を含む)、ドコサン酸(全ての異性体を含む)、トリコサン酸(全ての異性体を含む)、テトラコサン酸(全ての異性体を含む)、ペンタコサン酸(全ての異性体を含む)、ヘキサコサン酸(全ての異性体を含む)、ヘプタコサン酸(全ての異性体を含む)、オクタコサン酸(全ての異性体を含む)、ノナコサン酸(全ての異性体を含む)、トリアコンタン酸(全ての異性体を含む)等の飽和脂肪酸(これら飽和脂肪酸は直鎖状でも分枝状でもよい)、及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。これらの中でも、酸化安定性及び耐ステイン性の点から、ラウリン酸、ステアリン酸などの炭素数10〜16の直鎖飽和カルボン酸が特に好ましい。
また、水酸基を有さないカルボン酸のうち、不飽和カルボン酸は直鎖カルボン酸又は分岐のいずれであってもよいが、直鎖カルボン酸、あるいは炭素数1又は2(より好ましくは炭素数1)の分岐鎖を1〜3個(より好ましくは1〜2個、更に好ましくは1個)有する分岐カルボン酸であることが好ましい。
また、水酸基を有さないカルボン酸のうち、不飽和カルボン酸の炭素数は、さび止め性と貯蔵安定性との両立の点から、2〜40であることが好ましく、6〜30であることがより好ましく、8〜24であることが更に好ましく、12〜22であることが特に好ましい。
水酸基を有さない不飽和カルボン酸におけるカルボン酸基の個数は特に制限されず、一塩基酸又は多塩基酸のいずれであってもよいが、一塩基酸であることが好ましい。
水酸基を有さない不飽和カルボン酸が有する不飽和結合の個数は特に制限されないが、安定性の点から、1〜4個であることが好ましく、1〜3個であることがより好ましく、1〜2個であることが更に好ましく、1個であることが特に好ましい。
水酸基を有さない不飽和カルボン酸としては、具体的には、プロペン酸、ブデン酸(全ての異性体を含む)、ヘプテン酸、ヘキセン酸、ヘプテン酸(全ての異性体を含む)、オクテン酸(全ての異性体を含む)、ノネン酸(全ての異性体を含む)、デセン酸(全ての異性体を含む)、ウンデセン酸(全ての異性体を含む)、ドデセン酸(全ての異性体を含む)、トリデセン酸(全ての異性体を含む)、テトラデセン酸(全ての異性体を含む)、ペンタデセン酸(全ての異性体を含む)、ヘキサデセン酸(全ての異性体を含む)、ヘプタデセン酸(全ての異性体を含む)、オクタデセン酸(全ての異性体を含む)、ノナデセン酸(全ての異性体を含む)、イコセン酸(全ての異性体を含む)、ヘンイコセン酸(全ての異性体を含む)、ドコセン酸(全ての異性体を含む)、トリコセン酸(全ての異性体を含む)、テトラコセン酸(全ての異性体を含む)、ペンタコセン酸(全ての異性体を含む)、ヘキサコセン酸(全ての異性体を含む)、ヘプタコセン酸(全ての異性体を含む)、オクタコセン酸(全ての異性体を含む)、ノナコセン酸(全ての異性体を含む)、トリアコンテン酸(全ての異性体を含む)等の不飽和脂肪酸;及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。これらの中でも、さび止め性及び基油に対する溶解性の点からはオレイン酸などの炭素数18〜22の直鎖不飽和カルボン酸が好ましく、また、酸化安定性、基油に対する溶解性及び耐ステイン性の点からは、イソステアリン酸などの炭素数18〜22の分岐不飽和カルボン酸が好ましく、特にオレイン酸が好ましい。
多価アルコールとカルボン酸との部分エステルにおいて、構成カルボン酸に占める不飽和カルボン酸の割合は5〜95質量%であることが必要である。不飽和カルボン酸の割合が5質量%未満であると、さび止め性及び貯蔵安定性が不十分となる。同様の理由から、当該不飽和カルボン酸の割合は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、35質量%以上であることが特に好ましい。他方、当該不飽和カルボン酸の割合が95質量%を超えると、大気暴露性及び基油に対する溶解性が不十分となる。同様の理由から、当該不飽和カルボン酸の割合は、80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが更に好ましい。
なお、「不飽和カルボン酸」には水酸基を有する不飽和カルボン酸及び水酸基を有さない不飽和カルボン酸の双方が包含されるが、不飽和カルボン酸全量に占める水酸基を有さない不飽和カルボン酸の割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。
また、上記部分エステルのヨウ素価は、5〜75であることが好ましく、10〜60であることがより好ましく、20〜45であることが更に好ましい。部分エステルのヨウ素価が5未満であると、さび止め性及び貯蔵安定性が低下する傾向にある。また、部分エステルのヨウ素価が75を超えると、大気暴露性及び基油に対する溶解性が低下する傾向にある。
なお、本発明でいう「ヨウ素価」とは、JIS K 0070「化学製品の酸価、ケン化価、ヨウ素価、水酸基価及び不ケン化物価」の指示薬滴定法により測定したヨウ素価を意味する。
本発明において用いられる部分エステルの製造方法としては、カルボン酸組成が上記条件を満たせば特に制限されないが、例えば下記製造方法(i)、(ii)、(iii)が挙げられる。
(i)多価アルコールとヒドロキシカルボン酸(またはヒドロキシカルボン酸と水酸基を有さない飽和カルボン酸との混合物)との部分エステルと、多価アルコールと水酸基を有さない不飽和カルボン酸(または水酸基を有さない不飽和カルボン酸と水酸基を有さない飽和カルボン酸との混合物)との部分エステルとを、両者の混合物におけるカルボン酸組成が上記条件を満たすように混合する。
(ii)得られる部分エステルのカルボン酸組成が上記条件を満たすように、水酸基を有するカルボン酸と水酸基を有さない不飽和カルボン酸とを混合し(あるいは、水酸基を有さない飽和カルボン酸を更に混合し)、当該カルボン酸混合物と多価アルコールとの部分エステル化反応を行う。
(iii)ヒドロキシカルボン酸と水酸基を有さない不飽和カルボン酸との混合物(あるいは、これらのカルボン酸と水酸基を有さない飽和カルボン酸との混合物)との部分エステルに、カルボン酸組成が上記条件を満たすように、多価アルコールとヒドロキシカルボン酸(もしくはヒドロキシカルボン酸と水酸基を有さない飽和カルボン酸との混合物)との部分エステル、または多価アルコールと水酸基を有さない不飽和カルボン酸(もしくは水酸基を有さない不飽和カルボン酸と水酸基を有さない飽和カルボン酸との混合物)との部分エステルを混合する。
例えば上記製造方法(i)の場合、ヒドロキシカルボン酸と水酸基を有さない飽和カルボン酸との混合物としてラノリン脂肪酸を、水酸基を有さない不飽和カルボン酸としてオレイン酸等の炭素数2〜40の不飽和カルボン酸を、それぞれ好ましく用いることができる。この場合、多価アルコールとヒドロキシカルボン酸と水酸基を有さない飽和カルボン酸との混合物(好ましくはラノリン脂肪酸)とで構成される部分エステル(第1の部分エステル)と、多価アルコールと水酸基を有さない不飽和カルボン酸(好ましくはオレイン酸)とで構成される部分エステル(第2の部分エステル)との含有割合は、両者の混合物におけるカルボン酸組成比が上記条件を満たせば特に制限されないが、第1及び第2の部分エステルの合計量に占める第1の部分エステルの割合は、20〜95質量%であることが好ましく、40〜80質量%であることがより好ましく、55〜65質量%であることが更に好ましい。第1の部分エステルの割合が20質量%未満であるか、あるいは95質量%を超える場合、大気暴露性などの錆止め性が不十分となる傾向にある。また、第1の部分エステルの割合が95質量%を超えると、部分エステル全体の基油に対する溶解性が低下し、貯蔵安定性が不十分となる傾向にある。
本発明のさび止め油組成物において、上記部分エステルの含有量は任意であるが、多価アルコールと水酸基を有するエステルとの部分エステルの含有量と、多価アルコールと水酸基を有さないカルボン酸との部分エステルの含有量との合計が、0.1〜40質量%であることが好ましく、0.5〜30質量%であることがより好ましく、1〜20質量%であることが更に好ましく、6〜15質量%であることが特に好ましい。部分エステルの含有量の合計が前記下限値未満であると、さび止め性が不十分となる傾向にある。また、部分エステルの含有量の合計が前記上限値を超えると、含有量に見合うさび止め性が得られず、また、貯蔵安定性が低下する傾向にある。
本発明のさび止め油組成物は、上記の基油と部分エステルとのみで構成されてもよいが、必要に応じて以下に示す各種添加剤を更に含有してもよい。
本発明のさび止め油組成物は、多価アルコールとカルボン酸との部分エステル以外に、さび止め添加剤として、スルホン酸塩、酸化ワックス塩、カルボン酸、カルボン酸塩、多価アルコールとカルボン酸との部分エステル以外のエステル、ザルコシン、アミン、ホウ素化合物などを更に含有することができる。
スルホン酸塩の好ましい例としては、スルホン酸アルカリ金属塩、スルホン酸アルカリ土類金属塩及びスルホン酸アミン塩が挙げられる。スルホン酸塩はいずれも人体や生態系に対して十分に高い安全性を有するものであり、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアミンとスルホン酸とを反応させることにより得ることができる。
スルホン酸塩を構成するアルカリ金属としてはナトリウム、カリウム等、アルカリ土類金属としてはマグネシウム、カルシウム、バリウム等、がそれぞれ挙げられ、これらの中でもナトリウム、カリウム、カルシウムが好ましい。
また、アミンとしては、モノアミン、ポリアミン、アルカノールアミン等が挙げられる。前記モノアミンとしては、具体的には、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン(全ての異性体を含む)、ジプロピルアミン(全ての異性体を含む)、トリプロピルアミン(全ての異性体を含む)、モノブチルアミン(全ての異性体を含む)、ジブチルアミン(全ての異性体を含む)、トリブチルアミン(全ての異性体を含む)、モノペンチルアミン(全ての異性体を含む)、ジペンチルアミン(全ての異性体を含む)、トリペンチルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘキシルアミン(全ての異性体を含む)、ジヘキシルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘプチルアミン(全ての異性体を含む)、ジヘプチルアミン(全ての異性体を含む)、モノオクチルアミン(全ての異性体を含む)、ジオクチルアミン(全ての異性体を含む)、モノノニルアミン(全ての異性体を含む)、モノデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノウンデシル(全ての異性体を含む)、モノドデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノトリデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノテトラデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノペンタデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘキサデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘプタデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノオクタデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノノナデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノイコシルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘンイコシルアミン(全ての異性体を含む)、モノドコシルアミン(全ての異性体を含む)、モノトリコシルアミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(エチル)アミン、ジメチル(プロピル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ブチル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ペンチル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘキシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘプチル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(オクチル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ノニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(デシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ウンデシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ドデシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(トリデシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(テトラデシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ペンタデシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘキサデシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘプタデシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(オクタデシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ノナデシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(イコシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘンイコシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(トリコシル)アミン(全ての異性体を含む)等のアルキルアミン;
モノビニルアミン、ジビニルアミン、トリビニルアミン、モノプロペニルアミン(全ての異性体を含む)、ジプロペニルアミン(全ての異性体を含む)、トリプロペニルアミン(全ての異性体を含む)、モノブテニルアミン(全ての異性体を含む)、ジブテニルアミン(全ての異性体を含む)、トリブテニルアミン(全ての異性体を含む)、モノペンテニルアミン(全ての異性体を含む)、ジペンテニルアミン(全ての異性体を含む)、トリペンテニルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘキセニルアミン(全ての異性体を含む)、ジヘキセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘプテニルアミン(全ての異性体を含む)、ジヘプテニルアミン(全ての異性体を含む)、モノオクテニルアミン(全ての異性体を含む)、ジオクテニルアミン(全ての異性体を含む)、モノノネニルアミン(全ての異性体を含む)、モノデセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノウンデセニル(全ての異性体を含む)、モノドデセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノトリデセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノテトラデセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノペンタデセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘキサデセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘプタデセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノオクタデセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノノナデセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノイコセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘンイコセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノドコセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノトリコセニルアミン(全ての異性体を含む)等のアルケニルアミン;
ジメチル(ビニル)アミン、ジメチル(プロペニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ブテニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ペンテニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘキセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘプテニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(オクテニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ノネニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(デセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ウンデセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ドデセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(トリデセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(テトラデセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ペンタデセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘキサデセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘプタデセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(オクタデセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ノナデセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(イコセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘンイコセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(トリコセニル)アミン(全ての異性体を含む)等のアルキル基及びアルケニル基を有するモノアミン;
モノベンジルアミン、(1−フェニルチル)アミン、(2−フェニルエチル)アミン(別名:モノフェネチルアミン)、ジベンジルアミン、ビス(1−フェニエチル)アミン、ビス(2−フェニルエチレン)アミン(別名:ジフェネチルアミン)等の芳香族置換アルキルアミン;
モノシクロペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、トリシクロペンチルアミン、モノシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノシクロヘプチルアミン、ジシクロヘプチルアミン等の炭素数5〜16のシクロアルキルアミン;
ジメチル(シクロペンチル)アミン、ジメチル(シクロヘキシル)アミン、ジメチル(シクロヘプチル)アミン等のアルキル基及びシクロアルキル基を有するモノアミン;
(メチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(メチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(ジメチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(ジメチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(エチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(エチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(メチルエチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(メチルエチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(ジエチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(メチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(メチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(ジメチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(ジメチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(エチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(エチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(メチルエチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(ジエチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(メチルシクロヘプチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(メチルシクロヘプチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(ジメチルシクロヘプチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(エチルシクロヘプチルアミン(全ての置換異性体を含む)、(メチルエチルシクロヘプチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(ジエチルシクロヘプチル)アミン(全ての置換異性体を含む)等のアルキルシクロアルキルアミン、等が挙げられる。また、モノアミンには、油脂から誘導されるモノアミン(牛脂アミン等)も含まれる。
また、ポリアミンとしては、具体的には、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、プロピレンジアミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタプロピレンヘキサミン、ブチレンジアミン、ジブチレントリアミン、トリブチレンテトラミン、テトラブチレンペンタミン、ペンタブチレンヘキサミン等のアルキレンポリアミン;
N−メチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N−プロピルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ブチルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ペンチルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ヘキシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ヘプチルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−オクチルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ノニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−デシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ウンデシル(全ての異性体を含む)、N−ドデシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−トリデシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−テトラデシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ペンタデシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ヘキサデシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ヘプタデシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−オクタデシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ノナデシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−イコシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ヘンイコシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ドコシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−トリコシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)等のN−アルキルエチレンジアミン;
N−ビニルエチレンジアミン、N−プロペニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ブテニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ペンテニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ヘキセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ヘプテニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−オクテニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ノネニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−デセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ウンデセニル(全ての異性体を含む)、N−ドデセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−トリデセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−テトラデセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ペンタデセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ヘキサデセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ヘプタデセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−オクタデセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ノナデセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−イコセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ヘンイコセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ドコセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−トリコセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)等のN−アルケニルエチレンジアミン;
N−アルキルジエチレントリアミン、N−アルケニルジエチレントリアミン、N−アルキルトリエチレンテトラミン、N−アルケニルトリエチレンテトラミン、N−アルキルテトラエチレンペンタミン、N−アルケニルテトラエチレンペンタミン、N−アルキルペンタエチレンヘキサミン、N−アルケニルペンタエチレンヘキサミン、N−アルキルプロピレンジアミン、N−アルケニルプロピレンジアミン、N−アルキルジプロピレントリアミン、N−アルケニルジプロピレントリアミン、N−アルキルトリプロピレンテトラミン、N−アルケニルトリプロピレンテトラミン、N−アルキルテトラプロピレンペンタミン、N−アルケニルテトラプロピレンペンタミン、N−アルキルペンタプロピレンヘキサミン、N−アルケニルペンタプロピレンヘキサミン、N−アルキルブチレンジアミン、N−アルケニルブチレンジアミン、N−アルキルジブチレントリアミン、N−アルケニルジブチレントリアミン、N−アルキルトリブチレンテトラミン、N−アルケニルトリブチレンテトラミン、N−アルキルテトラブチレンペンタミン、N−アルケニルテトラブチレンペンタミン、N−アルキルペンタブチレンヘキサミン、N−アルケニルペンタブチレンヘキサミン等のN−アルキルまたはN−アルケニルアルキレンポリアミン、等が挙げられる。また、上記ポリアミンには油脂から誘導されるポリアミン(牛脂ポリアミン等)も含まれる。
さらに、アルカノールアミンとしては、具体的には、モノメタノールアミン、ジメタノールアミン、トリメタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノ(n−プロパノール)アミン、ジ(n−プロパノール)アミン、トリ(n−プロパノール)アミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、モノブタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジブタノールアミン(全ての異性体を含む)、トリブタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノペンタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジペンタノールアミン(全ての異性体を含む)、トリペンタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノヘキサノールアミン(全ての異性体を含む)、ジヘキサノールアミン(全ての異性体を含む)、モノヘプタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジヘプタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノオクタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノノナノールアミン(全ての異性体を含む)、モノデカノールアミン(全ての異性体を含む)、モノウンデカノールアミン(全ての異性体を含む)、モノドデカノールアミン(全ての異性体を含む)、モノトリデカノールアミン(全ての異性体を含む)、モノテトラデカノールアミン(全ての異性体を含む)、モノペンタデカノールアミン(全ての異性体を含む)、モノヘキサデカノールアミン(全ての異性体を含む)、ジエチルモノエタノールアミン、ジエチルモノプロパノールアミン(全ての異性体を含む)、ジエチルモノブタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジエチルモノペンタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジプロピルモノエタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジプロピルモノプロパノールアミン(全ての異性体を含む)、ジプロピルモノブタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジプロピルモノペンタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジブチルモノエタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジブチルモノプロパノールアミン(全ての異性体を含む)、ジブチルモノブタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジブチルモノペンタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノエチルジエタノールアミン、モノエチルジプロパノールアミン(全ての異性体を含む)、モノエチルジブタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノエチルジペンタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノプロピルジエタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノプロピルジプロパノールアミン(全ての異性体を含む)、モノプロピルジブタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノプロピルジペンタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノブチルジエタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノブチルジプロパノールアミン(全ての異性体を含む)、モノブチルジブタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノブチルジペンタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノシクロヘキシルモノエタノールアミン、モノシクロヘキシルジエタノールアミン、モノシクロヘキシルモノプロパノールアミン(全ての異性体を含む)、モノシクロヘキシルジプロパノールアミン(全ての異性体を含む)等が挙げられる。
上記したアミンの中でも、モノアミンは、よりさび止め性に優れる点で好ましく、モノアミンの中でもアルキルアミン、アルキル基及びアルケニル基を有するモノアミン、アルキル基及びシクロアルキル基を有するモノアミン、シクロアルキルアミン並びにアルキルシクロアルキルアミンがより好ましい。また、アミン分子中の合計炭素数が3以上のアミンは、よりさび止め性に優れる点で好ましく、合計炭素数が5以上のアミンがより好ましい。
また、スルホン酸は、常法によって製造された従来公知のものを使用することができる。具体的には、一般に鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルホン化したものやホワイトオイル製造時に副生するいわゆるマホガニー酸等の石油スルホン酸、あるいは洗剤等の原料となるアルキルベンゼン製造プラントから副生したりポリオレフィンをベンゼンにアルキル化することにより得られる、直鎖状や分岐鎖状のアルキル基を有するアルキルベンゼンをスルホン化したものやジノニルナフタレン等のアルキルナフタレンをスルホン化したもの等の合成スルホン酸等、が挙げられる。これらのスルホン酸の分子量について特に制限はないが、好ましくは100〜1500、より好ましくは200〜700のものが使用される。
上記のスルホン酸の中でも、
ナフタレン環に結合する2つのアルキル基の総炭素数が14〜30であるジアルキルナフタレンスルホン酸;
ベンゼン環に結合する2つのアルキル基がそれぞれ直鎖アルキル基又は側鎖メチル基を1個有する分岐鎖状アルキル基であり、且つ2つのアルキル基の総炭素数が14〜30であるジアルキルベンゼンスルホン酸;及び
ベンゼン環に結合するアルキルの炭素数が15以上であるモノアルキルベンゼンスルホン酸、
からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
本発明において好適に使用されるジアルキルナフタレンスルホン酸は、前述の通り、ナフタレン環に結合する2つのアルキル基の総炭素数が14〜30のものである。2つのアルキル基の総炭素数が14未満であると抗乳化性が不十分となる傾向にあり、他方30を超えると得られるさび止め油組成物の貯蔵安定性が低下する傾向にある。なお、2つのアルキル基はそれぞれ直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。また、2つのアルキル基の総炭素数が14〜30であれば各アルキル基の炭素数について特に制限はないが、各アルキル基の炭素数はそれぞれ6〜18であることが好ましい。
また、本発明において好適に使用されるジアルキルベンゼンスルホン酸は、前述の通り、ベンゼン環に結合する2つのアルキル基がそれぞれ直鎖アルキル基又は側鎖メチル基を1個有する分岐鎖状アルキル基であり、且つ2つのアルキル基の総炭素数が14〜30のものである。モノアルキルベンゼンスルホン酸の場合は後述するようにアルキル基の炭素数が15以上であれば好適に使用することができるが、アルキル基の炭素数が15未満のモノアルキルベンゼンスルホン酸を用いるとさび止め油組成物の貯蔵安定性が低下する傾向にある。また、3個以上のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸を用いた場合にもさび止め油組成物の貯蔵安定性が低下する傾向にある。さらに、ジアルキルベンゼンスルホン酸のベンゼン環に結合するアルキル基が側鎖メチル基以外の分岐構造を持つ分岐鎖状アルキル基(例えば、側鎖エチル基を有する分岐鎖状アルキル基、等)や2つ以上の分岐構造を有する分岐鎖状アルキル基(例えば、プロピレンのオリゴマーから誘導される分岐鎖状アルキル基等)であると、人体又は生態系に悪影響を及ぼす恐れがあり、また、さび止め性が不十分となる傾向にある。さらにまた、ジアルキルベンゼンスルホン酸のベンゼン環に結合する2つのアルキル基の総炭素数が14未満であると抗乳化性が低下する傾向にあり、他方、30を超えるとさび止め油組成物の貯蔵安定性が低下する傾向にある。なお、ベンゼン環に結合する2つのアルキル基の総炭素数が14〜30であれば各アルキル基の炭素数については特に限定はないが、各アルキル基の炭素数はそれぞれ6〜18であることが好ましい。
さらに、本発明において好適に使用されるモノアルキルベンゼンスルホン酸は、前述の通り、ベンゼン環に結合する1つのアルキル基の炭素数が15以上のものである。ベンゼン環に結合するアルキル基の炭素数が15未満であると、得られるさび止め油組成物の貯蔵安定性が低下する傾向にある。また、ベンゼン環に結合するアルキル基は、その炭素数が15以上であれば直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
上記の原料を用いて得られるスルホン酸塩としては、具体的には以下のものが挙げられる。すなわち、
アルカリ金属の塩基(アルカリ金属の酸化物や水酸化物等)、アルカリ土類金属の塩基(アルカリ土類金属の酸化物や水酸化物等)又はアミン(アンモニア、アルキルアミンやアルカノールアミン等)とスルホン酸とを反応させることにより得られる中性(正塩)スルホネート;
上記の中性(正塩)スルホネートと、過剰のアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基又はアミンを水の存在下で加熱することにより得られる塩基性スルホネート;
炭酸ガスの存在下で上記の中性(正塩)スルホネートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基又はアミンと反応させることにより得られる炭酸塩過塩基性(超塩基性)スルホネート;
上記の中性(正塩)スルホネートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基又はアミン並びにホウ酸又は無水ホウ酸等のホウ酸化合物との反応、あるいは上記の炭酸塩過塩基性(超塩基性)スルホネートとホウ酸又は無水ホウ酸等のホウ酸化合物との反応によって得られるホウ酸塩過塩基性(超塩基性)スルホネート、及びこれらの混合物等が挙げられる。
なお、上記の中性(正塩)スルホネートを製造する場合、反応促進剤として目的とするスルホン酸塩と同じアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアミンの塩化物を添加したり、目的とするスルホネートと異なるアルカリ金属、アルカリ土類金属又アミンの中性(正塩)スルホネートを調製した後に目的とするスルホン酸塩と同じアルカリ金属アルカリ土類金属又はアミンの塩化物を添加して交換反応を行うことによっても目的のスルホン酸塩を得ることが可能である。しかしながら、このような方法により得られるスルホン酸塩には塩化物イオンが残存しやすいので、本発明においては、このような方法により得られるスルホン酸塩を用いないか、または、得られるスルホン酸塩に水洗などの十分な洗浄処理を行うことが好ましい。具体的には、スルホン酸塩中の塩素濃度を200質量ppm以下とすることが好ましく、100質量ppm以下とすることがより好ましく、50質量ppm以下とすることが好ましく、25質量ppm以下とすることが特に好ましい。
ナフタレン環に結合する2つのアルキル基の総炭素数が14〜30であるジアルキルナフタレンスルホン酸塩;
ベンゼン環に結合する2つのアルキル基がそれぞれ直鎖アルキル基又は側鎖メチル基を1個有する分岐鎖状アルキル基であり、且つ2つのアルキル基の総炭素数が14〜30であるジアルキルベンゼンスルホン酸塩;及び
ベンゼン環に結合するアルキルの炭素数が15以上であるモノアルキルベンゼンスルホン酸塩、
からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
本発明においては、上記のうち、中性、塩基性、過塩基性のアルカリ金属スルホネート及びアルカリ土類金属スルホネートから選ばれる1種又は2種以上を用いることがより好ましく;塩基価が0〜50mgKOH/g、好ましくは10〜30mgKOH/gの中性又は中性に近いアルカリ金属スルホネート若しくはアルカリ土類金属スルホネート及び/又は塩基価が50〜500mgKOH/g、好ましくは200〜400mgKOH/gの(過)塩基性のアルカリ金属スルホネート若しくはアルカリ土類金属スルホネートを用いることが特に好ましい。上記の塩基価が0〜50mgKOH/gのアルカリ金属スルホネート又はアルカリ土類金属スルホネートの含有量は、組成物全量規準で、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは2〜12質量%である。また、上記の塩基価が0〜50mgKOH/gのアルカリ金属スルホネート又はアルカリ土類金属スルホネートと塩基価が50〜500mgKOH/gのアルカリ金属スルホネート又はアルカリ土類金属スルホネートとの質量比(塩基価が0〜50mgKOH/gのアルカリ金属スルホネート又はアルカリ土類金属スルホネート/塩基価が50〜500mgKOH/gのアルカリ金属スルホネート又はアルカリ土類金属スルホネート)は、好ましくは0.1〜30、より好ましくは1〜20、特に好ましくは1.5〜15である。ここで、アルカリ金属としてはナトリウム、カリウム等が挙げられ、また、アルカリ土類金属としてはバリウム、カルシウム、マグネシウム等が挙げられるが、カルシウム及びマグネシウムが好ましく、カルシウムが特に好ましい。また、ここでいう塩基価とは、通常潤滑油基油等の希釈剤を30〜70質量%含む状態で、JIS K 2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験法」の6.に準拠した塩酸法により測定される塩基価を意味する。
また、カルボン酸としては、任意のものが用いられるが、好ましくは、脂肪酸、ジカルボン酸、ヒドロキシ脂肪酸、ナフテン酸、樹脂酸、酸化ワックス、ラノリン脂肪酸などが挙げられる。
本発明において用いられる脂肪酸の炭素数は、好ましくは6〜24、より好ましくは10〜22である。ここで、本発明において使用される脂肪酸は、飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であってもよく、また直鎖状脂肪酸であっても分岐鎖状脂肪酸であってもよい。このような脂肪酸としては、上記部分エステルの説明において例示された炭素数6〜24の脂肪酸が挙げられる。
ジカルボン酸としては、好ましくは炭素数8〜40のジカルボン酸、より好ましくは炭素数12〜36のジカルボン酸が用いられる。これらの中でも、炭素数16〜18の不飽和脂肪酸をダイマー化したダイマー酸、アルキル又はアルケニルコハク酸が好ましく用いられる。ダイマー酸としては、具体的には、オレイン酸のダイマー酸等が挙げられる。また、アルキル又はアルケニルコハク酸の中でも、アルケニルコハク酸が好ましく、炭素数8〜18のアルケニル基を有するアルケニルコハク酸がより好ましい。
ヒドロキシ脂肪酸としては、好ましくは炭素数6〜24のヒドロキシ脂肪酸が用いられる。また、ヒドロキシ脂肪酸が有するヒドロキシ基の個数は1個でも複数個でもよいが、1〜3個のヒドロキシ基を有するものが好ましく用いられる。このようなヒドロキシ脂肪酸としては、具体的には、リシノール酸等が挙げられる。
ナフテン酸とは、石油中のカルボン酸類であって、ナフテン環に−COOH基が結合したものをいう。
樹脂酸とは、天然樹脂中に遊離した状態又はエステルとして存在する有機酸をいう。
酸化ワックスとは、ワックスを酸化して得られるものである。原料として用いられるワックスは特に制限されないが、具体的には、石油留分の精製の際に得られるパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトラタムや合成により得られるポリオレフィンワックス等が挙げられる。
また、本発明では、ラノリン脂肪酸を、部分エステルの構成カルボン酸としてではなく、さび止め添加剤として単独で使用することができる。
酸化ワックス塩としては、ワックスを酸化して得られる酸化ワックスと、アルカリ金属、アルカリ土類金属(但し、バリウムを除く)およびアミンの中から選ばれる少なくとも1種と、を反応させ、酸化ワックスが有する酸性基の一部または全部を中和して塩としたものが好ましい。
酸化ワックス塩の原料として使用される酸化ワックスとしては特に制限されないが、具体的には例えば、石油留分の精製の際に得られるパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムや合成により得られるポリオレフィンワックス等のワックスを酸化することによって製造されるもの等が挙げられる。
また、酸化ワックス塩がアルカリ金属塩である場合、原料として使用されるアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
また、酸化ワックス塩がアルカリ土類金属塩である場合、原料として使用されるアルカリ土類金属としてはマグネシウム、カルシウム、バリウム等が挙げられる。
また、酸化ワックス塩が重金属塩である場合、原料として使用される重金属としては、亜鉛、鉛等が挙げられる。
なお、人体や生体系に対する安全性の点から、酸化ワックス塩はバリウム塩及び重金属塩でないことが好ましい。
また、酸化ワックス塩がアミン塩である場合、アミンとしては、上記スルホン酸塩の説明において例示されたモノアミン、ポリアミン、アルカノールアミン等が挙げられる。かかるアミンの中でも、モノアミンは耐ステイン性が良好であるという点で好ましく、モノアミンの中でもアルキルアミン、アルキル基及びアルケニル基を有するモノアミン、アルキル基及びシクロアルキル基を有するモノアミン、シクロアルキルアミン並びにアルキルシクロアルキルアミンがより好ましい。また、アミン分子中の合計炭素数が3以上のアミンは耐ステイン性が良好であるという点で好ましく、合計炭素数が5以上のアミンがより好ましい。
本発明では、酸化ワックス塩として、上記のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、重金属塩又はアミン塩のうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができるが、さび止め性の点から、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、アルカリ土類金属塩であることがより好ましい。更に、アルカリ土類金属塩の中でも、安全性、並びにカルボン酸との併用効果がより高い点から、カルシウム塩であることが特に好ましい。
本発明のさび止め組成物において、上述した酸化ワックス塩を用いる場合、さび止め性、脱脂性及び貯蔵安定性の全てを高水準でバランスよく達成できる点から、カルボン酸を併用することが好ましい。すなわち、酸化ワックス塩とカルボン酸とを併用することによって、酸化ワックス塩に由来するさび止め性を最大限に発揮させることができ、また、さび止め油組成物の脱脂性及び酸化ワックス塩の基油に対する溶解性を十分に高めることができる。この場合、併用するカルボン酸としては、さび止め性、脱脂性及び貯蔵安定性の点から、ジカルボン酸が好ましく、ダイマー酸がより好ましく、オレイン酸のダイマー酸がより好ましい。
また、酸化ワックス塩とカルボン酸とを併用する場合、両者の含有割合は特に制限されないが、カルボン酸/酸化ワックス塩の比(質量比)が、1/100〜30/100であることが好ましく、3/100〜7/100であることがより好ましく、4/100〜6/100であることが更に好ましい。カルボン酸/酸化ワックス塩の比が1/100未満の場合又は30/100を超える場合には、両者の併用によるさび止め性、脱脂性及び貯蔵安定性の向上効果が不十分となる傾向にある。
また、カルボン酸塩としては、上記したカルボン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩などが挙げられる。ここでいうアルカリ金属、アルカリ土類金属及びアミンとしては、それぞれスルホン酸の説明において例示したアルカリ金属、アルカリ土類金属およびアミンが挙げられる。なお、バリウム塩は人体や生態系に対する安全性が不十分となるおそれがある。
また、カルボン酸塩は、その他のさび止め添加剤と併用可能であるが、酸化ワックス塩及びラノリン脂肪酸塩をスルホン酸ナトリウム塩と併用する場合は、酸化ワックス塩およびラノリン脂肪酸塩としてそれぞれナトリウム塩を用いることが好ましい。
また、多価アルコールとカルボン酸との部分エステル以外のエステルとしては、エステル化酸化ワックス、アルキル又はアルケニルコハク酸エステルなどが挙げられる。
エステル化酸化ワックスとは、酸化ワックスとアルコール類とを反応させ、酸化ワックスが有する酸性基の一部または全部をエステル化させたものをいう。ここで、前記エステル化酸化ワックスの原料として使用される酸化ワックスとしては、上記カルボン酸塩の説明において例示された酸化ワックス;アルコール類としては、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状の飽和1価アルコール、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状の不飽和1価アルコール、上記部分エステルの説明において例示された多価アルコール、ラノリンの加水分解により得られるアルコール等、がそれぞれ挙げられる。
アルキル又はアルケニルコハク酸エステルとしては、前記したアルキル又はアルケニルコハク酸と1価アルコール又は2価以上の多価アルコールとのエステルが挙げられる。これらの中でも1価アルコール及び2価アルコールのエステルが好ましい。
ここでいう1価アルコールとしては、直鎖状のものでも分岐鎖状のものでもよく、また、飽和アルコールでも不飽和アルコールでもよい。また、1価アルコールの炭素数は特に制限されないが、炭素数8〜18の脂肪族アルコールが好ましく用いられる。
また、2価アルコールとしては、アルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールが好ましく用いられる。アルキレングリコールとしては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ヘプチレングリコール、オクチレングリコール、ノニレングリコール、デシレングリコール等が挙げられる。また、ポリオキシアルキレングリコールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のある切れの基サイドを単独重合又は共重合したものが挙げられる。なお、ポリオキシアルキレングリコールにおいて、構造の異なるアルキレンオキサイドが共重合している場合、オキシアルキレン基の重合形式は特に制限されず、ランダム共重合、ブロック共重合のいずれであってもよい。また、ポリオキシアルキレングリコールの重合度は特に制限されないが、2〜10のものが好ましく、2〜8のものがより好ましく、2〜6のものが更に好ましい。
また、アルキル又はアルケニルコハク酸エステルとしては、アルキル又はアルケニルコハク酸の2個の−COOH基の双方がエステル化されたジエステル(完全エステル)であってもよく、あるいは−COOH基の一方のみがエステル化されたモノエステル(部分エステル)であってもよいが、よりさび止め性に優れる点から、モノエステルであることが好ましい。
また、ザルコシンとしては、下記一般式(3)〜(5)のいずれかで表される化合物が好ましく用いられる。本発明のさび止め油組成物に一般式(3)〜(5)で表されるザルコシンを含有させることによって、ワックス、ペトロラタム、重質基油などの重質成分を用いずとも、さび止め性を更に向上させることができ、また、そのさび止め性を長期にわたって高水準に維持することができるようになるため、さび止め性及びその長期維持性に優れると共に、持ち出し量の増加の抑制、脱脂性及び噴霧性の点で有利なさび止め油組成物を得ることができる。
−CO−NR−(CH2n−COOX (3)
(式中、Rは炭素数6〜30のアルキル基又は炭素数6〜30のアルケニル基、Rは炭素数1〜4のアルキル基、Xは水素原子、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数1〜30のアルケニル基、nは1〜4の整数を示す。)
[R−CO−NR−(CH2n−COO]mY (4)
(式中、Rは炭素数6〜30のアルキル基又は炭素数6〜30のアルケニル基、Rは炭素数1〜4のアルキル基、Yはアルカリ金属又はアルカリ土類金属、nは1〜4の整数、mはYがアルカリ金属の場合は1、アルカリ土類金属の場合は2を示す。)
[R−CO−NR−(CH2n−COO]m−Z−(OH)m' (5)
(式中、Rは炭素数6〜30のアルキル基又は炭素数6〜30のアルケニル基、Rは炭素数1〜4のアルキル基、Zは2価以上の多価アルコールの水酸基を除いた残基、mは1以上の整数、m’は0以上の整数、m+m’はZの価数、nは1〜4の整数を示す。)
一般式(3)〜(5)中、Rは炭素数6〜30のアルキル基又は炭素数6〜30のアルケニル基を表す。基油への溶解性などの点から、炭素数6以上のアルキル基又はアルケニル基であることが必要であり、炭素数7以上であることが好ましく、炭素数8以上であることがより好ましい。また、貯蔵安定性などの点から、炭素数30以下のアルキル基又はアルケニル基であることが必要であり、炭素数24以下であることが好ましく、炭素数20以下であることがより好ましい。このようなアルキル基及びアルケニル基としては、具体的には例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い);ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でも良く、また二重結合の位置も任意である)等が挙げられる。
一般式(3)〜(5)中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。貯蔵安定性などの点から、炭素数4以下のアルキル基であることが必要であり、炭素数3以下であることが好ましく、炭素数2以下であることがより好ましい。一般式(3)〜(5)中、nは1〜4の整数を表す。貯蔵安定性などの点から、4以下の整数であることが必要であり、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。
一般式(3)中、Xは水素原子、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数1〜30のアルケニル基を表す。Xで表されるアルキル基又はアルケニル基としては、貯蔵安定性などの点から炭素数30以下であることが必要であり、炭素数20以下であることが好ましく、炭素数10以下であることがより好ましい。このようなアルキル基又はアルケニル基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い);エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でも良く、また二重結合の位置も任意である)等が挙げられる。また、よりさび止め性に優れるなどの点から、アルキル基であることが好ましい。Xとしては、よりさび止め性に優れるなどの点から、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアルケニル基であることが好ましく、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基であることがより好ましく、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であることがさらにより好ましい。
一般式(4)中、Yはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表し、具体的には例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム等が挙げられる。これらの中でも、よりさび止め性に優れる点から、アルカリ土類金属が好ましい。なお、バリウムの場合、人体や生態系に対する安全性が不十分となるおそれがある。一般式(4)中、mはYがアルカリ金属の場合は1を示し、Yがアルカリ土類金属の場合は2を示す。
一般式(5)中、Zは2価以上の多価アルコールの水酸基を除いた残基を表す。このような多価アルコールとしては、具体的には例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、イソプレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ソルバイト、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ダイマージオール等の2価のアルコール;グリセリン、2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,3−ブタントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−2,3,4−ブタントリオール、2−エチル−1,2,3−ブタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、2,3,4−ヘキサントリオール、4−プロピル−3,4,5−ヘプタントリオール、2,4−ジメチル−2,3,4−ペンタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、エリスリトール、1,2,3,4−ペンタンテトロール、2,3,4,5−ヘキサンテトロール、1,2,4,5−ペンタンテトロール、1,3,4,5−ヘキサンテトロール、ジグリセリン、ソルビタン等の4価アルコール;アドニトール、アラビトール、キシリトール、トリグリセリン等の5価アルコール;ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、イノシトール、ダルシトール、タロース、アロース等の6価アルコール;ポリグリセリン又はこれらの脱水縮合物等が挙げられる。
一般式(5)中、mは1以上の整数、m’は0以上の整数であり、かつm+m’はZの価数と同じである。つまり、Zの多価アルコールの水酸基のうち、全てが置換されていても良く、その一部のみが置換されていても良い。
上記一般式(3)〜(5)で表されるザルコシンの中でも、よりさび止め性に優れる点から、一般式(3)および(4)の中から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。また、一般式(3)〜(4)の中から選ばれる1種の化合物のみを単独で使用しても良く、2種以上の化合物の混合物を使用しても良い。
また、アミンとしては、上記スルホン酸塩の説明において例示されたアミンが挙げられる。
また、ホウ素化合物としては、ホウ酸カルシウム等が挙げられる。
更に、上記したさび止め添加剤以外に、高級脂肪族アルコール等に代表されるアルコール類;リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、亜リン酸エステル、これらのアミン塩等に代表される(亜)リン酸誘導体類等をさび止め添加剤として含有させることもできる。
なお、上記のさび止め添加剤を製造するに際し、脱色を目的として塩素系漂白剤が使用されることがあるが、本発明においては、漂白剤として過酸化水素等の比塩素系化合物を用いるか、あるいは脱色処理を行わないことが好ましい。また、油脂類の加水分解等で塩酸などの塩素系化合物が使用されることがあるが、この場合も、非塩素系の酸又は塩基性化合物を使用することが好ましい。更に、得られる化合物に水洗等の十分な洗浄処理を施すことが好ましい。
また、上記のさび止め添加剤の塩素濃度は、さび止め油組成物の特性を損なわない限りにおいて特に制限されるものではないが、好ましくは200質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下であり、特に好ましくは25質量ppm以下である。
本発明のさび止め油組成物においては、上記さび止め添加剤のうちの1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。しかしながら、より高いさび止め性が得られることから、上記部分エステルに加えて、スルホン酸塩と、カルボン酸、カルボン酸塩、多価アルコールとカルボン酸との部分エステル以外のエステル、ザルコシン、アミン及びホウ素化合物から選ばれる少なくとも1種と、を含有させることが好ましい。更に、上記部分エステル及びスルホン酸塩と組み合わせて用いられるさび止め添加剤としては、多価アルコールとカルボン酸との部分エステル以外のエステル、カルボン酸及びカルボン酸塩から選ばれる少なくとも1種が好ましく、多価アルコールとカルボン酸との部分エステル以外のエステルと、カルボン酸及び/又はカルボン酸塩とを組み合わせて用いることがより好ましい。また、多価アルコールとカルボン酸との部分エステル以外のエステルとしては、アルケニルコハク酸の部分エステルが好ましく、カルボン酸としては、脂肪酸、ダイマー酸及びアルケニルコハク酸が好ましく、カルボン酸塩としては、脂肪酸塩、ラノリン脂肪酸塩及びエステル化酸化ワックスが好ましい。
本発明のさび止め組成物において、多価アルコールと炭素数2〜30のカルボン酸との部分エステル以外のさび止め添加剤の含有量は、好ましくは0.1〜40質量%、より好ましくは0.5〜30質量%、更に好ましくは1〜20質量%である。さび止め添加剤の含有量が前記下限値未満であると、その添加によるさび止め性の向上効果が不十分となる傾向にある。また、当該さび止め添加剤の含有量が40質量%を超えても、含有量に見合うさび止め性の向上効果が得られない傾向にある。
また、本発明のさび止め油組成物においては、必要に応じて上記さび止め添加剤以外の添加剤を含有させてもよい。ここで、本発明において使用される他の添加剤としては、具体的には例えば、酸性雰囲気での暴露さび止め性向上効果が著しいパラフィンワックス;プレス成形性向上効果あるいは潤滑性向上効果が著しい硫化油脂、硫化エステル、長鎖アルキル亜鉛ジチオホスフェート、トリクレジルフォスフェート等のリン酸エステル、豚脂等の油脂、脂肪酸、高級アルコール、炭酸カルシウム、ホウ酸カリウム;酸化防止性能を向上させるためのフェノール系またはアミン系酸化防止剤;腐食防止性能を向上させるための腐食防止剤(ベンゾトリアゾールまたはその誘導体、チアジアゾール、ベンゾチアゾール等);ジエチレングリコールモノアルキルエーテル等の湿潤剤;アクリルポリマー、パラフィンワックス、マイクロワックス、スラックワックス、ポリオレフィンワックス、ペトロラタム等の造膜剤;メチルシリコーン、フルオロシリコーン、ポリアクリレート等の消泡剤;水溶性腐敗因子を除去するための水及び界面活性剤、及びこれらの混合物等が挙げられる。なお、上記の他の添加剤の含有量は任意であるが、これらの添加剤の含有量の総和はさび止め油組成物全量基準で10質量%以下であることが好ましい。
本発明のさび止め油組成物のヨウ素価は、0.01〜40であることが好ましく、1〜30であることがより好ましく、3〜20であることが更に好ましく、5〜15であることが特に好ましい。さび止め油組成物のヨウ素価が0.01未満であると、さび止め性及び貯蔵安定性が低下する傾向にある。また、さび止め油組成物のヨウ素価が40を超えると、大気暴露性及び基油に対する溶解性が低下する傾向にある。
また、本発明のさび止め油組成物においては、バリウム、亜鉛、塩素及び鉛の含有量はそれぞれ元素換算で、さび止め油組成物全量を基準として、好ましくは1000質量ppm以下、より好ましくは500質量ppm以下、更に好ましくは100質量ppm以下、更により好ましくは50質量ppm以下、一層好ましくは10質量ppm以下、特に好ましくは5質量ppm以下、最も好ましくは1質量ppm以下である。これらの元素のうちの1つでもその含有量が1000質量ppmを超える場合には、人体あるいは生態系等の環境に対する安全性が不十分となる可能性がある。
なお、本発明における元素の含有量とは、以下の方法によって測定される値をいう。すなわち、バリウム、亜鉛および鉛の含有量とは、ASTM D 5185-95 "Standard Test Method
for Determination of Additive Elements, Wear Metals, and Contaminants in UsedLubricating Oils and Determination of Selected Elements in Base Oils byInductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectrometry(ICP-AES)";塩素の含有量とは、"IPPRPOSED METHOD AK/81 Determination of chlorine - Microcoulometery oxidativemethod"、にそれぞれ準拠して測定される組成物全量を基準とした含有量[質量ppm]を意
味する。上記の測定方法における各元素の検出限界は通常1質量ppmである。
また、本発明のさび止め油組成物の塩基価は特に制限されないが、さび止め性の点から、当該塩基価は、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは1.5mgKOH/g以上、更に好ましくは2mgKOH/g以上、特に好ましくは3mgKOH/g以上である。また、貯蔵安定性の点から、当該塩基価は、好ましくは20mgKOH/g以下、より好ましくは15mgKOH/g以下、更に好ましくは10mgKOH/g以下であり、特に好ましくは8mgKOH/gである。なお、ここでいう塩基価とは、JIS K 2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験方法」の6.に準拠した塩酸法により測定される塩基価[mgKOH/g]をいう。
また、本発明のさび止め油組成物の40℃における動粘度は特に制限されないが、好ましくは1mm/s以上、より好ましくは2mm/s以上、更に好ましくは2.5mm/s以上、一層好ましくは3mm/s以上、特に好ましくは3.5mm/s以上である。さび止め油組成物の40℃における動粘度が前記下限値未満の場合、塗膜の油膜切れが起こりやすくなり、さび止め性が不十分となる傾向にある。また、本発明のさび止め油組成物の40℃における動粘度は、好ましくは50mm/s以下、より好ましくは40mm/s以下、更に好ましくは30mm/s以下である。さび止め油組成物の40℃における動粘度が前記上限値を超えると、作業性が低下する傾向にある。
なお、本発明のさび止め組成物の粘性が高い場合であっても、加熱によりその動粘度を所定値以下(好ましくは50mm/s以下)とした後で被処理体に塗布することによって、当該組成物を被処理体に容易に且つ確実に塗布することができる。しかしながら、さび止め油組成物の40℃における動粘度が1000mm/sを超える場合、低粘度化するためにはより高温での加熱が必要となるため、さび止め油の劣化が促進されてその性能が損なわれてしまう。そのため、本発明のさび止め油組成物の40℃における動粘度は1000mm/s以下であることが好ましい。
上記構成を有する本発明のさび止め油組成物は、多価アルコールのエステルによるさび止め性と貯蔵安定性とを高水準で両立できるものであり、様々な金属製部材のさび止め油として好適に用いることができる。被処理体である金属製部材は特に制限されず、具体的には、自動車ボディや電気製品ボディとなる冷延鋼板、熱延鋼板、高張力後半、亜鉛めっき鋼板などの表面処理鋼板、ブリキ用原板、アルミニウム合金板、マグネシウム合金板などの金属製板材、更には転がり軸受、テーパー転がり軸受、ニードル軸受等の軸受部品、建築用鋼材、精密部品等が挙げられる。
このような金属製部材に対するさび止め油としては、金属製部材の加工工程等の過程で用いられる中間さび止め油、出荷時のさび止めのために用いられる出荷さび止め油、プレス加工に供する前の異物除去又は金属板製造メーカーにおいて出荷に先立つ異物除去のための洗浄工程で用いられる洗浄さび止め油などがあるが、本発明のさび止め油組成物は上記のいずれの用途にも使用することができる。
また、本発明のさび止め油組成物を被処理体に塗布する方法は特に制限されず、例えば、スプレー、滴下、フェルト材等による転写、静電塗油等の方法により金属製部材に塗布することができる。これらの塗布法の中でも、スプレー法は、微細な霧状で塗布することにより油膜厚さを均一とできるので好ましい。スプレー法を適用する場合の塗布装置としては、さび止め油組成物を霧化できるものであれば特に制限されず、例えばエアースプレータイプ、エアレススプレータイプ、ホットメルトタイプなどのいずれも適用可能である。
さらに、塗布工程においては、過剰のさび止め油組成物が塗布された後に、遠心分離器を用いたドレイン切り工程、あるいは長時間放置によるドレイン切り工程を設けることが好ましい。
また、本発明のさび止め油組成物を洗浄さび止め油組成物として用いる場合には、金属製部材の表面に、大過剰量の本発明のさび止め油組成物を、スプレー、シャワー、浸漬塗布等により給油することによって良好な洗浄およびその後のさびの防止を行うことができる。さらに、必要に応じて、上記の金属加工工程後にロールブラシ等による表面清掃を併せて行うと、異物除去の効率を高めることができる。さらにまた、本発明のさび止め油組成物を用いて洗浄を行う際には、リンガーロール等による金属製部材の表面処理を併せて行い、金属製部材の表面の付着油量を調節することが好ましい。
本発明のさび止め油組成物の塗布方法が上記のいずれであっても、金属製部材上に過剰量塗布されたさび止め油組成物を回収、循環、再使用することが好ましい。なお、さび止め油組成物の循環に際しては、循環系中に混入する異物の除去を併せて行うことが好ましい。具体的には例えば、本発明のさび止め油組成物の循環経路の途中、好ましくはさび止め油組成物を金属製部材に向けて噴出させる直前に、フィルターを設けて異物の除去を行うことができる。また、本発明のさび止め油組成物を貯留するタンクの底部に磁石を設け、磁力により磨耗分等の異物を吸着させて除去することもできる。なお、このような工程において再使用される本発明のさび止め油組成物の性能は、前工程油の混入などにより低下することが懸念される。したがって、本発明のさび止め油組成物を再使用する際には、使用油に対して定期的に動粘度や密度の測定、銅板腐食試験、さび止め性試験などを行ってその性状を管理し、必要に応じて更油、ドレイン廃棄、タンク清掃、浄油操作等を行うことが好ましい。さらに、廃棄した油剤については、その油剤をそのまま、あるいは溶剤又は低粘度基油で希釈し、廃棄前に使用されていたラインに比べてさび止め油組成物への要求性能が低いラインに使用することによって、総使用油量の低減を図ることができる。さらにまた、本発明のさび止め油組成物をタンクに貯留する際には、タンク内の該組成物の減少量に応じて補給することが好ましい。その場合、必ずしも初期に充填したさび止め油組成物と同一の組成でなく、その時々に応じて強化したい性能を引き出すための添加剤を増量した組成物などを補給してもよい。あるいは逆に、高粘度基油の含有量を低減する等の方法により低粘度化させた組成物を補給して、さび止め油組成物の洗浄能力を維持してもよい。
また、本発明のさび止め油組成物を金属板製造メーカーにおいて出荷に先立つ異物除去のための洗浄工程に用いる場合、金属板を、洗浄工程の後に直ちにコイル状に巻き取り、あるいはシート材として重ねて出荷することが可能である。すなわち、本発明のさび止め油組成物は洗浄さび止め油兼出荷さび止め油として使用できる。この方法によれば、異物の付着量が少なく、かつプレス加工においてプレス工程の直前に洗浄さび止め油による洗浄工程が行われた際にも容易に且つ確実に洗浄できるというメリットが有る。なお、当然のことながら、鋼板製造場所において洗浄さび止め油により洗浄する工程に続いて、再度さび止め油を塗布する工程を設け、2段階でさび止め処理を行なってもよい。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1〜6、比較例1〜2]
実施例1〜6及び比較例1〜2においては、それぞれ以下に示す基油及び添加剤を用いて、表1に示す組成を有するさび止め油組成物を調製した。表1には、多価アルコールとカルボン酸との部分エステルを構成するカルボン酸の全量に占める水酸基を有するカルボン酸の割合を併せて示す。また、表2には、A1の部分エステルを構成するラノリン脂肪酸の脂肪酸組成を示す。
(基油)
基油1:鉱油(40℃における動粘度:6.5mm/s)
基油2:鉱油(40℃における動粘度:22mm/s)
基油3:鉱油(40℃における動粘度:93mm/s)
(多価アルコールとカルボン酸との部分エステル)
A1:ペンタエリスリトールとラノリン脂肪酸との部分エステル(モノエステル/ジエステル/トリエステル=5/10/85)
A2:ペンタエリスリトールとオレイン酸との部分エステル(モノエステル/ジエステル/トリエステル=5/10/85)
A3:部分エステルA1と部分エステルA2との混合物(部分エステルA1/部分エステルA2=40/60(質量比))
A4:部分エステルA1と部分エステルA2との混合物(部分エステルA1/部分エステルA2=50/50(質量比))
A5:部分エステルA1と部分エステルA2との混合物(部分エステルA1/部分エステルA2=60/40(質量比))
A6:部分エステルA1と部分エステルA2との混合物(部分エステルA1/部分エステルA2=70/30(質量比))
A7:部分エステルA1と部分エステルA2との混合物(部分エステルA1/部分エステルA2=80/20(質量比))
(その他の添加剤)
B1:酸化ワックスのカルシウム塩
B2:オレイン酸のダイマー酸
B3:ジ−tert−ブチル−p−クレゾール
B4:アルキルベンゼンカルシウムスルホネート溶液(スルホン酸塩の含有量:40質量%、塩基価:25mgKOH/g)
B5:アルキルベンゼンカルシウムスルホネート溶液(スルホン酸塩の含有量:52質量%、塩基価:300mgKOH/g)。
次に、実施例1〜6及び比較例1〜2の各さび止め油組成物について以下の評価試験を行った。
(塩水噴霧試験)
市販のSPCE−SD相当の冷延鋼板を60×80mmに切断して試験片とした。次に、この試験片にさび止め油組成物を塗布量3g/m2となるようにエアスプレーを用いて塗布し、室温で24時間放置した。このようにして得られた試験片について、JIS K 2246「塩水噴霧試験方法」に準拠して塩水噴霧試験を行い、所定の時間経過後のさびの発生の有無を観察した。さびの発生までに要した時間を表1に示す。
(大気暴露試験)
市販のSPCE−SD相当の冷延鋼板を60×80mmに切断して試験片とした。次に、この試験片にさび止め油組成物を塗布量3g/m2となるようにエアスプレーを用いて塗布した。塗布後の試験片を屋外に設置した百葉箱内で保管し、所定の時間経過後に試験片上の錆の有無を観察した。さびが発生するまでに要した日数を表1に示す。
(貯蔵安定性試験)
容量50mlのガラスビンにさび止め油組成物30gを秤取した。この試料について、20℃、相対湿度50%で12時間保持した後、更に50℃、相対湿度95%で12時間保持する処理を1サイクルとして、このサイクルを曇り又は沈殿が発生するまで連続的に繰り返した。曇り又は沈殿が発生するまでに要した日数(サイクル数)を表1に示す。
Figure 0004679998
Figure 0004679998


Claims (3)

  1. 鉱油及び/又は合成油からなる基油と、
    多価アルコールとカルボン酸との部分エステルと
    を含有するさび止め油組成物であって、
    前記部分エステルを構成するカルボン酸に占めるヒドロキシカルボン酸の割合が5〜80質量%であり、且つ
    前記部分エステルを構成するカルボン酸に占める不飽和カルボン酸の割合が5〜95質量%であることを特徴とするさび止め油組成物。
  2. 鉱油及び/又は合成油からなる基油と、
    多価アルコールとカルボン酸との部分エステルと
    を含有するさび止め油組成物であって、
    前記部分エステルを構成するカルボン酸に占めるヒドロキシカルボン酸の割合が5〜80質量%であり、且つ
    前記部分エステルのヨウ素価が5〜75であることを特徴とするさび止め油組成物。
  3. 鉱油及び/又は合成油からなる基油と、
    多価アルコールとラノリン脂肪酸とで構成される第1の部分エステルと、
    多価アルコールと水酸基を有さないカルボン酸とで構成される第2の部分エステルと
    を含有するさび止め油組成物であって、
    前記第1及び第2の部分エステルの合計量に占める前記第1の部分エステルの割合が20〜95質量%であることを特徴とするさび止め油組成物。
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